説明

気相においてイソシアネートを製造する方法

イソシアネートを、当該イソシアネートに対応するアミンとホスゲンとを不活性媒体の存在下又は非存在下で気相において反応させて製造する方法であって、
(a)気化器においてアミンを気化する工程と、
(b)アミンを過熱する工程と、
(c)気体アミンをホスゲンと混合し、反応領域に導入する工程と、
(d)反応領域においてアミンとホスゲンを反応させて、イソシアネートと塩化水素を含む反応混合物を生成することによりイソシアネートを得る工程と、
(e)イソシアネートと塩化水素を含む反応混合物を冷却する工程と、
を有し、
上記気化器は、熱伝達媒体を流す管を有する容器を含み、
上記管が少なくとも300m2/m3のアミン体積流量に対する特定熱伝達面積を有するように、該管の数及び径が形成されることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
イソシアネートを、当該イソシアネートに対応するアミンとホスゲンとを不活性媒体の存在下又は非存在下で気相において反応させて製造する方法であって、
(a)気化器においてアミンを気化する工程と、
(b)アミンを過熱する工程と、
(c)気体アミンをホスゲンと混合し、反応領域に導入する工程と、
(d)反応領域においてアミンとホスゲンを反応させて、イソシアネートと塩化水素を含む反応混合物を生成することによりイソシアネートを得る工程と、
(e)イソシアネートと塩化水素を含む反応混合物を冷却する工程と、
を有することを特徴とする製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミンのホスゲン化によるイソシアネートの製造は、基本的に液相ホスゲン化又は気相ホスゲン化を用いて可能となる。気相ホスゲン化は、選択性が高く、有毒なホスゲンの必要量が少なく、必要なエネルギーを低減することができる。
【0003】
気相ホスゲン化においては、アミン含有供給流及びホスゲン含有供給流が、気相状態で混合される。アミンとホスゲンが反応し、塩化水素(HCl)が遊離されて、対応するイソシアネートが生じる。アミン含有供給流は、一般的に、液相状態で存在し、その後気化され、ホスゲン含有流と混合される前に任意に過熱される。
【0004】
気相においてイソシアネートを製造する対応の方法が、例えば、特許文献1又は2に記載されている。
【0005】
後続反応を回避するために、上記反応が完了した後には、反応混合物が速やかに冷却される。この冷却は、例えば液体クエンチにより行われる。
【0006】
アミンを気化及び過熱して300℃を超える反応温度とするために、現在においては、高圧下において電熱、燃焼ガス、又は蒸気がほぼ使用される。また、適宜、溶融塩が熱伝達媒体として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP−A1−319655
【特許文献2】EP−A1−555258
【特許文献3】EP−A1−754698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高温におけるアミンの気化及び過熱の間において、分解及びオリゴマー化反応が生じる。これにより、第1に全体工程において収率が減少し、第2に生じたオリゴマーが気化しないまま、気化器及び気化器を含むプラント要素に析出してしまう。収率のロス及び妨害のリスクを最小限にするために、アミンに対する気化時間及び加熱時間の短縮を徹底する必要がある。これは、体積に対する高い熱伝達面積によりほぼ実現される。本発明の目的において、体積に対する熱伝達面積とは、気化すべきアミンの体積流量に対する熱伝達面積の比である。チャンネルを通してアミンが運ばれ1000m2/m3の熱伝達面積を与える気化器が、特許文献3に開示されている。
【0009】
しかし、記載されている気化器は、個々のチャンネルにおいて各流路の物理的な分岐が生じるという欠点がある。析出物がチャンネルに形成されると、これを通るストリームの量が減少し、結果としてチャンネル内における残留時間が増加して、さらなる析出物の形成に伴うアミン分解の増加につながる。これは、チャンネルの妨害となる。従って、チャンネルの熱伝達面積が、もはや気化に利用できなくなる。一定の体積流量で、圧力がより低下し且つ残留時間が短くなる結果、他の残留しているチャンネルの流量増加が生じ、アミンの不完全な気化につながり得る。従って、アミンが流れる平行チャンネル構造は、その使用において個々のチャンネルにおける析出物に非常に影響を受けやすい。アミンが個々のチャンネルを流れる際に生じる他の問題は、全てのチャンネルに亘るアミンの均一な分配についてである。
【0010】
