気化式燃焼装置
【課題】 気化室と炎孔ベースとの間の伝熱性を低減して、エネルギーロスを小さくすることが可能な気化式燃焼装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の気化式燃焼装置1は、液体燃料を気化させて燃料ガスを生成することができる気化部8を有しており、気化部8の気化室60と、炎孔ベース36とは、断熱部材130を挟むようにして固定されている。そして、断熱部材130は2枚のシート130a、130bが重ねられたものが用いられている
【解決手段】 本発明の気化式燃焼装置1は、液体燃料を気化させて燃料ガスを生成することができる気化部8を有しており、気化部8の気化室60と、炎孔ベース36とは、断熱部材130を挟むようにして固定されている。そして、断熱部材130は2枚のシート130a、130bが重ねられたものが用いられている
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気化式燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、給湯器や暖房機等に、燃料を燃焼させてその熱を使用する燃焼装置が用いられている。中でも、比較的発熱量が小さい用途に使用する場合、気化器によって液体燃料を気化し、この気化された燃料ガスを燃焼部に送って燃焼させる形式のものが用いられている。
【0003】
そして、このような気化式燃焼装置では、運転の初めには電気ヒータ等を用いて気化室を加熱し、燃焼が始まると燃焼による熱も気化室の加熱に利用して、気化室を高温状態として液体燃料を気化させて燃料ガスを発生させる。さらに、この燃料ガスは炎孔ベースに形成された流路を通過して、炎孔から噴出させることによって燃焼が行われる。
【0004】
燃焼が行われている時の、気化室側への伝熱は、主に気化室と炎孔ベースとの間の密着面から供給される。通常、気化室の密着面側の端部は筒状であり、密着面は周状であって内側が気化室内につながっている。そして、この密着面には、耐熱性のパッキンが設けられており、燃料ガスが密着面から漏れることを防いでいる。
【0005】
燃焼開始の際に気化室を高温状態とする際、放熱をできるだけ少なくして、エネルギーロスを小さくし、短時間で所定の温度に加熱することが望ましい。
そのため、特許文献1などに記載されているように、気化室の内面などに底熱伝導性材料をコーティングして放熱を少なくする技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−106809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、気化式燃焼装置の改良がなされており、例えば、炎孔ベースや気化室がより小型化されて全体の熱容量が小さくなっており、また、気化室で発生した燃料ガスが炎孔に至るまでの間の燃料ガスの温度低下が小さい構造にして、気化室の温度をより低い設定としている。
このような改良により、燃焼時に気化室へ伝熱される燃焼熱の熱量が小さくても、液体燃料を気化させて燃焼させることができる。そこで、気化室と炎孔ベースとの間の伝熱性をある程度低くすることにより、燃焼時の熱の供給を確保しつつ、燃焼開始の際の炎孔ベースへの放熱を低減することが可能である。
【0007】
しかしながら、気化室と炎孔ベースとの間の伝熱性を適度な範囲で低くすることは難しいものであった。
例えば、単に、従来より用いられた断熱材よりも厚い断熱材を用いて伝熱性を低減させる方法では放熱低減の効果が小さく、また断熱材を厚くすることには限界がある。また、気化室の密着面側の端部の筒状部分の厚みを全体的に薄くして、気化室と炎孔ベースとの間の密着面の周方向の幅を短くし、密着面の面積を小さくして伝熱性を低減させる方法が考えられる。しかしながら、気化室の強度の低下が懸念され、また、気化室の熱容量が小さくなりすぎて気化室の温度変化が大きくなりすぎてしまうおそれもある。
【0008】
このような気化式燃焼装置を給湯器に用いる場合には、このような放熱を低減させることが特に必要であった。すなわち、給湯器では、運転中、常に燃焼させるものではなく、給湯の必要な時にのみ燃焼させるので、燃焼が一旦停止した後、次の燃焼までの間に気化室の熱が放熱して温度が低下し、ヒータによって気化室を加熱することが必要である場合がある。また、給湯の要求があった場合にはできるだけ早く燃焼させる必要があるので、給湯器のスイッチが入って運転準備の状態になっている場合には、気化室の温度をある程度の温度以上に維持する必要があり、この間にも気化室の熱が放熱し、エネルギーのロスにつながる。
【0009】
そこで、本発明は、気化室と炎孔ベースとの間の伝熱性を低減して、エネルギーロスを小さくすることが可能な気化式燃焼装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、前記断熱部材は2枚以上のシートが重ねられたものが用いられていることを特徴とする気化式燃焼装置である。
【0011】
請求項1に記載の気化式燃焼装置によれば、炎孔ベースと気化室との間に断熱部材が設けられ、前記断熱部材は2枚以上のシートが重ねられたものが用いられているので、積層部分で伝熱性が低下し、加熱ヒータによって気化室を加熱する場合のエネルギーロスを小さくすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、シート同士の積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した断熱部材が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の気化式燃焼装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、シート同士の積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した断熱部材が用いられているので、気化式燃焼装置を製作する場合、断熱部材の組み付けの際に、シートを重ねる数を間違えにくい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、断熱部材は、シートの積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した後に、所定の形状に切断して製造されるものであることを特徴とする請求項2に記載の気化式燃焼装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、断熱部材は、シートの積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した後に、所定の形状に切断して製造されるものであるので、断熱部材の製作がしやすい。
【0016】
請求項4に記載の発明は、液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、気化室には筒部が設けられ、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材を挟んだ状態で、炎孔ベースと気化室とを固定するものであり、気化室の筒部の縁部の面積は、筒部の軸方向に垂直な面での断面積よりも小さいことを特徴とする気化式燃焼装置である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材が挟まれており、気化室の筒部の縁部の面積は、筒部の軸方向に垂直な面での断面積よりも小さいものであるので、他の部分の形状を変更することなく、気化室と断熱部材の接触面積を小さくして、気化室と断熱部材との間の伝熱性を効率的に低減することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、気化室の筒部の先端付近の形状は先端に向かって断面積が小さくなる形状であることを特徴とする請求項4に記載の気化式燃焼装置である。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材が挟まれており、気化室の筒部の先端付近の形状は先端に向かって断面積が小さくなる形状であるので、気化室の筒部の先端を加工がしやすく、また、気化室と断熱部材との間の伝熱性を効率的に低減することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、気化室には筒部が設けられ、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材を挟んだ状態で、炎孔ベースと気化室とを固定するものであり、前記縁部にはガラスビーズを含む塗料で塗装処理がされていることを特徴とする気化式燃焼装置である。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、気化室の筒部の先端に位置する縁部にはガラスビーズを含む塗料で塗装処理がされているので、塗装皮膜に細かい凹凸が形成されて、密着が不十分となる部分ができ、気化室と断熱部材との間の伝熱性を効率的に低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の気化式燃焼装置は、気化室と炎孔ベースとの間の放熱を低減することができ、エネルギーロスが小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。図1は、本発明の燃焼装置を内蔵する給湯器の正面図である。図2は、本発明の実施形態の燃焼装置の正面図である。図3は、本発明の実施形態の燃焼装置の断面図である。図4は、本発明の実施形態の燃焼装置の全体の分解斜視図である。図5は、炎孔ベース、断熱部材、気化室を下から見た状態で示した分解斜視図である。図6は、気化室を上から見た状態で示した斜視図である。図7は、(a)が断熱部材、気化室の断面図であり、(b)が(a)の要部拡大図である。図8は、断熱部材を製作する途中を示したシートの正面図である。図9は、(a)が断熱部材の正面図であり、(b)が断熱部材の平面図である。図10は、気化室内部を示した断面図である。図11は、図2の燃焼装置の流路形成部材周辺の分解斜視図である。図12は、炎孔ベースを下側から見た図である。図13は、炎孔ベース、炎孔部材、網状部材、保炎部材を示した分解斜視図である。図14は、炎孔ベースを上から見た状態で示した斜視図である。図15(a)は、ハウジング内部を図示した分解斜視図であり、(b)はハウジング周辺を示した一部断面図である。図10は、炎孔板を下側から見た図である。図11は、網状部材を下側から見た図である。図12は、保炎部材を下側から見た図である。図13は、炎孔板、網状部材、保炎部材を重ねた状態で下側から見た図である。
【0024】
本発明の第1の実施形態における気化式燃焼装置1は、図1に示されるように、給湯器21に内蔵されるものである。そして、気化式燃焼装置1は、熱交換器19が内蔵された缶体4の上部に設置されており、下部の熱交換器19に向かって火炎を発生させ、発生した燃焼熱を熱交換器19へ供給する。
そして、気化式燃焼装置1は、図2、図3に示されるように、上から送風機2、駆動機械部3、空気量調節部5、混合部6及び燃焼部7が順次積み重ねられて作られたものである。また、混合部6及び燃焼部7の近傍に気化部8が設けられ、空気量調節部5と気化部8の間は、流路形成部材70によって接続されている。
