説明

水の浄化のための方法

本発明は、表面反応させた天然炭酸カルシウムまたは表面反応させた炭酸カルシウムを含み20℃において測定して6.0よりも高いpHを有する水性懸濁液を媒体に加えることによる水の浄化のための方法(前記表面反応させた炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムと二酸化炭素および1つまたは複数の酸との反応生成物である)およびこの方法のための表面反応させた天然炭酸カルシウムの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水の浄化のための方法およびこのような方法における表面反応させた天然炭酸カルシウムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な固体、微生物および溶解された無機および有機物質を除去するために使用され得る広い範囲の水浄化技法がある。方法の選択は処理される水の品質、処理方法のコストおよび処理した水に期待される品質基準に依存する。
【0003】
凝集は、産業廃水または飲料水などの水の浄化において広く使用されている。凝集とは、溶解している化合物および/またはコロイド状粒子がフロックまたは「フレーク」の形態で溶液から除去される方法のことを言う。この用語はそれによって微細な粒子を凝集させてフロックにする方法のことを言うためにも使用される。このときフロックは液体の表面に浮上することもあり、液体の底に沈降することもあり、または液体から容易にろ別され得る。
【0004】
使用される一般的な凝集剤または凝固剤は、硫酸アルミニウムまたはポリ塩化アルミニウム(PAC)である。硫酸アルミニウムは水と反応して水酸化アルミニウムのフロックを形成する。アルミニウム化合物による凝固は仕上がった水の中にアルミニウムの残留物を残すことがある。アルミニウムは高濃度では人に有毒である可能性がある。ポリ塩化アルミニウム(PAC)の溶液中では、アルミニウムイオンは酸素原子によって架橋されたイオンの塊からなるポリマーを形成している。PACは例えば、褐色に変色する原因となる葉などの有機物質および/または鉄やマンガン化合物などの無機物質を含んでいる褐色の飲料水の処理のために使用される。しかし、PACは一般的に水からすべての褐色の変色を除去するためには十分ではない。
【0005】
塩化鉄(III)は別の一般的な凝固剤である。鉄(III)凝固剤は硫酸アルミニウムよりも広いpH範囲にわたって働くが、多くの源水に対して有効ではない。鉄化合物による凝固は通常仕上がった水中に鉄の残留物を残す。これは水にかすかな味を与え、陶磁器什器上の褐色の汚れの原因となり得る。さらに、塩化鉄(III)は水処理設備における腐食のリスクをもたらす。
【0006】
さらに、活性炭やベントナイトなどの周知の、高い比表面積に基づく水処理用吸着剤は、これらの細かく分割された状態の故に除去される物質の吸着後に媒体からこれらを分離することが非常に困難であるという一般的な欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上述の知られている水の浄化のための物質の欠点を考慮して、本発明の1つの目的は水の不純物の効率的な除去をもたらす改善された水の浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記で概要を述べた目的は、水の浄化のための1つの方法によって解決されてきており、この方法において、表面反応させた天然炭酸カルシウムまたは表面反応させた天然炭酸カルシウムを含み、20℃で測定して6.0よりも高いpHを有する水性懸濁液が浄化される水に加えられ、この表面反応させた天然炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムと二酸化炭素および1つまたは複数の酸との反応生成物である。
【0009】
「浄化」と言う用語は、広く解釈されるものとし、有害化合物および/または水の中では許容されない他の化合物のいずれの除去をも意味する。
【0010】
本発明の方法によって好ましく処理される水は、産業廃水、飲料水、都市下水、醸造所もしくは他の飲料産業からの廃水または白水であれ廃水であれ紙産業の水、同じく農業廃水も含む。
【0011】
上記およびさらに下記で定義されている表面反応させた天然炭酸カルシウムは、これの表面に有機不純物も無機不純物も同様に効率的に吸着している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法において使用される表面反応させた天然炭酸カルシウムは、天然炭酸カルシウムを酸とおよび二酸化炭素と反応させることによって得られる。
【0013】
