説明

水中敷設シート

【課題】安価で、敷設する表面の凹凸に密着できるようにした水中敷設シートを提供する。
【解決手段】本水中敷設シート1は、シート材2に、該シート材2の一部を折り返してなるタック部4を複数設けたので、敷設する表面の凹凸に密着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底を埋め立て、そこに護岸や岸壁等の構築物を構築するに際し、埋め立てに利用された土石等の埋め立て材が構築された構築物との隙間から漏出するのを防ぐために埋め立て材を覆ったり、その他各種の水中の基礎を覆うために水中に敷設する防砂シートや遮水シート等の水中敷設シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一定の海域を埋め立てて陸地を築造する埋め立て工法は、基礎の上に護岸用函体を連続させて載置して、その連続する護岸用函体によって築造する陸地側に砕石等によって裏込め部を形成する。この裏込め部の表面の大きな凹凸をなくすために潜水作業によって表面の均し作業を行う。その後、裏込め部の表面全域にわたって織布等によるシートを敷き拡げて覆い、その上に埋め立て土砂を投入して陸地を築造しているが、該シートは限界伸長率が一般に25〜30%であるために裏込め部の表面に大きな凹凸があると、その凹凸の表面に沿って追従しきれず、シートが破損する結果となり埋め立て土砂が流出して護岸用函体の隙間から漏出してしまうという問題があった。
【0003】
この問題を対策すべき提案された従来技術として、特許文献1には、縦横の両方向に高伸長特性を有するシートが適用され、該シートが裏込め部の表面の凹凸面に沿って密着することで、埋め立て土砂の漏出を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−284132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る発明のシートは高価であり採用することが困難であった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、安価で、敷設する表面の凹凸に密着できるようにした水中敷設シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、シート材に、該シート材の一部を折り返してなるタック部を複数設けたことを特徴とするものである。
請求項1の発明では、水中敷設シートを水中の基礎、例えば、護岸用函体によって築造する陸地側に砕石等によって形成された裏込め部の凹凸した表面に敷設した際、水中敷設シートは複数のタック部が広がることにより表面の凹凸に沿って密着するようになる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記各タックは、折り返し部位を拘束部材により拘束して形成されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、シートに複数のタック部を容易に形成することができる。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した発明において、前記シート材に、帯状の前記拘束部材を複数接合することにより略矩形状の区画部を複数形成し、該各区画部の4辺それぞれに、前記タック部を複数形成することを特徴とするものである。
請求項3の発明では、水中敷設シートは、各区画部が複数のタック部の作用により広がることで水中の基礎表面の凹凸に沿って密着するようになる。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項2または3に記載した発明において、前記シート材の外周縁全域に帯状の前記拘束部材が接合され、該帯状の拘束部材には、隣接する前記水中敷設シートを接続するための接続手段が形成されることを特徴とするものである。
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した発明において、前記接続手段は面ファスナであることを特徴とするものである。
請求項4及び5の発明では、隣接する水中敷設シートを容易に接続することができ、水中の基礎表面を容易に覆うことが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中敷設シートによれば、シートに、帯状の拘束部材を複数使用して、シートの一部を折り返してなる複数のタック部を形成しているので、該水中敷設シートを水中の基礎表面の凹凸に沿って敷設すると、水中敷設シートは、各タック部が広がることにより基礎表面の凹凸に追従するように密着することができる。