【0025】
気化式燃焼装置1は、液体燃料を気化させて燃料ガスを生成させ、この燃焼ガスは、後述する燃焼ガス通過部を通過して、炎孔72から噴出させて燃焼させるものである。そして、この液体燃料の気化は気化部8で行われる。
気化部8は、気化室60と、ロータリーカップ63及び1次空気供給筒88によって構成されている。
【0026】
気化室60は、図3〜図6に示されるように底部91と筒部92を持つものであり、底部91は閉塞し、上部は開口60aが設けられる。底部91は円板状であり、筒部92は円筒状である。そして、気化室60の全体形状は、コップの様な形状であり、底部91及び筒部92は閉塞していて気密・水密性を持ち、上部は開放されている。
気化室60の材質はアルミ合金でありダイカスト成形によって成形される。
【0027】
また、気化室60の筒部92の底部91とは反対側に開口60aが設けられ、筒部92の先端に縁部140を有している。縁部140は環状の平面部分であり、後述する炎孔ベース36との固定の際に密着面となるものである。そして、炎孔ベース36と気化室60との固定は、筒部92の開口60aが炎孔ベース36の中央の開口82となるように取り付けられ、また、炎孔ベース36と縁部140との間に断熱部材130を挟んだ状態で行われる。なお、この断熱部材130は、後述するように炎孔ベース36と気化室60との伝熱性を低くする機能だけでなく、燃料ガスなどの気体の漏れを防ぐパッキンとしても機能する。
【0028】
気化室60の縁部140付近には、図6、図7に示されるように、テーパー部140aが設けられている。テーパー部140aは、筒部92の先端付近に位置しており、筒部の先端側(縁部140側)の厚みが小さくなっている。
そのため、図7(b)に示されるように、縁部140の幅L1は、テーパー部140aが設けられていない筒部92の厚みL2よりも短くなっており、縁部140の面積は、筒部92の、筒部の軸方向に垂直な面における断面積よりも小さくなっている。そして、厚みL2に対する幅L1の値(言い換えると、筒部92の断面積に対する縁部140の面積)の好ましい範囲は、30%以上80%以下である。そして、この値が30%よりも小さいと、縁部140の幅L1が小さくなりすぎて鋭角状となり、断熱部材130を破損させるおそれがあり、また、80%より大きいと、後述する伝熱性の低減の効果が小さい。
本実施形態の幅L1は、2.5mmであり、筒部92の厚みL2は3.5mmであり、厚みL2に対する幅L1は71%である。
【0029】
気化室60の筒部92と底部91とが接続する付近には、図3、図5、図6に示すように、電気ヒータ64が内蔵されている。即ち気化室60の底部91は加熱機能を持つ。電気ヒータ64に通電することにより、気化室60を加熱することができる。また、筒部92の外周にはフィン145が設けられ、筒部92の開口60a側には突出部141が設けられている。突出部141には、貫通孔141aとセンサー用穴146が形成されている。
【0030】
また、気化室60の表面には塗装処理がされている。この塗装処理は塗料をスプレーなどで塗布した後に硬化させ、薄膜の塗装皮膜を形成するものである。そして、この塗装処理を行う場所は、気化室60の内面及び縁部140であり、かかる部分に塗装皮膜が形成される。
この塗装処理に用いる塗料はガラスビーズを含むものであり、塗装皮膜は断熱性を有している。また塗装処理がされると、このガラスビーズによって表面には細かな凹凸が形成される。そのため、気化室60の縁部140と炎孔ベース36との間に、断熱部材130を挟んで固定した場合に、この塗装被膜と断熱部材130の表面が接触し、塗装被膜の細かな凹凸によって密着が不十分となる部分ができ、縁部140と断熱部材130との間の熱伝導性が低下する。なお、この凹凸は細かいので、塗装皮膜と断熱部材130との間のシール性を確保することができる。
【0031】
また、図7に示されるように、断熱部材130は複数のシートを重ねて形成した積層構造であり、本実施形態では2枚のシートを用いた2層構造である。そして、断熱部材130は同じ形状・材質の2枚のシート130a、130bにより構成されている。断熱部材130は複数のシートを重ねて形成したものであるので、積層面で伝熱性が低下し、断熱部材130自体の熱伝導性が低下する。
【0032】
断熱部材130の形状は、後述する炎孔ベース36の中央領域136aの形状に合わせて製作されている。すなわち、図5に示されるように、断熱部材130の外形は中央領域136aの外形とほぼ同じで長方形状であり、また、炎孔ベース36の中央領域136aに設けられた開口82の位置に合わせて断熱部材130に開口133が、炎孔ベース36の開口170、171の位置に合わせて断熱部材130に開口134が設けられている。そして、炎孔ベース36の下面側(炎孔側)に突出するように設けられた内側壁43、59に合わせて切り欠き部139が設けられている。
また、断熱部材130の角の部分にはネジ用開口135が設けられている。
【0033】
断熱部材130を構成するシート130a、130bの材質は、ロックウールから製造されたロックウールペーパーと呼ばれるものである。そして、このロックウールペーパーを適当な型で抜いて切断し、上記のような形状にすることでシート130a、130bが製作される。
【0034】
断熱部材130はシート130a、130bの2枚で構成され、これらを重ね合わせて使用される。そして、気化室60と炎孔ベース36との間に挟む際に、2枚がばらばらの状態のシート130a、130bを用いてもよいが、あらかじめシート130a、130bの間に部分的に接着剤を塗布し、互いに他方のシート130b、130a側の面である積層面同士を接着した断熱部材130を用いることができる。
【0035】
このように、シート130a、130bを接着した断熱部材130を用いる場合、以下に示すような方法によって断熱部材130を製作することができる。図8(a)に示されるように、所定の形状に切断する前のシート130a、130bに部分的に接着剤を塗布し、これらを接着する。具体的には、接着部分143と非接着部分144とが縞状となるように行われており、接着剤には有機成分が主成分の接着剤が用いられている。そして、所定の形状の型で打ち抜いて切断し、図9に示されるような断熱部材130が製作される。
また、図8(a)の他の例として、図8(b)に示すように、接着部分143を小さな点状として、全体に接着部分143を配置しても良い。この場合には、接着部分143の面積が小さくなり、密着部分の面積を小さくすることができるので、伝熱性をより低下させることができる。
【0036】
このように、あらかじめ、シート130a、130b同士が固定された断熱部材130を用いた場合には、気化式燃焼装置1を製作する場合に、シート130a、130bの枚数を間違えることがなく、断熱部材130を間違いなく組み付けることができる。また1回の切断作業で、2枚のシート130a、130bを切断をすることができ、作業性がよい。
また、この接着剤は有機成分が主成分の接着剤が用いられているので、気化式燃焼装置1を使用すると接着剤が分解されるなどしてなくなり、シート130a、130b同士の密着の部分が減少し、伝熱性を低下させることができる。
【0037】
なお、断熱部材130のシート130a、130bは、他の材質のシート、例えば、セラミック製のシートやガラス製のシートを採用することができる。また、断熱部材130は3枚以上のシートを重ねて、3層以上の層構造であってもよい。例えば、上記した断熱部材130のシート130a、130bの一方を、ステンレス板や金網とした2層構造のものや、上記した断熱部材130のシート130a、130bとの間に、ステンレス板や金網を間に挟んで3層構造としたものを採用することができる。
【0038】
気化室60は断熱部材130を挟んだ状態で炎孔ベース36に固定されるが、この固定は、気化室60に設けられる突出部141に有する貫通孔141aと、断熱部材130のネジ用開口135とに図示しないボルトを挿入して、このボルトを炎孔ベース36の中央領域136aの角付近に設けられたネジ穴142に締結して行われる。
【0039】
そして、気化室60は、図5、図12に示すように、炎孔ベース36の内側壁43、59に囲まれた部位であって炎孔ベース36の中央領域36aに位置することになる。また気化室60の大部分は、燃焼部7側に露出する。より具体的には、気化室60の底部91の全部と、筒部92の大部分が燃焼部7側に露出する。従って後記する様に燃焼時には炎孔72から発生する火炎により、気化室60が外側から加熱される。
【0040】
ロータリーカップ63は、図4、図10に示されるように、気化室60内に配置される回転体であり、後述するように、モータ16に接続する回転軸18と接続して、モータ16の回転によってロータリーカップ63が回転する。
【0041】
また、炎孔ベース36の1次空気供給筒88の最先端(下側)の開口部の位置は、気化室60の内部に位置する。また、1次空気供給筒88の内部には、流路形成部材70から垂下された燃料パイプ79が挿入され、燃料パイプ79はロータリーカップ63付近に至っている。
【0042】
そして、燃料パイプ79によって液体燃料が気化室60内へ供給され、液体燃料が気化して燃料ガスが生成し、この燃料ガスが1次空気と混合して炎孔72から噴出して燃焼が行われる。
この燃焼のための詳細な構造についてさらに説明する。
【0043】
上記したように、気化式燃焼装置1には、気化部8以外に、送風機2、駆動機械部3、空気量調節部5、混合部6及び燃焼部7が設けられている。
送風機2は、鋼板を曲げ加工して作られた凹状のハウジング10の中にファン11が回転可能に配されたものである。ハウジング10の中央部には、開口12が設けられている。
【0044】
駆動機械部3は、図2、図3に示されるように、箱体13を有し、その天板15の中央にモータ16が取り付けられている。モータ16は、両端部から回転軸17、18が突出しており、回転軸17、18は、気化式燃焼装置1の略全長を貫通している。そして、モータ16の上方側の回転軸17は、ファン11に接続され、下方側の回転軸18は、気化部8のロータリーカップ63に接続されている。また、駆動機械部3には、温度センサー32が設けられている。
【0045】
空気量調節部5は、図4の様に移動側板状部材23と固定側板状部材22によって構成されている。移動側板状部材23は、円板状をしており、中央に軸挿通孔25が設けられている。そして、その周囲に空気孔となる開口26、27が設けられている。空気孔となる開口26、27は、概ね内外二重のエリアに分かれて設けられている。
【0046】
固定側板状部材22には、前記した移動側板状部材23と略同一形状の開口が設けられている。即ち空気量調節部5の固定側板状部材22には、中央に軸挿通孔25’が設けられ、その周囲に空気孔となる開口26’、27’が二重のエリアに分かれて設けられている。
また、固定側板状部材22の他の部位には、図11に示すように、多数の小孔31が設けられている。小孔31が設けられた位置は、固定側板状部材22の上に移動側板状部材23を重ねた時に、両者が重複しない部位である。即ち小孔31は、固定側板状部材22のはみ出し部分に設けられている。なお、図4においては、小孔31の図示を省略している。
