説明

気泡発生装置

【課題】気泡を含む噴出水流を浴槽内に噴出する噴出ノズルを備える気泡発生装置において、高速の水流が不要の構成とする。
【解決手段】噴出ノズル20の下流端に設けられた噴出水流が噴出されるオリフィス23を、上流側の第1オリフィス部23aと、この第1オリフィス部23aよりも断面積が大きい下流側の第2オリフィス部23bとにより構成し、第2オリフィス部23bを、第1オリフィス部23aの下流端に少なくとも周方向一部に断面積を拡大する段差部29を有して連設し、この段差部29の背面に生じる負圧を利用してオリフィス23を通過する比較的低速の水流に気泡を吸引するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に設けられて浴槽内の浴槽水中に気泡を発生させる気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の気泡発生装置として、例えば、下記の特許文献1及び2に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−347145号公報
【特許文献2】特許第3084837号公報
【0004】
上記特許文献1及び2には、従来のエジェクター型気泡発生装置の構造が開示されている。この従来のエジェクター型気泡発生装置は、ポンプによって循環供給される浴槽水を高速に噴出する噴出ノズル(ノズル部)を備えている。この噴出ノズルは、外気が導入される混合室に開口されており、噴出ノズルから噴出される高速の水流によるキャビテーション作用によって生じる負圧を利用して外気が自然吸気され、混合室内で浴槽水内に空気を吸入するようになっている。また、噴出ノズルの下流側には混合ノズル(ディフューザ部)が同心状に配設され、混合ノズル内で空気と水とを混合溶解しながら水槽内に噴出するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2の混合ノズルから噴出された高速の噴出流内の空気は、ノズル出口での噴出流の流速と、その周囲に滞留している水との速度差によりせん断されて微細なマイクロバブルとなるが、比較的気泡密度が高い為に気泡が再結合してしまうことが多い。また、マイクロバブルが発生する条件として、高いせん断力が得られるように通水速度を速めることが要求され、その為に高圧ポンプが一般的に必要となる。さらに、混合室内に負圧を発生させるためには、噴出ノズルのノズル内径を小さくする必要があり、これにより通水量が制限されるとともに、通水量に応じて吸気量も少なくせざるを得ず、マイクロバブルの発生効率が悪いものであった。
【0006】
そこで、本発明は、高圧ポンプを必要とせず、かつ、通水量を多くしつつも十分な量の気泡を発生させることができる気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、次の技術的手段を講じた。
【0008】
すなわち、本発明は、浴槽内の浴槽水が供給される浴槽水導入口と、該浴槽水導入口の下流に設けられ噴出水流が噴出されるオリフィスとを備えた噴出ノズルから気泡を含む噴出水流を浴槽内に噴出する気泡発生装置において、前記オリフィスは、上流側の第1オリフィス部と、該第1オリフィス部の下流側に設けられ第1オリフィス部よりも断面積が大きい第2オリフィス部とを有し、第2オリフィス部は、第1オリフィス部の下流端に少なくとも周方向一部に断面積を拡大する段差部を有して連設され、前記オリフィス内に空気を導入するための吸気孔が前記段差部の背面側に生じる負圧領域に開口形成されており、該段差部の背面側に生じる負圧により空気を吸引するように構成したことを特徴とするものである(請求項1)。
【0009】
これによれば、従来のエジェクタ型気泡発生装置とは異なり、比較的緩やかな水流であっても段差部の背面側の負圧によって吸気孔を介して空気を吸引することが可能となり、オリフィス径を過度に小さくする必要もなくなるため高圧ポンプも不要となるとともに、通水量も多くすることができるので吸気量を多くしても微細気泡を安定して発生させることが可能になる。
【0010】
さらに、前記吸気孔は、前記段差部を跨ぐように開口形成させることができる(請求項2)。これによれば、段差部から下流側に向けて離れるにしたがい負圧が小さくなり、段差部直後の負圧が最も大きいため、かかる大きな負圧を吸気孔に作用させて効率よく空気を吸引することが可能になる。
【0011】
