説明

気道用組成物の投与によってウイルス感染を捕捉、不活性化、及び除去するための方法

本発明は、組成物を鼻腔のような気道領域に投与することによって、気道ウイルス感染を予防及び治療する方法を対象とし、この際、前記組成物は感冒及びインフルエンザと関連するウイルス類及び/又はウイルス株類の封入、不活性化、及び/又は除去を提供する。風邪及びインフルエンザウイルス類の封入、不活性化、及び除去の方法は、ウイルスに適さない環境を作り出し及び維持して、風邪及びインフルエンザ様症状の有効な予防及び治療をもたらすことが示された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気道用組成物の投与によってウイルス感染を捕捉、不活性化、及び/又は除去する方法を対象とする。詳細には、本発明は、鼻腔への気道用組成物の投与によって上気道ウイルス感染を捕捉、不活性化、及び/又は除去する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
多くの種々のウイルス類及びウイルス株類が呼吸器ウイルス感染に関連する症状を招くことが知られている。感冒は、5つのウイルス科に見出される200を超える抗原性の異なるウイルスによって引き起こされる複雑な症候群である。これらの科には、ライノウイルス、ミクソウイルス、パラミクソウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス及びコロナウイルスが包含される。最も重要な群は、ライノウイルス(ゴートニー J.M.(Gwaltney J.M.)、感冒、489〜493頁、マンデル G.L.(Mandell G.L.)、ダグラス R.G.Jr(Douglas, R.G. Jr.)、ベネット J.E.(Bennett, J.E.)、感染病の原理と実際、第3版、チャーチル リビングストーン(Churchill Livingston)、ニューヨーク、1990年)である。症状の発現への寄与が十分分かっていない素因もまた多く存在するため、病気の具体的な原因を特定することは困難であり及び現実的ではない。このようなものとしては、限定されないが、肉体的疲労、精神的ストレス、及び全体的な身体的健全さが挙げられる。
【0003】
風邪及びインフルエンザの症状の開始につながるウイルス及び関連要因にかかわらず、感冒及びインフルエンザの症状を緩和するための多くの治療薬が提案されてきた。既存の風邪治療薬を改善するための試みにおいて、当該分野の専門家は、幾つかの代替の薬物療法及びその後に行われるそれらの効果を試すための風邪試験(cold trials)を提案しており、例えば、1986年発行のニューイングランド医学ジャーナル(The New England Journal of Medicine)に開示された療法及び1992年発行の感染病ジャーナル(The Journal of Infectious Diseases)に開示された療法を参照されたい。インフルエンザのための処置としては、ワクチン接種及び特定の抗ウイルス薬類の使用、例えばA.エリオット(A. Elliot)及びJ.エリス(J. Ellis)、2000年、薬剤ジャーナル(Pharmaceutical Journal)、265、446〜451に概説された処置が挙げられる。
【0004】
感冒及び/又はインフルエンザの予防及び治療のための組成物、並びにそれらの使用方法を開示している多くの特許もまた発行されてきた。例えば、米国特許第5,240,694号、第5,422,097号、及び第5,492,689号(すべてゴートニー(Gwaltney))は、抗ウイルス化合物と抗炎症化合物との組み合わせを使用する処置を開示し;米国特許再発行第33,465号及び第5,409,905号(U.S. Patents Re 33,465 and 5,409,905)(両方ともイービ(Eby))は、亜鉛塩類を用いた処置を開示し;米国特許第5,626,831号 (ファンモアカーケン(Van Moerkerken))はアミノカルボン酸化合物の経口投与を用いた処置を開示し;米国特許第4,619,934号及び第4,552,899号(両方ともサンシャイン(Sunshine))は、NSAIDSのような非ステロイド系抗炎症薬を含む組成物をクロルフェニラミンのような抗ヒスタミン的に有効な物質とともに用いた咳及び風邪の処置を開示し;及びEP310317(ボルド(Bordt)ら、ビーチャム(Beecham)に譲渡)は、ウイルス類及び細菌類を医薬組成物で不活性化するための方法(例えばワクチン類)を開示し、前記方法はウイルス類又は細菌類を酸素及び重金属イオン類の存在下でアスコルビン酸又はその塩類で不活性化することを伴う。
【0005】
組成物のその他の開示、及びそれらの使用方法としては、医薬組成物の鼻膜への投与について記載している特許出願が挙げられる。例えば、米国特許第4,689,223号(1987年8月25日発行、T&Rケミカルズ(T&R Chemicals)に譲渡)は、感冒の症状を治療するための又は感冒を予防するための鼻用スプレー組成物を開示しており、ここで、前記組成物は、低pHであるがしかし特定のpHを有さない亜硫酸塩類又は亜硫酸水素塩類を含む。米国特許第6,080,783号(2000年6月27日発行、ガム・テック・インターナショナル社(Gum Tech International, Inc.)に譲渡)は、微量の有効なホメオパシー的な量の亜鉛又は他の金属を鼻膜へと送達するための粘性ゲルを開示している。米国特許第4,767,788号(ダイアナ(Diana)、スターリング・ドラッグ社(Sterling Drug Inc.)に譲渡)は、鼻の粘膜においてライノウイルスのようなウイルス類をグルタル酸を用いて破壊するためのプロセスを開示している。米国特許第5,622,724号(ブライス−スミス(Bryce-Smith))は、感冒の症状を治療するための、鼻用スプレー類のようなスプレーの調製を開示しており、ここで、この調製品はキレート化されていない亜鉛化合物類を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
