説明

気液二相流体状態制御装置および気液二相流体状態制御方法

【課題】気液二相流の流体を容易に所望の流動状態にすることのできる流動状態制御装置および流動状態制御方法を提供する。
【解決手段】供給管を流れる気液二相流の流体を所定の流動状態にする流動状態制御装置100であって、前述の流体の圧力に関する圧力情報と前述の流体の質量速度に関する質量速度情報と、前述の流体の乾き度に関する乾き度情報とを取得する情報取得部110と、圧力情報と質量速度情報と乾き度情報とに基づいて、前述の流体の圧力を変更可能な圧力調整弁31と前述の流体の質量速度を変更可能なポンプ11および絞り弁12と前述の流体の潜熱を変更可能な加熱器32とを制御する制御部120と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るいくつかの態様は、気液二相流の流体の流動状態を制御する流動状態制御装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体を通す管路の上流側を加熱する第1加熱ヒータと、下流側を加熱する第2加熱ヒータと、当該管路の上流側の温度を検知する上流側温度検知器と、下流側の温度を検知する下流側温度検知器と、流体の温度を検知する流体温度検知器と、第1加熱ヒータおよび第2加熱ヒータのうち少なくとも一方を制御するマイコンとを有する流体加熱装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この流体加熱装置では、マイコンが、上流側温度検知器、下流側温度検知器、流体温度検知器の各検知温度に基づき、第1加熱ヒータと第2加熱ヒータをそれぞれ独立して制御している。これにより、管路の一部が乾き上がるドライアウトなどの問題が生じることを防止し、飽和蒸気や過熱蒸気などの加熱流体を効率よく生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−46812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の流体加熱装置は、管路および流体の温度を検知して管路および流体の温度を制御するだけなので、飽和蒸気のように、気体と液体とを含む気液二相流の流体を、所望の流動状態に変化させることは困難であった。
【0005】
本実施形態のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、気液二相流の流体を容易に所望の流動状態にすることのできる流動状態制御装置および流動状態制御方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る流動状態制御装置は、流路を流れる気液二相流の流体を所定の流動状態にする流動状態制御装置であって、前述の流体の圧力に関する圧力情報を取得する圧力取得部と、前述の流体の質量速度に関する質量速度情報を取得する質量速度取得部と、前述の流体の乾き度に関する乾き度情報を取得する乾き度取得部と、圧力情報と質量速度情報と乾き度情報とに基づいて、前述の流体の圧力を変更可能な圧力制御装置と前述の流体の質量速度を変更可能な質量速度制御装置と前述の流体の潜熱を変更可能な熱量制御装置とを制御する制御部と、を備える。
【0007】
かかる構成によれば、制御部は、質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とを制御する。ここで、気液二相流の流体の圧力、質量速度、および乾き度が分かると、ベーカー線図から、当該流体の流動状態を特定することができる。また、流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させると、当該流体の流動状態を変化させることができる。よって、制御部が、質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とを制御することにより、流路を流れる気液二相流の流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させることができるので、流体を所定の(任意の)流動状態にすることが可能となる。
【0008】
好ましくは、制御部は、圧力情報と質量速度情報と乾き度情報とに基づいて、前述の流体の現時点における流動状態を検出する流動状態検出部と、現時点における流動状態と前述の所定の流動状態とに基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とのうちの少なくとも一つを駆動する駆動制御部とを含む。
【0009】
かかる構成によれば、駆動制御部が、現時点における流動状態と所定の流動状態とに基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とのうちの少なくとも一つを駆動する。ここで、ベーカー線図において、現時点の流動状態と所定の流動状態とが分かると、気液二相流の流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちのどれを、上昇または低下させればよいかを決定することができる。よって、駆動制御部が、現時点における流動状態と所定の流動状態とに基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とのうちの少なくとも一つを駆動することにより、流路を流れる気液二相流の流体をさらに容易に所望の流動状態にことができる。
【0010】
好ましくは、駆動制御部は、前述の流体の圧力および乾き度を変化させずに前述の流体の質量速度を変化させるように制御する。
【0011】
かかる構成によれば、駆動制御部が、流路を流れる気液二相流の流体の圧力および乾き度を変化させずに流路を流れる気液二相流の流体の質量速度を変化させるように制御する。これにより、ベーカー線図において縦方向(縦軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、流路を流れる気液二相流の流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0012】
好ましくは、駆動制御部は、前述の流体の圧力および質量速度を変化させずに前述の流体の乾き度を変化させるように制御する。
【0013】
かかる構成によれば、駆動制御部が、流路を流れる気液二相流の流体の圧力および質量速度を変化させずに流路を流れる気液二相流の流体の乾き度を変化させるように制御する。これにより、ベーカー線図において横方向(横軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、流路を流れる気液二相流の流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0014】
好ましくは、駆動制御部は、前述の流体の質量速度を変化させずに前述の流体の圧力および乾き度を変化させるように制御する。
【0015】
かかる構成によれば、駆動制御部が、流路を流れる気液二相流の流体の質量速度を変化させずに、流路を流れる気液二相流の流体の圧力および乾き度を変化させるように制御する。これにより、ベーカー線図において各流動様式の領域を変化させるとともに、横方向(横軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、流路を流れる気液二相流の流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0016】
