説明

気道閉塞症の治療または予防のためのマクロライドの使用

マクロライド化合物、例えばFK506物質およびその関連化合物を、タバコの煙によって誘発されるものなどの気道閉塞を治療または予防するために提供する。このような化合物を含有する組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肺疾患、詳しくは、気道閉塞を治療または予防するためのマクロライド化合物の新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
気道閉塞は、通常、有害な粒子またはガスに対する肺の異常な炎症反応と関連しており、慢性気管支炎および/または肺気腫に伴って起ることが多い。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、完全には可逆的でない気道閉塞を特徴とする病状である。
現在入手できる情報によれば、タバコの煙が誘発する肺炎症はCOPDの進行において病原的役割を有すると示唆されている。
【0003】
COPDとマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の間の関係について論じているいくつかの論文がある(例えば、インフラメーション・リサーチ(Inflammation research)52(2003) 95〜100頁)。
【0004】
WO00/15208は、ある種のMMP媒介性疾病、詳しくは、軟骨分解および/または結合組織分解、例えば関節リウマチを治療するためのいくつかのマクロライド化合物の使用を示している。
【0005】
EP0475994−B1は、可逆性閉塞性気道疾患、例えば喘息を治療するためのマクロライド化合物の使用を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者らは、本明細書において以下に挙げるマクロライド化合物は気道閉塞を治療または予防するための活性を有するということを見い出した。
したがって、本発明は、気道閉塞を治療または予防するためのマクロライド化合物の使用を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、マクロライド化合物を含んでなる、気道閉塞を治療または予防するための薬剤を提供する。
さらに、本発明は、哺乳類に前記マクロライド化合物を投与することを含んでなる、気道閉塞を治療または予防するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にしたがって用いる、用語「マクロライド化合物」とは、環の員数が12またはそれ以上の化合物の総称であり、大環状ラクトンに属する。
【0009】
マクロライド化合物の特定の例として、次式(I)のトリシクロ化合物を例示することが出来る。
【0010】
【化1】

(式中、R1 およびR2 、R3およびR4 、R5 およびR6 の隣接するそれぞれの対は、各々独立して、
a) 2つの隣接する水素原子を表すがR2 はアルキル基であってもよく、または
b) 結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
7 は水素原子、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基、もしくはアルコキシ基を表わすか、またはR1 と共になってオキソ基を表わしてもよく;
8 およびR9 は独立して、水素原子またはヒドロキシ基を;
10は水素原子、アルキル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基、アルケニル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルケニル基、またはオキソ基によって置換されたアルキル基を;
Xはオキソ基、(水素原子およびヒドロキシ基)、(水素原子および水素原子)、または式−CH2O−で表わされる基を;
Yはオキソ基、(水素原子およびヒドロキシ基)、(水素原子および水素原子)、または式N−NR1112もしくはN−OR13で表わされる基を;
11およびR12は独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはトシル基を;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22およびR23は独立して水素原子またはアルキル基を;
24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環;
nは1または2の整数を表わし、
上記の意味に加え、さらにY、R10およびR23はそれらが結合している炭素原子と一緒になって飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子および/もしくは酸素原子を含有する複素環基を表わしていてもよいが、その複素環基は、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ベンジル基、式−CH2Se(C65)で表わされる基、および1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基からなる群から選ばれる1以上の基によって置換されていてもよい)。
