説明

気泡入りホワイトソース、及びその製造方法

【課題】温度変化、経時変化によって生じるボソボソした食感とボテっとした重い食感が抑えられ、滑らかさと軽さに優れた気泡入りホワイトソース及びその製造方法を提供する。
【解決手段】油脂の含有量が5%以下、粘度(20℃)が40〜100Pa・sであり、卵白、乳清、及び還元澱粉糖化物を含有する気泡入り加工食品と、ホワイトソースとを混合して成ることを特徴とする気泡入りホワイトソース及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化、経時変化によって生じるボソボソした食感やボテっとした重い食感が抑えられ、滑らかさと軽さに優れた気泡入りホワイトソース、及びその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、簡便性を求める若者、高齢者を中心に電子レンジで加熱するだけで食べられるチルド食品、冷凍食品などが求められている。その中でもグラタン、ドリア、クリームパスタなどのホワイトソースを使用した食品は、年々市場が拡大している。
【0003】
ところで、ホワイトソースは西洋料理の基本的なソースの一種であり、通常、バターなどの油脂類を加熱して、小麦粉などの澱粉類を炒め、その後牛乳などの液体でのばし、混合しながら煮込んで製造されるものである。またこのホワイトソースは、澱粉が加熱によって糊化されることにより、適度なとろみや滑らかな食感が付与される。
【0004】
しかしながら、ホワイトソースを用いた加工食品が、コンビニエンスストアーやスーパーマーケットのチルド食品、冷凍食品のように、長時間低温状態で店頭に陳列され、喫食時に再加熱される形態の場合、その温度変化、経時変化によって、ソースが劣化してしまい、ボソボソとした食感やボテっとした重い食感となってしまうという問題があった。
【0005】
上記問題を解決する手段として、例えば、増粘多糖類が添加されて得られるホワイトソースや(特許文献1)、ホワイトソースに使用する小麦粉の10〜100%がワキシーコーンスターチのエステル化およびエーテル化された化工澱粉に代替され、ホワイトソースに対して1〜10%添加されたホワイトソース(特許文献2)が提案されている。
【0006】
これらによれば、温度変化、経時変化による劣化が、ある程度改善されたホワイトソースを得ることができるが、よりボソボソした食感とボテっとした重い食感が抑えられ、滑らかで、ふわっと軽い食感に優れたホワイトソースが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−265021号公報
【特許文献2】特開平7−67591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、温度変化、経時変化よって生じるボソボソした食感とボテっとした重い食感が抑えられ、滑らかさと軽さに優れた気泡入りホワイトソース及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、油脂の含有量が5%以下、粘度(20℃)が40〜100Pa・sであり、卵白、乳清、及び還元澱粉糖化物を含有する気泡入り加工食品と、ホワイトソースとを混合して成る気泡入りホワイトソースであれば、意外にも温度変化、経時変化によって生じるボソボソした食感とボテっとした重い食感が抑えられ、滑らかでふわっと軽い食感に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
(1)油脂の含有量が5%以下、粘度(20℃)が40〜100Pa・sであり、卵白、乳清、及び還元澱粉糖化物を含有する気泡入り加工食品と、ホワイトソースとを混合して成る気泡入りホワイトソース、
(2)還元澱粉糖化物が、原料糖のDE値が10〜40である(1)記載の気泡入りホワイトソース、
(3)気泡入り加工食品の比重が、0.3〜0.7である(1)又は(2)記載の気泡入りホワイトソース、
(4)気泡入り加工食品のpHが、4.5〜6である(1)乃至(3)のいずれかに記載の気泡入りホワイトソース、