従って、本発明は、気相においてアミンをホスゲンと反応させてイソシアネートを製造する方法であって、高い特定熱伝達面積を有することで気化及び過熱時間が短縮される気化器でアミンを気化し、公知技術で知られている気化器における欠点の無い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、イソシアネートを、当該イソシアネートに対応するアミンとホスゲンとを不活性媒体の存在下又は非存在下で気相において反応させて製造する方法であって、
(a)気化器においてアミンを気化する工程と、
(b)アミンを過熱する工程と、
(c)気体アミンをホスゲンと混合し、反応領域に導入する工程と、
(d)反応領域においてアミンとホスゲンを反応させて、イソシアネートと塩化水素を含む反応混合物を生成することによりイソシアネートを得る工程と、
(e)イソシアネートと塩化水素を含む反応混合物を冷却する工程と、
を有し、
上記気化器は、熱伝達媒体を流す管を有する容器を含み、
上記管が少なくとも300m2/m3のアミン体積流量に対する特定熱伝達面積を有するように、該管の数及び径が形成されることを特徴とする製造方法により達成される。
【0012】
本発明の目的において、特定熱伝達面積は、その周囲にアミンが流れる気化器に設けられた全ての管の面、及び該アミンの流れる体積に対する熱媒体の流れる面にあたる。
【0013】
熱媒体が気化器の管内を流れ、アミンが管の周囲を流れることの利点は、アミンの流路を個々のチャンネルに亘って分割させる必要がない点である。更に、アミンが流れる比較的高い連続領域により、アミンの分解を促進する析出物の生成を回避し、さらなる析出物の生成を回避することができる。析出物の生成のレベルが低いと、圧力降下率の増加が最小限のみにとどまり、したがって、第1に重要な残留時間の短縮につながる。従って、気化器を、析出物の発生による制限を受けることなく初期状態のままで使用することができる。更に、たとえ少々の析出物が生じてもアミンの流速が変わらず高く維持されるので、当該析出物は少なくとも部分的にアミン流に取り込まれ、析出物の生成によるリスクがさらに低下される。
【0014】
急速な気化を実現するために、及び任意のアミンを過熱するために、大きな特定熱伝達面積が選択される。本発明では、特定熱伝達面積は少なくとも300m2/m3である。アミンの流量体積に基づく特定熱伝達面積は、少なくとも400m2/m3であることが好ましく、特に500m2/m3であることが好ましい。
【0015】
急速なアミンの気化を実現するために、及び熱伝達面における析出物の生成を回避するために、容器内で管をアミンの流方向に対して平行に配置することが好ましい。ここで、熱媒体を、アミンに対して並流、或いはアミンに対して対向流の何れかになるように管に流しても良い。熱媒体を対向流となるように管に流すことが好ましい。
【0016】
更に、本発明の実施の形態において、管の表面における析出物の形成を減少させるために、管の表面を滑らかにすることが好ましい。ここで、滑らかな表面とは、特に、リブや突起が無く、溝も無い表面を意味する。更に、管表面の粗さが小さいと好ましい。管表面の粗さが小さいと、析出物が付着し得る主要部が表面にほとんど存在しなくなる。
【0017】
管周囲におけるアミンの均一な流れを実現するために、管の断面を円形に形成することが好ましい。しかしながら、円形断面以外の任意の断面に形成しても良い。円形断面の利点は、管において析出物が形成され得る端部が存在しなくなることである。更に、円形断面を有する管により、多数の管を使用することができ、したがって、特定熱伝達面積を大きくすることができる。
【0018】
少なくとも300m2/m3の、アミンの流量体積に対する特定熱伝達面積を実現するために、外径が10mm以下、好ましくは8mm以下の管を気化器に使用することが好ましい。2つの隣り合う管の最小距離は、3mm以下であることが好ましい。管径を10mm以下及び管の間隔を3mm以下とすることにより、上述のアミンの流量体積に対する特定熱伝達面積が得られる。
【0019】
アミンの気化、及び任意の過熱に必要な残留時間は、対応する気化器の全長、すなわち管の全長、及び気化器を流れる体積流量に応じて設定される。一定面積の場合にアミンの体積流量が増加すると流速が増加し、したがって、気化器内におけるアミンの残留時間が短くなる。アミンが流れる与えられた断面積及び与えられた体積流量において残留時間を増加させるために、管、すなわち気化器を長くする必要がある。アミンの気化及び任意に過熱に使用される気化器において、管の長さは、好ましくは0.1〜5mmの範囲であり、より好ましくは0.2〜3mmの範囲であり、特に0.3〜2mmの範囲である。
