水中の微生物を殺減する装置及び水中の微生物を殺減する方法
【課題】 バラスト水の処理に適し、水中の微生物を効率的に殺減し、コンパクトかつ安全な装置を提供する。
【解決手段】
水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極が絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
【解決手段】
水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極が絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水または淡水中の細菌、プランクトン等の微生物を電気・物理的に殺滅する装置及び方法に関し、本発明は特に船舶のバラスト水タンクへの給排水用海水中の微生物を電気・物理的に殺滅する装置として有用である。
【背景技術】
【0002】
水中の細菌、プランクトン等の微生物を除去することは、水の利用技術の面で重要である。特に最近、タンカーやコンテナ船等の船舶の重心をコントロールするためにバラスト水中の微生物が着目されている。これらの船舶は積荷をおろすと、その代わりにバラストタンクに海水を注入して、船舶の重心をコントロールする。船舶に荷を積むときにはバラストタンクの海水を排出する。バラストタンクの海水を注入・排水することにより海水中の有害微生物は世界中を移動することになる。
【0003】
一方、2004年2月にIMO(国際海事機関)では「船舶のバラスト水および、沈殿物の規制および管理のための国際条約(バラスト水管理条約)を採択し、本年7月にはこの条約を実施するための具体的規定を定めるガイドラインがとりまとめられた。IMOのバラスト水排出基準(D−2基準)には、50マイクロメートル以上の生物(主として動物プランクトン)、10マイクロメートル以上50マイクロメートル未満の生物(主として植物プランクトン)や病毒性コレラを殺傷することなどが定められている。また、大腸菌についても、日本の海水浴場よりも厳格な基準が定められている。
【0004】
バラスト水中の微生物殺滅法として以下の方法が検討されている。
【0005】
殺滅方法としては、
(1) 物理的方法:流速による衝撃、ろ過、紫外線照射、電気的ショック、超音波
(2) 化学的方法(殺菌物質の添加):オゾンガス、次亜塩素酸、過酸化水素、過酢酸等
(3) 物理化学的方法:溶存酸素低減、電気分解法、
等があげられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで最大の問題点は、一般的に海外航路で使用される船舶は数万トン以上であり、それらの船舶のバラストタンクは数千トン以上となる。これらのバラストタンクに海水を数時間で注入または排水することになる。このことは短時間に大量の海水を処理することが必要であることを意味する。さらに、実用性を考慮すると、安全性、低価格、装置の小型化が要求される。
【0007】
これらの条件から前記の方法を検討すると、まず、安全性の面から、物理的方法が望まれるが、ろ過、紫外線照射、超音波等は装置の寿命及び装置の大型化が問題点となる。電気的ショックに関しては、一般に数KV/cmの電界強度が必要となるが、海水の電導度が高いので高電界を海水中に形成するためには大容量の高圧電源が必要となり、経済性の面で困難である。
【0008】
流速による衝撃を用いる方法は単純な流速ではなく、図1に示すように配管内に設けたスリット等の流速を変化させる部材が必要である。スリット部でキャビテーション等が発生してプランクトン等が損傷を受ける。図1において前方スリット板61、62により設けられたスリットを通過する際に水は流速を増し、さらに後方スリット板64に衝突し流速が変化する。流れの変化が大きい領域である65と66でプランクトン等が損傷を受ける。
【0009】
化学的方法では、オゾンガス、過酸化水素、過酢酸、次亜塩素酸等を海水に注入することになる。オゾンは残留性がないが、オゾンを発生させるには大規模な装置が必要となると同時に未反応のオゾンガスを処理する設備が必要になること等を考慮すると実用面で問題が残る。過酸化水素及び過酢酸に関しては残留性の問題が残る。次亜塩素酸に関しては有害物質の生成の可能性がある。従って、化学的方法では、添加する物質濃度を極力低減することが必要であるが、効果を考えると濃度をあげることが望ましい。これら両方の因子をバランスさせることが必要となり、実用ではそれらの制御システムが重要となる。
【0010】
一方、植物プランクトンが生育するためには酸素が必要である。動物プランクトンは植物プランクトンを餌として生育することが報告されている。従って、まず、植物プランクトンの繁殖を抑制することが重要となる。このためには、海水中の溶存酸素濃度を下げることにより植物プランクトンの生育が阻害される。溶存酸素濃度を下げるために、空気中の窒素ガスを濃縮して、海水中にバブリングする方法が試験され、実用化の目処がつけられている。しかし、この方法では、空気から窒素ガスを濃縮するプラントが大きくなり、実用的ではない。
【0011】
最後に電気化学的方法が残るが、通常、図2に示すように、配管の途中にアノ−ド電極53とカソード電極54を対とした無隔膜電解槽を設ける方法がある。51は原水入口部であり、52は電解水出口部である。海水を単純に電気分解すると、塩素ガスが生成した後、塩素ガスが海水に溶解して次亜塩素酸が生成される。また、海水中に溶解している、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンがカソ−ド電極に付着する欠点がある。無隔膜電解槽を用いた場合、殺滅効果は次亜塩素酸イオンが主体となり、化学的方法と同様に次亜塩素酸イオンの最適濃度が問題となる。しかし、電気化学的方法は電界強度または電流密度および電流を増加させることにより殺滅効率を向上させることにより装置をコンパクト化できる可能性がある。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、バラスト水の処理に適し、水中の微生物を効率的に殺減し、コンパクトかつ安全な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
(1) 水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極が絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
(2) 多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極との間に多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形状の1または2以上のセパレーターが絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする(1)に記載の装置。
(3) 多数の貫通孔を形成したセパレーターが導電性材料であることを特徴とする(2)に記載のの装置。
(4) 前記アノード電極に、多数の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサーをカソード電極側にアノード電極とスペーサーの貫通孔が整合するように密着させたことを特徴とする(1)に記載の装置。
(5) 前記アノード電極と前記カソード電極に、多数の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサーを電解槽内面にアノード電極、カソード電極とスペーサーの貫通孔が整合するように密着させたことを特徴とする(1)に記載の装置。
(6) セパレーターに形成した貫通孔の中心が、アノード電極またはカソード電極に形成した貫通孔の中心とずれていることを特徴とする(2)ないし(5)のいずれか1項に記載の装置。
(7) 水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極の間の空間、若しくは該アノード電極と該カソード電極間に設置した多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状の2以上のセパレーターの間の空間に貫通孔の直径以上の粒径を有する粒子状の金属または半金属を充填し、該アノード電極、該カソード電極及び該セパレーターは絶縁性のスペーサーを介して挟持されていることを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
(8) アノ−ド電解液出口、およびカソード電解液出口の中間に原水水供給口を設けた三方の口を設け、カソード電解液出口側に2枚以上の多数の貫通孔を形成したカソード電極を、アノ−ド電解液出口側に多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極を組み込み、通電する該カソード電極を交換することにより電解電流の低下を防止した(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の水中の微生物を殺減する装置。