(5)油脂の含有量が5%以下であり、卵白、乳清、及び還元澱粉糖化物を含有するスラリーを泡立てた後、60〜90℃の条件で加熱した40〜100Pa・s(20℃)の粘度を有する気泡入り加工食品と、ホワイトソースとを混合する気泡入りホワイトソースの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度変化、経時変化によって生じるボソボソした食感とボテっとした重い食感が抑えられ、滑らかさと軽さに優れた気泡入りホワイトソースを提供することができる。これにより、コンビニエンスストアーやスーパーマーケットにおけるホワイトソースを用いるチルド食品及び冷凍食品の品位向上に貢献できる。また、コンビニエンスストアーやスーパーマーケットに限らず、常に新しい価値を求められる外食店においても、気泡入りのふわっとした軽い食感のホワイトソースというオリジナリティーのあるメニューを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の気泡入り加工食品を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0013】
本発明の気泡入りホワイトソースは、特定の気泡入り加工食品とホワイトソースとを混合して成るものである。なお、本発明は該気泡入り加工食品に特徴を有するため、説明上、本発明で用いる気泡入り加工食品を中心に詳述する。
【0014】
本発明の気泡入りホワイトソースで用いる気泡入り加工食品は、気泡が全体的に存在するように、スラリーを泡立てて調整したものをいう。また、該気泡入り加工食品は、油脂の含有量が5%以下、粘度(20℃)40〜100Pa・sであり、卵白、乳清及び還元澱粉糖化物が気泡の主成分であることを特徴とする。
【0015】
本発明の気泡入りホワイトソースで用いる気泡入り加工食品は、油脂の含有量が5%以下であり、1%以下が好ましく、油脂を含まないことがさらに好ましい。油脂の含有量が前記より多いと、油脂分離によって、気泡が潰れてしまい、気泡入りホワイトソースに軽い食感が付与されない場合があるため好ましくない。本発明において油脂とは、特に限定するものではないが、例えば、大豆油、菜種油、バター、卵黄油、卵黄、大豆等が挙げられる。
【0016】
また、本発明の気泡入り加工食品に用いる気泡入り加工食品は、粘度(20℃)が40〜100Pa・sであり、好ましくは、50〜90Pa・sである。粘度が前記範囲より低いと、経時的に離水し易くなり、粘度が前記範囲より高いと、ホワイトソースと混ぜ難いものとなるため、好ましくない。
なお、本発明において粘度は、BH型粘度計を用い、回転数:4rpm、ローター:No.6、品温:20℃の測定条件で、2回転後の示度から換算した値である。
【0017】
気泡入り加工食品に用いる卵白としては、特に制限はないが、具体的には、例えば、常法により鶏卵を割卵して卵黄と分離し得られた液卵白、冷凍卵白とした後に解凍したもの、乾燥卵白、更には、起泡性を備えている限り、これら卵白からリゾチーム、グルコース等の成分の一部を除去したもの、プロテアーゼ等の酵素で処理したもの等が挙げられる。
【0018】
気泡入り加工食品に用いる乳清としては、生乳や脱脂粉乳からチーズや酸カゼイン、レンネットカゼインを製造する際に副生する酸ホエイ、スイートホエイを原料とし、これを精製したものを使用することができる。また、それを濃縮、希釈、ペースト化、乾燥等の処理を行ったものも使用することができる。
乳清に代えて全粉乳や脱脂粉乳等の乳原料を使用すると、カゼインを含むためか気泡入り加工食品の気泡安定性が損なわれ、気泡入りホワイトソースに軽い食感を付与できない場合があるためカゼインの含有量(固形分換算)は乳原料の蛋白質全体の5%以下が好ましく、カゼインを全く含まないものがより好ましい。
また、気泡入り加工食品においても、カゼインの含有量は1%以下が好ましく、カゼインを全く含まないものがより好ましい。
【0019】