【0020】
気化器におけるアミンの気化に代えて、気化温度未満の温度でアミンを気化器に供給し、そして先ず、気化器内でこれを気化温度に予備加熱することも可能である。気化温度に到達した後、アミンを気化器内で気化させる。対応するイソシアネートを生成するためにホスゲンにアミンを反応させる反応温度は、アミンの気化温度を上回り、通常、300〜400℃である。従って、気化の後に、イソシアネートを過熱する必要がある。アミンの過熱も気化器において同様に実行される。
【0021】
気化器においてアミンを気化する圧力は、好ましくは絶対圧で0.05〜1barである。圧力は、特に絶対圧で0.8〜5barであることが好ましい。
【0022】
過熱の後、アミンをホスゲンと混合させる。ここで、ホスゲンの温度は、250〜450℃であることが好ましい。ホスゲンの加熱は、当業者に知られている所望の方法で実行することができる。例えば、アミンを気化及び過熱する熱交換器と同一の構造を有する熱交換器をホスゲンの加熱に使用することができる。しかし、他の熱交換器をホスゲンの加熱に使用しても良い。これは、特に、ホスゲンが加熱されるべき温度において、析出物を生成するような分解を起こさないからである。従って、ホスゲンは、特に急速に加熱する必要はない。
【0023】
混合工程の後、ホスゲン及びアミンを反応領域に供給する。混合は、通常、混合領域において実行される。混合領域及び反応領域は、アミンの気相ホスゲン化によりイソシアネートを製造するために使用される反応器の一部として連続的に形成されている。一般的に、反応器として管状反応器が用いられ、当該反応器内において、アミンをホスゲンと反応させて、対応するイソシアネート及び塩化化合物を生成する。ホスゲンは通常、過剰に投入される。これにより、反応器から出る反応ガスが、生成されたイソシアネート及び塩化化合物だけでなく、ホスゲンも含むこととなる。
【0024】
イソシアネートを製造するために使用することのできるアミン類は、モノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、又は価数の高いアミン類である。モノアミン類又はジアミン類を用いることが好ましい。使用されるアミンに合わせて、対応するモノイソシアネート類、ジイソシアネート類、トリイソシアネート類、又は価数の高いイソシアネート類が得られる。本発明に係る方法は、好ましくは、モノイソシアネート類又はジイソシアネート類の製造に使用される。
【0025】
ジアミン類及びジイソシアネート類は、脂肪族化合物、脂環式化合物、又は芳香族化合物であっても良い。
【0026】
脂環式イソシアネート類は、少なくとも1個の脂環式の環構造を含むイソシアネート類である。
【0027】
脂肪族イソシアネート類は、直鎖又は分岐鎖で形成されたイソシアネート基の結合のみを含むイソシアネート類である。
【0028】
芳香族イソシアネート類は、少なくとも1個の芳香族の環構造に連結された少なくとも1個のイソシアネート基を有するイソシアネート類である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、「(シクロ)脂肪族イソシアネート類」の語は、脂環式イソシアネート類及び/又は脂肪族イソシアネート類に対して使用する。
【0030】
芳香族モノイソシアネート類及びジイソシアネート類の例は、好ましくは6〜20個の炭素原子を有するものであり、例えば、フェニルイソシアネート、モノメリック2,4’−及び/又は4,4’−メチレンジ(フェニルイソシアネート)(MDI)、2,4’−及び/又は2,6’−トリレンジイソシアネート(TDI)、及び1,5−又は1,8−ナプチルジイソシアネート(NDI)である。
【0031】
(シクロ)脂肪族ジイソシアネート類の例は、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(1,6−ジイソシアナートヘキサン)、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、1,14−テトラデカメチレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネートペンタン、ネオペンタンジイソシアネート、(リジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメリルヘキサンジイソシアネート、又はテトラメチルヘキサンジ)の誘導体類、及びさらに3(又は4),8(又は9)−ビス(イソシアネートメチル)トリクロロ[5.2.1.02.6]デカン異性体混合物、及びさらに脂環式ジイソシアネート類(例えば、1,4−、1,3−、又は1,2−ジイソシアナートシクロヘキサン、4,4’−又は2,4−ジ(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、1−イソシアナート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、2,4−又は2,6−ジイソシアナート−1−メチルシクロヘキサン)等のイソシアネート脂肪族ジイソシアネートである。