感冒及びインフルエンザに関する症状を治療及び/又は予防するために適した多数の咳/風邪用製品類及び治療薬類が存在するということが十分に立証されているが、風邪及びインフルエンザの症状を治療する更に効果的な方法として、気道ウイルス類及びウイルス株類の封入、不活性化、及び除去が包含されるということは議論されず又は見出されてこなかった。風邪及びインフルエンザの症状の開始時に、ウイルス類及び/又はウイルス株類の封入、不活性化、及び/又は除去を伴う方法論の使用を通してこれらの症状を効果的に緩和することができるということが見出された。これらの方法論は、風邪及びインフルエンザの症状を有効に治療することが示されただけでなく、こうした方法はまた、風邪及びインフルエンザの症状の再発を治療及び/又は予防するのにも効果的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鼻腔に組成物を投与することによって上気道ウイルス感染を予防及び治療する方法を対象とし、ここで、前記組成物は封入剤、不活性化剤、及び分泌剤又は除去剤の組み合わせを含み、このような組み合わせは(A)ウイルス不活性化剤と組み合わせて約0.001Pa.s(1cps)〜約2Pa.s(2000cps)の組成物粘度を提供するレオロジー剤;(B)鼻分泌剤と組み合わせて約0.001Pa.s(1cps)〜約2Pa.s(2000cps)の組成物粘度を提供するレオロジー剤;(C)鼻分泌剤と組み合わされたウイルス不活性化剤;及び(D)約0.001Pa.s(1cps)〜約2Pa.s(2000cps)の組成物粘度を提供するレオロジー剤、ウイルス不活性化剤、及び鼻分泌剤、から選択される。
【0008】
本発明はまた、感染性呼吸器ウイルス類及び/又はウイルス株類の封入、不活性化、及び除去をもたらすように上気道ウイルス感染を予防及び治療する方法を対象とし、前記方法は鼻腔に組成物を投与することを含み、前記組成物は以下を含む;(a)約0.001Pa.s(1cps)〜約2Pa.s(2000cps)の組成物粘度を提供するレオロジー剤;及び(b)約3.0〜約5.5のpHを有する緩衝溶液。
【0009】
選択組成物の鼻腔への投与が、感冒及び/又はインフルエンザと関連する気道ウイルス感染を引き起こす恐れのあるウイルス類及び/又はウイルス株類の封入、不活性化、及び/又は除去をもたらすことができるということが見出された。本明細書で定義される方法論は、ウイルス類及び/又はウイルス株類が封入、不活性化、及び除去の手順を用いて有効に治療され、それによって感冒及びインフルエンザと関連する症状を低減及び/又は排除する極めて有効な方法をもたらすような組成物の投与を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法は、感冒及びインフルエンザと関連するウイルス類及び/又はウイルス株類の封入、不活性化、及び/又は除去を提供する。本方法は気道に組成物を投与すること、特に気道の鼻腔への組成物の投与を伴う。これらの方法は、感冒及びインフルエンザに関する症状の予防及び治療を提供するのに極めて有効である。
【0011】
用語「封入」とは本明細書で使用するとき、感染性ウイルス類及び/又はウイルス株類を本明細書で定義される組成物のマトリックス内に包囲すること、及びそのウイルス類及び/又はウイルス株類が細胞受容体と接触するのを阻止することを言う。
【0012】
用語「不活性化」とは本明細書で使用するとき、ウイルス粒子の感染性の停止を言う。換言すれば、「不活性化」はウイルス粒子が感染性ではなくなるということを意味する。本明細書で定義される不活性化物質は、ウイルス粒子の感染性の一時的な又は永続的な停止を提供することができ、ここで、一時的な停止とは、不活性化が発現するためにその不活性化物質が存在している必要があることを意味し、永続的な停止とは、その不活性化物質がウイルス粒子にダメージを与えた結果、そのウイルス類及び/又はウイルス株類は回復できないということを意味する。
【0013】
用語「分泌剤」とは本明細書で使用するとき、ウイルス粒子をそれらの感染対象物の近辺から物理的に除去することを言う。本明細書で定義される分泌剤類は、緩やかな鼻漏を促し、その結果ウイルス粒子及び炎症媒介物が風邪及び/又はインフルエンザに感染し易い細胞の近辺から洗い流される。
【0014】
用語「気道」とは、鼻、口、舌、及び咽喉の粘膜を包含する、鼻、口、舌、及び咽喉の領域を指す。
【0015】
本明細書で定義される組成物は、「風邪及びインフルエンザ様症状」を予防及び治療するために気道へと投与される。本明細書で使用するとき、「風邪及びインフルエンザ様症状」は、気道ウイルス感染に典型的に関連する症状を指す。これらの症状としては、鼻詰まり、胸部鬱血、くしゃみ、鼻漏、疲労又は倦怠感、せき、発熱、悪寒、体の痛み、咽頭炎、頭痛、及びその他の既知の風邪及びインフルエンザ様症状が挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
用語「呼吸器ウイルス」、「呼吸器ウイルス類」、「ウイルス類」、及び「ウイルス株類」は、本明細書で風邪及びインフルエンザ様症状の病因である1以上のウイルス類を指すために交換可能に使用される。これらのウイルス類としては、ライノウイルス、ミクソウイルス(インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(パラインフルエンザウイルス)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス及びコロナウイルスが挙げられる。
【0017】
本発明の方法は、本明細書に記載される本発明の要件及び制限事項、並びに本明細書に記載される追加的な若しくは任意の成分、構成要素、又は制限事項のあらゆるものを含み、これらから成り、またこれらから本質的に成ることができる組成物の投与を包含する。
【0018】
特に指定しない限り、全ての百分率、部及び比は、組成物の重量に基づく。列挙する成分に関するこのようなすべての重量は、具体的成分の濃度に基づいており、そのため特に指定しない限り、市販の材料に包含される可能性があるキャリアや副生成物を包含しない。
【0019】
本明細書に記載される出版物、特許出願、及び発行された特許を包含する本明細書で引用する全ての文献は、関連部分において、本明細書に参考として組み込まれる。いかなる文献の引用も、本発明に対する従来技術として利用できることの決定に関する容認ではない。
【0020】
封入剤
本発明の方法は、気道領域に存在するウイルス類及び/又はウイルス株類を包囲し、それらのウイルス類及び/又はウイルス株類が目標となる気道の細胞受容体に到達するのを物理的に阻止する封入剤を含む組成物の投与を包含する。封入剤としては、鼻腔などの気道の領域におけるウイルス類及び/又はウイルス株類の保持を提供するレオロジー剤類が挙げられる。
【0021】
レオロジー剤は、ウイルス不活性化剤と組み合わせて、又は鼻分泌剤と組み合わせて使用することができ、又は組成物はレオロジー剤、ウイルス不活性化剤、及び鼻分泌剤を含むことができる。理論によって制限されることなく、レオロジー剤は、ウイルス不活性化剤及び/又は鼻分泌剤によって更に治療できるようにウイルス類及び/又はウイルス株類の保持を提供し、風邪及びインフルエンザ様症状の改善された予防及び治療のために環境をウイルスに適さない状態に維持すると考えられている。本発明の方法がウイルスに適さない環境を作り出す組成物を投与することを伴うとき、この方法は風邪及びインフルエンザ様症状の予防及び治療に極めて有効であるということが見出された。こうした環境は、気道領域、特に鼻腔を更に感染させるウイルスの抑止を提供することに加えて、ウイルスを封入、不活性化、及び/又は除去することができる。