気泡入り加工食品に対する卵白と乳清の好ましい含有量は、それぞれ固形分換算で0.8〜5%とすることが好ましく、より好ましくは1〜4%である。さらに卵白と乳清の含有量比は、1:6〜6:1が好ましく、1:4〜1:1とすることがより好ましい。卵白の含有量及び含有量比が少なすぎると気泡入り加工食品の気泡安定性が低下し、気泡入りホワイトソースに軽い食感を付与できない場合があり、多すぎると気泡入り加工食品の泡が硬くなり過ぎてはんぺん様となり、ホワイトソースと混合しにくくなる。また、乳清の含有量及び含有量比が少なすぎると気泡入り加工食品は比重が大きくなって口溶けに劣り、気泡入りホワイトソースの滑らな食感が得られない場合があり、多すぎても気泡入り加工食品の泡が硬くなり、気泡入りホワイトソースの滑らかな食感が得られない場合がある。
【0020】
気泡入り加工食品には、卵白及び乳清に加えて還元澱粉糖化物を含有させる。これにより、気泡入りホワイトソースが滑らかで軽い食感となる。ここで、還元澱粉糖化物とは、澱粉を酸や酵素等で加水分解して得られる澱粉糖化物(澱粉糖)を更に水素添加処理により還元した糖アルコールの混合物で、還元澱粉加水分解物、還元水飴、デキストリンアルコール等とも呼ばれる。
【0021】
また、気泡入り加工食品に用いる還元澱粉糖化物は、当該原料糖、即ち澱粉糖化物(澱粉糖)のDE値が10〜40、好ましくは10〜30のものを用いることが好ましい。また、DE値とは、「デキストロースエキュイバレント(dextrose
equivalent)」の略称で、澱粉糖化物(澱粉糖)の品質表示の一方法で、澱粉の加水分解の程度を示す指標である。DEが高いほうが加水分解の程度が高く、一方、DEが低いほうが加水分解の程度が低いことを意味する。
【0022】
原料糖のDE値が、前記範囲より高い還元澱粉糖化物を使用すると、得られる気泡入り加工食品の口溶けが悪くなる場合があり、気泡入りホワイトソースの滑らかな食感が得られない場合がある。一方、DE値は低い方が好ましいが、10を下回る還元澱粉糖化物は、一般的に販売されていないため、DE値10を下限とする。
【0023】
気泡入り加工食品に対する還元澱粉糖化物の含有量は、固形分換算で、2〜20%が好ましく、3.5〜14%がより好ましい。還元澱粉糖化物の含有量が、前記範囲より少ないと、気泡入り加工食品の口溶けが悪くなる場合があり、気泡入りホワイトソースの滑らかな食感が得られない場合がある。一方、前記範囲より多いと、含有量に応じて気泡入り加工食品の口溶けの良さ、気泡入りホワイトソースの滑らかな食感が増し難いことから経済的でない。
【0024】
本発明の気泡入りホワイトソースに用いる気泡入り加工食品において、泡立ちは、比重が好ましくは0.3〜0.7、より好ましくは0.4〜0.6となる程度である。比重が前記範囲より小さいと気泡入り加工食品の気泡安定性が低く、気泡入りホワイトソースの軽い食感が得られない場合がある。反対に大きいと気泡入り加工食品は泡立ちが足りずに口溶けが悪く、気泡入りホワイトソースの滑らな食感が得られない場合がある。
【0025】
本発明の気泡入りホワイトソースに用いる気泡入り加工食品には、pH調整材を含有させることが好ましい。pH調整材は、気泡入り加工食品のpHを好ましくは4.5〜6、より好ましくは5〜5.5とするために使用する。pHが低すぎると卵白及び乳清中の蛋白質の酸変性により泡立ちが悪くなり、pHが高すぎると泡が柔らかくなり、気泡入り加工食品の気泡安定性が劣る場合があり、気泡入りホワイトソースの軽い食感が得られない場合がある。
【0026】
pH調整材としては、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸及びその塩、リン酸等の無機酸及びその塩、レモン、オレンジ、リンゴ等の果汁、食酢、ヨーグルト等の酸性発酵食品、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