また、前記段差部がオリフィスの全周にわたって形成され、作動時に段差部の背面側の負圧領域に生じる空気層がオリフィスの全周にわたって形成されるようすることができる(請求項3)。これによれば、作動時に段差部の背面側に円環状に形成される空気層から気泡が供給されるようになり、オリフィスの全周にわたって均一に気泡が分散されるようになり、比較的多くの気泡を発生させた場合でも気泡同士が結合しにくく、安定した気泡を下流へ送ることが可能になる。
【0012】
また、前記段差部の背面をオリフィス内周面に対して断面視鋭角状に形成することができる(請求項4)。これによれば、円環状の空気層が形成されるより大きな空間を確保することができ、一層安定してオリフィスの全周から気泡を発生させることが可能になるとともに、段差部背面側の負圧がより安定して発生する。
【0013】
さらに、本発明の気泡発生装置は、浴槽水導入口とオリフィスとを連通する流通路を備え、該流通路の下流端に段差部を介して第1オリフィス部を連設することができ、この場合、前記流通路の下流端の断面積を、第1オリフィス部の断面積の2倍以上にすることが好ましい(請求項5)。これによれば、第1オリフィス部の内面近傍に、流通路の下流端の段差部によって断面が急減少することに起因する乱流による負圧が生じ、上記の第1及び第2オリフィス部の境界の段差部の背面側に生じる負圧と相まって、一層効率よく空気を吸引することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の請求項1に係る気泡発生装置によれば、従来のエジェクタ型気泡発生装置とは異なり、比較的緩やかな水流であっても段差部の背面側の負圧によって吸気孔を介して空気を吸引することが可能となり、オリフィス径を過度に小さくする必要もなくなるため高圧ポンプも不要となるとともに、通水量も多くすることができるので吸気量を多くしても微細気泡を安定して発生させることができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る気泡発生装置によれば、段差部から下流側に向けて離れるにしたがい負圧が小さくなり、段差部直後の負圧が最も大きいため、かかる大きな負圧を吸気孔に作用させて効率よく空気を吸引することができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る気泡発生装置によれば、作動時に段差部の背面側に円環状に形成される空気層から気泡が供給されるようになり、オリフィスの全周にわたって均一に気泡が分散されるようになり、比較的多くの気泡を発生させた場合でも気泡同士が結合しにくく、安定した気泡を下流へ送ることができる。
【0017】
また、本発明の請求項4に係る気泡発生装置によれば、円環状の空気層が形成されるより大きな空間を確保することができ、一層安定してオリフィスの全周から気泡を発生させることが可能になるとともに、段差部背面側の負圧をより安定して発生させることができる。
【0018】
また、本発明の請求項5に係る気泡発生装置によれば、第1オリフィス部の内面近傍に、流通路の下流端の段差部によって断面が急減少することに起因する乱流による負圧が生じ、上記の第1及び第2オリフィス部の境界の段差部の背面側に生じる負圧と相まって、一層効率よく空気を吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る気泡発生装置を内蔵する浴槽用循環アダプタの縦断面図である。
【図2】同浴槽用循環アダプタの水平断面図である。
【図3】同浴槽用循環アダプタの斜視図である。
【図4】同浴槽用循環アダプタの分解斜視図である。
【図5】同浴槽用循環アダプタの気泡発生装置の気泡発生原理説明図である。
【図6】図5に示す噴出ノズルの側面図である。
【図7】気泡発生装置の実験モデルの要部拡大図である。
【図8】気泡発生装置の理論モデルの要部拡大図である。
【図9】段差部の他の実施例を模式的に示す部分拡大図である。
【図10】断面急縮小構造による負圧発生原理説明図である。
【図11】噴出ノズルの他の実施例を模式的に示す縦断面図である。
【図12】衝突壁及び飛散防止壁の作用説明図である。
【図13】衝突壁及び飛散防止壁の作用説明図である。