【0022】
レオロジー剤は、個々のレオロジー剤として、又はレオロジー剤類の組み合わせとして、本発明の組成物中に包含されることができるが、但し、レオロジー剤の合計の濃度は組成物の約0.01重量%〜約30重量%、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%、より好ましくは約1重量%〜約15重量%の範囲とする。
【0023】
本発明の組成物中へのレオロジー剤の組み込みは典型的には、約0.001Pa.s(1センチポアズ(cps))〜約2Pa.s(2000cps)、好ましくは約0.001Pa.s(1cps)〜約1Pa.s(1000cps)、より好ましくは約0.005Pa.s(5cps)〜約0.5Pa.s(500cps)、最も好ましくは約0.005Pa.s(5cps)〜約0.3Pa.s(300cps)の範囲の粘度を有する組成物をもたらす。組成物の粘度は、粘度を決定するために利用されるいずれかの既知の又はそれ以外の有効な技法で測定することができる。一般に、本発明の組成物の粘度は、ASTM D1824−87、ASTM D1084−88、及びASTM D2196−86に記載されているもののような既知の方法を使用して決定される。粘度の測定に利用される典型的な粘度計としては、ブルックフィールド・シンコ−レクトリック粘度計(Brookfield Syncho-Lectric Viscometer)及びハッケ粘度計(Haake Viscometer)が挙げられる。例えば、ブルックフィールド・シンコ−レクトリック粘度計(Brookfield Syncho-Lectric Viscometer)を粘度測定に使用するとき、この粘度計は典型的には、所与の回転速度において低剪断速度で8Pa・s(8,000センチポアズ)未満の粘度を測定するためにスピンドル4が装備される。同様に、ハッケ粘度計(Haake Viscometer)を利用する場合、好適なハッケ粘度計(Haake Viscometer)は、プローブC35/2Tのようなプローブ(即ち、スピンドル)が装備されたレオストレス(Rheostress)1型であり、この際、5.2rad/s(1分当たり50回転(rpm))/秒(sec)で5℃〜40℃の温度範囲にわたって粘度測定が実施される。
【0024】
本明細書に用いるのに好適な既知のレオロジー剤類は、カルボキシポリメチレン類、カルボキシビニルポリマー類、ペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマー類、スクロースのアリルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマー類、ジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のホモポリマー類、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0025】
ペンタエリスリトールのアリルエーテル又はスクロースのアリルエーテルで架橋された好適なアクリル酸のホモポリマー類の非限定例は、B.F.グッドリッチ社(B.F.Goodrich Company)より「カーボポール(Carbopol)」の商標名で入手できる。具体的なカーボポール類(Carbopols)としては、カーボポール(Carbopol)934、940、941、956、980及びこれらの混合物が挙げられる。カーボポール(Carbopol)980は、カーボポールレオロジー剤類の中で好ましい。この種類のポリマー類は、わずかに酸性のカルボキシル置換基を有する。こうしたポリマー類は一般に、水中で3前後のpHを有し、及び一般に組成物の調製時に中和によって用いられてウイルスを捕捉できる粘稠なフィルム類及び/又はゲル類を形成する。本発明の組成物が1以上のカーボポール(Carpobol)レオロジー剤類を含む場合、一般にこれらのポリマー類は組成物の約0.01重量%〜約2.5重量%の範囲の濃度で使用される。
【0026】
ジビニルグリコールで架橋された好適なアクリル酸のホモポリマー類の非限定例は、B.F.グッドリッチ社(B.F.Goodrich Company)よりポリカルボフィル類として「ノベオン(Noveon)」の商標名で入手できる。
【0027】
本明細書に用いるのに好適なレオロジー剤のその他の非限定例としては、天然ポリマー類、高分子セルロース誘導体類、ポリビニルピロリドン類(PVP類)、デキストランポリマー類、ポリオックス(Polyox)−600を包含するポリエチレンオキシドポリマー類、熱可逆性ポリマー類、イオン応答性ポリマー類、ポリメチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー類、及びこれらの混合物が挙げられる。高分子セルロース誘導体類及び熱可逆性ポリマー類が好ましい。
【0028】
本明細書でレオロジー剤として用いるのに好適な天然ポリマー類の具体的な非限定例には、アラビアガム類、トラガカントガム類、アガーポリマー類、キサンタンガム類、アルギン酸とアルギン酸ナトリウムとのコポリマー類、キトサンポリマー類、ペクチン類、カラギーナン類、プルランポリマー類、変性デンプン類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
本明細書で好ましいレオロジー剤として用いるのに好適な高分子セルロース誘導体類の具体的な非限定例には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を包含するヒドロキシアルキルセルロースポリマー類、メチルセルロースポリマー類、カルボキシメチルセルロース(CMC)ポリマー類、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を包含するカルボキシメチルセルロースの塩類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
本明細書で好ましいレオロジー剤として用いるのに好適な熱可逆性ポリマー類の具体的な非限定例には、ルトロル(Lutrol)F−127及びルトロル(Lutrol)F−68の商標名で販売されているポロキサマー類を包含するポロキサマー類、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
