説明

水中微細物等の処理装置

【課題】本発明は水中微細物等の処理装置に関し、海水をバラスト水として船舶に注入したり、注出するのに、海水中に含まれるプランクトンのような微生物の殺滅や、海水中に浮遊する微細な固形物を破砕するのに最適に使用される。
【解決手段】液体2を流す管路1内に設けられ、外周面には管路1内の液体を高速流となす傾斜面3aを有した第1の加速部材3と、負圧を発生させる空隙部4を半径方向Rに有する小径なくびれ部5を介して加速部材3の後段に第2の加速部材6を連設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中微細物等の処理装置に関し、例えば船舶が安全航行するために海水をバラスト水として船舶に注入したり、船舶から注出するのに、海水中に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物の殺滅を行ったり、海水中に浮遊する微細な固形物を破細するのに最適に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば船舶が安全航行するのに海水をバラスト水として注入したり、船舶外に注出する時に、植物性または動物性のプランクトンやバクテリヤ等の微生物の殺滅を行うためのバラスト処理装置には、従来、遠心分離装置などの動力を利用した比較的大掛かりな装置があった。
【0003】
また、バラスト水中の微生物の通過を捕捉するための多数の通孔を洗浄しながら用いるフィルター等の除去手段を備えたバラスト処理装置もあった(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
また、バラスト水中に含まれる植物性または動物性のプランクトンやバクテリヤ等の微生物の殺滅を行うための他の方法として、バラスト水中で高電圧電極間にスパーク放電させる衝撃波発生部を備えることにより放電されるパルスパワー生成衝撃波によるバラスト水処理法があった(例えば特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−349259号公報
【特許文献2】特開2005−270754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遠心分離装置などの動力を利用した上記従来のバラスト処理装置は、大掛かりな装置であるので、製作、および建造には多大な労力、時間、資材が必要になり、工事期間も長くなり、建造費も膨大になって、不経済であった。
【0006】
しかも、バラスト水は、船舶の載荷荷重の30〜60%もあり、その注水量が大量であることから、処理装置が複雑な機構を採用すると、その大型化は避けられないので、小型船舶では設置するための広い船内スペースを採ることができなかった。そのため、上述のような遠心分離装置などの動力を利用した比較的大掛かりな装置を建造するのには不適切である。
【0007】
また、フィルター等の除去手段を備えた上記従来のバラスト処理装置は、フィルターの通孔(目)の大きさが微細なものであるので、フィルターの通孔が目詰まりするという懸念を払拭することができなかった。
【0008】
そのうえ、遠心分離装置などの動力を利用した上記従来のバラスト処理装置、およびフィルター等の除去手段を備えた上記従来のバラスト処理装置は、いずれもポンプの圧力を高圧化する必要があり、既存のポンプ設備での使用が難しいという欠点があった。
【0009】
さらに、バラスト水中で高電圧電極間にスパーク放電させる衝撃波発生部を備えた上記従来のバラスト水処理法は、衝撃波発生部からスパーク放電させて一度電力を消費し尽くしてしまうと、再び衝撃波発生部のコンデンサに電力を充電するために多くの時間が必要になり、効率が悪いものであった。しかも、多大な消費電力や建造設備を必要とし、不経済であった。
【0010】
本発明は上記従来の欠点を解決し、バラスト水等の海水に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物を殺滅したり、海水に浮遊する微細な固形物等を効率良く破砕したり、細分化することができ、装置自体は既存のポンプ設備や配管を変更することなくそのまま利用して施工性が良く、経済的であり、しかも装置の小型化を達成して小型の船舶でも容易に建造が行え、設置面積は小面積であり、施工が容易に行える水中微細物等の処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明上記課題に鑑みなされ、請求項1に記載の発明は、液体を流す管路内の軸長方向の所望位置に設けられるとともに、外周面には該管路の内部断面積を次第に狭めることにより前記液体を高速