【図14】気泡発生装置のさらに別の実施例を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図4は、本発明の一実施形態に係る気泡発生装置が内蔵された浴槽用循環アダプタ1を示し、該循環アダプタ1は、浴槽の側壁に貫通した状態で取付固定され、この循環アダプタ1の前面(図において右側面)の外周部には浴槽内の浴槽水を吸い込む吸い込み口2が環状に設けられていると共に、該吸い込み口2の径方向内方には水流が放出される水流放出口3が設けられており、循環アダプタ1の背面側で循環ポンプを備えた循環配管に接続されることによって、吸い込み口2から吸い込んだ浴槽水が循環管路及び循環アダプタ1を介して水流放出口3から浴槽の内方に向けて放出されるように構成されている。
【0022】
好ましくは、上記循環管路は、風呂用の追い焚き循環機能を備えた風呂釜若しくは風呂給湯器用の追い焚き循環管路により構成でき、その場合、風呂釜若しくは給湯器における燃焼を停止した状態で循環ポンプによる浴槽水の環流を生じさせることにより気泡発生運転を行うことができる。
【0023】
循環アダプタ1は、主として浴槽の外側に配設される本体ハウジングを兼ねるアダプタ本体4と、浴槽の内側からアダプタ本体4に取り付けられる浴槽アタッチメント5と、吸込口フィルタ6とが組み付けられて構成されており、アダプタ本体4のフランジ7と、浴槽アタッチメント5のフランジ8との間にパッキン9,10を介して浴槽の側壁が挟み込まれるようにして浴槽に取付固定される。また、アダプタ本体4には雌ネジ部11が設けられ、一方、浴槽アタッチメント5には雌ネジ部11に対応する雄ネジ部12が設けられており、これらネジ部11,12によって浴槽アタッチメント5がアダプタ本体4に螺着されている。また、吸込口フィルタ6は、浴槽アタッチメント5に着脱自在に取り付けられている。
【0024】
アダプタ本体4には、循環配管の戻り路に接続される戻り用接続口13と、循環配管の往き路に接続される往き用接続口14とが背面から後方に突出するように設けられているとともに、空気採り入れ口15も背面に後方突出状に設けられている。また、アダプタ本体4は、往き用接続口14に連通する第1筒部16と、該第1筒部16との間に隙間を有して同心状に設けられた第2筒部17と、第2筒部17との間に隙間を有して同心状に設けられた第3筒部18とを一体に備えた多重筒状に構成されており、第3筒部18がアダプタ本体4の外周壁を構成しており、該第3筒部18内に第2筒部17が収容され、第2筒部17内に第1筒部16が収容されている。第1筒部16と第2筒部17との間の空間は空気採り入れ口15に連通され、第2筒部17と第3筒部18との間の空間は戻り用接続口13に連通されており、第1筒部16内部空間、第1筒部16と第2筒部17との間の空間、及び、第2筒部17と第3筒部との間の空間は、相互に遮断されている。なお、上記の雌ネジ部11は、第3筒部18の内周面に形成されている。
【0025】
浴槽アタッチメント5は、円筒状の浴槽ボルト19と、該浴槽ボルト19に内嵌された噴出ノズル20と、水流放出口3を有する放出水流制御部材21とから主構成されている。浴槽ボルト19には上記フランジ8が設けられ、該フランジ8にパッキン10が取付られているとともに、浴槽ボルト19の外周面に上記の雄ネジ部12が形成されている。また、浴槽ボルト19の内周面と、アダプタ本体4の第2筒部17との間には隙間が形成されており、該隙間を介してアダプタ本体4の戻り用接続口13と、上記吸い込み口2とが連通されている。
【0026】
噴出ノズル20は、気泡を含む噴出水流を浴槽内に噴出するものであり、アダプタ本体4の往き用接続口14を介して浴槽水が供給される浴槽水導入口22と、該浴槽水導入口22の下流に設けられ噴出水流が外部に向けて噴出されるオリフィス23と、浴槽水導入口22とオリフィス23とを連通させる流通路24と、アダプタ本体4の空気採り入れ口15を介してオリフィス23内に空気を導入するための吸気孔25とを備えている。図示実施形態の噴出ノズル20は、先端部にオリフィス23を有する内筒部26と、該内筒部26との間に隙間を有して同心状に一体成形された外筒部27とから主構成されており、内筒部26の背面側端部が上記浴槽水導入口22とされ、内筒部26の内部空間が上記流通路24となされている。この流通路24の下流端に断面急縮小部を構成する段差部28を介してオリフィス23の上流端が連設されている。
【0027】
噴出ノズル20の内筒部26はアダプタ本体4の第1筒部16に内嵌され、これにより、オリフィス23が往き用接続口14の下流に連通されている。一方、外筒部27は、アダプタ本体4の第2筒部17に内嵌されているとともに、外筒部27の内周面と第1筒部16の外周面との間には隙間が形成されるように構成されており、これにより、内筒部26及び第1筒部16と、外筒部27との間の空間に空気採り入れ口15を介して外気が供給されるようになっており、当該空間の先端部はオリフィス23の径方向外方まで延設され、当該空間の先端部とオリフィス23とを連通させる上記吸気孔25が内筒部26に形成されている。
