説明

水中重量物の降下および浮上方法

【課題】海底資源を揚鉱する際に、輸送手段として、重力と浮力と水圧を利用する資源回収艇であって、降下及び浮上の際に発生する流体エネルギーは水力発電に供され、内部電源や海底掘削用電源あるいは洋上や陸地の作業用電力として用いられる潜水艇の技術を提供する。
【解決手段】潜水艇の外部には浮力体2が備えられ、潜水艇内のボンベ11の液化ガスを気化して浮力体に圧入して浮力剤とする。浮力体内のガス圧と水圧は常に平衡が保たれるように制御され、艇の降下時は浮力体内のガスを圧縮・液化してボンベに格納し、浮上する時は浮力体の体積を膨張させながら浮上する。浮上時に艇船尾に備えたフック7に海底の重量物を複数個連結して浮上させる。また艇船尾に具備したスクリュー5に連動した発電機10で電力を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
深海底や湖底の鉱物資源を水上までの輸送手段として、降下には潜水艇(カプセル)内のボンベに圧入した液化気体を錘として用い、浮上には錘として用いた液化ガスを気化させ、浮力体に移行して、ガスの二態現象(気体が液化して性質が変態する現象)を水底水面間の往復に利用した重量物の降下および浮上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海底や海底の地盤中にはマンガン団塊、マンガンクラスト、海底熱水鉱床などの鉱物資源
が開発を待っている。これら鉱石は、八丈島、小笠原諸島など南方海域の調査で、我が国の排他的経済水域内に分布が確認されている。本願発明者による非特許文献1の「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え <風力発電による海洋資源回収と洋上工場>」に示してあるように、海底熱水鉱床には、すず、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、鉛、金、銀、マンガン、アンチモン、ビスマス、水銀、ウラン、蛍石などの金属や非金属現が豊富であり、マンガンクラストに含有するコバルトの量はマンガン団塊の3倍以上である。コバルトは純金属としての用途よりも、合金としての用途が高く、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステンなどに、コバルトを20〜65%加えた合金は高温でも耐摩耗性と耐食性に優れ、ジェット機やガスタービンに用いられている。また、鉄、ニッケルと共に強磁性体のコバルトは磁性合金としても有用である。そのほかにコバルト合金は非常に硬く丈夫なため、切削工具としても広く使われている。このように高性能合金に必要なコバルトは年間生産量の大半がアフリカ大陸のザンビアに偏存している。このため、海底に広く分布するマンガンクラストは各国の注目の的になっている。マンガンクラストの主要産地は沖ノ鳥島や南鳥島周辺や南太平洋から太平洋中央部の海山の山頂や斜面に分布している。このマンガンクラストは、マンガン団塊が水深4,000〜6,000mの海底に存在しているのに対し、水深500〜2,500m付近の海山の斜面に、約10cm厚の薄膜状海底鉱床として存在する。しかも、マンガン団塊の埋蔵量は、モアー博士らの推定結果によれば、約5,000億トンである。これを最近の世界の年間消費量で計算すれば、マンガン14万年、ニッケル7万年、銅2千年、コバルト42万年分の供給量に匹敵するといわれている。しかも、深海とはいえ、場所を選べば海底をすくうだけで高品位な希少金属を採取することが可能なため、多くの国が商業化を見込み、鉱区を設定し、調査・研究と実用的な採取法の開発にしのぎを削っている。日本近海では、大東沖・沖大東海嶺に分布している。さらに排他的経済水域以外のハワイ南東方から東にかけての中部太平洋域にも、2ヶ所で北海道と同じ面積の鉱区を取得している。我が国の他にも、中国、韓国、フランス、ロシア、ドイツも国連海洋条約の下で鉱区を取得している。
しかし、これら鉱物資源は水深1000mから6000mに存在するため、100から600気圧下での採掘作業や輸送の技術的問題がネックとなり、1気圧以下の宇宙開発に比べると、極端に開発が遅れている。しかし昨今の資源高と資源の枯渇は、海底開発に拍車をかけ、世界中で深海調査が行われている。わが国の有人深海調査船「しんかい2000」が2003年引退し、その後継機として潜行深度6,000メートル、乗員2名(パイロットを含めて3名)、0.7m/秒の速度で、2時間かけて6,500メートルまで潜行可能な「しんかい6000」が活躍している。又、無人探査機として「かいこう」や「うらしま」など5艇があり、潜行深度は「かいこう」が7,000メートル、これに積み込んだ子機「ランチャー」は11,000メートルの潜行記録がある。外国でもアメリカの4,500メートル調査艇「アルピン」などがあるが、いずれも調査のみであって、深海鉱物資源の採掘艇は無い。
海底鉱物資源の採掘に関しては本願発明者による特許文献1「海洋資源エネルギー抽出・生産海洋工場」において風力発電や潮流発電などの流体エネルギーから得られた電力により、マンガンクラストあるいは海底熱水鉱床中の泥状硫化物を採鉱し港に輸送する総合工場構想について開示されている。採掘した海底鉱物資源の海上への輸送については、科学技術振興事業団の笹井らが「深海底鉱物資源の揚鉱方法及び揚鉱装置」において、両端開口部で液面が同じ高さに維持されるU字管の中の海水が循環流動する特性を利用し、深海底から鉱物資源を海面に浮上させる方法を特許文献2に開示している。
バケットによる揚鉱について益田は特許文献3「深海鉱物バケット採鉱装置」において、採鉱船による海底鉱物資源の連続バケット採鉱装置にロープと耐圧浮力筒を用い鉱物資源が重くなるのを補償する牽引駆動方式を開示している。竹山は特許文献4「海底鉱物資源の採取方法およびその粉砕装置および連結装置」において、海底で採取した鉱物資源を採取直後に海底で細粒に粉砕し、その細粒を海上の船舶に輸送ホースで揚鉱する方法について開示している。吉岡は特許文献5「深底資源吸引揚装置」において、ポンプで高圧化した気体と液体を共に深海の気液分離室へ圧送し、液体は気液分離室の下部から外部に放流し、気体は気泡となってエアリフトパイプに入り上昇し、同時に下端に接続した吸引パイプの吸引口に吸引力を起こし、海底等の深部の資源を吸引し、資源が上昇する速度で上部まで引揚げる機構について開示している。海洋科学技術センターの青木らは特許文献6「燃料電池搭載型深海潜水調査船運用システム」において、深海潜水調査船の駆動源として燃料電池を搭載し、母船から水素ガス及び酸素ガスをホースで補給する方法についてに開示している。
【0003】
本願発明では深海底に潜水艇を沈めるに当たり、その中に錘として密度の重い液化
気体や氷結体を積み込み、海底ではそれらを浮力体として使うことを提案している。しかし現時点では、深海底での利用報告が無いため、陸上での液化ガスや氷結体の応用例を示す。三菱重工業株式会社の渥美らは特許文献7「液化ガスを利用した動力発生装置」において、タンクに貯蔵した液体空気などの液化ガスをポンプで昇圧した後、外気等を利用した熱交換器で加熱してほぼ常温の高圧空気とし、この高圧空気を高圧空気駆動エンジンに導いてその膨張により動力を得ること及びこれを自動車の動力として用いることを開示している。また金属ナトリウムを水と反応させて水素を生成し、これを燃料電池の燃料に供し、かつ廃棄物の水は再度金属ナトリウムから水素を発生させる反応に使用することが、三菱重工業株式会社の玉木による特許文献8「燃料電池の燃料供給システム」に開示され、生田は特許文献9「水素の製造方法及び水素−酸素の製造方法並びにこれらの製造装置」において、金属ナトリウムを石油に入れた状態で水と反応させて水素を生成する方法を開示している。
【0004】
本願発明では深海底に存する鉱物資源を揚鉱するために浮力体(蛇腹型風船)に浮力剤として液化ガスを圧入して使うことを提案しているが、水中で風船にガスを圧入して浮上させる方法として、田中らは特許文献10「水難救助具」において、水中で水と反応して炭酸ガスを発生する薬品を風船に付属したカプセルの中に入れておき、その薬品が水に触れると二酸化炭素が発生して風船が膨張し、浮き袋として水難救助できる方法を開示している。
【0005】
これら海底開発には、回収資源の運搬の前に、採掘に大電力を必要とする。これまで、その電力はディーゼル発電で賄う以外に方法は無いと考えられていた。たとえ、この電力を洋上風力発電や海流発電で電力を得ても、それを深海底1,500〜6,000メートルまで送電すると、送電ロスを生じる。本願発明者は、非特許文献1の「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え <風力発電による海洋資源回収と洋上工場>」において、もし深海底掘削現場で電力が得られればこんな経済的なことはないと記載し、一例として、海底熱水鉱床がある付近には、海底火山がある確率が高いため、その海底火山近傍の熱水とそれを取り巻く深層水との温度差発電を行い、これによって得られた電力を掘削機の動力源とすることを提案している。
