説明

水中設置用火炎発生装置及び水中火炎発生方法

【課題】 水中若しくは水面で炎が燃えているような演出効果を期待でき、かつ、火炎が安定で水の汚染がない水中設置用火炎発生装置と水中火炎発生方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 上端が開口し、下端部が吸引ポンプに接続される内筒と;上端が開口し、前記内筒を内側に収容する外筒と;前記内筒と前記外筒の間の空間に旋回流を生じさせる旋回流発生手段と;一方の端部が気体の噴出口を備えた気体噴出部を有し、他方の端部が燃料ガス供給源に接続される送気管とを備え、前記気体噴出部が、前記内筒と同心で、前記内筒の上端よりも上方に突出した位置に配置されている水中設置用火炎発生装置、並びに当該装置を用いる水中火炎発生方法を提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中設置用火炎発生装置及び水中火炎発生方法に関し、詳細には、水中若しくは水面で炎が燃えているような演出効果を実現する水中設置用火炎発生装置と水中火炎発生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばレストランや庭園、舞台などにおける観賞用の火炎演出装置として、水面に火炎を発生させる装置が幾つか提案されている(特許文献1〜3参照)。しかし、これらの装置はいずれも、可燃性のガスを水中から気泡として水面に浮上させ、これに点火することによって水面に火炎を発生させるものであるので、火炎を保持するものがなく、火炎が不安定であり、例えば少し強い風などが吹くと、気泡として水面に浮上した可燃性ガスが飛散して炎が消えてしまうという欠点がある。また、可燃性のガスが気泡となって水中を通過するので、可燃性のガスが例えばLPGのように油性である場合には、水が汚染され、水面に油が浮くという不都合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−252380号公報
【特許文献2】特開2001−276443号公報
【特許文献3】特開2002−115797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の火炎演出装置における上記の不都合を解決するために為されたもので、水中若しくは水面で炎が燃えているような演出効果を期待でき、かつ、安定な火炎を発生することができるとともに、可燃性の燃料ガスが油性のものであっても水面に油が浮くことのない水中設置用火炎発生装置と水中火炎発生方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究と試行錯誤を重ね、その結果、可燃性のガスを気泡として水面に浮上させてこれに点火するのではなく、バーナとして機能する部材を水中に沈めておき、火炎発生時には、これらの部材がちょうど擂り鉢状の底に位置するような渦流を水面に発生させて、バーナとして機能する部材を水中から大気中に露出させ、これに点火することによって、あたかも水中又は水面で燃えているかのような演出効果を期待できる火炎を安定的に発生させることが可能であることを見出して本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、上端が開口し、下端部が吸引ポンプに接続される内筒と;上端が開口し、前記内筒を内側に収容する外筒と;前記内筒と前記外筒の間の空間に旋回流を生じさせる旋回流発生手段と;一方の端部が気体の噴出口を備えた気体噴出部を有し、他方の端部が燃料ガス供給源に接続される送気管とを備え、前記気体噴出部が、前記内筒と同心で、前記内筒の上端よりも上方に突出した位置に配置されている水中設置用火炎発生装置を提供することによって上記の課題を解決するものである。
【0007】
また、本発明は、先端部に気体の噴出口を備えた気体噴出部を有する送気管を水中に設置し、水面に前記気体噴出部を中心とする擂り鉢状の渦流を発生させることによって、前記気体噴出部を空気中に露出させ、前記送気管を介して前記気体噴出部に燃料ガスを供給し、空気中に露出した前記噴出口から噴出する燃料ガスに点火して火炎を発生させることを特徴とする水中火炎発生方法を提供することによって上記の課題を解決するものである。
【0008】