流となす傾斜面を有した第1の加速部材と、該第1の加速部材の下流側には前記管路内に負圧を発生させる空隙部を半径方向に有する小径なくびれ部を介して前記第1の加速部材の後段に再び前記管路の内部断面積を狭める第2の加速部材を連設し、前記高速流が前記空隙部と前記第2の加速部材の終端の設置位置を通過するのに伴う負圧が発生することにより生ずるキャビテーションにより起こされる衝撃力により液体中の微生物、微細な固形物等の微細物を破砕もしくは細分化する等の処理を行うか、または、前記液体を混合処理することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第1の加速部材が円錐体であり、前記第2の加速部材が円柱体であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記第1の加速部材と、前記第2の加速部材とは前記くびれ部を介して一体に形成されるか、またはスペーサとしての前記くびれ部を介して個別の前記第1の加速部材と、前記第2の加速部材とが連設されることを特徴とした。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1−3の何れかにおいて、前記液体が、気体を液体に析出可能なようにあらかじめ気体を溶解させた被処理水として処理されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1−4の何れかにおいて、前記第1の加速部材が、円錐管に形成され、支流用液体に気体を溶解するか、または支流用液体に微細な気泡を析出させた状態で前記円錐管内に設けた支流水流入管を通じて前記円錐管の大径部の背部に位置する前記空隙部へ供給させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1−5の何れかにおいて、前記気体が、殺菌に有効なオゾンであることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1−6の何れかにおいて、前記第1の加速部材と前記第2の加速部材とにより構成される水中微細物等の処理装置の複数が、並列に、または直列に前記管路内に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、液体を流す管路内の軸長方向の所望位置に設けられるとともに、外周面には該管路の内部断面積を次第に狭めることにより前記液体を高速流となす傾斜面を有した第1の加速部材と、該第1の加速部材の下流側には前記管路内に負圧を発生させる空隙部を半径方向に有する小径なくびれ部を介して前記第1の加速部材の後段に再び前記管路の内部断面積を狭める第2の加速部材を連設し、前記高速流が前記空隙部と前記第2の加速部材の終端の設置位置を通過するのに伴う負圧が発生することにより生ずるキャビテーションにより起こされる衝撃力により液体中の微生物、微細な固形物等の微細物を破砕もしくは細分化する等の処理を行うか、または、前記液体を混合処理することを特徴とするので、管路内に液体が流入されて来ると、第1の加速部材の斜面部により管路は内断面積が滑らかに狭められ、前記液体は高速流となって管路内を流れて行く。
【0019】
この液体の高速流は、前記第1の加速部材の大径部の設置個所で速度は最大になるが、この高速流のエジェクタ作用により前記第1の加速部材の下流側に小径なくびれ部により半径方向に設けられた空隙部内の液体は吸引されることにより空隙部内は負圧になる。そして、この負圧が発生されることにより高速の液体中に気体が溶解されていると、この気泡が瞬間的に析出する。また、前記負圧により飽和蒸気圧以下になると、液体が沸騰して水蒸気となり気泡を析出するようになる。これらの析出された気泡が、再び第1の加速部材により高速の液体に合流すると、即座に元の圧力に復帰するので、析出していた気泡は消滅する。このようなキャビテーションにより起こる衝撃力により液体中に含まれているプランクトンの微生物や液体中に浮遊している微細な固形物は破砕されたり、細分化される。その後、空隙部を介して第1の加速部材の後段に第1の加速部材の大径部と略同径に連設された第2の加速部材により管路は再び内部断面積が狭められて再び液体は高速流になり、第2の加速部材の終端を過ぎた個所で渦流を円周状に生ずる。この渦流により、渦の中心は周辺部より圧力が著しく低い圧力になり、負圧が発生する。このように、負圧が発生することにより生ずるキャビテーションにより起こされる衝撃力により、前述のようにくびれ部において発生された衝撃力により殺滅を免れた微生物は殺滅され、液体中に含まれる微細な固形物は破砕されたり、細分化される。
【0020】