【0047】
空気量調節部5は、固定側板状部材22の上に移動側板状部材23が重ねられ、空気量調節部5は全体として平面的である。
また、移動側板状部材23は、固定側板状部材22の上にあり、中央の軸挿通孔25を中心として相対的に回転可能である。そして、図2、3に示すように、外付けされたモータ121を回転させることによって、移動側板状部材23を、固定側板状部材22の上で中央に軸挿通孔25を中心として相対的に回転させることができる。移動側板状部材23の回転により、移動側板状部材23と固定側板状部材22を連通する開口の面積を変化させて、燃焼量に応じた空気の供給を行う。
【0048】
流路形成部材70は、薄板を曲げて作られたものであり、図3、図4、図5の様に円盤形をしている。そして、上部側は全面が開放されて開口54が設けられ、下部側はその中央部分に開口54よりも小さい開口83が設けられている。流路形成部材70の内部は空洞であり、上下に連通している。即ち流路形成部材70は、前記した様に上部と下部に開口54、83を持ち、両者は連通している。
【0049】
流路形成部材70の内側には、燃料パイプ(燃料供給管)79が固定され、燃料パイプ79は、図4の様に上部の開口54側から流路形成部材70の内部に入っている。
【0050】
混合部6、燃焼部7及び気化部8は、炎孔ベース36を中心として構成され、これに二つの分流部材(面状部材)35、39、断熱パッキン115、気化室60、炎孔部材51、網状部材77、保炎部材78及び補助加熱ヒータ109が設けられて製作される。そしてこれらの構成部品はハウジング122内に収納されている。
【0051】
第1分流部材35及び第2分流部材39は、ステンレスで作られた板状の部材であり、第1分流部材35と第2分流部材39との間に断熱パッキン115が設けられて層状となっている。
そして、図4に示すように、第1分流部材35、第2分流部材39及び断熱パッキン115には積層状態で貫通する貫通孔37、40、89が設けられている。
【0052】
貫通孔37は、中央付近に設けられる。また、貫通孔40は、貫通孔37の周囲に配置されている。そして、図15(a)に示すように、貫通孔40は、貫通孔160の位置にあわせて形成されており、炎孔ベース36に取り付けられると、後述するように、貫通孔40を通過した空気は貫通孔160を通って、2次空気孔71から出る。また、貫通孔89は、炎孔ベース36の外側を流れる空気流路103とつながって、3次空気が流れる。
【0053】
補助加熱ヒータ109は、図4 図11の様にリング状の本体部117を有し、その内部に「U」字状の電気ヒータ137が鋳込まれている。
【0054】
そして、固定側板状部材22と流路形成部材70との間に環状のパッキン80が設けられている。このパッキン80により、固定側板状部材22の開口26’と、流路形成部材70の上部の開口54との間の流路に流れる気体の漏れを防いでいる。
また、第1分流部材35と流路形成部材70との間に環状のパッキン81が設けられている。そして、このパッキン81により、貫通孔37と、流路形成部材70の下部の開口83との間の流路に流れる気体の漏れを防いでいる。
そして、開口26’から入った空気が流路形成部材70内に流れて、さらに、第1分流部材35の下方に流れる。なお、これらのパッキン80、81は、断熱性に優れ、且つ灯油等の液体燃料がしみ込まないものが望ましい。具体的に、パッキンの素材には、シリコーンが採用されている。
【0055】
炎孔ベース36は、図12に示されるように、アルミダイカストによって作られた板状の部材であり、長辺36a及び短辺36bを有する長方形状である。また、炎孔ベース36は、中央領域136aと、中央領域136aの周囲に配置する周辺領域136bとを有している。
中央領域136aの外形は長方形状であり、周辺領域136bの外形も長方形状であり、周辺領域136bの中央付近に中央領域136aが位置している。
【0056】
中央領域136aには1次空気供給筒88が配置される開口82と、気化室60に設けられた電気ヒータ64や、センサーのリード線を引き出すために用いられる開口170、171が設けられている。また、中央領域136aと周辺領域136bとの境界付近に内側壁43、59が設けられている。そして、周辺領域136bには、後述するように、複雑な枠組と開口及び溝が設けられている。
【0057】
開口82は炎孔ベース36のほぼ中央に位置しており、開口82の内部には8本のリブ66が設けられて、その中央に1次空気供給筒88が支持されている。1次空気供給筒88は内径が一定の筒体である。
【0058】
内側壁43は、図13に示されるように、炎孔ベース36の長辺36aに沿っており、下面側(炎孔部材取付け面側)に突出する平板状の壁である。
【0059】
内側壁59は、炎孔ベース36の下面側(炎孔部材取付け面側)であって、炎孔ベース36の短辺36bに沿う方向に延びるものである。内側壁59は、図12、図13の様にブロック状をしていて凹凸がある。即ち内側壁59は、略四角形の突出部材が一列に並んで壁状を構成している。
【0060】
炎孔ベース36の周辺領域136bには、多数の貫通孔160と多数の溝部161が設けられ、2次空気通過部及び燃料ガス通過部を形成する。
貫通孔160は、炎孔ベース36の厚み方向(上下方向)に貫通するものであり、図14に示されるように上面側に開口58が形成され、図13に示されるように下面側に開口160bが形成される。また、貫通孔160は、長辺36a方向に長い長孔状であり、長辺36aに沿う方向に並んで列状となっており、さらにこの列が複数列設けられている。そして、貫通孔160は2次空気が通過するものであり、2次空気通過部となる。
なお、貫通孔160同士の間には、下面側に開口するネジ穴164が設けられ、網状部材77、炎孔部材51、保炎部材78の固定に用いられる。
【0061】
溝部161は長辺36a方向に延びる溝であり、下面側に開口161aが設けられている。そして、溝部161は、長辺36a方向に並んで列状となり、複数列設けられた貫通孔160の列間に配置されている。そして、列状の貫通孔160と、列状の溝部161とが交互に並んでいる。
【0062】
そして、図12、図14の矢印に示されるように、気化室60から、1次空気供給筒88の外側のリブ66同士の間を通過し、さらに、開放部50から溝部161に至る流路が形成されて燃料ガス通過部となり、気化室60で生成する燃料ガスは燃料ガス通過部を通過することにより溝部161へ流れることが可能となっている。
【0063】
溝部161及び貫通孔160は上記のように構成されているので、溝部161によって形成される流路(燃料ガス通過部)と、貫通孔160によって形成される流路(2次空気通過部)とは、合流せず別の流路となる。
【0064】
次に炎孔部材51について説明する。図13のように、炎孔部材51は板状の部材であり、十字状に4分割されて4枚の構成板51aを有している。
そして、全体を合わせた形状は、炎孔ベース36の周辺領域136bの形状にほぼ等しい形状であり、中央には、気化室60用の開口76が形成される。
【0065】
また、炎孔部材51には、2次空気孔71、炎孔72、取付孔150が設けられている。2次空気孔71には、丸孔71aと長孔71bとが設けられている。そして、後述する保炎部材78が重ねられると、長孔71bの上に保炎部材78の丸孔67が配置して、炎孔部材51の丸孔71aと、保炎部材78の丸孔67とにより、後述する空気孔列bを形成する。そして、2次空気孔71は、2次空気が通過する孔である。
炎孔72は丸孔であり、2次空気孔71の丸孔71aや保炎部材78の丸孔67と比べて内径が小さい。そして、炎孔72は燃料ガスが通過する孔である。
【0066】
図13に示されるように、2次空気孔71は、長辺36a方向に並んで列状となって空気孔列bが形成される。さらに、この空気孔列bが複数設けられ、すべての列は同じ方向に向いている。一方、炎孔72は、長辺36a方向に2列に並べられて、炎孔列aを形成している。そして、炎孔列aの各炎孔72は、その位置が配列方向に対して交互にずれており、千鳥状となっている。また、炎孔72が2列に設けられた炎孔列aと、前記した空気孔列bと互い違いに配されている。
【0067】
そして、炎孔ベース36の長辺36aと中央領域136aとの間には、両側にそれぞれ2本の炎孔列aと3本の空気孔列bが位置することになる。この内、中央領域136a寄り、すなわち、気化部8に近い両側各1本の炎孔列aには炎孔72が設けられない炎孔不形成部138を有している。
【0068】
さらに、炎孔部材51には、外側壁41が設けられている。外側壁41は、板状であり、各炎孔部材51の長辺36a付近に配置されており、下側に向かって折り曲げられ形成される。
【0069】
また、炎孔部材51の取付孔150は空気孔列bに所定の間隔で配置しており、取付孔150の位置は、炎孔ベース36のネジ穴164に対応している。
【0070】
網状部材77は、図13に示されており、細い金属糸で網目状に構成したもので、前記した炎孔部材51と略同一の面積を持つものであり、略長方形をしている。網状部材77には、前記した炎孔部材51の気化室用の開口76に相当する部位に開口69aが設けられている。さらに炎孔ベース36のネジ穴164に対応する部位に取付部151が設けられている。取付部151は貫通孔151aや切り欠き151bからなるものである。
本実施形態では、網状部材77はエキスパンドメタルが使用される。
【0071】
保炎部材78は枠状の部材であり、2分割された2枚の構成板78aによって形成されており、これら2枚の構成板78aを組合わせて使用する。
また、合わせられた保炎部材78の全体の形状は、炎孔ベース36の周辺領域136bの内外の縁に沿う部分を有している。そして、保炎部材78と炎孔ベース36との間に炎孔部材51や網状部材77を挟んでネジ止めしたときに、炎孔部材51や網状部材77の保持を確実に行うことができる。また、保炎部材78の全体の外形は長方形状であり、前記した炎孔部材51及び網状部材77と同様に中央に開口68が設けられている。
【0072】
保炎部材78には、列状に並んだ丸孔67と、取付孔152が設けられ、さらに、外側壁41aが設けられている。
丸孔67は、図13に示されるように、上記した炎孔部材51の長孔71bや切り欠き167aに対応する位置に設けられており、空気孔列bの一部となる。また、取付孔152は円形の貫通孔であり、図示しないボルトを、炎孔部材51の取付孔150、及び、網状部材77の取付部151に挿通して、当該ボルトを炎孔ベース36のネジ穴164に固定し、保炎部材78、炎孔部材51、網状部材77を炎孔ベース36の下面に取り付けてこれらを一体化する。そして、炎孔ベース36に網状部材77が接し、さらにそれに重ねて炎孔部材51が配され、最後に保炎部材78が設けられる。
【0073】
外側壁41aは、保炎部材78の外周であって、炎孔ベース36の縁付近に位置しており、短辺36bに沿うように設けられている。そして、外側壁41aは平板状であり、炎孔ベース36の縁である短辺36bに設けられ、下向き、すなわち、炎孔ベース36を基準として炎孔部材51側に突出するように折り曲げられた壁である。
【0074】
