説明

気道陽圧療法のための装着可能システム

【課題】睡眠時無呼吸症候群の患者に睡眠快適性の高い気道陽圧療法装置を提供すること。
【解決手段】気道陽圧療法用装置1が、患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気を送出するようにされたマスク3と、複数のポンプ要素を具備する空気ポンプシステム5であって、マスクに加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステムとを具備し、空気ポンプシステムが、マスクに直接取り付けられるか、又はマスクから離れた患者の身体の部位に装着されることによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、米国において推定1200万人が苦しんでいる呼吸疾患である。この疾患は、気道の閉塞によって引き起こされ、通例は睡眠中に咽喉の後の軟組織がつぶれて閉じたとき引き起こされる。これは、呼吸の中断を引き起こして、深刻な睡眠不足を結果として招き、前記睡眠不足が次に、この疾患に罹っている人の日常活動に悪影響を与える。睡眠時無呼吸症候群に対する最も一般的で効果的な治療は、持続的気道陽圧(もしくは持続的陽圧呼吸)(CPAP)療法である。この手法では、患者は睡眠中にマスクを鼻に装着し、送風機からの圧力が、2.45kPaまでの規定の圧力で、空気に鼻腔の中を通過させて患者の気道がつぶれるのを防ぐ。一部の患者が鼻マスクの代わりに鼻プロングを使用する一方で、他の患者が鼻と口の両方を覆うフルフェイス型マスクを必要とする。
【背景技術】
【0002】
CPAP療法の変形形態が、患者の治療と快適さを改善するために利用できる。一つの変形形態では、より高い圧力が吸息の間に適用され、またより低い圧力が呼息の間に適用される。代わりに、患者の呼吸パターンに応じて圧力が連続的に変えられてもよい。これらオプションのどれにおいても、患者が眠りに落ちつつある時間で空気の圧力をゆっくり増大させることが可能である。
【0003】
睡眠時無呼吸症候群の患者のための気道陽圧療法を提供する多くの装置が市販されている。これら気道陽圧療法装置は、送風機と空気送出制御システムを収容したベースユニットを用いており、また空気濾過システム、空気加熱システム、及び/又は加湿システムを含んでいる。コンプライアンスデータ及び動作データのロギングオプションも利用可能である。ベースユニットは患者の寝台の傍らに置かれ、柔軟な空気ホースがベースユニットを患者のマスクに接続して、加圧空気を適正な圧力と流量で供給する。柔軟なホースは扱い難いことがあって、患者の睡眠中の移動能力を制限することがある。気道陽圧装置の使用中の不快さは、患者に不満をもたらし、またその装置の使用における不十分な追従性が引き起こされる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6106245号明細書
【特許文献2】米国特許第6179586号明細書
【特許文献3】米国特許第6729856号明細書
【特許文献4】米国特許第6767190号明細書
【特許文献5】米国特許第6530372号明細書
【0005】
【非特許文献1】シー・キャブツ(C. Cabuz)等、「デュアルダイヤフラムポンプ(The Dual Diaphragm Pump)」、第14回電気電子技術者協会超小型電気機械システム国際会議の技術ダイジェストメモ2001、p. 519〜522
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
新しい気道陽圧療法装置が、睡眠時無呼吸症候群の患者に向上した睡眠快適性を提供するため、及びこれら患者による該装置の使用中における追従性を高めるために必要とされる。この必要性は、以下に説明されて、特許請求の範囲の請求項によって規定される本発明の実施態様によって取り組まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施例は、気道陽圧療法を提供するための装置に関係しており、前記装置は、患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気の送出に適するようにされたマスクと、複数のポンプ要素を含む空気ポンプシステムにして、マスクに加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステムとを具備し、該空気ポンプシステムは、マスクに直接に取り付けられるか、又はマスクから離れた患者の身体の部位に装着されるようにされている。
【0008】
複数のポンプ要素は、圧電ポンプ、熱空気圧ポンプ、超音波駆動ポンプ、静電ポンプ、電気浸透ポンプ、電気流体力学的ポンプ、電磁ポンプ、回転ポンプ、形状記憶合金ポンプ、バイメタルポンプ、ダイヤフラムポンプ、回転羽根ポンプ、スクロールポンプ、ソレノイドポンプ、ステッピングモータ駆動ポンプ、ピストンポンプ、及びリニアポンプから成るグループから選択され得る。ポンプ要素がダイヤフラムポンプのとき、それらは、並列運転、直列運転、又は並列及び直列運転の両方に適するようにされる。ダイヤフラムポンプは静電気作動されるか又は圧電作動される。
【0009】
前記装置は、患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットにして、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットをさらに具備し、該充電式電源ユニットは一つ以上の電池を具備するか、代わりに一つ以上の燃料電池を具備することができる。
【0010】
前記装置は、患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットにして、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットと、気道陽圧を提供するための装置が患者によって使用されていないとき、該装置と連結されるようにされたベースユニットとをさらに具備し、該ベースユニットは前記充電式電源ユニットを充電するようにされた充電システムを含んでいる。装置は、該装置が患者によって使用されているとき作動データを監視し且つ記憶するためのデータ監視・記憶システムも含むことがある。ベースユニットは、該ベースユニットが気道陽圧療法を提供するための装置と連結されている間に該装置からデータをダウンロードし且つ記憶するようにされたデータロギングシステムを含むことがある。
【0011】
装置は、該装置が患者によって使用されている間に作動データを監視し且つ伝送するようにされたデータ監視及び無線伝送システムをさらに具備することが可能で、またベースユニットは、前記無線伝送システムによって伝送されたデータを受信し且つ記憶するようにされた受信機を含むことが可能である。
【0012】
装置は、(1)空気ポンプシステムへの注入空気又はマスクへ供給される加圧空気を加湿するようにされた加湿システム、及び(2)空気ポンプシステムへの注入空気又はマスクへ供給される加圧空気を加熱するようにされた加熱システム、及び(3)空気ポンプシステムへの注入空気又はマスクへ供給される加圧空気を濾過するようにされた濾過システムのどれでもをさらに具備し得る。
【0013】
空気ポンプシステムは、マスクに取り付けられて一体型のマスク・空気ポンプシステムを形成する。装置は、患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットにして、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットと、該充電式電源ユニットから空気ポンプシステムへ電力を供給するための給電線とをさらに具備し得る。一体型のマスク・空気ポンプシステムは、マスクを患者の顔に固定するようにされた一つ以上のストラップを具備して、充電式電源が前記一つ以上のストラップの少なくとも一つに装着され得る。代わりに、充電式電源ユニットが、患者の腕に着用されるようにされたアームパックに、又は患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子もしくはヘッドピースに、又は患者の胴に着用されるようにされたベストに、又は患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックに搭載されることがある。代わりに、充電式電源ユニットに代えて、装置は、電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線を含んでもよい。
【0014】
気道陽圧療法を提供するための装置は、患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピースと、患者により装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットと、空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホースとをさらに具備することが可能であって、前記空気ポンプシステムは縁なし帽子又はヘッドピースに搭載され、前記充電式電源ユニットは縁なし帽子又はヘッドピースに搭載される。代わりに、充電式電源ユニットに代えて、装置は、電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線を含んでもよい。
【0015】
他の実施例では、気道陽圧療法を提供するための装置は、(c)患者の胴の周りに着用されるようにされたベストであって、空気ポンプシステムが搭載されるベスト、及び(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記ベストに搭載される充電式電源ユニット、及び(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホースをさらに具備する。代わりに、充電式電源ユニットに代えて、装置は、電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線を含むことがある。
【0016】
代替実施例では、気道陽圧療法を提供するための装置は、(c)患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるウエストパック、及び(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記ウエストパックに搭載される充電式電源ユニット、及び(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホースをさらに具備する。代わりに、充電式電源ユニットに代えて、装置は、電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線を含むことがある。
【0017】
他の代替実施例では、気道陽圧療法を提供するための装置は、(c)患者の腕の周りに着用されるようにされたアームパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるアームパック、及び(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記アームパックに搭載される充電式電源ユニット、及び(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホースをさらに具備する。代わりに、充電式電源ユニットに代えて、装置は、電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線を含むことがある。
【0018】
関連する実施例では、気道陽圧療法を提供するための装置は、(c)該装置が患者によって使用されているとき作動データを監視するようにされたデータ監視システム、及び(d)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線、及び(e)データ監視システムからベースユニット又は他のデータ受信手段へ作動データを伝送するようにされたデータ伝送線であって、給電線に概ね並行していて、任意選択的に給電線と共通の外装に収められるデータ伝送線をさらに具備する。
【0019】
他の関係する実施例では、気道陽圧療法を提供するための装置は、マスクと空気ポンプシステムを連結し、且つマスクを空気ポンプシステムから切り離すようにされたコネクタ手段をさらに具備し、前記コネクタ手段は、空気ポンプシステムがマスクに連結されたときに空気をマスクに供給するようになっている。
【0020】
上記の実施例では、空気ポンプシステムは、4から100個の個別的ポンプ要素、又は100から1000個の個別的ポンプ要素、又は1000個を超える個別的ポンプ要素を具備することが可能である。
【0021】