本発明の水中設置用火炎発生装置及び水中火炎発生方法においては、火炎発生時には、吸引ポンプによって内筒の下端部から内筒内の水を下方に吸引するとともに、旋回流発生手段によって内筒と外筒との間の空間に旋回流を発生させることにより、送気管の気体噴出部を中心とする擂り鉢状の渦流を水面に発生させる。旋回流の強さと、内筒の下端部から吸引する水の量を調整することによって、渦流の中心に位置する気体噴出部を空気中に露出させることができる。この状態で、気体噴出部の噴出口から噴出する燃料ガスに点火することによって火炎が発生する。気体噴出部の水面からの設置深さにもよるが、発生した火炎は、あたかも水中若しくは水面で燃えているような演出効果を与えることができる。しかも、燃焼する燃料ガスに対して噴出口を備える気体噴出部が保炎器として機能するので、火炎は安定で、風などによって吹き消されることがない。さらに、燃料ガスは気泡となって水中を通過しないので、燃料ガスが例えばLPGなどのように油性のものであっても、水が汚染されて水面に油が浮くこともない。
【0009】
内筒と外筒との間の空間内に旋回流を発生させる旋回流発生手段としては、どのような手段を用いても良いが、装置の構造を簡単にするという観点からは、外筒内に接線方向に開口する吐出口を有する吐出管と、この吐出管内に水を送り込む吐出ポンプを用いるのが好ましい。また、この旋回流発生手段における吐出ポンプは、内筒の下端部から内筒内の水を吸引する吸引ポンプと兼用するのが好ましく、兼用する場合には、内筒の下端部は旋回流発生手段における吐出ポンプの吸引側に接続されることになる。また、前記内筒の下端部と前記吸引ポンプとを接続する吸引管には、一方の端部が前記吸引管に接続され、他方の端部が当該水中設置用火炎発生装置が設置される水中内に開口する吸引流量調整用分岐管を設けるのが好ましい。なお、旋回流発生手段としては、上記のような吐出口と吐出ポンプに代えて、例えば、外筒内において内筒の周囲を旋回する旋回体を用いることもできる。
【0010】
送気管の他方の端部は、燃料ガス供給源に接続される。前記気体噴出部が空気中に露出して、気体噴出部に備えられた噴出口から空気中に噴出する燃料ガスに点火する場合には、送気管を介して気体噴出部に供給するガスは燃料ガスだけであっても十分に火炎を発生させることができる。必要に応じて、送気管の前記他方の端部を、燃料ガスの供給源だけでなく、空気の供給源にも接続しても良い。送気管の他方の端部が空気の供給源にも接続される場合には、例えば、送気管内に空気だけを送気して、送気管内や、特にその先端部の気体噴出部をパージして、燃料ガスの通路を確保した、また、本発明の水中設置用火炎発生装置が後述する有底容器を備える場合には、常に少量の空気を送気管を介して有底容器内に供給することによって、有底容器内を常時空気が存在する乾いた状態に保つことができる。さらには、適宜の量の空気を燃料ガスとともに送気管に供給し、噴出口から噴出させ、これに点火するようにしても良い。火炎を発生させることが出来る限り燃料ガスに混入させる空気の量には特段の制限はないが、空気を混入させる場合には、燃料ガスに対する空気の量は、理論空気量の30%未満が好ましく、より好ましくは10%程度とするのが良い。
【0011】
また、本発明の水中設置用火炎発生装置は、その好ましい一態様において、前記気体噴出部を内部に収容する、倒立状態で設置された有底容器と、前記有底容器の内部であって、前記噴出口の近傍に配置された点火装置とを備えている。本発明の水中設置用火炎発生装置が、このような有底容器を備えている場合には、送気管を介して気体噴出部に例えば少量の空気を供給して噴出口から噴出させることによって、倒立状態にある有底容器内を常時空気が存在する状態に維持することができる。このため、有底容器内に配置される気体噴出部や点火装置は、本発明の水中設置用火炎発生装置を水中に設置した状態でも、水に浸かることがなく、濡れることがないので、必要時に点火装置を作動させて噴出口から噴出する燃料ガスに点火することができる。また、上記のような有底容器が設けられている場合には、気体噴出部は常に空気中に存在するので、気体噴出部の噴出口から送気管内に水が浸入することもない。
【0012】