【0011】
前記の一般式(I)において使用されている定義およびその具体例、並びにその好ましい実施例を以下に詳細に説明し、示す。
【0012】
「低級」とは特に指示がなければ、炭素原子1〜6個を有する基を意味するものとする。
【0013】
「アルキル基」および「アルコキシ基」のアルキル部分の好ましい例としては、直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等の低級アルキル基が挙げられる。
【0014】
「アルケニル基」の好ましい例としては、1個の二重結合を含有する直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばビニル、プロペニル(アリル基等)、ブテニル、メチルプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル等の低級アルケニル基が挙げられる。
【0015】
「アリール基」の好ましい例としては、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル等が挙げられる。
【0016】
「保護されたヒドロキシ基」および「保護されたアミノ」における好ましい保護基としては、低級アルキルチオメチル基のような1−(低級アルキルチオ)−(低級)アルキル基(例えばメチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオメチル、イソプロピルチオメチル、ブチルチオメチル、イソブチルチオメチル、ヘキシルチオメチル等)、さらに好ましいものとしてC1 〜C4 アルキルチオメチル基、最も好ましいものとしてメチルチオメチル基;
トリ(低級)アルキルシリルのようなトリ置換シリル基(例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、第三級ブチル−ジメチルシリル、トリ第三級ブチルシリル等)または低級アルキル−ジアリールシリル(例えばメチルジフェニルシリル、エチルジフェニルシリル、プロピルジフェニルシリル、第三級ブチルジフェニルシリル等)、さらに好ましいものとしてトリ(C1 〜C4 )アルキルシリル基およびC1 〜C4 アルキルジフェニルシリル基、最も好ましいものとして第三級ブチル−ジメチルシリル基および第三級ブチルジフェニルシリル基;ならびにカルボン酸、スルホン酸およびカルバミン酸から誘導される、脂肪族アシル基、芳香族アシル基または芳香族基で置換された脂肪族アシル基のようなアシル基;等が挙げられる。
【0017】
脂肪族アシル基の例としては、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、カルボキシアセチル、カルボキシプロピオニル、カルボキシブチリル、カルボキシヘキサノイル等の、カルボキシのような適当な置換基を1個以上有していてもよい低級アルカノイル基;
例えばシクロプロピルオキシアセチル、シクロブチルオキシプロピオニル、シクロヘプチルオキシブチリル、メンチルオキシアセチル、メンチルオキシプロピオニル、メンチルオキシブチリル、メンチルオキシペンタノイル、メンチルオキシヘキサノイル等の、低級アルキルのような適当な置換基を1個以上有していてもよいシクロ(低級)アルコキシ(低級)アルカノイル基;カンファースルホニル基;またはカルボキシもしくは保護されたカルボキシのような適当な置換基を1個以上有する低級アルキルカルバモイル基、例えば、カルボキシ(低級)アルキルカルバモイル基(例えば、カルボキシメチルカルバモイル、カルボキシエチルカルバモイル、カルボキシプロピルカルバモイル、カルボキシブチルカルバモイル、カルボキシペンチルカルバモイル、カルボキシヘキシルカルバモイル等)、トリ(低級)アルキルシリル(低級)アルコキシカルボニル(低級)アルキルカルバモイル基(例えば、トリメチルシリルメトキシカルボニルエチルカルバモイル、トリメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリエチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、第三級ブチルジメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリメチルシリルプロポキシカルボニルブチルカルバモイル基等)、等が挙げられる。
【0018】
芳香族アシル基の例としては、例えばベンゾイル、トルオイル、キシロイル、ナフトイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ニトロナフトイル等の、ニトロのような適当な置換基を1個以上有してもよいアロイル基;および
例えばベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル、キシレンスルホニル、ナフタレンスルホニル、フルオロベンゼンスルホニル、クロロベンゼンスルホニル、ブロモベンゼンスルホニル、ヨードベンゼンスルホニル等の、ハロゲンのような適当な置換基を1個以上有していてもよいアレーンスルホニル基等が挙げられる。
【0019】
芳香族基で置換された脂肪族アシル基の例としては、例えばフェニルアセチル、フェニルプロピオニル、フェニルブチリル、2−トリフルオロメチル−2−メトキシ−2−フェニルアセチル、2−エチル−2−トリフルオロメチル−2−フェニルアセチル、2−トリフルオロメチル−2−プロポキシ−2−フェニルアセチル等の、低級アルコキシまたはトリハロ(低級)アルキルのような適当な置換基を1個以上有していてもよいアル(低級)アルカノイル基等が挙げられる。
【0020】
上記アシル基中、さらに好ましいアシル基としては、カルボキシを有してもよいC1 〜C4 アルカノイル基、シクロアルキル部分に(C1 〜C4 )アルキルを2個有するシクロ(C5 〜C6 )アルコキシ(C1 〜C4 )アルカノイル基、カンファースルホニル基、カルボキシ−(C1 〜C4 )アルキルカルバモイル基、トリ(C1 〜C4 )アルキルシリル(C1 〜C4 )アルコキシカルボニル(C1 〜C4 )−アルキルカルバモイル基、ニトロ基を1個または2個有していてもよいベンゾイル基、ハロゲンを有するベンゼンスルホニル基、またはC1 〜C4 アルコキシとトリハロ(C1 〜C4 )アルキル基を有するフェニル(C1 〜C4 )アルカノイル基が挙げられる。それらのうち、最も好ましいものとしては、アセチル、カルボキシプロピオニル、メンチルオキシアセチル、カンファースルホニル、ベンゾイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ヨードベンゼンスルホニルおよび2−トリフルオロメチル−2−メトキシ−2−フェニルアセチルが挙げられる。
【0021】
「5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子および/もしくは酸素原子を含有する複素環基」の好ましい例としては、ピロリル基、テトラヒドロフリル基等が挙げられる。
【0022】
24は所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環である。好ましいR24としては、適当な置換基を有していてもよいシクロ(C5〜7)アルキル基を挙げることが出来るが、例えば次のような基を例示することが出来る。
(a)3,4−ジ−オキソ−シクロヘキシル基;
(b)3−R20−4−R21−シクロヘキシル基、
その中で、R20はヒドロキシ、アルコキシ基、オキソ基、または
−OCHOCHCHOCH基、および
21はヒドロキシ、−OCN,アルコキシ基、適当な置換基で置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、1−または2−テトラゾリル、−OCHOCHCHOCH基、保護されたヒドロキシ基、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド基、p−トリルオキシチオカルボニルオキシ、またはR2526CHCOO−(式中、R25は所望により保護されていてもよいヒドロキシ基、または保護されたアミノ基、およびR26は水素原子またはメチル、またはR20とR21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子を形成する);または
(c)シクロペンチル基であって、そのシクロペンチル基は、メトキシメチル、所望により保護されたヒドロキシメチル、アシルオキシメチル(その中において、アシル部分は、所望により4級化されていてもよいジメチルアミノ基またはエステル化されていてもよいカルボキシ基の一方を含んでおり)、1個またはそれ以上の保護されていてもよいアミノおよび/またはヒドロキシ基、またはアミノオキザリルオキシメチルで置換されている。好ましい例は、2−ホルミル−シクロペンチル基である。
【0023】
「適当な置換基で置換されていてもよいヘテロアリールオキシ」の中の「適当な置換基で置換されていてもよいヘテロアリール」部分とは、EP−A−532,088中の式で表される化合物の基Rとして例示のものが挙げられるが、例えば、1−ヒドロキシエチルインドール−5−イルが好ましい。その開示を引用して明細書記載の一部とする。
【0024】
本発明において使用されるトリシクロ化合物(I)または医薬として許容されるその塩は、優れた免疫抑制作用、抗菌活性、およびその他の薬理活性を有し、その為、臓器あるいは組織の移植に対する拒絶反応、移植片対宿主反応、自己免疫疾患、および感染症等の治療および予防に有用であることはよく知られている。[EP−A−0184162、EP−A−0323042、EP−A−423714、EP−A−427680、EP−A−465426、EP−A−480623、EP−A−532088、EP−A−532089、EP−A−569337、EP−A−626385、WO89/05303、WO93/05058、WO96/31514、WO91/13889、WO91/19495、WO93/04680、WO93/5059等]。それらの開示を引用して明細書記載の一部とする。