(9) 微生物殺滅効果を長時間持続させるために、原水供給口とアノ−ド電解液出口、の中間に複数のカソード電解室を設け、カソード電解室内に交互に通電するためのカソード電極を設けたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
(10) (1)〜(9)のいずれか1項に記載の装置を用いて、配管を流れる水を電気分解して水中の微生物を殺滅することを特徴とする水中の微生物の殺滅方法。
(11) (2)に記載の装置において、アノ−ド電極、セパレーターおよびカソード電極の対を鏡像対象に二対配置した電解槽の、交互に各一対に通電して電解電流を一定に保持することを特徴とする水中の微生物を殺減する方法。
(12) (1)〜(9)のいずれか1項に記載の装置を用いて、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極と多数の貫通孔を形成したカソード電極の間に、周波数が300Hz以上の交番またはパルス状の電場を印加して水中の微生物を殺滅する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の装置は、コンパクトかつ安全であり、水中の微生物を効率的に殺減でキルので、バラスト水の処理に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の対象となる水とは、淡水または海水である。
【0016】
本発明により殺減される微生物とは、動物および植物プランクトンおよび細菌を言う。
【0017】
植物プランクトンの例として、珪藻類等のクリプト藻類がある。動物プランクトンとして戦中類、矢虫類、ミジンコ類等がある。細菌として、大腸菌等の通性嫌気性菌である大腸菌、サルモネラ菌、および好気性菌である緑膿菌等が挙げられる。
【0018】
本発明におけるアノード電極、カソード電極の部材は、通常の電解槽に用いられる白金等の貴金属をメッキまたはコーティングしたチタン材を挙げることができる。
【0019】
本発明の装置の実施形態を以下に説明する。
【0020】
本発明では装置のコンパクト化、それに伴うコスト低減を目指している。このためには電極表面の反応生成物の利用効率を向上するとともに物理的方法を併用することが望まれる。
【0021】
本発明は装置をコンパクトにするために、配管に直結可能なフランジを活用した電解槽を検討した。
【0022】
図3に基本電解槽の模式断面図を示す。電解槽はフランジ1、絶縁性のパッキン2、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3、中間フランジ7および多数の貫通孔を形成したカソード電極6から構成される。アノード電極3、カソード電極6は円盤状または多角形平板である。これらの電極は、水流に直交するように挟持されている。なお、アノード電極3は上流側でも下流側のいずれでもよい。
【0023】
多数の貫通孔を形成した電極の平面図を図4に示す。
【0024】
アノード電極とカソード電極を多数の貫通孔を形成した板状とし、配管の接続部に装填可能としたことにより、電解槽をコンパクトにすることができる。
【0025】
微生物殺滅の効率を向上するためには、物理的な破壊を促進するために流速の変化部を設けることが必要である。
【0026】
そこで、図5に示すように多数の貫通孔を形成したセパレーター5を多数のアノ−ド電極3とカソード電極6の間に設けることが好ましい。
【0027】
図5に示した電解槽は、フランジ1、絶縁性のパッキン2、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3、中間フランジ7、多数の貫通孔を形成したセパレーター5および多数の貫通孔を形成したカソード電極6から構成される。
【0028】
図6は、多数の貫通孔を形成したセパレーター5の平面図である。
【0029】
図5に示したように、アノ−ド電極とセパレーターの貫通孔の中心をずらして流れ方向を変化させることにより水流の衝撃力を高める方法を組み合わせることができ、より殺滅方法を向上させることが可能となる。
【0030】
なお、セパレーター5を導電性とすることにより、セパレーター5の貫通孔の内部でカソード極とアノ−ド極が誘起されてセパレーター内部で電解反応が起こり、電解による殺滅効率が向上する。セパレーター5を導電性とするには、銀、銅またはステンレス鋼等の金属若しくはカーボン等の半金属でセパレーターを形成するか、酸化物、セラミック、樹脂のセパレーターの表面に、白金、銀、または銅等の金属をメッキ等でコーティングしても良い。
【0031】
次に電極反応を考える。アノ−ド電極表面の主たる吸着物質はH2O分子であり、まず、H2O分子の酸化分解反応が起こる。酸化分解の結果、H+イオンとO2分子が生成されるが、O2ガスの前駆体O・ラジカルが生成される。電極表面にO2分子が存在すると、O2分子とO・ラジカルが反応してオゾンが生成される。として以下の反応式が挙げられる。O・ラジカルの寿命は非常に短かく電極表面近傍でのみ存在する。
【0032】
2H2O - 2e- → O2 + 4H+ (1)
2H2O − 4e- → 4H+ + O2 (2)
2H2O − 2e- → H2O2 + 2H+ (3)
H2O + O2 −2e- → O3 + 2H+ (4)
【0033】
さらに、アルカリ性の水を酸化分解すると、以下の反応式のように水酸化物イオンOH-が酸化されてOH・ラジカルが生じる。OH・ラジカルは酸化力が強く微生物殺滅効果が大きいことが知られている。O・ラジカルと同様に寿命が非常に短く、電極表面近傍でしか利用できない。
【0034】
OH- − 2e- → OH・ (5)
【0035】
海水を電解する場合にはアノ−ド電極表面には塩素イオンCl-が存在するので、部分的に以下の反応が起こる。
【0036】
2Cl- - 2e- → Cl2 (6)
【0037】
生成されたCl2は、以下の反応式により一部水に溶解して次亜塩素酸になる。
【0038】
Cl2 + H2O → HClO + HCl (7)
2Cl- - 2e- → Cl2 (8)
Cl2 + H2O → ClO- + HCl + H+ (9)
以上の反応のほかに電極表面の酸化性物質であるO3分子とO・ラジカルが塩素イオンCl-と直接反応して次亜塩素酸イオンClO-が生成される反応も存在する。
【0039】
カソード電極では以下の反応式が挙げられる。カソード電極表面には主としてH2O分子が吸着しているので、まず水の還元分解反応が起こる。
【0040】
2H2O + 2e- → H2 + 2OH- (10)
【0041】
この結果、水素分子の生成とOH-イオンが生成されることより電極周囲がアルカリ性となる。海水を電解すると、カソード電極にはCa+2カルシウムイオン、Mg+2マグネシウムイオン等の金属イオンが移行して、電極表面の強アルカリ性の為に水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムとなり電極表面に沈着する。さらに、シリカまたは炭酸イオンが共存すると、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等が形成されることになる。これらの珪酸カルシウム、炭酸カルシウムの沈着はカソード反応を阻害するので、沈着させない工夫が、実用上必要である。
【0042】
水中にはイオンのほかに、酸素、窒素ガスが溶存している。微生物の殺滅を考えると、酸素ガスの還元体が重要である。酸素ガスの還元反応例として以下が挙げられる。
【0043】
O2 + e- → O2- (11)
HO2- + H2O + e- → OH・ + OH- (12)
O2 + H+ + e- → HO2 (13)
O2 + 2H2 + 2e- → H2O2 + 2OH- (14)
O2 + H2O + 2e- → HO2- + OH- (15)
【0044】
以上の反応式から明らかなように活性酸素が生成される。これらの活性酸素は微生物の殺菌効果を示すことが報告されている。これらの活性酸素の中で、前述のようにOH・ラジカルが最も殺滅効果が高いが、その寿命がμ秒と短いことを考慮することが必要である。
【0045】
本発明では、電解生成物の残留性を低減するために電解による次亜塩素酸イオンの生成を抑制して、酸素系の酸化還元物質を利用して微生物を効率的に殺滅する方法の確立を目的としている。酸素系で効果が高い物質はO・ラジカルとOH・ラジカルである。前述したように、これらの酸化物質は電極近傍でしか利用できない。通常の図2に示した単純な二室型電解槽を用いた場合、電極表面近傍の流速はゼロに近づくのでこれらの酸化物質を効率的に利用することは困難である。
【0046】