そこで本願発明では、場所を選ばない発電法として、潜水艇が重力により降下し、浮力により浮上する時に発生する、流体エネルギーをスクリューにより回転エネルギーに変換して発電を行い、これを海底での作業用電力や、海上における電力に使うことを提案している。 水中の浮力を利用して発電する方法について、国土総合建設株式会社の森崎は特許文献11「浮力を利用したエネルギー発生方法と装置」において、海上と海底に固定された車輪の間を無端ベルトが回転する構造にしておき、そのベルトに多数の風船を付け、その風船が最も海底に来た時に空気を送入することによって生じる浮力で風船が順次浮上し、海上に来た時に風船の中の空気を抜くことにより、ベルトが浮力のみで回転するエネルギーを発電機に伝え電力変換する方法が開示されている。水中で物質を化学反応、気化、又は昇華させた時に発生する気体を浮力として使い、海上と海底に固定された車の間を無端ベルトが回転する構造にしておき、そのベルトに多数の円筒形容器を付け、発生させた気体を円筒容器内に入れて、回転により発電する方法が、田野瀬によって特許文献12「水中で気体を発生させ、その浮力を利用して発電する浮力発電システム」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−331681号公報
【特許文献2】特開2003−269070号公報
【特許文献3】特開平07−208061号公報
【特許文献4】特開平05−141175号公報
【特許文献5】特開2000−227100号公報
【特許文献6】特開平10−181685号公報
【特許文献7】特開平09−079008号公報
【特許文献8】特開平08−203550号公報
【特許文献9】特開2004−155599号公報
【特許文献10】特開2005−343440号公報
【特許文献11】特開2000−130311号公報
【特許文献12】特開平07−007996号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】村原正隆・関和市 「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え」パワー社出版(2007年12月発行)
【非特許文献2】「Deep-Sea fishes/ Wikipedia, the free encyclopedia (http://en.wikipedia.org/wiki/Deep_sea_fish)
【非特許文献3】「プラスチック技術マニュアル/松谷守康著/理工学社」アズワン社ホームページ(http://www.as-1.co.jp/academy/17/17-2.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水深5,000メートルならば地上の1気圧の500倍の水圧下(500気圧)での鉱物資源の採掘と回収を行い、これを海上に輸送する必要がある。このための電力はディーゼル発電機や洋上風力発電が考えられる。しかし、母船から海底までの送電ケーブルが必要であり、送電ロスも大きい。さらに、それらの資源を揚鉱するためにはクレーンが必要である。本願発明者は非特許文献1で熱電子発電素子による海底温泉と深層水との温度差発電を提唱したが、これは採掘には利用できるが、熱電素子の設置場所が限定され、実用的ではない。最も簡便な方法は海底作業用潜水艇(潜水カプセル)に電池を積み込むことであるが、大電力供給は期待できない。このように大電力を使えば、揚鉱は可能であるが、海底下5000mから鉱物を揚鉱しても採算に合わない。深海底の開発のネックは水圧との闘いである。
そこで考えたのが浮力の利用である。一般に、浮力体の排水量が浮上させる物質の総排水量を超えた時に浮上を開始する。さらに重要なことは、浮力体の内圧と水圧とが常に等しいことである。もしこのバランスが崩れると浮力体は破壊する。深海魚の浮き袋が破壊しないのは水圧と浮き袋の内圧とのバランスが取れているからである。もし、深さ[h]における浮力体の内圧[P(h)]と水圧[W(h)]とを等価[P(h)=W(h)]に制御できれば、浮力体の容積をV(h)とすると、P(h1)×V(h1)= P(h2)×V(h2)=一定、であるから、V(h2)=V(h1)×P(h1)/P(h2)である。 ここで浮力体が深さh1から、深さh2まで浮上したとすると、浮力体の内圧は P(h1)> P(h2)あるから、深さh2における浮力体V2の容積はV(h2)=V(h1)×P(h1)/P(h2)> V(h1)となり、容積は増大することがわかる。
一方、気体は雰囲気温度に敏感である。一般に、水温は低緯度海域では0から4000mまで1.5℃と変化は無いが、高緯度海域では海上で約28℃、1000mで10℃、2000m以下は低緯度海域と同じ1.5℃であると言われている。さらに、海水の密度は低緯度海域では0から4000mまで1.0284g/cm3と変化は無いが、高緯度海域では海上で1.0242g/cm3、1000mで1.027g/cm3、2000m以下では低緯度海域と同じ1.0284g/cm3である。塩濃度は低緯度海域では水面では33.2%、1000mで34.8%、それ以下では平均35%と変わらない。 高緯度海域では海上で約36.9%、1000mで35.2%、それ以下では低緯度海域と同じ35%である。これら物理定数は海域によって異なるため、その都度制御機構に入力することが望ましい。例えば、水深5000mにおける水圧は500気圧であるから、水面上(0m、1気圧)での浮力体の容積は500倍と成り、浮力も500倍に成る。この現象は、深度が浅くなるに連れて浮力が必然的に増大するため、浮力体の牽引力は増大することを意味する。すなわち、海底から海上に浮力体が上昇するに連れて、浮力が増加するため、それに応じて被鉱物資源の格納籠をある間隔をおいて数珠繋ぎに連結すれば、浮力のみで複数個の荷物を揚鉱することができる。海上ではそれらのガスを回収して再度液化すれば、再生可能エネルギーサイクルを構築できる。 又この浮力の増大で発生する流体エネルギーをスクリューで捕らえ、回転エネルギーに変換して発電すれば、艇内の浮力制御用電力、海底での掘削機や集鉱シャベルなどの駆動電力、あるいは洋上や陸上の作業用電力として利用できる。
この浮力・重力発電は、風力発電や太陽光発電あるいは温度差発電が抱える欠点、すなわち、台風、強風、凪、無風、雨、曇、落雷、夜、月の満ち欠け、あるいは温度差も関係なく、景観に悪影響もなく、低周波公害も無く、氷結も関係なく、建設工事も必要なく、重力バランスを考えることも無く、しかも1年中24時間休むことなく発電できる。ただ必要なのは水深のみ。この浮力・重力発電システムで得られた電力の最大の利点は、深海底での鉱物資源回収用電力としの利用である。海底近くで浮上と降下を繰り返し、発電すれば、送電ロスが皆無と成る。さらに、浮上して水面に近づくに連れて浮力が増すため発電量が大きくなることも浮力発電の特徴である。欠点としては、重力で降下する時の発電量が少ないことと、浮上・降下の距離が短いので操作の繰り返しが煩雑であることである。これを解消するには、複数の発電艇を浮上・降下させて、夫々の発電機で得られた電力を平均化すれば一定電力を供給することが可能である。これら浮力体の内圧と水圧の制御システムを構築することが、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
潜水艇(カプセル)は、深度5,000メートルならば500気圧の水圧に耐えねばならない。しかも潜水艇(カプセル)の形状は水中での抵抗が少ない球状、楕円体状又は円筒形状の涙滴型、葉巻型、鯨型などがよい。一般に潜水艦は艦の内殻と外殻との間に備えたメイン・バラスト・タンクに海水を出し入れして、艦の重さと浮力のバランスを調整する。すなわち潜水艦の場合は、艦自身が浮力体であり、降下時に艦内のタンクに海水を入れ、その錘で降下し、浮上の時はタンクから艦外部に海水を吐き出して、軽くなって浮上する。
ところが本願発明では浮力体は潜水艇の外部に備えてあり、艇内の船体構造は復殻式で、外殻と内殻の間には液化ガスやドライアイスあるいは圧縮ガスを入れるボンベ室、内殻内部には油圧コンプレッサー室、液化ガス製造装置室、蓄電地室、発電装置室を設備する。そして、降下する時には浮力体内のガスを液化あるいは圧縮して潜水艇内部のボンベに移行し、錘としての重力を得、浮上する時はボンベから気化させた液化ガス又は圧縮ガスを浮力体に封入して浮力を得る。一旦浮上を開始した後は、浮力体にはガスを一切供給せず、浮力体の容積のみを膨張させて、浮力を増大させる。