本発明の別の実施例は、(a)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気を送出するようにされたマスク、及び(b)複数のポンプ要素を具備する空気ポンプシステムであって、マスクに加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステム、及び(c)ポンプ要素を駆動するようにされた電源ユニットを具備する、気道陽圧療法を提供するための装置に関係する。マスク、空気ポンプシステム、及び電源ユニットは、患者の頭に着用されるようにされた一体型ユニットになるように結合される。
【0022】
この実施例では、装置は、前記一体型ユニットが患者によって使用されていないとき、該一体型ユニットに連結されるようにされたベースユニットをさらに具備し、前記ベースユニットは前記電源ユニットを充電するようにされた充電システムを含んでいる。一体型ユニットは、患者による一体型ユニットの使用の間に作動データを監視し且つ記憶するためのデータ監視・記憶システムを含む。ベースユニットは、該ベースユニットが一体型ユニットに連結されている間に一体型ユニットからデータをダウンロードし且つ記憶するようにされたデータロギングシステムを含む。一体型ユニットは、患者による一体型ユニットの使用の間に作動データを監視し且つ伝送するようにされたデータ監視・無線伝送システムを含み、ベースユニットは、一体型ユニットの無線伝送システムによって伝送されたデータを受信し且つ記憶するようにされた受信機を含む。
【0023】
この実施例では、装置は、(1)空気ポンプシステムへの注入空気又はマスクへ供給される加圧空気を加湿するようにされた加湿システム、(2)空気ポンプシステムへの注入空気又はマスクへ供給される加圧空気を加熱するようにされた加熱システム、及び(3)空気ポンプシステムへの注入空気又はマスクへ供給される加圧空気を濾過するようにされた濾過システムのうちのどれもをさらに具備する。
【0024】
本発明の他の実施例は、(a)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気を送出するようにされたマスク、及び(b)複数のポンプ要素を具備して、マスクに加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステム、及び(c)給電線によって空気ポンプシステムに接続された電源ユニットを具備する、気道陽圧を提供するための装置を含んでいる。空気ポンプシステムは、マスク、患者の腕に着用されるようにされたアームパック、患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピース、患者の胴に着用されるようにされたベスト、及び患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックの中の一つに装着され、電源ユニットは、アームパック、縁なし帽子又はヘッドピース、ベスト、及びウエストパックの中の一つに搭載される。
【0025】
本発明の任意選択的実施例は、(a)複数のポンプ要素を含む空気ポンプシステムにして、マスクに加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステム、及び(b)空気ポンプシステムをマスクに連結し、且つ一体にされた空気ポンプシステムをマスクから切り離すための手段を具備する、マスクへ加圧空気を供給するための装置に関係している。この実施例では、空気ポンプシステムは、4から100個の個別的ポンプ要素、又は100から1000個の個別的ポンプ要素、又は1000個を超える個別的ポンプ要素を具備する。装置は、ポンプ要素を駆動するための電力を供給するようにされた電源システムをさらに具備する。
【0026】
他の任意選択的実施例は、気道陽圧療法装置用ドッキングステーションに関係し、該ドッキングステーションは、(a)ドッキングステーションと気道陽圧療法装置を連結し且つ切り離すための手段、及び(b)前記装置の作動パラメータを設定するための手段と前記装置へ作動パラメータを伝送するための手段、及び(c)前記装置からドッキングステーションへ作動データをダウンロードするための手段、及び(d)ドッキングステーションを電源に接続するための手段、から基本的に構成される。ドッキングステーションと装置を連結し且つ切り離すための手段は、ドッキングステーションと前記装置との間で電力コネクタを接続し且つ分離するための手段を含む。ドッキングステーションは、前記装置がドッキングステーションに連結されたとき、前記装置内の充電式電源を充電するようにされた充電手段をさらに具備する。
【0027】
本発明の最後の実施例は:
(a)(1)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気を送出するようにされたマスク、及び(2)複数のポンプ要素を具備して、マスクに加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステムであって、マスクに直接に取り付けられるか、又はマスクから離れた患者の身体の部位に装着されるようにされた空気ポンプシステム、を含む装置を準備する段階と;
(b)マスクを患者の顔に取り付ける段階と;
(c)加圧空気を提供するために大気を空気ポンプシステム内で圧縮して、加圧空気をマスク内に導いて、吸息及び呼息の両方の間中に患者の気道内に気道陽圧を維持する段階と;を含む気道陽圧を提供するための方法に関係する。
【0028】
吸息及び呼息の際のマスク内の加圧空気の圧力は、0.39kPaから2.45kPaの範囲の圧力で制御される。代わりに、マスク内の加圧空気の圧力が、吸息の間は第一圧力で及び呼息の間は第二圧力で制御されることがあり、その場合第二圧力は第一圧力より小さい。第一及び第二圧力は0.39kPaから2.45kPaの範囲にある。
【0029】
前記方法は、空気ポンプシステムを作動させるための電力を外部電源から給電線によって供給する段階をさらに含むことがある。代わりに、前記方法が、空気ポンプシステムを作動させるための電力を患者の身体に装着された充電式電源から給電線によって供給する段階をさらに含んでもよい。
【0030】
本発明の実施例は添付図によって示され、前記添付図は必ずしも縮尺に従っていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施例は、複数の小さな個別的空気ポンプ要素を利用するコンパクトで軽量な空気ポンプシステムを利用することによって、気道陽圧装置の使用における高められた快適さと簡便さとを提供する。このコンパクトな空気ポンプシステムは、充電式電源と組み合わせられ、この組み合わせられた空気ポンプ/電源システムは、使用者に装着されて、空気ホースの長さを縮減するか又は空気ホースを不要にし、そのことによって使用者により快適な経験を提供する。一実施例では、コンパクトな空気ポンプシステムは、マスク及び軽量充電式電源と直接に組み合わせられて、使用者の顔及び頭に直接に装着され得る一体型ユニットを形成する。この実施例では、患者はベースユニットに繋がれず、また空気ホースは無い。代わりに、従来型のマスクが装着されるのと同じ様態でマスクが患者に装着され得るように、空気ポンプシステムとマスクが一体化されると共に、電力が、細い電気コードによってベースユニット又は壁面コンセントから空気ポンプシステムに供給されてもよい。この実施例において、細い電気コードは、患者の快適性を高めるために従来型の空気ホースを置き換える。これら二つの代替例の第一のものでは、コンパクトな空気ポンプシステムと充電式電源は組み合わせられて、任意の従来型マスクに取り付け及び前記マスクから取り外し可能なユニットになる。これら代替例の第二のものでは、コンパクトな空気ポンプシステムが、任意の従来型マスクに取り付けられ及び前記マスクから取り外される。
【0032】
他の実施例では、空気ポンプシステムは、充電式電源に組み合わせられて、マスクから離れた場所の患者の身体に装着され得る一体型空気ポンプシステムを形成する。前記一体型空気ポンプシステムは、例えば患者の胴の周りに着用されるように作られたベストに、又は患者のウエストの周りに着用されるように作られたベルト組立体に取り付けられる。代わりに一体型空気ポンプシステムは、患者の頭に着用されるように作られた縁なし帽子又はヘッドピースに取り付けられることがある。他の実施例では、一体型空気ポンプシステムは、患者の上腕に縛り付けられるように設計される。これら実施例の各々では、一体型空気ポンプシステムからマスクまでの短いホースが、加圧空気を患者の鼻及び/又は口に供給するために使用されて、患者をベースユニットに接続する長いホースは不要である。この実施例の一体型空気ポンプシステムを使用するとき、患者は、睡眠中により自由に動くことができ、またベースユニットからシステムを外すことなくトイレに歩いて行くことができる。
【0033】
代替実施例では、空気ポンプシステムは、マスクから離れた患者の身体の部位で患者によって装着されるように設計されている。空気ポンプシステムは、例えば患者の胴の周りに着用されるように作られたベストに、又は患者のウエストの周りに着用されるように作られたベルト組立体に取り付けられる。代わりに、空気ポンプシステムは、患者の頭に着用されるように作られた縁なし帽子又はヘッドピースに取り付けられてもよい。他の実施例では、空気ポンプシステムは患者の腕に縛り付けられるようにデザインされている。これら実施例の各々では、加圧空気を患者の鼻及び/又は口まで供給するために、空気ポンプシステムからマスクまでの短いホースが使用される。電力はベースユニット又は電気ソケットから空気ポンプシステムへ細い電気コードによって供給され、また患者は長い空気ホースによってベースユニットに繋がれない。
【0034】
本開示において、術語の“気道”は、空気を大気から患者の肺に導く通路の通常の解剖学的意味を有する。術語の“気道陽圧”は、患者が本発明の実施例を使用しているとき呼吸サイクルのある時点の患者の気道内の任意の場所における圧力が、患者が本発明の実施例を使用していないとき呼吸サイクルのその時点及びその場所における患者の気道内の圧力より大きいことを意味する。術語の“加圧空気”は、患者の周囲の大気圧より高い圧力の空気を意味する。
【0035】
本開示では、術語の“マスク”は、フルフェイスマスク、鼻マスク、鼻プロング、口マスク、口のマウスピース、又は患者の気道に加圧気体を供給するように作られて使用される任意の他の非侵襲的インターフェイス手段を意味する。マスクの周縁は、大気圧を超える圧力をマスク内で維持するために、患者の顔、口、及び/又は鼻の適切な部位に対する封止部を形成する。通常の運用では封止部を通っていくらかの空気漏れが生じることがある。本明細書で使用されとき、顔は鼻と口を含み、頭は首から上の患者の任意の部分を含む。術語の“装着可能”、“患者の身体に装着された”、及び“患者によって着用された”は、本明細書で説明された装置が、例えばストラップに取り付けられたマスク、又は患者の腕の周りに固定されたアームパック、又は患者のウエストの周りに固定されたウエストパックのように、患者に直接的に取り付けられることを意味している。前記術語は、装置が、患者に着用された物品に搭載される、即ち取り付けられるか又は挿入されることも意味している。そのような物品は、例えば患者の頭に着用される帽子もしくはヘッドピース、又は患者の胴に着用されるベストである。
【0036】
本明細書で用いられる術語の“電源”、“電源ユニット”、及び“電源システム”は、同義語であって、空気ポンプシステムを駆動するための電力を生み出す電池又は燃料電池を利用できる。空気ポンプシステムは、交流又は直流のいずれかで駆動され、電力は、交流又は直流のいずれかで空気ポンプシステムに供給される。
【0037】
本発明の第一の実施例が、図1の例示的システムによって概略的に図示されている。一体型気道陽圧ユニット1は、鼻マスク3及び空気ポンプシステム5を具備し、空気ポンプシステム5を駆動するための電力を供給する充電式電源7の構成要素がストラップ9に配置される。鼻マスク3は、調節式ストラップ9及び11を利用して、適切な密閉のためにマスクを患者の顔と鼻に押付けて保持する。この例では、マスクは、鼻を通して患者の気道を加圧するために、鼻を覆うか、又は鼻プロングを利用する。代わりに、フルフェイスマスク、口マスク、または口マウスピースが、鼻マスクの代わりに使用されてもよい。
【0038】
空気ポンプシステム5は、本発明の他の実施例の空気ポンプシステムと同様に、以下により詳細に説明される複数のポンプ要素を具備している。また空気ポンプシステムは、ポンプ要素を安定な組立体として一体に保持するのに必要な構造体と、各ポンプ要素のための空気入口及び空気出口と、各ポンプ要素への電源配線と、ポンプ要素を取囲むハウジングと、任意選択的なオン/オフスイッチと、ポンプ要素の出口を共通の加圧空気出口へ接続するための一つ以上のマニホールド又はプレナムとを含むことが可能である。