このようにして、バラスト水等の海水に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物を殺滅したり、海水に浮遊する固形物等の微細物を効率良く破砕したり、細分化することができる。こうして、装置自体は既存のポンプ設備や配管を変更することなくそのまま利用して施工性が良く構築することができ、経済的である。しかも、装置の小型化を達成できるので、小型の船舶でも容易に建造が行え、設置面積は小面積であり、施工が容易に行える。
【0021】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、前記第1の加速部材が円錐体であり、前記第2の加速部材が円柱体であることを特徴とするので、管路内に液体が流入されて来ると、円錐体よりなる第1の加速部材により前記液体は高速流となる。そして、第1の加速部材の最大径になる個所で管路は内部断面積が最も狭められる。
【0022】
そして、第1の加速部材の下流側に小径なくびれ部により半径方向に設けられた空隙部には高速流のエジェクタ作用により前記第1の加速部材の下流側に小径なくびれ部により半径方向に設けられた空隙部内の液体は吸引されることにより負圧が発生されるので、高速の液体中に気体が溶解されていると、この気泡が瞬間的に析出する。また、前記負圧により飽和蒸気圧以下になると、液体が沸騰して水蒸気となって気泡が析出する等して起こされるキャビテーションによる衝撃により液体中に含まれているプランクトン等の微生物や液体中に浮遊している微細な固形物は破砕されたり、細分化される。その後、空隙部を介して第1の加速部材の後段に第1の加速部材の大径部と略同径に連設された円柱体よりなる第2の加速部材により管路は再び狭められて再び液体は高速流になり、第2の加速部材の終端を過ぎた個所で渦流を円周状に生ずる。この渦流により、渦の中心は周辺部より圧力が著しく低くなり、負圧が発生する。このように、負圧が発生して渦を生ずるキャビテーションにより起こされる衝撃力により、前述のようにくびれ部により殺滅を免れた微生物は殺滅され、液体中に含まれる微細な固形物は破砕されたり、細分化される。
【0023】
こうして、バラスト水等の海水に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物を殺滅したり、海水に浮遊する微細な固形物等の微細物を効率良く破砕したり、細分化することができる。こうして、装置自体は既存のポンプ設備や配管を変更することなくそのまま利用して施工性が良く構築することができ、経済的である。しかも、装置の小型化を達成できるので、小型の船舶でも容易に建造が行え、設置面積は小面積であり、施工が容易かつ迅速に行える。
【0024】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、前記第1の加速部材と、前記第2の加速部材とは前記くびれ部を介して一体に形成されるか、またはスペーサとしての前記くびれ部を介して個別の前記第1の加速部材と、前記第2の前記加速部材とが連設されることを特徴としたので、管路内に液体が流入されて来ると、第1の加速部材の外周に設けた傾斜面により前記液体は高速流となる。そして、傾斜面が最大径になる個所で管路は最も狭められ、最大流速になる。
【0025】
そして、第1の加速部材の下流側に小径なくびれ部により半径方向に設けられた空隙部には高速流のエジェクタ作用により前記第1の加速部材の下流側に小径なくびれ部により半径方向に設けられた空隙部内の液体は吸引されて負圧が発生されるので、高速の液体中に気体が溶解されていると、この気泡が瞬間的に析出する。また、前記負圧により飽和蒸気圧以下になると、液体が沸騰して水蒸気となって気泡が析出する等して起こされるキャビテーションによる衝撃力により液体中に含まれているプランクトン等の微生物や液体中に浮遊している微細な固形物は破砕されたり、細分化される。その後、空隙部を介して第1の加速部材の後段にくびれ部を介して一体に形成されるか、またはスペーサとしての前記くびれ部を介して第1の加速部材の大径部と略同径に連設された円柱体よりなる第2の加速部材により管路は再び内部断面積が狭められて再び液体は高速流になる。そして、第2の加速部材の終端を過ぎた個所で渦流を円周状に生ずる。この渦流により、渦の中心は周辺部より圧力が著しく低い圧力になり、負圧が発生する。このように、負圧が発生して起こされるキャビテーションによる衝撃力により、前述のようにくびれ部における衝撃力により殺滅を免れた微生物は完全に殺滅されたり、液体中に含まれる微細な固形物は完全に破砕されたり、細分化される。
