説明

気泡捕集装置

【課題】プール内の水中にワイヤーで吊り下げた処理物を処理するとき、処理物から出る気泡を効率よく捕集する気泡捕集装置を提供することにある。
【解決手段】気泡捕集装置10は、上部開放のプール11内にワイヤー13で吊り下げた処理物12から発生する気泡を水中で捕集すべく逆漏斗状に形成されている。気泡捕集装置10は、ワイヤー13が通過可能なスリット22を天板部15dに備え、このスリット22に沿って天板部15dには、ブラシ装置23がその毛材によりスリット22を塞ぐように取り付けられている。ワイヤー13は、ブラシ装置23の毛材を分けてスリット22を通過して処理物12を気泡捕集装置10の直下に吊り下げ支持でき、処理物12から発生する気泡14は毛材によりスリットを通過できずに天板部に沿って頂部に集まり、頂部の気泡回収口からパイプを介してプールの外に設置された処理装置20に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡捕集装置に関し、さらに詳細には、例えば、原子力発電所や原子力研究所、或いは放射性物質を取り扱う施設などで出る廃棄物などをプール内の水中で処理する際に発生する気泡を捕集する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電所や放射性物質を取り扱う施設などでは、様々な処理物が発生する。このような処理物の中には放射性廃棄物などもあり、このような廃棄物は、一般的にはその体積を縮小するか、或いは小さく切断して廃棄している。このように処理物の体積を縮小することは、「減容」と称し、例えば、放射性廃棄物の減容は、物理的・科学的な安定化と共に貯蔵や処分における負担を軽減する上で有効であり、固体状のものについては従来から圧縮による処理が行われてきた。しかし、このような処理物を減容したり、或いは細かく切断したりする場合には、その過程で気泡が出ることが知られている。このような気泡は、環境保護の観点から大気への放出が規制されることもあるので、捕集して回収する必要がある。
【0003】
従来では、特許文献1に開示されたような炉内構造材切断時の微粒子捕集装置が知られ、この特許文献1に開示された技術は、原子炉内の構造材を処理するために切断するとき、プール内の水中でこの構造材を切断し、その際に発生する気泡を捕集して処理するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−48395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明の捕集装置では、プールの底に沈めた処理物を切断するときに発生する気泡を捕集するものであり、例えば、プールの上方からワイヤーで吊り下げて支持した処理物を圧縮して減容する場合などには、ワイヤーが邪魔をして処理物を拡散防止用カバー、即ち気泡を捕集する傘の真下に位置決めさせることができず、処理物から発生する気泡を効率よく捕集することができない。
【0006】
この発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、プール内の水中にワイヤーで吊り下げた処理物を処理するとき、処理物から出る気泡を効率よく捕集する気泡捕集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した技術的課題を解決するために本発明は以下のように構成されている。すなわち、本発明は、上部開放のプール内にワイヤーで吊り下げた処理物から発生する気泡を水中で捕集すべく前記水中に配置される逆漏斗状の気泡捕集装置であり、その特徴とするところは、前記気泡捕集装置が、周囲縁部と、該周囲縁部より垂直方向で見て高い位置にある頂部と、この頂部に形成された気泡回収口と、前記頂部から前記周囲縁部に向かって傾斜した天板部と、前記天板部に前記周囲縁部から内側に向かって形成され、前記ワイヤーが通過可能なスリットと、多数の毛材を有し、該毛材が前記スリットを塞ぐように前記天板部に取り付けられたブラシ装置とから構成され、前記ワイヤーが、前記ブラシ装置の前記毛材を分けて前記スリットを通過して前記処理物を前記気泡捕集装置の直下で吊り下げ支持することによって前記処理物から発生する前記気泡は前記毛材により前記スリットを通過できずに前記天板部に沿って前記頂部に集まり、前記頂部の前記気泡回収口から該気泡回収口に接続されたパイプを介して前記プールの外に設置された処理装置に排出されることにある。