【0039】
一体型気道陽圧ユニット1は、正しい治療のための適切な圧力でマスク内に上昇された圧力を維持する一方で、患者から吐き出された気体を通気する目的で、本技術分野で知られた任意のタイプの呼息ベントまたはポート(非図示)を含むことができる。代わりに、空気ポンプシステム5の設計が、適切な圧力の患者の呼息のための期間をポンプ運転サイクルの間に含んでもよい。
【0040】
図1の概略図は、必ずしも縮尺に従わず、また空気ポンプシステム5及び充電式電源7の様々な代替構造形が可能である。例えば、空気ポンプシステム5の個別的ポンプ要素が、マスク上に配置され且つ患者の顔の側面に延在する薄い層として配置されてもよい。この構造形は、マスク構成要素をバランスさせ、また快適さを高めるために構成要素の重量を患者の顔と頭の広い領域に分布させるものである。
【0041】
図1の実施例では、一体型気道陽圧ユニット1の組み合わせられたマスクと空気ポンプシステムは、患者の顔に装着されるように適合され、このことは、患者の鼻及び鼻の周囲の顔の部位と密封接触をしているマスク3によってポンプが支持されることを意味する。この実施例では、空気ポンプシステム5は、マスク3に直接に搭載又は取り付けられており、また充電式電源7の構成要素がストラップ9上に配置されている。代わりに、充電式電源7の個別の複数の要素が、ストラップ11の側面部分上に若しくはそれに沿って、又は調節式ストラップ9及び11の両方に配置されてもよい。“直接的に取り付けられた”という表現は、空気ポンプシステムが、図1に示されるように単一の組み合わせられた組立体でマスク3に結合されてマスク3によって支持されることを意味する。
【0042】
図2に示される、関係する代替実施例では、一体型の空気ポンプシステム・電源が、図示されるような帽子又は縁なし帽子構造形で配置されるように設計されており、そこでは鼻マスク201は、帽子又は縁なし帽子構造形のヘッドピース203に配置されたポンプ/電源に直接に取り付けられている。空気ポンプシステム205は、図示されるようにヘッドピース203の前部に取り付けられており、調節式ストラップ207及び209がマスク201をヘッドピース203に及び患者の顔に固定するために使用される。空気ホース210が、空気ポンプシステム205からマスク201へ加圧気体を移送する。充電式電源213の構成要素は、図示されるようにヘッドピース203に取り付けられている。適切な治療に必要な圧力でマスク内に高圧力を維持する一方で、患者から吐き出された気体を通気する目的で、本技術分野で公知の任意のタイプの呼息ベントまたはポート(非図示)が、マスク201の部分として又はヘッドピース203の空気ポンプシステム205の部分として含まれてよい。代わりに、空気ポンプシステム205の設計が、適切な圧力での患者の呼息のための期間をポンプ作動サイクルの間に含んでもよい。
【0043】
図1及び2の実施例において、“一体にされた”又は“一体型の”という術語は、空気ポンプシステム及び電源が、患者の頭に着用可能な単一の装置又は組立体に一体に組み合わせられるか結合されることを意味する。
【0044】
図1及び2によって特徴付けられる例示的気道陽圧療法システムの構造の変更形態が可能であり、また特定の患者の要望に合わせて作られることができる。例えば、図2の実施例は、ベースユニットから、又は従来型の壁コンセントから、又は他の任意の外部電源から、つまり患者に着用されたシステムから離間された電源から、細い給電線211によって空気ポンプシステム205を作動させるための電力を供給することにより変更されることが可能である。この変更形態では、充電式電源213は不要である。
【0045】
図1及び2に示される実施例は、マスク、空気ポンプシステム、及び電源が、単一ユニットとして患者の顔又は頭に装着されるように一体にされることを特徴としている。ベースユニット又は他の外部供給源への別個のホース又は電力の接続は必要ではなく、また前記ユニットは完全自給型である。これらの構造は、複数の小さな薄いポンプ要素を具備するコンパクトな空気ポンプシステム5又は205の使用によって可能にされ、前記ポンプ要素は、図1及び2又はその変形形態の空間的構造形に適合するように配置できる。複数の薄い電源要素は、図1及び2の構造的要求条件に適合するために、充電式電源7又は213のためのフレキシブル電源モジュールに一体化される。これら空気ポンプシステム及び電源要素は以下に詳細に説明される。
【0046】
図1のシステムの変形形態は、マスクと空気ポンプシステムを連結し且つマスクを空気ポンプシステムから切り離すようにされたコネクタ手段を具備しており、前記コネクタ手段は、空気ポンプシステムがマスクと連結されたとき空気ポンプシステムが空気をマスクに供給するようになっている。この変形形態では、空気ポンプシステム5を任意の市販のマスクと接続し且つ前記マスクから切り離すことが可能である。この市販のマスクは、マスク3の二重の機能、つまり(a)加圧空気を患者に供給すること、及び(b)取外し式空気ポンプシステム5のための接続及び支持を提供すること、を提供するために使用できる。マスク201が任意の市販のマスクであってよいように空気ホース210がマスク201に取外し式に接続される、図2のシステムの変形形態が可能である。
【0047】
本発明の代替実施例では、空気ポンプシステムは、マスクから離間された場所で患者の身体に装着可能な一体にされた空気ポンプシステムを形成するべく充電式電源と組み合わせられる。これらの実施例では、空気ポンプシステムは、例えば、患者の胴の周りのベストに、又は患者のウエストの周りのベルト組立体に、又は患者の頭の縁なし帽子もしくはヘッドピースに、又は患者の腕に結び付けられたモジュールに装着されるように設計されて適合されている。これら実施例のどれにおいても、加圧空気は、例えば直径2.5cmまでの適切な直径の、短い取外し式の柔軟なホースによって、一体にされた空気ポンプシステムからマスクまで移送される。これら実施例で使用される任意の市販のマスクは、患者が多数の市販のマスクから選択して、必要ならマスクのタイプを変えることを可能にする。
【0048】
これら代替実施例の一つが図3に示されている。空気ポンプシステム313及び充電式電源システム311が、図示されるように、ベスト301の表面に又は内部に取り付けられて、患者の胴に着用される。加圧空気が、短い取外し式の柔軟なホース305を経由してマスク303に供給される。空気ポンプシステム313を作動させる電力は、コード315によって充電式電源システム311から供給される。マスク303は、調節式ストラップ307及び309によって患者の顔の所定の場所に保持される。適切な治療に必要な圧力でマスク内に高圧力を維持する一方で、患者から吐き出された気体を通気する目的で、本技術分野で公知の任意のタイプの呼息ベント又はポート(非図示)が、マスク303の一部として又は空気ポンプシステム313の一部として含まれる。代わりに、空気ポンプシステム313の設計は、適切な圧力での患者の呼息のための期間をポンプ作動サイクルの間に含んでもよい。
【0049】
この実施例のベストは、図3に示されるような衣服タイプのベストであるか、又は肩及び/又は背中の周りのストラップによって患者の胸に保持された材料部分である。“ベスト”という術語の意味は、患者の胴の周りに着用される任意の手段又は組立体であり、その際前記手段又は組立体の少なくとも一部が患者のウエストより上に配置される。
【0050】
他の代替実施例が図4に示されている。この実施例では、空気ポンプシステム413及び充電式電源システム402が、図示されるように患者のウエストの周囲に着用されたウエストパック401に取り付けられている。加圧された空気が、取外し可能な柔軟なホース405を経由してマスク403に供給される。マスク403は、調節式ストラップ407及び409によって患者の顔の所定の位置に保持される。空気ポンプシステム413を作動させる電力は、充電式電源システム402からコード411を介して供給される。適切な治療に必要な圧力でマスク内に高圧力を維持する一方で、患者から吐き出される気体を通気する目的で、本技術分野で公知の任意のタイプの呼息ベント又はポート(非図示)が、マスク403の一部として又は空気ポンプシステム413の一部として含まれる。代わりに、ウエストパック401内の空気ポンプシステム413の設計が、適切な圧力での患者の呼息のための期間をポンプ作動サイクルの間に含んでもよい。
【0051】
図5に示される、関係する実施例が、患者の上腕に着用されるように設計されたアームパック501を利用している。このアームパック501は、それに取り付けられるように設計されて適合された空気ポンプシステム513と充電式電源システム502とを収容して、図示されるように患者の上腕の周囲に着用される。加圧された空気は、取外し可能な柔軟なホース505を通ってマスク503に供給される。マスク503は調節式ストラップ507及び509によって患者の顔の所定の場所に保持される。空気ポンプシステム513を作動させるための電力は、充電式電源システム502からコード511によって供給される。前述の実施例と同様に、適切な治療に必要な圧力でマスク内に高圧力を維持する一方で、患者から吐き出される気体を通気する目的で、本技術分野で公知の任意のタイプの呼息ベント又はポート(非図示)が、マスク503の一部として又は空気ポンプシステム513の一部として含まれる。代わりに、アームパック501内の空気ポンプシステム513の設計が、適切な圧力での患者の呼息のための期間をポンプ作動サイクルの間に含んでもよい。
【0052】
上で解説された実施例に対する代替例が可能であり、該代替例では、空気ポンプシステムを駆動させるための電力が、細い電気コードによってポンプに供給されて、装着可能な電源システムは使用されない。例えば、図6は、患者に装着されたマスク603に空気ポンプシステム601が取り付けられているこれら代替例の一つを示している。空気ポンプシステムへの電力は、ベースユニットから、又は従来型の壁コンセントから、又は他の任意の外部電源から細い給電線605によって供給される。これら代替例のいずれにおいても、給電線は、典型的な壁コンセントのような交流コンセントへの挿入に適した電気プラグをもっている。代わりに、電気プラグが、自動車の12V電源コンセントのような直流電源コンセントへの挿入に適していることもある。空気ポンプシステムが直流で作動して電源コンセントが交流である場合、電気プラグは、AC/DCコンバーター及び/又は電圧調整器を含むことが可能である。代わりに、好ましくはないが、空気ポンプシステムが、AC/DCコンバーター及び/又は電圧調整器を含むことが可能である。
【0053】
図6の実施例では、必要に応じて、充電式電源が給電線605を介して電力を供給するために使用されてもよく、この充電式電源は、図2の縁なし帽子に類似の縁なし帽子で、又は図3のベストに類似のベストで、又は図4のウエストパックに類似のウエストパックで、又は図5のアームパックに類似のアームパックで患者によって着用されることが可能である。この最後の実施例は図7に示されており、そこではアームパック701は充電式電源702を含んでおり、前記充電式電源702は、マスク703に搭載された空気ポンプシステム705にコード711を介して電力を供給する。
【0054】
関連する実施例では、図2のシステムは、縁なし帽子203が空気ポンプシステムだけを含むべく構成されるように、つまり充電式電源213が使用されないように変更され得る。代わりに、空気ポンプシステム205を作動させるための電力が、ベースユニット、又は従来型の壁コンセント、又は他の任意の外部電源に接続された細い給電線211よって供給される。図3のシステムは、ベスト301が空気ポンプシステムだけを含むべく構成されるように、つまり充電式電源システム311が使用されないように変更され得る。代わりに、空気ポンプシステム313を作動させるための電力が、ベースユニット、又は従来型の壁コンセント、又は他の任意の外部電源に接続された細い給電線317によって供給される。図4の実施例は、同様に変更されることが可能で、その場合ウエストパック401は空気ポンプシステム413だけを含むように設計され、つまり充電式電源402は使用されない。代わりに、空気ポンプシステムを作動させるための電力は、ベースユニット、又は従来型の壁コンセント、又は他の任意の外部電源に接続された細い給電線415によって供給される。同様に、図5の実施例は、同様のやり方で変更されることが可能であり、その場合アームパック501は空気ポンプシステム513だけを含むように設計され、つまり充電式電源502は使用されない。代わりに、空気ポンプシステムを作動させるための電力は、ベースユニット、又は従来型の壁コンセント、又は他の任意の外部電源に接続された細い給電線515によって供給される。
【0055】