【0025】
特に、FR900506(=FK506)、FR900520(アスコマイシン)、FR900523およびFR900525と呼称される化合物は、ストレプトミセス(Streptomyces)属の微生物、例えばストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)No.9993[託機関:日本国茨城県つくば市東1丁目1−3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(旧名称:通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所)、寄託日:1984年10月5日、受託番号:FERM BP−927]もしくは、ストレプトミセス・ハイグロスコピカス・サブスペシース・ヤクシマエンシス(Streptomyces hygroscopicus subsp.yakushimaensis)No.7238[寄託機関:日本国茨城県つくば市町東1丁目1−3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(旧名称:通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所)、寄託日:1985年1月12日、受託番号:FERM BP−928][EP−A−0184162]により産生される産物である。特に下記化学式で示されるFK506(一般名:タクロリムス)は、代表的な化合物である。
【0026】
【化2】

【0027】
化学名:17−アリル−1,14−ジヒドロキシ−12−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン
【0028】
トリシクロ化合物(I)のうち、より好ましいものは、R3 およびR4 またはR5およびR6 の隣接するそれぞれの対が独立して、それらが結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間に形成されたもう一つの結合を形成しており、
8 とR23は各々独立して水素原子、
9 はヒドロキシ基、
10はメチル基、エチル基、プロピル基またはアリル基、
Xは(水素原子および水素原子)またはオキソ基、
Yはオキソ基、
14、R15、R16、R17、R18、R19とR22はそれぞれメチル基、
24は、3−R20−4−R21−シクロヘキシル基、
その中で、R20はヒドロキシ、アルコキシ基、オキソ基、または
−OCHOCHCHOCH基、および
21はヒドロキシ、−OCN,アルコキシ基、適当な置換基で置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、1−または2−テトラゾリル、−OCHOCHCHOCH基、保護されたヒドロキシ基、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド基、p−トリルオキシチオカルボニルオキシ、
またはR2526CHCOO−(式中、R25は所望により保護されていてもよいヒドロキシ基、または保護されたアミノ基、およびR26は水素原子またはメチル)、または
20とR21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子を形成し、そして
nは1または2の整数である。
【0029】
最も好ましいトリシクロ化合物(I)としては、FK506の他に、EP427,680の実施例66aに開示されるハロゲン化アスコマイシンなどのアスコマイシン誘導体(例えば、33−エピークロロ−33−デスオキシアスコマイシン)が挙げられる。
【0030】
トリシクロ化合物(I)は、類似の基本骨格、すなわちトリシクロマクロライド骨格と少なくとも一つの類似の生物学的特性(例えば、免疫抑制活性)を有する。
【0031】
トリシクロ化合物(I)は塩の形であってもよく、これとしては、無毒の、医薬として許容される慣用の塩、例えば無機または有機塩基との塩、具体的には、例えばナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩、例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、例えばトリエチルアミン塩およびN−ベンジル−N−メチルアミン塩等のアミン塩が挙げられる。
【0032】
本発明に用いるマクロライド系化合物においては、コンホーマーおよび不斉炭素原子または二重結合に起因する光学異性体および幾何異性体のような1対以上の立体異性体が存在することがあり、そのようなコンホーマーおよび異性体もこの発明のマクロライド系化合物の範囲に包含されると理解されるべきである。またさらに、マクロライド系化合物は溶媒和物の形であってもよいが、その場合も本願発明の範囲に含まれる。好ましい溶媒和物としては、水和物およびエタノレートが挙げられる。