O・ラジカルとOH・ラジカルを利用するためには、電極表面の流速を向上することが必要である。このためには、電極間距離を狭めることが望ましいが、狭めすぎると流量が低下する。電極表面の流速を向上して、さらに流量を上げるために、多数の貫通孔を設けた電極を採用した。
【0047】
さらに、電極表面の流速を上げるために、電極に形成した貫通孔の内面でのみ電解反応が起こるように、アノード電極と同じ貫通孔を形成したの絶縁性のスペーサーをアノ−ド電極に密着させてアノード電極の表面を覆うことにより貫通孔の内面でのみアノ−ド電解が起こるようにした。その例を図7に示す。
【0048】
図7に示したように、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3の表面に同じ穴の径および分布の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサー4を、アノード電極3とスペーサー4に形成した貫通孔が整合するようにカソード電極6側に密着させる。この構造によりアノ−ド電解は貫通孔の内面でのみ起こり、高活性の酸化物質を活用することが可能となる。さらに貫通孔の狭い空間で、オゾン、次亜塩素酸イオン等の他の酸化物質と微生物の反応効率も向上するメリットがある。
【0049】
図8に示したように、アノ−ド電極3に加えてカソード電極6表面にも絶縁性スペーサー4を貫通孔が整合するように密着させることによりカソード電極6表面の高酸化物質OH・ラジカルを利用することが可能となる。
【0050】
次に、電解法に加えて物理的方法を組み合わせると、微生物殺滅効率が向上する。その例を図9および10に示す。多数の貫通孔を形成したセパレータースペーサー5を多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3と多数の貫通孔を形成したカソード電極6の間に貫通孔の中心をずらして組み込むことにより、流れの方向を変化させプランクトン等を物理的に損傷することが可能となる。図11に示すようにセパレーター5は二個以上設けることにより物理的損傷効果を向上させることが可能となる。
【0051】
さらに、図5において極性を図示するようにセパレーター5が導電性を有する場合には、セパレーター5の内部でカソード極とアノ−ド極が誘起されてセパレーター内部で電解反応が起こり、電解による殺滅効率が向上する。このセパレーターの状態を複極化していると称する。この導電性のセパレーターの代わりに図12の15に示すように粒子状の金属または半金属を多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極の間、若しくは該アノード電極と該カソード電極間に設置した多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状の2以上のセパレーターの間に貫通孔の直径以上の粒径を有する粒子状の帰属または半金属を充填してもよい。金属としては、銀、銅、ステンレス鋼が、半金属として、カーボンが上げられる。粒子状の酸化物、セラミック、樹脂の表面に、白金、銀、または銅等の金属をメッキ等でコーティングしても良い。粒子の直径として、流量抵抗を考慮すると、500μm以上できれば1mm以上が望ましい。
【0052】
次に、海水のようにカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオンが溶解した水を電気分解すると、カソード電極に水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム等が付着して電極の導電性が低下して電解が困難になることが問題視される。そこで、アルカリ土類金属がカソード電極に付着させないか洗浄機能を電解槽に組み込むことが必要となる。付着防止機能として
(1)電極の極性を反転させる
(2)カソード電極のメンテナンスを容易化
(3)カソード電極の洗浄機能を組み込む
が考えられる。極性の反転を考慮して、図8、図10、に示すような多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3とカソード電極6が対称な構造の電解槽が都合が良い。
【0053】
さらに、図13に示すようにアノ−ド電極3、カソード電極6、スペーサー4の対を二対鏡像対象に配置した構造が好ましい。この構造では周期的にアノ−ド電極とカソード電極の極性を反転させる。単純に反転すると微生物殺滅効果が低減するので、アノ−ド電極3、カソード電極6、およびスペーサー4を対称に配置することが望ましい。
【0054】
次に、交換用のカソード電極を3枚組み込んだ電解槽の例を図14に示す。この電解槽では、アノ−ド電解液出口17、およびカソード電解液出口14の中間に原水供給口13を設けた三方の口を設け、原水供給口13から海水等を供給し、電解する。アノ−ド電解した液はアノ−ド電解液出口17から排出される。一方カソード電解された液はカソード電解出口14から排出される。カソード電解液の排出速度を制御するために制御弁10を設ける。まず、最初に多数の貫通孔を形成したカソード電極12を用いて電解を行い、カソード電極12にカルシウム等が付着して電解が困難になったとき、多数の貫通孔を形成したカソード電極11に切り替える。カソード電極11が使用不可能になった時点で多数の貫通孔を形成したカソード電極6に切り替える。なお、カルシウム等が付着してもカソード電解液を通過できるように、カソード電極12、11および6の各々の貫通孔の内径はカソード電極12、11、6の順番で小さくなるようにする。順次カソード電極を交換することにより、微生物殺滅効果を長時間持続させることができる。
【0055】
別の方法として図15に示すように分岐管または室を利用して、原水供給口13とアノ−ド電解液出口17の中間に複数のカソード電解室18を設けた電解槽構造がある。それぞれのカソード電解室には多数の貫通形成したカソ−ド電極6を組み込む。電解は多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3と多数の貫通孔を形成したカソ−ド電極6との間で進行するが、複数のカソ−ド電極は交互に使用しる。ひとつのカソ−ド電極がアルカリ土類金属イオンの付着により使用不可能になった時点で、残りのカソ−ド電極に切り返る。さらに、このタイプの電解槽を用いると、カソ−ド電極の交換が便利で、メンテナンスが容易となるメリットがある。この場合、カソード電極として、穴の有無は重要ではない。
【0056】
さらに、カソード電極への付着を防止するためには、アノ−ド電極とカソード電極の間に直流ではなく、パルス状の電場または交番電場を印加して電極反応を抑制して電場を印加する方法を用いる。一般的に電極反応の周波数応答の最大値は約1000Hzである。この値に近づくにつれて電場は印加されるが、電極反応は追随しなくなる。そこで、強電場と物理的衝撃の相乗効果により微生物を殺滅するが、多孔質カソード電極の表面へのアルカリ土類金属の沈着が防止できる。
【実施例1】
【0057】
本発明の効果を確認するために、まず、単純な多数の貫通孔を形成した電極を組み込んだ電解槽の性能を確認した。図16に示す試験装置を用いた。図において500リットルの原水タンク101に人口海水を入れ、さらに評価用の菌として大腸菌を用いた。給水ポンプ103を用いて図3に示した構造の電解槽104に大腸菌水溶液を供給した。電解した液はタンク102に貯蔵した。タンク102の水を採水して大腸菌の菌数を測定した。
【0058】
図3に示す構造の電解槽として、塩化ビニール(PVC)製50Aのフランジを活用した。アノ−ド電極とカソード電極としてとして図4に示す構造の電極を用いた。穴の径は4mmとし、電極の有効部の直径は61mmとし、有効面積部(穴のない表面を含む)には白金をメッキした。20Aの配管を用いた。
【0059】
流量を25l/min.に設定し、直流電源105を用いて電解槽に通電した。
【0060】
図17に電解処理した人口海水中の大腸菌数と電解電流の関係を示す。このように多数の貫通孔を形成した電極を用いて水中の微生物を低減することが可能であった。
【実施例2】
【0061】
次に、動物性プランクトンの損傷効果を確認した。実施例1と同じ試験装置を使用した。電解槽として、図5に示すようにアノ−ド電極とカソード電極の間に図6に示すセパレーターを設置した。セパレーターの穴は4mmとして穴の中心をアノ−ド電極の中心から4mmずらした。この結果、図1に示すようにアノ−ド電極を通過したアノ−ド電解液はセパレーターに衝突し、プランクトンに衝撃を与える。損傷を受けたプランクトンは光学顕微鏡を用いてカウントすることにより損傷比率を算出した。なの、この実施例では通電しなかった。試験結果を図18に示す。図18において流速は電解槽内平均の流速である。電極の穴と電極の有効面積の比は約5倍である。図から明らかなように流速が増加するとプランクトンの損傷率も増加する。
【実施例3】
【0062】
実施例2と同じ試験装置および条件でアノ−ド電極とカソード電極の間に直流を通電した。通電量とプランクトンの損傷率の関係を図19に示す。なお、流速は3m/secとした。図から明らかなように通電することにより損傷率が向上することがわかる。