また、保炎部材78の2枚の構成板78aの短辺36bが合わさって、全体の短辺36bが形成されるが、外側壁41aは保炎部材78の合わせ部分が欠落しており、欠落部127が形成される。そして、この欠落部127から点火プラグ132が挿入され、点火プラグ132の点火線131の先端から電気火花を飛ばして、着火が行われる。
点火プラグ132は短辺36b側から挿入されており、中央領域136aを挟んで対向する位置付近に2ヵ所に設けられている。そのため、着火に要する時間をより短縮し、低温下でも点火性能を向上させることができる。
【0075】
炎孔部材51の空気孔列bは、炎孔ベース36の貫通孔160の下側に位置している。そして、図14に示す貫通孔160の上面側の開口58から入った空気が、下面側の開口160bを経て、炎孔部材51の丸孔71aや保炎部材78の丸孔67から出る。なお、炎孔ベース36と炎孔部材51との間に、網状部材77が設けられているので、上記の空気は網状部材77を通過する。
【0076】
また、炎孔部材51の炎孔列aは、炎孔ベース36の溝部161の下側に位置している。そして、後述するように、気化部8で気化した燃料ガス及び1次空気が溝部161を通過して、炎孔72から出る。
【0077】
図15(a)のように、炎孔ベース36、炎孔部材51、網状部材77、保炎部材78は四角形の箱であるハウジング122内に配置されている。また、ハウジング122は内部材122a及び外部材122bを有する2重構造となっており、内部材122aと外部材122bとの間には、3次空気が流れる空気流路103が形成されている。
【0078】
また、内部材122aには、点火プラグ挿入口124aと貫通孔169とが設けられている。外部材122bには点火プラグ挿入口124bが設けられている。そして、点火プラグ132は、外部材122bの点火プラグ挿入口124b、内部材122aの点火プラグ挿入口124a及び欠落部127に挿入される。
そして、貫通孔169の位置は、図15(b)に示されるように、外側壁41a付近に設けられ、貫通孔89から入って、貫通孔169から出る3次空気は、外側壁41aによって向きを変え、その流れを下向きに誘導する。
【0079】
また、折り曲げ部165が設けられているので、貫通孔169から出た3次空気は、欠落部127に向かって流れず、3次空気が欠落部127から内側に流入することを阻止することができる。
【0080】
本実施形態の気化式燃焼装置1を使用する場合、気化室60の筒部92に内蔵された電気ヒータ64に通電して発熱させ、また、モータ16を起動する。そうすると、気化室60の内壁全体が昇温し、また、ファン11とロータリーカップ63が回転する。
さらに補助加熱ヒータ109に通電し、1次空気供給筒88及び第2分流部材39の一部を加熱する。ファン11の回転により、図3の矢印の様に送風機2のハウジング10の中央部に設けられた開口12から空気が吸い込まれ、空気は駆動機械部3に入る。そして空気は、駆動機械部3から下部の空気量調節部5を経て混合部6側に流れるが、本実施形態の気化式燃焼装置1では、空気量調節部5の開口26、26’27、27’の重なりを調節して流量調整される。
【0081】
空気量調節部5を通過した空気は、二つの方向に別れて下流側に流れる。即ち中心部のエリアを通過した空気は、直接的に円盤状の流路形成部材70に捕捉され、これと連通する1次空気供給筒88から気化室60の中に1次空気として送風される。ここで本実施形態の気化式燃焼装置1では、流路形成部材70は、空気量調節部5側の開口54が気化部8側の開口83に比べて大きいから、大量の空気が流路形成部材70に取り込まれ、気化部8側に送られることとなる。また本実施形態では、1次空気供給筒88の下端部に補助加熱ヒータ109が設けられているので、気化部8に送られる空気が昇温される。
【0082】
また送風の他の一部は、貫通孔40から炎孔ベース36の貫通孔160を通過して、空気孔列bから出て、燃焼部7に2次空気が供給される。
【0083】
さらに第1分流部材35の外側のエリアに設けられた貫通孔89を通過した送風は、炎孔ベース36の外周部を流れて3次空気として供給される。そして、第1分流部材35の外側の貫通孔89を通過した3次空気は、ハウジング122の外部材122bの内側に形成される空気流路103を流れる。
【0084】
そして送風機2の送風により、上記した様に気化部8内に大量に1次空気が供給され、気化室60を通風雰囲気とする。
図4に示すように、燃料パイプ79から灯油をロータリーカップ63内に滴下し、滴下された灯油は、ロータリーカップ63から遠心力を受けて飛散し、飛散した灯油は、ロータリーカップ63の周囲に配された気化室60の内面に接触し、熱を受けて気化する。また灯油の一部は気化室60の底部91に落下し、気化室60の底部91に接触し、気化室60の電気ヒータ64の熱によって気化する。
【0085】
本実施形態の気化式燃焼装置1では、断熱部材130が複数のシート130a、130bを重ねて製作されたものであるので、積層面で伝熱性が低下して断熱部材130自体の熱伝導率が低くなっている。また、気化室60の縁部140にテーパー部140aが設けられているので縁部140の面積が小さく、縁部140に塗装がなされているので、断熱部材130と気化室60との間の伝熱性が低い。したがって、気化室60から炎孔ベース36へ放熱される熱量を小さくなり、エネルギーロスが小さく温度上昇が早い。
そしてロータリーカップ63の内面に設けられた羽根部99によって気化室60内の空気が攪拌され、気化室60で気化した燃料ガスと1次空気との混合が促進される。
【0086】
こうして気化部8で生成した燃料ガスと1次空気とが混合した混合気体は、図14の矢印の様に、ロータリーカップ63の外壁と気化室60の周壁92によって形成される空隙94を流れて下流に向かう。
【0087】
即ち燃料ガスと1次空気の混合気体は、気化室60の円筒状の周壁92に沿って流れ、さらに1次空気供給筒88に沿って流れる。ここで本実施形態の気化式燃焼装置1では、補助加熱ヒータ109が設けられ、1次空気供給筒88が加熱・保温されている。そのため燃料ガスは、1次空気供給筒88と接しても熱を奪われることはない。
【0088】
こうして流路形成部材70から1次空気供給筒88を介して気化室60の内部に供給された1次空気は、気化した燃料と混合され、高温状態となって気化室60の上部の開口60aから出る。そして気化室60を出た燃料ガスと1次空気の混合気体は、1次空気供給筒88の外側を流れ、一旦炎孔ベース36の上部側の通路に流れ込む。
【0089】
続いてこの混合気体は、図14の様に開放部50から溝部161に流れ込み、下部に設けられた炎孔72から出る。開放部50は、中央領域136aと周辺領域136bとの境界付近に設けられており、中央領域136aの外形は長方形状であるので、開放部50の配置は長方形の4辺上に点在して、中央領域136aを取り囲むような配置となっている。
【0090】
本実施形態では、炎孔部材51に網状部材77が積層されているので、燃料ガスは、炎孔部材51から出る直前に網状部材77によって攪拌される。
一方、他の部位から下流側に流れた空気は、燃料ガスと混合されることなく、直接燃焼部7側に流れ込み、2次空気として燃焼に寄与する。即ち2次空気は、貫通孔160を通過して、丸孔71a、67から炎孔72の周囲に供給される。
【0091】
そして、点火プラグ132を用いて着火し、燃焼を開始する。
点火プラグ132は、中央領域136aを挟んで2ヵ所に設けられているので、両側から火が回って全面で火炎が発生する。
【0092】
燃焼ガスの燃焼によって発生した熱は、熱交換器19内の水を加熱して、給湯を行なわれる。またこの熱の一部は、気化室60へ伝熱し、液体燃料の気化のために用いられる。なお、気化室60と炎孔ベース36との間の伝熱性は低くなっているが、必要な熱量の伝熱は確保されているので、液体燃料を気化させて燃料ガスを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の燃焼装置を内蔵する給湯器の正面図である。
【図2】本発明の実施形態の燃焼装置の正面図である。
【図3】本発明の実施形態の燃焼装置の断面図である。
【図4】本発明の実施形態の燃焼装置の全体の分解斜視図である。
【図5】炎孔ベース、断熱部材、気化室を下から見た状態で示した分解斜視図である。
【図6】気化室を上から見た状態で示した斜視図である。
【図7】(a)は断熱部材、気化室の断面図であり、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図8】(a)は断熱部材を製作する途中を示したシートの正面図であり、(b)は、(a)の変形例を示したシートの正面図である。
【図9】(a)は断熱部材の正面図であり、(b)は断熱部材の平面図である。
【図10】気化室内部を示した断面図である。
【図11】図2の燃焼装置の流路形成部材周辺の分解斜視図である。
【図12】炎孔ベースを下側から見た図である。
【図13】炎孔ベース、炎孔部材、網状部材、保炎部材を示した分解斜視図である。
【図14】炎孔ベースを上から見た状態で示した斜視図である。
【図15】(a)は、ハウジング内部を図示した分解斜視図であり、(b)はハウジング周辺を示した一部断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 気化式燃焼装置
8 気化部
36 炎孔ベース
51 炎孔部材
60 気化室
64 電気ヒータ
92 筒部
130 断熱部材
130a、130b シート
140 縁部
【技術分野】
【0001】
本発明は気化式燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、給湯器や暖房機等に、燃料を燃焼させてその熱を使用する燃焼装置が用いられている。中でも、比較的発熱量が小さい用途に使用する場合、気化器によって液体燃料を気化し、この気化された燃料ガスを燃焼部に送って燃焼させる形式のものが用いられている。
【0003】
そして、このような気化式燃焼装置では、運転の初めには電気ヒータ等を用いて気化室を加熱し、燃焼が始まると燃焼による熱も気化室の加熱に利用して、気化室を高温状態として液体燃料を気化させて燃料ガスを発生させる。さらに、この燃料ガスは炎孔ベースに形成された流路を通過して、炎孔から噴出させることによって燃焼が行われる。
【0004】
燃焼が行われている時の、気化室側への伝熱は、主に気化室と炎孔ベースとの間の密着面から供給される。通常、気化室の密着面側の端部は筒状であり、密着面は周状であって内側が気化室内につながっている。そして、この密着面には、耐熱性のパッキンが設けられており、燃料ガスが密着面から漏れることを防いでいる。
【0005】
燃焼開始の際に気化室を高温状態とする際、放熱をできるだけ少なくして、エネルギーロスを小さくし、短時間で所定の温度に加熱することが望ましい。
そのため、特許文献1などに記載されているように、気化室の内面などに底熱伝導性材料をコーティングして放熱を少なくする技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−106809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、気化式燃焼装置の改良がなされており、例えば、炎孔ベースや気化室がより小型化されて全体の熱容量が小さくなっており、また、気化室で発生した燃料ガスが炎孔に至るまでの間の燃料ガスの温度低下が小さい構造にして、気化室の温度をより低い設定としている。