上述された実施例が、患者に着用された縁なし帽子、ベスト、アームパック、又はウエストパックに搭載された空気ポンプシステム及び電源システムの特定の配置を利用する一方で、空気ポンプシステムと電源システムの配置についての他の組合せが可能である。一つの例では、空気ポンプシステムがアームパックに搭載され、電源システムがベストに搭載される。他の例では、空気ポンプシステムがマスクに搭載され、電源システムがベストに搭載される。全ての可能な組合せの最も包括的な説明では、空気ポンプシステムは、マスクに、又は患者の腕に着用されるようにされたアームパックに、又は患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子もしくはヘッドピースに、又は患者の胴に着用されるようにされたベストに、又は患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックに搭載され、つまり電源ユニットは、アームパック、縁なし帽子もしくはヘッドピース、ベスト、又はウエストパックに搭載される。
【0056】
任意選択的に、外部電源から電気コードによって電力を空気ポンプシステムに供給する上述された実施例のどれもが、作動データを空気ポンプシステムからベースユニット又は他のデータ受取り手段に伝送するようにされたデータ伝送線を含むことが可能であり、前記データ伝送線は、電気コードとほぼ並行しており、つまり電気コートとほぼ同じ経路をたどり、また電気コードと共に共通の外装に収めることが可能である。
【0057】
加圧空気は、前述された実施例のマスクに、0.39kPaから2.45kPaの範囲の典型的な圧力で空気ポンプシステムによって供給される。本技術分野で公知の適切な圧力制御手段が、必要に応じて一定圧力療法、二重圧力療法、または可変圧力療法を提供するために使用される。マスクに送り出される加圧空気の流量はマスクの周縁における空気漏れ量に依存している。典型的には、空気ポンプシステムは、(23℃及び大気圧で規定された)10〜120l/minの流量をマスクに供給するように設計されている。
【0058】
前述された本発明の実施例は、空気ポンプシステムが患者の様々な身体の部位に装着されるように構成されるという共通の特徴によって特徴付けられる。この特徴は、マスクから患者の寝台脇のベースユニットへ至る長い空気ホースに対する必要性を取り除く。一部の実施例では、電力を空気ポンプシステムに供給するために、電源システムも患者に装着される。
【0059】
これら実施例のためのコンパクトで装着可能な空気ポンプシステムは、配列された複数の小さなポンプ要素を使用するように設計されており、前記配列された複数の小さなポンプ要素は、所要の空気圧力及び流量を供給するために、直列及び/又は並列の流れ作動で相互接続されることが可能である。複数のポンプ要素は、前述されたとおり患者の身体上の様々な部位に調和するように形作られることが可能な、比較的薄い配列又は構造形で組み合わせられる。個別のポンプ要素は、限定されるものではないが、圧電ポンプ、熱空気圧ポンプ、超音波駆動ポンプ、静電ポンプ、電気浸透ポンプ、電気流体力学的ポンプ、電磁ポンプ、回転ポンプ、形状記憶合金ポンプ、バイメタルポンプ、ダイヤフラムポンプ、回転羽根ポンプ、スクロールポンプ、ソレノイドポンプ、ステッピングモータ駆動ポンプ、ピストンポンプ、及びリニアポンプから選択された、任意のタイプの小さな又は小型化されたポンプである。
【0060】
本発明の実施例との使用に適した空気ポンプ要素の配列は、複数の個別的ポンプ要素を、つまり2個以上のポンプ要素を含んでいる。配列は、少なくとも4個の個別的ポンプ要素を具備することが可能であり、また20個まで、又は100個まで、又は1000個まで、又は1000個を超えさえする個別的ポンプ要素を含むことが可能である。例えば、複数のポンプ要素は、4〜100個の個別的ポンプ要素、又は100〜1000個の個別的ポンプ要素、又は1000個を超える個別的ポンプ要素を具備する。個別的ポンプ要素は、例えば2秒以下、又は0.5秒以下、又はさらに0.1秒以下で非常に迅速に加圧気体の流れを始動又は停止させる能力を有しているべきである。
【0061】
所与の配列の個別的ポンプ要素は、各ポンプ要素が同じか又はほとんど同じ入口圧力及び出口圧力を有する並列構造形で配列され、またポンプ要素は、ある特定の設計構造形の共通の入口及び/又は出口プレナムもしくはマニホールドをもつことが可能である。並列要素の数が、所望の加圧気体流量を生み出すように選択される。代わりに、個別的ポンプ要素が、直列構造形で配列されることがあり、その場合所与の要素の吐出が次の要素の入口に流れ込み、また直列要素の数が、所望の気体圧力を生み出すように選択される。生成流量と生成圧力との任意の組合せが獲得できるように、ポンプ要素が、並列要素及び直列要素の両方を具備するマトリックス配列で配列されることが有利である。配列において作動している要素の数は、変化する生成流量及び生成圧力の要求条件を満足するように時間と共に変化させられる。より多くの流量は、より多数の作動している並列要素を必要とし、またより高い圧力は、より多数の作動している直列要素を必要とし、つまり逆に言えば、より少ない流量は、より少数の作動している並列要素を必要とし、またより低い圧力は、より少数の作動している直列要素を必要とする。流量と圧力の両方の要求条件が時間と共に変化するとき、弱められた最小限の効率的な電力消費を提供するために、作動中の直列及び並列の両方の要素の数は同時に変化される。
【0062】
図1〜7を参照して上で説明された本発明の実施例では、例えば、空気ポンプシステム用の個別的ポンプ要素は、並列運転、又は直列運転、又は並列と直列の両方の運転に適するようにされた小さなダイヤフラムポンプである。ポンプ要素は、静電気作動又は圧電作動される。これら実施例に使用される小さなダイヤフラムポンプ要素は、例えば、非特許文献1に記載されており、前記非特許文献1は引用することにより本明細書に組み入れられる。小さなダイヤフラムタイプのポンプ要素のさらに別の記載は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4に提示されており、前記特許文献の全ては、引用することによって本明細書に組み入れられる。これら実施例における使用に適した代替的かつ例示的なダイヤフラムポンプ要素は、ドイツのマインツのthinXXS有限会社から市販されているモデル名MPD1304圧電作動マイクロポンプである。
【0063】
本発明の実施例に使用され得る多連ダイヤフラムタイプポンプ要素の非限定的な例が図8Aに示されており、該ポンプ要素は、上述された非特許文献1の図1から改作されたものである。図8Aは、ポンプ要素800の側面断面図であり、前記ポンプ要素800は上本体部801と下本体部802とを具備しており、前記本体部はレンズ形の内部キャビティを形成している。上膜803及び下膜805が、それらの周縁を上本体部801と下本体部802との間に固定又は押付け固定されている。内部キャビティ及び各膜は、上方より見たとき円形である。上膜803は一つ以上の穴又は開口807を有しており、また下膜は一つ以上の穴又は開口809を有している。上膜のどの開口も、下膜の開口と合致又は一致しない、つまり、膜が接触したとき一方の膜の開口は他方の膜によって覆われる。各膜及び各本体部は電極をもっており、前記電極は、膜と上本体部及び下本体部との間に適切な電圧を加えることによって、各膜を鉛直両方向に静電気的に及び独立に移動可能にする。
【0064】
膜を駆動するための電圧は、下膜805へのリード線825、及び上膜803へのリード線825、及び下本体部802へのリード線827、及び上本体部801へのリード線829を介して電圧制御ユニット821によって供給される。これら電圧の電圧制御ユニット821を使った適切な制御によって、各膜を独立に移動させることが可能である。ポンプ要素800の例示的寸法は、0.5から3cmの幅と、0.05から0.2cmの高さとを含み、またポンプ要素は、約2.45kPaの圧力の圧縮気体を10から50std cc/minの流量で供給することができる。より高い圧力を必要に応じて作り出すことができる。
【0065】
ポンプ要素800は、空気又は他の任意の気体が入口817を通ってレンズ形キャビティに引き入れられて、出口819を通って圧縮気体として吐出される、例示的な気体圧縮サイクルで作動される。一つの例示的サイクルが、以下に示される膜位置及び運動のフェーズによって規定される吸入行程及び圧縮行程を含んでいる。
(1)第一フェーズでは、膜と下本体部802との間の電圧は、下膜805の下表面が下本体部802の内側表面に接触して、上膜803の下表面が下膜805の上表面に接触するように設定され、その結果上膜の穴807と下膜の穴809とが塞がれる。
(2)上膜及び下膜が接触したままで共に上方へ移動するように、電圧は変化させられ、そのことにより、最初にキャビティに存在していた気体が圧縮されて、結果生成された圧縮気体831が出口819から吐出される。二枚の膜が直列に上方へ移動するとき、吸気833が、入口817を経由して膜の下のキャビティ内に引き入れられる。この組み合わせられた吸入・吐出行程は、二枚の膜が上本体部801の内側表面に到達したとき完了される。
(3)上膜803が上本体部801の内側表面と接触したままで、下膜805が下方に移動して下本体部802の内側表面に接触するように、電圧が加えられる。下膜の下に在る気体は、下膜が下方へ移動するとき穴809を通って流れる。
(4)電圧は、上膜803が下方へ移動するように加えられる。上膜の下に在る気体は、上膜が下方に移動するとき穴807を通って流れる。このステップの完了のとき、膜はフェーズ(1)に記載された位置に戻り、つまり上記フェーズ(1)のとおり、下膜805の下表面が下本体部802の内側表面に接触して、上膜803の下表面が下膜805の上表面に接触し、そのことによって上膜の穴807と下膜の穴809とが塞がれる。
【0066】
フェーズ(1)から(4)は、例えば毎秒約30から100サイクルの間の高周波数の周期的な様態で繰り返される。この例示的圧縮サイクルが膜の垂直移動を利用し、水平に対する上要素及び下要素の観点で説明される一方で、ポンプ要素及び膜は、水平に対する任意の向きを有し、また水平に対する任意の向きで作動されることが可能である。
【0067】
図8Aの複数の個別的ポンプ要素は、並列構造形で配列されることが可能で、並列構造形では各ポンプ要素は、同じか又はほとんど同じ入口圧力及び出口圧力を有し、また前記ポンプ要素はある特定の設計構造形の共通の入口及び/又は出口プレナムもしくはマニホールドを有する。並列要素の数は、任意の所望の加圧気体の流量を生み出すように選択される。代わりに、個別のポンプ要素が直列構造形で配列されてもよく、その場合所与のポンプ要素の吐出が次のポンプ要素の入口に流れ、また直列要素の数は、任意の所望の気体圧力を生み出すように選択される。生成流量及び生成圧力の任意の組合せを獲得できるように、ポンプ要素が、並列要素及び直列要素の両方を具備するマトリックス配列で配列されることが有利である。配列において作動している要素の数は、変化する生成流量及び生成圧力の要求条件を満足するように時間と共に変化させられる。より多くの流量は、より多数の作動している並列要素を必要とし、またより高い圧力は、より多数の作動している直列要素を必要とし、つまり逆に言えば、より少ない流量は、より少数の作動している並列要素を必要とし、またより低い圧力は、より少数の作動している直列要素を必要とする。流量と圧力の両方の要求条件が時間と共に変化するとき、作動中の直列及び並列の両方の要素の数は同時に変化される。
【0068】
図8Aの多連ポンプ要素の例示的並列組合せ体の断面が図8Bに示されている。4個のポンプ要素835、837、839、及び841が、図示されるように一部重なり合う様態で組み合わせられて、並列に作動する多数の多連要素を与えるように繰り返すことが可能なパターンを提供する。ポンプ要素835は入口843及び出口845を有し、ポンプ要素837は入口847及び出口849を有し、ポンプ要素839は入口851及び出口853を有し、ポンプ要素841は入口855及び857を有する。ポンプ要素の一部重なり合う並列構造形は、スペーサー859、861、863、及び865によって実現され、また該並列構造形ではポンプ要素入口と出口を図示されるように接続するために、適切な通路がスペーサー内に形成される。
【0069】
図8Bに示される方向を有する複数の並列ポンプ要素は、例えば、図1〜7の空気ポンプシステム内に取り付けられる。例として、図4の空気ポンプシステム413は、複数の小さな開口を有する前面吸気グリルを示している。図8Bに描かれるような多連並列ポンプ要素の層は、全てのポンプ要素の吸気口が患者の周囲の大気と直接の流体連通をするように、前記グリルの後側に及び前記グリルにほぼ平行に取り付けられる。全てのポンプ要素の吐出口は、並列ポンプ配列の後側に配置された後部プレナム417の中に導かれる。後部プレナムは、患者によって着用されたウエストパック401の表面に隣接しており、またおそらくそれに取り付けられている。プレナム417はホース405の端まで延びて前記ホース405の端に接続される。