【0008】
本発明の気泡捕集装置に係る一実施形態としては、前記ブラシ装置が、一対の第1ブラシと第2ブラシとを備え、これら第1ブラシと第2ブラシとのそれぞれが、支持体と、その支持体にその長さ方向に沿って植毛された前記毛材とから構成され、前記各支持体の前記長さ方向に並んだ無数の前記毛材が前記スリットを横断するように延び、かつ前記各ブラシの前記毛材の先端同士が前記スリットのほぼ中間部で当接して前記スリットを塞ぐように前記各支持体が前記スリットの対向する前記長さ方向縁部に沿って前記天板部に取り付けられている。
【0009】
本発明の気泡捕集装置に係る他の実施形態としては、前記気泡捕集装置が、更に、前記ワイヤーに取り付けられた第1の邪魔板を備え、前記ワイヤーが、この第1の邪魔板の表裏を貫通して通過すると共に、前記第1の邪魔板が、前記ワイヤーの通過する前記スリットに取り付けられた前記ブラシ装置に近接してその下側に位置決めされ、前記ワイヤーに沿って上昇する前記気泡が前記ワイヤーの通過する前記ブラシ装置の前記毛材の分け目から前記スリットを介して前記プールの上方に漏出するのを防止する。
【0010】
本発明の気泡捕集装置に係る他の実施形態としては、前記ブラシ装置が、一対の前記第1及び第2ブラシとは別に更に一対の第3ブラシ及び第4ブラシを備え、前記第3ブラシ及び前記第4ブラシのそれぞれが、一対の前記第1ブラシと前記第2ブラシのそれぞれ直下に位置するように支持されている。
【0011】
本発明の気泡捕集装置に係る他の実施形態としては、前記気泡捕集装置が、前記ワイヤーに取り付けられた第1の邪魔板と第2の邪魔板とを備え、前記ワイヤーが、これらの第1及び第2の邪魔板の表裏を貫通して通過すると共に、前記第1の邪魔板が、前記ワイヤーの通過する前記スリットに取り付けられた前記第1及び第2ブラシの前記毛材に近接してその下側に位置決めされ、更に、前記第2の邪魔板が、前記ワイヤーの通過する一対の前記第3ブラシと前記第4ブラシの前記毛材に近接してその下側に位置決めされ、前記ワイヤーに沿って上昇する前記気泡が前記ワイヤーの通過する前記各ブラシの前記毛材の分け目から上方に漏出するのを防止する。
【0012】
本発明の気泡捕集装置に係る他の実施形態では、前記第1及び第2の邪魔板のいずれか一方又は両方が、上方に向いたその表面に毛材が植毛されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の気泡捕集装置によると、処理物をワイヤーでプールの水中に吊り下げた状態で処理物を減容処理するとき、ワイヤーが逆漏斗状をした気泡捕集装置の天板部に形成されたスリットにワイヤーが通されることから、処理物が気泡捕集装置の直下に位置決めでき、しかも、気泡が漏出しやすいワイヤーの通過するスリットは、ブラシ装置の毛材で塞がれているので気泡の漏出を防止することができ、特に、スリットを通過するワイヤーに沿った部分ではブラシ装置における無数の毛材がワイヤーに接触していることから当該部分での気泡の漏出を防ぐことができるので、処理物から発生する気泡を高い確率で捕集することができる。
【0014】
また、本発明の気泡捕集装置によれば、ブラシ装置が、一対の第1ブラシと第2ブラシとから構成され、スリットの長さ方向に延びる対向縁部に取り付けられた支持体からスリットを横断するように延びる多数の毛材の先端同士がスリットのほぼ中間部で当接してスリットを塞いでいるので、気泡の漏出を更に阻止することができ、気泡の漏出を更に効果的に防ぎながらワイヤーの通過を可能にし、これにより処理物から発生する気泡の捕集効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の気泡捕集装置によれば、ワイヤーに取り付けられた第1の邪魔板がスリットを塞いでいるブラシ装置の真下に配置されているので、ワイヤーに沿って上昇する気泡が、ワイヤーの通過するブラシ装置の毛材の分け目からスリットを介してプールの上方に漏出するのを防止することができる。