【0032】
好ましい(シクロ)脂肪族ジイソシアネート類は、1,6−ジイソシアナートヘキサン、1−イソシアナート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジ(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、及びトリレンジイソシアネート異性体混合物である。特に好ましいのは、1,6−ジイソシアナートヘキサンと、1−イソシアナート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、及び4,4’−ジ(イソシアナートシクロヘキシル)メタンである。
【0033】
本発明の方法において対応するイソシアネートの生成のために使用されるアミン類は、アミン、対応の中間体、及び対応のイソシアネート類が選択された反応条件で気相で存在するものに用いられるものである。上記反応条件の下における反応持続中に、2mol%以下程度、好ましくは1mol%以下程度、特に好ましくは0.5mol%以下程度で分解するアミン類が好ましい。ここで、特に好適なアミン類は、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族又は脂環式の炭化水素化合物に基づくジアミン類である。例えば、1,6−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノペンタン、1,3−ビス(アミノメチル)−シクロヘキサン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(IPDA)、及び4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンである。1,6−ジアミノヘキサン(HDA)を用いることが好ましい。
【0034】
同様に、本発明に係る方法において、特別な分解工程を経なくとも気相になり得る芳香族アミン類を用いることもできる。好ましい芳香族アミン類の例は、トルエンジアミン(TDA)、これの2,4−又は2,6−異性体、或いはこれらの混合物(例えば、80:20〜65:35(mol/mol)の混合物)、ジアミノベンゼン、2,6−キシリジン、ナフタレンジアミン(NDA)、及び2,4’−又は4,4’−メチレンジ(フェニルアミン)(MDA)又はそれらの異性体混合物である。好ましくは、2,4−及び/又は2,6−TDA、又は2,4’−及び/又は4,4’−MDAである。
【0035】
モノイソシアネート類を製造するために、脂肪族、脂環式、又は芳香族アミン類(通常はモノアミン類)を用いることもできる。特に好ましい芳香族モノアミンは、アニリンである。
【0036】
気相ホスゲン化において、反応過程において生じる化合物、すなわち、出発材料(アミン及びホスゲン)、中間体(特に、中間体として生成されるモノカルバモイル及びジカルバモイル塩化物)、最終生成物(イソシアネート類)、及び任意に導入された不活性化合物が、反応条件下において気相状態のまま維持されるようにすべきである。これらの成分或いは他の成分は、気相から反応器の壁部又は装置の他の要素になどに析出すると、熱伝達又は関係する成分の流れが、これらの析出物により望まれない態様で変化することがある。生成したアミン塩酸塩が容易に沈殿することとなり、これを再び気化又は分解することは困難である。
【0037】
管状反応器を使用することに代えて、略立方体形状の反応空間(例えばプレート状反応器)を使用することもできる。反応器の断面形状を、他の所望の形状に形成しても良い。
副生成物の生成を回避するために、ホスゲンを過剰に用いることが好ましい。ホスゲンをアミンとの反応に必要な分のみを投入するようにするために、アミンを不活性ガスと混合するようにしても良い。添加される不活性媒体は、反応空間において気相形態をとり、反応の過程において生じる化合物類とは反応しないものである。使用可能な不活性媒体の例としては、窒素や、ヘリウム又はアルゴン等の希ガス類、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレン、デカヒドロナフタレン等の芳香族化合物類、二酸化炭素又は一酸化炭素等である。不活性媒体として、窒素及び/又はクロロベンゼンを使用することが好ましい。