【0070】
図1〜5及び7の実施例では、電源ユニット又はシステムは、電池又は燃料電池のような使い捨て式又は再生可能な電源要素を利用している。典型的には、電源は再生可能である。任意のタイプの充電式電池、例えばアルカリ、ニッケルカドミウム、リチウムイオン、ニッケル水素、及びリチウムポリマー電池のような充電式電池が使用される。満充電と完全放電との間の電池寿命は、少なくとも5時間は必要でありまた8時間より長くてよい。薄く柔軟な再生可能な電池の配列は、図1〜5及び7に示されるように患者の身体の様々な部位に適合するように設計されて適切に形作られる。例えば図1では。複数の薄い充電式電源要素又は電池が電源7として示されている。
【0071】
水素又はメタノールによって稼動される小さな燃料電池システムが、空気ポンプシステムを作動させる電力を生み出すために使用されることがある。燃料電池システムは、再充填可能な燃料容器を含み、また典型的には、少なくとも5時間で任意選択的には8時間を超えて空気ポンプシステムを作動させるのに十分な燃料を保持する。
【0072】
本発明の実施例は、気道陽圧療法の技術分野で公知の任意の圧力・時間プロファイルにより作動される。一つの作動モードでは、持続的気道陽圧(CPAP)が、選択された比較的一定の圧力で呼吸サイクルの間に維持される。他のモードでは、二つのレベルの気道陽圧空気が、二つの選択された圧力、つまり吸息の間のより高い圧力及び呼息の間のより低い圧力で患者に供給される。他の作動モードでは、空気圧力は、特許文献5に記載されたように患者に固有の要求を満足させるために呼吸サイクルの間に変化させられる。なお前記特許文献5は引用することにより本明細書に組み入れられる。現下の実施例について、圧力降下の測定が、マスクまたは空気ポンプシステムの吐出点の近くに配置される相対圧力変換器によって行われる。相対圧力変換器からの読みが、(選択された作動モードに応じて一定であるか又は変化する)相対圧力設定値に対して比較される。そして空気ポンプシステムは、相対圧力を設定値へ移動させる流量を獲得するべく調節される。該調節は、個別的ポンプ要素の速度の変化、又は配列の直列もしくは並列部分の活動化もしくは非活動化、又はこれら二つの方法の組合せであり得る。
【0073】
本発明の実施例は、患者によって気道陽圧療法装置が使用されている間に、作動データ及びコンプライアンスデータを監視し且つ記憶するために、データ監視・記憶システムを含むことが可能である。このデータ監視・記憶システムは、データと時間を追跡する能力を含み、またマスク又は空気ポンプシステムに一体にされて、患者の睡眠中に時間の関数として気体圧力及び流量を測定して記憶する。従来型の気道陽圧装置にも普通にあることだが、データ監視システムは、データ及びタイムスタンプ、マスク外れ事象、個人の無呼吸事象、並びに圧力要求を提供することができる。このデータ監視システムは、患者によって前記一体化されたユニットが使用される間に、リアルタイムの作動データを監視し且つ伝送するようにされた無線伝送システムを任意選択的に含むことが可能である。
【0074】
本発明の実施例が、マスクへ加圧空気を供給するための装置を含み、該装置は、(1)加圧空気をマスクへ供給するようにされた、複数のポンプ要素を含む空気ポンプシステム、及び(2)空気ポンプシステムをマスクに連結し、且つ一体化された空気ポンプシステムをマスクから切り離すための手段を含んでいる。これは、加圧空気供給システムが任意の市販のマスクと共に使用されることを可能ならしめる。該装置は、4から100個の個別的ポンプ要素、又は100から1000個の個別的ポンプ要素、又は1000個を超える個別的ポンプ要素を具備し得る。該装置は、ポンプ要素を駆動するための電力を供給するようにされた電源システムも含み得る。
【0075】
本発明の他の実施例は、気道陽圧療法装置のためのドッキングステーションを含み、該ドッキングステーションは、(a)ドッキングステーションと気道陽圧療法装置を連結し且つ切り離すための手段、及び(b)前記装置の作動パラメータを設定するための手段と作動パラメータを前記装置に伝送するための手段、及び(c)前記装置からドッキングステーションに作動データをダウンロードするための手段、及び(d)ドッキングステーションを電源に接続するための手段、から基本的に構成される。従来技術の装置とは対照的に、このドッキングステーションは、送風機、空気ポンプ、又は他の任意の空気移動装置を含まない。
【0076】
気道陽圧療法装置は、該装置が患者に使用されていないときドッキングステーション又はベースユニットと連結されるようにされている。このドッキングステーションは、データロギングシステムを含むことが可能で、前記データロギングシステムは、前記装置がドッキングステーションに連結される間に、その一体化されたユニットから作動データをダウンロードし且つ記憶するようにされたものである。ドッキングステーションのデータ記憶容量は、365夜以上の監視結果を保有することができる。ドッキングステーションは、空気ポンプシステムがドッキングステーションに連結されたときに電源ユニットを充電するようにされた充電システムを含み得る。該充電システムは、空気供給システムが電池駆動ポンプシステムによって駆動される場合、充電器である。代わりに、空気供給システムが燃料電池システムによって生み出された電力によって作動される場合、ドッキングステーションは、燃料貯蔵タンクと、燃料電池システムの燃料容器に燃料を移送するための手段とを含む。マスク又は空気ポンプシステムに結び付けられたデータ監視システムが、リアルタイム作動データを監視し且つ伝送するようにされた無線伝送システムを含む場合、ドッキングステーションは、マスク又は空気ポンプシステムの無線伝送システムによって伝送されたデータを受信し且つ記憶するようにされた受信機を含むであろう。ドッキングステーションは、図2、3、4、5、及び6の実施例のそれぞれの給電線211、317、415、515、又は605のプラグを受容するようにされた電源ソケットを含み得る。
【0077】
ドッキングステーションは、一体化された空気供給ユニット用の作動パラメータを設定して、空気供給システムがドッキングステーションに連結されたときこれら設定パラメータを、記憶のために空気供給システムに伝送するための手段も含むことがある。これら作動パラメータは、例えば、加圧空気流量、CPAPモードで作動している場合の空気圧力、二つのレベルの気道陽圧モードで作動している場合の空気の高及び低圧力、並びに必要に応じて他のパラメータを含むことが可能である。
【0078】
患者に供給される加圧空気を加湿するために、加湿システムが、図1〜7のどの実施例にも含まれることがある。これは、例えば加湿された加圧空気をマスクへ直接的に供給できるように空気ポンプシステムの吐出口に取り付けられた水蒸発システムによって実現される。代わりに、図3〜5の実施例では、加湿システムはマスクに取り付けられる。必要に応じて、加湿システムは空気ポンプシステムへの入口に取り付けられる。加湿システムは、少なくとも5時間、あるいは8時間を超える作動に十分な水を保持しているべきである。給湿は、空気流路に配置されて貯水槽によって水を補給されるスポンジによって実現され得る。代わりに、小型の噴霧器が空気流路内で水を霧にしてもよい。代わりに、小さなヒーター及び発泡システムが使用されてもよい。
【0079】
任意選択的に、加熱システムが含まれて、空気を加圧の前又は後に加熱する。熱は、空気流路に配置された単純な抵抗加熱要素によって、又は本技術分野で知られた他の手段によって供給される。熱電対又は他の温度測定素子が、制御フィードバックを提供してヒーターへの電力を調節するために、ヒーターの後に配置されてよい。
【0080】
患者に送出される空気の圧力を大気圧の増大又は低下に応じて変化させることができるように、高度補償が、作動制御システムに含まれることがある。他のオプションでは、空気を加圧の前又は後で濾過するために、空気濾過システムが含まれる。
【0081】
図1、2、6、及び7に描かれた実施例のためのマスクへの重量を最小限に抑えるために、マスクに装着される制御及びデータロギングシステムの部品は、オン・オフスイッチだけを含み、残りの部品はマスクのストラップ又はヘッドピースに配置される。プログラミング及びデータ伝送インターフェイスが、マスク又はヘッドピースではなく例えばドッキングステーションに配置された外部の手段によって提供され得る。図3、4、又は5に示される実施例では、プログラミングインターフェイスは、ベスト301、ウエストパック401、又はアームパック501にそれぞれ設けられることが可能である。
【0082】
次の例は、本発明の実施例を説明するものであって、これら実施例を以下に記載された具体的な詳細のどれにも限定するものではない。
【0083】
図3の実施例を利用する加圧空気供給システムは、0.20から1.96kPaの範囲の圧力の空気を100l/minまでの流量で供給してCPAPモードで作動するように設計されている。該システムは、睡眠時無呼吸症候群の患者に、患者が眠っている間に8時間にわたって加圧空気を供給する。前掲の非特許文献1からの性能規格に基づくと、空気ポンプシステム313の各個別的ポンプ要素は、30ml/minで加圧空気を送出することが可能で、8mWの電力を必要とし、また1.5cm×1.5cm×0.1cmの全体寸法を有している。各ポンプ要素は、1.96kPaまでの圧力を生み出し、また3333個のポンプ要素が並列作動されて100l/minの加圧空気所要流量を供給する。空気ポンプシステム313の全体体積は750mlであり、該システムは、27.4cm四方で1cm厚の平坦な配列に形成されている。該システムは図3に示されるようにベスト301の胸部分に取り付けられる。3333個のポンプ要素は、合計約26.7ワットを供給する充電式リチウムイオン電池を使用する電源システム311によって駆動される。電圧変換及び制御回路が追加の5ワットを消費して、合計電力消費量は31.7ワットである。
【0084】
電源システム311の電池は、長寿命モデルであり、その各々が、平均電圧3.7Vにおける公称容量6.7W・hと、重量40gとを有する。31.7Wでの8時間の動作のために、37.9個の電池が並列に必要である。実際には、電池は分離したユニットであるので、この例の構成は、6個の直列の電池の組を並列に7組で合計42個の電池を使用して、合計1.68kgの重量を有する。電池の合計体積は898mlであり、また42個の電池は0.11cmの厚さの層で配列されてベスト301の下方部分に装着される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】気道陽圧療法を受ける患者に加圧空気を供給するための、一体化されたマスクと空気ポンプシステムと電源システムとを示す、本発明の実施例の図である。
【図2】患者の頭部に着用された電源システム及び空気ポンプシステムから加圧空気を供給されるマスクを示す、本発明の他の実施例の図である。
【図3】患者の胴に着用された電源システム及び空気ポンプシステムから加圧空気を供給されるマスクを示す、本発明の代替実施例の図である。
【図4】患者のウエストの周りに着用された電源システム及び空気ポンプシステムから加圧空気を供給されるマスクを示す、本発明の他の代替実施例の図である。
【図5】患者の上腕部に着用された電源システム及び空気ポンプシステムから加圧空気を供給されるマスクを示す、本発明に関係する実施例の図である。
【図6】空気ポンプシステム用の電力が外部の電源から供給される一体化されたマスクと空気ポンプシステムを示す本発明の他の関係する実施例の図である。
【図7】充電式電源が患者の腕に配置され、また空気ポンプシステムがマスクに配置された本発明の実施例の図である。
【図8A】本発明の実施例で使用される、例示的な個別的ダイヤフラムポンプ要素を示す図である。
【図8B】本発明の実施例で使用される、複数の個別的ダイヤフラムポンプ要素の例示的並列構造形を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 一体型気道陽圧ユニット
3 マスク
5 空気ポンプシステム
7 充電式電源
9 ストラップ
11 ストラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道陽圧療法を提供するための装置であって:
(a)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気の送出に適するようにされたマスクと;
(b)複数のポンプ要素を具備して、マスクへ加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステムと;を具備する気道陽圧療法を提供するための装置において、