【0016】
本発明の気泡捕集装置によれば、ブラシ装置が、一対の第1及び第2ブラシとは別に更に一対の第3ブラシ及び第4ブラシを備え、これらの第3ブラシ及び第4ブラシのそれぞれが、一対の第1ブラシと第2ブラシのそれぞれ直下に位置するように支持されているので、スリットに近づいた気泡の当該スリットからの漏出をこれら二対のブラシにより完全に防止することができる。特に、処理物を吊り下げているワイヤーが通過するブラシの毛材の分け目からの漏出をより効果的に防止することができる。
【0017】
本発明の気泡捕集装置によれば、ワイヤーに第1の邪魔板と第2の邪魔板とが取り付けられ、第1の邪魔板が第1及び第2ブラシの毛材に近接してその下側に位置決めされ、更に、第2の邪魔板が、第3ブラシと第4ブラシの毛材に近接してその下側に位置決めされているので、処理物から発生する気泡がワイヤーに沿ってブラシの分け目から漏出しようとするのを第2の邪魔板が防止、さらに第2の邪魔板を迂回してワイヤーの通過する第1ブラシと第2ブラシとの毛材分け目から漏出しようとする気泡が第1の邪魔板で阻止されることから、気泡の捕集率をさらに向上させることができる。
【0018】
本発明の気泡捕集装置によれば、第1及び第2の邪魔板のいずれか一方又は両方が、上方に向いたその表面に毛材が植毛されているので、これら邪魔板の表面に植毛された毛材が第1ブラシと第2ブラシの毛材に、或いは第3ブラシと第4ブラシの毛材に接触することによりさらに気泡がワイヤーの通過する毛材の分け目からの漏出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の気泡捕集装置を用いて処理物から発生する気泡を捕集する構成説明図。
【図2】本発明の気泡捕集装置を示す平面図。
【図3】図2に示される気泡捕集装置の側面図。
【図4】処理物を吊り下げるワイヤーを通過させるスリットにブラシ装置を取り付けた本発明の第1実施形態に係る気泡捕集装置の一部を示す部分的な斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る気泡捕集装置の一部を示す部分的な斜視図。
【図6】図5の6−6線で切断して気泡捕集装置の一部を概略的に示す部分的な端面図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る気泡捕集装置の一部を示す部分的な斜視図。
【図8】図7に示される気泡捕集装置の一部を8−8線で切断して示す概略的な断面図。
【図9】本発明の第4実施形態に係る気泡捕集装置の一部を図6と同様に示す端面図。
【図10】本発明の第5実施形態に係る気泡捕集装置の一部を示す部分的な斜視図。
【図11】図10に示される第5実施形態に係る気泡捕集装置の一部を図6と同様に示す端面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る気泡捕集装置を添付の図に示された好適な実施形態についてさらに詳細に説明する。図1〜図3は、本発明に係る気泡捕集装置の構成を概略的に示すものであり、従って、図1〜図3に示される気泡捕集装置については参照符号10で示し、具体的な実施形態に係る気泡捕集装置については参照符号10にA,B,………の添え字を付けて示している。
【0021】
最初に、本発明の気泡捕集装置10の使用状態について図1〜図3を参照しながら説明する。例えば、原子炉構造物などを解体した際に出る放射性廃棄物などを処理するとき、上部が開放したプール11内の水中に処理物12をワイヤー13で吊り下げ、その状態で押しつぶすなどして減容することがある。その時、処理物12から多数の微少な気泡14が発生する場合には、この気泡14を捕集して回収する必要がある。このような場合、処理物12から発生する気泡14を効率的に捕集するために本発明の気泡捕集装置10が使用される。図1は、ワイヤー13でプール11内の水中に吊り下げられた処理物12を減容処理するときに発生する気泡14を本発明の気泡捕集装置10で捕集する様子を示している。