気泡入り加工食品が上述の好ましい粘度範囲とするためには、卵白、乳清、還元澱粉糖化物の含有量によって調整すればよいが、スラリーの泡立ちを向上させると共に、潰れにくくするために、前述の原料に加えて、増粘多糖類、ゼラチンなどを適宜使用しても良い。増粘多糖類としては、アルギン酸ナトリウム、発酵セルロース、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、λカラギナン、タラガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、アラビノガラクタン、プルラン等を使用することができる。中でも、スラリーの撹拌時の剪断抵抗を減少させて泡立ちを向上させる点からシュードプラスチック性を有するキサンタンガム、発酵セルロース、グアーガム、ローカストビーンガム、λカラギナン、タラガム、ジェランガム等が好ましく、特にキサンタンガムが好ましい。
【0028】
また、気泡入り加工食品に増粘多糖類、ゼラチンを用いる場合には、その含有量は、0.3〜2%とすることが好ましい。増粘多糖類が少なすぎると気泡入り加工食品が潰れ易くなり、気泡入りホワイトソースに軽い食感を付与できない場合があり、多すぎると気泡入りホワイトソースに滑らかな食感を付与できない場合がある。
【0029】
気泡入り加工食品には、以上の各成分の他、必要に応じて、グルコース、マルトース、トレハロース、スクラロース、オリゴ糖等の糖類、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチン、ポリソルベート等の乳化剤、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK等のビタミン類、鉄、マグネシウム等の各種ミネラル類、香料、着色料、調味料及び保存料等を配合することができる。
【0030】
気泡入り加工食品は、気泡安定性、特に冷凍時の気泡安定性に優れるため、含気状態の気泡入り加工食品を、容器詰めにして冷凍庫で1年程度保存した後であっても、解凍すると冷凍前と同様の含気状態と気泡安定性を保持し、嵩高く泡立ったメレンゲ様の食感を有する。そのため、容器詰めの状態で冷凍流通させた気泡入り加工食品を解凍した後、ホワイトソースと混合しても、得られる本発明の気泡入りホワイトソースは、滑らかで軽い食感となる。
【0031】
気泡入り加工食品は、上述した油脂、卵白、乳清、還元澱粉糖化物及びその他必要に応じて配合される各成分を混合してスラリーとし、そのスラリーを撹拌や気体の吹き込みなどにより泡立てた後、品温60〜90℃、好ましくは75〜85℃の加熱をして製造することができる。この加熱により卵白及び乳清中の蛋白質が凝集するためか、気泡入り加工食品は気泡安定性に優れたものとなる。この時、加熱後に必要に応じて任意の容器に充填し、冷凍することもできる。この場合、スラリーの泡立ては、好ましくは、加熱後の比重が0.3〜0.7となるように適宜調整する。
過度に加熱温度を高くすると、気泡入り加工食品は蛋白質の凝集物が過度に形成されてメレンゲ様のふわっとした口溶け感が損なわれ、気泡入りホワイトソースに滑らかな食感が得られない。反対に、加熱温度が低すぎると、気泡入り加工食品の気泡安定性が低くなり、気泡入りホワイトソースに軽い食感が得られない。
【0032】
本発明の気泡入り加工食品のより具体的な製造方法は、例えば、上述のスラリーを形成する各成分を脱気機能付き撹拌ミキサーに入れ、脱気撹拌してスラリーを得る。次に、このスラリーに空気、窒素ガス等の気体を吹き込みながらこのスラリーを撹拌して泡立て、次いでチューブ式熱交換器に通し、品温60〜90℃の条件で加熱する。これにより、気泡入り加工食品を得ることができる。また、この気泡入り加工食品は、耐冷凍性に優れるため、任意の容器に充填し、冷凍保存することができる。
【0033】
本発明では、上述の気泡入り加工食品をホワイトソースと混合して気泡入りホワイトソースを得る。ここで、ホワイトソースとは別名ベシャメルソースとも言われる、フランス料理の基本的なソースの1つであり、小麦粉等の澱粉類をバター等の油脂類で炒め、牛乳等の乳成分で伸ばして製するものである。本発明で用いるホワイトソースは、一般的な製造方法で製したホワイトソースであれば、特に限定されないが、市販のレトルト品、缶詰品、工業的に製造されたもの、レストラン、家庭で作られたもの等を用いればよい。