【0028】
吸気孔25は小孔により構成されており、図示実施形態においては周方向に隣接配置された3つの小孔により構成されている。なお、射出成形時に内筒部26に吸気孔25を構成する小孔をピンにより形成させているため、外筒部27にも小孔が形成されてしまうが、該外筒部27の小孔は、噴出ノズル20と放出水流制御部材21との間に設けられたOリング40によって密閉されている。
【0029】
噴出ノズル20のオリフィス23は、上流側の第1オリフィス部23aと、該第1オリフィス部23aの下流端に、断面積を僅かに且つ急激に拡大する段差部29を有して連設された第2オリフィス部23bとからなる。第2オリフィス部23bは、第1オリフィス部23aの下流側に設けられ、段差部29を介して第1オリフィス部23aよりも断面積が急激に大きくなるように構成されていて、これらオリフィス部23a,23bの境界部に設けられた段差部29の背面側(図において右側)の微小領域に、噴出ノズル22に通水した際に負圧を発生させるように構成されている。そして、上記の吸気孔25は、段差部29に開口形成されていて、特に本実施形態では吸気孔25が段差部29を跨ぐように開口形成されており、段差部29の背面側に生じる負圧によって空気を自然吸気するように構成されている。本実施形態では、段差部29はオリフィス23の内周面の全周にわたって形成されていて、作動時(噴出ノズル20への通水時)に段差部29の背面側の微小負圧領域に生じる空気層がオリフィス23の全周にわたって形成されるようになっている。
【0030】
従来の一般的なエジェクタ型気泡発生装置における気泡発生原理は高速な水流がオリフィスを通過してオリフィスよりも十分広い空間に高速水流を噴射させた際に生じるキャビテーション原理によるものであり、かかる従来装置では高速水流を生じさせるために高圧ポンプが必須となっていたが、本実施形態ではオリフィス23の途中に設けた微小な段差部29を水流が通過することによって段差部29の背面側の微小領域に発生する負圧を利用して空気を吸引するものであり、キャビテーションが生じるほどの高速水流は必要ではなく、コストの安い低圧ポンプを循環ポンプとして利用することができてコスト低減や騒音の大幅な低減を図ることが可能であるとともに、オリフィス径を比較的大きくすることができるので、十分な水流の流量を確保することができ、これに伴い水流に混合される気泡の量を多くしても、気泡同士が結合しにくく、品質の良い気泡含有水流を十分な流量で発生させることが可能である。
【0031】
図5及び図6は、図1〜図4に示す本実施形態の噴出ノズル20を備える気泡発生装置の気泡発生原理説明図である。図5に示すように噴出ノズル20内に所定流量で浴槽水を通水すると、第1オリフィス部23aにおいて流速が加速され、これに伴い第1オリフィス部23aを通過する水流の圧力が低下する。例えば、第1オリフィス部23aを通過する水流の圧力、特に第1オリフィス部23a内周面近傍の圧力がほぼ外気圧と等しくなるように、第1オリフィス部23aの断面積、第1オリフィス部23aの上流側の流路形状や断面積、並びに、浴槽水の流量などを設定することができる。水流が段差部29を通過すると、段差部29の背面側の微小領域に負圧が生じ、該負圧により吸気孔25を介して空気が吸引されて図6に示すようにオリフィス23の全周にわたって段差部29の背面側に空気層が形成され、この空気層を空気の供給源としてオリフィス23を流れる水流に気泡が全周にわたって均一かつ連続的に発生して混合され、かかる気泡を含有する水流が第2オリフィス部23bから外部に向けて噴出される。
【0032】
吸気孔25の好ましい位置を実験的に検証するため、本願発明者らは吸気孔25の位置を軸方向に微小にずらした複数のサンプルを用いて気泡の発生状態を確認した。かかる実験モデルは図7に示されており、下限流量Qを毎分4.0L、第1オリフィス部23aの直径φAを4.5mm、第2オリフィス部23bの直径φBを5.1mm、吸気孔25の直径φRを1.0mmとした。この場合、吸気孔25の段差部29から最も離れる部位と段差部29との間の距離をLとすると、当該距離Lが1.0mmを超えるとほとんど気泡が発生しなくなり、また、吸気孔25の中心が段差部29に近くなるほど良好な気泡の発生が確認できた。
【0033】