【0022】
この気泡捕集装置10は、図1〜図3に示されるように、基本的に、周囲縁部15aと、この周囲縁部15aより垂直方向で見て高い位置にある頂部15bと、この頂部15bに形成された気泡回収口15cと、頂部15bから周囲縁部15aに亘って設置された天板部15dとを備え、この天板部15dが、頂部15bからそれより低い位置にある周囲縁部15aに向かって下り傾斜していることから、全体として傘状又は逆漏斗状を呈している。本発明の気泡捕集装置10は、前述したように水中に吊り下げた処理物12から発生する気泡14を捕集するためのものであるから、椀を伏せたような傘状又は逆漏斗状をしていることが必要であるが、その形状には特に限定されない。
【0023】
図1〜図3に示される気泡捕集装置10では、周囲縁部15aの平面形状が四角形をしているので、全体としては、中空でかつ底面が開放した四角錐のような形状をしている。この気泡捕集装置10は、比較的に大型で、かつプール11内の水中に浮かせて設置することから気泡捕集装置10の強度を保ち、かつこれを水中に安定して浮かせるために補強枠16により補強されている。しかし、この補強枠16は、本発明の気泡捕集装置10にとって必須の構成要素ではない。気泡捕集装置10の上側に組み付けられた補強枠16の最上部四隅には、リング17が取り付けられ、これらのリング17に締結したロープ18に浮き19を結び付けてこの気泡捕集装置10を水中に安定して浮かせる。
【0024】
この気泡捕集装置10の頂部15aに形成された気泡回収口15cには、逆漏斗状の気泡捕集装置10における内側に捕集される気泡14をプール11の外に設置された回収装置20へ送るためにホース21の一端が接続され、その他端は回収装置20に接続されている。ワイヤー13で水中に吊り下げられた処理物12から発生する気泡14を有効に捕集するためには、処理物12が気泡捕集装置10の中心位置直下に位置することが必要である。さらに、具体的には、処理物12は、気泡捕集装置10を平面的に見たとき、言い換えれば上面から見たときにその中心点を通る垂直線上に位置することが最も好ましい。
【0025】
しかし、処理物12は、ワイヤー13で吊り下げられているため、その真上に気泡捕集装置10を配置するにはワイヤー13が邪魔になる。そこで、この気泡捕集装置10では、周囲縁部15aから天板部15dに1つのスリット22が形成されている。スリット22は、周囲縁部15aから気泡捕集装置10を平面的に見たときのほぼ中心位置にまで延びている。このようにスリット22が、周囲縁部15aから気泡捕集装置10のほぼ中心位置までに渡って天板部15dに形成されていることから、気泡捕集装置10の頂部15bは、前述した中心位置より多少ずれた位置に形成されている。
【0026】
ワイヤー13は、処理物12が気泡捕集装置10のほぼ中心を通る垂直線上に位置するようにスリット22内に入れられて気泡捕集装置10を通過させられる。そして、気泡捕集装置10には、その天板部15dに形成されたスリット22から気泡14が漏出しないようにブラシ装置23が設けられ、このブラシ装置23を構成する無数の毛材によりスリット22が塞がれている。具体的には、図4に示される第1実施形態に係る気泡捕集装置10Aのようにブラシ装置23は、一対の第1及び第2ブラシ24,25から構成されている。すなわち、図4は、この第1実施形態に係る気泡捕集装置10Aにおいて、処理物12を吊り下げるワイヤー13が通過するスリット22の一部を示すため天板部15dを部分的に見た斜視図である。図4から明らかなように、第1及び第2ブラシ24,25は、構造的にはまったく同一のもので、チャンネル形状をした細長い支持体24a,25aの溝部に無数の毛材24b,25bを植毛して構成されたものであり、一般的には、チャンネル式直線ブラシなどと称してよく知られている。
【0027】