【0026】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、前記液体が、気体を液体に析出可能なようにあらかじめ気体を溶解させた被処理水として処理されることを特徴とするので、第1の加速部材の外周に設けた傾斜面により前記液体は高速流となって流れる。そして、第1の加速部材の下流側に小径なくびれ部により半径方向に設けられた空隙部に発生される負圧により液体中に含まれている気泡を析出し易くしたり、空隙内の圧力が飽和蒸気圧より低くなり、液体が蒸発したりすることで気泡を発生させ、キャビテーションによる衝撃力により液体中に含まれているプランクトン等の微生物や液体中に浮遊している微細な固形物は破砕されたり、細分化する。
【0027】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、前記第1の加速部材が、円錐管に形成され、支流用液体に気体を溶解するか、または支流用液体に微細な気泡を析出させた状態で前記円錐管内に設けた支流水流入管を通じて前記円錐管の大径部の背部に位置する前記空隙部へ供給させることを特徴とするので、管路内に液体が流入されて来ると、第1の加速部材の外周に設けた傾斜面により前記液体は高速流となる。そして、第1の加速部材の大径部の設置個所で管路内の内断面は最も狭められ、液体は最大の高速流となる。一方、管路の上流側または下流側から分岐されて気体と混合された支流用液体は支流水流入管を通じて第1の加速部材の下流側に小径なくびれ部により半径方向に設けられた空隙部に合流され、主流の液体と混合される。
【0028】
この際、第1の加速部材の外周に設ける傾斜面により高速流となって管路内を流れる液体によるエジェクタ作用により支流水流入管から合流される支流用液体は、気体とともに空隙部の設置個所に吸引されて合流が速やかに行われる。このように、合流直前まで、低い圧力により析出していた微細気泡が、管路からの高い圧力により、合流するのと同時に瞬間的に溶解され、消滅するため、合流部において負圧が発生されることにより生ずるキャビテーションにより起こされる衝撃力により液体および支流用液体に含まれるプランクトン等の微生物や液体中に浮遊している微細な固形物は破砕されたり、細分化される。その後、空隙部を介して第1の加速部材の後段に連設された第2の加速部材により管路は再び内部断面積が狭められて再び液体および支流用液体は高速流になり、第2の加速部材の終端を過ぎた個所で渦流を円周状に生ずる。この渦流により、渦の中心は周辺部より圧力が著しく低い圧力になって負圧になるとともに液体および支流用液体内に溶解していた気体が前記渦流にある時にだけ析出する。このように、負圧が発生して起こされるキャビテーションによる衝撃力により、前述のようにくびれ部において殺滅を免れた微生物は殺滅され、液体中に含まれる微細な固形物は破砕されたり、細分化される。
【0029】
このようにして、バラスト水等の海水に含まれる植物性または動物性のプランクトン等の微生物を殺滅したり、また、海水に浮遊する微細な固形物等の微細物を効率良く破砕したり、細分化することができる。こうして、装置自体は既存のポンプ設備や配管を変更することなくそのまま利用して施工性が良く構築することができ、経済的である。しかも、装置は小型化を達成できるので、小型の船舶でも容易に建造が行え、設置面積は小面積であり、施工が容易に行える。
【0030】
また、本発明の請求項6に記載の発明によれば、前記気体が、殺菌に有効なオゾンであることを特徴とするので、残留オゾンによる被処理水として大腸菌等の雑菌に対する殺菌を同時に行うことができる。
【0031】
さらに、本発明の請求項7に記載の発明によれば、前記第1の加速部材と第2の加速部材とにより構成される水中微細物等の処理装置の複数が、並列に、または直列に前記管路内に設けられたことを特徴とするので、処理を行う液体の流量に合わせて複数台を同時に使用することにより処理効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に従って本発明の実施の形態の具体例を説明する。
【0033】
[実施形態1]
図1は本発明の水中微細物等の処理装置の実施形態1を示す断面図である。
【0034】
本実施形態の水中微細物等の処理装置は、液体2を流す管路1内の軸長方向Xの所望位置に設けられるとともに、外周面には該管路の内部断面積を次第に狭めることにより前記液体2を高速流となす傾斜面3aを有した第1の加速部材3と、該第1の加速部材3の下流側には前記管路1内に負圧を発生させる空隙部4を半径方向Rに有する小径なくびれ部5を介して前記第1の加速部材3の後段に再び前記管路1の内部断面積を狭める第2の加速部材6を連設し、前記高速流が前記空隙部4と前記第2の加速部材6の終端の設置位置を通過するのに伴う負圧により生ずる衝撃力により液体2中の微生物、微細な固形物等の微細物を破砕もしくは細分化する等の処理を行うか、または、前記液体2を混合処理することを特徴とする。