一般的に、潜水艦では、降下のための錘として密度1.02の海水を用いるが、本願発明では、錘として、密度が1.18と重い液体酸素、密度1.56のドライアイス、密度0.81の液体窒素又は密度0.071の液体水素も用いる。一般に多くのガスは加圧だけでは液化しない。しかし、ドライアイスだけは使用する深さを考慮しなければならない。ドライアイスが昇華して発生するCO2は約130気圧で液化する。すなわち、水深が1300mより深い海水では液化二酸化炭素であるため、ガスとはならないため、1300mより浅くなって初めて浮力剤の役割を開始する。潜水艇が降下する重力源としての錘は、潜水艇本体、発電機、ボンベは勿論であるが洋上でボンベに圧入する液化ガスあるいは圧縮ガスの重量が非常に大きくなる。たとえば、簡単のために、水の密度=1、水温=1.5℃、大気圧=1気圧として大まかな計算を行うと、深度5000m(水圧500気圧)の地点で、浮力1トン得るためのガスの重量は、酸素で約714kg、二酸化炭素で約981kg、空気で約647kg、窒素で約624kg、水素45kgである[M(g)(ガス1モル当たりの重さ)× 500(気圧)×1000(リットル)/22.4(リットル)≒22.3M(kg)]。本発明の特徴は、これらのガス重量を、降下時の錘として用いることである。そして、このガスを全て浮力体に移すので、潜水艇の重量はその分だけ軽くなる。しかし、浮力体内のガスの重量は同じである。ただし、浮力体は深度が浅くなるに連れて膨張し、海面に到達した時点では浮力は約800倍になる。この水圧と浮力の関係を利用したのが本発明の特色である。
【0010】
請求項1に記載の発明は、水中で重力、浮力により重量物を移送する潜水艇に関するものであり、潜水艇内部には、潜水艇の浮上や降下を制御するための電力、海底からの採掘重量物の回収に必要な動力源としての電力及び洋上や陸上で電力を得るための発電装置が備えられている。本発明では潜水艇船首外部に取り付けられた浮力体を明確に区別するために主浮力体と命名する。潜水艇船首外部には、水中を降下及び浮上に必要とする浮力を得るために液化気体を気化させたガス又は圧搾気体によるガスを封入した主浮力体が備えられ、水面から水深1300mの間の浮力体として、潜水艇から独立し、独自で浮力材ガスを供給する機構を有する補助浮力体を備えており、必要に応じて、荷物運搬の替え添え役として、あるいは1300mより浅い海面下での荷物運搬用に使うことができる。この補助浮力体にはドライアイスが封入されており、深さが1300mより浅い位置(130気圧より低圧)に到達したら自発的にドライアイスが昇華して二酸化炭素が生成され、補助浮力体に封入されるようになっている。潜水艇船首の外部にある主浮力体にガスを封入する手段として、潜水艇内の外殻と内殻の間には液化ガスやドライアイスあるいは圧縮ガスを入れるボンベ室、内殻内部には油圧コンプレッサー室、液化ガス製造装置室、蓄電気室、発電装置室を設備する。艇船首の外側には、主浮力体がスライドし、又は主浮力体の容積を膨張、収縮させるための浮力機構を備え、降下する時は、主浮力体の容積を収縮させながら内部の浮力剤ガスを潜水艇内部のコンプレッサーに移送し、浮上時には主浮力体の容積を膨張させながら浮力を増大させる主浮力体伸縮膨張駆動機構を備え、潜水艇の外壁には回転や揺れを抑制させ、姿勢安定を保持させ、発電用スクリューの回転が潜水艇本体と競合することを抑制するめに複数枚のフィンを等角度で取り付け、更に船尾には発電装置に連動させたプロペラ(スクリュー)及び荷物牽引用フックを取り付けてある、艇の外観が球状若しくは楕円状あるいは円筒形状の涙滴型、葉巻型、鯨型である潜水艇である。
深海底や海底の地盤中にはマンガン団塊、マンガンクラスト、海底熱水鉱床などの未掘削の鉱物資源が豊富にあり、その他にも、沈没船や遺跡が発見されている。これら海底や湖底の調査は陸上に比べ手間がかかる。2009年1月ユネスコの水中文化遺産保護条約が発効し、水中考古学が脚光を浴びつつあり、深海での調査が盛んに成り、陸上への輸送が盛んに成ると考える。さらに深海底の事故処理も急を要す。2010年4月20日米国ルイジアナ州沖のメキシコ湾で起きた石油掘削施設の爆発炎上により、崩壊した海底1500mの掘削井戸からは1日当たり5000バーレル以上の原油が流出し、メキシコ沿岸地域を汚染し、環境への影響が懸念された。これら噴出原油の回収や海底に未開発のまま存在する鉱物資源を、簡便な方法で陸上まで輸送することが急がれる。海底や湖底から水面まで揚げる荷物は固体と液体に分離できるが、湧出原油、深層水又は汚泥物などの液体物については密閉容器が必要である。そのため、浮力を極力少なくし、降下時は重力だけで海底に運び、海底では容器に液体回収物を満載した後、浮上させるような、密閉容器が必要である。そこで密閉容器を折畳み容器構造とし、畳んだ状態で水底に運搬し、水底で容器を拡大しながら目的の液体物を挿入する方式が望ましい。一方、荷物が固体の場合は、降下時に浮力を発生させない籠状容器を採用する。潜水艇の船尾にはスクリューを備え、重力により降下する場合と、浮力により浮上する場合に発生する流体エネルギーを回転エネルギーに変えて発電機を回し電力を得る機構を有している。潜水艇に搭載する発電機を小型と大型に分け、小型の場合は、主浮力体駆動用モーターの電池充電用に供し、海底や湖底と水面上を荷物の運搬のみに特化させる。一方、大型発電機を搭載した潜水艇は、水面と水底間を往復して発電に特化させても良い。
【0011】
請求項2に記載の発明は水中で重力、浮力により重量物を請求項1記載の潜水艇により移送する方法に関するものである。このため潜水艇の船尾には重量物を吊り下げるための牽引装置、牽引フック、牽引ロープ、シャックル、スナップシャックル、ハンク、荷物積載用として固体の場合は籠であり、原油、深層水又は汚泥物などの液体の場合は折りたたみ式密閉容器が必要である。潜水艇が単に回収物又は機器の運搬用であれば、潜水艇に搭載する発電機は小型として蓄電池充電用に特化させるか、発電機構を持たない補助浮力体のような構造として使用することもできる。いずれにせよ、本発明の目的は、深海底や湖底の重量物を、浮力を用いて水面上に浮上させることであるから、この主浮力体が最も重要であり、キーテクノロジーである。
水中では10m降下する毎に1気圧上昇するから、5000m降下するならばその点での水圧は500気圧に及ぶ。主浮力体がこの圧力に打ち勝つためには、頑強な構造体が要求される。しかし、これを満足する主浮力体を作れば、材料が重すぎて浮力を得ることが難しい。ここで注目に値するのが、深海魚の浮き袋である。非特許文献2「Deep-Sea fishes」に開示されているように、深海魚の浮き袋の壁は頑丈なグアニン結晶で覆われ、浮き袋の内容物は気体ではなく脂肪やワックスであるという。とくに、はだかいわし類などの深海魚は餌を求めて深海と浅海の間を往復すると言われるから、毎日数百気圧に及び気圧変化を受けている。深海魚は自分の体だけを浮上させれば良い。しかし、本願発明のように潜水艇本体よりも重い重量物を浮上させるためには大きな体積の主浮力体(浮き袋)が必要である。深海魚に習うとすると、大きな主浮力体を満たすにはその体積に見合うだけの油脂が必要である。油脂の密度は約0.8から0.94と水(1.0)より軽いため、浮力剤として申し分ない。さらにこの油脂で満たされた主浮力体に潜水艇内部から油圧をかければ容易に水圧と平衡を取ることができる。しかし、残念ながら油脂など液体は体積を収縮させることはできない。これに反し、気体は圧縮して体積を縮小でき、縮小した形(浮力を小さくした状態)で降下することができる。このため、小型主浮力体ならば油脂を使うことが可能だが、本願発明のように水深が浅くなるに連れて主浮力体の容積を大きくして浮力増を狙う機能を有する大型主浮力体には使えない。従って、深海魚のように水深によって主浮力体の全内容物を気体から油脂に置換することはできない。しかし、主浮力体の内容物を深度によって油脂と気体とを使い分けたり、又は内容物を油脂と気体の混合体とすれば、深さに左右れない主浮力体内容物が可能に成る。これらに使用する油脂としては石油系鉱物油(密度0.8)やパラフィン(密度0.87-0.94)などが有望である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1、請求項2記載の潜水艇が水中で重力を得る手段に関するものである。一般に潜水艦は重さと浮力のバランスを調整するために、降下時に艦内のタンクに錘として密度1.02の海水を用いる。ところが、本願発明では、目的水深に応じて、錘として、密度が1.18と重い液体酸素、密度1.56のドライアイス、密度0.81の液体窒素又は密度0.071の液体水素も用いる。その他に、潜水艇の船尾に牽引する荷物積載用籠に、海底で作業するための掘削機材や集鉱機材あるいは海底に廃棄する物質を搭載して補助錘とすることができる。潜水艇船首の外部には蛇腹構造の主浮力体(折畳み風船)と主浮力体の容積を収縮・膨張させるための主浮力体伸縮駆動機構が備えられ、潜水艇内部には主浮力体伸縮駆動機構を動かすためのモーター、主浮力体内のガスを吸引して圧縮するコンプレサー、圧縮したガスを断熱膨張して液化する液化ガス製造装置、水圧を検知し主浮力体の内圧を一定に保つための制御装置、浮上・降下制御装置、制御装置や駆動装置の電力補給源としての蓄電池、蓄電池を充電するための発電機を備えている。