このような第1及び第2ブラシ24,25は、それらの毛材24b,25bがスリット22を横断して塞ぐように支持体24a,25aに固定された取付け板24c,25cを天板部15dにネジなどで取り付けることによりスリット22の対向する縁部22a,22bに沿って設置されている。すなわち、図4に明瞭に示されているように、一対の第1ブラシ24及び第2ブラシ25は、それらの毛材24b,25bがお互いに向き合ってスリット22を横断し、その先端がスリット22のほぼ中間部で当接している。なお、ワイヤー13は、第1ブラシ24と第2ブラシ一25との各毛材24b,25bどうしが当接している先端部を分け入るようにして所定位置まで入れられる。そして、ワイヤー13が、スリット22内の所定位置まで入れられると、スリット22は各ブラシ24,25における毛材24b,25bで塞がれるので、気泡捕集装置10Aの下方から上昇してくる気泡14のスリット22からの漏出は、これらの毛材24b,25bによって防止される。
【0028】
図4に一部が示されている第1実施形態に係る気泡捕集装置10Aでは、ブラシ装置23が、2つの第1及び第2ブラシ24,25を向かい合わせ、それらの毛材24b,25bどうしでスリット22を塞ぐようにしたものであるが、この発明では、ブラシ装置23が2つの第1及び第2ブラシ24,25から構成される場合に限定されるものではなく、図示してはいないが1つのブラシだけを用いてもよい。その場合、使用するブラシは、その毛材の毛丈がスリット22の幅寸法より長く、一方の長さ方向縁部22aの下から他方の長さ方向縁部22bの下にまで到達してスリット22を塞ぐことができるものであることが必要である。従って、このような1つのブラシを使用する場合には、そのブラシの支持体がスリット22の一方の長さ方向縁部22aに沿って天板部15dに取り付けられる。
【0029】
また、図5及び図6には、本発明の第2実施形態に係る気泡捕集装置10Bが部分的に示されている。図5は、この実施形態に係る気泡捕集装置10Bにおいて、処理物12を吊り下げるワイヤー13が通過するスリット22の一部を示すため天板部15dを部分的に見た斜視図であり、図6は、図5の6−6線の位置からその端面を見た概略的な端面図である。この第2実施形態に係る気泡捕集装置10Bでは、スリット22に取り付けられたブラシ装置23を通過して下方へ延びるワイヤー13に邪魔板26が取り付けられている。この邪魔板26は、所定の面積を有する表面四角形の薄板で、表裏を貫通する穴26aと、一辺から穴26aまでに至る線状の切り込み26bとが形成されている。
【0030】
この邪魔板26は、比較的に弾力性のある素材、例えばゴム又はプラスチックなどで形成され、ワイヤー13を穴26aに通すときには、切り込み26bの両側部分を上下又は左右に強制的に広げ、これにより開いた切り込み26bにワイヤー13を入れて穴26aまで押し込む。ワイヤー13が穴26aに通された後には切り込み26bを開く力を開放することにより切り込み26bは元の状態に戻っては閉鎖される。なお、ワイヤー13が穴26aに通された後に切り込み26bの対向面に接着剤などを塗布して切り込み26bの対向面を接合することも好ましい。
【0031】
このようにしてワイヤー13に取り付けられた邪魔板26は、ワイヤー13への装着時の位置によっては、ワイヤー13に沿って移動させるなどしてブラシ装置23に近接した下側に位置決めされる。このような邪魔板26をワイヤー13に取り付けることにより、ブラシ装置23を構成している第1及び第2ブラシ24,25の毛材24b,25bにおいて、ワイヤー13が通過する分け目にできる僅かな隙間が、その下側から邪魔板26により塞がれるので、図6に示されるようにワイヤー13に沿って上昇する気泡14は、邪魔板26によりその隙間への進入が阻止され、その結果、気泡14がワイヤー13の通過するブラシ装置23の分け目から漏出するのを一層防止することができる。
【0032】