本明細書でレオロジー剤として用いるのに好適なイオン応答性ポリマー類の具体的な非限定例としては、ゲルライト(gelrite)、ジェランガム、ケルコゲル(Kelcogel)F、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
本明細書でレオロジー剤として用いるのに好適なポリメチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー類の具体的な非限定例としては、ガントレツ(Gantrez)S及びガントレツ(Gantrez)MS型コポリマー類を包含するガントレツ(Gantrez)の商標名で販売されているそのようなコポリマー類が挙げられる。
【0033】
本明細書で使用するのに好適なレオロジー剤は、薬学薬理学誌(Journal Pharmacy Pharmacology)53、3〜22頁、(2001年版);国際薬学誌(the International Journal of Pharmaceutics)(1988年、1996年及び1998年版);及びコントロールリリース誌(the Journal Controlled Release)62、101〜107頁、(1999年版)に更に完全に記載されており、これらの記載は本明細書に参考として組み込まれる。
【0034】
不活性化剤
本発明の方法は、ウイルス粒子の感染性をほとんど又は全くなくするウイルス不活性化剤を含む組成物の投与を包含する。不活性化剤は、ウイルス類及び/又はウイルス株類の感染性を一時的に又は永続的に防止し、風邪及びインフルエンザ様症状の予防及び治療をもたらすことができる。
【0035】
本発明の組成物は、1以上の不活性化剤を含むことができるが、但し、不活性化剤の合計の濃度は組成物の約0.01重量%〜約20重量%、好ましくは約0.05重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.10重量%〜約5重量%とする。不活性化剤は組成物中に、本明細書で定義されるレオロジー剤及び/又は鼻分泌剤と組み合わせて包含されることができる。
【0036】
本明細書での使用に好適な不活性化剤としては、金属化合物類、界面活性剤類、キレート化剤類、ピログルタミン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
本明細書で不活性化剤として用いるのに好適な金属化合物類の非限定例としては、マンガン(Mn)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びこれらの混合物から成る群から選択される金属イオン置換部分を含む、一般に「金属塩類」と呼ばれる金属化合物類が挙げられる。好ましい金属化合物類としては、Cu、Fe、又はZn金属イオン類、又はそれらの組み合わせを含有する金属化合物類が挙げられる。このような金属化合物類の例としては、サリチル酸塩類、フマル酸塩類、安息香酸塩類、グルタル酸塩類、乳酸塩類、クエン酸塩類、マロン酸塩類、酢酸塩類、グリコール酸塩類、チオサリチル酸塩類、アジピン酸塩類、コハク酸塩類、グルコン酸塩類、アスパラギン酸塩類、グリシン酸塩類、酒石酸塩類、リンゴ酸塩類、マレイン酸塩類、アスコルビン酸塩類、塩化物類、硫酸塩類、硝酸塩類、リン酸塩類、フッ化物類、ヨウ化物類、ピドール酸塩類と称される金属化合物類、及びこれらの混合物が挙げられる。酢酸塩類、アスコルビン酸塩類、塩化物類、安息香酸塩類、クエン酸塩類、グルコン酸塩類、グルタル酸塩類、乳酸塩類、リンゴ酸塩類、マロン酸塩類、サリチル酸塩類、コハク酸塩類、硫酸塩類、及びこれらの混合物は好ましい金属化合物類である。
【0038】
本明細書で使用するのに好適な金属化合物の具体的な例としては、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピドール酸亜鉛(zinc pidolate)、コハク酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、及びこれらの混合物が挙げられる。酢酸亜鉛が最も好ましい金属化合物である。
【0039】
本発明の組成物が亜鉛イオンを含有する金属化合物を含む場合、この亜鉛イオンはウイルス類及び/又はウイルス株類の不活性化をもたらす抗ウイルス特性を提供すると考えられる。さらに、鉄、銀、銅、及び亜鉛のような金属イオン類は風邪及びインフルエンザ様症状の予防及び治療のための抗ウイルス特性を提供できるということが既知である。特に、亜鉛及びその感冒へ及ぼす可能性のある効果は、感冒治癒のためのハンドブック(The Handbook for Curing the Common Cold)、ジョージ・A・イービ(George A.Eby)、1994年発行、ジョージ・イービ・リサーチ(George Eby Research)(米国テキサス州)に広範に記録されている。その作用のメカニズムは、多因子であると考えられる。亜鉛イオン類は、抗ウイルス性及び抗菌性のいずれでもあることが示された。それらは、ライノウイルスポリペプチド類の開裂を阻害し、感染性ビリオン類の複製及び形成を阻害すると考えられている。亜鉛イオン類は、一部には細胞間接着分子ICAMの発現を低下させることによって、ライノウイルスの細胞膜への浸透能力を低減する。亜鉛イオン類は、天然抗ウイルス性のインターフェロン−γの産生を包含して、T細胞リンパ球(lyphocytes)を刺激することも示されてきた。それらは、細胞形質膜を安定化し、細胞を細胞毒性剤から保護し、細胞漏出を防止する。
【0040】
本明細書の不活性化剤として使用するのに好適な界面活性剤の非限定例としては、非イオン性界面活性剤類、アニオン性界面活性剤類、カチオン性界面活性剤類、両性界面活性剤類、双極性(zwtterionic)界面活性剤類、及びこれらの混合物が挙げられる。非イオン性及びアニオン性の界面活性剤類が好ましい。
【0041】
非イオン性界面活性剤類の具体的な非限定例としては、プロクター・アンド・ギャンブル・ケミカル(Procter & Gamble Chemical)(米国)から入手可能なN,N−ジメチルドデシルアミン−N−酸化物のようなアミンオキシド類;シャンハイ・ロンシェン・コーポレーション(Shanghai Longsheng Corporation)(中国)から入手可能なノノキシノール−9(Nonoxynol-9);デウォルフ・ケミカル社(Dewolf chemical Inc.)(イーストプロビンスR102914(East Province, R102914))から入手可能なスパン(Span);シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から入手可能なブリッジクラス(Brij class)の界面活性剤類、例えばブリッジ76(ステアレス−10(Steareth-10)、及びブリッジ56(セテス−10(Ceteth-10));シグマ・アルドリッチから入手可能なトウィーンズ(Tweens)として既知のソルビタンエステル類(Sorbitan esters)、例えばトウィーン80(Tween 80);及びこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