潜水艇が降下開始前には、主浮力体伸縮駆動機構を作動して蛇腹型主浮力体を収縮させ、同時に潜水艇内部のコンプレッサーで吸収した主浮力体内部の気体を吸引した後、圧縮気体としあるいは液化気体にしてボンベに貯蔵する。ここで主浮力体の排水量が潜水艇を構成する全重量(主浮力体も含む)より小さく成った時に、降下を開始する。この時点で主浮力体内部から潜水艇内のコンプレッサーへの気体移行を中止する。そして、これ以降は主浮力体伸縮駆動機構を収縮させながら主浮力体内部のガス圧と水圧との平衡を保ちながら降下する。そして目的到達水深近くになったら、主浮力体伸縮駆動機構を膨張に転じさせ、内圧と水圧との平衡を保ちながら主浮力体を膨張させて潜水艇を静止させる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1、請求項2記載の潜水艇が水中で浮力を得る手段に関するものである。一般に潜水艦は浮上の時はタンクから艦外部に海水を吐き出して、軽くなって浮上する。ところが本願発明の潜水艇内部には液化ガス又は圧縮ガスを貯えるボンベが備えてあるが、主浮力体は浮潜水艇の外部に連結しており、浮上時は内部のボンベから気化したガス又は圧縮ガスを主浮力体に移動して、降下時に錘として用いた液化ガスあるいは圧縮ガスを浮力剤として再利用する。これら液化ガスの沸点は、酸素で-183℃、二酸化炭素-78.5℃、窒素で-196℃、水素で-253℃であるが、深海底の水温が1.5℃だから、全てが沸点以上の環境にあるため温度だけから考えると全てのガスが自然に気化して高圧ガスになる。ただし、二酸化炭素(ドライアイス)だけが130気圧以下にならないとガス化しないので、1300mより浅い海域で使用すると言う限界があるが、他のガスは深さに関係なく使用できる。これらの液化ガスが気化して生成する気体の量は莫大である。液体酸素の密度は1.18 だから、容積1ccの液体酸素が気化して、気体に成ると、0℃ 1気圧で0.826 リットルだから体積が約826倍膨張したことに成る。 ドライアイスは密度が1.56だから、約795倍である。窒素は密度が0.81だから648倍である。水素は密度が0.071だから約795倍である。このように液化ガスを気化あるいはドライアイスを昇華させると、夫々体積が約800倍近く膨張するから浮力も800倍得られる。潜水艦が密度1.02の海水を吐き出しても浮力は約1倍であるのに比較すると、液化ガスを気化させて浮力に用いる方法が勝っているかがわかる。さらに、水深が深くなればなるほど浮力を大きくしなければならないため、ガスの量は大きくなる。例えば、深度5000m(水圧500気圧)の地点で、浮力1トン得るためのガスの重量は、酸素で約714kg、二酸化炭素で約981kg、空気で約647kg、窒素で約624kg、水素45kgである[M(g)(ガス1モル当たりの重さ)× 500(気圧)×1000(リットル)/22.4(リットル)≒22.3M(kg)]。水深4000mでは、酸素で570kg、二酸化炭素で785kg、空気で約647kg、窒素で499kg、水素で35.7kgを積載。水深2000mでは、酸素で285kg、二酸化炭素で392kg、窒素で250kg、水素で17.8kgを積載。水深1000mでは、酸素で143kg、二酸化炭素で196kg、窒素で125kg、水素で9kgを積載することになる。ただし二酸化炭素のみは水深1300m以内しか使用できないため、1300mにおいて、1トンの浮力を得るためには、280kgの二酸化炭素又はドライアイスを用いればよい。このように、同じ浮力を得る場合でも、ガスの種類によって、モル数は同じであるが、重量が大きく違ってくる。このため目的降下深度と経済性を考慮して浮力剤を決定する。そこで、ガスの種類による限界水深 [h(km)=224.2/M] を見積ると、酸素で7,000m、空気で7,730m、窒素で8,000m、水素で112,100m、二酸化炭素で1,300mである。このように水深により浮力剤ガスを決定する。このように、1,300メートルより浅い水深ではドライアイスを用い、1,300m以上では液体酸素や液体空気を用い、5000m以上では液体窒素や液体水素を用いることが望ましい。またドライアイスを封入した浮力体(浮き袋)に、水深1,300m付近で揚鉱用ロープに連結して、浮力体の補助として使えば、水面上で重量物を回収する駆動電力を軽減することができる。
ここで、海底に到達している潜水艇に重量物を牽引させ、浮上準備に取り掛かる。先ず、潜水艇外部の主浮力体伸縮起動機構を駆動して、主浮力体の体積を膨張させながら、同時に潜水艇内部のボンベのコックを開き主浮力体にガスを圧入し、潜水艇が浮上を開始したら、潜水艇内部のボンベのコックを閉じて、以後は主浮力体伸縮起動機構を駆動して主浮力体の内圧と水圧とが平衡を保ちながら、主浮力体の体積を膨張させる。これにより、水深が浅くなるに連れて浮力が増大し、浮上速度が速くなり、主浮力体が海面に到達した時点で浮上が完了する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1、請求項2及び請求項4記載の主浮力体の内圧が常に水圧と平衡を維持するための制御機構に関するものである。中空構造物が深海の高水圧下で変形や崩壊を起こさないためには構造物の外壁(外殻)を肉厚にし、かつ形状を球体にする。しかし、この構造体の総重量は重く、軽さが必須条件である主浮力体としては使えない。ところが高気圧下であろうと真空中であろうと材料の両面で気圧差が無ければ変形も崩壊も起こらない。すなわち主浮力体の内圧と外圧(水圧)が常に等しい環境を創成すれば軽量主浮力体は実現する。本願発明の特徴は、降下の時は重力源の錘として液化ガスを用い、浮上時は液化ガスを気化させて重力源を浮力源に変えることである。液化ガスを気化して気体に変えれば約800倍に体積膨張する。従って、800倍の浮力を得ることができる。主浮力体の中は気体、外は液体(水)と物理定数がことごとく違う媒質との比較である。液体は温度に対して鈍感であるが、気体は敏感で、体積の膨張・収縮を伴う。ただし本願発明が目的とする水深での温度は高々1.5℃であり、主浮力体も海水中であるため温度に対して神経を尖らす心配は無い。
本願発明では、主浮力体内のガス圧と水圧とが平衡を保たせる手段として、機械的手段と電気的手段が考えられる。機械的方法は、電気回路のような判断部が無いため連動動作が容易で、とくに内圧と水圧比較は1:1の対応が取れる。一般に圧力制御弁はパイロットポペットをパイロットばねをネジ込みハンドルで回転してガスの出し入れを調整している。本発明ではこのパイロットばねが水圧を検知する油圧シリンダーと連動した構造を有し、海面に露出した油圧ポンプのシリンダーが油圧でパイロットを押す構造であるため、直接水圧とガス圧を制御できる。一方電気式制御装置は水圧と浮力の内圧をセンサーで検知し、比較回路で圧力の大小を判別するため、その出力信号を電流増幅して電磁弁やモーターを正転又は逆転させることにより早い応答が期待できる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1、請求項2及び請求項4記載の主浮力体及び補助浮力体(蛇腹式風船)の材質及び浮力気体に関するものである。一般に水圧が高い深海においては、浮力体は頑強な殻を有することが常識である。しかし、主及び補助浮力体の内圧と水圧とが常に平衡が取れていれば、多くの材料が主及び補助浮力体として使える。例えば、水深5000mでは水圧は500気圧(517 kgf/cm2)であるから、この値を基準に材料の圧縮強度を見ると、ステンレス圧延板で4500 kgf/cm2、プラスチックス材料の圧縮強度は非特許文献3「プラスチック技術マニュアル/松谷守康著/理工学社」(http://www.as-1.co.jp/academy/17/17-2.html)によると、ナイロン6:914kgf/cm2(30%ガラス繊維ナイロン6:1340 kgf/cm2)、硬質ポリ塩化ビニル:562〜914 kgf/cm2、メラニン樹脂:2810〜3160 kgf/cm2、ポリカーボネート:844 kgf/cm2、アクリル樹脂:844〜1270 kgf/cm2と多くの材料が水圧より高い。主及び補助浮力体に封入するガスは二酸化炭素、空気、酸素、窒素あるいは水素ガスであるが、とくにドライアイスは130気圧以上の圧力では昇華しないから、水深1300mを境にして自発的にガス発生を誘起させ、主及び補助浮力体として供することができる。すなわち1300m以下の水深での主浮力体として使うことは勿論のことであるが、それよりも水深の深い点で荷物の間に補助浮力体として連結しておけば、1300mで補助浮力体として働きを開始し、水面まで荷物を揚げる役割をする。あるいは、この補助浮力体を水深1300mの地点で別の浮上中の荷物に連結すれば輸送の効率があがる。又は、深海に存在する荷物をロープで繋いでおき、1300mから水面までの輸送手段として使うことができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1、請求項2、請求項4、請求項5及び請求項6記載の主浮力体及び補助浮力体への初期ガス封入量は維持(固定)した状態で、深度と水圧の変化を利用して、外部エネルギー無しで、重量物を複数個数珠繋ぎの状態で、浮上させる方法に関するものである。