次に、図7及び図8に示される本発明の第3実施形態に係る気泡捕集装置10Cについて説明する。第3実施形態の気泡捕集装置10Cが第1実施形態の気泡捕集装置10Aと相違する部分は、ブラシ装置23が、一対の第1ブラシ24と第2ブラシ25の他にさらにもう一対の第3ブラシ27と第4ブラシ28とで構成されている点にある。これら第3及び第4ブラシ27,28は、第1及び第2ブラシ24,25とまったく同じ構造であり、チャンネル型の支持体27a,28aに毛材27b,28bが植毛され、支持体27a,28aには取付け板27c、28cが固定されて構成されている。このような第3ブラシ27と第4ブラシ28とは、第1ブラシ24と第2ブラシ25の直下に設置されている。すなわち、各対のブラシは、上下に近接して並べられている。この第3実施形態に係る気泡捕集装置10Cでは、第1ブラシ24と第2ブラシ25とが、前述した第1実施形態に係る気泡捕集装置10Aのように各ブラシ24,25における取付け板24c,25cをスリット22の各長さ方向縁部22a,22bに沿って天板部15dに取り付けるとき、所定長さのボルト29が用いられる。
【0033】
具体的に説明すると、図8に示されるように、各ブラシ24,25は、それらの取付け板24c,25cが、それに形成された挿通穴と天板部15dに形成された挿通穴とを整合させるように天板部15dの下側に配置され、整合しているそれらの挿通穴に天板部15dの上方からボルト29が入れられ、ボルト29の先端側から螺合されたナット30で締め付けることにより天板部15dに取り付けられる。次に、第1ブラシ24と第2ブラシ25とを取り付けているボルト29の先端側から位置決め用ナット31が螺合され、その後、第3及び第4ブラシ27,28の取付け板27c、28cが、それに形成されたボルト挿通穴にボルト29を相対的に挿入してセットされる。
【0034】
次いで、ボルト29の先端部から固定用ナット32が螺合され、この固定用ナット32を位置決め用ナット31に対して締め付けることにより第3及び第4ブラシ27,28が、上方の第1及び第2ブラシ24,25と所定の間隔を開けてその真下に設置される。なお、スリット22を実質的に塞いでいる一対の第1ブラシ24及び第2ブラシ25の直下に配置されているもう一対の第3ブラシ27と第4ブラシ28とは、スリット22と同じ長さ、即ち一対の第1ブラシ24及び第2ブラシ25と同じ全長を持つ必要はなく、スリット22を通過するワイヤー13を中心にしてスリット22の延びる方向に一定の長さがあればよい。けだし、第3ブラシ27と第4ブラシ28とは、ワイヤーが通過する第1及び第2ブラシ24,25における毛材24b,25bの分け目から気泡14の漏出を防止することが目的で設置しているからである。
【0035】
このような第3実施形態に係る気泡捕集装置10Cでは、天板部15dのスリット22を通過するワイヤー13が、このスリット22を実質的に塞いでいる一対のブラシ24,25の直ぐ下で、別のブラシ27,28の毛材27b,28bを分けて通過していることから、ワイヤー13に沿って上昇する気泡14が最初に下側の第3ブラシ27と第4ブラシ28で分散されてその数を減少させ、更に、その幾つかかが第3ブラシ27と第4ブラシ28の毛材27b,28bの分け目を通ったとしても、それらは上部の第1ブラシ24,25の毛材24b,25bにより漏出が防止されるので、ワイヤー13に沿った気泡14がスリット22から漏出するのをより一層防止することができる。なお、同じ方法で、一対のブラシ27,28の直ぐ下に、更に別の一対のブラシ(ブラシ装置)を設置すれば、更により一層スリットからの気泡の漏出を防止することができる。
【0036】
次に、図9は、本発明の第4実施形態に係る気泡捕集装置10Dにおいて、図6と同様な位置から見た概略的な端面図である。この第4実施形態に係る気泡捕集装置10Dは、前述した第3の実施形態に係る気泡捕集装置10Cと同様にブラシ装置23が、一対の第1ブラシ24と第2ブラシ25の他にさらにもう一対の第3ブラシ27と第4ブラシ28とで構成されている。そして、更に、この気泡捕集装置10Dでは、上下に設置された各対の第1ブラシ24及び第2ブラシ25と、第3ブラシ27及び第4ブラシ28との間に、第2実施形態に係る気泡捕集装置10Bで構成されているような邪魔板26が設置され、また、第3ブラシ27及び第4ブラシ28の下側にも別な邪魔板33が設置されている。
【0037】