このような改良により、燃焼時に気化室へ伝熱される燃焼熱の熱量が小さくても、液体燃料を気化させて燃焼させることができる。そこで、気化室と炎孔ベースとの間の伝熱性をある程度低くすることにより、燃焼時の熱の供給を確保しつつ、燃焼開始の際の炎孔ベースへの放熱を低減することが可能である。
【0007】
しかしながら、気化室と炎孔ベースとの間の伝熱性を適度な範囲で低くすることは難しいものであった。
例えば、単に、従来より用いられた断熱材よりも厚い断熱材を用いて伝熱性を低減させる方法では放熱低減の効果が小さく、また断熱材を厚くすることには限界がある。また、気化室の密着面側の端部の筒状部分の厚みを全体的に薄くして、気化室と炎孔ベースとの間の密着面の周方向の幅を短くし、密着面の面積を小さくして伝熱性を低減させる方法が考えられる。しかしながら、気化室の強度の低下が懸念され、また、気化室の熱容量が小さくなりすぎて気化室の温度変化が大きくなりすぎてしまうおそれもある。
【0008】
このような気化式燃焼装置を給湯器に用いる場合には、このような放熱を低減させることが特に必要であった。すなわち、給湯器では、運転中、常に燃焼させるものではなく、給湯の必要な時にのみ燃焼させるので、燃焼が一旦停止した後、次の燃焼までの間に気化室の熱が放熱して温度が低下し、ヒータによって気化室を加熱することが必要である場合がある。また、給湯の要求があった場合にはできるだけ早く燃焼させる必要があるので、給湯器のスイッチが入って運転準備の状態になっている場合には、気化室の温度をある程度の温度以上に維持する必要があり、この間にも気化室の熱が放熱し、エネルギーのロスにつながる。
【0009】
そこで、本発明は、気化室と炎孔ベースとの間の伝熱性を低減して、エネルギーロスを小さくすることが可能な気化式燃焼装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、前記断熱部材は2枚以上のシートが重ねられたものが用いられていることを特徴とする気化式燃焼装置である。
【0011】
請求項1に記載の気化式燃焼装置によれば、炎孔ベースと気化室との間に断熱部材が設けられ、前記断熱部材は2枚以上のシートが重ねられたものが用いられているので、積層部分で伝熱性が低下し、加熱ヒータによって気化室を加熱する場合のエネルギーロスを小さくすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、シート同士の積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した断熱部材が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の気化式燃焼装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、シート同士の積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した断熱部材が用いられているので、気化式燃焼装置を製作する場合、断熱部材の組み付けの際に、シートを重ねる数を間違えにくい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、断熱部材は、シートの積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した後に、所定の形状に切断して製造されるものであることを特徴とする請求項2に記載の気化式燃焼装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、断熱部材は、シートの積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した後に、所定の形状に切断して製造されるものであるので、断熱部材の製作がしやすい。
【0016】
請求項4に記載の発明は、液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、気化室には筒部が設けられ、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材を挟んだ状態で、炎孔ベースと気化室とを固定するものであり、気化室の筒部の縁部の面積は、筒部の軸方向に垂直な面での断面積よりも小さいことを特徴とする気化式燃焼装置である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材が挟まれており、気化室の筒部の縁部の面積は、筒部の軸方向に垂直な面での断面積よりも小さいものであるので、他の部分の形状を変更することなく、気化室と断熱部材の接触面積を小さくして、気化室と断熱部材との間の伝熱性を効率的に低減することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、気化室の筒部の先端付近の形状は先端に向かって断面積が小さくなる形状であることを特徴とする請求項4に記載の気化式燃焼装置である。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材が挟まれており、気化室の筒部の先端付近の形状は先端に向かって断面積が小さくなる形状であるので、気化室の筒部の先端を加工がしやすく、また、気化室と断熱部材との間の伝熱性を効率的に低減することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、気化室には筒部が設けられ、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材を挟んだ状態で、炎孔ベースと気化室とを固定するものであり、前記縁部にはガラスビーズを含む塗料で塗装処理がされていることを特徴とする気化式燃焼装置である。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、気化室の筒部の先端に位置する縁部にはガラスビーズを含む塗料で塗装処理がされているので、塗装皮膜に細かい凹凸が形成されて、密着が不十分となる部分ができ、気化室と断熱部材との間の伝熱性を効率的に低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の気化式燃焼装置は、気化室と炎孔ベースとの間の放熱を低減することができ、エネルギーロスが小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。図1は、本発明の燃焼装置を内蔵する給湯器の正面図である。図2は、本発明の実施形態の燃焼装置の正面図である。図3は、本発明の実施形態の燃焼装置の断面図である。図4は、本発明の実施形態の燃焼装置の全体の分解斜視図である。図5は、炎孔ベース、断熱部材、気化室を下から見た状態で示した分解斜視図である。図6は、気化室を上から見た状態で示した斜視図である。図7は、(a)が断熱部材、気化室の断面図であり、(b)が(a)の要部拡大図である。図8は、断熱部材を製作する途中を示したシートの正面図である。図9は、(a)が断熱部材の正面図であり、(b)が断熱部材の平面図である。図10は、気化室内部を示した断面図である。図11は、図2の燃焼装置の流路形成部材周辺の分解斜視図である。図12は、炎孔ベースを下側から見た図である。図13は、炎孔ベース、炎孔部材、網状部材、保炎部材を示した分解斜視図である。図14は、炎孔ベースを上から見た状態で示した斜視図である。図15(a)は、ハウジング内部を図示した分解斜視図であり、(b)はハウジング周辺を示した一部断面図である。図10は、炎孔板を下側から見た図である。図11は、網状部材を下側から見た図である。図12は、保炎部材を下側から見た図である。図13は、炎孔板、網状部材、保炎部材を重ねた状態で下側から見た図である。
【0024】
本発明の第1の実施形態における気化式燃焼装置1は、図1に示されるように、給湯器21に内蔵されるものである。そして、気化式燃焼装置1は、熱交換器19が内蔵された缶体4の上部に設置されており、下部の熱交換器19に向かって火炎を発生させ、発生した燃焼熱を熱交換器19へ供給する。
そして、気化式燃焼装置1は、図2、図3に示されるように、上から送風機2、駆動機械部3、空気量調節部5、混合部6及び燃焼部7が順次積み重ねられて作られたものである。また、混合部6及び燃焼部7の近傍に気化部8が設けられ、空気量調節部5と気化部8の間は、流路形成部材70によって接続されている。
【0025】
気化式燃焼装置1は、液体燃料を気化させて燃料ガスを生成させ、この燃焼ガスは、後述する燃焼ガス通過部を通過して、炎孔72から噴出させて燃焼させるものである。そして、この液体燃料の気化は気化部8で行われる。
気化部8は、気化室60と、ロータリーカップ63及び1次空気供給筒88によって構成されている。
【0026】
気化室60は、図3〜図6に示されるように底部91と筒部92を持つものであり、底部91は閉塞し、上部は開口60aが設けられる。底部91は円板状であり、筒部92は円筒状である。そして、気化室60の全体形状は、コップの様な形状であり、底部91及び筒部92は閉塞していて気密・水密性を持ち、上部は開放されている。
気化室60の材質はアルミ合金でありダイカスト成形によって成形される。
【0027】
また、気化室60の筒部92の底部91とは反対側に開口60aが設けられ、筒部92の先端に縁部140を有している。縁部140は環状の平面部分であり、後述する炎孔ベース36との固定の際に密着面となるものである。そして、炎孔ベース36と気化室60との固定は、筒部92の開口60aが炎孔ベース36の中央の開口82となるように取り付けられ、また、炎孔ベース36と縁部140との間に断熱部材130を挟んだ状態で行われる。なお、この断熱部材130は、後述するように炎孔ベース36と気化室60との伝熱性を低くする機能だけでなく、燃料ガスなどの気体の漏れを防ぐパッキンとしても機能する。
【0028】
気化室60の縁部140付近には、図6、図7に示されるように、テーパー部140aが設けられている。テーパー部140aは、筒部92の先端付近に位置しており、筒部の先端側(縁部140側)の厚みが小さくなっている。
そのため、図7(b)に示されるように、縁部140の幅L1は、テーパー部140aが設けられていない筒部92の厚みL2よりも短くなっており、縁部140の面積は、筒部92の、筒部の軸方向に垂直な面における断面積よりも小さくなっている。そして、厚みL2に対する幅L1の値(言い換えると、筒部92の断面積に対する縁部140の面積)の好ましい範囲は、30%以上80%以下である。そして、この値が30%よりも小さいと、縁部140の幅L1が小さくなりすぎて鋭角状となり、断熱部材130を破損させるおそれがあり、また、80%より大きいと、後述する伝熱性の低減の効果が小さい。
本実施形態の幅L1は、2.5mmであり、筒部92の厚みL2は3.5mmであり、厚みL2に対する幅L1は71%である。
【0029】