【実施例4】
【0063】
図5に示すようにアノ−ド電極とカソード電極の間に偏芯の穴を有するスペーサーを組み合わせたときの殺滅効果を確認した。試験装置として実施例1と同じ装置を用いた。スペーサーとして厚さ1mmの白金メッキチタン板を用いた。流速を4m/secとして、大腸菌数の減少率と電流の関係を図20に示す。
【0064】
この図から通電することによりプランクトンの物理的殺滅効果と電場の相乗効果が明らかとなった。
【実施例5】
【0065】
実施例4と同様な試験装置および条件でプランクトン損傷率を確認した。図9に示す電解装置を用いてプランクトンの物理的損傷率に対する電解の影響を再確認した。流速は3m/secとした。図21に損傷率に対する電流値の影響を示す。図から明らかなように物理的損傷と電気的損傷の相乗効果がわかる。
【実施例6】
【0066】
図9に示すようにアノ−ド電極に同芯の穴を有するスペーサーを組み合わせたときの殺滅効果を確認した。試験装置として実施例1と同じ装置を用いた。スペーサーとして厚さ10mmのPVC板を用い、アノ−ド電極と同様に穴をあけた。流速を4m/secとして、大腸菌数の減少率と電流の関係を図22に示す。この図から明らかなようにスペーサーの穴の中でアノ−ド電解により生成した高酸化物質と微生物の混合度が高まり、微生物殺滅効果が向上したと考えられる。
【実施例7】
【0067】
図11に示す電解槽を用いて実施例6と同様な試験条件で微生物殺滅効果を確認した。
【0068】
図23に試験結果を示すが、図22と比較してスペーサーを二枚に増やすことで殺滅効果が向上することがわかる。
【実施例8】
【0069】
図9に示す電解槽を用いて、実施例2と同様な試験条件下で多孔質アノ−ド電極と多孔質カソード電極の間に100Vで1000KHzの周波数のパルス電場を印加した。図24に示す結果が得られた。実施例2の図18に示す流速のみよる損傷に比較して、パルス電場を印加した方が損傷の程度は大きくなった。このときカソ−ド電極表面の付着量は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】水の衝撃モデルの説明図
【図2】二室型電解槽の説明図。
【図3】本発明の電解槽の模式断面図。
【図4】多数の貫通孔を形成した電極の平面図。
【図5】本発明の電解槽の模式断面図。
【図6】スペーサーの平面図。
【図7】本発明の電解槽の模式断面図。
【図8】本発明の電解槽の模式断面図。
【図9】本発明の電解槽の模式断面図。
【図10】本発明の電解槽の模式断面図。
【図11】本発明の電解槽の模式断面図。
【図12】本発明の電解槽の模式断面図。
【図13】本発明の電解槽の模式断面図。
【図14】本発明の電解槽の模式断面図。
【図15】本発明の電解槽の模式断面図。
【図16】実施例で使用した試験装置の説明図。
【図17】図3の電解槽を用いた大腸菌菌数と電解電流の関係を示すグラフ。
【図18】図5の電解槽を用いたプランクトン損傷率と流量の関係を示すグラフ。
【図19】図5の電解槽を用いたプランクトン損傷率への電解電流の関係を示すグラフ。
【図20】図5の電解槽を用いた大腸菌数への電解の効果を示すグラフ。
【図21】図9の電解槽を用いたときのプランクトン損傷への電解の効果を示すグラフ。
【図22】図9の電解槽を用いたときの大腸菌数への電解の効果を示すグラフ。
【図23】図11の電解槽を用いたときの大腸菌数への電解の効果を示すグラフ。
【図24】図9の電解槽を用いパルス電場を印加したときの大腸菌数へのパルス電場の効果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0071】
1:出入り口フランジ
2:パッキン
3:多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極
4:多数の貫通孔を形成した絶縁性スペーサー
5:多数の貫通項を形成したセパレーター
6:多数の貫通孔を形成したカソード電極
7:中間フランジ
9:カソード電解液出口
10:流量制御弁
11:多数の開通孔を形成したカソード電極
12:多数の開通孔を形成したカソード電極
13:原水入り口
15:複極粒子
13:原水入り口
14:カソード電解液出口
16:カソ−ド電解室用フランジ
17:アノ−ド電解液出口
18:カソード電解用室
51:原水入り口部
52:電解液出口
53:アノ−ド電極
54:カソード電極
61:前方スリット
62:前方スリット
64:後方スリット
65:水流の変化部
66:水流の変化部
101:原水タンク
102:処理水タンク
104:電解槽
103:供給ポンプ
105:電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水または淡水中の細菌、プランクトン等の微生物を電気・物理的に殺滅する装置及び方法に関し、本発明は特に船舶のバラスト水タンクへの給排水用海水中の微生物を電気・物理的に殺滅する装置として有用である。
【背景技術】
【0002】
水中の細菌、プランクトン等の微生物を除去することは、水の利用技術の面で重要である。特に最近、タンカーやコンテナ船等の船舶の重心をコントロールするためにバラスト水中の微生物が着目されている。これらの船舶は積荷をおろすと、その代わりにバラストタンクに海水を注入して、船舶の重心をコントロールする。船舶に荷を積むときにはバラストタンクの海水を排出する。バラストタンクの海水を注入・排水することにより海水中の有害微生物は世界中を移動することになる。
【0003】
一方、2004年2月にIMO(国際海事機関)では「船舶のバラスト水および、沈殿物の規制および管理のための国際条約(バラスト水管理条約)を採択し、本年7月にはこの条約を実施するための具体的規定を定めるガイドラインがとりまとめられた。IMOのバラスト水排出基準(D−2基準)には、50マイクロメートル以上の生物(主として動物プランクトン)、10マイクロメートル以上50マイクロメートル未満の生物(主として植物プランクトン)や病毒性コレラを殺傷することなどが定められている。また、大腸菌についても、日本の海水浴場よりも厳格な基準が定められている。
【0004】
バラスト水中の微生物殺滅法として以下の方法が検討されている。
【0005】
殺滅方法としては、
(1) 物理的方法:流速による衝撃、ろ過、紫外線照射、電気的ショック、超音波
(2) 化学的方法(殺菌物質の添加):オゾンガス、次亜塩素酸、過酸化水素、過酢酸等
(3) 物理化学的方法:溶存酸素低減、電気分解法、
等があげられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで最大の問題点は、一般的に海外航路で使用される船舶は数万トン以上であり、それらの船舶のバラストタンクは数千トン以上となる。これらのバラストタンクに海水を数時間で注入または排水することになる。このことは短時間に大量の海水を処理することが必要であることを意味する。さらに、実用性を考慮すると、安全性、低価格、装置の小型化が要求される。
【0007】
これらの条件から前記の方法を検討すると、まず、安全性の面から、物理的方法が望まれるが、ろ過、紫外線照射、超音波等は装置の寿命及び装置の大型化が問題点となる。電気的ショックに関しては、一般に数KV/cmの電界強度が必要となるが、海水の電導度が高いので高電界を海水中に形成するためには大容量の高圧電源が必要となり、経済性の面で困難である。
【0008】
流速による衝撃を用いる方法は単純な流速ではなく、図1に示すように配管内に設けたスリット等の流速を変化させる部材が必要である。スリット部でキャビテーション等が発生してプランクトン等が損傷を受ける。図1において前方スリット板61、62により設けられたスリットを通過する際に水は流速を増し、さらに後方スリット板64に衝突し流速が変化する。流れの変化が大きい領域である65と66でプランクトン等が損傷を受ける。
【0009】
化学的方法では、オゾンガス、過酸化水素、過酢酸、次亜塩素酸等を海水に注入することになる。オゾンは残留性がないが、オゾンを発生させるには大規模な装置が必要となると同時に未反応のオゾンガスを処理する設備が必要になること等を考慮すると実用面で問題が残る。過酸化水素及び過酢酸に関しては残留性の問題が残る。次亜塩素酸に関しては有害物質の生成の可能性がある。従って、化学的方法では、添加する物質濃度を極力低減することが必要であるが、効果を考えると濃度をあげることが望ましい。これら両方の因子をバランスさせることが必要となり、実用ではそれらの制御システムが重要となる。
【0010】
一方、植物プランクトンが生育するためには酸素が必要である。動物プランクトンは植物プランクトンを餌として生育することが報告されている。従って、まず、植物プランクトンの繁殖を抑制することが重要となる。このためには、海水中の溶存酸素濃度を下げることにより植物プランクトンの生育が阻害される。溶存酸素濃度を下げるために、空気中の窒素ガスを濃縮して、海水中にバブリングする方法が試験され、実用化の目処がつけられている。しかし、この方法では、空気から窒素ガスを濃縮するプラントが大きくなり、実用的ではない。