ボイルシャルルの法則によると温度(T)において容器の体積(V)と容器内の気圧(P)の関係は P×V/T=一定 である。簡便のために海底と海面の温度及び海水の密度は一定として計算する。深度h1の海底における水圧はWh1、主及び補助浮力体の内圧はP h1とし、その時の主及び補助浮力体の容積をV h1とすると、海面h2における水圧Wh2=1(気圧)であり、主及び補助浮力体の内圧P h2=1(気圧)であるから、海面における主及び補助浮力体の容積はV h2=P h1×V h1=Wh1×V h1であるから、海面における主及び補助浮力体の容積(V h2)は海底における水圧(Wh1)倍となる。すなわち水深5000mで浮上開始する主浮力体は、海面では500倍の容積に成るから、浮力は500倍に成る。従って、計算上は500倍の重量の荷物を分割して揚荷することができる。実際には複数個の荷揚げ容器に回収物を分取させ、各単位毎の回収荷物は、複数個の荷揚げ用容器の下部に取り付けられたフックと牽引ロープの両端に取り付けてあるシャクルにより、夫々の籠または折りたたみ式容器を順次繋ぎ、先頭を潜水艇の船尾部分に取り付けたフックに繋ぎ、浮上を開始する。主浮力体内には液化ガスを気化させた浮力剤ガスを封入させ、浮上するに連れ外圧(水圧)減少分に相当する浮力が、主浮力体の容積膨張により増大し、その浮力の増加分に相当する重量物が順次牽引されて浮上する。ここでもし必要な時は、任意の位置に補助浮力体を連結すれば、水深1300mの地点を境として浮力が発生し、この補助浮力体が、浮上を助けるため、海面での荷揚げ作業が楽になる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1及び請求項2記載の潜水艇の動力源又は海底資源掘削や集鉱に必要とする電力を潜水艇が降下及び浮上する時に発生する流体エネルギーをプロペラ(スクリュー)で回転エネルギーに変換して発電機を回し電力を得る方法に関するものである。ここで得られる電力は、潜水艇の制御機能駆動用電力、蓄電池充電用電力、深海底での鉱物資源の採掘及び鉱物資源回収に必要な電力及び洋上や陸上で消費する電力に供される。一般の風力発電装置はタワーの上のナセルの中に発電機と増速ギアーを載せた構造のものである。タワーを高くする理由は、高所ほど安定で強い風が得られること及び大型プロペラを回転させる回転領域確保のためである。しかし、タワーが高いために風力装置全体の重心が高位置になるため、頭でっかちになり転倒の危険性も少なくない。このため、従来の風力発電装置は、頭部を軽くする目的で発電機の小型・軽量化が進んでいる。しかし、風力発電は、強風、落雷、あるいは凪に弱い。そして風境にも影響され稼働時間も少ない。これらの欠点を解消するために、この風力発電装置のナセル部を、タワーの首部から切り離し、海の中に突き落としたと考えよう。海の中ではナセルは潜水艇であり、プロペラはスクリューである。一般に風力や水流などの流体から得られる回転エネルギー(W)は、受流体面積(A)、流体密度(ρ)、流速(V)とすると W=ρV3A/2 で与えられる。 空気の密度は1.2kg/m3に対し、水の密度は1,025kg/cm3 であるため、風の流れを水の流れに変えれば854倍のエネルギーを得ることができる。このように、水の中での発電施設は風力発電に比べ、1艇あたりの発電量が854倍あり、建造費は少なく、稼働時間は24時間、しかも水面に近づくに連れて浮力が増大し、浮上速度が増加した分、発電量も大きくなる。一般に発電機は高速回転することにより発電量が上昇する。従って本発明の浮力・重力発電装置は、プロペラ(スクリュー)と増速ギアーが一体構造であり、水の密度も高いため、プロペラ(スクリュー)から得られるトルクも大きく、発電機を効率よく回転させることができる。ここで得られた電力は深海底又は深湖底で回収物採取用の動力源となる電力を得ると同時に、潜水艇内部の蓄電池に蓄える電力や駆動用機器の駆動電力に供し、更に、余剰電力は送電線によりは洋上や陸上での電源として供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明による重量物の水中における降下及び浮上方法は、深海底や湖底の鉱物資源を水上までの輸送手段として、降下は潜水艇内のボンベに圧入した液化ガスを錘として用い、浮上は錘として用いた液化ガスを気化させて浮力剤として用い、海底と海面間を重力と浮力と水圧を利用して往復し、重量物の搬送を外部エネルギーの供給無しで行う。さらに、降下及び浮上時に発生する流体エネルギーで水流発電を行い、艇内施設の制御用電力、深海底での鉱物資源回収用電力、あるいは洋上や陸上での作業用電力として、自然環境の変化に左右されず、景観に悪影響もなく、建設工事も必要なく、しかも1年中24時間休むことなく発電できるため、経済効果大である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】風潜水艇の概略図。(A)は外観図、(B) は内部構造図である。
【図2】搭載発電機が小型の荷物運搬用に特化した潜水艇の概略図である。(A)は降下時、(B)は浮上時を示す図である。
【図3】荷揚げ容器の形状と構造の概略図である。(A)は固体運搬用籠、(B)は液体物運搬用密閉容器を降下時に収縮させた状態図、(C)は液体物を回収途中の状態図、(D)は液体物が回収容器に満たされた状態図である。
【図4】潜水艇が重力により降下を開始し、海底又は目的深度で静止するまでの状態図である。(A)は降下準備、(B)は降下開始、(C)は降下中、(D)は降下完了を示す状態図である。
【図5】複潜水艇が浮力により浮上を開始し、海面上又は目的深度で静止するまでの状態図である。(A)は浮上準備、(B)は浮上開始、(C)は浮上中、(D)は浮上完了を示す状態図である。
【図6】主浮力体の内圧が常に水圧と平衡を維持するための制御機構を示したフローチャートである。
【図7】主浮力体(折畳み風船)の中心部が空洞の浮力体構造図である。(A)は主浮力体の横断面図。(B)は体積を膨張させた状態図。(C)は体積を縮小させた状態図。(D)は主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構に主浮力体を取り付けた構造図である。
【図8】主浮力体(折畳み風船)多段提灯形状を成す浮力体の構造図である。(A)は最大限膨張させた時の縦断面図、(B)は体積を1/10に縮小させた時の縦断面図、(C)は体積を1/4に縮小させた時の縦断面図、(D)は体積を1/2に縮小させた時の縦断面図である。
【図9】主浮力体(折畳み風船)を潜水艇の船首に水平に配置した概念図である。(A)は主浮力体を膨張させた時(浮力による浮上時)の概念図、(B)は主浮力体を縮小させた時(重力による降下時)の概念図である。
【図10】ドライアイスを利用した補助浮力体の動作概念図である。(A)水圧130気圧以下、(B)は水圧130気圧以上の状態を示す図である。
【図11】封筒型浮力体の概略図である。(A)は封筒型浮力体を巻き取り方式により内容積を縮小させる構造、(B)は封筒型浮力体に浮力ガスを封入して内容積を膨張させる構造の概念図である。
【図12】主球状浮力体1個に複数個の球状浮力体を連結した構造の浮力体概念図である。(A)は全ての球状浮力体を脱気した概念図、(B)は深海の高い外圧(水圧)下で主球状浮力体のみにガスを圧入した概念図、(C)は浮上中の外圧(水圧)下で主球状浮力体のガスを複数個の球状浮力体に分圧した概念図、(D)は海面近くまで浮上した時の球状浮力体の概念図である。
【図13】複数個の重量物を珠繋ぎの状態で牽引浮上する状態図である。(A)は浮上開始時の状態図、(B)は浮上中の状態図、(C)は更に浮上が進んだ状態図、(D)は海面近くの状態図であり、補助浮力体を連結した概念図である。
【図14】潜水艇が浮上や降下で発生する流体エネルギーで発電する方法の概念図である。
【図15】図15は潜水艇の両舷に取り付けた垂直軸羽根車水車により水流発電を行う方法の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の効果的な実施の形態を図1〜15に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