【0033】
本発明において有用なマクロライド化合物は、好ましくは、製薬ビヒクルまたは担体中の、純粋な化合物または化合物の混合物として投与できる。
【0034】
本発明の医薬組成物は、外用(局所)、腸内、静脈内、筋肉内、または非経口適用に適した、有機または無機担体または賦形剤との混合物中で、本発明のマクロライド化合物を有効成分として含む、例えば、固体、半固体または液体の形の、医薬品の形で使用できる。有効成分は、例えば、錠剤、ペレット剤、カプセル剤、点眼液、坐剤、溶液(例えば、生理食塩水)、エマルション、懸濁液(例えば、オリーブオイル)、軟膏および使用に適した何らかの他の形のための、通常の、非毒性の、医薬として許容される担体と混合することができる。使用できる担体としては、水、グルコース、ラクトース、アカシアガム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、トウモロコシデンプン、ケラチン、コロイドシリカ、ジャガイモデンプン、尿素および固体、半固体または液体の形の製剤の製造に使用するのに適したその他の担体があり、さらに、助剤、安定化剤、増粘剤および着色剤ならびに香料も使用できる。活性な目的化合物は、疾病の進行または状態に対して所望の効果を生じるのに十分な有効量の医薬組成物に含まれる。
【0035】
本発明の方法を用いて治療出来る哺乳類としては、畜産哺乳類、例えばウシ、ウマ等、家畜動物、例えばイヌ、ネコ、ラット等、およびヒトが挙げられる。
【0036】
マクロライド化合物の治療上有効量の投与量は、治療される個々の患者の各々の年齢および状態によって、またそれらに応じて変わるが、通常、疾病を治療するためには、約0.0001〜1000mg、好ましくは、0.001〜500mg、およびより好ましくは、0.01〜100mgの有効成分という日用量が与えられ、通常、約0.001〜0.01mg、0.2〜0.5mg、1mg、5mg、10mg、50mg、100mg、250mgおよび500mgという平均単回用量が投与される。ヒトにおける慢性投与のための日用量は、約0.1〜0.3mg/kg/日の範囲となる。
【0037】
特に、トリシクロ化合物(I)またはその医薬として許容される塩は、例えば、US6,361,760によって示された吸入用のエアゾール組成物で投与できることが好ましい。
【0038】
エアゾール組成物の形では、トリシクロ化合物(I)またはその医薬として許容される塩の量は、治療上有効なものであり、エアゾール組成物の種類ならびに治療される個々の患者各々の年齢および状態によって、またそれらに応じて変わる。しかしながら、通常、0.001〜10w/v%および好ましくは、0.005〜5w/v%である。
【0039】
その他の種類の化合物、例えばβ2−アゴニスト、抗コリン作用薬、ロイコトリエンアンタゴニスト、副腎皮質ステロイド、クロモンまたは抗生物質を、本発明のマクロライド化合物の混合物で投与できる。
【0040】
例えば、以下の化合物を、好ましいものとして例示する。
【0041】
「β2−アゴニスト」については、限定されるべきではなく、β2受容体を刺激し得る化合物はいずれも意味すると考えられるべきである。好ましいものとして、長時間作用型β2−アゴニスト(例えば、サルメテロール、フォルモテロール等)および短時間作用型β2−アゴニスト(例えば、アルブテロール、ビトルテロール、フェノテロール、イソエタリン、メタプロテレノール、ピルブテロール、テルブタリン、サルブタモール等)を例示出来る。より好ましいものとしては、サルメテロールまたはフォルモテロールなどの長期作用型β2−アゴニストが挙げられる。
【0042】
「抗コリン作用薬」については、限定されるべきではなく、コリン作動性活性を阻害し得る化合物、例えば、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、硝酸メチルアトロピン、硫酸アトロピン、イプラトロピウム、ベラドンナ抽出物、スコポラミン、スコポラミンメトブロミド、ホマトロピンメトブロミド、ヒヨスチアミン、イソプリオプラミド、オルフェナドリン、塩化ベンズアルコニウム、臭化チオトロピウムおよび臭化グリコピロニウムはいずれも意味すると考えられるべきである。
【0043】
「ロイコトリエンアンタゴニスト」については、モンテルカスト、米国特許第5,565,473号に示される、[R−(E)]−1−[[[1−[3−[2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル]−フェニル]−3−[2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−フェニル]プロピル]チオ]メチル]シクロプロパン酢酸(シングレア(SINGULAIR)、メルク社(Merck & Co., Inc)、ニュージャージー州、ローウェー)を例示出来る。その他のロイコトリエンアンタゴニストは、例えば、米国特許第4,649,157号、同4,845,083号、同5,028,615号および同5,244,899号に記載されている。