空気ポンプシステムが、マスクに直接に取り付けられるか、又はマスクから離れた患者の身体の部位に装着されるようにされた、気道陽圧療法を提供するための装置。
【請求項2】
前記複数のポンプ要素が、圧電ポンプ、熱空気圧ポンプ、超音波駆動ポンプ、静電ポンプ、電気浸透ポンプ、電気流体力学的ポンプ、電磁ポンプ、回転ポンプ、形状記憶合金ポンプ、バイメタルポンプ、ダイヤフラムポンプ、回転羽根ポンプ、スクロールポンプ、ソレノイドポンプ、ステッピングモータ駆動ポンプ、ピストンポンプ、及びリニアポンプから成るグループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ポンプ要素が、並列運転、直列運転、又は並列運転と直列運転の両方に適するようにされたダイヤフラムポンプである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ダイヤフラムポンプが、静電気作動されるか、又は圧電作動される請求項3に記載の装置。
【請求項5】
患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットにして、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットをさらに具備し、該充電式電源ユニットが一つ以上の電池を具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットにして、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットをさらに具備し、該充電式電源ユニットが一つ以上の燃料電池を具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
(c)患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットであって、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットと;
(d)前記気道陽圧療法を提供するための装置が患者によって使用されていないとき、該装置と連結するようにされたベースユニットであって、前記充電式電源ユニットを充電するようにされた充電システムを含むベースユニットと;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
気道陽圧療法を提供するための装置が患者によって使用されているとき、該装置が、作動データを監視し且つ記憶するためのデータ監視・記憶システムを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
ベースユニットが気道陽圧療法を提供するための装置と連結されている間に、該装置からデータをダウンロードし且つ記憶するようにされたデータロギングシステムをベースユニットが含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
気道陽圧療法を提供するための装置が患者によって使用されている間に、作動データを監視し且つ伝送するようにされたデータ監視・無線伝送システムをさらに具備する請求項7に記載の装置であって、前記ベースユニットが、データ監視・無線伝送システムによって伝送されたデータを受信し且つ記憶するようにされた受信機を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
(1)空気ポンプシステムへの注入空気、又はマスクへ供給される加圧空気を加湿するようにされた加湿システム;
(2)空気ポンプシステムへの注入空気、又はマスクへ供給される加圧空気を加熱するようにされた加熱システム;及び、
(3)空気ポンプシステムへの注入空気、又はマスクへ供給される加圧空気を濾過するようにされた濾過システム;のうちのどれもをさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
一体型のマスク・空気ポンプシステムを形成するために、空気ポンプシステムがマスクに取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットにして、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットと、該充電式電源ユニットから空気ポンプシステムへ電力を供給するための給電線とをさらに具備する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
一体型のマスク・空気ポンプシステムが、マスクを患者の顔に固定するようにされた一つ以上のストラップを具備し、充電式電源ユニットが、該一つ以上のストラップの少なくとも一つに装着される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
充電式電源ユニットが、患者の腕に着用されるようにされたアームパックに搭載される、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
充電式電源ユニットが、患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピースに搭載される、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
充電式電源ユニットが、患者の胴に着用されるようにされたベストに搭載される、請求項13に記載の装置。
【請求項18】
充電式電源ユニットが、患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックに搭載される、請求項13に記載の装置。
【請求項19】
電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線をさらに具備する、請求項12に記載の装置。
【請求項20】
(c)患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピースであって、空気ポンプシステムが搭載される縁なし帽子又はヘッドピース;
(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動する電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記縁なし帽子又はヘッドピースに搭載される充電式電源ユニット;及び、
(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;をさらに具備する請求項1に記載の装置。
【請求項21】
(c)患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピースであって、空気ポンプシステムが搭載される縁なし帽子又はヘッドピース;
(d)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;及び、
(e)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
(c)患者の胴の周りに着用されるようにされたベストであって、空気ポンプシステムが搭載されるベスト;
(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動する電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記ベストに搭載される充電式電源ユニット;及び、
(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;をさらに具備する請求項1に記載の装置。
【請求項23】
(c)患者の胴の周りに着用されるようにされたベストであって、空気ポンプシステムが搭載されるベスト;
(d)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;及び、
(e)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
(c)患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるウエストパック;
(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動する電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記ウエストパックに搭載される充電式電源ユニット;及び、
(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
(c)患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるウエストパック;
(d)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;及び、
(e)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
(c)患者の腕の周りに着用されるようにされたアームパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるアームパック;
(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動する電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記アームパックに搭載される充電式電源ユニット;及び、
(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
(c)患者の腕に着用されるようにされたアームパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるアームパック;
(d)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;及び、
(e)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
(c)気道陽圧療法を提供するための装置が患者によって使用されているとき、作動データを監視するようにされたデータ監視システム;
(d)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;及び、
(e)前記データ監視システムからベースユニット又は他のデータ受信手段へ作動データを伝送するようにされたデータ伝送線であって、給電線に概ね並行していて、任意選択的に給電線と共通の外装に収められるデータ伝送線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
空気ポンプシステムがマスクに連結されたときに空気をマスクに供給するように、マスクと空気ポンプシステムを連結し、且つマスクを空気ポンプシステムから切り離すようにされたコネクタ手段をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項30】
空気ポンプシステムが、4から100個の個別的ポンプ要素を具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項31】
空気ポンプシステムが、100から1000個の個別的ポンプ要素を具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項32】
空気ポンプシステムが、1000個を超える個別的ポンプ要素を具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項33】
気道陽圧療法を提供するための装置であって:
(a)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気の送出に適するようにされたマスクと;
(b)複数のポンプ要素を具備して、マスクへ加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステム;及び、
(c)ポンプ要素を駆動するようにされた電源ユニット;を具備する、気道陽圧療法を提供するための装置において、
前記マスク及び前記空気ポンプシステム及び前記電源ユニットが、患者の頭に着用されるようにされた一体型ユニットになるように結合される、気道陽圧療法を提供するための装置。
【請求項34】