図1は潜水艇の概略図。(A)は外観図、(B) は内部構造図である。潜水艇1の船首の外部には主浮力体2と主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構3があり、潜水艇1の外壁には回転や揺れを抑制させ、姿勢安定を保持させ、発電用スクリュー5の回転が潜水艇本体と競合することを抑制するめに複数枚のフィン4を等角度で取り付け、更に船尾には発電装置に連動させたプロペラ(スクリュー)5及び牽引機構6と荷物牽引用フック7を取り付けてあり、荷揚げ容器(籠)8に積まれた重量物9を牽引して浮上する。潜水艇1の外観が球状若しくは楕円状あるいは円筒形状の涙滴型、葉巻型、鯨型である。潜水艇1の内部には、潜水艇の浮上や降下を制御するための電力、海底からの採掘重量物の回収に必要な動力源としての電力及び洋上や陸上で電力を得るための発電装置(発電機)10が備えられている。本発明では潜水艇1の船首外部に取り付けられた浮力体を明確に区別するために主浮力体2と命名する。潜水艇船首外部には、水中を降下及び浮上に必要とする浮力を得るために、液化気体を気化させたガス又は圧搾気体によるガスを封入した、主浮力体2が備えられている。潜水艇1の船首の外部にある主浮力体2にガスを封入する手段として、潜水艇内の外殻と内殻の間には液化ガスやドライアイスあるいは圧縮ガスを入れるボンベ室11、内殻内部には油圧コンプレッサー室12、液化ガス製造装置室13、蓄電地室14、発電装置室(発電機)10を設備する。潜水艇1の内部のモーター15で、主浮力体2の容積を膨張、収縮させるための浮力機構3を駆動する。降下する時は、主浮力体2の容積を収縮させながら内部の浮力剤ガスを配管16で潜水艇内部の油圧コンプレッサー12に移送し、圧縮ガスとして又は液化ガス製造装置室13で液化した後、ガス出口17から出た液化ガス又は圧縮ガス18はボンベ室11に貯蔵される。そして浮上時には液化ガス又は圧縮ガス18は、主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構3により主浮力体2に圧入され、容積を膨張させながら浮力を増大させる。
本発明では、重力により降下する場合と、浮力により浮上する場合に発生する流体エネルギーを回転エネルギーに変えて発電する機構を有するが、そのために、潜水艇1の船尾には発電装置室(発電機)10が艇外部のプロペラ(スクリュー)5に連動している。潜水艇1に搭載する発電機を大型と小型に分けて必要に応じて使い分けることもできる。発電機が小型の場合は、主浮力体駆動用モーター15の駆動用電源として蓄電池14を充電用に供し、海底や湖底と水面上を荷物の運搬のみに特化させる。一方、大型発電機を搭載した潜水艇は、水面と水底間を往復して発電に特化させることもできる。
水面から水深1300mの間の浮力体として、潜水艇から独立し、独自で浮力材ガスを供給する機構を有する補助浮力体を備えており、必要に応じて、荷物運搬の替え添え役として、あるいは1300mより浅い海面下での荷物運搬用に使うことができる。この補助浮力体にはドライアイスが封入されており、深さが1300mより浅い位置(130気圧より低圧)に到達したら自発的にドライアイスが昇華して二酸化炭素が生成され、補助浮力体に封入されるようになっている。
【0022】
図2は搭載発電機が小型の荷物運搬用に特化した潜水艇の概略図である。(A)は降下時、(B)は浮上時を示す図である。潜水艇1が図1の潜水艇1との違いは、艇の形状が球状であることと、発電室10の発電機が小型であることで、重量物運搬用に特化した潜水艇で、艇内部の発電機10は潜水艇の降下・浮上を制御する電力を供給するための蓄電池14の充電用に特化している。(A)は潜水艇1が重力で降下している状態を示す図で、主浮力体(折畳み風船)2を主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構3で収縮させ、内部の気体を全て液化又は圧縮してボンベ室11に液化ガス又は圧縮ガス18として格納した状態を示す。(B)は潜水艇1が浮上下している状態を示す図で、主浮力体(折畳み風船)2を主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構3で膨張させ、潜水艇1の内部の液化ガス又は圧縮ガス18を吐き出し、主浮力体(折畳み風船)2を膨張させた状態を示す。海底や湖底から重量物9を運搬するにはフック7に荷揚げ容器8を牽引するが、その荷物を固体と液体に分離して運ぶ必要がある。
図3は荷揚げ容器の形状と構造の概略図である。(A)は固体運搬用籠、(B)は液体物運搬用密閉容器を降下時に収縮させた状態図、(C)は液体物を回収途中の状態図、(D)は液体物が回収容器に満たされた状態図である。(A)は深海底や深湖底で回収した鉱物資源、埋没遺跡物、沈没船、あるいは海底に運ぶ掘削器具、集鉱装置、回収した鉱物のかすとしての廃棄物など重量物(固体)9を運搬するための籠8である。(B)、(C)、(D)は湧出原油、深層水又は汚泥物などの液体物については密閉型荷揚げ容器である。この密閉容器19は、浮力を極力少なくし、降下時は重力だけで海底に運び、海底では密閉容器19容器に液体回収物を回収するために流体回収物吸入口のバルブ20を開き、同時に容器収縮・拡大用モーター21で密閉容器収縮・拡張駆動機構22を駆動する。そして、液体回収物を満載した後、浮上させる。そこで密閉容器を折畳み容器構造とし、畳んだ状態(B)で水底に運搬し、水底で容器を拡大しながら目的の液体物を挿入(C,D)する方式を採用する。
【0023】
図4は、潜水艇が重力により降下を開始し、海底又は目的深度で静止するまでの状態図である。(A)は降下準備、(B)は降下開始、(C)は降下中、(D)は降下完了を示す状態図である。一般に、潜水艦は、降下の際に艦内のタンクに錘として密度1.02の海水を外部から採りいれる。ところが、本願発明では、潜水艇1の外部に付属する主浮力体2及び重量物9(海底に運ぶ物資)を含めた総重量が全体の排水量より重く設定してあり、潜水艦のように外部から海水を取り入れることは行わない。先ず、降下準備(A)として、潜水艇1の船尾の荷揚げ容器(籠)8に、海底で作業するための掘削機材や集鉱機材あるいは海底に廃棄する物質を重量物9として搭載して補助錘として、牽引機構6に連結する。(B)では、潜水艇1の船首の外部に取り付けた主浮力体(蛇腹構造の折畳み風船)2を、潜水艇1内部のモーター15により、主浮力体伸縮・駆動機構3により駆動し、主浮力体内のガスを吸引して圧縮するコンプレサー12、圧縮したガスを断熱膨張して液化する液化ガス製造装置13などで製造した液化ガス又は圧縮ガス18をボンベ11に貯蔵する。これにより浮力が小さくなり潜水艇1は降下を開始する。(C)では降下が開始された時点で主浮力体2内部から潜水艇内のコンプレッサー12へのガス移行を中止する。そして、これ以降は主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構3を収縮させながら主浮力体内部のガス圧と水圧との平衡を保ちながら降下する。(D)では、目的到達水深近くになった時点で、主浮力体2を膨張に転じさせるために、主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構3を動かし、主浮力体(折畳み風船)2の内圧と水圧との平衡を保ちながら膨張させて潜水艇を静止させる。
【0024】
図5は、潜水艇が浮力により浮上を開始し、海面上又は目的深度で静止するまでの状態図である。(A)は浮上準備、(B)は浮上開始、(C)は浮上中、(D)は浮上完了を示す状態図である。一般に潜水艦は浮上の時はタンクから艦外部に海水を吐き出して、軽くなって浮上する。それに反し、本願発明の潜水艇1は艇内部のボンベ11に貯蔵してある液化ガス又は圧縮ガス18を、艇外部に連結した主浮力体2に移動して、降下時に錘として用いた液化ガスあるいは圧縮ガスを浮力剤として再利用する。先ず、浮上準備(A)として、潜水艇1の船尾の荷揚げ容器(籠)8に、海底で採取した鉱物資源や他の採取物など重量物9を搭載して、牽引機構6に連結する。(B)では、浮上を開始するために、主浮力体を伸縮・膨張させる機構3を駆動して、主浮力体2の体積を膨張させながら、同時に潜水艇内部のボンベ11のコックを開き主浮力体2にガスを圧入し、潜水艇が浮上を開始したら、潜水艇内部のボンベのコックを閉じ、潜水艇1は浮上を開始する。
(C)では浮上が開始したら、以後は主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構3を駆動して主浮力体2の内圧と水圧とが平衡を保ちながら、主浮力体の体積を膨張させる。これにより、水深が浅くなるに連れて浮力が増大し、浮上速度が速くなる。
(D)では、海上又は目的到達深度近くになった時点で、潜水艇1の船首の外部に取り付けた主浮力体(蛇腹構造の折畳み風船)2を主浮力体伸縮・駆動機構3により駆動し、主浮力体2内のガスを吸引して圧縮するコンプレサー12、圧縮したガスを断熱膨張して液化する液化ガス製造装置13などで製造した液化ガス又は圧縮ガス18をボンベ11に貯蔵する。これにより浮力が小さくなり潜水艇1は浮上を停止する。潜水艇1の船尾の牽引機構6に連結し、浮上させた重量物9は海上の作業船のクレーで回収する。
【0025】