【0035】
前記管路1は、本実施形態1では、図1に示すように、入口側管路1Aと、入口側管路1Aに前端が接続される中間管路1Bと、該中間管路1Bの後端に前端が接続される出口側管路1Cとにより構成される。入口側管路1Aと、中間管路1Bと、出口側管路1Cとの接続は、この実施例では対向して設けられたフランジをボルト・ナットにより緊結して接続される構成となっているが、入口側管路1Aと、中間管路1Bと、出口側管路1Cとの接続は図示するものに限ることなく、例えば図には示さないサドルを用いて接続するようにしてもよい。
【0036】
この実施形態1では、図1に示すように前記第1の加速部材3が円錐体であり、第2の加速部材6が円柱体である。この第1の加速部材3と、第2の加速部材6とは前記中間管路1B内に取付材Tにより取付けられる。そして、この実施形態1では、この第1の加速部材3の大径部3bと、第2の加速部材6とは略同径に形成される。
【0037】
また、前記第1の加速部材3と、前記第2の加速部材6とは図には示さないが、前記くびれ部5を介して一体に形成されるか、または図1に示すようにスペーサ7としての前記くびれ部5を介して個別の前記第1の加速部材3と、前記第2の加速部材6とが連設される。この時、第1の加速部材3と、第2の加速部材6とは、スペーサ7を介してねじ止め、または接着剤を用いて接着されることにより組付けられる。
【0038】
また、前記液体2が、本実施形態では液体2に気体Gを析出可能なようにあらかじめ気体Gを液体2に溶解させた被処理水として処理されたものが用いられる。このように、あらかじめ気体Gを液体2に溶解させた被処理水として処理されるようにしたのは、第1の加速部材3の外周に設けた傾斜面3aにより管路1内を液体2は高速流となって流れ、そして、第1の加速部材3の下流側に小径なくびれ部5により半径方向Rに設けられた空隙部4内の液体2は高速流となって流れる前記液体2にエジェクタ作用により吸引されることにより空隙部4内に発生する負圧にて液体2中に含まれている気泡を析出し易くしたり、空隙部4内の圧力が飽和蒸気圧より低くなり、液体が蒸発したりすることで気泡を発生させる等するキャビテーションによる衝撃力により液体2中に含まれているプランクトンのような微生物を殺滅したり、液体2中に浮遊している微細な固形物を破砕したり、細分化するためである。また、この気体Gが、殺菌に有効なオゾンOであれば、残留オゾンによる被処理水としての液体2中に含まれる植物性のプランクトンのような微生物を殺滅したり、海水に浮遊する固形物等の微細物を細分化することができるほか、大腸菌などの雑菌に対する殺菌を同時に行うことができる。
【0039】
P1は管路1内に、液体2を下流側に圧送するためのポンプであり、このポンプP1の種類、パワーは制限を受けるものではない。
【0040】
本実施形態1の水中微生物処理装置は以上の構成からなり、船舶が安定に航行するためにバラスト水として海水を液体2として船舶内に注入したり、船舶から注出する際に、海水中に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物を殺滅したり、海水に浮遊する微細な固形物等の微細物を効率良く破砕したり、細分化するのには、ポンプP1を駆動させて処理すべき液体2を高い圧力、例えば液体2の流量条件を、管路1の管内径が70mm、流量40m/hとして、0.35MPaの高圧にて管路1の下流側に流すと、管路1内には外周面に該管路1の内部断面積を次第に狭めるような傾斜面3aを外周面に有した第1の加速部材3が設けられているので、液体2は管路1内を第1の加速部材3の傾斜面3aにより高速流に流れて行く。
【0041】
そして、第1の加速部材3の大径部3aが設けられた個所において管路1内の内部断面積は最も狭められて、液体2は最大速度になり、高速流になって流れる。
【0042】
それから、第1の加速部材3の下流側の後段には、小径なくびれ部5を設けることにより半径方向Rに空隙部4が形成されているので、この空隙部4により負圧C1が発生され、その内圧は例えば−0.05MPaになるため、高速に流れる液体2中に含まれている気泡が瞬間的に析出したり、空隙部4内の圧力が部分的に飽和蒸気圧より低くなり、液体2が蒸発し、気泡が発生する時の衝撃を液体2に与えることになる。この衝撃力により液体2中に含まれている植物性または動物性のプランクトンのような微生物は殺滅されたり、液体2中に浮遊している微細な固形物は破砕されたり、細分化される。
【0043】