【0034】
気泡入りホワイトソースは、気泡入り加工食品1部に対してホワイトソースを0.5〜10部混合することが好ましい。前記より混合するホワイトソースが少ないと、ホワイトソースとしてのコク味が足りず好ましくない。一方、前記より混合するホワイトソースが多いと、得られる気泡入りホワイトソースが軽さに乏しいものとなり、好ましくない。
【0035】
また、気泡入り加工食品とホワイトソースとの混合に際しては、それにより得られる気泡入りホワイトソースの比重が好ましくは0.5〜0.9、より好ましくは比重0.6〜0.8となるように、それらの組成を調整することが滑らかで軽い食感の気泡入りホワイトソースを得る点で好ましい。
【0036】
本発明の気泡入りホワイトソースの製造方法は、上記方法で製造された気泡入り加工食品とホワイトソースを特定の割合で混合すれば、特に限定されない。気泡入り加工食品を容器詰めにし冷凍した場合は、適宜解凍した後、ホワイトソースと混合すればよい。
【0037】
また、気泡入り加工食品とホワイトソースとを混合して得られる本発明の気泡入りホワイトソースは、含気状態のまま容器詰めにして冷凍庫で1年程度保存した後であっても、解凍すると冷凍前と同様の含気状態を維持し、軽い食感を維持することができる。よって、本発明の気泡入りホワイトソースは任意の容器に充填して冷凍流通させることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例及び比較例を述べ、本発明を更に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【0039】
[実施例1]
(1)気泡入り加工食品の製造
下記配合表1に示す組成で、各原料を脱気機能付撹拌ミキサーで攪拌混合し、真空度0.1MPaで脱気攪拌を行い、スラリーを得た。次いで、スラリーを攪拌ミキサーに投入し、空気を吹き込みながら攪拌して泡立てた。その後、泡立てたスラリーをチューブ式熱交換器に通して品温75℃で、3分間加熱して気泡入り加工食品を得た。なお、得られた気泡入り加工食品は、油脂及びカゼインを含んでおらず、粘度(20℃)が80Pa・s、比重が0.4、pHが5.5であった。
(2)気泡入りホワイトソースの製造
(1)で得られた気泡入り加工食品1部に対して市販のホワイトソース(油脂含有量12%)2部の割合で、気泡入り加工食品及びホワイトソースを混合し、気泡入りホワイトソースを得た。なお、得られた気泡入りホワイトソースは比重0.8、油脂含有量が8%であった。
【0040】
〔配合表1〕
生卵白(固形分10%) 30%(固形分換算3%)
乳清(固形分換算) 3%
原料糖のDE値20の還元澱粉糖化物(「PO−20」
三菱商事フードテック(株)製、固形分70%) 20%(固形分換算14%)
キサンタンガム 1%
クエン酸 0.3%
清水 残余
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
合計 100%

【0041】
[試験例1]
気泡入り加工食品に使用する糖の種類による、気泡入りホワイトソースの滑らかさ及び軽さへの影響を調べた。具体的には、気泡入り加工食品に用いる糖を表1に示す糖に変更した以外は、実施例1(1)に準じて気泡入り加工食品を製し、次いで実施例1(2)に準じて気泡入りホワイトソースを製した。得られた気泡入りホワイトソースは、以下の評価方法に従って評価し、これらの結果を表1に示す。
なお、原料糖のDE値が30、45、50である還元澱粉糖化物は、それぞれ「エスイー30」(物産フードサイエンス(株)製、固形分70%)、「エスイー20」(物産フードサイエンス(株)製、固形分70%)、スイートG2(物産フードサイエンス(株)、固形分70%)を用いた。
還元澱粉糖化物を粉末状のデキストリン、トレハロース、マルトオリゴ糖に置き換える場合は、固形分換算で含有量を揃えた。即ち、気泡入り加工食品の還元澱粉糖化物(固形分70%)20%を、各種粉末状糖類14%に変更した。
なお、得られた全ての気泡入り加工食品は、油脂を含んでおらず、粘度が50〜90mPa・s、比重が0.4〜0.6、pHが5.5であった。