図6は主浮力体の内圧が常に水圧と平衡を維持するための制御機構を示したフローチャートである。本発明で最も重要なことは主浮力体の内圧と外圧(水圧)を如何なる場合でも如何なる場所でも平衡を維持させることである。この平衡を維持させる手段として、機械的手段と電気的手段が考えられる。機械的手段は、電気回路のような判断部が無いため連動動作が容易で、とくに内圧と水圧比較は1:1の対応が取れる。一般に圧力制御弁はパイロットポペットをパイロットばねで押して(ネジ込みハンドルで回転して)ガスの出し入れを調整している。本発明ではパイロットばねを、シリンダー棒を介して、水圧で押す構造であるため、直接水圧とガス圧を制御できる。一方電気式制御装置は水圧と浮力の内圧をセンサーで検知し、比較回路で圧力の大小を判別するため、その出力信号を電流増幅して電磁弁やモーターを正転又は逆転させることにより早い応答を行っている。 これら主浮力体の内圧と外圧(水圧)とを平衡に保ちながら、先ず、潜水艇が降下を開始(潜水開始)するために、主浮力体の容積を収縮し、潜水艇の総重量が浮力を上回るまで浮力体内のガスを潜水艇内のボンベに移行し続ける。同時に主浮力体の内圧と外圧(水圧)とを比較し、内圧が外圧(水圧)より大きい場合は、主浮力体の容積を収縮し、浮力体内のガスを潜水艇内のボンベに移行する行程を繰り返して行う。一方、内圧より外圧(水圧)の方が小さい場合には潜水艇内のボンベから主浮力体内にガスを移行し、再度内圧と外圧(水圧)を比較して、目的深度に到達するまでこの操作を繰り返す。ただし主浮力体の破壊限界を考慮して、便宜上、内圧と外圧の許容範囲は5%内外とすることが望ましい。潜水艇が目的深度に到達したら、潜水艇内のボンベから浮力体にガスを圧入し、内圧と水圧を等圧に維持しながら、浮力体の容積を潜水艇の排水量を僅かに(1〜5%)超えるまで膨張させる。すなわち浮力が重力を超えるまで(静止状態から浮上に転ずるまで)この動作を繰り返す。この時点で、潜水艇内のボンベを閉じて浮力体へのガス供給を停止し、浮上へのステップに転換する。
浮上によって、海底から海面に、複数個の重量物を多量に運搬することが可能なことが、本発明の特徴である。主浮力体の深度が浅くなるに連れて、水圧も下がる(10m上昇すると1気圧下がる)。若しここで、主浮力体の体積を固定したまま浮上を続ければ内圧は増大する。ところが本発明では浮力体内のガスの分量は固定したままの状態で、主浮力体の内圧と水圧を平衡(等圧)に維持しているため、必然的に主浮力体の容積は拡大し、その拡大分だけ浮力が増大する。従って、浮上開始直後、前行程で主浮力体に充填されたガス量を維持したまま(潜水艇内部からのガスの供給は停止されたまま)、主浮力体の内圧と外圧(水圧)を等圧に調整しながら(許容範囲は5%内外)、浮力体の容積を膨張させて浮上を行う。ここで主浮力体の内圧と外圧(水圧)とが許容範囲(許容範囲は5%内外)に至らず、内圧が外圧(水圧)以上の時は主浮力体の容積を膨張させ、内圧が外圧(水圧)以下の時は主浮力体の容積を縮小して、内圧と外圧(水圧)を許容範囲(5%内外)に収斂させて浮上を続け、水面又は予定深さに到達した時点で、再度降下準備に取りかかる。
【0026】
図7は主浮力体(折畳み風船)の中心部が空洞の浮力体構造図である。(A)は主浮力体の横断面図。(B)は体積を膨張させた状態図。(C)は体積を縮小させた状態図。(D)は主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構に主浮力体を取り付けた構造図である。主浮力体はドーナツ状の浮力体が縦方向に連結した一体構造に成っている(A,B)。この主浮力体2を上下2枚の円形の押さえ板23で挟み、回転伸縮ネジ24をモーター15で回転して収縮又は膨張を行う。 収縮の時は2枚の押さえ板23を接近させ、同時に主浮力体のガスを配管16から吐き出しながら主浮力体2を収縮させて、潜水艇を降下体勢にする。他方、浮上の時は、体積を縮小させた(C)の状態で、内圧と外圧(水圧)を等圧にして配管16からのガスの供給を止め、浮上を開始する。ここで、浮上が開始されると、深度が浅く成り、それに連れて外圧(水圧)が減少するため、その減少分だけ、回転伸縮ネジ24を緩め、主浮力体2の体積を膨張させる。この操作により、水深が浅くなるに連れて浮力が増大する。
図8は主浮力体(折畳み風船)多段提灯形状を成す浮力体の構造図である。(A)は最大限膨張させた時の縦断面図、(B)は体積を1/10に縮小させた時の縦断面図、(C)は体積を1/4に縮小させた時の縦断面図、(D)は体積を1/2に縮小させた時の縦断面図である。この多段提灯形状の主浮力体は上下に2枚の押さえ板23で挟んであるが、上部の押さえ板23を、ワイヤー25(主浮力体2の内部に)により下方に(矢印の方向に)引っ張ることにより上下の押さえ板23間を縮めることにより体積を縮小させる構造であり、主浮力体を軽量化できることが特徴である。
図9は主浮力体(折畳み風船)を潜水艇の船首に水平に配置した概念図である。(A)は主浮力体を膨張させた時(浮力による浮上時)の概念図、(B)は主浮力体を縮小させた時(重力による降下時)の概念図である。この方式は、主浮力体が安定しないため、主浮力体の要所要所にロープを取り付け、これら複数本のロープを潜水艇の船首部で留め、主浮力体が潜水艇を牽引する。
【0027】
図10はドライアイスを利用した補助浮力体の動作概念図である。(A)水圧130気圧以下、(B)は水圧130気圧以上の状態を示す図である。補助浮力体26に封入する浮力剤はドライアイス27である。(A)に示すように、ドライアイスは130気圧以上の圧力では昇華しないから、水深1300mよりも深い深度では浮力体としての役割を示さない。しかし、1300mより水深が浅くなると、(B)に示すように、水圧が130気圧以下に成るため、1300mを境にして、ドライアイス27は二酸化炭素(昇華したドライアイス)28になり、浮力体29を膨張させて、補助浮力体26として効果を発揮する。 この補助浮力体26を、(A)で示すように、深海で荷物の間に補助浮力体として連結しておけば、1300mで補助浮力体として働きを開始し、水面まで荷物を揚げる役割をする。あるいは、この補助浮力体を水深1300mの地点で別の浮上中の荷物に連結すれば輸送の効率があがる。又は、深海に存在する荷物をロープ30で繋いでおき、1300mから水面までの輸送手段として使うことができる。このように補助浮力体26として使うことは勿論のことであるが、水深1300m以下の海域では主浮力体として使うこともできる。
図11は封筒型浮力体の概略図である。(A)は封筒型浮力体を巻き取り方式により内容積を縮小させる構造、(B)は封筒型浮力体に浮力ガスを封入して内容積を膨張させる構造の概念図である。プラスチックフィルムで作られた帯状の封筒型浮力体(風船)31の一方の端には液化気体用耐圧ボンベ(バルブ付)32、他の端には封筒型浮力体を巻き取りにより伸縮・膨張させる駆動機構33が取り付けられ、モーター15により巻き取られ、真空状態の封筒型浮力体34を形成する。この真空状態の封筒型浮力体34と封筒型浮力体(風船)31の間は、2本の棒を互いに挟み込んで線閉塞を起こさせる、気体遮断用棒状バルブ35によって遮断されている。この封筒型浮力体31は潜水艇船首部を牽引する形で取り付けられる。潜水艇の降下時には、液化気体用耐圧ボンベ(バルブ付)32のバルブを閉めて、かつ封筒型浮力体を巻き取りにより伸縮・膨張させる駆動機構33により、封筒型浮力体(風船)31を全て巻き取り、浮力が最も小さい状態で降下し、浮上時には、液化気体用耐圧ボンベ(バルブ付)32のバルブを開きながら、封筒型浮力体(風船)31を潜水艇1の浮力に相当する体積まで膨張させる。この状態で、浮上を開始させ、浮力体31の内圧と外圧(水圧)が等しくなるように調整しながら浮上する。水深が浅くなり水圧が下がる分だけ、帯状の封筒型浮力体(風船)31の体積を膨張させ、浮力が増大する。この装置では液化ガスの代わりにドライアイスを封入して、水深1300m以内の浮力体としても使える。
図12は主球状浮力体1個に複数個の球状浮力体を連結した構造の浮力体概念図である。(A)は全ての球状浮力体を脱気した概念図、(B)は深海の高い外圧(水圧)下で主球状浮力体のみにガスを圧入した概念図、(C)は浮上中の外圧(水圧)下で主球状浮力体のガスを複数個の球状浮力体に分圧した概念図、(D)は海面近くまで浮上した時の球状浮力体の概念図である。 主球状浮力体36と全ての球状浮力体37は配管40で結合されており、主球状浮力体36の両端の配管40には第一バルブ(弁)38及び第2バルブ(弁)39が具備されている。 (A)は重力により降下してきた浮力体である。これを浮上させる目的で、(B)に示すように、先ず、潜水艇内部の液化ガスを球状浮力体に圧入するために、第1バルブ38を開き(第2バルブは閉めたまま)、主球状浮力体36を潜水艇が浮上する浮力になるまでガスを圧入する(予め主球状浮力体36のみで、重量物を牽引した潜水艇が浮上を開始する体積に設定しておく)。次に(C)に示すように、浮上を開始したら、第2バルブを開き主球状浮力体36のガスを全ての球状浮力体37に分圧し(浮力体の内圧と水圧とが常に平衡に成るように球状浮力体の膨張を制御する)、浮上を続ける。そして浮力体が海上に近づくと(D)のようにすべての球状浮力体37及び主球状浮力体36は夫々の内圧が1気圧となる。このように球状浮力体を数珠状に並べて浮力体を構成し、任意の配管部にバランス良く牽引ロープを繋ぎ、複数本の牽引ロープで潜水艇を牽引することができる。
【0028】
図13は複数個の重量物を珠繋ぎの状態で牽引浮上する状態図である。(A)は浮上開始時の状態図、(B)は浮上中の状態図、(C)は更に浮上が進んだ状態図、(D)は海面近くの状態図であり、補助浮力体を連結した概念図である。