アニオン性界面活性剤類の具体的な非限定例としては、サーファケム・リミテッド(Surfachem Limited)(英国、リーズ(Leeds))から入手可能なアルキルラウリルサルフェート及びアルキルエーテルサルフェート又はそれらのナトリウム塩類;クラリアント・リミテッド(Clariant Limited)(英国、リーズ)から入手可能なゲナポール(Genapol)LSAとして既知のラウリル硫酸アンモニウム;クラリアント・リミテッド(英国、リーズ)から入手可能な、ホスタパー(Hostapur)として既知のC14〜C17アルキルスルホン酸ナトリウム;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
本明細書の不活性化剤として使用するのに好適なキレート化剤類の非限定例としては、フィチン酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の二ナトリウム、カルシウム、及び亜鉛塩類を包含する、EDTAのアルカリ性塩類;EDTA四ナトリウム;ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP);ジ(ヒドロキシエチル)グリシン;8−ヒドロキシキノリン;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
本明細書の不活性化剤としての使用に好適なピログルタミン酸の非限定例としては、集合的にピログルタミン酸の立体異性体類及び互変異性体類と称されるピログルタミン酸化合物類が挙げられる。ピログルタミン酸は、ピロリドンカルボン酸とも呼ばれ、2つの立体異性体(D及びL)を有し、及びそれぞれが本明細書で使用するのに好ましい。ピログルタミン酸の薬学上許容できる塩類も本明細書での使用に好適である。
【0045】
ピログルタミン酸のD立体異性体は、次の名前でも知られる:D−プロリン、5−オキソ−(+)−2−ピロリドン−5−カルボン酸、(+)−ピログルタミン酸、(R)−2−ピロリドン−5−カルボン酸、5−オキソ−D−プロリン、D−2−ピロリドン−5−カルボン酸、D−ピログルタミン酸、D−ピロリジノンカルボン酸、及びD−ピロリドンカルボン酸。
【0046】
ピログルタミン酸のL立体異性体は、次の名前でも知られる:L−プロリン、5−オキソ−(−)−2−ピロリドン−5−カルボン酸、(−)−ピログルタミン酸、(5S)−2−オキソピロリジン−5−カルボン酸、(S)−(−)−2−ピロリドン−5−カルボン酸、(S)−2−ピロリドン−5−カルボン酸、(S)−5−オキソ−2−ピロリジンカルボン酸、(S)−ピログルタミン酸、2−L−ピロリドン−5−カルボン酸、2−ピロリジノン−5−カルボン酸、5−カルボキシ−2−ピロリジノン、5−オキソ−L−プロリン、5−オキソプロリン、5−ピロリジノン−2−カルボン酸、グルチム酸(Glutimic acid)、グルチミン酸(Glutiminic acid)、L−2−ピロリドン−5−カルボン酸、L−5−カルボキシ−2−ピロリジノン、L−5−オキソ−2−ピロリジンカルボン酸、L−5−オキソプロリン、L−グルタミン酸、γ−ラクタム、L−グルチム酸(Glutimic acid)、L−グルチミン酸(Glutiminic acid)、L−ピログルタミン酸、L−ピロリジノンカルボン酸、L−ピロリドンカルボン酸、オキソプロリン、PCA、ピドール酸(Pidolic acid)、ピログルタミン酸、ピロリジノンカルボン酸、ピロリドン−5−カルボン酸、及びピロリドンカルボン酸。
【0047】
ピログルタミン酸のDL体(D及びL立体異性体の混合物)は次の名前で知られる:DL−プロリン、5−オキソ−(.+−.)−2−ピロリドン−5−カルボン酸、(.+−.)−ピログルタミン酸、5−オキソ−DL−プロリン、DL−2−ピロリジノン−5−カルボン酸、DL−2−ピロリドン−5−カルボン酸、DL−ピログルタメート、DL−ピログルタミン酸、DL−ピロリドンカルボン酸、及びオキソプロリン。DL体はまた、味の素(Ajinomoto)からアジデュー(Ajidew)A100及びアジデュー(Ajidew)N50(Na−PCA)の商標名で市販されている。
【0048】
上記に列挙した立体異性体類の幾つかは、バーネット・プロダクツ社(Barnet Products Corp.)(ニュージャージー州)を介してUCIB(フランス)より市販されている。このような化合物類は、クイブリドン(Cuivridone)(Cu−PCA)及びL−FERピドレート(Pidolate)(Fe−PCA)、及びピドリドン(Pidolidone)の商標名で販売されている。
【0049】
本発明の組成物がピログルタミン酸を、約3.0〜約5.5のpKa値を有する有機酸分泌剤と組み合わせて含む場合、この組み合わせはpH約3.0〜5.5の鼻腔組織の表面pHを与えることが示された。
【0050】
鼻分泌剤
本発明の方法は、気道領域、特に鼻腔からのウイルス類及び/又はウイルス株類の除去を提供する鼻分泌剤を含む組成物の投与を包含する。鼻分泌剤は緩やかな鼻漏を促し、その結果鼻腔のような気道領域に位置する感染された細胞受容体からウイルス粒子及び炎症媒介物が洗い流される。
【0051】
本発明の組成物は1以上の鼻分泌剤類を含むことができるが、但し、鼻分泌剤の合計の濃度は組成物の約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.005重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約1重量%とする。鼻分泌剤は、組成物中に、本明細書で定義されるレオロジー剤及び/又は不活性化剤と組み合わせて包含させることができる。
【0052】
本明細書での使用に好適な鼻分泌剤類としては、有機酸類、芳香族植物抽出物類、高張液類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
本明細書で鼻分泌剤として使用するのに好適な有機酸類の非限定例としては、アスコルビン酸、モノカルボン酸類、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