邪魔板33の構造は、邪魔板26とまったく同じであるが、このようにスリット22を直接塞ぐ一対の第1及び第2ブラシ24,25の下側に更に一対の第3及び第4ブラシ27,28とを設置し、しかも第1及び第2ブラシ24,25の下側と、第3及び第4ブラシ27,28の下側とにそれぞれ邪魔板26,33を配置することによりワイヤー13に沿って水中を上昇する気泡14は、最初に、邪魔板33によって拡散され、その結果、ワイヤー13を通している第3及び第4ブラシ27,28の分け目から通り抜ける気泡の数が減少し、しかし、それでもその分け目を通過した気泡14は、更に、邪魔板26によって拡散され、その結果、最終的にスリット22を塞いでいる第1及び第2ブラシ24,25をワイヤー13が通過する毛材の分け目から漏出する気泡14はほとんど無く、ほぼ全ての気泡14が気泡捕集装置10Dの気泡回収口15cに集まり、回収装置20に回収される。
【0038】
さらに、図10は、本発明の第5実施形態に係る気泡捕集装置10Eを部分的に示す斜視図であり、図11は、第5実施形態に係る気泡捕集装置10Eを図6と同様な位置から見た端面を概略的に示す端面図である。この実施形態に係る気泡捕集装置10Eでは、天板部15dに形成されたスリット22を塞ぐブラシ装置23が、図6に示される実施形態の気泡捕集装置10Cと同様に一対の第1及び第2ブラシ24,25から構成されている。また、スリット22に取り付けられたブラシ装置23を通過して下方へ延びるワイヤー13には、第2実施形態及び第4実施形態の気泡捕集装置10B,10Dで使用した邪魔板26,33とは異なる更に別の邪魔板34が取り付けられている。この邪魔板34は、邪魔板26と同様に、比較的に弾力性のある素材などからなる所定面積を有する表面四角形の薄板で、その表裏を貫通する穴と、一辺から穴までに至る線状の切り込みとが形成されている点では同じである。
【0039】
しかし、この邪魔板34は、天板部15dに取り付けられているブラシ装置23に対面する上面に植毛された毛足の短い多数の毛材35を備えている。このような邪魔板34は、天板部15dの下面に取り付けられたブラシ装置23の下方位置でワイヤー13に取り付けられ、その後、ワイヤー13への装着時の位置によっては、ワイヤー13に沿って移動させるなどしてブラシ装置23に近接される。このようにして邪魔板34をワイヤー13に取り付けることにより、ブラシ装置23を構成している第1及び第2ブラシ24,25の毛材24b,25bに邪魔板34における表面に植毛された毛材35が接触して、ワイヤー13が通過するブラシ装置23の毛材の分け目にできる僅かな隙間を塞ぎ、そこからの気泡14の漏出を完全に防止することができる。
【0040】
なお、前述した第4実施形態に係る気泡捕集装置10Dを構成している邪魔板26,33について、第5実施形態に係る気泡捕集装置10Eで構成した邪魔板34を用いることができることはいうまでもない。このような表面に多数の毛材35が植毛された邪魔板34を用いて第4実施形態に係る気泡捕集装置10Dを構成すれば、ワイヤー13が通るブラシ装置23の毛材分け目からの気泡14の漏出を更に一層防止することができる。
【0041】
以上説明したように、本発明の気泡捕集装置によれば、処理物をワイヤーでプールの水中に吊り下げた状態で処理物を減容処理するとき、ワイヤーは逆漏斗状をした気泡捕集装置の天板部に形成されたスリットに通されることから、処理物が気泡捕集装置の直下に位置決めできる。更に、気泡が漏出しやすいワイヤーの通過するスリットは、ブラシ装置の毛材で塞がれているので気泡の漏出を防止することができ、特に、スリットを通過するワイヤーに沿った部分ではブラシ装置における無数の毛材がワイヤーに接触していることから当該部分での気泡の漏出を防ぐことができ、これにより処理物から発生する気泡を高い確率で捕集することができる、という優れた効果を奏する。
【符号の説明】
【0042】
10 気泡捕集装置
10A,10B,10C,10D,10E 各実施形態の気泡捕集装置
11 プール
12 処理物
13 ワイヤー
14 気泡
15a 周囲縁部
15b 頂部
15c 気泡回収口
15d 天板部
16 補強枠
20 回収装置
22 スリット
23 ブラシ装置
24 第1ブラシ
24a 支持体
24b 毛材
24c 取付け板
25 第2ブラシ
25a 支持体
25b 毛材
25c 取付け板
26,33,34 邪魔板
27 第3ブラシ