本発明の水中設置用火炎発生装置は、一台若しくは複数台が水槽内に設置されて使用される。本発明の水中設置用火炎発生装置を備えた水槽の設置場所には特段の制限はなく、例えば、レストラン、庭園、ホテル、舞台、施設のアプローチ、屋上、遊園地など、本発明の水中設置用火炎発生装置による火炎の発生が求められる限り、如何なる場所に設けられた水槽であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水中設置用火炎発生装置及び水中火炎発生方法によれば、水中若しくは水面で炎が燃えているような演出効果を期待できる火炎を、安定的に、かつ、水の汚染なく発生させることができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の水中設置用火炎発生装置の一例を示す側面断面図である。
【図2】外筒及び内筒を吐出口を含む平面で切断した水平断面図である。
【図3】送気管の端部とその周辺部を拡大して示す断面側面図である。
【図4】本発明の水中設置用火炎発生装置が動作を開始して渦流が発生した状態を示す図である。
【図5】本発明の水中設置用火炎発生装置が動作を継続して渦流が十分に成長し火炎が発生している状態を示す図である。
【図6】本発明の水中設置用火炎発生装置の他の一例を示す側面断面図である。
【図7】図6における有底容器とその周辺部のみを拡大して示す断面側面図である。
【図8】本発明の水中設置用火炎発生装置が火炎を発生している状態を示す図である。
【図9】本発明の水中設置用火炎発生装置が動作を開始して渦流が発生した状態を示す図である。
【図10】本発明の水中設置用火炎発生装置が動作を継続して渦流が十分に成長し火炎が発生している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0016】
図1は本発明の水中設置用火炎発生装置の一例を示す側面断面図である。図1において、1は本発明の水中設置用火炎発生装置、Tは水槽、Wは水槽Tに蓄えられている水、Dは水槽Tに設けられたオーバーフロー用の排水口である。図に示すとおり、本発明の水中設置用火炎発生装置1は水W中に設置して使用される。2は送気管、2aは送気管2の一方の端部であり、略垂直に上方に向かって伸び、その先端部には気体噴出部3が取り付けられている。
【0017】
4、4、4は、気体噴出部3に設けられた噴出口である。図では噴出口4は3個しか示されていないが、本例においては、気体噴出部3には水平平面上で互いに90度の間隔をあけて計4個の噴出口4が備えられている。また、本例においては、噴出口4、4は水平方向に開口しているが、垂直方向に開口していても良く、斜め上方に向かって開口しても良い。さらに本例においては、気体噴出部3は、送気管2とは別体に形成され、送気管2の端部2aの先端部に取り付けられているが、気体噴出部3は送気管2の端部2aの先端部と一体に形成し、端部2aの先端部に直接噴出口4、4、4を形成しても良い。
【0018】
なお、送気管2の端部2a及び気体噴出部3の水平断面形状は通常円形であり、円形が最も好ましいが、端部2a及び気体噴出部3のいずれか一方又は双方の水平断面形状は必ずしも円形には限られず、楕円形や、三角形、四角形等の多角形であっても良い。
【0019】
2bは送気管2の他方の端部であり、他方の端部2bは、燃料ガスの供給源5、及び空気の供給源であるブロア6にも接続されている。ただし、本発明の水中設置用火炎発生装置1においては、空気の供給源であるブロア6は必ずしも必須のものではなく、送気管2の他方の端部2bは燃料ガスの供給源5に接続されるだけでも良い。7、7は逆止弁、8は流量調整弁、9は開閉弁である。2cは、端部2aとは反対に下向きに伸びる水抜き用の端部であり、端部2cの下端は、開口10として下方に向かって開口している。11は、端部2cの先端部に収容されている中空のボールであり、水中では浮力によって上方の弁座12に向かって上昇し、弁座12の開口を閉止して、水Wが端部2cの開口10からさらに送気管2内に流入するのを防止するボール弁として機能する。
【0020】
13は内筒であり、気体噴出部3、及び送気管2の端部2aと同心に配置されている。内筒13の内径は、送気管2の端部2aの外径よりも大きく、また、気体噴出部3の外径よりも大きくするのが望ましい。また、図に示すとおり、内筒13の上端13aは開口しており、気体噴出部3は内筒13の上端13aよりも上方に突出した位置に配置されている。このため、内筒13の内周と端部2aの外周との間には間隙が存在し、この間隙を介して、内筒13の内部の空間は内筒13の上部の空間と連通している。内筒13の断面形状は通常円形であり、円形が最も好ましいが、その内側に配置される送気管2の端部2aや、内筒13の上端13aよりも上方に配置される気体噴出部3の断面形状に合わせて適宜の形状とすることができる。また、図示の例では、内筒13の上端13aは完全な開口状態となっているが、送気管2の端部2aと内筒13の間のドーナツ状の空間を閉塞する部材を内筒13の上端に取り付け、その閉塞部材の適宜の箇所に孔を設けて開口としても良い。内筒13の下端13bは、接続管14及び吸引管15を介して、吸引ポンプPに接続されている。16は吸引管15の途中に設けられた流量調整弁であり、13cは内筒13の下部壁面に設けられた渦流調整用の開口である。