好ましくは、天然炭酸カルシウムは、大理石、白亜、方解石、ドロマイト、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択される。好ましい一実施形態では、天然炭酸カルシウムは酸および二酸化炭素を用いる処理の前に粉砕される。粉砕ステップは当業者に知られている粉砕機などのいずれの従来の粉砕装置を用いても行われ得る。
【0014】
本発明の水浄化方法において使用される表面反応させた天然炭酸カルシウムは、20℃において測定して6.0よりも高い、好ましくは6.5よりも高い、より好ましくは7.0よりも高い、さらにより好ましくは7.5よりも高いpHを有する水性懸濁液として調製される。下記で論じる通り、表面反応させた天然炭酸カルシウムは、前記水性懸濁液を水に加えることによって浄化される水と接触させられ得る。水性懸濁液のpHは、浄化される水への添加の前に、例えば追加の水を用いる希釈によって、修正することも可能である。または、水性懸濁液は乾燥されることができて、水と接触させられる表面反応させた天然炭酸カルシウムは粉末形態または顆粒形態である。言い換えれば、酸および二酸化炭素を用いる処理に続くpHの6.0よりも高い値への上昇は本明細書に記載されている有益な吸着性を有する表面反応させた炭酸カルシウムを提供するために必要とされる。
【0015】
水性懸濁液の調製のための好ましい方法において、粉砕によってなどで細かく分割されていてもいなくても天然炭酸カルシウムは水に懸濁される。好ましくは、スラリーはスラリーの重量に対して1重量%から80重量%、より好ましくは3重量%から60重量%、さらにより好ましくは5重量%から40重量%の範囲内の天然炭酸カルシウムの含有量を有する。
【0016】
次のステップにおいて、天然炭酸カルシウムを含有する水性懸濁液に酸が加えられる。好ましくは、酸は25℃において2.5以下のpKを有する。25℃におけるpKが0以下である場合は、酸は好ましくは硫酸、塩酸またはこれらの混合物から選択される。25℃におけるpKが0から2.5である場合は、酸は好ましくはHSO、HSO、HPO、シュウ酸またはこれらの混合物から選択される。1つまたは複数の酸は懸濁液に濃縮された溶液またはより希釈された溶液として加えられ得る。好ましくは、酸対天然炭酸カルシウムのモル比は0.05から4、より好ましくは0.1から2である。
【0017】
別法として、天然炭酸カルシウムが懸濁される前に酸を水に加えることも可能である。
【0018】
次のステップにおいて、天然炭酸カルシウムは二酸化炭素を用いて処理される。天然炭酸カルシウムの酸処理のために硫酸または塩酸などの強酸が使用される場合は、二酸化炭素は自動的に形成される。代替的にまたは加えて、二酸化炭素は外部の供給源から供給され得る。
【0019】
酸処理および二酸化炭素を用いる処理は同時に行われることもあり、強酸が使用される場合はそうである。最初に、例えば0から2.5の範囲内のpKを有する中程度の強酸を用いて酸処理を行い、外部の供給源から供給される二酸化炭素を用いる処理がこれに続くことも可能である。
【0020】
好ましくは、懸濁液中の気体二酸化炭素の濃度は、体積について比(懸濁液の体積):(気体COの体積)が1:0.05から1:20、さらにより好ましくは1:0.05から1:5であるようなものである。
【0021】
好ましい一実施形態において、酸処理ステップおよび/または二酸化炭素処理ステップは少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。
【0022】
酸処理および二酸化炭素処理に続いて、20℃で測定される水性懸濁液のpHは6.0よりも高い、好ましくは6.5よりも高い、より好ましくは7.0よりも高い、さらにより好ましくは7.5よりも高い値に自然に達し、それによって表面反応させた天然炭酸カルシウムを、6.0よりも高い、好ましくは6.5よりも高い、より好ましくは7.0よりも高い、さらにより好ましくは7.5よりも高いpHを有する水性懸濁液として調製する。水性懸濁液が平衡に至らせられると、pHは7よりも高くなる。6.0よりも高いpHは、水性懸濁液の攪拌が十分な時間、好ましくは1から10時間、より好ましくは1から5時間、続けられると塩基の添加を行うことなく調節され得る。
【0023】
または、7よりも高いpHで生じる平衡に達する前に、水性懸濁液のpHが二酸化炭素処理に続いて塩基を添加することによって6よりも高い値に高められてもよい。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの任意の従来の塩基が使用され得る。
【0024】
上記の方法のステップ、すなわち酸処理、二酸化炭素を用いる処理およびpH調節を用いて、廃水中に存在する可能性があり得る有機不純物に対しても無機不純物に対しても同様に良好な吸着性を有する表面反応させた天然炭酸カルシウムが得られる。
【0025】
表面反応させた天然炭酸カルシウムの調製についてのさらなる詳細は国際公開第00/39222号パンフレットおよび米国特許出願公開第2004/0020410号明細書に開示されており、これらの特許文献において、表面反応させた天然炭酸カルシウムは製紙用充填剤として記載されており、これらの参考文献の内容は本明細書と共に本出願中に含められる。