【0011】
最後に電気化学的方法が残るが、通常、図2に示すように、配管の途中にアノ−ド電極53とカソード電極54を対とした無隔膜電解槽を設ける方法がある。51は原水入口部であり、52は電解水出口部である。海水を単純に電気分解すると、塩素ガスが生成した後、塩素ガスが海水に溶解して次亜塩素酸が生成される。また、海水中に溶解している、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンがカソ−ド電極に付着する欠点がある。無隔膜電解槽を用いた場合、殺滅効果は次亜塩素酸イオンが主体となり、化学的方法と同様に次亜塩素酸イオンの最適濃度が問題となる。しかし、電気化学的方法は電界強度または電流密度および電流を増加させることにより殺滅効率を向上させることにより装置をコンパクト化できる可能性がある。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、バラスト水の処理に適し、水中の微生物を効率的に殺減し、コンパクトかつ安全な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
(1) 水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極が絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
(2) 多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極との間に多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形状の1または2以上のセパレーターが絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする(1)に記載の装置。
(3) 多数の貫通孔を形成したセパレーターが導電性材料であることを特徴とする(2)に記載のの装置。
(4) 前記アノード電極に、多数の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサーをカソード電極側にアノード電極とスペーサーの貫通孔が整合するように密着させたことを特徴とする(1)に記載の装置。
(5) 前記アノード電極と前記カソード電極に、多数の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサーを電解槽内面にアノード電極、カソード電極とスペーサーの貫通孔が整合するように密着させたことを特徴とする(1)に記載の装置。
(6) セパレーターに形成した貫通孔の中心が、アノード電極またはカソード電極に形成した貫通孔の中心とずれていることを特徴とする(2)ないし(5)のいずれか1項に記載の装置。
(7) 水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極の間の空間、若しくは該アノード電極と該カソード電極間に設置した多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状の2以上のセパレーターの間の空間に貫通孔の直径以上の粒径を有する粒子状の金属または半金属を充填し、該アノード電極、該カソード電極及び該セパレーターは絶縁性のスペーサーを介して挟持されていることを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
(8) アノ−ド電解液出口、およびカソード電解液出口の中間に原水水供給口を設けた三方の口を設け、カソード電解液出口側に2枚以上の多数の貫通孔を形成したカソード電極を、アノ−ド電解液出口側に多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極を組み込み、通電する該カソード電極を交換することにより電解電流の低下を防止した(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の水中の微生物を殺減する装置。
(9) 微生物殺滅効果を長時間持続させるために、原水供給口とアノ−ド電解液出口、の中間に複数のカソード電解室を設け、カソード電解室内に交互に通電するためのカソード電極を設けたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
(10) (1)〜(9)のいずれか1項に記載の装置を用いて、配管を流れる水を電気分解して水中の微生物を殺滅することを特徴とする水中の微生物の殺滅方法。
(11) (2)に記載の装置において、アノ−ド電極、セパレーターおよびカソード電極の対を鏡像対象に二対配置した電解槽の、交互に各一対に通電して電解電流を一定に保持することを特徴とする水中の微生物を殺減する方法。
(12) (1)〜(9)のいずれか1項に記載の装置を用いて、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極と多数の貫通孔を形成したカソード電極の間に、周波数が300Hz以上の交番またはパルス状の電場を印加して水中の微生物を殺滅する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の装置は、コンパクトかつ安全であり、水中の微生物を効率的に殺減でキルので、バラスト水の処理に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の対象となる水とは、淡水または海水である。
【0016】
本発明により殺減される微生物とは、動物および植物プランクトンおよび細菌を言う。
【0017】
植物プランクトンの例として、珪藻類等のクリプト藻類がある。動物プランクトンとして戦中類、矢虫類、ミジンコ類等がある。細菌として、大腸菌等の通性嫌気性菌である大腸菌、サルモネラ菌、および好気性菌である緑膿菌等が挙げられる。
【0018】
本発明におけるアノード電極、カソード電極の部材は、通常の電解槽に用いられる白金等の貴金属をメッキまたはコーティングしたチタン材を挙げることができる。
【0019】
本発明の装置の実施形態を以下に説明する。
【0020】
本発明では装置のコンパクト化、それに伴うコスト低減を目指している。このためには電極表面の反応生成物の利用効率を向上するとともに物理的方法を併用することが望まれる。
【0021】
本発明は装置をコンパクトにするために、配管に直結可能なフランジを活用した電解槽を検討した。
【0022】
図3に基本電解槽の模式断面図を示す。電解槽はフランジ1、絶縁性のパッキン2、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3、中間フランジ7および多数の貫通孔を形成したカソード電極6から構成される。アノード電極3、カソード電極6は円盤状または多角形平板である。これらの電極は、水流に直交するように挟持されている。なお、アノード電極3は上流側でも下流側のいずれでもよい。
【0023】
多数の貫通孔を形成した電極の平面図を図4に示す。
【0024】
アノード電極とカソード電極を多数の貫通孔を形成した板状とし、配管の接続部に装填可能としたことにより、電解槽をコンパクトにすることができる。
【0025】
微生物殺滅の効率を向上するためには、物理的な破壊を促進するために流速の変化部を設けることが必要である。
【0026】
そこで、図5に示すように多数の貫通孔を形成したセパレーター5を多数のアノ−ド電極3とカソード電極6の間に設けることが好ましい。
【0027】
図5に示した電解槽は、フランジ1、絶縁性のパッキン2、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3、中間フランジ7、多数の貫通孔を形成したセパレーター5および多数の貫通孔を形成したカソード電極6から構成される。
【0028】
図6は、多数の貫通孔を形成したセパレーター5の平面図である。
【0029】
図5に示したように、アノ−ド電極とセパレーターの貫通孔の中心をずらして流れ方向を変化させることにより水流の衝撃力を高める方法を組み合わせることができ、より殺滅方法を向上させることが可能となる。
【0030】
なお、セパレーター5を導電性とすることにより、セパレーター5の貫通孔の内部でカソード極とアノ−ド極が誘起されてセパレーター内部で電解反応が起こり、電解による殺滅効率が向上する。セパレーター5を導電性とするには、銀、銅またはステンレス鋼等の金属若しくはカーボン等の半金属でセパレーターを形成するか、酸化物、セラミック、樹脂のセパレーターの表面に、白金、銀、または銅等の金属をメッキ等でコーティングしても良い。
【0031】
