説明

気体配管及び管継手の接続構造

【課題】接続作業が簡便で、気密性が高い気体配管及び管継手の接続構造を提供する。
【解決手段】管継手3の円筒形端部4に、先端部11と、環状弾性パッキン5が被着される環状弾性パッキン移動溝12と、気体配管2の内径より径大な気体配管当接径大部14とを配設した。そして、管継手3の円筒形端部4を気体配管2に圧入すると、環状弾性パッキン5が、気体配管2の内面22と環状弾性パッキン移動溝14の溝底とで挟圧されながら、先端部11側の溝壁12aから気体配管当接径大部14側の溝壁12bまで移動開始し、気体配管2の先端10が前記気体配管当接径大部14へ当接する位置で接続が完了する接続構造1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の天井裏等に設置される空調設備に備えられた気体配管と、該気体配管に接続される管継手の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の天井裏等には空調設備が設置されており、空気等の気体を所要位置に案内する金属製の気体配管(いわゆるエアダクト)が装架されていることが一般的である(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
また、前記気体配管は、適宜、管継手(いわゆるニップル)と接続され、気体配管相互が連結されたり分岐されたりすることもよく知られている。
【0004】
ここで、通常、気体配管と管継手との接続構造Aは、次に示す構成となっている。
図7に示すように、径大な円筒形気体配管aに、径小の管継手bの円筒形端部が差し込まれ、そして脱離不能となるように複数箇所でビスc止めされて、さらに、かかる接続箇所がダクトテープdにより巻回されて固定される。
【0005】
【特許文献1】特開2001−82790号公報
【特許文献2】特開2003−120993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した構成は、部品点数が多く、取り付け作業が面倒であると共に、気密性が悪く、外部への気体漏れが生じやすいという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、接続作業が簡便で、しかも接続部位の気密性が高い気体配管及び管継手の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、管継手に備えられた金属製の円筒形端部が、円筒形の気体配管に内嵌されて、当該管継手と当該気体配管とが接続されてなる気体配管及び管継手の接続構造において、前記管継手の円筒形端部には、先端部と、該先端部に隣接し、該先端部の円周方向と同方向に周成された、環状弾性パッキンが被着され、かつ該環状弾性パッキンが溝幅方向へ変位可能な溝幅の環状弾性パッキン移動溝と、該管状弾性パッキン移動溝に隣接し、気体配管の内径より径大な気体配管当接径大部とが配設されてなり、前記管継手の円筒形端部が気体配管に圧入されると、前記環状弾性パッキンが、気体配管の内面と環状弾性パッキン移動溝の溝底とで挟圧されながら、当該環状弾性パッキン移動溝の先端部側の溝壁から当該管継手の基端方向へ移動し、気体配管の先端が管継手の気体配管当接径大部と当接する位置で気体配管当接径大部側の溝壁に到達してなることを特徴とする気体配管及び管継手の接続構造である。
【0009】
かかる構成にあって、管継手の円筒形端部が気体配管に内嵌された状態では、環状弾性パッキンが、環状弾性パッキン移動溝の溝底、気体配管当接径大部側の溝壁、及び気体配管の内面と密着するため、外部への気体漏れが確実に阻止される。さらに、この環状弾性パッキンは、接続作業時にあって、環状弾性パッキン移動溝内を、管継手の基端方向、換言すれば気体配管の先端方向、さらに換言すれば環状弾性パッキン移動溝の溝幅方向へ横滑り又は転動するため、管継手(又は気体配管)の差込み時の抵抗が減少して、作業性が良い。また、前記環状弾性パッキンを、一側の溝壁から他側の溝壁まで移動するようにしたことにより、環状弾性パッキン移動溝の溝幅により環状弾性パッキンの移動距離を適正に規制することができ、環状弾性パッキンの過剰な転動を防止することができる。さらに、管継手の円筒形端部には、気体配管当接径大部を配設したことにより、管継手(又は気体配管)の差込み不足、又は過剰な差込みを回避するができる。なお、本発明にあっては、相対的に、管継手と気体配管とが突き合わされて接続されるのであり、管継手を気体配管に差し込む構成も、管継手に気体配管を外嵌する構成も本発明に含まれる。
【0010】
また、前記環状弾性パッキン移動溝に、溝開口方向へ膨隆する膨隆部が、当該環状弾性パッキン移動溝の周成方向に沿って周成されてなり、環状弾性パッキンは、環状弾性パッキン移動溝を移動する際に前記膨隆部と気体配管との間の狭間隙を通過してなる構成が提案される。
【0011】