これにより、従来の高伸長材を適用した高価なシートを採用する必要がないので、コスト削減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る水中敷設シートを示す平面図である。
【図2】図2は、本水中敷設シートの各区画部が広がった様子を示す斜視図である。
【図3】図3の(a)は、本水中敷設シートが比較的小さな砕石より形成された裏込め部の凹凸に追従して密着している様子を示し、(b)は本水中敷設シートが比較的大きな砕石より形成された裏込め部の凹凸に追従して密着している様子を示す図である。
【図4】図4は、隣接する水中敷設シートを接続する第1実施形態に係る接続手段を示す図である。
【図5】図5は、(a)は第2実施形態に係る接続手段を示す平面図で、(b)は側面図である。
【図6】図6は、(a)は第3実施形態に係る接続手段である、一方の水中敷設シートに形成される各開口部を示し、(b)は他方の水中敷設シートに固定される接続ピンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る水中敷設シート1は、図1に示すように、略矩形状のシート材2と、該シート材2に複数接合された帯状の拘束部材3と、該各帯状の拘束部材3によりシート材2の一部を折り返してなる複数のタック部4とを備えている。
【0014】
シート材2は、織布等で限界伸長率が20%〜30%の一般的なものが使用される。該シート材2は略矩形状に形成される。
【0015】
拘束部材3は、シート材2と同等の限界伸長率を有する織布等で構成され、所定幅で直線状に延びる帯状に形成される。該拘束部材3をシート材2の各対辺間に間隔を置いて複数接合することで、シート材2に略矩形状の区画部5を複数形成する。また、シート材2の外周の4辺にも帯状の拘束部材3が接合される。さらに、シート材2には、各拘束部材3が覆われる部位に各拘束部材3が延びる方向に間隔をおいて複数のタック部4が形成される。該タック部4は、シート材2の一部、すなわち、シート材2の拘束部材3が覆われる部位を拘束部材3が延びる側に折り返して、その状態を拘束部材3で拘束して構成される。タック部4は、シート材2に設けた略矩形状の各区画部5の4辺それぞれに複数形成されるようにする。本実施の形態では、タック部4は、各区画部5の4辺それぞれに3箇所ずつ形成されているが、敷設する凹凸面の具合によってその数量が適宜決定される。なお、シート材2と各拘束部材3とは縫合等により接合される。
【0016】
そして、図2に示すように、水中敷設シート1は、その各区画部5が外力を受けると各タック部4の作用によりそれぞれ独立して広がるようになる。
なお、拘束部材3に限界伸長率が50%以上の高伸長材を適用してもよく、また、拘束部材3を水に浸漬されると分解する素材で形成してもよい。また、シート材2と各拘束部材3とを縫合等により接合する際の縫合糸等の素材に前記高伸長材を適用してもよく、また、水に浸漬されると分解する素材を適用してもよい。
【0017】
シート材2の外周全域に接合された帯状の拘束部材3には、隣接する水中敷設シート1、1を接続するための接続手段6a〜6cが備えられる。
第1実施形態に係る接続手段6aは、図4に示すように、ループ状に密集して起毛した一方の面部材10aと、フック状に起毛した他方の面部材10bを面接触させることで両者を接合する面ファスナ10、すなわちマジックテープ(商標登録)で構成される。この第1実施形態の場合、一方の水中敷設シート1の外周に接合された拘束部材3をシート材2の外周から外方に突設させ、該突設部11の上下面から一方の面部材10aをそれぞれ突設させると共に、他方の水中敷設シート1の外周に接合された拘束部材3をシート材2の外周から外方に突設させ、該突設部11の上下面に他方の面部材10bをそれぞれ接合させて構成して、一方の面部材10aと他方の面部材10bとを面接触させることで、隣接する水中敷設シート1、1を接続する。
【0018】
また、第2実施形態に係る接続手段6bは、図5に示すように、隣接する水中敷設シート1、1の外周に接合された拘束部材3のそれぞれに、該拘束部材3が延びる方向に間隔置いて複数立設される接続フック12を互い違いに設け、該各接続フック12にロープ13をS字状に掛け回す形態である。この形態の場合、当然ながら、接続フック12には引っ掛けたロープ13の抜け防止のための抜け防止構造を採用したほうがよい。
【0019】