好ましくは、駆動制御部は、前述の流体の圧力を変化させずに前述の流体の質量速度および乾き度を変化させるように制御する。
【0017】
かかる構成によれば、駆動制御部が、流路を流れる気液二相流の流体の圧力を変化させずに流路を流れる気液二相流の流体の質量速度および乾き度を変化させるように制御する。これにより、ベーカー線図においてななめ方向に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、流路を流れる気液二相流の流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0018】
本発明に係る流動状態制御方法は、流動状態制御装置を用いて、流路を流れる気液二相流の流体を所定の流動状態にする流動状態制御方法であって、流動状態制御装置が前述の流体の圧力に関する圧力情報を取得する圧力取得ステップと、流動状態制御装置が前述の流体の質量速度に関する質量速度情報を取得する質量速度取得ステップと、流動状態制御装置が前述の流体の乾き度に関する乾き度情報を取得する乾き度取得ステップと、流動状態制御装置が、圧力情報と質量速度情報と乾き度情報とに基づいて、前述の流体の圧力を変更可能な圧力制御装置と前述の流体の質量速度を変更可能な質量速度制御装置と前述の流体の潜熱を変更可能な熱量制御装置とを制御する制御ステップと、を備える。
【0019】
かかる構成によれば、流動状態制御装置が、質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とを制御する。ここで、気液二相流の流体の圧力、質量速度、および乾き度が分かると、ベーカー線図から、当該流体の流動状態を特定することができる。また、流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させると、当該流体の流動状態を変化させることができる。よって、流動状態制御装置が、質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とを制御することにより、流路を流れる気液二相流の流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させることができるので、流体を所定の(任意の)流動状態にすることが可能となる。
【0020】
好ましくは、制御ステップは、流動状態制御装置が、圧力情報と質量速度情報と乾き度情報とに基づいて、前述の流体の現時点における流動状態を検出する流動状態検出ステップと、流動状態制御装置が、現時点における流動状態と所定の流動状態とに基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とのうちの少なくとも一つを駆動する駆動制御ステップとを含む。
【0021】
かかる構成によれば、流動状態制御装置が、現時点における流動状態と所定の流動状態とに基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とのうちの少なくとも一つを駆動する。ここで、ベーカー線図において、現時点の流動状態と所定の流動状態とが分かると、気液二相流の流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちのどれを、上昇または低下させればよいかを決定することができる。よって、流動状態制御装置が、現時点における流動状態と所定の流動状態とに基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とのうちの少なくとも一つを駆動することにより、流路を流れる気液二相流の流体をさらに容易に所望の流動状態にことができる。
【0022】
好ましくは、駆動制御ステップは、流動状態制御装置が、前述の流体の圧力および乾き度を変化させずに前述の流体の質量速度を変化させるように制御するステップを含む。
【0023】
かかる構成によれば、流動状態制御装置が、流路を流れる気液二相流の流体の圧力および乾き度を変化させずに流路を流れる気液二相流の流体の質量速度を変化させるように制御する。これにより、ベーカー線図において縦方向(縦軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、流路を流れる気液二相流の流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0024】
好ましくは、駆動制御ステップは、流動状態制御装置が、前述の流体の圧力および質量速度を変化させずに前述の流体の乾き度を変化させるように制御するステップを含む。
【0025】
かかる構成によれば、流動状態制御装置が、流路を流れる気液二相流の流体の圧力および質量速度を変化させずに流路を流れる気液二相流の流体の乾き度を変化させるように制御する。これにより、ベーカー線図において横方向(横軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、流路を流れる気液二相流の流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0026】
好ましくは、駆動制御ステップは、流動状態制御装置が、前述の流体の質量速度を変化させずに前述の流体の圧力および乾き度を変化させるように制御するステップを含む。
【0027】
かかる構成によれば、流動状態制御装置が、流路を流れる気液二相流の流体の質量速度を変化させずに、流路を流れる気液二相流の流体の圧力および乾き度を変化させるように制御する。これにより、ベーカー線図において各流動様式の領域を変化させるとともに、横方向(横軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、流路を流れる気液二相流の流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0028】
好ましくは、駆動制御ステップは、流動状態制御装置が、前述の流体の圧力を変化させずに前記流体の質量速度および乾き度を変化させるように制御するステップを含む。
【0029】
かかる構成によれば、流動状態制御装置が、流路を流れる気液二相流の流体の圧力を変化させずに流路を流れる気液二相流の流体の質量速度および乾き度を変化させるように制御する。これにより、ベーカー線図においてななめ方向に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、流路を流れる気液二相流の流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の流動状態制御装置によれば、制御部が、質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とを制御することにより、流路を流れる気液二相流の流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させることができるので、流体を所定の(任意の)流動状態にすることが可能となる。これにより、気液二相流の流体を容易に所望の流動状態にすることができる。また、流体の流動状態を、例えば、配管の内壁を適度に濡れ状態にする環状流に維持する(保つ)ことができ、配管が乾き上がるのを抑制してドライアウトの発生を防止することができる。