【0042】
〔評価方法〕
気泡入りホワイトソースをポリエチレン製の容器に充填して−20℃で1週間冷凍保存し、5℃で解凍し5℃で1日保存した後、電子レンジを用いて温めて喫食し、その際の食感を以下の評価基準に従って評価した。
【0043】
〔滑らかさの評価基準〕
○:ボソボソした食感はなく、滑らかな食感であった。
△:ボソボソした食感が若干感じられるが、問題ない程度であった。
×:ボソボソした食感であり、滑らかでなかった。
【0044】
〔軽さの評価基準〕
○:ボテッとした重い食感は抑制されており、軽い食感であった。
△:ボテッとした重い食感が若干感じられるが問題ない程度であった。
×:ボテッとした重い食感であった。
【0045】
【表1】

【0046】
表1の結果より、卵白、乳清及び還元澱粉糖化物を含有する気泡入りホワイトソースは、いずれもボソボソ感、及びボテッとした重い食感が抑制されて、滑らかで軽い食感に優れていることがわかる(実施例1〜4)。
特に、より滑らかさに優れた気泡入りホワイトソースを得るためには、原料糖のDE値が10〜40の還元澱粉糖化物が好ましいことがわかる。一方、還元澱粉糖化物を各種糖類に置き換えると、気泡入りホワイトソースは、ボソボソした食感となり、滑らかで軽い食感の気泡入りホワイトソースが得られないことが理解できる。(比較例1〜3)。
【0047】
[比較例4]
菜種油7%、生卵黄3%含有させた以外は実施例1(1)に準じて、気泡入り加工食品を製した。なお、得られた気泡入り加工食品の油脂含有量は8%であった。次いで、油脂含有量12%のホワイトソースを油脂含有量8%のホワイトソースに置き換えた以外は実施例1(2)に準じて気泡入りホワイトソースを製した。得られた気泡入りホワイトソースの油脂含有量は、実施例1の気泡入りホワイトソースと同量である(8%)。
【0048】
試験例1の評価方法、及び評価基準に従って、評価を行ったところ、この気泡入りホワイトソースは、ボテッとした重い食感であり軽い食感が得られなかった。
【0049】
[比較例5]
生卵白30%を乳清(固形分換算)3%に置き換えた以外は、実施例1(1)に準じて気泡入り加工食品を製し、次いで実施例1(2)に準じて気泡入りホワイトソースを製した。
【0050】
試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価を行ったところ、この気泡入りホワイトソースは、滑らかな食感であったが、ボテッとした重い食感であり軽い食感の気泡入りホワイトソースが得られなかった。
【0051】
[比較例6]
乳清(固形分換算)3%を生卵白30%に置き換えた以外は、実施例1(1)に準じて気泡入り加工食品を製し、次いで実施例1(2)に準じて気泡入りホワイトソースを製した。
【0052】
試験例1の評価方法、及び評価基準に従って、評価を行ったところ、この気泡入りホワイトソースは、ふわっとした軽い食感であるものの、ボソボソした食感であり滑らかな食感の気泡入りホワイトソースが得られなかった。
【0053】
[実施例5]
DE値20の還元澱粉糖化物(「PO−20」三菱商事フードテック(株)製、固形分70%)をDE値15の還元澱粉糖化物(「エスイー100」物産フードサイエンス(株)製、固形分70%)に置き換え、その含有量(固形分70%)を20%から5%に変更し、卵白と乳清の含有量を固形分換算で3%からそれぞれ1%、4%に変更した以外は、実施例1(1)に準じて気泡入り加工食品を製した。次いで、実施例1(2)に準じて気泡入りホワイトソースを製した。なお、得られた気泡入りホワイトソースは、油脂を含んでおらず、粘度(20℃)が50Pa・sであった。
【0054】
試験例1の評価方法、及び評価基準に従って評価したところ、実施例5の気泡入りホワイトソースは、滑らかでふわっと軽い食感であり、滑らかさと軽さに優れたものであった。
【0055】
[実施例6]