この際、あらかじめ気体Gを液体2に溶解させた液体2を被処理水として用いると、第1の加速部材3の後段に設けた小径なくびれ部5により半径方向Rに形成された空隙部4により発生される負圧C1は、例えば−0.05MPaになるので、液体2中に含まれている気泡は析出され易くなったり、空隙部4内の圧力が飽和蒸気圧より低くなり、液体2が蒸発し、沸騰することで気泡が発生されるため、その際、生ずる衝撃力により液体中2に含まれているプランクトンのような微生物を殺滅したり、液体2中に浮遊している微細な固形物を容易かつ確実に破砕されたり、細分化することができる。
【0044】
しかも、液体2中に含まれている気体GにオゾンOを用いれば、液体2中に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物や海水に浮遊する固形物等の微細物を殺滅したり、細分化することができるほか、大腸菌等の雑菌に対する殺菌を同時に行うことができる。
【0045】
その後、空隙部4を介して第1の加速部材3の後段には、第1の加速部材3の大径部3aと略同径に第2の加速部材6が連設しているので、この第2の加速部材6により管路1は再び内断面積が狭められて再び液体2は高速流になって流れる。そして、第2の加速部材6の終端を過ぎた個所で渦流Wを円周状に生ずる。この渦流Wにより、渦の中心は周辺部より圧力が著しく低い圧力になり、負圧C2、例えば0.02MPaが発生する。このように、負圧C2により発生される渦流Wにより起こるキャビテ−ションの衝撃力により、前述のようにくびれ部5における負圧C1が発生されることで起こるキャビテ−ションの衝撃力により殺滅を免れた微生物は完全に殺滅されたり、液体2中に含まれる微細な固形物は完全に破砕されたり、細分化される。その後、液体2は例えば0.05MPaの内圧により管路1内を排出される。
【0046】
このようにして、円錐体よりなる第1の加速部材3の後段に設けられたくびれ部5により半径方向Rに形成された空隙部4と、該くびれ部5を介して連設された円柱体よりなる第2の加速部材6とにより管路1内には2段階に負圧C1,C2を生ずるので、バラスト水等の海水に含まれる植物性または動物性のプランクトンを殺滅したり、海水に浮遊する微細な固形物等の微細物を効率良く破砕したり、細分化することができる。
【0047】
こうして、本実施形態1の水中微細物等の処理装置では、装置自体は既存のポンプP1設備や配管を大幅に変更することなく、管路1内の所望位置にそのまま利用して施工が行えるため、施工性が良く構築することができる。しかも、装置自体は既存の配管設備内に設けられるので、装置の小型化を達成でき、小型の船舶でも容易に建造が行え、設置面積は小面積であり、資材費も少なくて済み、廉価で経済的である。
【0048】
また、前記第1の加速部材3と、前記第2の加速部材6とは図には示さないが、前記くびれ部5を介して一体に形成するようにすれば構造簡単であり、大量生産可能であり、安価に製作することができる。また、図示する実施形態1のように、前記第1の加速部材3と、前記第2の加速部材6とはスペーサ7としての前記くびれ部5を介して、例えばねじ止めしたり、接着剤を用いて接着することにより連設するようにすれば、個別の前記第1の加速部材3と、前記第2の加速部材6とを容易かつ確実に連設して製作することができる。
【0049】
また、前記管路1は、本実施形態1では、図1に示すように、入口側管路1Aと、入口側管路1Aに前端が接続される中間管路1Bと、中間管路1Bの後端に前端が接続される出口側管路1Cとにより構成され、入口側管路1Aと、中間管路1Bと、出口側管路1Cとは、この実施例では対向して設けられたフランジをボルト・ナットにより緊結して接続される構成となっているので、ボルト・ナットの緊結を解くことにより、入口側管路1Aと、中間管路1Bと、出口側管路1Cとを容易に分離するようにすれば入口側管路1Aと、中間管路1Bと、出口側管路1C内部と、中間管路1B内に設置された第1の加速部材3および前記第2の加速部材6の清掃と、部品の交換を容易かつ迅速に行え、保守・点検に便利になる。また、少なくとも第1の加速部材3および前記第2の加速部材6が内部に設置された中間管路1Bを透明な合成樹脂管やガラス管で形成されるものを用いれば、管路1内において第1の加速部材3の背部に半径方向Rに設けられた空隙部4と、前記第2の加速部材6の背部とにおいて正常にキャビテーションが発生しているか否か、また、キャビテーション発生個所に目詰まりを生じて液体2の流れに支障を来しているか否かを容易に管路1の外部から確認することができ、保守・点検の一助とすることができる。
【0050】
[実施形態2]