気化室60の筒部92と底部91とが接続する付近には、図3、図5、図6に示すように、電気ヒータ64が内蔵されている。即ち気化室60の底部91は加熱機能を持つ。電気ヒータ64に通電することにより、気化室60を加熱することができる。また、筒部92の外周にはフィン145が設けられ、筒部92の開口60a側には突出部141が設けられている。突出部141には、貫通孔141aとセンサー用穴146が形成されている。
【0030】
また、気化室60の表面には塗装処理がされている。この塗装処理は塗料をスプレーなどで塗布した後に硬化させ、薄膜の塗装皮膜を形成するものである。そして、この塗装処理を行う場所は、気化室60の内面及び縁部140であり、かかる部分に塗装皮膜が形成される。
この塗装処理に用いる塗料はガラスビーズを含むものであり、塗装皮膜は断熱性を有している。また塗装処理がされると、このガラスビーズによって表面には細かな凹凸が形成される。そのため、気化室60の縁部140と炎孔ベース36との間に、断熱部材130を挟んで固定した場合に、この塗装被膜と断熱部材130の表面が接触し、塗装被膜の細かな凹凸によって密着が不十分となる部分ができ、縁部140と断熱部材130との間の熱伝導性が低下する。なお、この凹凸は細かいので、塗装皮膜と断熱部材130との間のシール性を確保することができる。
【0031】
また、図7に示されるように、断熱部材130は複数のシートを重ねて形成した積層構造であり、本実施形態では2枚のシートを用いた2層構造である。そして、断熱部材130は同じ形状・材質の2枚のシート130a、130bにより構成されている。断熱部材130は複数のシートを重ねて形成したものであるので、積層面で伝熱性が低下し、断熱部材130自体の熱伝導性が低下する。
【0032】
断熱部材130の形状は、後述する炎孔ベース36の中央領域136aの形状に合わせて製作されている。すなわち、図5に示されるように、断熱部材130の外形は中央領域136aの外形とほぼ同じで長方形状であり、また、炎孔ベース36の中央領域136aに設けられた開口82の位置に合わせて断熱部材130に開口133が、炎孔ベース36の開口170、171の位置に合わせて断熱部材130に開口134が設けられている。そして、炎孔ベース36の下面側(炎孔側)に突出するように設けられた内側壁43、59に合わせて切り欠き部139が設けられている。
また、断熱部材130の角の部分にはネジ用開口135が設けられている。
【0033】
断熱部材130を構成するシート130a、130bの材質は、ロックウールから製造されたロックウールペーパーと呼ばれるものである。そして、このロックウールペーパーを適当な型で抜いて切断し、上記のような形状にすることでシート130a、130bが製作される。
【0034】
断熱部材130はシート130a、130bの2枚で構成され、これらを重ね合わせて使用される。そして、気化室60と炎孔ベース36との間に挟む際に、2枚がばらばらの状態のシート130a、130bを用いてもよいが、あらかじめシート130a、130bの間に部分的に接着剤を塗布し、互いに他方のシート130b、130a側の面である積層面同士を接着した断熱部材130を用いることができる。
【0035】
このように、シート130a、130bを接着した断熱部材130を用いる場合、以下に示すような方法によって断熱部材130を製作することができる。図8(a)に示されるように、所定の形状に切断する前のシート130a、130bに部分的に接着剤を塗布し、これらを接着する。具体的には、接着部分143と非接着部分144とが縞状となるように行われており、接着剤には有機成分が主成分の接着剤が用いられている。そして、所定の形状の型で打ち抜いて切断し、図9に示されるような断熱部材130が製作される。
また、図8(a)の他の例として、図8(b)に示すように、接着部分143を小さな点状として、全体に接着部分143を配置しても良い。この場合には、接着部分143の面積が小さくなり、密着部分の面積を小さくすることができるので、伝熱性をより低下させることができる。
【0036】
このように、あらかじめ、シート130a、130b同士が固定された断熱部材130を用いた場合には、気化式燃焼装置1を製作する場合に、シート130a、130bの枚数を間違えることがなく、断熱部材130を間違いなく組み付けることができる。また1回の切断作業で、2枚のシート130a、130bを切断をすることができ、作業性がよい。
また、この接着剤は有機成分が主成分の接着剤が用いられているので、気化式燃焼装置1を使用すると接着剤が分解されるなどしてなくなり、シート130a、130b同士の密着の部分が減少し、伝熱性を低下させることができる。
【0037】
なお、断熱部材130のシート130a、130bは、他の材質のシート、例えば、セラミック製のシートやガラス製のシートを採用することができる。また、断熱部材130は3枚以上のシートを重ねて、3層以上の層構造であってもよい。例えば、上記した断熱部材130のシート130a、130bの一方を、ステンレス板や金網とした2層構造のものや、上記した断熱部材130のシート130a、130bとの間に、ステンレス板や金網を間に挟んで3層構造としたものを採用することができる。
【0038】
気化室60は断熱部材130を挟んだ状態で炎孔ベース36に固定されるが、この固定は、気化室60に設けられる突出部141に有する貫通孔141aと、断熱部材130のネジ用開口135とに図示しないボルトを挿入して、このボルトを炎孔ベース36の中央領域136aの角付近に設けられたネジ穴142に締結して行われる。
【0039】
そして、気化室60は、図5、図12に示すように、炎孔ベース36の内側壁43、59に囲まれた部位であって炎孔ベース36の中央領域36aに位置することになる。また気化室60の大部分は、燃焼部7側に露出する。より具体的には、気化室60の底部91の全部と、筒部92の大部分が燃焼部7側に露出する。従って後記する様に燃焼時には炎孔72から発生する火炎により、気化室60が外側から加熱される。
【0040】
ロータリーカップ63は、図4、図10に示されるように、気化室60内に配置される回転体であり、後述するように、モータ16に接続する回転軸18と接続して、モータ16の回転によってロータリーカップ63が回転する。
【0041】
また、炎孔ベース36の1次空気供給筒88の最先端(下側)の開口部の位置は、気化室60の内部に位置する。また、1次空気供給筒88の内部には、流路形成部材70から垂下された燃料パイプ79が挿入され、燃料パイプ79はロータリーカップ63付近に至っている。
【0042】
そして、燃料パイプ79によって液体燃料が気化室60内へ供給され、液体燃料が気化して燃料ガスが生成し、この燃料ガスが1次空気と混合して炎孔72から噴出して燃焼が行われる。
この燃焼のための詳細な構造についてさらに説明する。
【0043】
上記したように、気化式燃焼装置1には、気化部8以外に、送風機2、駆動機械部3、空気量調節部5、混合部6及び燃焼部7が設けられている。
送風機2は、鋼板を曲げ加工して作られた凹状のハウジング10の中にファン11が回転可能に配されたものである。ハウジング10の中央部には、開口12が設けられている。
【0044】
駆動機械部3は、図2、図3に示されるように、箱体13を有し、その天板15の中央にモータ16が取り付けられている。モータ16は、両端部から回転軸17、18が突出しており、回転軸17、18は、気化式燃焼装置1の略全長を貫通している。そして、モータ16の上方側の回転軸17は、ファン11に接続され、下方側の回転軸18は、気化部8のロータリーカップ63に接続されている。また、駆動機械部3には、温度センサー32が設けられている。
【0045】
空気量調節部5は、図4の様に移動側板状部材23と固定側板状部材22によって構成されている。移動側板状部材23は、円板状をしており、中央に軸挿通孔25が設けられている。そして、その周囲に空気孔となる開口26、27が設けられている。空気孔となる開口26、27は、概ね内外二重のエリアに分かれて設けられている。
【0046】
固定側板状部材22には、前記した移動側板状部材23と略同一形状の開口が設けられている。即ち空気量調節部5の固定側板状部材22には、中央に軸挿通孔25’が設けられ、その周囲に空気孔となる開口26’、27’が二重のエリアに分かれて設けられている。
また、固定側板状部材22の他の部位には、図11に示すように、多数の小孔31が設けられている。小孔31が設けられた位置は、固定側板状部材22の上に移動側板状部材23を重ねた時に、両者が重複しない部位である。即ち小孔31は、固定側板状部材22のはみ出し部分に設けられている。なお、図4においては、小孔31の図示を省略している。
【0047】
空気量調節部5は、固定側板状部材22の上に移動側板状部材23が重ねられ、空気量調節部5は全体として平面的である。
また、移動側板状部材23は、固定側板状部材22の上にあり、中央の軸挿通孔25を中心として相対的に回転可能である。そして、図2、3に示すように、外付けされたモータ121を回転させることによって、移動側板状部材23を、固定側板状部材22の上で中央に軸挿通孔25を中心として相対的に回転させることができる。移動側板状部材23の回転により、移動側板状部材23と固定側板状部材22を連通する開口の面積を変化させて、燃焼量に応じた空気の供給を行う。
【0048】
流路形成部材70は、薄板を曲げて作られたものであり、図3、図4、図5の様に円盤形をしている。そして、上部側は全面が開放されて開口54が設けられ、下部側はその中央部分に開口54よりも小さい開口83が設けられている。流路形成部材70の内部は空洞であり、上下に連通している。即ち流路形成部材70は、前記した様に上部と下部に開口54、83を持ち、両者は連通している。
【0049】
流路形成部材70の内側には、燃料パイプ(燃料供給管)79が固定され、燃料パイプ79は、図4の様に上部の開口54側から流路形成部材70の内部に入っている。
【0050】
混合部6、燃焼部7及び気化部8は、炎孔ベース36を中心として構成され、これに二つの分流部材(面状部材)35、39、断熱パッキン115、気化室60、炎孔部材51、網状部材77、保炎部材78及び補助加熱ヒータ109が設けられて製作される。そしてこれらの構成部品はハウジング122内に収納されている。
【0051】
第1分流部材35及び第2分流部材39は、ステンレスで作られた板状の部材であり、第1分流部材35と第2分流部材39との間に断熱パッキン115が設けられて層状となっている。
そして、図4に示すように、第1分流部材35、第2分流部材39及び断熱パッキン115には積層状態で貫通する貫通孔37、40、89が設けられている。
【0052】
貫通孔37は、中央付近に設けられる。また、貫通孔40は、貫通孔37の周囲に配置されている。そして、図15(a)に示すように、貫通孔40は、貫通孔160の位置にあわせて形成されており、炎孔ベース36に取り付けられると、後述するように、貫通孔40を通過した空気は貫通孔160を通って、2次空気孔71から出る。また、貫通孔89は、炎孔ベース36の外側を流れる空気流路103とつながって、3次空気が流れる。
【0053】
補助加熱ヒータ109は、図4 図11の様にリング状の本体部117を有し、その内部に「U」字状の電気ヒータ137が鋳込まれている。
【0054】