次に電極反応を考える。アノ−ド電極表面の主たる吸着物質はH2O分子であり、まず、H2O分子の酸化分解反応が起こる。酸化分解の結果、H+イオンとO2分子が生成されるが、O2ガスの前駆体O・ラジカルが生成される。電極表面にO2分子が存在すると、O2分子とO・ラジカルが反応してオゾンが生成される。として以下の反応式が挙げられる。O・ラジカルの寿命は非常に短かく電極表面近傍でのみ存在する。
【0032】
2H2O - 2e- → O2 + 4H+ (1)
2H2O − 4e- → 4H+ + O2 (2)
2H2O − 2e- → H2O2 + 2H+ (3)
H2O + O2 −2e- → O3 + 2H+ (4)
【0033】
さらに、アルカリ性の水を酸化分解すると、以下の反応式のように水酸化物イオンOH-が酸化されてOH・ラジカルが生じる。OH・ラジカルは酸化力が強く微生物殺滅効果が大きいことが知られている。O・ラジカルと同様に寿命が非常に短く、電極表面近傍でしか利用できない。
【0034】
OH- − 2e- → OH・ (5)
【0035】
海水を電解する場合にはアノ−ド電極表面には塩素イオンCl-が存在するので、部分的に以下の反応が起こる。
【0036】
2Cl- - 2e- → Cl2 (6)
【0037】
生成されたCl2は、以下の反応式により一部水に溶解して次亜塩素酸になる。
【0038】
Cl2 + H2O → HClO + HCl (7)
2Cl- - 2e- → Cl2 (8)
Cl2 + H2O → ClO- + HCl + H+ (9)
以上の反応のほかに電極表面の酸化性物質であるO3分子とO・ラジカルが塩素イオンCl-と直接反応して次亜塩素酸イオンClO-が生成される反応も存在する。
【0039】
カソード電極では以下の反応式が挙げられる。カソード電極表面には主としてH2O分子が吸着しているので、まず水の還元分解反応が起こる。
【0040】
2H2O + 2e- → H2 + 2OH- (10)
【0041】
この結果、水素分子の生成とOH-イオンが生成されることより電極周囲がアルカリ性となる。海水を電解すると、カソード電極にはCa+2カルシウムイオン、Mg+2マグネシウムイオン等の金属イオンが移行して、電極表面の強アルカリ性の為に水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムとなり電極表面に沈着する。さらに、シリカまたは炭酸イオンが共存すると、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等が形成されることになる。これらの珪酸カルシウム、炭酸カルシウムの沈着はカソード反応を阻害するので、沈着させない工夫が、実用上必要である。
【0042】
水中にはイオンのほかに、酸素、窒素ガスが溶存している。微生物の殺滅を考えると、酸素ガスの還元体が重要である。酸素ガスの還元反応例として以下が挙げられる。
【0043】
O2 + e- → O2- (11)
HO2- + H2O + e- → OH・ + OH- (12)
O2 + H+ + e- → HO2 (13)
O2 + 2H2 + 2e- → H2O2 + 2OH- (14)
O2 + H2O + 2e- → HO2- + OH- (15)
【0044】
以上の反応式から明らかなように活性酸素が生成される。これらの活性酸素は微生物の殺菌効果を示すことが報告されている。これらの活性酸素の中で、前述のようにOH・ラジカルが最も殺滅効果が高いが、その寿命がμ秒と短いことを考慮することが必要である。
【0045】
本発明では、電解生成物の残留性を低減するために電解による次亜塩素酸イオンの生成を抑制して、酸素系の酸化還元物質を利用して微生物を効率的に殺滅する方法の確立を目的としている。酸素系で効果が高い物質はO・ラジカルとOH・ラジカルである。前述したように、これらの酸化物質は電極近傍でしか利用できない。通常の図2に示した単純な二室型電解槽を用いた場合、電極表面近傍の流速はゼロに近づくのでこれらの酸化物質を効率的に利用することは困難である。
【0046】
O・ラジカルとOH・ラジカルを利用するためには、電極表面の流速を向上することが必要である。このためには、電極間距離を狭めることが望ましいが、狭めすぎると流量が低下する。電極表面の流速を向上して、さらに流量を上げるために、多数の貫通孔を設けた電極を採用した。
【0047】
さらに、電極表面の流速を上げるために、電極に形成した貫通孔の内面でのみ電解反応が起こるように、アノード電極と同じ貫通孔を形成したの絶縁性のスペーサーをアノ−ド電極に密着させてアノード電極の表面を覆うことにより貫通孔の内面でのみアノ−ド電解が起こるようにした。その例を図7に示す。
【0048】
図7に示したように、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3の表面に同じ穴の径および分布の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサー4を、アノード電極3とスペーサー4に形成した貫通孔が整合するようにカソード電極6側に密着させる。この構造によりアノ−ド電解は貫通孔の内面でのみ起こり、高活性の酸化物質を活用することが可能となる。さらに貫通孔の狭い空間で、オゾン、次亜塩素酸イオン等の他の酸化物質と微生物の反応効率も向上するメリットがある。
【0049】
図8に示したように、アノ−ド電極3に加えてカソード電極6表面にも絶縁性スペーサー4を貫通孔が整合するように密着させることによりカソード電極6表面の高酸化物質OH・ラジカルを利用することが可能となる。
【0050】
次に、電解法に加えて物理的方法を組み合わせると、微生物殺滅効率が向上する。その例を図9および10に示す。多数の貫通孔を形成したセパレータースペーサー5を多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3と多数の貫通孔を形成したカソード電極6の間に貫通孔の中心をずらして組み込むことにより、流れの方向を変化させプランクトン等を物理的に損傷することが可能となる。図11に示すようにセパレーター5は二個以上設けることにより物理的損傷効果を向上させることが可能となる。
【0051】
さらに、図5において極性を図示するようにセパレーター5が導電性を有する場合には、セパレーター5の内部でカソード極とアノ−ド極が誘起されてセパレーター内部で電解反応が起こり、電解による殺滅効率が向上する。このセパレーターの状態を複極化していると称する。この導電性のセパレーターの代わりに図12の15に示すように粒子状の金属または半金属を多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極の間、若しくは該アノード電極と該カソード電極間に設置した多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状の2以上のセパレーターの間に貫通孔の直径以上の粒径を有する粒子状の帰属または半金属を充填してもよい。金属としては、銀、銅、ステンレス鋼が、半金属として、カーボンが上げられる。粒子状の酸化物、セラミック、樹脂の表面に、白金、銀、または銅等の金属をメッキ等でコーティングしても良い。粒子の直径として、流量抵抗を考慮すると、500μm以上できれば1mm以上が望ましい。
【0052】
次に、海水のようにカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオンが溶解した水を電気分解すると、カソード電極に水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム等が付着して電極の導電性が低下して電解が困難になることが問題視される。そこで、アルカリ土類金属がカソード電極に付着させないか洗浄機能を電解槽に組み込むことが必要となる。付着防止機能として
(1)電極の極性を反転させる
(2)カソード電極のメンテナンスを容易化
(3)カソード電極の洗浄機能を組み込む
が考えられる。極性の反転を考慮して、図8、図10、に示すような多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3とカソード電極6が対称な構造の電解槽が都合が良い。
【0053】
さらに、図13に示すようにアノ−ド電極3、カソード電極6、スペーサー4の対を二対鏡像対象に配置した構造が好ましい。この構造では周期的にアノ−ド電極とカソード電極の極性を反転させる。単純に反転すると微生物殺滅効果が低減するので、アノ−ド電極3、カソード電極6、およびスペーサー4を対称に配置することが望ましい。
【0054】
次に、交換用のカソード電極を3枚組み込んだ電解槽の例を図14に示す。この電解槽では、アノ−ド電解液出口17、およびカソード電解液出口14の中間に原水供給口13を設けた三方の口を設け、原水供給口13から海水等を供給し、電解する。アノ−ド電解した液はアノ−ド電解液出口17から排出される。一方カソード電解された液はカソード電解出口14から排出される。カソード電解液の排出速度を制御するために制御弁10を設ける。まず、最初に多数の貫通孔を形成したカソード電極12を用いて電解を行い、カソード電極12にカルシウム等が付着して電解が困難になったとき、多数の貫通孔を形成したカソード電極11に切り替える。カソード電極11が使用不可能になった時点で多数の貫通孔を形成したカソード電極6に切り替える。なお、カルシウム等が付着してもカソード電解液を通過できるように、カソード電極12、11および6の各々の貫通孔の内径はカソード電極12、11、6の順番で小さくなるようにする。順次カソード電極を交換することにより、微生物殺滅効果を長時間持続させることができる。
【0055】
別の方法として図15に示すように分岐管または室を利用して、原水供給口13とアノ−ド電解液出口17の中間に複数のカソード電解室18を設けた電解槽構造がある。それぞれのカソード電解室には多数の貫通形成したカソ−ド電極6を組み込む。電解は多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極3と多数の貫通孔を形成したカソ−ド電極6との間で進行するが、複数のカソ−ド電極は交互に使用しる。ひとつのカソ−ド電極がアルカリ土類金属イオンの付着により使用不可能になった時点で、残りのカソ−ド電極に切り返る。さらに、このタイプの電解槽を用いると、カソ−ド電極の交換が便利で、メンテナンスが容易となるメリットがある。この場合、カソード電極として、穴の有無は重要ではない。
【0056】
さらに、カソード電極への付着を防止するためには、アノ−ド電極とカソード電極の間に直流ではなく、パルス状の電場または交番電場を印加して電極反応を抑制して電場を印加する方法を用いる。一般的に電極反応の周波数応答の最大値は約1000Hzである。この値に近づくにつれて電場は印加されるが、電極反応は追随しなくなる。そこで、強電場と物理的衝撃の相乗効果により微生物を殺滅するが、多孔質カソード電極の表面へのアルカリ土類金属の沈着が防止できる。
【実施例1】
【0057】
本発明の効果を確認するために、まず、単純な多数の貫通孔を形成した電極を組み込んだ電解槽の性能を確認した。図16に示す試験装置を用いた。図において500リットルの原水タンク101に人口海水を入れ、さらに評価用の菌として大腸菌を用いた。給水ポンプ103を用いて図3に示した構造の電解槽104に大腸菌水溶液を供給した。電解した液はタンク102に貯蔵した。タンク102の水を採水して大腸菌の菌数を測定した。
【0058】
図3に示す構造の電解槽として、塩化ビニール(PVC)製50Aのフランジを活用した。アノ−ド電極とカソード電極としてとして図4に示す構造の電極を用いた。穴の径は4mmとし、電極の有効部の直径は61mmとし、有効面積部(穴のない表面を含む)には白金をメッキした。20Aの配管を用いた。
【0059】
流量を25l/min.に設定し、直流電源105を用いて電解槽に通電した。
【0060】
図17に電解処理した人口海水中の大腸菌数と電解電流の関係を示す。このように多数の貫通孔を形成した電極を用いて水中の微生物を低減することが可能であった。
【実施例2】
【0061】
次に、動物性プランクトンの損傷効果を確認した。実施例1と同じ試験装置を使用した。電解槽として、図5に示すようにアノ−ド電極とカソード電極の間に図6に示すセパレーターを設置した。セパレーターの穴は4mmとして穴の中心をアノ−ド電極の中心から4mmずらした。この結果、図1に示すようにアノ−ド電極を通過したアノ−ド電解液はセパレーターに衝突し、プランクトンに衝撃を与える。損傷を受けたプランクトンは光学顕微鏡を用いてカウントすることにより損傷比率を算出した。なの、この実施例では通電しなかった。試験結果を図18に示す。図18において流速は電解槽内平均の流速である。電極の穴と電極の有効面積の比は約5倍である。図から明らかなように流速が増加するとプランクトンの損傷率も増加する。
【実施例3】
【0062】
実施例2と同じ試験装置および条件でアノ−ド電極とカソード電極の間に直流を通電した。通電量とプランクトンの損傷率の関係を図19に示す。なお、流速は3m/secとした。図から明らかなように通電することにより損傷率が向上することがわかる。
【実施例4】
【0063】
図5に示すようにアノ−ド電極とカソード電極の間に偏芯の穴を有するスペーサーを組み合わせたときの殺滅効果を確認した。試験装置として実施例1と同じ装置を用いた。スペーサーとして厚さ1mmの白金メッキチタン板を用いた。流速を4m/secとして、大腸菌数の減少率と電流の関係を図20に示す。
【0064】
この図から通電することによりプランクトンの物理的殺滅効果と電場の相乗効果が明らかとなった。
【実施例5】
【0065】
実施例4と同様な試験装置および条件でプランクトン損傷率を確認した。図9に示す電解装置を用いてプランクトンの物理的損傷率に対する電解の影響を再確認した。流速は3m/secとした。図21に損傷率に対する電流値の影響を示す。図から明らかなように物理的損傷と電気的損傷の相乗効果がわかる。
【実施例6】
【0066】
図9に示すようにアノ−ド電極に同芯の穴を有するスペーサーを組み合わせたときの殺滅効果を確認した。試験装置として実施例1と同じ装置を用いた。スペーサーとして厚さ10mmのPVC板を用い、アノ−ド電極と同様に穴をあけた。流速を4m/secとして、大腸菌数の減少率と電流の関係を図22に示す。この図から明らかなようにスペーサーの穴の中でアノ−ド電解により生成した高酸化物質と微生物の混合度が高まり、微生物殺滅効果が向上したと考えられる。
【実施例7】
【0067】
図11に示す電解槽を用いて実施例6と同様な試験条件で微生物殺滅効果を確認した。
【0068】
図23に試験結果を示すが、図22と比較してスペーサーを二枚に増やすことで殺滅効果が向上することがわかる。
【実施例8】
【0069】
図9に示す電解槽を用いて、実施例2と同様な試験条件下で多孔質アノ−ド電極と多孔質カソード電極の間に100Vで1000KHzの周波数のパルス電場を印加した。図24に示す結果が得られた。実施例2の図18に示す流速のみよる損傷に比較して、パルス電場を印加した方が損傷の程度は大きくなった。このときカソ−ド電極表面の付着量は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】水の衝撃モデルの説明図
【図2】二室型電解槽の説明図。
【図3】本発明の電解槽の模式断面図。
【図4】多数の貫通孔を形成した電極の平面図。
【図5】本発明の電解槽の模式断面図。
【図6】スペーサーの平面図。
【図7】本発明の電解槽の模式断面図。
【図8】本発明の電解槽の模式断面図。
【図9】本発明の電解槽の模式断面図。
【図10】本発明の電解槽の模式断面図。
【図11】本発明の電解槽の模式断面図。
【図12】本発明の電解槽の模式断面図。
【図13】本発明の電解槽の模式断面図。
【図14】本発明の電解槽の模式断面図。
【図15】本発明の電解槽の模式断面図。
【図16】実施例で使用した試験装置の説明図。
【図17】図3の電解槽を用いた大腸菌菌数と電解電流の関係を示すグラフ。
【図18】図5の電解槽を用いたプランクトン損傷率と流量の関係を示すグラフ。
【図19】図5の電解槽を用いたプランクトン損傷率への電解電流の関係を示すグラフ。
【図20】図5の電解槽を用いた大腸菌数への電解の効果を示すグラフ。
【図21】図9の電解槽を用いたときのプランクトン損傷への電解の効果を示すグラフ。
【図22】図9の電解槽を用いたときの大腸菌数への電解の効果を示すグラフ。
【図23】図11の電解槽を用いたときの大腸菌数への電解の効果を示すグラフ。
【図24】図9の電解槽を用いパルス電場を印加したときの大腸菌数へのパルス電場の効果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0071】
1:出入り口フランジ
2:パッキン
3:多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極
4:多数の貫通孔を形成した絶縁性スペーサー
5:多数の貫通項を形成したセパレーター
6:多数の貫通孔を形成したカソード電極
7:中間フランジ
9:カソード電解液出口
10:流量制御弁
11:多数の開通孔を形成したカソード電極
12:多数の開通孔を形成したカソード電極
13:原水入り口
15:複極粒子
13:原水入り口
14:カソード電解液出口
16:カソ−ド電解室用フランジ
17:アノ−ド電解液出口
18:カソード電解用室
51:原水入り口部
52:電解液出口
53:アノ−ド電極
54:カソード電極
61:前方スリット
62:前方スリット
64:後方スリット
65:水流の変化部
66:水流の変化部
101:原水タンク
102:処理水タンク
104:電解槽
103:供給ポンプ
105:電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極が絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