【0044】
以下の実施例によって、本発明をさらに詳細に示すが、それらの実施例は本発明の範囲を制限しようとするものではないと理解されるべきである。
【実施例1】
【0045】
FK506物質 1g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC−5R) 1g
ラクトース 2g
クロスカルメロースナトリウム(Ac−Di−Sol) 1g
【0046】
FK506物質(1g)を、エタノール(10ml)に溶解し、それに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC−5R)(1g)を加え、懸濁液を調製した。この懸濁液に、ジクロロメタン(5ml)を加え、均質な溶液を調製した。この溶液に、ラクトース(2g)およびクロスカルメロースナトリウム(商標:Ac−Di−Sol、製造業者:旭化成株式会社)を均質に懸濁し、次いで、有機溶媒を蒸発によって除去した。残った生成物を、真空乾燥機によって減圧下で10時間乾燥させ、コーヒーミルによって2分間製粉し、次いで、篩(32メッシュ)に通すと、FK506物質(5g)の固体分散組成物が得られた。この組成物を、従来法によってカプセル化し、各カプセルあたり1mgまたは5mgのFK506物質を含有するカプセルを提供した。
【実施例2】
【0047】
FK506物質 10mg
HCO−60 400mg
(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)
エタノール 1mlまで
【0048】
従来法によって、FK506物質およびHCO−60をエタノールに溶解することによって、前記の成分を含んでなる溶液を調製する。適切な容量の生理食塩水で希釈することによって静脈内注射によって投与できる。
【実施例3】
【0049】
FK506物質 10mg(0.2(w/v)%)
ミグリオール812 25mg(0.5(w/v)%)
HFA−227 5ml
【0050】
FK506物質を、ジェットミルを用いることによって粒径2〜3μmに微粉化し、得られた粉末をミグリオール812とともに練った。
【0051】
練った塊を分配した後、各ディスペンサーに、予め−20℃に冷却したHFA−227を詰め、ユニット(5ml)あたり以下の成分を含有するエアゾール生成物を提供するバルブをつけた。(冷充填法)
【実施例4】
【0052】
FK506物質 5mg
ミグリオール812 25mg
HFA−134A 5ml
【0053】
実施例4のものと同様の方法で、前記の成分を含んでなるエアゾール組成物を調製した。
【実施例5】
【0054】
モルモットのタバコの煙誘発性COPDモデルに対するFK506物質の作用を以下の方法で確認した。
【0055】
方法
1.ハートレーモルモットを、鼻部限定吸入チャンバー中でタバコの煙に60分/日、5日/週で4週間曝露した。陰性対照群の動物には空気を曝露した。
2.前記の実施例1のものと同様の方法で調製した、固体分散組成の形のFK506物質、またはそのプラセボを、水に懸濁した後、タバコの煙を曝露する約1時間前に、、毎日経口投与した。
3.タバコの煙の吸入を開始した0、1、2、3および4週後に、呼吸機能パラメーターとして、特殊気道抵抗(sRaw)をダブルボディプレチスモグラフ法により測定した(参照文献1)。
【0056】
参照文献
参照文献1;ペノック(Pennock) BE、コックス(Cox) CP、ロジャーズ(Rogers) RM、カイン(Cain) WA、ウェルズ(Wells) JH。ア・ノンインバシブ・テクニーク・フォー・メジャーメント・オブ・チェンジズ・イン・スペシフィック・エアウェイ・レジスタンス特殊気道抵抗変化を測定するための非侵襲的技法。
ジャーナル・オブ・アプライド・フィジオロジー(Journal of Applied Physiology)1979年2月;46(2):399〜406頁。
【0057】
結果
結果を、以下に示す表1に要約した。
【0058】
【表1】

【0059】
タバコの煙の吸入は、モルモットにおいてsRawの有意な増加を引き起こし、このことは、タバコの煙が気道閉塞を誘発したことを示す。経口投与されたFK506物質は、呼吸機能の低下を有意に抑制した。
【0060】
前記の結果は、FK506物質などのマクロライド化合物は、気道閉塞、より具体的には、タバコの煙によって誘発される気道閉塞を予防または治療するのに有用であるということを示す。
【0061】
前記の結果はさらに、FK506物質などのマクロライド化合物は、気道閉塞を特徴とする、慢性気管支炎および/または肺気腫、および特に、気道閉塞を特徴とする慢性閉塞性肺疾患を予防または治療するのに有用であるということを示す。
【0062】