この結果より、図8に示すように、段差部29の背面側の負圧領域の軸方向寸法bと、段差部の径方向寸法aとの間には、b=0.3aの関係が導出される。L≦bであれば吸気可能であるため、L≦0.3aとなる条件を満たすように吸気孔25の位置を設定すれば、安定した吸気を行うことが可能であることが判る。
【0034】
図1〜図4に示す本実施形態の段差部29の背面は、オリフィス23の内周面に対して軸方向断面視においてほぼ直角に形成されているが、図9に示すように、段差部29の背面を、オリフィス23の内周面に対して軸方向断面視において鋭角状に形成することもできる。これによれば、段差部29の奥行きがより深くなるため、負圧の発生がより安定化するとともに、段差部29の背面の空気層の層厚を大きくすることができて、より確実に円環状の空気層(図9において点ハッチングで示す。)が形成されるようになり、気泡の発生が一層均一化する。
【0035】
また、本実施形態では、図1及び図2に示すように噴出ノズル20の流通路24とオリフィス23との境界を段差部28による断面急縮小構造としているが、かかる断面急縮小構造の作用について説明する。図5に示すように流通路24の下流端をテーパー状に縮径してオリフィス23に繋げた場合は管路内に乱流が生じにくく圧力損失も小さく、第1オリフィス部23aを流れる水流の流れ方向は比較的軸方向に沿うようになって、該水流自体によってはオリフィス23内面に負圧を生じさせるものではない。一方、図10に示すようにオリフィス23の入口で断面を急激に縮小させると、管の流れの特性から、オリフィス23の入口付近の水流が、下流に至るにしたがって径方向内方に向くような流れとなり、第1オリフィス部23aを流れる水流は第1オリフィス部23aの径よりも細く流れ、これにより管壁と水流の間に乱流による負圧が生じる。この負圧の影響がある領域内に上記のオリフィス内段差部29による断面急拡大部を構成することにより、相乗効果により大きな負圧をオリフィス内面に生じさせることができる。このような作用が生じるための段差部28,29の相対距離は、管径や流速などの諸条件にもよるが、本実施形態では2mm程度としている。
【0036】
なお、断面急縮小する構造としては、図11に示すように、オリフィス23の上流端を上流側の流通路24内に向けて突出させるような構造とすることもできる。
【0037】
次に、上記放出水流制御部材21について説明すると、放出水流制御部材21は、図1及び図2に示すように、噴出ノズル20に外嵌される円環状の取付ベース部30と、該ベース部30に一体形成された衝突壁支持部31と、該支持部31に取付支持された衝突壁32と、該衝突壁32の外周を覆う筒状の飛散防止壁33とから主構成されている。衝突壁32の周囲の開口部が上記の水流放出口3となされており、十分な開口量を確保するとともに水流を円滑に放出できるように上記衝突壁支持部31は軸芯部から放射方向に延びる3本の幅狭のリブ状に構成されている。ベース部30は、浴槽ボルト19の前面に設けられたビス孔19aを用いて浴槽ボルト19に図示しない取付ビスにより取付固定される。上記吸い込み口2は、ベース部30と浴槽ボルト19との間の隙間によって形成されている。
【0038】
衝突壁32は、噴出ノズル20の正面に配設された円盤状の部材であり、噴出ノズル20のオリフィス23に所定距離で同心状に対向配置される円形状の衝突面32aを有している。この衝突面32aは、オリフィス23の軸心に対して傾斜していてもよいが、好ましくは、オリフィス23の軸心に対して垂直に配置するのが良い。また、衝突面32aの径は、第2オリフィス部23bの径よりも大きく、噴出ノズル20の先端部と衝突面32aとの距離は第2オリフィス部23bの直径よりも小さく設定されている。また、衝突壁32の外径は、第2オリフィス部23bの内径の約2倍程度となされている。
【0039】
なお、図示実施形態においては、衝突面32aとは反対側の側面から突出する支持軸36が衝突壁32に一体成形されており、該支持軸36が衝突壁支持部31に支持されている。支持部31に支持軸36を螺合させる構造とすれば、支持軸36の回転操作によって衝突壁32と噴出ノズル20との間の距離を微調整して気泡の発生状態を調整できるし、また、衝突壁支持部31に支持軸36を軸方向往復動自在に支持させれば、通水時の圧力変動により衝突壁32が微小に軸方向に振動して、水流放出口3から放出される水流や気泡にバリエーションを付加できるようになる。
【0040】