そして、固定側板状部材22と流路形成部材70との間に環状のパッキン80が設けられている。このパッキン80により、固定側板状部材22の開口26’と、流路形成部材70の上部の開口54との間の流路に流れる気体の漏れを防いでいる。
また、第1分流部材35と流路形成部材70との間に環状のパッキン81が設けられている。そして、このパッキン81により、貫通孔37と、流路形成部材70の下部の開口83との間の流路に流れる気体の漏れを防いでいる。
そして、開口26’から入った空気が流路形成部材70内に流れて、さらに、第1分流部材35の下方に流れる。なお、これらのパッキン80、81は、断熱性に優れ、且つ灯油等の液体燃料がしみ込まないものが望ましい。具体的に、パッキンの素材には、シリコーンが採用されている。
【0055】
炎孔ベース36は、図12に示されるように、アルミダイカストによって作られた板状の部材であり、長辺36a及び短辺36bを有する長方形状である。また、炎孔ベース36は、中央領域136aと、中央領域136aの周囲に配置する周辺領域136bとを有している。
中央領域136aの外形は長方形状であり、周辺領域136bの外形も長方形状であり、周辺領域136bの中央付近に中央領域136aが位置している。
【0056】
中央領域136aには1次空気供給筒88が配置される開口82と、気化室60に設けられた電気ヒータ64や、センサーのリード線を引き出すために用いられる開口170、171が設けられている。また、中央領域136aと周辺領域136bとの境界付近に内側壁43、59が設けられている。そして、周辺領域136bには、後述するように、複雑な枠組と開口及び溝が設けられている。
【0057】
開口82は炎孔ベース36のほぼ中央に位置しており、開口82の内部には8本のリブ66が設けられて、その中央に1次空気供給筒88が支持されている。1次空気供給筒88は内径が一定の筒体である。
【0058】
内側壁43は、図13に示されるように、炎孔ベース36の長辺36aに沿っており、下面側(炎孔部材取付け面側)に突出する平板状の壁である。
【0059】
内側壁59は、炎孔ベース36の下面側(炎孔部材取付け面側)であって、炎孔ベース36の短辺36bに沿う方向に延びるものである。内側壁59は、図12、図13の様にブロック状をしていて凹凸がある。即ち内側壁59は、略四角形の突出部材が一列に並んで壁状を構成している。
【0060】
炎孔ベース36の周辺領域136bには、多数の貫通孔160と多数の溝部161が設けられ、2次空気通過部及び燃料ガス通過部を形成する。
貫通孔160は、炎孔ベース36の厚み方向(上下方向)に貫通するものであり、図14に示されるように上面側に開口58が形成され、図13に示されるように下面側に開口160bが形成される。また、貫通孔160は、長辺36a方向に長い長孔状であり、長辺36aに沿う方向に並んで列状となっており、さらにこの列が複数列設けられている。そして、貫通孔160は2次空気が通過するものであり、2次空気通過部となる。
なお、貫通孔160同士の間には、下面側に開口するネジ穴164が設けられ、網状部材77、炎孔部材51、保炎部材78の固定に用いられる。
【0061】
溝部161は長辺36a方向に延びる溝であり、下面側に開口161aが設けられている。そして、溝部161は、長辺36a方向に並んで列状となり、複数列設けられた貫通孔160の列間に配置されている。そして、列状の貫通孔160と、列状の溝部161とが交互に並んでいる。
【0062】
そして、図12、図14の矢印に示されるように、気化室60から、1次空気供給筒88の外側のリブ66同士の間を通過し、さらに、開放部50から溝部161に至る流路が形成されて燃料ガス通過部となり、気化室60で生成する燃料ガスは燃料ガス通過部を通過することにより溝部161へ流れることが可能となっている。
【0063】
溝部161及び貫通孔160は上記のように構成されているので、溝部161によって形成される流路(燃料ガス通過部)と、貫通孔160によって形成される流路(2次空気通過部)とは、合流せず別の流路となる。
【0064】
次に炎孔部材51について説明する。図13のように、炎孔部材51は板状の部材であり、十字状に4分割されて4枚の構成板51aを有している。
そして、全体を合わせた形状は、炎孔ベース36の周辺領域136bの形状にほぼ等しい形状であり、中央には、気化室60用の開口76が形成される。
【0065】
また、炎孔部材51には、2次空気孔71、炎孔72、取付孔150が設けられている。2次空気孔71には、丸孔71aと長孔71bとが設けられている。そして、後述する保炎部材78が重ねられると、長孔71bの上に保炎部材78の丸孔67が配置して、炎孔部材51の丸孔71aと、保炎部材78の丸孔67とにより、後述する空気孔列bを形成する。そして、2次空気孔71は、2次空気が通過する孔である。
炎孔72は丸孔であり、2次空気孔71の丸孔71aや保炎部材78の丸孔67と比べて内径が小さい。そして、炎孔72は燃料ガスが通過する孔である。
【0066】
図13に示されるように、2次空気孔71は、長辺36a方向に並んで列状となって空気孔列bが形成される。さらに、この空気孔列bが複数設けられ、すべての列は同じ方向に向いている。一方、炎孔72は、長辺36a方向に2列に並べられて、炎孔列aを形成している。そして、炎孔列aの各炎孔72は、その位置が配列方向に対して交互にずれており、千鳥状となっている。また、炎孔72が2列に設けられた炎孔列aと、前記した空気孔列bと互い違いに配されている。
【0067】
そして、炎孔ベース36の長辺36aと中央領域136aとの間には、両側にそれぞれ2本の炎孔列aと3本の空気孔列bが位置することになる。この内、中央領域136a寄り、すなわち、気化部8に近い両側各1本の炎孔列aには炎孔72が設けられない炎孔不形成部138を有している。
【0068】
さらに、炎孔部材51には、外側壁41が設けられている。外側壁41は、板状であり、各炎孔部材51の長辺36a付近に配置されており、下側に向かって折り曲げられ形成される。
【0069】
また、炎孔部材51の取付孔150は空気孔列bに所定の間隔で配置しており、取付孔150の位置は、炎孔ベース36のネジ穴164に対応している。
【0070】
網状部材77は、図13に示されており、細い金属糸で網目状に構成したもので、前記した炎孔部材51と略同一の面積を持つものであり、略長方形をしている。網状部材77には、前記した炎孔部材51の気化室用の開口76に相当する部位に開口69aが設けられている。さらに炎孔ベース36のネジ穴164に対応する部位に取付部151が設けられている。取付部151は貫通孔151aや切り欠き151bからなるものである。
本実施形態では、網状部材77はエキスパンドメタルが使用される。
【0071】
保炎部材78は枠状の部材であり、2分割された2枚の構成板78aによって形成されており、これら2枚の構成板78aを組合わせて使用する。
また、合わせられた保炎部材78の全体の形状は、炎孔ベース36の周辺領域136bの内外の縁に沿う部分を有している。そして、保炎部材78と炎孔ベース36との間に炎孔部材51や網状部材77を挟んでネジ止めしたときに、炎孔部材51や網状部材77の保持を確実に行うことができる。また、保炎部材78の全体の外形は長方形状であり、前記した炎孔部材51及び網状部材77と同様に中央に開口68が設けられている。
【0072】
保炎部材78には、列状に並んだ丸孔67と、取付孔152が設けられ、さらに、外側壁41aが設けられている。
丸孔67は、図13に示されるように、上記した炎孔部材51の長孔71bや切り欠き167aに対応する位置に設けられており、空気孔列bの一部となる。また、取付孔152は円形の貫通孔であり、図示しないボルトを、炎孔部材51の取付孔150、及び、網状部材77の取付部151に挿通して、当該ボルトを炎孔ベース36のネジ穴164に固定し、保炎部材78、炎孔部材51、網状部材77を炎孔ベース36の下面に取り付けてこれらを一体化する。そして、炎孔ベース36に網状部材77が接し、さらにそれに重ねて炎孔部材51が配され、最後に保炎部材78が設けられる。
【0073】
外側壁41aは、保炎部材78の外周であって、炎孔ベース36の縁付近に位置しており、短辺36bに沿うように設けられている。そして、外側壁41aは平板状であり、炎孔ベース36の縁である短辺36bに設けられ、下向き、すなわち、炎孔ベース36を基準として炎孔部材51側に突出するように折り曲げられた壁である。
【0074】
また、保炎部材78の2枚の構成板78aの短辺36bが合わさって、全体の短辺36bが形成されるが、外側壁41aは保炎部材78の合わせ部分が欠落しており、欠落部127が形成される。そして、この欠落部127から点火プラグ132が挿入され、点火プラグ132の点火線131の先端から電気火花を飛ばして、着火が行われる。
点火プラグ132は短辺36b側から挿入されており、中央領域136aを挟んで対向する位置付近に2ヵ所に設けられている。そのため、着火に要する時間をより短縮し、低温下でも点火性能を向上させることができる。
【0075】
炎孔部材51の空気孔列bは、炎孔ベース36の貫通孔160の下側に位置している。そして、図14に示す貫通孔160の上面側の開口58から入った空気が、下面側の開口160bを経て、炎孔部材51の丸孔71aや保炎部材78の丸孔67から出る。なお、炎孔ベース36と炎孔部材51との間に、網状部材77が設けられているので、上記の空気は網状部材77を通過する。
【0076】
また、炎孔部材51の炎孔列aは、炎孔ベース36の溝部161の下側に位置している。そして、後述するように、気化部8で気化した燃料ガス及び1次空気が溝部161を通過して、炎孔72から出る。
【0077】
図15(a)のように、炎孔ベース36、炎孔部材51、網状部材77、保炎部材78は四角形の箱であるハウジング122内に配置されている。また、ハウジング122は内部材122a及び外部材122bを有する2重構造となっており、内部材122aと外部材122bとの間には、3次空気が流れる空気流路103が形成されている。
【0078】
また、内部材122aには、点火プラグ挿入口124aと貫通孔169とが設けられている。外部材122bには点火プラグ挿入口124bが設けられている。そして、点火プラグ132は、外部材122bの点火プラグ挿入口124b、内部材122aの点火プラグ挿入口124a及び欠落部127に挿入される。
そして、貫通孔169の位置は、図15(b)に示されるように、外側壁41a付近に設けられ、貫通孔89から入って、貫通孔169から出る3次空気は、外側壁41aによって向きを変え、その流れを下向きに誘導する。
【0079】
また、折り曲げ部165が設けられているので、貫通孔169から出た3次空気は、欠落部127に向かって流れず、3次空気が欠落部127から内側に流入することを阻止することができる。
【0080】
本実施形態の気化式燃焼装置1を使用する場合、気化室60の筒部92に内蔵された電気ヒータ64に通電して発熱させ、また、モータ16を起動する。そうすると、気化室60の内壁全体が昇温し、また、ファン11とロータリーカップ63が回転する。