好適なモノカルボン酸類、ジカルボン酸類、又はトリカルボン酸類の具体的な非限定例としては、サリチル酸、フマル酸、安息香酸、グルタル酸、乳酸、クエン酸、マロン酸、酢酸、グリコール酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、アスパラギン酸、フタル酸、酒石酸、グルタミン酸、グルコン酸及びこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
本明細書で鼻分泌剤として使用するのに好適な芳香族植物抽出物類の非限定例としては、コショウ抽出物類、ニンニク抽出物類、タマネギ抽出物類、マスタード抽出物類、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なコショウ抽出物類の具体的な非限定例としては、カプサイシン、トウガラシ、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
本明細書の鼻分泌剤として使用するのに好適な高張液類の非限定例としては、約280ミリオスモル〜約450ミリオスモルのモル浸透圧濃度(osmolarity)を有する濃度の塩化ナトリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
緩衝溶液
本発明の方法は、約3.0〜約5.5のpHを有する緩衝溶液と組み合わされた封入剤を含む組成物の投与を包含する。封入剤と緩衝溶液との組み合わせはまた、感染性呼吸器ウイルス類及び/又はウイルス株類の封入、不活性化、及び除去に有効な組成物を提供し結果として気道ウイルス感染の予防及び治療をもたらすということが見出された。
【0058】
本明細書での使用に好適な緩衝溶液を提供する緩衝剤類の非限定例としては、フマレート類、ベンゾエート類、ラクテート類、シトレート類、スクシネート類、タータラート類、クロライド類、サルフェート類、ホスフェート類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
薬学上許容できるビヒクル
本発明の方法は、気道領域、特に鼻腔に組成物を投与することを包含する。当該組成物は典型的には、薬学上許容できるビヒクル又はキャリア系を含む製剤として気道領域に投与される。液体、固体、又は気体の形態のいかなる薬学上許容できるビヒクルも、風邪及びインフルエンザ様症状を予防及び治療するための気道用組成物の送達に好適である。
【0060】
本発明の組成物はスポイト類、ポンプスプレー類、加圧スプレー類、アトマイザ類、空気吸入装置類などのような製品形態で投与することができる。使用されるべき所望の形態及び送達装置に依存して、本発明の組成物を、水、水混和性溶媒類でエタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トランスクトール(transcutol)、グリセロールを包含するもの、及びその他の既知の又はそれ以外の有効な水混和性溶媒類;液体エアゾール噴射剤類;並びにこれらの混合物のような薬学上許容できるビヒクル類と組み合わせることができる。好ましくはこれらのビヒクル類はヒトの血漿と等張性である。
【0061】
組成物が、薬学上許容できるビヒクルとして水を使用して投与される場合、この水は好ましくは精製又は脱イオン水であり、有機不純物を含まない。組成物を気道領域に送達するための最終製品に処方するために使用される水の濃度は、最終製品製剤の約40重量%〜約99.98重量%、好ましくは約80重量%〜約99.95重量%の範囲である。
【0062】
本発明の組成物が固体の薬学上許容できるビヒクルを使用して投与されるとき、このビヒクルは粉末形態で適用されてもよい。換言すれば、本発明の組成物は、必須の成分及び本明細書に記載されているあらゆる任意成分を含有する固体粉末として、いずれかの既知の又はそれ以外の有効な固化助剤類とともに又は固化助剤類を用いずに、適用することができる。ただし、薬学上許容できる固体ビヒクル類は、組成物の加工において補佐を提供するため、組成物の稠度を補佐するため、改善された安定性を提供するため、取り扱いを容易にするため、吸湿性効果のため等の目的で添加することができる。薬学上許容できる固体ビヒクル物質類としては、微粒子及び粉末増量剤類、例えばラクトース粉末のような成分が挙げられる。固体粉末の薬学上許容できるビヒクルを使用して投与される鼻用組成物の形態の気道用組成物については、粉末の粒径は、特にこの鼻用組成物が鼻吸入剤であるときに、典型的には10ミクロンよりも大きい。
【0063】
任意構成成分
本発明の組成物は、医薬組成物における使用が既知の又はそれ以外の有効な1以上の任意構成成分を、該任意成分が本明細書に上述された必須構成成分と物理的及び化学的に適合し、又は他の態様で製品の安定性、審美性、若しくは性能を過度に損なわないという条件で、さらに含んでもよい。本明細書で使用するのに好適な任意構成成分類としては、pH調整剤類、防腐剤類、感覚剤類、甘味剤類、香味剤類、揮発性油類、粘漿剤類などのような物質が挙げられる。任意構成成分類は、組成物の約0.001重量%〜約20重量%、好ましくは約0.01重量%〜約10重量%の範囲の濃度で、組成物に包含させることができる。
【0064】
本発明の組成物は、任意にホメオパシー成分を含むことができる。このようなホメオパシー成分の詳細な、しかし必ずしも完全ではないリストが、米国ホメオパシー薬局方(The Homeopathic Pharmacopoeia of the United States)、1999年版、米国ホメオパシー協会の薬局方協議会(The Pharmacopoeia Convention of the American Instistute of Homeopathy)により出版、(著作権)1982年、1〜4巻に見られ、その記載は本明細書に参考として組み込まれる。本明細書で使用するのに好適な既知のホメオパシー的な、又はそれ以外の有効な任意構成成分類の具体的な非限定例を以下に更に詳細に記載する。
【0065】
本明細書で使用するのに好適な任意構成成分の具体的な非限定例には、任意のpH調整剤類が挙げられる。任意のpH調整剤類は、組成物のpHを約4.5未満の値に調整するために本発明の組成物に包含させることができる。したがって、組成物が鼻組織のような気道領域に適用されるとき、鼻組織上の組成物のpHは約3.0〜約5.5のままであるが、鼻組織の刺激を生じるほど低くない。このような任意のpH調整剤類としては、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、スズ酸ナトリウム、トリエタノールアミン、クエン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、及びこれらの混合物のような化合物類を包含する、鼻用組成物での使用に通常関連されるものが挙げられる。存在する場合、任意のpH調整剤類は、一般に、組成物の約0.01重量%〜約5.0重量%の範囲の濃度で包含される。