【0031】
また、本発明の流動状態制御方法によれば、流動状態制御装置が、質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、圧力制御装置と質量速度制御装置と熱量制御装置とを制御することにより、流路を流れる気液二相流の流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させることができるので、流体を所定の(任意の)流動状態にすることが可能となる。これにより、気液二相流の流体を容易に所望の流動状態にすることができる。また、流体の流動状態を、例えば、配管の内壁を適度に濡れ状態にする環状流に維持する(保つ)ことができ、配管が乾き上がるのを抑制してドライアウトの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】流体供給システムの一例を説明する概略構成図である。
【図2】図1に示した流動状態制御装置の機能的構成を説明するブロック図である。
【図3】二相流体の流動様式の一例を説明する図である。
【図4】二相流体の流動状態の一例を示す特性図である。
【図5】図1に示した流動状態制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】二相流体の流動状態の変化の一例を示す特性図である。
【図7】二相流体の流動状態の変化の他の例を示す特性図である。
【図8】二相流体の流動状態の変化のさらに他の例を示す特性図である。
【図9】二相流体の流動状態の変化のさらに他の例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本実施形態の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0034】
図1ないし図9は、本発明に係る流動状態制御装置および流動状態制御方法の一実施形態を示すためのものである。図1は、流体供給システムSの一例を説明する概略構成図である。図1に示すように、流体供給システムSは、液体と気体とが混在した気液二相流の流体(以下、単に二相流体ということがある)、例えば水蒸気を、流体供給システムSの下流に接続される機器、例えば熱交換器(図示省略)に供給するためものである。流体供給システムSは、給水器10と、ボイラー20と、圧力調整弁31と、加熱器32と、質量流量計41と、圧力センサ42と、乾き度センサ43と、流動状態制御装置100とを備える。
【0035】
給水器10は、給水管15を介して水を供給するためのものである。給水器10は、ポンプ11と、絞り弁12とを備える。ポンプ11は、例えば機械的エネルギーにより圧力を加え、所定の圧力で水を吸水管15に送り出す。絞り弁12は、吸水管15に設けられ、その弁(バルブ)の開度に応じて給水管15を流れる水の流量(質量流量)を調整する。ここで、流体の質量流量は、単位時間あたりの流体の質量速度と流体が流れる流路(配管)の断面積との積である。よって、絞り弁12は、実際には、給水管15を流れる水の質量速度を調整している。
【0036】
ポンプ11および絞り弁12は、詳細を後述する流動状態制御装置100から入力される制御信号(電気信号)に基づいて作動(動作)する。なお、本実施形態におけるポンプ11および絞り弁12は、本発明における「質量速度制御装置」の一例に相当する。
【0037】
ボイラー20は、供給管25を介して二相流体(水蒸気)を供給するためのものである。ボイラー20は、給水管15から供給された水に、例えばガスなどの燃料を燃焼させて得た熱を加えて二相流体(水蒸気)を生成し、生成した二相流体(水蒸気)を供給管25から排出する。
【0038】
供給管25の一端(図1において左端)は、ボイラー20に接続され、供給管25の他端(図1において右端)は、供給先に接続される。ボイラー20から排出された二相流体は、供給管25を図1に矢印で示す方向に流れる。供給管25の一端と他端との間には、圧力調整弁31と、加熱器32と、質量流量計41と、圧力センサ42と、乾き度センサ43とが設置される。
【0039】
圧力調整弁31は、ボイラー20から排出され、供給管25を流れる二相流体を、例えば減圧して二相流体の圧力が所定値になるように調整する。圧力調整弁31は、流動状態制御装置100から入力される制御信号(電気信号)に基づいて作動(動作)する。なお、本実施形態における圧力調整弁31は、本発明における「圧力制御装置」の一例に相当する。
【0040】
本実施形態では、「圧力制御装置」の一例として、二相流体の圧力を低下させる圧力調整弁31を設置する例を示したが、これに限定されない。例えば、圧力調整弁31に代えて、または圧力調整弁31とともに、供給管25に圧力ポンプを設けるようにしてもよい。この場合、供給管25を流れる二相流体の圧力を上昇させることが可能となる。
【0041】
加熱器32は、例えば電気的エネルギーにより発熱するヒータである。加熱器32は、供給管25を流れる二相流体を加熱し、二相流体の潜熱(熱量)を変化させる。加熱器32は、流動状態制御装置100から入力される制御信号(電気信号)に基づいて作動(動作)する。なお、本実施形態における加熱器は、本発明における「熱量制御装置」の一例に相当する。
【0042】
本実施形態では、「熱量制御装置」の一例として、二相流体の潜熱(熱量)を増加させる加熱器32を設置する例を示したが、これに限定されない。例えば、加熱器32に代えて、または加熱器32とともに、供給管25に冷却装置を設けるようにしてもよい。この場合、供給管25を流れる二相流体の潜熱(熱量)を低減させることが可能となる。
【0043】
質量流量計41は、供給管25を流れる二相流体の質量速度を検出する。質量流量計41は、検出した質量速度に応じた検出信号(電気信号)を流動状態制御装置100に出力する。なお、質量流量計41は、二相流体の質量速度に代えて、または二相流体の質量速度とともに、二相流体の質量流量に応じた検出信号(電気信号)を出力してもよい。
【0044】
本実施形態では、質量流量計41を設置する例を示したが、これに限定されない。例えば、質量流量計41に代えて、質量速度を検出するフローセンサ(流れセンサ)を設けるようにしてもよい。
【0045】
圧力センサ42は、供給管25を流れる二相流体の圧力を検出する。圧力センサ42は、検出した圧力に応じた検出信号(電気信号)を流動状態制御装置100に出力する。
【0046】
乾き度センサ43は、供給管25を流れる二相流体の乾き度(クオリティ)を検出する。乾き度センサ43は、検出した乾き度に応じた検出信号(電気信号)を流動状態制御装置100に出力する。
【0047】
一般に、二相流体の乾き度(クオリティ)は、湿り蒸気において飽和液と飽和蒸気の混合割合を示したものである。例えば、1[kg]に含まれる飽和蒸気がx[kg](0≦x≦1)であるとき、乾き度はxで表される。
【0048】
二相流体の乾き度は、例えば、二相流体の圧力および質量速度が一定の(変化しない)状態で、加熱器32が加熱量(加熱状態)を変化させ、二相流体の潜熱を変化させた場合に、変化する。また、例えば、加熱器32の加熱量と二相流体の質量速度とが一定の(変化しない)状態で二相流体の圧力を変化させた場合にも、二相流体の乾き度が変化する。