本特許、特許出願および本明細書に引用した出版物は、参照により引用して一部とする。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道閉塞を治療または予防するための薬剤を製造するためのマクロライド化合物の使用。
【請求項2】
マクロライド化合物が次式(I)のトリシクロ化合物またはその医薬として許容される塩である、請求項1に記載の使用:
【化1】


(式中、R1 およびR2 、R3およびR4 、R5 およびR6 の隣接するそれぞれの対は、各々独立して、
a) 2つの隣接する水素原子を表すが、R2 はアルキル基であってもよく、または
b) 結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
7 は水素原子、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基、もしくはアルコキシ基を表わすか、またはR1 と共になってオキソ基を表わしてもよく;
8 およびR9 は独立して、水素原子またはヒドロキシ基を;
10は水素原子、アルキル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基、アルケニル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルケニル基、またはオキソ基によって置換されたアルキル基を;
Xはオキソ基、(水素原子およびヒドロキシ基)、(水素原子および水素原子)、または式−CH2O−で表わされる基を;
Yはオキソ基、(水素原子およびヒドロキシ基)、(水素原子および水素原子)、または式N−NR1112もしくはN−OR13で表わされる基を;
11およびR12は独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはトシル基を;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22およびR23は独立して水素原子またはアルキル基を;
24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環;
nは1または2の整数を表わし、
上記の意味に加え、さらにY、R10およびR23はそれらが結合している炭素原子と一緒になって飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子および/もしくは酸素原子を含有する複素環基を表わしていてもよいが、その複素環基は、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ベンジル基、式−CH2Se(C65)で表わされる基、および1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基からなる群から選ばれる1以上の基によって置換されていてもよい)。
【請求項3】
気道閉塞がタバコの煙によって誘発される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
気道閉塞を特徴とする慢性気管支炎または肺気腫を治療または予防するための薬剤を製造するためのマクロライド化合物の使用。
【請求項5】
慢性閉塞性肺疾患を治療または予防するための薬剤を製造するためのマクロライド化合物の使用。
【請求項6】
慢性閉塞性肺疾患が気道閉塞を特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
気道閉塞を治療または予防する方法であって、哺乳類にマクロライド化合物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項8】
気道閉塞がタバコの煙によって誘発される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
気道閉塞を特徴とする慢性気管支炎または肺気腫を治療または予防するためのマクロライド化合物の方法。
【請求項10】
慢性閉塞性肺疾患を治療または予防するためのマクロライド化合物の方法。
【請求項11】
慢性閉塞性肺疾患が気道閉塞を特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
気道閉塞を治療または予防するための医薬としての薬剤であって、マクロライド化合物を含んでなる薬剤。
【請求項13】
FK506物質またはその水和物である、請求項1〜12において使用されるマクロライド化合物。




【公表番号】特表2007−516951(P2007−516951A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520537(P2006−520537)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018970
【国際公開番号】WO2005/063242
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】