27a 支持体
27b 毛材
27c 取付け板
28 第4ブラシ
28a 支持体
28b 毛材
28c 取付け板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開放のプール内にワイヤーで吊り下げた処理物から発生する気泡を水中で捕集すべく前記水中に配置される逆漏斗状の気泡捕集装置において、
前記気泡捕集装置が、周囲縁部と、該周囲縁部より垂直方向で見て高い位置にある頂部と、この頂部に形成された気泡回収口と、前記頂部から前記周囲縁部に向かって傾斜した天板部と、前記天板部に前記周囲縁部から内側に向かって形成され、前記ワイヤーが通過可能なスリットと、多数の毛材を有し、該毛材が前記スリットを塞ぐように前記天板部に取り付けられたブラシ装置とから構成され、
前記ワイヤーが、前記ブラシ装置の前記毛材を分けて前記スリットを通過して前記処理物を前記気泡捕集装置の直下で吊り下げ支持することによって前記処理物から発生する前記気泡は前記毛材により前記スリットを通過できずに前記天板部に沿って前記頂部に集まり、前記頂部の前記気泡回収口から該気泡回収口に接続されたパイプを介して前記プールの外に設置された処理装置に排出されることを特徴とする気泡捕集装置。
【請求項2】
前記ブラシ装置が、一対の第1ブラシと第2ブラシとを備え、これら第1ブラシと第2ブラシとのそれぞれが、支持体と、その支持体にその長さ方向に沿って植毛された前記毛材とから構成され、前記各支持体の前記長さ方向に並んだ無数の前記毛材が前記スリットを横断するように延び、かつ前記各ブラシの前記毛材の先端同士が前記スリットのほぼ中間部で当接して前記スリットを塞ぐように前記各支持体が前記スリットの対向する前記長さ方向縁部に沿って前記天板部に取り付けられている請求項1に記載の気泡捕集装置。
【請求項3】
前記気泡捕集装置が、更に、前記ワイヤーに取り付けられた第1の邪魔板を備え、前記ワイヤーが、この第1の邪魔板の表裏を貫通して通過すると共に、前記第1の邪魔板が、前記ワイヤーの通過する前記スリットに取り付けられた前記ブラシ装置に近接してその下側に位置決めされ、前記ワイヤーに沿って上昇する前記気泡が前記ワイヤーの通過する前記ブラシ装置の前記毛材の分け目から前記スリットを介して前記プールの上方に漏出するのを防止する請求項1又は2に記載の気泡捕集装置。
【請求項4】
前記ブラシ装置が、一対の前記第1及び第2ブラシとは別に更に一対の第3ブラシ及び第4ブラシを備え、前記第3ブラシ及び前記第4ブラシのそれぞれが、一対の前記第1ブラシと前記第2ブラシのそれぞれ直下に位置するように支持されている請求項3に記載の気泡捕集装置。
【請求項5】
前記気泡捕集装置が、前記ワイヤーに取り付けられた第1の邪魔板と第2の邪魔板とを備え、前記ワイヤーが、これらの第1及び第2の邪魔板の表裏を貫通して通過すると共に、前記第1の邪魔板が、前記ワイヤーの通過する前記スリットに取り付けられた前記第1及び第2ブラシの前記毛材に近接してその下側に位置決めされ、更に、前記第2の邪魔板が、前記ワイヤーの通過する一対の前記第3ブラシと前記第4ブラシの前記毛材に近接してその下側に位置決めされ、前記ワイヤーに沿って上昇する前記気泡が前記ワイヤーの通過する前記各ブラシの前記毛材の分け目から上方に漏出するのを防止する請求項4に記載の気泡捕集装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の邪魔板のいずれか一方又は両方が、上方に向いたその表面に毛材が植毛されている請求項3又は5に記載の気泡捕集装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−107915(P2012−107915A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255489(P2010−255489)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000221535)東電工業株式会社 (25)
【出願人】(000153100)株式会社日本環境調査研究所 (30)