【0026】
表面反応させた天然炭酸カルシウムの調製の好ましい一実施形態において、天然炭酸カルシウムは、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ土類アルミン酸塩、酸化マグネシウムまたはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下において、酸および/または二酸化炭素と反応させられる。好ましくは、少なくとも1つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、またはアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択される。これらの成分は、酸および/または二酸化炭素を加える前に、天然炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に加えられ得る。
【0027】
または、ケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩および/または酸化マグネシウムの成分は、天然炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応が既に開始されている間に天然炭酸カルシウムの水性懸濁液に加えられ得る。表面反応させた天然炭酸カルシウムの少なくとも1つのケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩の成分の存在下における調製についてのさらなる詳細は、国際公開第2004/083316号パンフレットで開示されており、この参考文献の内容は本明細書と共に本出願中に含められる。
【0028】
表面反応させた天然炭酸カルシウムは、分散化剤により場合によってさらに安定化された懸濁液中に保持され得る。当業者に知られている従来の分散化剤が使用され得る。分散化剤はアニオン性またはカチオン性であり得る。1つの好ましい分散化剤はポリアクリル酸である。
【0029】
または、上記の水性懸濁液は乾燥されることができ、それによって表面反応させた天然炭酸カルシウムを顆粒または粉末の形態で得る。
【0030】
好ましい一実施形態において、表面反応させた天然炭酸カルシウムは、窒素およびISO 9277によるBET法を使用して測定して5m/gから200m/g、より好ましくは20m/gから80m/g、さらにより好ましくは30m/gから60m/gの比表面積を有する。
【0031】
さらに、表面反応させた天然炭酸カルシウムは、沈降法によって測定して0.1から50μm、より好ましくは0.5から25μm、さらにより好ましくは1から10μmの平均粒子直径を有することが好ましい。沈降法は重力場における沈降挙動の解析である。この測定はMicromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100を用いて行われる。この方法および測定器は当業者に知られており、充填剤および顔料の粒子サイズを決定するために広く使用されている。測定はNaの0.1重量%水溶液中で行う。サンプルは高速攪拌機および超音波を使用して分散させた。
【0032】
好ましい一実施形態において、表面反応させた天然炭酸カルシウムは、15から200m/gの範囲内の比表面積および0.1から50μmの範囲内の平均粒子直径を有する。より好ましくは、比表面積は20から80m/gの範囲内であり、平均粒子直径は0.5から25μmの範囲内である。さらにより好ましくは、比表面積は、30から60m/gの範囲内であり、平均粒子直径は0.7から7μmの範囲内である。
【0033】
本発明の方法において、表面反応させた天然炭酸カルシウムは、当業者に知られている任意の従来の手段によって浄化される水、例えば産業廃水、飲料水、都市下水、醸造所もしくは他の飲料産業からの廃水または白水であれ廃水であれ紙産業の水、同じく農業廃水と接触させられる。
【0034】
表面反応させた天然炭酸カルシウムは、水性懸濁液、例えば上記の懸濁液として加えられ得る。または、これは固体形態において、例えば顆粒もしくは粉末の形態でまたはケーキ形態で、加えることができる。本発明に関連する限り、表面反応させた天然炭酸カルシウムを含む固定相を提供することも可能であり、浄化される水は例えばケーキまたは層の形態の前記固定相を通過する、表面反応させた天然炭酸カルシウムを含み、浄化される水は前記固定相を通過する。これは下記においてより詳細に考察される。
【0035】
好ましい一実施形態において、処理される水のpHは、表面反応させた炭酸カルシウムの添加前に、6.0よりも高い、より好ましくは6.5よりも高い、さらにより好ましくは7.0よりも高い値に調節される。
【0036】