かかる構成にあっては、接続作業時に、環状弾性パッキンが前記膨隆部と気体配管との間の狭間隙を通過することに起因する抵抗力(節度)が生ずることとなり、気体配管及び管継手の接続が完了するまでの差込み具合の確認が可能となる節度機構が構成されることとなる。また、前記構成は、環状弾性パッキンを段階的に管継手の基端方向へ片寄りなく移動させることとなり、環状弾性パッキンが円筒形端部の筒方向に対して斜めの状態で移動してしまうことを防止できる。仮に、環状弾性パッキンが斜めの状態で移動してしまうと、当該環状弾性パッキンに不要な引張力又はせん断力が作用してしまって破断を招き易くなるのであり、上記構成は係る問題を回避することができる。なお、該膨隆部は、環状弾性パッキン移動溝に単一で設けても良いし、筒方向に沿って間欠的に複数列設させてもよい。さらに、膨隆部は、環状弾性パッキン移動溝の周成方向に沿って断続的に形成されてもよいし、連続的に形成されてもよく、要は接続作業時に節度機構が構成されればよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る気体配管及び管継手の接続構造は、環状弾性パッキンが外嵌された環状弾性パッキン移動溝を設け、気体配管の内面と環状弾性パッキン移動溝の溝底とで挟圧しながら環状弾性パッキンを管継手の基端方向へ移動させ、気体配管の先端が管継手の気体配管当接径大部と当接する位置で気体配管当接径大部側の溝壁に到達するようにしたため、気密性が向上すると共に、作業性が良いという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
建築物の天井裏等に設置される、空気等の気体を所定位置に案内する気体配管2は、図1等に示すように、金属製で円筒形状をしている。この気体配管2としては、例えば円筒形のスパイラルダクトが好適である。
【0014】
また、前記気体配管2に連結される管継手3は、図1等に示すように、金属製で円筒形状の円筒形端部4を備えている。この管継手3としては、例えば円筒形のニップルが好適である。
【0015】
ここで、前記管継手3の円筒形端部4には、図2に示すように、先端部11、環状弾性パッキン移動溝12、気体配管当接径大部14、及び主胴部15が互いに隣接して配設されている。
【0016】
前記先端部11は、気体配管2と接続した状態では(図2参照)、気体配管2内に位置する部位であり、少なくとも気体配管2の内径より径小な寸法とされている。
【0017】
また、前記先端部11に隣接する部位には、環状弾性パッキン移動溝12が周成され、さらに外径Dの円環状弾性パッキン5が被着されている。さらに詳述すると、この環状弾性パッキン移動溝12は、該先端部11の円周方向に沿って配設されており、その溝幅が、後述の環状弾性パッキン5の外径Dの3〜5倍に設定されて、溝幅方向に環状弾性パッキン5が変位可能となっている。また、該環状弾性パッキン移動溝12の溝深さは、外径Dの環状弾性パッキン5が環状弾性パッキン移動溝12に装着された状態で、気体配管2へ管継手3の円筒形端部4を適正に圧入できる溝深さに設定されている。なお、環状弾性パッキン移動溝12が形成される部位は、所定溝幅の溝が形成されるため、先端部11より径小な部位となる。
【0018】
さらに、該環状弾性パッキン移動溝12内には、三つの膨隆部13,13,13が当該環状弾性パッキン移動溝12の溝幅方向へ間欠的に列設されている。さらに詳述すると、この膨隆部13は、環状弾性パッキン移動溝12の溝開口方向に膨隆していると共に、先端部11の円周方向と同じ方向で周成されている。また、該膨隆部13の膨隆高さは、その頂部が先端部11よりも内側(径小)となるように設定されている。
【0019】
また、前記環状弾性パッキン移動溝12に隣接する部位には、前記気体配管2の内径より径大な気体配管当接径大部14が配設されている。この気体配管当接径大部14は、後述するように、接続完了状態で気体配管2の先端10が当接することとなる。
【0020】
さらに、該気体配管当接径大部14に隣接して、所定径の主胴部15が位置している。なお、当該管継手3にあっては、先端部11側を先端方向として、主胴部15側を基端方向とする。
【0021】
上記構成にあって、気体配管2と管継手3は、次の手順で接続される。
まず、図6aに示すように、気体配管2の先端10と、管継手3の円筒形端部4とを対向させる。なお、管継手3に取り付けられた環状弾性パッキン5は、環状弾性パッキン移動溝12の先端部11側の溝壁12aに倣わせて配置しておく。このように、環状弾性パッキン5を溝壁12aに倣わせて配置することにより、該環状弾性パッキン5を管継手3の筒方向に対して直交する姿勢にすることができる。
【0022】
そして、図6bに示すように、気体配管2へ管継手3の円筒形端部4を圧入する。そうすると、かかる圧入に伴い、前記環状弾性パッキン5が、気体配管2の内面22と環状弾性パッキン移動溝12の溝底とで挟圧される。そして、図6cに示すように、該環状弾性パッキン移動溝12内を管継手3の基端方向へ横滑り、又は転動しながら移動開始する。このように、接続作業時に環状弾性パッキン5が環状弾性パッキン移動溝12を挟圧されながら移動することにより、管継手3(又は気体配管2)の差込み時の抵抗が減少して、作業性が向上する。
【0023】