【0049】
流動状態制御装置100は、供給管25を流れる水蒸気(二相流体)の流動状態を所定の流動状態にするためのものである。流動状態制御装置100は、給水器10のポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32と、質量流量計41と、圧力センサ42と、乾き度センサ43とに接続される。
【0050】
図2は、図1に示した流動状態制御装置100の機能的構成を説明するブロック図である。図2に示すように、流動状態制御装置100は、情報取得部110と、制御部120と、記憶部130と、出力部140と、を備える。
【0051】
情報取得部110は、質量流量計41と、圧力センサ42と、乾き度センサ43とに接続される。情報取得部110には、質量流量計41から質量速度の検出信号が、圧力センサ42から圧力の検出信号が、乾き度センサ43から乾き度の検出信号が、それぞれ入力される。これにより、情報取得部110は、二相流体の質量速度に関する質量速度情報と、二相流体の圧力に関する圧力情報と、二相流体の乾き度に関する乾き度情報とを取得する。
【0052】
本実施形態では、情報取得部110が、質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報の3つの情報を取得する例を示したが、これに限定されない。例えば、流動状態制御装置100は、質量速度情報取得部と、圧力情報取得部と、乾き度情報取得部と、を備え、それぞれが、質量速度情報、圧力情報、または乾き度情報を取得するようにしてもよい。
【0053】
情報取得部110は、A/D変換器(図示量略)を含んでおり、入力された各検出信号(電気信号)を検出データに変換する。情報取得部110は、制御部120に接続され、変換した各検出データを制御部120に出力する。
【0054】
制御部120は、例えばCPUなどで構成され、情報取得部110に接続される。制御部120は、情報取得部110が取得した質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、給水器10のポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とを制御する。
【0055】
図3は、二相流体の流動様式の一例を説明する図である。ここで、供給管25を流れる二相流体の流動状態は、図3に示すように、成層流(a)と、波状流(b)と、せん状流(c)と、スラグ流(d)と、環状流(e)と、気泡流(f)と、環状噴霧流(g)と、の7つの流動様式に分類することができる。
【0056】
図4は、二相流体の流動状態の一例を示す特性図である。なお、図4に示す特性図は、二相流体の圧力(絶対圧力)が140[ata]の場合のベーカー線図(Baker線図)である。図4に示すように、二相流体の圧力、質量速度、および乾き度が分かると、ベーカー線図から、当該二相流体の流動状態を特定することができる。また、二相流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させると、当該二相流体の流動状態を変化させることができる。例えば、成層流(a)の二相流体において質量速度を上昇させた場合に、流動状態が波状流(b)、せん状流(c)、またはスラグ流(d)に変化する。よって、制御部120が、質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、給水器10のポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とを制御することにより、供給管25を流れる二相流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させることができるので、二相流体を所定の(任意の)流動状態にすることが可能となる。
【0057】
本実施形態では、制御部120は、供給管25を流れる二相流体が所定の流動状態として環状流(e)になる(維持される)ように、制御するものとして説明する。
【0058】
図2に示すように、制御部120は、流動状態検出部121と、駆動制御部125とを含んで構成される。
【0059】
流動状態検出部121は、情報取得部110に接続され、情報取得部110から質量速度データ、圧力データ、および乾き度データが入力される。また、流動状態検出部121は、記憶部130にアクセス(読み込みおよび書き出し)自在に接続される。流動状態検出部121は、情報取得部110から入力された質量速度データ、圧力データ、および乾き度データを、記憶部130に書き出す。
【0060】
記憶部130は、圧力ごとのベーカー線図に関するデータをあらかじめ記憶している。流動状態検出部121は、情報取得部110から入力された圧力データに基づいて、記憶部130からベーカー線図に関するデータを読み出す。そして、流動状態検出部121は、記憶部130から読み出したベーカー線図に関するデータに基づいてベーカー線図を描画し、情報取得部110から入力された質量速度データと乾き度データとに基づいて、供給管25を流れる二相流体の現時点における流動状態を検出する。
【0061】
駆動制御部125は、流動状態検出部121に接続され、流動状態検出部121から現時点における流動状態が入力される。また、駆動制御部125は、流動状態検出部121と同様に、記憶部130にアクセス(読み込みおよび書き出し)自在に接続される。駆動制御部125は、記憶部130にアクセスしつつ、流動状態検出部121から入力された現時点における流動状態と、所定の流動状態、すなわち、環状流(e)とに基づいて、ポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とのうちの少なくとも一つを駆動する制御データを生成して出力する。
【0062】
ここで、図4に示すベーカー線図において、現時点の流動状態と所定の流動状態とが分かると、二相流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちのどれを、上昇または低下させればよいかを決定することができる。例えば、現時点の流動状態が環状噴霧流(g)である場合、目標となる環状流(e)は質量速度が低い領域であるから、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の質量速度を低下させるように、ポンプ11および絞り弁12を制御する制御データを出力する。よって、駆動制御部125が、現時点における流動状態と所定の流動状態とに基づいて、ポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とのうちの少なくとも一つを駆動することにより、供給管25を流れる二相流体をさらに容易に所望の流動状態にことができる。
【0063】
出力部140は、駆動制御部125に接続され、駆動制御部125から制御データが入力される。出力部140は、D/A変換器(図示量略)を含んでおり、入力された制御データを制御信号(電気信号)に変換する。また、出力部140は、給水器10のポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とに接続される。出力部140は、変換した制御信号(電気信号)をポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とに出力する。