好ましくは、表面反応させた天然炭酸カルシウムは、例えば攪拌手段によって、水中に懸濁される。表面反応させた天然炭酸カルシウムの量は、処理される水の種類に依存するだけでなく不純物の種類および量にも依存する。好ましくは処理される水の重量に対して10ppm−1重量%、好ましくは100ppm−0.5重量%、より好ましくは400ppm−2000ppmの量の表面反応させた天然炭酸カルシウムが加えられる。
【0037】
水は、例えば人の廃棄物からもたらされる、有機不純物、有機物質、土壌、界面活性剤に加えて無機不純物、特に鉄またはマンガンを含有する化合物などの重金属不純物を含有し得る。本発明の浄化方法を用いて水から除去され得る有害な成分は、細菌、真菌、古細菌、原生生物などの微生物も含む。
【0038】
さらなる有害物質、例えば多環式化合物、コレステロール、または内分泌攪乱化合物(EDC)、例えば内因性ホルモン17β−エストラジオール(E2)、エストロン(E1)、エストリオール(E3)、テストステロンまたはジヒドロテストステロンなど;フィトホルモンおよびマイコホルモン、β−シトステロール、ゲニステイン、ダイゼインまたはゼラレオンなど;薬剤、17α−エチニルエストラジオール(EE2)、メストラノール(ME)、ジエチルスチルベストロール(DES)など、および工業化学品、4−ノニルフェノール(NP)、4−tert−オクチルフェノール(OP)、ビスフェノールA(BPA)、トリブチル錫(TBT)、メチル水銀、フタレート、PAKまたはPCBなど。
【0039】
さらに、X線解析用のヨウ素化されたコントラスト剤、例えばイオキシタラメート、シプロフロキサシンなどのフルオロキノロン類およびマクロライド類およびスルホンアミド類などの抗生物質が本発明の方法によって除去され得る。
【0040】
表面反応させた炭酸カルシウムは粉末活性炭単独だけでなく、物質を既に吸着している粉末活性炭も非常に効率的に吸着することが見出されている。上記で概要を述べた通り、活性炭は周知の強力な吸着剤ではあるが、吸着はしばしばそれほど迅速ではないという欠点および媒体中におけるこれの細かい分割の故に処理される媒体からのこれの除去が非常に困難であるという欠点を有する。
【0041】
しかし、表面反応させた炭酸カルシウム、活性炭および場合によって、活性炭に吸着された不純物などの他の物質を含んでいる得られる複合物質は、浄化される水から容易に分離され得る。
【0042】
表面反応させた炭酸カルシウムを活性炭と一緒に使用することは、一方で両方の吸着剤の優れた吸着性によって上記で述べた物質などの不純物の極めて効率的な吸着をもたらし、他方では加えて活性炭と複合物質を形成することによって活性炭の除去性を、これが既にこれの表面に吸着された物質、例えば上記で不純物として挙げられた物質を有している場合にも向上させ、表面反応させた炭酸カルシウムと活性炭との相乗的相互作用によってさらに向上させられた不純物の除去をもたらし、得られる複合物質は水性媒体から容易に分離可能である。
【0043】
これについては、活性炭は表面反応させた天然炭酸カルシウムの添加の前に水性媒体中に加えられることが特に好ましい。この実施形態において、物質は基本的にまず活性炭に吸着され、得られた複合物質が基本的に続いて表面反応させた炭酸カルシウムによって吸着されて、活性炭の向上させられた除去性をもたらし、不純物はそれぞれ活性炭に付着させられている。
【0044】
当技術分野において知られている任意の活性炭が本発明の方法において使用され得る。本発明において有用な活性炭の例は、例えばFlukaから入手可能な商品番号05112(gc用のp.a.;粒子サイズ0.3から0.5mm;かさ密度410kg/m)など、Aldrichからの商品番号484156(ガラス状球形粉末、粒子サイズ10−40μm)など、Sigma−Aldrichからの商品番号242276(Darco(登録商標)G−60、粉末、粒子サイズ−100メッシュ)など;Riedel−de Haenからの(商品番号18002、純粋、顆粒)、Lurgi Hydrafin CC8x30(Donau Carbon GmbH & Co.KG、Frankfurt am Main、Germany)またはFlukaから入手可能な活性炭(商品番号05112)である。
【0045】
例えば、活性炭粒子は0.1μmから5mm、好ましくは10μmから2mm、0.1mmから0.5mm、例えば0.3mmの粒子サイズを有することができる。
【0046】
好ましくは、表面反応させた天然炭酸カルシウム対活性炭の重量比は、1:1から100:1、より好ましくは5:1から80:1、特に10:1から70:1または20:1から50:1、例えば30:1から40:1である。
【0047】
添加物が処理される水サンプルに場合によって加えられ得る。これらは、pH調節のための物質およびポリ塩化アルミニウム、塩化鉄または硫酸アルミニウムなどの従来の凝集剤を含み得る。
【0048】