【0066】
本明細書で使用するのに好適な任意構成成分の他の具体的な非限定例には、任意の防腐剤類が挙げられる。防腐剤類は、投与装置、又は組成物の鼻への適用によって起こり得る微生物汚染を防止するために任意で包含させることができる。このような任意の防腐剤類としては、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジングルコネート、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸、チメロサール、酢酸フェニル水銀、及びこれらの混合物を包含する、鼻用組成物への使用に通常関連されるものが挙げられる。
【0067】
製造方法
本発明の組成物は、風邪及びインフルエンザ様症状の予防及び治療において治療的効果を提供する医薬組成物の提供に好適なあらゆる既知の又はそれ以外の有効な技法によって調製されてよい。本発明の方法は組成物の気道への投与を包含し、その際、これらの組成物は、気道ウイルス感染による症状を予防及び治療するために気道領域に投与するための液体類、スプレー類、粉末類、吸入剤類、ポンプ類、滴剤類等の最終製品形態に製造される。
【0068】
組成物をスプレー類、ポンプ類、液滴類などの製品形態で送達するために組成物が液体のような薬学上許容できるビヒクルを用いて投与される場合、組成物は一般にレオロジー剤を水のような液体ビヒクルに溶解することによって調製される。攪拌しながら、ウイルス不活性化剤及び/又は鼻分泌剤を次いでレオロジー剤溶液へと加える。次に、該溶液を攪拌し続けながら、感覚剤ミックスを添加する。感覚剤ミックスは、典型的には、エタノール、メントール、ペパーミント油、及びスペアミント油の組み合わせのような成分類の組み合わせを含有できるプレミックス溶液として添加される。得られる製品のpHは約3.0〜約5.5の間であるべきであるが、得られる製品のpHを約4.5未満の値に維持するために、水酸化ナトリウム及び/又はコハク酸二ナトリウムのようなpH調整剤を添加することができる。これらの組成物は気道用組成物としてそれらの液体最終製品形態で投与され、この際、好ましくは液体は風邪及びインフルエンザ様症状の有効な予防及び治療をもたらすために鼻孔又は鼻甲介のような気道領域に噴霧できるように、点滴バイアル瓶へ組み込むのに好適である。典型的には、各鼻孔又は鼻甲介中に約1マイクロリットル(μL)〜約500マイクロリットル(μL)の組成物が噴霧される。
【0069】
本発明の組成物が、粉末のような薬学上許容できるビヒクルを使用して投与される場合、組成物は一般に、レオロジー剤、及び/又はウイルス不活性化剤、及び/又は鼻分泌剤をV−ミキサーを用いてドライブレンドすることによって調製される。クエン酸ナトリウムのようなpH調整剤を前記ドライブレンドに添加することができる。続いて、前記ドライブレンドを、流体エネルギーミルを使用して微紛化する。得られる微紛化されたドライブレンドを、続いて、ラクトース粉末のような粉末増量剤とドライミックスする。最終的な粉末気道用組成物を、任意に、既知のスプレーコーティング技法を使用して感覚剤プレミックスでコーティングすることができる。最終的な粉末気道用組成物を、風邪及びインフルエンザの症状を予防及び治療するために鼻吸入計量ポンプに充填することができ、その際約10ミリグラム(mg)の最終粉末を鼻孔又は鼻甲介のような気道領域に投与することができる。
【0070】
本明細書で記載されているように、本発明の組成物は、液体類、スプレー類、ポンプ類、吸入剤類、粉末類等の最終製品形態で気道へと投与するのに好適である。これらの最終的な気道用組成物の投与への利用に好適な装置としては、一般に利用されているか又はそれ以外の有効な液体容器、スポイト類、加圧スプレー類を包含するスプレー容器類、ポンプ容器類、吸入装置類、粉末容器類、アトマイザ類等が挙げられる。
【0071】
処置の方法
本発明は、本明細書に記載された組成物を鼻腔のような気道領域へと投与することによって、気道のウイルス感染を予防及び治療する方法を対象とする。概して言うと、安全且つ有効な量の組成物が気道領域、詳細には鼻腔に適用される。この文脈においては、用語「安全且つ有効な量」とは、最小限の副作用で、又は全く副作用を伴わずに治療的効果を提供する量を言う。
【0072】
本明細書に言及するとき、気道のウイルス感染を予防又は治療する方法は、気道を感染させて感冒及びインフルエンザと関連する症状をもたらす恐れのあるウイルス類及び/又はウイルス株類を予防又は治療するためのあらゆる既知の又はそれ以外の有効な方法を包含する。
【0073】
気道ウイルス感染を予防及び治療するために、安全且つ有効な量の本発明の組成物が気道へと投与される。安全且つ有効な量は、投与される組成物の種類のような要因によって決まり、例えば本発明の組成物は液体類、スプレー類、粉末類、吸入剤類、ポンプ類、滴剤類などの製品形態を用いて投与されることができる。
【0074】
気道ウイルス感染を治療及び予防する好ましい方法は、本発明の組成物を鼻腔へと噴霧することを伴う。鼻用スプレーの形態の気道用組成物に関しては、気道ウイルス感染を予防及び治療するための有効な方法を行うために、約1マイクロリットル〜約500マイクロリットル、好ましくは約1マイクロリットル〜約150マイクロリットルの有効量が鼻腔の各鼻孔又は鼻甲介へと1回以上噴霧される。典型的には、気道ウイルス感染を予防及び治療するための有効な方法として、約50マイクロリットルの鼻用スプレーが各鼻孔又は鼻甲介へと2〜3回投与される。希釈された鼻用スプレー又は鼻洗浄の形態の気道用組成物に関しては、約0.1ミリリットル(mL)〜約50ミリリットルが各鼻孔又は鼻甲介に1回以上投与される。組成物を鼻腔へと噴霧するとき、感染ウイルス類及び/又はウイルス株類は鼻腔から封入され、不活性化され、及び/又は除去されてそのウイルス類及び/又はウイルス株類から引き起こされる恐れのある風邪及びインフルエンザ様症状を緩和するということが見出された。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、本発明の範囲内の実施形態を更に説明及び明示する。これらの実施例は、説明の目的で提示されているに過ぎず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多くの変形が可能であるため、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。すべての例示した濃度は、特に指定のない限り、重量−重量パーセントである。
【0076】
代表的な本発明の気道用組成物を、以下の表IIに例示する。これらの気道用組成物は、好ましくは以下の表Iに例示される感覚剤プレミックスを含む。表Iの例示された感覚剤プレミックス類は、味、香味、清涼感、臭い等において審美的に満足な気道用組成物を提供する。