さらに補助加熱ヒータ109に通電し、1次空気供給筒88及び第2分流部材39の一部を加熱する。ファン11の回転により、図3の矢印の様に送風機2のハウジング10の中央部に設けられた開口12から空気が吸い込まれ、空気は駆動機械部3に入る。そして空気は、駆動機械部3から下部の空気量調節部5を経て混合部6側に流れるが、本実施形態の気化式燃焼装置1では、空気量調節部5の開口26、26’27、27’の重なりを調節して流量調整される。
【0081】
空気量調節部5を通過した空気は、二つの方向に別れて下流側に流れる。即ち中心部のエリアを通過した空気は、直接的に円盤状の流路形成部材70に捕捉され、これと連通する1次空気供給筒88から気化室60の中に1次空気として送風される。ここで本実施形態の気化式燃焼装置1では、流路形成部材70は、空気量調節部5側の開口54が気化部8側の開口83に比べて大きいから、大量の空気が流路形成部材70に取り込まれ、気化部8側に送られることとなる。また本実施形態では、1次空気供給筒88の下端部に補助加熱ヒータ109が設けられているので、気化部8に送られる空気が昇温される。
【0082】
また送風の他の一部は、貫通孔40から炎孔ベース36の貫通孔160を通過して、空気孔列bから出て、燃焼部7に2次空気が供給される。
【0083】
さらに第1分流部材35の外側のエリアに設けられた貫通孔89を通過した送風は、炎孔ベース36の外周部を流れて3次空気として供給される。そして、第1分流部材35の外側の貫通孔89を通過した3次空気は、ハウジング122の外部材122bの内側に形成される空気流路103を流れる。
【0084】
そして送風機2の送風により、上記した様に気化部8内に大量に1次空気が供給され、気化室60を通風雰囲気とする。
図4に示すように、燃料パイプ79から灯油をロータリーカップ63内に滴下し、滴下された灯油は、ロータリーカップ63から遠心力を受けて飛散し、飛散した灯油は、ロータリーカップ63の周囲に配された気化室60の内面に接触し、熱を受けて気化する。また灯油の一部は気化室60の底部91に落下し、気化室60の底部91に接触し、気化室60の電気ヒータ64の熱によって気化する。
【0085】
本実施形態の気化式燃焼装置1では、断熱部材130が複数のシート130a、130bを重ねて製作されたものであるので、積層面で伝熱性が低下して断熱部材130自体の熱伝導率が低くなっている。また、気化室60の縁部140にテーパー部140aが設けられているので縁部140の面積が小さく、縁部140に塗装がなされているので、断熱部材130と気化室60との間の伝熱性が低い。したがって、気化室60から炎孔ベース36へ放熱される熱量を小さくなり、エネルギーロスが小さく温度上昇が早い。
そしてロータリーカップ63の内面に設けられた羽根部99によって気化室60内の空気が攪拌され、気化室60で気化した燃料ガスと1次空気との混合が促進される。
【0086】
こうして気化部8で生成した燃料ガスと1次空気とが混合した混合気体は、図14の矢印の様に、ロータリーカップ63の外壁と気化室60の周壁92によって形成される空隙94を流れて下流に向かう。
【0087】
即ち燃料ガスと1次空気の混合気体は、気化室60の円筒状の周壁92に沿って流れ、さらに1次空気供給筒88に沿って流れる。ここで本実施形態の気化式燃焼装置1では、補助加熱ヒータ109が設けられ、1次空気供給筒88が加熱・保温されている。そのため燃料ガスは、1次空気供給筒88と接しても熱を奪われることはない。
【0088】
こうして流路形成部材70から1次空気供給筒88を介して気化室60の内部に供給された1次空気は、気化した燃料と混合され、高温状態となって気化室60の上部の開口60aから出る。そして気化室60を出た燃料ガスと1次空気の混合気体は、1次空気供給筒88の外側を流れ、一旦炎孔ベース36の上部側の通路に流れ込む。
【0089】
続いてこの混合気体は、図14の様に開放部50から溝部161に流れ込み、下部に設けられた炎孔72から出る。開放部50は、中央領域136aと周辺領域136bとの境界付近に設けられており、中央領域136aの外形は長方形状であるので、開放部50の配置は長方形の4辺上に点在して、中央領域136aを取り囲むような配置となっている。
【0090】
本実施形態では、炎孔部材51に網状部材77が積層されているので、燃料ガスは、炎孔部材51から出る直前に網状部材77によって攪拌される。
一方、他の部位から下流側に流れた空気は、燃料ガスと混合されることなく、直接燃焼部7側に流れ込み、2次空気として燃焼に寄与する。即ち2次空気は、貫通孔160を通過して、丸孔71a、67から炎孔72の周囲に供給される。
【0091】
そして、点火プラグ132を用いて着火し、燃焼を開始する。
点火プラグ132は、中央領域136aを挟んで2ヵ所に設けられているので、両側から火が回って全面で火炎が発生する。
【0092】
燃焼ガスの燃焼によって発生した熱は、熱交換器19内の水を加熱して、給湯を行なわれる。またこの熱の一部は、気化室60へ伝熱し、液体燃料の気化のために用いられる。なお、気化室60と炎孔ベース36との間の伝熱性は低くなっているが、必要な熱量の伝熱は確保されているので、液体燃料を気化させて燃料ガスを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の燃焼装置を内蔵する給湯器の正面図である。
【図2】本発明の実施形態の燃焼装置の正面図である。
【図3】本発明の実施形態の燃焼装置の断面図である。
【図4】本発明の実施形態の燃焼装置の全体の分解斜視図である。
【図5】炎孔ベース、断熱部材、気化室を下から見た状態で示した分解斜視図である。
【図6】気化室を上から見た状態で示した斜視図である。
【図7】(a)は断熱部材、気化室の断面図であり、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図8】(a)は断熱部材を製作する途中を示したシートの正面図であり、(b)は、(a)の変形例を示したシートの正面図である。
【図9】(a)は断熱部材の正面図であり、(b)は断熱部材の平面図である。
【図10】気化室内部を示した断面図である。
【図11】図2の燃焼装置の流路形成部材周辺の分解斜視図である。
【図12】炎孔ベースを下側から見た図である。
【図13】炎孔ベース、炎孔部材、網状部材、保炎部材を示した分解斜視図である。
【図14】炎孔ベースを上から見た状態で示した斜視図である。
【図15】(a)は、ハウジング内部を図示した分解斜視図であり、(b)はハウジング周辺を示した一部断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 気化式燃焼装置
8 気化部
36 炎孔ベース
51 炎孔部材
60 気化室
64 電気ヒータ
92 筒部
130 断熱部材
130a、130b シート
140 縁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、
前記断熱部材は2枚以上のシートが重ねられたものが用いられていることを特徴とする気化式燃焼装置。
【請求項2】
シート同士の積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した断熱部材が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の気化式燃焼装置。
【請求項3】
断熱部材は、シートの積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した後に、所定の形状に切断して製造されるものであることを特徴とする請求項2に記載の気化式燃焼装置。
【請求項4】
液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、
気化室には筒部が設けられ、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材を挟んだ状態で、炎孔ベースと気化室とを固定するものであり、気化室の筒部の縁部の面積は、筒部の軸方向に垂直な面での断面積よりも小さいことを特徴とする気化式燃焼装置。
【請求項5】
気化室の筒部の先端付近の形状は先端に向かって断面積が小さくなる形状であることを特徴とする請求項4に記載の気化式燃焼装置。
【請求項6】
液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、
気化室には筒部が設けられ、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材を挟んだ状態で、炎孔ベースと気化室とを固定するものであり、前記縁部にはガラスビーズを含む塗料で塗装処理がされていることを特徴とする気化式燃焼装置。
【請求項1】
液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、
前記断熱部材は2枚以上のシートが重ねられたものが用いられていることを特徴とする気化式燃焼装置。
【請求項2】
シート同士の積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した断熱部材が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の気化式燃焼装置。
【請求項3】
断熱部材は、シートの積層面に部分的に接着剤を塗布してシート同士を固定した後に、所定の形状に切断して製造されるものであることを特徴とする請求項2に記載の気化式燃焼装置。
【請求項4】
液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、
気化室には筒部が設けられ、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材を挟んだ状態で、炎孔ベースと気化室とを固定するものであり、気化室の筒部の縁部の面積は、筒部の軸方向に垂直な面での断面積よりも小さいことを特徴とする気化式燃焼装置。
【請求項5】
気化室の筒部の先端付近の形状は先端に向かって断面積が小さくなる形状であることを特徴とする請求項4に記載の気化式燃焼装置。
【請求項6】
液体燃料を気化室内で気化させて燃料ガスを生成することができる気化部と、燃料ガス通過部を有する炎孔ベースと、炎孔を有して前記炎孔ベースに取り付けられる炎孔板と、前記気化室と炎孔ベースとの間に配置される断熱部材とを有し、前記気化室には加熱ヒータが設けられ、気化部で生成した燃料ガス及び外部から供給される1次空気は、炎孔ベースの燃料ガス通過部を通過して炎孔板の炎孔から出て燃料ガスが燃焼するものであり、
気化室には筒部が設けられ、炎孔ベースと、気化室の筒部の先端に位置する縁部との間に断熱部材を挟んだ状態で、炎孔ベースと気化室とを固定するものであり、前記縁部にはガラスビーズを含む塗料で塗装処理がされていることを特徴とする気化式燃焼装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−226551(P2006−226551A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38046(P2005−38046)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
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