好ましい一実施形態において、上記の表面反応させられていない天然炭酸カルシウムが同様に加えられる。
【0049】
吸着が完了した後、得られる複合物は当業者に知られている沈降およびろ過などの従来の分離手段によって水サンプルから分離され得る。
【0050】
別の1つのやり方では、浄化される液体は、好ましくは表面処理した天然炭酸カルシウムを含み、液体が重力によっておよび/または真空下においておよび/または圧力下において通過するにつれてサイズ排除によって不純物をフィルター表面上に保持する能力がある透過可能なフィルターを通過させられる。この方法は「表面ろ過」と呼ばれている。
【0051】
深層ろ過として知られている別の好ましい技法において、様々な直径および構造の多数の曲がりくねった通路を構成しているろ過助剤が(分子力および/または電気力によって不純物を前記通路内に存在する表面反応させた天然炭酸カルシウム上に吸着しておよび/またはサイズ排除によって不純物粒子をこれらが大きすぎて全ろ過層の厚さを通過できない場合には保持して)不純物を保持する。
【0052】
深層ろ過および表面ろ過の技法は、加えて表面フィルター上に深層ろ過層を置くことによって組み合わせられ得る;この構造はそうしなければ表面フィルターの細孔を塞ぐ可能性のある粒子が深層ろ過層中に保持されるという利点を提供する。
【0053】
深層ろ過層を表面フィルター上に導入するための1つの選択肢は、ろ過される液体中に凝集助剤を懸濁させて、この助剤を続いて、これが表面フィルター上に堆積されるときに不純物の全部または部分をフロック形成させるように、デカンテーションさせ、それによって深層ろ過層を形成する。これは沖積層ろ過システムとして知られている。場合によっては、深層ろ過材の最初の層は沖積層ろ過を始める前に表面フィルター上にプレコートされてもよい。
【0054】
以下の図、実施例および試験は、本発明を例示するが、本発明を限定することは決して意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】17α−エチニルエストラジオールのSRCCへの吸着挙動を異なる平衡時間について示すグラフである。
【図2】17α−エチニルエストラジオールのSRCC、活性炭および二酸化マンガンへの吸着について吸着剤の量当たりの吸着量で表した吸着等温線を示すグラフである。
【図3】17α−エチニルエストラジオールのSRCC、活性炭および二酸化マンガンへの吸着について吸着剤の表面積当たりの吸着量で表した吸着等温線を示すグラフである。
【図4】SRCCによる活性炭の吸着による濁度の低減を示すグラフである。
【図5】活性炭のSEM画像を示す写真である。
【図6】活性炭およびSRCCのSEM画像を示す写真である。
【図7】図6の拡大写真である。
【実施例】
【0056】
本発明の方法による処理の前後の水サンプル中に存在する不純物の種類および量を、Perkin−ElmerからのOptima 3200 XL 1CP−OES計装を使用して決定した。サンプルはSRCCを用いる処理に続いて直ちに分析した。
【0057】
(実施例1)
実施例1において、種々の重金属に関する表面反応させた天然炭酸カルシウムの吸着能力を決定する。
【0058】
カドミウム、クロム、銅、水銀、ニッケルおよび鉛のそれぞれを5ppm含有する重金属溶液500gを表面反応させた天然炭酸カルシウム3%(重量%)と共に15分間攪拌した。溶液をpH11.5において24時間放置し、上層の液相をイオンクロマトグラフィー(Dionex DX 120 Ion−Chromatograph)を用いて分析した。
【0059】
表面反応させた天然炭酸カルシウムは以下の通り調製した:
細かく分割されたOmey、France起源の天然炭酸カルシウムを懸濁させて乾燥物約16重量%の懸濁液を得た。こうして形成されたスラリーを、次いでリン酸を約55℃の温度でゆっくり加えることによって、ISO標準92777による35m/gのBET比表面積、およびLEO 435 VPe走査型電子顕微鏡を使用して得た走査型電子顕微鏡画像から推定して10マイクロメートルの近似の数平均直径を特色とする生成物をもたらすのに十分なように処理する。
【0060】
【表1】

【0061】
表面反応させた天然炭酸カルシウムはカドミウム、クロム、銅、水銀および鉛を非常に効率的に低減する能力があったことは明らかである。当初溶解されていた5ppmから0.1ppm未満が処理したサンプル中に回収された。ニッケルについては、最初の量5ppmの90%が吸着され、これによって溶液から除去された。
【0062】
(実施例2)
実施例2において、表面反応させた天然炭酸カルシウムの微生物に関する吸着能力を決定する。
【0063】
6×10cfu/cmの胚カウントを有する100ppmの酵母懸濁液を使用した。最初の実験では、酵母懸濁液をブルーバンドろ紙を通してろ過した。2番目の実験では、懸濁液は表面反応させた天然炭酸カルシウムで作られた90mmの直径および30mmの厚さを有する層を通してろ過した。