【0064】
本実施形態では、駆動制御部125が給水器10のポンプ11および絞り弁12の両方を制御する例を示したが、これに限定されない。例えば、駆動制御部125は、ポンプ11および絞り弁12のうちのいずれか一方のみを制御するようにしてもよい。
【0065】
次に、流動状態制御装置100が供給管25を流れる二相流体の流動状態を環状流(e)にする動作について説明する。
【0066】
図5は、図1に示した流動状態制御装置100の動作を説明するフローチャートである。図5に示すように、流動状態制御装置100は処理S200を実行する。すなわち、まず、情報取得部110は、質量速度情報と、圧力情報と、乾き度情報とを取得する(S201)。
【0067】
次に、流動状態検出部121が、質量速度データと、圧力データと、乾き度データとに基づいて、供給管25を流れる二相流体の現時点における流動状態を検出する(S202)。
【0068】
次に、駆動制御部125は、流動状態検出部121が検出した流動状態に基づいて、現時点の流動状態が気泡流であるか否かを判定する(S203)。
【0069】
S203の判定の結果、現時点の流動状態が気泡流である場合、駆動制御部125は、加熱により供給管25を流れる二相流体の潜熱を増加させるように、出力部140を介して加熱器32に制御信号を出力して制御する。このとき、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の圧力および質量速度が変化しないように、圧力調整弁31とポンプ11および絞り弁12とを制御する。これにより、駆動制御部125は、圧力および質量速度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の乾き度を上昇させる(S204)。
【0070】
図6は、二相流体の流動状態の変化の一例を示す特性図である。なお、図6に示す特性図は、二相流体の圧力(絶対圧力)が35[ata]の場合のベーカー線図(Baker線図)である。図6に示すように、例えば、現時点の流動状態が状態P1である場合、S204のステップにおいて、圧力および質量速度を変化させずに乾き度を上昇させると、矢印で示すように、気泡流である状態P1から環状噴霧流である状態P2に変化する。このように、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の圧力および質量速度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の乾き度を変化させるように制御することにより、図6に示すように、ベーカー線図において横方向(横軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。
【0071】
流動状態制御装置100は、S204のステップを終了後、S201以降のステップを再度繰り返す。
【0072】
一方、S203の判定の結果、現時点の流動状態が気泡流でない場合、駆動制御部125は、S202において流動状態検出部121が検出した流動状態に基づいて、現時点の流動状態が環状噴霧流であるか否かを判定する(S205)。
【0073】
S205の判定の結果、現時点の流動状態が環状噴霧流である場合、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の質量速度を低下させるように、出力部140を介してポンプ11および絞り弁12に制御信号を出力して制御する。このとき、駆動制御部125は、質量速度の低下に応じて加熱量を減少させて供給管25を流れる二相流体の潜熱を一定に保つ(維持する)ように、出力部140を介して加熱器32に制御信号を出力して制御する。また、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の圧力が変化しないように、圧力調整弁31を制御する。これにより、駆動制御部125は、圧力および乾き度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を低下させる(S206)。
【0074】
図6に示すように、例えば、現時点の流動状態が状態P2である場合、S206のステップにおいて、圧力および乾き度を変化させずに質量速度を低下させると、矢印で示すように、環状噴霧流である状態P2から環状流である状態P3に変化する。このように、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の圧力および乾き度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を変化させるように制御することにより、図6に示すように、ベーカー線図において縦方向(縦軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。
【0075】
流動状態制御装置100は、S206のステップを終了後、S201以降のステップを再度繰り返す。
【0076】
一方、S205の判定の結果、現時点の流動状態が環状噴霧流でない場合、駆動制御部125は、S202において流動状態検出部121が検出した流動状態に基づいて、現時点の流動状態が成層流であるか否かを判定する(S207)。
【0077】
S207の判定の結果、現時点の流動状態が成層流である場合、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の質量速度を上昇させるように、出力部140を介してポンプ11および絞り弁12に制御信号を出力して制御する。このとき、駆動制御部125は、質量速度の上昇に応じて加熱量を増加させて供給管25を流れる二相流体の潜熱を一定に保つ(維持する)ように、出力部140を介して加熱器32に制御信号を出力して制御する。また、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の圧力が変化しないように、圧力調整弁31を制御する。これにより、駆動制御部125は、圧力および乾き度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を上昇させる(S208)。
【0078】
図7は、二相流体の流動状態の変化の他の例を示す特性図である。なお、図7に示す特性図は、二相流体の圧力(絶対圧力)が140[ata]の場合のベーカー線図(Baker線図)である。図7に示すように、例えば、現時点の流動状態が状態P4である場合、S208のステップにおいて、圧力および乾き度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を上昇させると、矢印で示すように、成層流である状態P4からせん状流である状態P5に変化する。このように、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の圧力および乾き度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を変化させるように制御することにより、図7に示すように、ベーカー線図において縦方向(縦軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。