【0077】
以下の表IIに例示された気道用組成物は、風邪及びインフルエンザ様症状の有効な予防及び治療のために、鼻孔又は鼻甲介のような気道領域に噴霧するのに好適である。典型的には、各鼻孔又は鼻甲介に約1マイクロリットル〜約500マイクロリットルの組成物が噴霧される。
【表1】

【表2】

重量%−重量パーセント
1−カラコン社(Colorcon Ltd)(英国、ケント(Kent))から入手可能な、ヒドロキシプロピルメチルセルロース
2−BASF・スペシャリティ・ケミカルズ(BASF Speciality Chemicals)(米国、ニュージャージー州、マウントオリバー(Mount Oliver))から入手可能な、ルトロル(Lutrol)F−127
3−ベルドグト社(Verdugt B.V.)(ベルギー)から入手可能な、酢酸亜鉛二水和物
4−プロクター・アンド・ギャンブル・ケミカルズ(Procter & Gamble Chemicals)(米国)から入手可能な、アミンオキシド
5−シャンハイ・ランシェン・コーポレーション(Shanghai Langsheng Corporation)から入手可能な、ノノキシノール−9
6−DSMファイン・ケミカルズ(DSM Fine Chemicals)(英国)から入手可能な、コハク酸
7−ポスト・アップル・サイエンティフィック(Post Apple Scientific)(米国、ペンシルバニア州)から入手可能な、酢酸
8−スティーブ・ワイス・アンド・カンパニー(Steve Weiss & Co)(米国、ニューヨーク(New York))から入手可能な、カプサイシン
9−アルファAESAR(Alfa AESAR)(米国、マサチューセッツ州)から入手可能な、塩化ナトリウム
本発明の方法の使用に適した特定の実施形態について記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には明白であろう。本発明の範囲内にあるこのような全ての修正については、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上気道ウイルス感染を予防又は治療するために有用な薬剤の製造における組成物の使用であって、前記組成物は、
(a)0.01重量%〜30重量%のレオロジー剤;及び
(b)0.01重量%〜20重量%のウイルス不活性化剤;
によって特徴付けられ、前記組成物は約0.001Pa・s(1cps)〜約2Pa・s(2000cps)の粘度を有する、使用。
【請求項2】
上気道ウイルス感染を予防又は治療するために有用な薬剤の製造における組成物の使用であって、前記組成物は、
(a)レオロジー剤;及び
(b)約3.0〜約5.5のpHを有する緩衝溶液;
によって特徴付けられ、前記組成物は約0.001Pa.s(1cps)〜約2Pa.s(2000cps)の粘度を有する、使用。
【請求項3】
前記組成物が、約0.005Pa.s(5cps)〜約0.5Pa・s(500cps)の粘度を有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記レオロジー剤が、カルボキシポリメチレン類、カルボキシビニルポリマー類、ペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマー類、スクロースのアリルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマー類、ジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のホモポリマー類、天然ポリマー類、高分子セルロース誘導体類、ポリビニルピロリドン類(PVP類)、デキストランポリマー類、ポリエチレンオキシドポリマー類、熱可逆性ポリマー類、イオン応答性ポリマー類、ポリメチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー類、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記レオロジー剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース類、ヒドロキシプロピルセルロース類、メチルセルロースポリマー類、カルボキシメチルセルロースポリマー類、カルボキシメチルセルロースの塩類、及びこれらの混合物から成る群から選択されるセルロース誘導体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記レオロジー剤が、ポロキサマー類、エチルヒドロキシエチルセルロース類、及びこれらの混合物から成る群から選択される熱可逆性ポリマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ウイルス不活性化剤が、金属化合物、界面活性剤、キレート化剤、ピログルタミン酸、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1、3、4、5、又は6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記金属化合物が、サリチル酸塩類、フマル酸塩類、安息香酸塩類、グルタル酸塩類、乳酸塩類、クエン酸塩類、マロン酸塩類、酢酸塩類、グリコール酸塩類、チオサリチル酸塩類、アジピン酸塩類、コハク酸塩類、グルコン酸塩類、アスパラギン酸塩類、グリシン酸塩類、酒石酸塩類、リンゴ酸塩類、マレイン酸塩類、アスコルビン酸塩類、塩化物類、硫酸塩類、硝酸塩類、リン酸塩類、フッ化物類、ヨウ化物類、ピドール酸塩類、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物が、3〜5.5の範囲のpHを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が、有機酸、芳香族植物抽出物、高張液、及びこれらの混合物から成る群から選択される、0.001重量%〜10重量%の鼻分泌剤を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2008−519037(P2008−519037A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540059(P2007−540059)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/039926
【国際公開番号】WO2006/050489
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】