【0064】
表面反応させた天然炭酸カルシウムは以下の通り調製した:
2つのサンプルを試験し、0.5%以内で同じ結果を得た。
【0065】
最初の表面反応させた天然炭酸カルシウム:
細かく分割されたOmey、France起源の天然炭酸カルシウムを懸濁させて乾燥物約16重量%の懸濁液を得た。こうして形成されたスラリーを、次いでリン酸を約55℃の温度でゆっくり加えることによって、ISO標準92777による35m/gのBET比表面積、およびLEO 435 VPe走査型電子顕微鏡を使用して得た走査型電子顕微鏡画像から推定して10マイクロメートルの近似の数平均直径を特色とする生成物をもたらすのに十分なように処理する。
【0066】
2番目の表面反応させた天然炭酸カルシウム:
細かく分割されたMolde、Norway起源の天然炭酸カルシウムを懸濁させて乾燥物約16重量%の懸濁液を得た。こうして形成されたスラリーを、次いでリン酸を約55℃の温度でゆっくり加えることによって、ISO標準92777による50m/gのBET比表面積、およびLEO 435 VPe走査型電子顕微鏡を使用して得た走査型電子顕微鏡画像から推定して20マイクロメートルの近似の数平均直径を特色とする生成物をもたらすのに十分なように処理する。
【0067】
結果は表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
これらの結果は表面反応させた天然炭酸カルシウムの使用が胚カウントを100分の1に低減させたことを示している。
【0070】
(実施例3)
実施例3では、河水を本発明の浄化方法の対象とした。表面反応させた天然炭酸カルシウム100ppmおよびポリ塩化アルミニウム4ppmを河水サンプル中に懸濁させた。2分間後に、フロック形成された固体をろ別し、ろ液を鉄およびマンガンの含有量について分析した。
【0071】
実施例3において使用された表面反応させた天然炭酸カルシウムは以下の通り調製した:
炭酸カルシウムの乾燥グラム当量当たり酸化マグネシウム800ppmおよびアニオン性ポリアクリレート分散化剤2500ppmを含有するVermont、USA起源の細かく分割された天然炭酸カルシウムを懸濁して乾燥炭酸カルシウム約16重量%の懸濁液を得た。こうして形成されたスラリーを、次いでリン酸を約55℃の温度でゆっくり加えることによって、ISO標準92777による68m/gのBET比表面積、およびMicromeritics(商標)からのSedigraph(商標)5100によって測定して10マイクロメートルのd50を特色とする生成物をもたらすのに十分なように処理する。
【0072】
結果は表3にまとめる。
【0073】
【表3】

【0074】
これらの結果は、表面反応させた天然炭酸カルシウムを用いる処理が鉄およびマンガンなどの重金属イオンの量を顕著に低減させることをはっきり示している。
【0075】
(実施例4)
Omey、France起源の細かく分割された天然炭酸カルシウムの乾燥重量基準で約25重量%の懸濁液を調製した。こうして形成されたスラリーを、次いでリン酸を約55℃の温度でゆっくり加えることによって処理した。
【0076】
得られたスラリーは、ISO標準92777による60m/gのBET比表面積およびMicromeritics(商標)からのSedigraph(商標)5100によって測定して約7μmのd50を有していた。
【0077】
1.17α−エチニルエストラジオールの吸着
Sigma Aldrich(Bornem、Belgium)から供給された17α−エチニルエストラジオール(EE2)(純度>98%)(商品番号E4876)を使用した。
【0078】
a)試験混合物の調製
1つの標準的実験を以下の手順を使用して実行した:
25重量%の固体含有量を有するSRCC懸濁液0.4gを、50、100、200、500および1000μg/lの異なる濃度を有する17α−エチニルエストラジオール溶液7mlに加え、25℃において30分間、1時間、2時間および24時間振とうした。
【0079】
b)17α−エチニルエストラジオールの表面反応させた炭酸カルシウムの表面への吸着における平衡濃度の決定
SRCC表面への吸着に関する17α−エチニルエストラジオールの平衡濃度の決定のために、SRCCの添加後の当初および最終の濃度を複数の特定の濃度および処理(振とう)時間において測定した。図1から、17α−エチニルエストラジオールのSRCC表面への吸着が極めて速く、30分以後にはどの濃度についても変化が観察されなかったことを読み取ることができ、これは30分以後には濃度に無関係に吸着平衡に達していることを示している。
【0080】
濃度は周知のHPLC法(カラム:Gemini 5μm C18/ODS C18;溶離剤A:水(45%);溶離剤B:アセトニトリル55%;溶離剤の種類:定組成;流量1ml/分;温度25℃;検出:205nmにおけるUV−可視吸収)によって決定した。