【0021】
17は上端が開口している外筒であり、外筒17は内筒13の外径よりも大きな内径を有し、内筒13と同心に配置される。外筒17の断面形状は通常円形であり、円形が最も好ましいが、その内側に配置される内筒13の断面形状に合わせて適宜の形状とすることができる。また、図示の例では外筒17は有底であるが、外筒17の下端は開口していても良い。ただし、外筒17内に後述する旋回流を効率良く発生させるためには、外筒17は下端が閉塞された有底のものであるのが望ましい。
【0022】
18は吐出管であり、吐出管18は、その一方端に外筒17内に接線方向に開口する吐出口19を有し、他方端は吸引ポンプPの吐出側出口に接続されている。したがって、本例においては、吸引ポンプPは、吸引管15を介して、内筒13内の水を吸引する吸引ポンプとして機能するだけでなく、吐出管18内に水を送り込む吐出ポンプとしても機能することになる。
【0023】
図2は、外筒17及び内筒13を、吐出口19を含む平面で切断した水平断面図である。図2に示すとおり、吐出ポンプを兼ねる吸引ポンプPによって吐出管18内に水を送り込むと、送り込まれた水は、外筒17の接線方向に開口する吐出口19から外筒17内に吐出され、内筒13と外筒17との間の空間内に旋回流Rを発生させる。このように、本例においては、吐出ポンプを兼ねる吸引ポンプP、吐出管18、及び吐出口19が、外筒17内に旋回流を発生させる旋回流発生手段を構成している。なお、吸引ポンプPに吐出管18内に水を送り込む吐出ポンプの機能を兼ねさせる代わりに、吐出ポンプP’を吸引ポンプPとは別に設けても良いことは勿論である。
【0024】
図1に戻って、20は吸引管15から分岐する吸引流量調整用分岐管である。図1に示すとおり、吸引流量調整用分岐管20の一端は、流量調整弁21を介して吸引管15に接続され、他端は水槽Tの水W内に開口している。この吸引流量調整用分岐管20が設けられている場合には、流量調整弁21を調整することによって、吸引ポンプPの吸引量を一定に保ちつつ、内筒13内から吸引される水量を適宜変更することができる。すなわち、流量調整弁21を調整することによって、吸引ポンプPが水槽Tから直接吸引する水量を変更することができ、その結果、吸引ポンプPの吸引量が一定である場合には、吸引ポンプPによって内筒13内から吸引される水量を変えることができる。このように、流量調整弁21を調整することによって、吐出管18から吐出口19を介して外筒17内に送出される水量と吸引管15を介して内筒13内から吸引される水量との比を変更することができるので、それに応じて発生する擂り鉢状の渦の形状を変えることができる。これは最適な形状の渦を発生させる上で極めて好都合である。なお、吸引ポンプPとは別に吐出ポンプP’が設けられている場合には、吸引ポンプPの吸引量と吐出ポンプP’の吐出量の比を変えることによっても発生する渦の形状を変えることができる。
【0025】
内筒13の下部壁面に設けられた渦流調整用の開口13cの機能も同様である。内筒13の下部壁面に渦流調整用の開口13cが設けられている場合には、内筒13の下端13bから吸引される水量の一部を内筒13の下部壁面に設けられた開口13cから内筒13内に吸い込ませることができるので、上端13aの開口から内筒13内に吸引される水量を減らして、発生する渦流の形状を調整することができる。なお、開口13cを着脱自在な閉塞栓によって適宜開閉したり、種々の大きさの開口13cを設けておいて、それぞれを閉塞栓で適宜開閉することによって、内筒13の上端13aの開口から吸引される水量を調節するようにしても良い。
【0026】