さらに、第3実施形態に係る接続手段6cは、図6に示すように、一方の水中敷設シート1の外周に接合された拘束部材3に、該拘束部材3の延びる方向に間隔を置いて設けた複数の開口部16(図6(a)参照)と、他方の水中敷設シート1の外周に接合された拘束部材3に固定された、一方の水中敷設シート1の各開口部16に対応する複数の接続ピン15(図6(b)参照)とから構成される。該接続ピン15は、プラスチック製で、一方の水中敷設シート1の各開口部16よりも若干大径の球部15aと、該球部15aと一体的に接続される軸部15bと、該軸部15bと一体的に接続され他方の水中敷設シート1の拘束部材3に接続されるベース部15cとからなる。そして、他方の水中敷設シート1の拘束部材3に設けた各接続ピン15を、一方の水中敷設シート1の拘束部材3に設けた各開口部16にそれぞれ挿入することで隣接する水中敷設シート1、1を接続する。
【0020】
なお、その他の接続手段として、図示は省略するが、隣接する水中敷設シート1、1の外周に接合された拘束部材3のそれぞれに、該拘束部材3の延びる方向に間隔を置いて複数の開口部を設け、両方の水中敷設シート1、1に設けた各開口部にからびな等のリング部材を挿通して隣接する水中敷設シート1、1を接続するようにしてもよい。
また、隣接する水中敷設シート1、1が接続される場合には、図5(b)に示すように、その接続範囲の下にもう一枚水中敷設シート1を敷設した方がよい。
【0021】
そして、図3(a)に示すように、本発明の実施の形態に係る水中敷設シート1を、水中の基礎、例えば、護岸用函体によって築造する陸地側に比較的小さな砕石等によって形成された裏込め部20の凹凸した表面に敷設した際、水中敷設シート1の各区画部5が複数のタック部4によりそれぞれ独立して凹凸した表面に沿って追従するように広がり凹凸した表面に密着するようになる。また、図3(b)に示すように、本水中敷設シート1を、比較的大きな砕石等によって形成された裏込め部20の凹凸した表面に敷設した場合でも、水中敷設シート1の各区画部5が複数のタック部4によりそれぞれ独立して凹凸した表面に沿って追従するように広がり密着するようになる。この結果、水中敷設シート1が破損して、埋め立て土砂が流出して護岸用函体の隙間から漏出することを抑制することができる。また、隣接する水中敷設シート1、1を接続する際には、各水中敷設シート1の外周に延びる帯状の拘束部材3を利用して設けた接続手段6a〜6cにより接続できるので、作業が容易となる。
【0022】
さらに、本発明の実施の形態に係る水中敷設シート1を用いることで、裏込め部20の凹凸を均す作業を必ずしも必要とせず、また、均し作業を行ったとしてもその均し精度を高く設定する必要がないので、潜水作業を軽減することが可能になる。
【0023】
なお、本実施形態では、シート材2に帯状の拘束部材3により複数のタック部4を同時に設けるように構成したが、各タック部4を別々に拘束する拘束部材を採用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 水中敷設シート,2 シート材,3 拘束部材,4 タック部,5 区画部,6a〜6c 接続手段,10 面ファスナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材に、該シート材の一部を折り返してなるタック部を複数設けたことを特徴とする水中敷設シート。
【請求項2】
前記各タックは、折り返し部位を拘束部材により拘束して形成されることを特徴とする請求項1に記載の水中敷設シート。
【請求項3】
前記シート材に、帯状の前記拘束部材を複数接合することにより略矩形状の区画部を複数形成し、該各区画部の4辺それぞれに、前記タック部を複数形成することを特徴とする請求項2に記載の水中敷設シート。
【請求項4】
前記シート材の外周縁全域に帯状の前記拘束部材が接合され、該帯状の拘束部材には、隣接する前記水中敷設シートを接続するための接続手段が形成されることを特徴とする請求項2または3に記載の水中敷設シート。
【請求項5】
前記接続手段は面ファスナであることを特徴とする請求項4に記載の水中敷設シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−162884(P2012−162884A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22807(P2011−22807)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)