【0081】
c)いくつかの吸着剤に対する17α−エチニルエストラジオールの吸着等温線の決定
17α−エチニルエストラジオール吸着の効率を決定するために吸着等温線を求めた。
【0082】
平衡時間後に、SRCCを沈降、ろ過または遠心分離によって液相から分離する。上層の液相中の濃度を上記のHPLC法によって決定して平衡濃度を得る。下層の固相は上澄み相のデカンテーションによって分離する。SRCCを塩酸の一定量中に溶解させ、濃度を上述の方法を用いて測定してSRCCの量当たりで吸着された量を得る。
【0083】
上記の知見に基づいて、17α−エチニルエストラジオールのSRCCに対する吸着等温線の決定のために1時間の平衡時間を使用した。
【0084】
さらに、吸着剤として作用する活性炭に対する吸着等温線を決定した。活性炭に関するデータは16時間後に測定した。使用した活性炭は市販のLurgi Hydrafin CC 8x30(Donau Carbon GmbH & Co.KG、Frankfurt am Main、Germany)であった。これは0.5から2.5mmの粒子サイズおよび480±50kg/mの密度を有する。
【0085】
図2から、吸着剤の量当たりで17α−エチニルエストラジオールが吸着される量ng/gに関して、活性炭が17α−エチニルエストラジオールの吸着において優っていることを読み取ることができる。
【0086】
しかし、図3で示した吸着剤の表面積当たりで17α−エチニルエストラジオールが吸着される量に関しては、SRCCが17α−エチニルエストラジオールの吸着において同じレベルの効率を示すことが分かり、これは活性炭の効率よりも際立って高い。
【0087】
これらの知見は、17α−エチニルエストラジオールを吸着するためには重量に関しては活性炭の方が少なくてよいが、SRCCは表面積に関してはより有効であり、すなわちこれはより小さい比表面積を有するが、表面積当たりでより多くのエストロゲンを吸着することを示している。
【0088】
さらに、活性炭と一緒でのSRCCの使用は予想外の相乗効果を示すことが見出された。
【0089】
2.活性炭の吸着
説明の中で述べた通り、活性炭は簡単には水から分離することができない。しかし、表面反応させた炭酸カルシウムは活性炭懸濁液を見事に清澄化する能力があり、活性炭の分離を簡単にする。
【0090】
Flukaから市販されている活性炭(商品番号05112、p.a.for gc;粒子サイズ0.3から0.5mm;かさ密度410kg/m)およびSRCCに以下の処理を施した:
活性炭0.02gを水30gに加えた。次いでSRCC0.2gを加え、得られた混合物を2分間振とうした。混合物を沈降させた。続いて、上相をデカンテーションによって分離した。
【0091】
図4から、上層の液相の濁度を顕著に低減させることができたことを読み取ることができる。純粋な活性炭の濁度は常にこの装置(Hach 2100P Iso Turbidimeter)で測定できる最大値である1000NTUよりも大きかった。
【0092】
得られた複合物質は、例えばろ過によって、容易に分離することができる。
【0093】
図5は、活性炭のSEM画像を示す。
【0094】
図6は、活性炭およびSRCCのSEM画像を示す。図7は、図6の拡大図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面反応させた天然炭酸カルシウム、または表面反応させた天然炭酸カルシウムを含み20℃において測定して6.0よりも高いpHを有する水性懸濁液が浄化される水に加えられ、前記表面反応させた天然炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムの二酸化炭素および1つまたは複数の酸との反応生成物である、水の浄化のための方法。
【請求項2】
表面反応させた天然炭酸カルシウムが、20℃において測定して6.5よりも高い、好ましくは7.0よりも高い、最も好ましくは7.5のpHを有する水性懸濁液として調製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
天然炭酸カルシウムが、大理石、方解石、白亜、ドロマイト、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
酸が25℃において2.5以下のpKを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
酸が、塩酸、硫酸、亜硫酸、硫酸水素塩、リン酸、シュウ酸およびこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