衝突壁32の衝突面32aの周縁部には、噴出ノズル20からの噴出水流が浴槽水中では衝突壁32の周囲の水流放出口3を介して噴出ノズル20からの噴出方向に沿って流れるように案内する案内曲面32bが形成されている。これは、水中では水流は物体の表面に沿って引っ張られるように流れるという性質を利用したものである。
【0041】
かかる案内曲面32bを有する衝突壁32の作用を、図5及び図12を参照しつつ説明する。図12の下半分は水中での噴出水流の流れを模式的に示しており、図12の上半分は気中での噴出水流の流れを模式的に示している。図5及び図12に示すように、噴出ノズル20からの噴出水流は、衝突壁32の衝突面32aのほぼ中央に衝突され、この衝撃力によって水流中の気泡が一次的に微細化される。水流は、衝突壁32に衝突した後、衝突面32aに沿って放射方向に分散する流れとなるが、水中では径方向外方に至るにしたがって水流が分散されることにより図5に示すように水流の水膜が薄くなり、衝突面32aの周縁部に至るにしたがって大きなせん断力が水流中に含まれる気泡に作用して、気泡がより一層微細化し、20μm程度の大きさのマイクロバブルが大量に発生する。水流が衝突壁32の周縁部に到達すると、案内曲面32bに沿うように水流が曲げられて、噴出ノズル20の噴出方向に沿うように流れるようになる。
【0042】
一方、浴槽内に水が張られていない場合に、湯張り運転により気中で噴出ノズル20から噴出水流が噴射されると、抵抗となる浴槽水が周囲に存在しないため、水流が衝突面32aから放射方向に飛び散ることとなり、何ら飛散防止策を講じていない場合には浴槽から外に水しぶきを撒き散らしてしまうおそれがある。本実施形態では、飛散防止壁33が衝突壁32の外周を覆うように配設されており、この飛散防止壁33により衝突壁32の上方が覆われているため、気中で噴出ノズル20から水流が噴射された場合でも浴槽から外に多量の水しぶきを撒き散らすことが防止される。
【0043】
飛散防止壁33は、水中での気泡発生運転時における衝突壁32の外周面に沿う水流の流れを阻害しないように、衝突壁32から所定距離離間した位置に配置されている。また、好ましくは、図5及び図12に示すように、衝突壁32の先端部(図において右端部)が、飛散防止壁33の先端部よりも先端側、すなわち水流放出口3からの水流の噴射方向に突出させることができる。これによれば、衝突壁32の先端部から放出される水流に対し、飛散防止壁33の存在に起因する乱流の影響をなくすことができて、水流がより安定して浴槽内方に向けて一様に流れるようになり、入浴者へのマッサージ感を向上できる。
【0044】
また、飛散防止壁33と噴出ノズル20との間には、噴出ノズル20から噴出される噴出水流とともに飛散防止壁33周囲の浴槽内の水を衝突壁32に向けて流入させるための隙間34が形成されている。この隙間34からの浴槽水の流入により、水流放出口3から前方に放出されるマイクロバブル水流の流れを一層円滑なものとすることができる。すなわち、上記隙間34が存在しないと、衝突壁32の周囲後方が飛散防止壁により閉塞されるようになって、該閉塞部に滞留する浴槽水の乱流により、マイクロバブル水流に損失が生じ、泡質が劣化したり水流が流速低下してしまうことが懸念されるが、本実施形態では、衝突壁32表面に沿うマイクロバブル水流の周囲で、浴槽水の円滑な環流を生じさせる隙間34が設けられているため、良質な泡や水流を生じさせることができる。
【0045】
さらに、飛散防止壁33の先端部には、衝突壁32側に向けて径方向内方に突出する突出部33aが全周にわたって設けられており、該突出部33aによって、飛散防止壁33内面ではじかれた水が前方に勢いよく飛散してしまうことを防止している。この突出部33aは、飛散防止壁33に一体成形されていてもよく、別途成形された部材を飛散防止壁33の先端部に取り付けてもよい。また、突出部33aの構造は、飛散防止壁33の先端部から直角に折り返されている必要はなく、飛散防止壁33内面ではじかれた水が前方に飛び出す勢いに合わせて適宜の形状とすることができ、たとえば、飛散防止壁33の先端部から手前に鋭角に折り返すような構造でもよいし、飛散防止壁33の先端部から前方斜めへ向けて傾斜する構造であってもよい。なお、この突出部33aと衝突壁32との間の距離も、水流を妨げないように十分な寸法を確保することが好ましい。
【0046】