ここで、図6cに示すように、環状弾性パッキン5は、膨隆部15と気体配管2との間の狭間隙30を通過しながら移動する。なお、環状弾性パッキン5が狭間隙30を通過する際には、抵抗力(節度)が生ずることとなり、管継手3(又は気体配管2)の差込み深さが順次確認できる節度機構が構成されることとなる。本実施例では、管継手3を圧入開始してから接続が完了するまでに、環状弾性パッキン5は、狭間隙30を3回通過するため、3度抵抗力(節度)が生ずる。
【0024】
さらに、図6dに示すように、管継手3の圧入を継続すると、気体配管2の先端10が管継手3の気体配管当接径大部14と当接する。また、気体配管2の先端10が気体配管当接径大部14と当接するのと同時に、環状弾性パッキン5は、環状弾性パッキン移動溝12の気体配管当接径大部14側の溝壁12bに到達することとなる。これにより、接続が完了し、気体配管2及び管継手3の接続構造1が構成される。なお、この接続完了状態にあっては、環状弾性パッキン5が、環状弾性パッキン移動溝12の溝底、溝壁12b、及び気体配管2の内面22と密着するため、外部への気体漏れが確実に阻止される。また、前記環状弾性パッキン5を、先端部11側の溝壁12aから気体配管当接径大部14側の溝壁12bまで移動するようにしたことにより、環状弾性パッキン5の移動距離を適正に規制でき、環状弾性パッキン5の過剰な転動を防止することができる。なお、気体配管2の先端10が管継手3の気体配管当接径大部14に当接すると接続が完了するようにしたから、管継手3(又は気体配管2)の差込み不足、又は過剰な差込みを回避するができる。
【0025】
また、接続作業時に、環状弾性パッキン5が狭間隙30を通過するため、環状弾性パッキン5は段階的に管継手3の基端方向へ片寄りなく移動することとなり、環状弾性パッキン5が円筒形端部4の筒方向に対して斜めの状態で移動してしまうことが防止される。
【0026】
また、上記実施例は、管継手3の一端に気体配管2が接続される構成であるが、管継手3の両端に円筒形端部4が配設され、両端に気体配管2がそれぞれ接続される構成であっても良い。
【0027】
上記実施例は、本発明に係る環状弾性パッキン5として、円環状ゴムパッキンが好適に採用され得るが、弾性を有する公知のパッキン材料であれば適宜採用され得る。
【0028】
また、本実施例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】上側に示されるのが気体配管2の正面図であり、下側に示されるのが管継手3の正面図である。
【図2】管継手3の縦断側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】図2のC−C線断面図である。
【図6】気体配管2及び管継手3の接続過程を示す説明図である。
【図7】従来構成の接続構造Aを示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 接続構造
2 気体配管
3 管継手
4 円筒形端部
5 環状弾性パッキン
11 先端部
12 環状弾性パッキン移動溝
12a 先端部側の溝壁
12b 気体配管当接径大部側の溝壁
13 膨隆部
14 気体配管当接径大部
22 気体配管の内面
30 狭間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手に備えられた金属製の円筒形端部が、円筒形の気体配管に内嵌されて、当該管継手と当該気体配管とが接続されてなる気体配管及び管継手の接続構造において、
前記管継手の円筒形端部には、
先端部と、
該先端部に隣接し、該先端部の円周方向と同方向に周成された、環状弾性パッキンが被着され、かつ該環状弾性パッキンが溝幅方向へ変位可能な溝幅の環状弾性パッキン移動溝と、
該管状弾性パッキン移動溝に隣接し、気体配管の内径より径大な気体配管当接径大部とが配設されてなり、
前記管継手の円筒形端部が気体配管に圧入されると、前記環状弾性パッキンが、気体配管の内面と環状弾性パッキン移動溝の溝底とで挟圧されながら、当該環状弾性パッキン移動溝の先端部側の溝壁から当該管継手の基端方向へ移動し、気体配管の先端が管継手の気体配管当接径大部と当接する位置で気体配管当接径大部側の溝壁に到達してなることを特徴とする気体配管及び管継手の接続構造。
【請求項2】
前記環状弾性パッキン移動溝に、溝開口方向へ膨隆する膨隆部が、当該環状弾性パッキン移動溝の周成方向に沿って周成されてなり、
環状弾性パッキンは、環状弾性パッキン移動溝を移動する際に前記膨隆部と気体配管との間の狭間隙を通過してなることを特徴とする請求項1記載の気体配管及び管継手の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−121506(P2009−121506A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292965(P2007−292965)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(591037775)株式会社アローエム (1)
【Fターム(参考)】