図2に示すものは本発明の実施形態2である。この実施形態2では、前記第1の加速部材3が、円錐管50に形成され、支流用液体2′に気体Gを溶解するか、または支流用液体2′に微細な気泡を析出させた状態で前記円錐管50内に設けた支流水流入管51を通じて前記円錐管50の大径部50aの背部に位置する前記空隙部4へ支流用液体2′を供給させることを特徴とするので、管路1内に主流としての液体2が流入されて来ると、第1の加速部材3の外周に設けた傾斜面3aにより管路1内の内部断面積は最も狭められ、前記液体2は高速流となって流れる。一方、管路1の上流側または下流側から分岐されて気体Gと混合された支流用液体2′は、支流水流入管51を通じて第1の加速部材3の下流側に小径なくびれ部により半径方向Rに設けられた空隙部4に合流され、主流として流路1内を流れる液体2と混合される。
【0051】
そして、本実施形態1は、前記実施形態1と同様に第1の加速部材3の外周に設ける傾斜面3aにより高速流となって管路1内を流れる液体2によるエジェクタ作用により支流水流入管51から合流される支流用液体2′は気体Gとともに空隙部4の設置個所に吸引されて合流が速やかに行われる。このように、合流直前まで、低い圧力、例えば−0.05MPaにより析出していた微細気泡が、管路1に流れる高い圧力、例えば液体2の流量条件を管路1の管内径が70mm、流量40m/hである時に、0.35MPaの高圧の液体2と、合流するのと同時に瞬間的に溶解され、消滅するため、合流部において発生される負圧C1、例えば−0.05MPaの負圧により生ずるキャビテーションにより起こる衝撃力により液体2および支流用液体2′に含まれるプランクトンのような微生物を殺滅したり、液体2および支流用液体2′中に浮遊している微細な固形物は破砕されたり、細分化される。その後、空隙部4を介して第1の加速部材3の後段に第1の加速部材3の大径部3aと略同径に連設された第2の加速部材6により管路1内の内部断面積は再び狭められて内圧が高圧になるので、再び液体2および支流用液体2′は高速流になって管路1内を流れ、第2の加速部材6の終端を過ぎた個所で渦流Wを円周状に生ずる。この渦流Wにより、渦の中心は周辺部より圧力が著しく強い圧力になるとともに液体2および支流用液体2′内に溶解していた気体Gが前記渦流Wにある時にだけ析出するので、負圧C2、例えば0.02MPaが発生する。このように、負圧C2が発生する時に生ずる衝撃力により、前述のようにくびれ部5における衝撃力により殺滅を免れた微生物は完全に殺滅され、液体2および支流用液体2′中に含まれる微細な固形物は完全に破砕されたり、細分化される。
【0052】
このようにして、バラスト水等の海水に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物を殺滅したり、海水に浮遊する微細な固形物を効率良く破砕したり、細分化することができる。しかも、装置自体は既存のポンプP1,P2等の設備や配管を変更することなくそのまま利用して管路1内の所望位置に設置すれば施工が行え、施工性が良く構築することができ、経済的である。しかも、装置は小型化を達成できるので、小型の船舶でも容易に建造が行え、設置面積は小面積であり、施工が容易に行えるという利点があるほかは、本実施形態2は前記実施形態1と同様な構成、作用である。
【0053】
また、前記気体Gが、殺菌に有効なオゾンOを使用すれば、残留オゾンによる被処理水としての液体2中に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物を殺滅したり、海水に浮遊する微細な固形物等の微細物を効率良く破砕したり、細分化することができるほか、大腸菌等の雑菌に対する殺菌を同時に行うことができる。
【0054】
さらに、図には示さないが、前記第1の加速部材3と第2の加速部材6とにより構成される水中微細物等の処理装置の複数が、管路1・・・内に並列に、または直列に管路1内に設けられた構成にすれば、処理を行う液体2の流量に合わせて複数台を同時に使用することにより液体2中に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物を殺滅したり、海水に浮遊する微細な固形物等の微細物を効率良く破砕したり、細分化するという処理効率を向上することができる。
【0055】
なお、上記実施形態1,2では、例えば船舶が安全航行するために船舶に注入したり、船舶から注出するバラスト水として、海水中に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物の殺滅を行ったり、海水中に浮遊する微細な固形物を破砕するのに使用される場合を代表的に説明したが、説明は例示であり、これに限らず、本発明は水中に浮遊する微細な固形物を破砕したり、細分化することにより水の浄化を行う水処理や、油に浮遊する微細な鉱物、鉱石等の微細な固形物を破砕したり、細分化するのに最適に使用される場合、粘性が高い液体2、例えば、油を均質に混合処理する装置として使用される場合、さらには、汚泥を減容化処理する場合も本発明の適用範囲である。