上述したように、飛散防止壁33を先端側にあまり突出させることは円滑な水流の発生に好ましくないため、飛散防止壁33はできるだけ短くすることが好ましいが、衝突壁32に案内曲面32bを形成したことにより、次のような問題が生じる。すなわち、気中で噴出ノズル20から水流を噴出する際、噴出流量が多い時には衝突壁32に衝突した後でも水流の勢いがあるため、図12の矢印aに示すように水流が飛散防止壁33に向けて流れるが、流量が少ないときや、噴出開始前後の流量の立ち上がり時と立ち下がり時などは、水流が案内曲面32bにより引っ張られて図12の矢印cに示すように斜め前方へ飛散してしまい、飛散防止壁33で受けることができない場合が生じる。
【0047】
そこで、図1〜図4に示す本実施形態では、飛散防止壁のサイズを大きくすることなくより確実に水の飛散を防止する手段として、衝突壁32の衝突面32aと案内曲面32bとの境界部に水切りエッジ35を形成し、衝突面32aを案内曲面32bと不連続状とするとともに、衝突面32aを案内曲面32bよりも噴出ノズル20側に1mm程度突出する凸形状としている。かかる構成によれば、図13に示すように、気中における噴出ノズル20からの噴出水流の流量が少なく、衝突壁32に衝突した後の放射方向へ流れる水流の勢いが比較的弱い場合でも、案内曲面32bに引っ張られることなく水流をより確実に飛散防止壁33で受けることが可能になる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更可能である。例えば、飛散防止壁は筒状でなくともよく、少なくとも衝突壁の上方を覆うものであれば良い。また、上記実施形態ではオリフィスの途中に設けた段差部は全周にわたって形成したが、図14に示すように、周方向一部のみに段差部29を設け、第2オリフィス部23bの断面をカギ溝状の構造とすることもできる。この場合、周方向の一部のみから気泡が供給されるようになるため、気泡が水流の断面内で片側に偏って発生する傾向がある。本実施形態は、特定の位置に集中して気泡を発生したい場合などに有効である。
【符号の説明】
【0049】
20 噴出ノズル
22 浴槽水導入口
23 オリフィス
23a 第1オリフィス部
23b 第2オリフィス部
25 吸気孔
29 段差部
32 衝突壁
32a 衝突面
32b 案内曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内の浴槽水が供給される浴槽水導入口と、該浴槽水導入口の下流に設けられ噴出水流が噴出されるオリフィスとを備えた噴出ノズルから気泡を含む噴出水流を浴槽内に噴出する気泡発生装置において、
前記オリフィスは、上流側の第1オリフィス部と、該第1オリフィス部の下流側に設けられ第1オリフィス部よりも断面積が大きい第2オリフィス部とを有し、第2オリフィス部は、第1オリフィス部の下流端に少なくとも周方向一部に断面積を拡大する段差部を有して連設され、前記オリフィス内に空気を導入するための吸気孔が前記段差部の背面側に生じる負圧領域に開口形成されており、該段差部の背面側に生じる負圧により空気を吸引するように構成したことを特徴とする気泡発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気泡発生装置において、前記吸気孔が前記段差部を跨ぐように開口形成されていることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の気泡発生装置において、前記段差部がオリフィスの全周にわたって形成され、作動時に段差部の背面側の負圧領域に生じる空気層がオリフィスの全周にわたって形成されるようしたことを特徴とする気泡発生装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の気泡発生装置において、前記段差部の背面はオリフィス内周面に対して断面視鋭角状に形成されていることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の気泡発生装置において、浴槽水導入口とオリフィスとを連通する流通路を備え、該流通路の下流端に段差部を介して第1オリフィス部が連設されており、前記流通路の下流端の断面積が、第1オリフィス部の断面積の2倍以上であることを特徴とする気泡発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−236147(P2012−236147A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106863(P2011−106863)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】