【0079】
流動状態制御装置100は、S208のステップを終了後、S201以降のステップを再度繰り返す。
【0080】
一方、S207の判定の結果、現時点の流動状態が成層流でない場合、駆動制御部125は、S202において流動状態検出部121が検出した流動状態に基づいて、現時点の流動状態がせん状流であるか否かを判定する(S209)。
【0081】
S209の判定の結果、現時点の流動状態がせん状流である場合、駆動制御部125は、加熱により供給管25を流れる二相流体の潜熱を増加させるように、出力部140を介して加熱器32に制御信号を出力して制御する。このとき、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の圧力および質量速度が変化しないように、圧力調整弁31とポンプ11および絞り弁12とを制御する。これにより、駆動制御部125は、圧力および質量速度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の乾き度を上昇させる(S210)。
【0082】
図7に示すように、例えば、現時点の流動状態が状態P5である場合、S210のステップにおいて、圧力および質量速度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の乾き度を上昇させると、矢印で示すように、せん状流である状態P5からスラグ流である状態P6に変化する。このように、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の圧力および質量速度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の乾き度を変化させるように制御することにより、図7に示すように、ベーカー線図において横方向(横軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。
【0083】
流動状態制御装置100は、S210のステップを終了後、S201以降のステップを再度繰り返す。
【0084】
一方、S209の判定の結果、現時点の流動状態がせん状流でない場合、駆動制御部125は、S202において流動状態検出部121が検出した流動状態に基づいて、現時点の流動状態がスラグ流であるか否かを判定する(S211)。
【0085】
S211の判定の結果、現時点の流動状態がスラグ流である場合、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の圧力を低下させるように、出力部140を介して圧力調整弁31に制御信号を出力して制御する。このとき、圧力の低下により、供給管25を流れる二相流体の乾き度が上昇する。また、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の質量速度が変化しないように、ポンプ11および絞り弁12を制御する。これにより、駆動制御部125は、質量速度を変化させずに、供給管25を流れる二相流体の圧力を低下させるとともに乾き度を上昇させる(S212)。
【0086】
図8は、二相流体の流動状態の変化のさらに他の例を示す特性図である。なお、図8に示す特性図は、二相流体の圧力(絶対圧力)が70[ata]の場合のベーカー線図(Baker線図)である。図7および図8に示すように、例えば、現時点の流動状態が状態P6である場合、S212のステップにおいて、質量速度を変化させずに、供給管25を流れる二相流体の圧力を低下させるとともに乾き度を上昇させると、図7から図8にベーカー線図が変化して環状流の領域が広がるとともに、図8に矢印で示すように、スラグ流である状態P6から環状流P7に変化する。このように、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の質量速度を変化させずに、供給管25を流れる二相流体の圧力および乾き度を変化させるように制御することにより、図7および図8に示すように、ベーカー線図において各流動様式の領域を変化させるとともに、横方向(横軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。
【0087】
流動状態制御装置100は、S210のステップを終了後、S201以降のステップを再度繰り返す。
【0088】
一方、S211の判定の結果、現時点の流動状態がスラグ流でない場合、駆動制御部125は、S202において流動状態検出部121が検出した流動状態に基づいて、現時点の流動状態が波状流であるか否かを判定する(S213)。
【0089】
S213の判定の結果、現時点の流動状態が波状流である場合、駆動制御部125は、記憶部130から乾き度データを読み出し、供給管25を流れる二相流体の現時点の乾き度がしきい値kより大きいか否かを判定する(S214)。しきい値kは、例えば制御部120のメモリ(図示省略)にあらかじめ記憶され、一例として、しきい値kに0.6が設定される(k=0.6)。
【0090】
S214の判定の結果、現時点の乾き度がしきい値kより大きい場合、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の質量速度を上昇させるように、出力部140を介してポンプ11および絞り弁12に制御信号を出力して制御する。また、駆動制御部125は、加熱量を一定に保つ(維持する)ように加熱器32を制御する。このとき、加熱器32の加熱量を一定のまま質量速度を上昇させることによって、供給管25を流れる二相流体の乾き度が低下する。さらに、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の圧力が変化しないように、圧力調整弁31を制御する。これにより、駆動制御部125は、圧力を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を上昇させるとともに乾き度を低下させる(S215)。
【0091】
一方、S214の判定の結果、現時点の乾き度がしきい値kより大きくない、すなわち、現時点の乾き度がしきい値k以下である場合、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の質量速度を上昇させるように、出力部140を介してポンプ11および絞り弁12に制御信号を出力して制御する。このとき、駆動制御部125は、質量速度の上昇に応じて加熱量を増加させて供給管25を流れる二相流体の潜熱を一定に保つ(維持する)ように、出力部140を介して加熱器32を制御する。また、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の圧力が変化しないように、圧力調整弁31を制御する。これにより、駆動制御部125は、圧力および乾き度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を上昇させる(S216)。
【0092】