生卵白及び乳清の含有量(固形分換算)をそれぞれ3%から1%に変更し、生卵黄を3%配合した以外は、実施例1(1)に準じて気泡入り加工食品を製した。次いで得られた気泡入り加工食品をポリエチレン製の容器に充填して−20℃で1週間冷凍保存した。なお、得られた気泡入り加工食品は、油脂の含有量が1%、粘度(20℃)が50mPa・sであった。次に、気泡入り加工食品を解凍後、実施例1(2)に準じて気泡入りホワイトソースを製した。
【0056】
試験例1の評価方法、及び評価基準に従って評価したところ、実施例6の気泡入りホワイトソースは、ボテッとした重い食感が若干して軽い食感に劣るものであった。
【0057】
[実施例7]
脱脂粉乳を5%追加使用した以外は、実施例1(1)に準じて気泡入り加工食品を製し、次いで実施例1(2)に準じて気泡入りホワイトソースを製した。
なお、使用した脱脂粉乳は、乳清を7%、カゼインを27%含むものであった。実施例7の気泡入り加工食品中は、油脂を含んでおらず、乳清の含有量は3.4%、カゼインの含有量は1.4%であった。
【0058】
試験例1の評価方法、及び評価基準に従って評価したところ、実施例7の気泡入りホワイトソースは、滑らかさに優れているが、ボテッとした重い食感が若干して軽さに劣るものであった。よって、よりボテッとした重い食感を抑制するためには、カゼインが含有されないのが好ましいことがわかる。
【0059】
[試験例2]
気泡入り加工食品の比重、pH、及び加熱条件の違いによる、気泡入りホワイトソースの滑らかさ、及び軽さへの影響を調べた。具体的には、表2に示す比重、pH及び加熱条件に変更した以外は、実施例1(1)に準じて気泡入り加工食品を製し、次いで実施例1(2)に準じて気泡入りホワイトソースを製した。得られた気泡入りホワイトソースを試験例1の評価方法及び評価基準に従って、評価を行った。
なお、pHは、クエン酸又はクエン酸塩によって調整し、比重は、攪拌時の空気の吹き込み量及び時間によって調整した。
また、得られた全ての気泡入り加工食品は、油脂を含んでおらず、粘度(20℃)が50〜90mPa・sであった。
【0060】
【表2】

【0061】
表2の結果より、
実施例1、及びNo.1〜3より、比重が0.3〜0.7の範囲にあるものは、滑らかさと軽さに優れている、あるいは問題とならない程度であり、特に比重0.4〜0.6の範囲にあるものがより好ましいことが理解できる。
実施例1、及びNo.1、4より、pHが4.5〜6の範囲にあるものは、滑らかさと軽さに優れている、あるいは問題とならない程度であり、特にpH5.0〜5.5の範囲にあるものがより好ましいことが理解できる。
実施例1、及びNo.1、5、6より、加熱条件が60〜90℃の範囲のものは、滑らかさと軽さに優れている、あるいは問題とならない程度であり、特に加熱条件が75〜85℃の範囲のものがより好ましいことが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂の含有量が5%以下、粘度(20℃)が40〜100Pa・sであり、卵白、乳清、及び還元澱粉糖化物を含有する気泡入り加工食品と、ホワイトソースとを混合して成ることを特徴とする気泡入りホワイトソース。
【請求項2】
還元澱粉糖化物が、原料糖のDE値が10〜40である請求項1記載の気泡入りホワイトソース。
【請求項3】
気泡入り加工食品の比重が、0.3〜0.7である請求項1又は2記載の気泡入りホワイトソース。
【請求項4】
気泡入り加工食品のpHが、4.5〜6である請求項1乃至3のいずれかに記載の気泡入りホワイトソース。
【請求項5】
油脂の含有量が5%以下であり、卵白、乳清、及び還元澱粉糖化物を含有するスラリーを泡立てた後、60〜90℃の条件で加熱した40〜100Pa・s(20℃)の粘度を有する気泡入り加工食品と、ホワイトソースとを混合することを特徴とする気泡入りホワイトソースの製造方法。


【公開番号】特開2012−249540(P2012−249540A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122386(P2011−122386)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】