前記一体型ユニットが患者によって使用されていないとき、該一体型ユニットに連結されるようにされたベースユニットをさらに具備する、請求項33に記載の装置であって、該ベースユニットが、前記電源ユニットを充電するようにされた充電システムを含んでいる、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記一体型ユニットが患者によって使用されている間に作動データを監視し且つ記憶するためのデータ監視・記憶システムを前記一体型ユニットが含む、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
ベースユニットが一体型ユニットと連結されている間に、一体型ユニットからデータをダウンロードし且つ記憶するようにされたデータロギングシステムをベースユニットが含む、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
一体型ユニットが患者によって使用されている間に作動データを監視し且つ伝送するようにされたデータ監視・無線伝送システムを一体型ユニットが含み、一体型ユニットのデータ監視・無線伝送システムによって伝送されたデータを受信し且つ記憶するようにされた受信機をベースユニットが含む、請求項34に記載の装置。
【請求項38】
(1)空気ポンプシステムへの注入空気、又はマスクへ供給される加圧空気を加湿するようにされた加湿システム;
(2)空気ポンプシステムへの注入空気、又はマスクへ供給される加圧空気を加熱するようにされた加熱システム;及び、
(3)空気ポンプシステムへの注入空気、又はマスクへ供給される加圧空気を濾過するようにされた濾過システム;のうちのどれもをさらに具備する、請求項33に記載の装置。
【請求項39】
気道陽圧療法を提供するための装置であって:
(a)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気の送出に適するようにされたマスクと;
(b)複数のポンプ要素を具備して、マスクへ加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステム;及び、
(c)給電線によって空気ポンプシステムに接続された電源ユニット;を具備する、気道陽圧療法を提供するための装置において、
空気ポンプシステムが、マスク、及び患者の腕に着用されるようにされたアームパック、及び患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピース、及び患者の胴に着用されるようにされたベスト、及び患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックの中の一つに搭載され、電源ユニットが、アームパック、及び縁なし帽子又はヘッドピース、及びベスト、及びウエストパックの中の一つに搭載される、気道陽圧療法を提供するための装置。
【請求項40】
加圧空気をマスクに供給するための装置であって:
(a)複数のポンプ要素を具備して、マスクへ加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステム;及び
(b)前記空気ポンプシステムをマスクに連結し、且つ一体にされた空気ポンプシステムをマスクから切り離すための手段;を具備する、加圧空気をマスクに供給するための装置。
【請求項41】
空気ポンプシステムが、4から100個の個別的ポンプ要素を具備する、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
空気ポンプシステムが、100から1000個の個別的ポンプ要素を具備する、請求項40に記載の装置。
【請求項43】
空気ポンプシステムが、1000個を超える個別的ポンプ要素を具備する、請求項40に記載の装置。
【請求項44】
ポンプ要素を駆動するための電力を供給するようにされた電源システムをさらに具備する、請求項40に記載の装置。
【請求項45】
気道陽圧療法装置用のドッキングステーションであって:
(a)ドッキングステーションと気道陽圧療法装置を連結し且つ切り離すための手段;
(b)気道陽圧療法装置の作動パラメータを設定するための手段と前記装置へ作動パラメータを伝送するための手段;
(c) 気道陽圧療法装置からドッキングステーションへ作動データをダウンロードするための手段;及び、
(d)ドッキングステーションを電源に接続するための手段;から基本的に構成される、ドッキングステーション。
【請求項46】
ドッキングステーションと気道陽圧療法装置を連結し且つ切り離すための手段が、ドッキングステーションと気道陽圧療法装置との間で電力コネクタを接続し且つ分離するための手段を含む、請求項45に記載のドッキングステーション。
【請求項47】
気道陽圧療法装置がドッキングステーションと連結されているとき、該装置内の充電式電源を充電するようにされた充電手段をさらに具備する、請求項46に記載のドッキングステーション。
【請求項48】
気道陽圧を提供するための方法であって:
(a)装置を準備する段階であって、前記装置が、
(1)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気を送出するマスクと、
(2)複数のポンプ要素を具備して、マスクに加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステムであって、マスクに直接に取り付けられるか、又はマスクから離れた患者の身体の部位に装着されるようにされた空気ポンプシステムと、を含む装置であるところの、装置を準備する段階;
(b)マスクを患者の顔に取り付ける段階;及び、
(c)加圧空気を提供するために大気を空気ポンプシステム内で圧縮して、加圧空気をマスク内に導いて、吸息及び呼息の両方の間中において患者の気道内に気道陽圧を維持する段階;を含む気道陽圧を提供するための方法。
【請求項49】
吸息の間及び呼息の間におけるマスク内の加圧空気の圧力が、0.39kPaから2.45kPaの範囲の圧力で制御される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
マスク内の加圧空気の圧力が、吸息の間は第一圧力で制御され、また呼息の間は第二圧力で制御され、第二圧力が第一圧力より小さい、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
第一圧力及び第二圧力が、0.39kPaから2.45kPaの間にある、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
空気ポンプシステムを作動させるための電力を、外部の電源から給電線によって供給する段階をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
空気ポンプシステムを作動させるための電力を、患者の身体に装着された充電式電源から給電線によって供給する段階をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道陽圧療法を提供するための装置であって:
(a)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気の送出に適するようにされたマスクと;
(b)複数のポンプ要素を具備して、マスクへ加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステムと;を具備する気道陽圧療法を提供するための装置において、
空気ポンプシステムが、マスクに直接に取り付けられるか、又はマスクから離れた患者の身体の部位に装着されるようにされた、気道陽圧療法を提供するための装置。
【請求項2】
前記複数のポンプ要素が、圧電ポンプ、熱空気圧ポンプ、超音波駆動ポンプ、静電ポンプ、電気浸透ポンプ、電気流体力学的ポンプ、電磁ポンプ、回転ポンプ、形状記憶合金ポンプ、バイメタルポンプ、ダイヤフラムポンプ、回転羽根ポンプ、スクロールポンプ、ソレノイドポンプ、ステッピングモータ駆動ポンプ、ピストンポンプ、及びリニアポンプから成るグループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ポンプ要素が、並列運転、直列運転、又は並列運転と直列運転の両方に適するようにされたダイヤフラムポンプである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ダイヤフラムポンプが、静電気作動されるか、又は圧電作動される請求項3に記載の装置。
【請求項5】
患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットにして、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットをさらに具備し、該充電式電源ユニットが一つ以上の電池を具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットにして、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットをさらに具備し、該充電式電源ユニットが一つ以上の燃料電池を具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
(c)患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットであって、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットと;
(d)前記気道陽圧療法を提供するための装置が患者によって使用されていないとき、該装置と連結するようにされたベースユニットであって、前記充電式電源ユニットを充電するようにされた充電システムを含むベースユニットと;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
気道陽圧療法を提供するための装置が患者によって使用されているとき、該装置が、作動データを監視し且つ記憶するためのデータ監視・記憶システムを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
ベースユニットが気道陽圧療法を提供するための装置と連結されている間に、該装置からデータをダウンロードし且つ記憶するようにされたデータロギングシステムをベースユニットが含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
気道陽圧療法を提供するための装置が患者によって使用されている間に、作動データを監視し且つ伝送するようにされたデータ監視・無線伝送システムをさらに具備する請求項7に記載の装置であって、前記ベースユニットが、データ監視・無線伝送システムによって伝送されたデータを受信し且つ記憶するようにされた受信機を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
一体型のマスク・空気ポンプシステムを形成するために、空気ポンプシステムがマスクに取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
患者によって装着されることが可能な充電式電源ユニットにして、空気ポンプシステムを駆動するための電力を供給するようにされた充電式電源ユニットと、該充電式電源ユニットから空気ポンプシステムへ電力を供給するための給電線とをさらに具備する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
一体型のマスク・空気ポンプシステムが、マスクを患者の顔に固定するようにされた一つ以上のストラップを具備し、充電式電源ユニットが、該一つ以上のストラップの少なくとも一つに装着される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
充電式電源ユニットが、患者の腕に着用されるようにされたアームパックに搭載される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
充電式電源ユニットが、患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピースに搭載される、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
充電式電源ユニットが、患者の胴に着用されるようにされたベストに搭載される、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
充電式電源ユニットが、患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックに搭載される、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線をさらに具備する、請求項11に記載の装置。
【請求項19】
(c)患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピースであって、空気ポンプシステムが搭載される縁なし帽子又はヘッドピース;