図9は、二相流体の流動状態の変化のさらに他の例を示す特性図である。なお、図9に示す特性図は、二相流体の圧力(絶対圧力)が1[ata]の場合のベーカー線図(Baker線図)である。図9に示すように、例えば、現時点の乾き度が0.8であって、流動状態が状態P8である場合、S215のステップにおいて、圧力を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を上昇させるとともに乾き度を低下させると、矢印で示すように、波状流である状態P8から環状流である状態P9に変化する。このように、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の圧力を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度および乾き度を変化させるように制御することにより、図9に示すように、ベーカー線図においてななめ方向に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。
【0093】
一方、例えば、現時点の乾き度が0.4であって、流動状態が状態P10である場合、S216のステップにおいて、圧力および乾き度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を上昇させると、矢印で示すように、波状流である状態P10から環状流である状態P11に変化する。このように、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の圧力および乾き度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を変化させるように制御することにより、図9に示すように、ベーカー線図において縦方向(縦軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。
【0094】
流動状態制御装置100は、S215またはS216のステップを終了後、S201以降のステップを再度繰り返す。
【0095】
一方、S213の判定の結果、現時点の流動状態が波状流でない場合、現時点の流動状態は、気泡流、環状噴霧流、成層流、せん状流、スラグ流、および波状流のいずれでもないから、残りの流動状態、すなわち、環状流であると考えられる。この場合、供給管25を流れる二相流体は所望の流動状態になっているので、流動状態制御装置100は流動状態を変化させる必要がない。よって、駆動制御部125は何も制御せず、流動状態制御装置100は、S201以降のステップを再度繰り返す。
【0096】
本実施形態では、S203、S205、S207、S209、S211、およびS213のステップにおいて、気泡流、環状噴霧流、成層流、せん状流、スラグ流、波状流の順序で判定する例を示したが、これに限定されず、順序を入れ換えてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、流動状態制御装置100が所定の流動状態として環状流にする例を示したが、これに限定されない。例えば、設置環境(設置場所)、使用態様、供給先の機器などによって、環状流以外の流動状態にするようにしてもよい。
【0098】
このように、本実施形態における流動状態制御装置100および流動状態制御方法によれば、制御部120は、情報取得部110が取得した質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、給水器10のポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とを制御する。ここで、図4に示すように、二相流体の圧力、質量速度、および乾き度が分かると、ベーカー線図から、当該二相流体の流動状態を特定することができる。また、二相流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させると、当該二相流体の流動状態を変化させることができる。例えば、成層流(a)の二相流体において質量速度を上昇させた場合に、流動状態が波状流(b)、せん状流(c)、またはスラグ流(d)に変化する。よって、制御部120が、質量速度情報、圧力情報、および乾き度情報に基づいて、給水器10のポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とを制御することにより、供給管25を流れる二相流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちの少なくとも一つを変化させることができるので、二相流体を所定の(任意の)流動状態にすることが可能となる。これにより、二相流体を容易に所望の流動状態にすることができる。また、二相流体の流動状態を、例えば、供給管25の内壁を適度に濡れ状態にする環状流に維持する(保つ)ことができ、供給管25が乾き上がるのを抑制してドライアウトの発生を防止することができる。
【0099】
また、本実施形態における流動状態制御装置100および流動状態制御方法によれば、駆動制御部125が、現時点における流動状態と所定の流動状態とに基づいて、ポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とのうちの少なくとも一つを駆動する。ここで、図4に示すベーカー線図において、現時点の流動状態と所定の流動状態とが分かると、二相流体の圧力、質量速度、および乾き度のうちのどれを、上昇または低下させればよいかを決定することができる。例えば、現時点の流動状態が環状噴霧流(g)である場合、目標となる環状流(e)は質量速度が低い領域であるから、駆動制御部125は、供給管25を流れる二相流体の質量速度を低下させるように、ポンプ11および絞り弁12を制御する制御データを出力する。よって、駆動制御部125が、現時点における流動状態と所定の流動状態とに基づいて、ポンプ11および絞り弁12と、圧力調整弁31と、加熱器32とのうちの少なくとも一つを駆動することにより、供給管25を流れる二相流体をさらに容易に所望の流動状態にことができる。
【0100】
また、本実施形態における流動状態制御装置100および流動状態制御方法によれば、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の圧力および乾き度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度を変化させるように制御する。これにより、図6、図7、および図9に示すように、ベーカー線図において縦方向(縦軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、供給管25を流れる二相流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0101】
また、本実施形態における流動状態制御装置100および流動状態制御方法によれば、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の圧力および質量速度を変化させずに供給管25を流れる二相流体の乾き度を変化させるように制御する。これにより、図6および図7に示すように、ベーカー線図において横方向(横軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、供給管25を流れる二相流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0102】