天然炭酸カルシウムが、少なくとも1つのケイ酸塩および/またはシリカ、水酸化アルミニウム、アルカリ土類金属アルミン酸塩、酸化マグネシウムまたはこれらの混合物の存在下において、酸および/または二酸化炭素と反応させられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのケイ酸塩が、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウムまたはアルカリ金属ケイ酸塩から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
表面反応させた天然炭酸カルシウムが、窒素およびISO 9277によるBET法を使用して測定して5m/gから200m/g、好ましくは20m/gから80m/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
表面反応させた天然炭酸カルシウムが、沈降法によって測定して0.1から50μm、好ましくは1から10μmの平均粒子直径d50を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
表面反応させた天然炭酸カルシウムを含む水性懸濁液が、1つまたは複数の分散化剤で安定化されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
表面反応させた天然炭酸カルシウムが、粉末形態および/または顆粒形態で使用されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
表面反応させた天然炭酸カルシウムが、処理される水の重量に対して10ppm−1重量%、好ましくは100ppm−0.5重量%、より好ましくは400ppm−2000ppmの量で加えられることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
浄化される水のpHが、表面反応させた天然炭酸カルシウムと接触させられる前に>6.5、好ましくは>6.5、より好ましくは>7の値に調節されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
浄化される水が、産業廃水、飲料水、都市下水、醸造所または他の飲料産業からの廃水、紙産業の水および農業廃水を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
浄化される水が、重金属不純物を含有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
浄化される水が、微生物を不純物として含有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
浄化される水が、17β−エストラジオール(E2)、エストロン(E1)、エストリオール(E3)、テストステロンまたはジヒドロテストステロンなどの内因性ホルモン;β−シトステロール、ゲニステイン、ダイゼインまたはゼラレオンなどのフィトホルモンおよびマイコホルモン;17α−エチニルエストラジオール(EE2)、メストラノール(ME)、ジエチルスチルベストロール(DES)などの薬剤、および4−ノニルフェノール(NP)、4−tert−オクチルフェノール(OP)、ビスフェノールA(BPA)、トリブチル錫(TBT)、メチル水銀、フタレート、PAKまたはPCBなどの工業化学品を含む群から選択されるEDC不純物を含有することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
浄化される水が、活性炭不純物を含有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
活性炭不純物が、これらの表面に吸着されているさらなる不純物を有することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
浄化される水が、表面ろ過、深層ろ過および/または沖積層ろ過によって、表面反応させた天然炭酸カルシウムと接触させられることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から20の一項に記載の表面反応させた天然炭酸カルシウムの、水の浄化のための使用。
【請求項22】
請求項1から20のいずれか一項に記載の表面反応させた天然炭酸カルシウムおよび水から除去された不純物の複合物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−521298(P2010−521298A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554027(P2009−554027)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053339
【国際公開番号】WO2008/113842
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】