図3は図1における送気管2の端部2a、2cとその周辺部のみを拡大して示す断面側面図であり、図1におけると同じ部材には同じ符号を付してある。送気管2から供給されたガスは、図中矢印で示すように、端部2a内を上昇し、噴出口4、4、4・・・から噴出する。噴出口4、4、4・・・から噴出するガスが燃料ガスである場合には、これに適宜の手段で点火することによって、図にFで示す火炎が発生する。送気管2から供給される燃料ガスには、適宜空気を混入しても良いが、赤くゆらめく火炎Fを発生させるには、混入させる空気の量は少ない方が好ましく、通常、理論空気量の30%未満が好ましく、より好ましくは10%程度である。噴出口4、4、4・・・を備えた気体噴出部3が保炎体として機能するので、発生した火炎Fは安定で、多少の風があっても消えることがない。
【0027】
一方、送気管2の水抜き用の端部2c内には、中空のボール11が収容されている。ボール11は、本発明の水中設置用火炎発生装置1が水中にあるときには浮力によって上昇して弁座12の開口を閉塞する。また、後述するとおり、気体噴出部3が水面から空中に露出して、送気管2から燃料ガス及び/又は空気が供給された場合には、供給されたガスの圧力によって、気体噴出部3及び端部2a内に存在した水は、その一部が噴出口4、4、4・・・から外部へと排出されるとともに、他の一部は、供給されたガスの圧力によってボール11が下方へと押し下げられることに伴い、水抜き用端部2c内に存在した水とともに、弁座12を通過して、開口10から内筒13の外部へと排出される。
【0028】
以下、図4及び図5を用いて、本発明の水中設置用火炎発生装置1の動作を説明する。本発明の水中設置用火炎発生装置1を用いて火炎Fを発生させるには、まず、本発明の水中設置用火炎発生装置1を適宜の水W中に設置した状態で、吸引ポンプPを作動させる。吸引ポンプPが作動すると、図4に示すように、吸引管15を介して、内筒13内の水が内筒13の下端13bから吸引される。内筒13内の水が下端13bから吸引管15内へと吸引されると、その不足分を補うために、内筒13の上端13aの内周と送気管2の端部2aの外周との間隙から、水槽T内の水Wが内筒13内に吸引される。これにより、気体噴出部3及び端部2aの周囲には、内筒13内へと向かう下向きの水流が発生する。
【0029】
上記吸引管15を介しての吸引と同時に、吸引ポンプPは、吐出管18を介して、吐出口19から外筒17内に水を吐出し、外筒17内に旋回流Rを発生させる。この旋回流Rと、上記気体噴出部3及び端部2aの周囲に発生する内筒13内へと向かう下向きの水流とが相俟って、気体噴出部3の周囲には、気体噴出部3や端部2aを中心として、それらを擂り鉢状の底とする渦流Sが発生する。図4に示す状態は、渦流Sが発生し、気体噴出部3の頂部が水中から空気中に露出した状態を示している。
【0030】
図5は、吸引ポンプPがさらに動作を継続し、渦流Sが十分に成長した状態を示している。すなわち、渦流Sが十分に成長すると、図5に示すように、気体噴出部3はもとより、送気管2の端部2aの一部が空気中に露出し、この状態であれば、渦流Sの形状が多少変動しても気体噴出部3の噴出口4にまで水Wが到達して、火炎Fが消えたり、不安定になったりする恐れがない。渦流Sが十分に成長した状態で、流量調整弁8及び開閉弁9を操作して、燃料ガスの供給源5からの燃料ガスを送気管2内に送出する。送気管2内に送り込まれた燃料ガスは、送気管2内の水を、気体噴出部3の噴出口4及び端部2cの開口10から外部へと排出しつつ送気管2内を進行し、端部2a内を上昇して噴出口4から空気中へと噴出する。この噴出した燃料ガスに適宜の点火装置によって点火すると、図に示すとおり火炎Fが発生する。噴出口4を備えた気体噴出部3は水槽Tの水面よりも下に位置しているので、気体噴出部3上に発生する火炎Fは、あたかも、水中若しくは水面から発生しているように見える。なお、送気管2内の水を外部に排出するには、燃料ガスを送気管2内に供給するに先だって、ブロア6を作動させ、空気を送気管2内に供給して、送気管2内の水を気体噴出部3の噴出口4及び端部2cの開口10から外部へと排出するようにしても良い。
【0031】
なお、渦流Sが十分に成長したか否かの判別は、例えば、気体噴出部3の外周と、内筒13若しくは外筒17との間の電気抵抗をモニターするなどして検知することも可能であるが、吸引ポンプPの作動開始から渦流Sが十分に成長するまでの時間を準備時間として予め計測しておいて、吸引ポンプPの作動時間が前記予め計測された準備時間を超えたときに、渦流Sが十分に成長したと判断するのが簡便で好ましい。また、上記渦流Sが十分に成長したとの判断や、その後の流量調整弁7及び開閉弁8の操作などは、操作員が人力で行っても良いが、適宜の記憶装置と演算装置を備えた制御装置を設け、この制御装置に行わせるのが好ましい。併せて、吸引ポンプPの動作や、流量調整弁16、21の調整も、操作員が人力で行っても良いが、適宜の記憶装置と演算装置を備えた制御装置を設け、この制御装置に行わせるのが好ましい。
【0032】
図6は、本発明の水中設置用火炎発生装置1の他の一例を示す側面断面図である。これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。本例においては、主として、有底容器22、点火装置23、電源26、燃焼ガス誘導筒27、及び保炎板28が設けられている点が、先に説明した水中設置用火炎発生装置と異なっている。すなわち、図6において、22は有底容器であり、有底容器22は、送気管2の端部2aを内部に収容するように、底部が上となる倒立状態で設置されており、下方に向かって開口している。有底容器22は有底であるので、内部に空気を蓄えることができる。図中Aが有底容器22の内部に蓄えられている空気を示している。有底容器22の断面形状は通常円形であり、円形が最も好ましいが、角が丸い四角形や、5角形、6角形等の多角形、楕円形、長円形などであっても良い。
【0033】
23は点火装置、24は点火装置23の保護管、25は点火装置23に電圧を供給する導通線であり、導通線25の先端は電源26に接続されている。点火装置23としては、電源26からの電圧又は電流の供給を受けて燃料ガスに点火することができるものであればどのような点火装置を用いても良く、例えば、放電に伴う火花によって燃焼ガスに点火する点火プラグや、赤熱時の熱で燃焼ガスに点火するヒータなどを用いることができる。本例においては、送気管2の端部2a内に点火装置23の保護管24が内挿されており、保護管24の外周と、送気管2の端部2aの内周との間が、燃料ガスの噴出口4となっている。したがって、本例においては送気管2の端部2aの上端部が噴出口4を備えた気体噴出部3ということになる。
【0034】
27は燃焼ガス誘導筒であり、有底容器22の外周と間隙をあけて、有底容器22と同心に配置されている。燃焼ガス誘導筒27の断面形状は通常円形であり、円形が最も好ましいが、その内側に配置される有底容器22の断面形状に合わせて適宜の形状とすることができる。28は燃焼ガス誘導筒27の上面に取り付けられた保炎板である。なお、有底容器22も保炎器として機能するので、燃焼ガス誘導筒27と保炎板28は必ずしも必要というわけではないが、火炎を安定させるためには設けられているのが好ましい。
【0035】
図7は図6における有底容器22とその周辺部のみを拡大して示す断面側面図である。図に示すとおり、本例においては、噴出口4は、保護管24の外周と送気管2の端部2aの内周との間隙として形成されている。この間隙の形状は、保護管24の外周断面が円形であり、かつ、端部2aの内周断面が円形である場合には、ドーナツ状となる。このドーナツ状の間隙をそのまま燃料ガス等の噴出口4として用いても良いし、複数の孔を備えたドーナツ状の部材で塞ぎ、そのドーナツ状の部材に設けられた複数の孔を噴出口としても良い。送気管2の端部2a内に供給された燃料ガス等のガスは、噴出口4から有底容器22内に噴出することになる。
【0036】
点火装置23が点火プラグである場合には、電極29が設けられる。前述した電源26から所定の電圧が導通線25を介して点火プラグである点火装置23に印加されると、点火プラグである点火装置23と電極29との間で放電が発生し、周囲に噴出する燃料ガスに点火することができる。なお、点火装置23が点火プラグでない場合には、電極29は設ける必要はない。30は燃焼ガス誘導筒27の上端に設けられた開口、tは内筒13の上部内周と燃焼ガス誘導筒27の下部外周との間の間隙である。
【0037】
図8は、燃料ガスが燃焼し、火炎を発生している状態を示す図である。図8に示すとおり、流量調整弁8及び開閉弁9を操作して、燃料ガスの供給源5からの燃料ガスを送気管2内に送出すると、燃料ガスは送気管2の端部2aの先端部に形成された噴出口4から有底容器22内に噴出する。ブロア6を作動させることによって、送気管2内に供給する燃料ガスには、必要に応じて適宜の量の空気を混入させることができる。混入させる空気の量には特段の制限はないが、赤くゆらめく火炎を発生させるには空気の混入量は少ない方が良く、通常は理論空気量の30%未満、好ましくは10%程度である。なお、端部2aの直下には水抜き用の端部2cとその開口10が存在するが、端部2cの内部には中空ボール11が存在し、水中では浮力によって弁座12を閉塞しているので、送気管2内に供給された燃料ガスが端部2cの開口10から外部に漏れることはない。
【0038】
噴出口4から噴出した混合ガスは点火装置23によって点火され、燃焼ガスとなって有底容器22内を上昇する。有底容器22内を上昇する燃焼ガスは、図中矢印で示すとおり、有底容器22の上部で進行を妨げられて向きを変え、一旦下方に向かった後、有底容器22の外周と燃焼ガス誘導筒27の内周との間を抜けて、燃焼ガス誘導筒27の上部開口30から外部に噴出する。開口30から外部に噴出した燃焼ガスは、空気と接触して炎となって保炎板28の下面に沿って側方に広がり、保炎板28の上方に火炎Fを発生させる。
【0039】
以下、図9及び図10を用いて、本例の水中設置用火炎発生装置1の動作を説明する。本例の水中設置用火炎発生装置1の動作は、基本的に先に図4、図5を用いて説明した水中設置用火炎発生装置1の動作と同じであり、まず、本例の水中設置用火炎発生装置1を適宜の水W中に設置した状態で、吸引ポンプPを作動させると、図9に示すように、吸引管15を介して、内筒13内の水が内筒13の下端13bから吸引され、その不足分を補うために、内筒13の上部内周と燃焼ガス誘導筒27の下部外周との間隙tから、水槽T内の水Wが内筒13内に吸引される。これにより、燃焼ガス誘導筒27の周囲には、内筒13内へと向かう下向きの水流が発生する。
【0040】
上記吸引管15を介しての吸引と同時に、吸引ポンプPは、吐出管18を介して、吐出口19から外筒17内に水を吐出し、外筒17内に旋回流Rを発生させる。この旋回流Rと、上記燃焼ガス誘導筒27の周囲に発生する内筒13内へと向かう下向きの水流とが相俟って、燃焼ガス誘導筒27の周囲には、有底容器22や燃焼ガス誘導筒27を中心として、それらを擂り鉢状の底とする渦流Sが発生する。図9に示す状態は、渦流Sが発生し、保炎板28と、燃焼ガス誘導筒27の上部とが空気中に露出した状態を示している。この状態でも、噴出口4から燃料ガスを噴出させ、これに点火して、火炎Fを発生させることが可能であるが、渦流Sの大きさが十分ではなく、安定性に欠けるので、実際には、吸引ポンプPの動作をさらに継続させて、渦流Sを十分に成長させるのが好ましい。
【0041】
図10は、吸引ポンプPがさらに動作を継続し、渦流Sが十分に成長した状態を示している。すなわち、渦流Sが十分に成長すると、図10に示すように、保炎板28はもとより、燃焼ガス誘導筒27のほぼ全体が空気中に露出し、この状態であれば、渦流Sの形状が多少変動しても燃焼ガス誘導筒27の上部にまで水Wが到達して、火炎Fが消えたり、不安定になったりする恐れがない。渦流Sが十分に成長した状態で、流量調整弁8及び開閉弁9を操作して、燃料ガスの供給源5からの燃料ガスを送気管2内に送出し、端部2aの先端部の噴出口4から有底容器22内に噴出させる。タイミングを合わせて電源26を操作することにより、点火装置23によって点火され、前述したとおり、保炎板28上に火炎Fを発生させる。保炎板28は水槽Tの水面よりも下に位置しているので、保炎板28上に発生する火炎Fは、あたかも、水中若しくは水面から発生しているような演出効果が得られる。なお、流量調整弁8及び開閉弁9の操作と相前後してブロア6を作動させ、送気管2内に燃料ガスとともに、適宜の量の空気を送出しても良いことは前述したとおりである。
【0042】
なお、渦流Sが十分に成長したか否かの判別は、例えば、有底容器22の下部外周と、燃焼ガス誘導筒27の下部内周との間の電気抵抗をモニターするなどして検知することも可能であるが、先に示した例におけると同様に、吸引ポンプPの作動開始から渦流Sが十分に成長するまでの時間を準備時間として予め計測しておいて、吸引ポンプPの作動時間が前記予め計測された準備時間を超えたときに、渦流Sが十分に成長したと判断するのが簡便で好ましい。渦流Sが十分に成長したとの判断や、その後の流量調整弁8及び開閉弁9を操作、並びに電源26の操作などは、操作員が人力で行っても良いが、適宜の記憶装置と演算装置を備えた制御装置を設け、この制御装置に行わせるのが好ましい。併せて、吸引ポンプPの動作や、流量調整弁16、21の調整も制御装置に行わせる場合には、本例の水中設置用火炎発生装置1を、予め定められた時刻やタイミングに合わせて自動的に作動させ、火炎Fを発生させることが可能である。
【0043】
このように、本例の水中設置用火炎発生装置1は、ブロア6、電源26、吸引ポンプPを初め、流量調整弁8、16、21、開閉弁9などの動作や、渦流Sが火炎Fを発生させるに十分に成長したか否かの判断を、全て制御装置に行わせることができるので、複数台を水中に設置して、自動的に運転することができる。すなわち、制御装置に予め種々のプログラムを入力、設定しておくことによって、例えば、複数台の水中設置用火炎発生装置1から毎日同じ時刻に一斉に火炎Fを発生させたり、消火したり、複数台の水中設置用火炎発生装置1から順次タイミングをずらして火炎Fを発生させたり、消火したりして、種々の演出効果を実現することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明の水中設置用火炎発生装置及び水中火炎発生方法によれば、水中若しくは水面で燃えているかのように見える火炎を、安定に、かつ、水の汚染なく発生させることができるので、レストランや庭園、舞台等、種々の場面において、水中若しくは水面火炎の効果を演出することができ、多大なる産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0045】
1 水中設置用火炎発生装置
2 送気管
3 気体噴出部
4 噴出口
5 燃料ガス供給源
6 ブロア
7 逆止弁
8、16、21 流量調整弁
9 開閉弁
10、30 開口
11 中空ボール
12 弁座
13 内筒
14 接続管
15 吸引管
17 外筒
18 吐出管
19 吐出口
20 吸引流量調整用分岐管
22 有底容器
23 点火装置
24 保護管
25 導通線
26 電源
27 燃焼ガス誘導筒
28 保炎板
29 電極
A 空気
D オーバーフロー用排水口
F 火炎
P 吸引ポンプ
R 旋回流
S 渦流
T 水槽
W 水
t 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が開口し、下端部が吸引ポンプに接続される内筒と;上端が開口し、前記内筒を内側に収容する外筒と;前記内筒と前記外筒の間の空間に旋回流を生じさせる旋回流発生手段と;一方の端部が気体の噴出口を備えた気体噴出部を有し、他方の端部が燃料ガス供給源に接続される送気管とを備え、前記気体噴出部が、前記内筒と同心で、前記内筒の上端よりも上方に突出した位置に配置されている水中設置用火炎発生装置。
【請求項2】
前記旋回流発生手段が、前記外筒内に接線方向に開口する吐出口を有する吐出管と、前記吐出管内に水を送り込む吐出ポンプを含んでいる請求項1記載の水中設置用火炎発生装置。
【請求項3】
前記吐出ポンプが前記吸引ポンプを兼ねており、前記内筒の前記下端部が前記吐出ポンプの吸引側に接続されている請求項2記載の水中設置用火炎発生装置。
【請求項4】
前記内筒の下端部と前記吸引ポンプとを接続する吸引管と、一方の端部が前記吸引管に接続され、他方の端部が当該水中設置用火炎発生装置が設置される水中内に開口する吸引流量調整用分岐管を備えている請求項1〜3のいずれかに記載の水中設置用火炎発生装置。
【請求項5】
前記送気管の前記他方の端部が空気の供給源にも接続される請求項1〜4のいずれかに記載の水中設置用火炎発生装置。
【請求項6】
前記気体噴出部を内部に収容する、倒立状態で設置された有底容器と;前記有底容器の内部であって、前記噴出口の近傍に配置された点火装置とを備えている請求項1〜5のいずれかに記載の水中設置用火炎発生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の水中設置用火炎発生装置を1台若しくは複数台設置してなる水槽。
【請求項8】
先端部に気体の噴出口を備えた気体噴出部を有する送気管を水中に設置し、水面に前記気体噴出部を中心とする擂り鉢状の渦流を発生させることによって、前記気体噴出部を水中から空気中に露出させ、前記送気管を介して前記気体噴出部に燃料ガスを供給し、空気中に露出した前記噴出口から噴出する燃料ガスに点火して火炎を発生させることを特徴とする水中火炎発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−107795(P2012−107795A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256208(P2010−256208)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000173359)細山熱器株式会社 (12)
【Fターム(参考)】