【0038】
上記不活性媒体をアミンに混合することに代えて、例えばホスゲンの過剰投与を避けるために、不活性媒体をホスゲンに混合しても良い。
【0039】
一般的に、不活性媒体は、アミン又はホスゲンに対する不活性ガス媒体の体積の比が、<0.0001〜30、好ましくは<0.01〜15、及び特に好ましくは<0.1〜5となるように添加される。
【0040】
望まれない副生成物の生成を減らす又は避けるため、さらに、生成されたイソシアネートの分解を防止するために、反応の後に反応混合物を急速に冷却する。反応混合物の冷却にはクエンチが使用されることが好ましい。この場合、液体クエンチ媒体を添加することが好ましい。クエンチ媒体の気化により熱が吸収され、反応混合物が急速に冷却される。
クエンチの後に他の冷却装置を用いても良い。従って、例えばさらなる急冷装置を設けても良い。また、クエンチにおける直接冷却の後に、熱交換器における間接冷却を行うようにしても良い。
【0041】
アミンが気化及び過熱される気化器内において、不揮発性の残留物が集積することを回避するために、気相状のアミン及び不揮発性残留物を含む洗浄流を気化器から取り出すことが好ましい。このようにして不揮発性残留物が放出される。不揮発性残留物を気化器内でアミンの分解又はオリゴマー化により生成するか、又は気化器に投入しても良い。洗浄流により、揮発性残留物の気化器からの放出が可能となり、従って、プロセスから放出される。揮発性残留物を放出しつつ、同時にアミンの復元を実行するために、気化器の上流に配置されたアミン分離カラムへ洗浄流を再循環させることが好ましい。カラムにおいて、好ましくはアミンを他の物質から蒸留により分離する。このようにして、気相ホスゲンに対して十分に洗浄されたアミンが、利用可能となる。
【0042】
洗浄流が再循環されるカラムは、例えば、イソシアネートを製造するために使用されるアミンを製造するプラントの一部である。
【0043】
アミンを気化、及び要求される200〜400℃の反応温度に過熱するために、好ましくは燃料ガス又は燃料流を、管に流す熱媒体として使用する。燃料流が使用される場合、この燃料流は、当該燃料流の温度がアミンを過熱するための所望の温度を超えるまでの圧力に圧縮される。飽和流を使用することに代えて、熱媒体として過熱流を使用することもできる。必要な特定熱伝達面積を得るために要求される管径が小さいので、ガスを用いた気化器による加熱が可能である。過熱流を用いることに代えて、例えば、燃焼で生じるオフガスを用いることもできる。
【0044】
燃焼で生じるオフガス、溶融塩、又はスチームに代えて、管内における燃料の触媒燃焼により加熱を行うこともできる。この場合、燃料を気化器の管に投入し、管内において、例えば酸素を、空気又は酸素を豊富に含む空気の形態で添加して燃焼させる。その後、燃焼で放出される熱は、管壁を通してアミンに届き、結果としてアミンが気化及び過熱される。燃料の触媒燃焼を可能とするために、例えば、管の内壁に触媒活性被覆を施しても良い。触媒活性被覆としては、当業者に知られる所望の触媒活性被覆材を用いることができる。触媒としては通常、貴金属が用いられ、特にプラチナ族の貴金属、例えばプラチニウム又はパラジウムが用いられる。そして、触媒として使用される金属は、例えば、適切な被覆法を用いて管の内壁に蒸着される。適切な被覆法は、例えば、化学蒸着法(CVD)、又は物理蒸着法(PVD)等の蒸着法である。これに代えて、例えば、触媒活性金属を、管の表面に被覆するセラミックに添加しても良い。しかし、触媒活性金属は、管の内壁に直接施されることが好ましい。
【0045】
触媒活性物質を内壁に被覆する方法に代えて、触媒を例えば触媒床の形態で管内に施しても良い。この場合、触媒が細かい粒状又は粉末状で存在することが好ましい。
【0046】
アミンの気化及び過熱を燃料ガスを用いて実行する(好ましくは管内の触媒燃焼で実行する)場合、燃料ガスとして天然ガスを用いることが好ましい。
【0047】
スチームを用いてアミンの気化を行う場合、アミンを要求される温度に到達させるために、気化器の下流に過熱器を設置する必要がある場合がある。これは、特に、スチームの温度がアミンを反応温度に過熱させるために十分に高い温度でない場合である。そして、気化器の下流に配置される過熱器は、スチーム以外の熱媒体(例えば、燃料ガス又は溶融塩)を用いて加熱される。過熱器は、管の数や長さに関して気化器と同一の構造を有することが好ましいが、異なっていても良い。これに代えて、電熱式の過熱器を使用することもできる。
【0048】