(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動する電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記縁なし帽子又はヘッドピースに搭載される充電式電源ユニット;及び、
(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;をさらに具備する請求項1に記載の装置。
【請求項20】
(c)患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピースであって、空気ポンプシステムが搭載される縁なし帽子又はヘッドピース;
(d)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;及び、
(e)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
(c)患者の胴の周りに着用されるようにされたベストであって、空気ポンプシステムが搭載されるベスト;
(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動する電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記ベストに搭載される充電式電源ユニット;及び、
(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;をさらに具備する請求項1に記載の装置。
【請求項22】
(c)患者の胴の周りに着用されるようにされたベストであって、空気ポンプシステムが搭載されるベスト;
(d)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;及び、
(e)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
(c)患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるウエストパック;
(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動する電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記ウエストパックに搭載される充電式電源ユニット;及び、
(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
(c)患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるウエストパック;
(d)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;及び、
(e)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
(c)患者の腕の周りに着用されるようにされたアームパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるアームパック;
(d)患者によって装着されることが可能で、空気ポンプシステムを駆動する電力を供給するようにされた充電式電源ユニットであって、前記アームパックに搭載される充電式電源ユニット;及び、
(e)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
(c)患者の腕に着用されるようにされたアームパックであって、空気ポンプシステムが搭載されるアームパック;
(d)空気ポンプシステムからマスクへ空気を通すようにされたホース;及び、
(e)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
(c)気道陽圧療法を提供するための装置が患者によって使用されているとき、作動データを監視するようにされたデータ監視システム;
(d)電力を空気ポンプシステムへ供給するために一方の端が空気ポンプシステムに取り付けられた給電線であって、外部電源コンセントへの挿入のために他方の端に電気プラグが取り付けられた給電線;及び、
(e)前記データ監視システムからベースユニット又は他のデータ受信手段へ作動データを伝送するようにされたデータ伝送線であって、給電線に概ね並行していて、任意選択的に給電線と共通の外装に収められるデータ伝送線;をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
空気ポンプシステムがマスクに連結されたときに空気をマスクに供給するように、マスクと空気ポンプシステムを連結し、且つマスクを空気ポンプシステムから切り離すようにされたコネクタ手段をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
気道陽圧療法を提供するための装置であって:
(a)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気の送出に適するようにされたマスクと;
(b)複数のポンプ要素を具備して、マスクへ加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステム;及び、
(c)ポンプ要素を駆動するようにされた電源ユニット;を具備する、気道陽圧療法を提供するための装置において、
前記マスク及び前記空気ポンプシステム及び前記電源ユニットが、患者の頭に着用されるようにされた一体型ユニットになるように結合される、気道陽圧療法を提供するための装置。
【請求項30】
前記一体型ユニットが患者によって使用されていないとき、該一体型ユニットに連結されるようにされたベースユニットをさらに具備する、請求項29に記載の装置であって、該ベースユニットが、前記電源ユニットを充電するようにされた充電システムを含んでいる、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記一体型ユニットが患者によって使用されている間に作動データを監視し且つ記憶するためのデータ監視・記憶システムを前記一体型ユニットが含む、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
ベースユニットが一体型ユニットと連結されている間に、一体型ユニットからデータをダウンロードし且つ記憶するようにされたデータロギングシステムをベースユニットが含む、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
一体型ユニットが患者によって使用されている間に作動データを監視し且つ伝送するようにされたデータ監視・無線伝送システムを一体型ユニットが含み、一体型ユニットのデータ監視・無線伝送システムによって伝送されたデータを受信し且つ記憶するようにされた受信機をベースユニットが含む、請求項30に記載の装置。
【請求項34】
(1)空気ポンプシステムへの注入空気、又はマスクへ供給される加圧空気を加湿するようにされた加湿システム;
(2)空気ポンプシステムへの注入空気、又はマスクへ供給される加圧空気を加熱するようにされた加熱システム;及び、
(3)空気ポンプシステムへの注入空気、又はマスクへ供給される加圧空気を濾過するようにされた濾過システム;のうちのどれもをさらに具備する、請求項1又は29に記載の装置。
【請求項35】
気道陽圧療法を提供するための装置であって:
(a)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気の送出に適するようにされたマスクと;
(b)複数のポンプ要素を具備して、マスクへ加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステム;及び、
(c)給電線によって空気ポンプシステムに接続された電源ユニット;を具備する、気道陽圧療法を提供するための装置において、
空気ポンプシステムが、マスク、及び患者の腕に着用されるようにされたアームパック、及び患者の頭に着用されるようにされた縁なし帽子又はヘッドピース、及び患者の胴に着用されるようにされたベスト、及び患者のウエストの周りに着用されるようにされたウエストパックの中の一つに搭載され、電源ユニットが、アームパック、及び縁なし帽子又はヘッドピース、及びベスト、及びウエストパックの中の一つに搭載される、気道陽圧療法を提供するための装置。
【請求項36】
加圧空気をマスクに供給するための装置であって:
(a)複数のポンプ要素を具備して、マスクへ加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステム;及び
(b)前記空気ポンプシステムをマスクに連結し、且つ一体にされた空気ポンプシステムをマスクから切り離すための手段;を具備する、加圧空気をマスクに供給するための装置。
【請求項37】
空気ポンプシステムが、4から100個の個別的ポンプ要素を具備する、請求項1又は36に記載の装置。
【請求項38】
空気ポンプシステムが、100から1000個の個別的ポンプ要素を具備する、請求項1又は36に記載の装置。
【請求項39】
空気ポンプシステムが、1000個を超える個別的ポンプ要素を具備する、請求項1又は36に記載の装置。
【請求項40】
ポンプ要素を駆動するための電力を供給するようにされた電源システムをさらに具備する、請求項36に記載の装置。
【請求項41】
気道陽圧療法装置用のドッキングステーションであって:
(a)ドッキングステーションと気道陽圧療法装置を連結し且つ切り離すための手段;
(b)気道陽圧療法装置の作動パラメータを設定するための手段と前記装置へ作動パラメータを伝送するための手段;
(c)気道陽圧療法装置からドッキングステーションへ作動データをダウンロードするための手段;及び、
(d)ドッキングステーションを電源に接続するための手段;から基本的に構成される、ドッキングステーション。
【請求項42】
ドッキングステーションと気道陽圧療法装置を連結し且つ切り離すための手段が、ドッキングステーションと気道陽圧療法装置との間で電力コネクタを接続し且つ分離するための手段を含む、請求項41に記載のドッキングステーション。
【請求項43】
気道陽圧療法装置がドッキングステーションと連結されているとき、該装置内の充電式電源を充電するようにされた充電手段をさらに具備する、請求項42に記載のドッキングステーション。
【請求項44】
気道陽圧を提供するための方法であって:
(a)装置を準備する段階であって、前記装置が、
(1)患者の気道内に気道陽圧を維持するための加圧空気を送出するマスクと、
(2)複数のポンプ要素を具備して、マスクに加圧空気を供給するようにされた空気ポンプシステムであって、マスクに直接に取り付けられるか、又はマスクから離れた患者の身体の部位に装着されるようにされた空気ポンプシステムと、を含む装置であるところの、装置を準備する段階;
(b)マスクを患者の顔に取り付ける段階;及び、
(c)加圧空気を提供するために大気を空気ポンプシステム内で圧縮して、加圧空気をマスク内に導いて、吸息及び呼息の両方の間中において患者の気道内に気道陽圧を維持する段階;を含む気道陽圧を提供するための方法。
【請求項45】
吸息の間及び呼息の間におけるマスク内の加圧空気の圧力が、0.39kPaから2.45kPaの範囲の圧力で制御される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
マスク内の加圧空気の圧力が、吸息の間は第一圧力で制御され、また呼息の間は第二圧力で制御され、第二圧力が第一圧力より小さい、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
第一圧力及び第二圧力が、0.39kPaから2.45kPaの間にある、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
空気ポンプシステムを作動させるための電力を、外部の電源から給電線によって供給する段階をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
空気ポンプシステムを作動させるための電力を、患者の身体に装着された充電式電源から給電線によって供給する段階をさらに含む、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2006−130320(P2006−130320A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321161(P2005−321161)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED