説明

水中作業補助装置

【課題】作業者は水深の異なる場所でも3本の脚で立脚できると共に、水深に応じて重量が増減するので、浮力、波力、流水圧等に抗して水中で安定した姿勢を確保することができ、また移動が容易であるし、作業者は両手を自由に使えるので作業を円滑に行うことができる水中作業補助装置を提供する。
【解決手段】装置本体1を構成する作動機構2は、エアコンプレッサーから可撓ホースを介して作動シリンダ3に供給される加圧流体を制御部4により切換制御し、作動シリンダ3のピストンロッド3Eを往復動作させる。ウエイト機構7の支持軸9はピストンロッド3Eに連動して昇降し、ウエイトチューブ8内の上方に海水を導入し、又は排出して重量を増減する。支持軸9の下端に接地体12が設けてあり、装置本体1には装着具17が設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば海底の雑海草の除去作業、雲丹、海藻等の採取作業、河床の均し作業、その他池、沼等での種々の水中作業時に作業者が波力、流水圧、浮力によって体のバランスを崩すことなく、安定して安全に作業を行うことができるようにした水中作業補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海岸から近い場所や、浅瀬のように水深が比較的浅い海底での作業には、大気を自己呼吸するシュノーケルや、陸地や船上から圧縮空気を送る簡易型潜水服を用いて行っているが、水深が浅い海でも浮力が働いており、海中での作業中に身体を支える補助手段がないと波力によって身体が揺れてしまい、作業を正確かつ能率良く行うことができないという問題がある。そこで、作業者がウエイトベルトを腰に装着して重量を増し、浮力を抑えて波力の影響を少なくすることが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】小学館 英語図詳大辞典(第384頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエイトベルトを用いて浮力を抑えることで波力による影響を少なくしようとする従来技術は、作業者が二本足で海底に立つ限り波力に抗することに限界があり、体の安定性を十分に得ることができずに作業に支障を生じているのが現状である。また、作業者の体に働く浮力は水深によって異なるのに対し、一旦装着したウエイトベルトは陸地や船上に戻らない限り浮力に応じた調整はできず、過剰に重いウエイトベルトを装着したままで作業を行なわなければならないといった問題も生じる。
【0005】
本発明は上述した従来技術の諸欠点に鑑みなされたもので、作業者は水深の異なる場所でも少なくても3本の脚で立脚できると共に、水深に応じて負荷重量が増減するので、浮力、波力、流水圧等に抗して水中で安定した姿勢を確保することができ、しかも移動が容易であるし、作業者は両手を自由に使えるので作業を円滑に行うことができる水中作業補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために構成した本発明の手段は、加圧流体源からホースを介して作動シリンダに供給される加圧流体を、制御部により切換制御して該作動シリンダのピストンロッドを往復動作させる作動機構と、前記ピストンロッドに連動する支持軸に設けたピストンの昇降によりウエイトチューブに液体を導入又は排出して重量を増減するようにしたウエイト機構と、前記支持軸の下端に設けた接地体とから装置本体を構成し、該装置本体に装着具を設けたものからなる。
【0007】
そして、前記装置本体は、前記支持軸を所望の昇降位置に固定する手動ロック機構を備えた構成にするとよい。
【0008】
また、前記ウエイトチューブ内は、前記支持軸のピストンより上方の空間を水中に連通する液室に、下方の空間を大気に連通する空気室にするとよい。
【0009】
更に、前記装着具は、前記装置本体に設けられ、装着者の背面側に当接する体当て部と、該体当て部に設けた締着ベルト部とから構成するとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)作業者は、水深と地形に応じて支持軸を昇降させて接地体で身体を支えることにより、少なくても3本の脚で立脚した状態になるから、波力や流水圧に対しても身体の安定性を確保することができる。
(2)水深に応じてウエイトチューブ内に液体を導入し又は排出することにより、装置本体の重量の増減が調整可能であるから、作業者は過大な負荷重量を受けることなく、しかも浮力に抗して安定した状態を形成して効率的に作業を行うことができる。
(3)接地体は昇降自在で、移動時には上昇させておくことができるから、地形の凹凸に影響されずに容易に移動することができる。
(4)支持軸は手動ロック機構により所望の昇降位置に固定できるから、作業中に支持軸が不用意に縮小して転倒する危険を防止することができ、作業者は安心して作業を行うことができる。
(5)ウエイト機構は、ウエイトチューブ内のピストンより上方の空間を液室に、下方の空間を大気室にしてあるから、ピストンは円滑に昇降動作できるし、ピストンの昇降によって液室に充填される液体の注入量を可変制御することで、水深に応じた負荷重量に設定することができる。
(6)装置本体を作業者に支持させる装着具は、作業者の背面側に当接する体当て部と、体当て部を体に締結する締着ベルト部から構成してあるから、作業者への着脱作業は容易であるし、装置本体は作業者の体に一体的に締着するので、作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る水中作業補助装置の使用状態を示す説明図である。
【図2】水中作業補助装置の構成を示す縦断面図である。
【図3】装置本体の一部を破断にした部分拡大図である。
【図4】装置本体の作動状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図において、1は装置本体、2は該装置本体1を構成する作動機構を示す。3は該作動機構2を構成する駆動源としての空気圧シリンダで、該空気圧シリンダ3はシリンダチューブ3Aと、該シリンダチューブ3Aの上端を閉塞するヘッドカバー3Bと、下端に設けたロッドカバー3Cと、シリンダチューブ3A内で摺動するピストン3Dを支持して昇降するピストンロッド3Eと、ヘッドカバー3B及びロッドカバー3Cに形成した給排気ポート3F、3Gとから構成してある。
【0013】
4は前記空気圧シリンダ3の往復動を手動により切換制御するために、後述するウエイトチューブ8の側方に設けた制御部を示す。該制御部4は内部に方向切換弁を有するハウジング4Aと、該ハウジング4Aに設けられ、方向切換弁を切換操作する操作レバー4Bとから構成してあり、ハウジング4Aはエアチューブ5、6を介して前記給排気ポート3F、3Gと夫々接続しており、後述するエアコンプレッサー14から圧縮空気が供給されるようになっている。
【0014】
7は、装置本体1の重量を増加して浮力を抑えることにより、作業時の安定性を確保するためのウエイト機構を示す。8は該ウエイト機構7を構成し、空気圧シリンダ3の下端に軸方向に設けたウエイトチューブで、該ウエイトチューブ8はシリンダチューブ3Aより大径の筒体8Aと、該筒体8Aの軸方向両端に設けた環状の上下のヘッドカバー8B、8Cと、筒体8Aの上端側に設けた海水導入口8Dと、筒体8Aの下端側に設けた通気口8Eとから構成してある。
【0015】
9はウエイト機構7を構成し、軸方向両端側を前記ヘッドカバー8B、8Cに摺動可能に挿通した支持軸で、該支持軸9は上端9Aが前記ピストンロッド3Eの下端に連結し、下端9B側がヘッドカバー8Cから外側下方に伸長しており、ピストンロッド3Eに連動して矢示イ、ロ方向に昇降するようになっている。そして、支持軸9は、軸方向途中に前記筒体8A内で摺動するピストン9Cが設けてあり、ウエイトチューブ8内は該ピストン9Cよって上方が容量可変の海水室Aに、下方が容量可変の大気室Bに形成されている。
【0016】
10はウエイト機構7を構成し、ウエイトチューブ8内の海水室Aに海水を吸入し、又ここから排出するための吸排水ホースで、該吸排水ホース10は上端を海水導入穴8Dに接続したホース本体10Aと、該ホース本体10Aの下端に設けられ、ウエイトチューブ8より下方に位置するストレーナ10Bとから構成してある。
【0017】
他方、11はウエイトチューブ8内の大気室Bを大気に連通させる通気ホースで、該通気ホース11は下端11Aが前記通気口8Eに接続し、上端の大気連通口11Bが空気圧シリンダ3より上方に位置している。かくして、ウエイトチューブ8内は、昇降するピストン9Cより上方に形成される海水室Aには吸排水ホース10を介して海水が流入出し、ピストン9Cより下方に形成される大気室Bは通気ホース11を介して大気圧状態に保たれている。
【0018】
12は前記支持軸9の下端に設けた金属製の円板からなる接地体を示す。該接地体12は自在継手12Aにより支持軸9の下端に連結してあり、一定の範囲で首振り状に変位することで、傾斜した海底Gに対しても滑ることなく確実に接地するようにしてある。13は昇降する支持軸9を所望の位置に固定する手動ロック機構で、該手動ロック機構13はウエイトチューブ8の下ヘッドカバー8Cに固着した基体13Aと、該基体13A内に設けられて支持軸9に接離するカムを回動操作する操作レバー13Bとから構成してある。
【0019】
14は空気圧シリンダ3に圧縮空気を供給すべく陸地Lに設置したエアコンプレッサー、15は該エアコンプレッサー14と制御部4との間に連結し、圧縮空気を空気圧シリンダ3に供給する可撓ホースで、該可撓ホース15はエアコンプレッサー14の近傍に設置したホースリール16に途中部分を巻回することで延長可能にしてある。
【0020】
17は上述の構成からなる装置本体1を作業者Hに一体感を持たせて装着するための装着具を示し、該装着具17は作業者Hの背から腰を幾分包むように当接する軟質合成樹脂製の体当て体18と、体に締着する締着ベルト部19とから構成してある。該締着ベルト部19は体当て部18の側方に連結した腰ベルト19Aと、体当て部18の上端側から伸長し、途中に長さ調節体19Bを有する両肩ベルト19C、体当て体18の下端側に連結され、股下から腹部側に伸長する下ベルト19D、及びこれら各ベルト19A、19C、19Dを締結するバックル19Eとから構成してある。
【0021】
本実施の形態は上述の構成からなるが、次にその作動について説明する。先ず、作業者Hは体当て部18を背面に当て、締着ベルト部19を体に締着することで、装着具17により装置本体1を体に装着して作業の準備を行う。次に、エアコンプレッサー14から可撓ホース15を介して圧縮空気を制御部4に供給しながら作業者Hは海中に入り、切換レバー4Bを操作して空気圧シリンダ3に圧縮空気を送ってピストンロッド3Eを伸長させ、支持軸9を下降させて接地体12を海底Gに接地させる。支持軸9が伸長して作業者Hの姿勢が安定した状態になったら、手動ロック機構13の操作レバー13Bを操作して支持軸9を固定する。これにより、作業者Hは安心して支持軸9に体重を掛けることができ、作業を安全にかつ効率良く行うことができる。
【0022】
上述の作動中、支持軸9の下降に伴ってウエイトチューブ8内はピストン9Cの上方の海水室Aが次第に負圧になり、吸排水ホース10を介して海水が吸入され充填される。他方、下降するピストン9Cにより大気室Bの空気は通気ホース11を介して外部に放出されるので、大気室B内で空気を圧縮することがない。また、逆にピストン9Cが上昇した場合は外気を吸引して大気室Bは負圧にならないから、支持軸9は円滑に昇降することができる。このようにして、ウエイトチューブ8内の海水室Aには水深に応じて下降する支持軸9の下降量に応じて海水が充填することで、装置本体1の負荷重量が増加し、作業者Hに働く浮力を抑えることができる。
【0023】
かくして、作業者Hは3本の脚で海底Gに立ち、かつウエイトチューブ8内に水深に応じた量の海水が充填されて負荷重量が増加することから、浮力も抑えて波力による体の揺れを可及的に防止することができ、安定性良く海底作業を行うことができる。作業現場を移動する場合は、操作レバー13Bを操作して支持軸9の固定を解除し、切換レバー4Aを操作して空気圧シリンダ3への圧縮空気の供給方向をエアチューブ5からチューブ6に切り換え、ピストンロッド3Eを上昇させて支持軸9そして接地体12を上昇させる。次の作業現場に移動したら、前述と同様の操作により支持軸9を下降させることで装置本体1により作業者Hは体の安定を図る。
【0024】
なお、本実施の形態では海中での作業を例に挙げたが、本発明による水中作業補助装置は、例えば河川、池、沼等での作業にも用いることが出来るものである。
【0025】
また、本実施の形態では加圧流体として圧縮空気を用いたが、本発明では加圧水や圧油を用いてもよいものである。
【0026】
更に、本実施の形態においてウエイト機構7の支持軸9は1本として説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、途中から分岐させて支持軸を2本に構成すること、また、作動機構2とウエイト機構7を2組以上組合せて支持軸9を2本以上にする構成をも含むものである。
【符号の説明】
【0027】
1 装置本体
2 作動機構
3 空気圧シリンダ(作動シリンダ)
3E ピストンロッド
4 制御部
7 ウエイト機構
8 ウエイトチューブ
9 支持軸
9A ピストン
12 接地体
13 手動ロック機構
14 エアコンプレッサー
15 可撓ホース
17 装着具
18 体当て部
19 締着ベルト部
A 海水室(液室)
B 大気室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧流体源からホースを介して作動シリンダに供給される加圧流体を、制御部により切換制御して該作動シリンダのピストンロッドを往復動作させる作動機構と、前記ピストンロッドに連動する支持軸に設けたピストンの昇降によりウエイトチューブに液体を導入又は排出して重量を増減するようにしたウエイト機構と、前記支持軸の下端に設けた接地体とから装置本体を構成し、該装置本体に装着具を設けてなる水中作業補助装置。
【請求項2】
前記装置本体は、前記支持軸を所望の昇降位置に固定する手動ロック機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の水中作業補助装置。
【請求項3】
前記ウエイトチューブ内は、前記支持軸のピストンより上方の空間を水中に連通する液室に、下方の空間を大気に連通する大気室にしてあることを特徴とする請求項1記載の水中作業補助装置。
【請求項4】
前記装着具は、前記装置本体に設けられ、装着者の背面側に当接する体当て部と、該体当て部に設けた締着ベルト部とから構成してあることを特徴とする請求項1記載の水中作業補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−188847(P2010−188847A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34922(P2009−34922)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(504464173)株式会社 南組 (2)