また、気化器を、スチームを流す第1の管と、この管の後に直接的に燃料ガスを燃焼させるか又は溶融塩を流す管と、を用いた2つの部分で構成しても良い。これは、管の領域で気化されたアミン流を過熱し、続いて、スチームを、溶融塩を流すか又は触媒燃焼が実行される管を有する気化器部分に流すためである。
【0049】
要求される反応温度までのホスゲンの加熱は、同様に、熱媒体を用いて間接的に実行される。加熱は、例えば、スチーム、溶融塩等の熱媒体を用いて行っても良いし、また、燃料の燃焼により行っても良いし、或いは燃焼により生じたオフガスを熱媒体として用いても良い。更に、電熱式加熱を用いても良い。
【0050】
アミンの気化器の外壁に析出物が生じることを防止するために、気化器の外壁に端部を形成しないことが好ましい。特に、気化器の外壁の断面を円形又は楕円形に形成することが好ましい。気化器の外壁の径は、所望の径としても良い。この径サイズは、使用されるアミンの量、及び得られるアミンの流断面積に依る。特に外壁が冷却される結果として、外壁において析出物が形成することを避けるために、気化器の外壁を、熱媒体を流すことができるように二重構造とすることも可能である。ここで、熱媒体は、気化器の管を流れる熱媒体を同種であることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートを、当該イソシアネートに対応するアミンとホスゲンとを不活性媒体の存在下又は非存在下で気相において反応させて製造する方法であって、
(a)気化器においてアミンを気化する工程と、
(b)アミンを過熱する工程と、
(c)気体アミンをホスゲンと混合し、反応領域に導入する工程と、
(d)反応領域においてアミンとホスゲンを反応させて、イソシアネートと塩化水素を含む反応混合物を生成することによりイソシアネートを得る工程と、
(e)イソシアネートと塩化水素を含む反応混合物を冷却する工程と、
を有し、
上記気化器は、熱伝達媒体を流す管を有する容器を含み、
上記管が少なくとも300m2/m3のアミン体積流量に対する特定熱伝達面積を有するように、該管の数及び径が形成されることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
上記管が、容器内におけるアミンの流方向に平行に配置されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記管が、滑らかな表面を有する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記管が、円形断面を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記管が、10mm以下、好ましくは8mm以下の外径を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記管が、0.1〜5mの長さを有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
アミンを気化して反応温度まで過熱して、任意に気化器で予備加熱する請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
気体アミン及び不揮発性残留物を含む洗浄流を、気化器から排出する請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
洗浄流の少なくとも一部を、気化器の上流に配置されたアミンを分離するカラムに再循環させる請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
上記管を流れる熱媒体が、溶融塩、燃料ガス、又はスチームである請求項1〜9の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
加熱が、管内における燃料の触媒燃焼により行われる請求項1〜10の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
上記管の内壁に触媒活性被覆が設けられる請求項11に記載の製造方法。

【公表番号】特表2013−520465(P2013−520465A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554331(P2012−554331)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052658
【国際公開番号】WO2011/104264
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】