また、本実施形態における流動状態制御装置100および流動状態制御方法によれば、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の質量速度を変化させずに、供給管25を流れる二相流体の圧力および乾き度を変化させるように制御する。これにより、図7および図8に示すように、ベーカー線図において各流動様式の領域を変化させるとともに、横方向(横軸方向)に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、供給管25を流れる二相流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0103】
また、本実施形態における流動状態制御装置100および流動状態制御方法によれば、駆動制御部125が、供給管25を流れる二相流体の圧力を変化させずに供給管25を流れる二相流体の質量速度および乾き度を変化させるように制御する。これにより、図9に示すように、ベーカー線図においてななめ方向に隣接する流動状態に変化させることが可能となる。これにより、供給管25を流れる二相流体を、現在の流動状態から所定の流動状態に迅速かつ正確に変化させることができる。
【0104】
なお、前述した実施形態の構成は、組み合わせたり、あるいは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本実施形態の構成は前述した実施形態のみに限定されるものではなく、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10…給水器
11…ポンプ
12…絞り弁
15…給水管
20…ボイラー
25…供給管
31…圧力調整弁
32…加熱器
41…質量流量計
42…圧力センサ
43…乾き度センサ
100…流動状態制御装置
110…情報取得部
120…制御部
121…流動状態検出部
125…駆動制御部
130…記憶部
140…出力部
S…流体供給システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる気液二相流の流体を所定の流動状態にする流動状態制御装置であって、
前記流体の圧力に関する圧力情報を取得する圧力取得部と、
前記流体の質量速度に関する質量速度情報を取得する質量速度取得部と、
前記流体の乾き度に関する乾き度情報を取得する乾き度取得部と、
前記圧力情報と前記質量速度情報と前記乾き度情報とに基づいて、前記流体の圧力を変更可能な圧力制御装置と前記流体の質量速度を変更可能な質量速度制御装置と前記流体の潜熱を変更可能な熱量制御装置とを制御する制御部と、を備える
ことを特徴とする流動状態制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記圧力情報と前記質量速度情報と前記乾き度情報とに基づいて、前記流体の現時点における流動状態を検出する流動状態検出部と、
前記現時点における流動状態と前記所定の流動状態とに基づいて、前記圧力制御装置と前記質量速度制御装置と前記熱量制御装置とのうちの少なくとも一つを駆動する駆動制御部とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の流体状態制御装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記流体の圧力および乾き度を変化させずに前記流体の質量速度を変化させるように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の流動状態制御装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記流体の圧力および質量速度を変化させずに前記流体の乾き度を変化させるように制御する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の流動状態制御装置。
【請求項5】
前記駆動制御部は、前記流体の質量速度を変化させずに前記流体の圧力および乾き度を変化させるように制御する
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載の流動状態制御装置。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記流体の圧力を変化させずに前記流体の質量速度および乾き度を変化させるように制御する
ことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一項に記載の流動状態制御装置。
【請求項7】
流動状態制御装置を用いて、流路を流れる気液二相流の流体を所定の流動状態にする流動状態制御方法であって、
前記流動状態制御装置が前記流体の圧力に関する圧力情報を取得する圧力取得ステップと、
前記流動状態制御装置が前記流体の質量速度に関する質量速度情報を取得する質量速度取得ステップと、
前記流動状態制御装置が前記流体の乾き度に関する乾き度情報を取得する乾き度取得ステップと、
前記流動状態制御装置が、前記圧力情報と前記質量速度情報と前記乾き度情報とに基づいて、前記流体の圧力を変更可能な圧力制御装置と前記流体の質量速度を変更可能な質量速度制御装置と前記流体の潜熱を変更可能な熱量制御装置とを制御する制御ステップと、を備える
ことを特徴とする流動状態制御方法。
【請求項8】
前記制御ステップは、
前記流動状態制御装置が、前記圧力情報と前記質量速度情報と前記乾き度情報とに基づいて、前記流体の現時点における流動状態を検出する流動状態検出ステップと、
前記流動状態制御装置が、前記現時点における流動状態と前記所定の流動状態とに基づいて、前記圧力制御装置と前記質量速度制御装置と前記熱量制御装置とのうちの少なくとも一つを駆動する駆動制御ステップとを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の流体状態制御方法。
【請求項9】
前記駆動制御ステップは、前記流動状態制御装置が、前記流体の圧力および乾き度を変化させずに前記流体の質量速度を変化させるように制御するステップを含む
ことを特徴とする請求項8に記載の流動状態制御方法。
【請求項10】
前記駆動制御ステップは、前記流動状態制御装置が、前記流体の圧力および質量速度を変化させずに前記流体の乾き度を変化させるように制御するステップを含む
ことを特徴とする請求項8または9に記載の流動状態制御方法。
【請求項11】
前記駆動制御ステップは、前記流動状態制御装置が、前記流体の質量速度を変化させずに前記流体の圧力および乾き度を変化させるように制御するステップを含む
ことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一項に記載の流動状態制御方法。
【請求項12】
前記駆動制御ステップは、前記流動状態制御装置が、前記流体の圧力を変化させずに前記流体の質量速度および乾き度を変化させるように制御するステップを含む
ことを特徴とする請求項8ないし11のいずれか一項に記載の流動状態制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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