【請求項2】
多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極との間に多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形状の1または2以上のセパレーターが絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
多数の貫通孔を形成したセパレーターが導電性材料であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アノード電極に、多数の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサーをカソード電極側にアノード電極とスペーサーの貫通孔が整合するように密着させたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記アノード電極と前記カソード電極に、多数の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサーを電解槽内面にアノード電極、カソード電極とスペーサーの貫通孔が整合するように密着させたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
セパレーターに形成した貫通孔の中心が、アノード電極またはカソード電極に形成した貫通孔の中心とずれていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極の間の空間、若しくは該アノード電極と該カソード電極間に設置した多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状の2以上のセパレーターの間の空間に貫通孔の直径以上の粒径を有する粒子状の金属または半金属を充填し、該アノード電極、該カソード電極及び該セパレーターは絶縁性のスペーサーを介して挟持されていることを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
【請求項8】
アノ−ド電解液出口、およびカソード電解液出口の中間に原水水供給口を設けた三方の口を設け、カソード電解液出口側に2枚以上の多数の貫通孔を形成したカソード電極を、アノ−ド電解液出口側に多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極を組み込み、通電する該カソード電極を交換することにより電解電流の低下を防止した請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の水中の微生物を殺減する装置。
【請求項9】
微生物殺滅効果を長時間持続させるために、原水供給口とアノ−ド電解液出口、の中間に複数のカソード電解室を設け、カソード電解室内に交互に通電するためのカソード電極を設けたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の装置を用いて、配管を流れる水を電気分解して水中の微生物を殺滅することを特徴とする水中の微生物の殺滅方法。
【請求項11】
請求項2に記載の装置において、アノ−ド電極、セパレーターおよびカソード電極の対を鏡像対象に二対配置した電解槽の、交互に各一対に通電して電解電流を一定に保持することを特徴とする水中の微生物を殺減する方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の装置を用いて、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極と多数の貫通孔を形成したカソード電極の間に、周波数が300Hz以上の交番またはパルス状の電場を印加して水中の微生物を殺滅する方法。
【請求項1】
水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極が絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
【請求項2】
多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極との間に多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形状の1または2以上のセパレーターが絶縁性のパッキンを介して水流に直交するように挟持されたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
多数の貫通孔を形成したセパレーターが導電性材料であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アノード電極に、多数の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサーをカソード電極側にアノード電極とスペーサーの貫通孔が整合するように密着させたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記アノード電極と前記カソード電極に、多数の貫通孔を形成した絶縁性のスペーサーを電解槽内面にアノード電極、カソード電極とスペーサーの貫通孔が整合するように密着させたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
セパレーターに形成した貫通孔の中心が、アノード電極またはカソード電極に形成した貫通孔の中心とずれていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
水が流れる配管の接続部に装填可能な電解槽であって、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のアノード電極と、多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状のカソード電極の間の空間、若しくは該アノード電極と該カソード電極間に設置した多数の貫通孔を形成した円盤状または多角形平板状の2以上のセパレーターの間の空間に貫通孔の直径以上の粒径を有する粒子状の金属または半金属を充填し、該アノード電極、該カソード電極及び該セパレーターは絶縁性のスペーサーを介して挟持されていることを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
【請求項8】
アノ−ド電解液出口、およびカソード電解液出口の中間に原水水供給口を設けた三方の口を設け、カソード電解液出口側に2枚以上の多数の貫通孔を形成したカソード電極を、アノ−ド電解液出口側に多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極を組み込み、通電する該カソード電極を交換することにより電解電流の低下を防止した請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の水中の微生物を殺減する装置。
【請求項9】
微生物殺滅効果を長時間持続させるために、原水供給口とアノ−ド電解液出口、の中間に複数のカソード電解室を設け、カソード電解室内に交互に通電するためのカソード電極を設けたことを特徴とする水中の微生物を殺減するための装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の装置を用いて、配管を流れる水を電気分解して水中の微生物を殺滅することを特徴とする水中の微生物の殺滅方法。
【請求項11】
請求項2に記載の装置において、アノ−ド電極、セパレーターおよびカソード電極の対を鏡像対象に二対配置した電解槽の、交互に各一対に通電して電解電流を一定に保持することを特徴とする水中の微生物を殺減する方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の装置を用いて、多数の貫通孔を形成したアノ−ド電極と多数の貫通孔を形成したカソード電極の間に、周波数が300Hz以上の交番またはパルス状の電場を印加して水中の微生物を殺滅する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−142797(P2009−142797A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325602(P2007−325602)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(504000052)有限会社スプリング (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(504000052)有限会社スプリング (8)
【Fターム(参考)】
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