【0056】
さらに、図示の上記実施形態1,2では、管路1内に取付けられる第1の加速部材3の大径部3bと、第2の加速部材6とは、略同径に形成されているけれども、必ずしもこれに限ることなく、第1の加速部材3の大径部3bと、第2の加速部材6とは何れか一方が、何れか他方に大径、または小径に形成される場合も本発明の適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、バラスト水等の海水に含まれる植物性または動物性のプランクトンのような微生物を殺滅したり、海水に浮遊する微細な固形物等の微細物を効率良く破砕したり、細分化することができ、装置自体は既存のポンプ設備や配管を変更することなくそのまま利用して施工性が良く、経済的であり、しかも小型化を達成して小型の船舶でも容易に建造が行え、設置面積は小面積であり、施工が容易に行えるという用途・機能に適する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は本発明の水中微細物等の処理装置の実施形態1を示す断面図である。
【図2】図2は同じく本発明の水中微細物等の処理装置の実施形態2を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 管路
2 液体
2′ 支流用液体
3 加速部材
3a 傾斜面
3b 大径部
4 空隙部
5 くびれ部
6 加速部材
7 スペーサ
50 円錐管
51 支流水流入管
C1 負圧
C2 負圧
G 気体
P1 ポンプ
P2 ポンプ
R 半径方向
X 軸長方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を流す管路内の軸長方向の所望位置に設けられるとともに、外周面には該管路の内部断面積を次第に狭めることにより前記液体を高速流となす傾斜面を有した第1の加速部材と、該第1の加速部材の下流側には前記管路内に負圧を発生させる空隙部を半径方向に有する小径なくびれ部を介して前記第1の加速部材の後段に再び前記管路の内部断面積を狭める第2の加速部材を連設し、前記高速流が前記空隙部と前記第2の加速部材の終端の設置位置を通過するのに伴う負圧が発生することにより生ずるキャビテーションにより起こされる衝撃力により液体中の微生物、微細な固形物等の微細物を破砕もしくは細分化する等の処理を行うか、または、前記液体を混合処理することを特徴とする水中微細物等の処理装置。
【請求項2】
前記第1の加速部材が円錐体であり、第2の加速部材が円柱体であることを特徴とする請求項1に記載の水中微細物等の処理装置。
【請求項3】
前記第1の加速部材と、前記第2の加速部材とは前記くびれ部を介して一体に形成されるか、またはスペーサとしての前記くびれ部を介して個別の前記第1の加速部材と、前記第2の加速部材とが連設されることを特徴とした請求項1または2に記載の水中微細物等の処理装置。
【請求項4】
前記液体が、気体を液体に析出可能なようにあらかじめ気体を溶解させた被処理水として処理されることを特徴とする請求項1−3の何れかに記載の水中微細物等の処理装置。
【請求項5】
前記第1の加速部材が、円錐管に形成され、支流用液体に気体を溶解するか、または支流用液体に微細な気泡を析出させた状態で前記円錐管内に設けた支流水流入管を通じて前記円錐管の大径部の背部に位置する前記空隙部へ供給させることを特徴とする請求項1−4の何れかに記載の水中微細物等の処理装置。
【請求項6】
前記気体が、殺菌に有効なオゾンであることを特徴とする請求項1−5の何れかに記載の水中微細物等の処理装置。
【請求項7】
前記第1の加速部材と前記第2の加速部材とにより構成される水中微細物等の処理装置の複数が、並列に、または直列に前記管路内に設けられたことを特徴とする請求項1−6の何れかに記載の水中微細物等の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−246441(P2008−246441A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93935(P2007−93935)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000205144)大晃機械工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】