本発明は深海で主浮力体2に圧入したガス量は増減させず、主浮力体2の内圧と外圧(水圧)を一定に保つだけで(すなわち水深が浅くなるに従い水圧が減圧する分だけ主浮力体2の体積を増大させる)、浮力を増大させることができる。従って、例えば水深5000mで浮上開始する主浮力体2は、海面では500倍の容積に成るから、浮力は500倍に成る。この浮力と水圧の関係を利用して、計算上では500倍の重量の荷物を分割して揚荷することができる。実際には、複数個の荷揚げ用容器の下部に取り付けられたフック7と牽引ロープ30の両端に取り付けてあるシャクルにより、夫々の籠または折りたたみ式容器8を順次繋ぎ、先頭を潜水艇1の船尾部分に取り付けたフック7に繋ぎ、浮上を開始する。主浮力体2内には液化ガスを気化させた浮力剤ガスを封入させ、浮上するに連れ外圧(水圧)減少分に相当する浮力が、主浮力体2の容積膨張により増大し、その浮力の増加分に相当する重量物9が順次牽引されて浮上する。ここでもし必要な時は、任意の位置に補助浮力体26を連結すれば、水深1300mの地点を境として浮力が発生し、この補助浮力体が、浮上を助けるため、海面での荷揚げ作業が楽になる。
【0029】
図14は潜水艇が浮上や降下で発生する流体エネルギーで発電する方法の概念図である。 潜水艇1が降下及び浮上する時に発生する流体エネルギーをプロペラ(スクリュー)5で回転エネルギーに変換し、これを増速ギアー41で高速回転を得て発電機10を回転させ電力を得る。特に潜水艇1がプロペラ(スクリュー)5と同じ方向に回転すると、回転トルクは打ち消される。又お互いの回転が反対方向ならば回転トルクは2倍になり発電効率は上がる。しかし牽引重量物9や送電ケーブル42などをねじることに成りトラブルの原因になる。そこで本発明では潜水艇1の外壁に等角度でフィン4を取り付け、潜水艇の回転や揺れを抑制させている。更に、本発明の特徴は、水面に近づくに連れて浮力が増大し、浮上速度が増加した分だけ発電量も大きくなることである。 ここで得られた電力は送電ケーブル42により深海底又は深湖底で回収物採取用の動力源となる電力を得ると同時に、潜水艇内部の蓄電池に蓄える電力や駆動用機器の駆動電力に供し、更に、余剰電力は送電ケーブル42によりは洋上や陸上での電源として供される。
【0030】
図15は潜水艇の両舷に取り付けた垂直軸羽根車水車により水流発電を行う方法の概念図である。浮力・重力による水流発電のための潜水艇の外部には回転防止のための複数のフィン4を備え、潜水艇1の両舷には発電機を駆動するための垂直軸羽根車水車43が備えられ、回転増速ギアーを介して潜水艇1内部の発電機の回転子(ローター)を回転させる構造を有している。ここで潜水艇1の左舷と右舷に夫々1個ずつの垂直軸羽根車水車43が共に同一方向に回転させているが、右舷と左舷の垂直軸羽根車水車43の羽(ブレード)の向きを逆にして、水車の回転方向を逆にして、一方を該発電機の回転子(ローター)に他方を固定子(第2回転子)に連結すれば、夫々の相対回転により2倍の電力を得ることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
我が国の排他的経済水域内の海底や海底の地盤中にはマンガン団塊、マンガンクラスト、海底熱水鉱床などの未掘削の鉱物資源が豊富に存在すると言う調査結果が出ているが、水圧が高いことが原因で開発は全く進んでいないのが現状である。この原因は、掘削や集鉱に必要な電力と洋上までの輸送が困難なことが一因であると考えられる。そこで、本発明では、深海底における水圧と浮力を積極的に利用して、これら2つの課題を解決する手段を見出した。すなわち、深海底の鉱物資源を洋上まで輸送する手段として、潜水艇内のボンベに圧入した液化ガスを錘として海底に降下し、錘として用いた液化ガスを気化させて浮力剤として利用して浮上させることにより、外部から一切のエネルギー供給を無くし、重力と浮力と水圧のみで海底と海面間を往復することを可能にした。更に、降下及び浮上時に発生する流体エネルギーで水流発電を行い、潜水艇内での制御用電力、深海底での鉱物資源回収用電力、あるいは洋上や陸上での作業用電力として活用できる。 この浮力・重力発電は、自然環境の変化に左右されず、景観に悪影響もなく、建設工事も必要なく、しかも1年中24時間休むことなく発電できる発電システムである。これらの発電と輸送とを一度に解決する本発明は、世界的資源の枯渇と資源高騰あるいはこれに伴う資源供給国の新規台頭や国際社会に影響力を拡大させている現況を沈静化させることは勿論のこと、無尽蔵にある海洋資源及びクリーンで再生可能な自然エネルギーを使って、化石燃料の代替エネルギー源を確保することは、四面を海に囲まれた我が国の産業にとっても地球環境上、更には経済的にも重要な手段になり得ると考える。
【符号の説明】
【0032】
1 潜水艇
2 主浮力体
3 主浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構
4 フィン
5 プロペラ(スクリュー)
6 牽引機構
7 フック(荷物牽引用)
8 荷揚げ容器(籠)
9 重量物
10 発電装置(発電機)
11 ボンベ室
12 油圧コンプレッサー室
13 液化ガス製造装置室
14 蓄電地室
15 モーター
16 配管
17 ガス出口
18 液化ガス又は圧縮ガス
19 密閉容器
20 流体回収物吸入口のバルブ
21 容器収縮・拡大用モーター
22 密閉容器収縮・拡張駆動機構
23 押さえ板
24 回転伸縮ネジ
25 ワイヤー
26 補助浮力体
27 ドライアイス
28 二酸化炭素(昇華したドライアイス)
29 浮力体
30 ロープ
31 封筒型浮力体(風船)
32 液化気体用耐圧ボンベ(バルブ付)
33 封筒型浮力体を巻き取りにより伸縮・膨張させる駆動機構
34 真空状態の封筒型浮力体
35 気体遮断用棒状バルブ
36 球主球状浮力体
37 球状浮力体
38 第1バルブ
39 第2バルブ
40 配管



【特許請求の範囲】
【請求項1】
深海底及び/又は深湖底から鉱物資源、埋没遺跡物、沈没船、湧出原油、深層水又は汚泥物を水面に荷揚げさせる潜水艇において、前記海底からの採掘重量物の回収に必要な動力源としての電力及び/又は洋上や陸上で電力を得るための発電装置及び前記潜水艇が水中を降下及び浮上に必要とする浮力を得るための浮力体として主浮力体及び/又は補助浮力体から構成され、主浮力体には液化気体又は圧搾気体によるガスを封入し、補助浮力体にはドライアイスを昇華させたガスを封入させるのに、油圧コンプレッサー及び浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構を具備させ、該潜水艇船首上部には該浮力体の伸縮・膨張駆動機構と連動させた潜水艇の該主浮力体がスライド若しくは膨張・収縮させる浮上機構を具備した浮上手段と、
該潜水艇内部には、潜水艇が重力により降下させるための降下手段として液化ガス又はガスを圧入したボンベを具備し、該潜水艇の外壁には回転や揺れを抑制させるめに複数枚のフィンを等角度で取り付け、更に船尾には前記発電装置に連動させたプロペラ(スクリュー)を取り付けたことを特徴とする球状若しくは楕円状又は円筒形状の潜水艇。
【請求項2】
深海底及び/又は深湖底から鉱物資源、埋没遺跡物、沈没船、湧出原油、深層水又は汚泥物を水面に荷揚げさせる潜水艇において、前記海底からの採掘重量物の回収に必要な動力源としての電力及び/又は洋上や陸上で電力を得るための発電装置及び前記潜水艇が水中を降下及び浮上に必要とする浮力を得るための浮力体として主浮力体及び/又は補助浮力体から構成され、主浮力体には液化気体又は圧搾気体によるガスを封入し、補助浮力体にはドライアイスを昇華させたガスを封入させるのに、油圧コンプレッサー及び浮力体を伸縮・膨張させる駆動機構を具備させ、該潜水艇船首上部には該浮力体の伸縮・膨張駆動機構と連動させた潜水艇の該主浮力体がスライド若しくは膨張・収縮させる浮上機構を具備した浮上手段と、
該潜水艇内部には、潜水艇が重力により降下させるための降下手段として液化ガス又はガスを圧入したボンベを具備し、該潜水艇の外壁には回転や揺れを抑制させるめに複数枚のフィンを等角度で取り付け、更に船尾には前記発電装置に連動させたプロペラ(スクリュー)を取り付けたことを特徴とする球状若しくは楕円状又は円筒形状の請求項1記載の潜水艇による重量物の降下および浮上方法。
【請求項3】
前記潜水艇の降下手段において、水中における任意の深度で所望する重力を得る手段が、該潜水艇船尾の末端部に取り付けられた錘及び該潜水艇内部に具備されたボンベに圧入する液化ガス又は圧縮ガスの充填量を調整し、かつ、前記浮上手段としての主浮力体内のガスを圧縮若しくは膨張させる機構と連動して主浮力体の容積を縮小させる調整機構により降下速度および降下深度を調整可能とすることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の潜水艇による重量物の水中での降下方法。
【請求項4】
前記潜水艇が水中における任意の深度における浮力を得る手段として、該潜水艇外部の上部に連結した伸縮自在可能とするに主浮力体に液化気体又は圧搾気体によるガスを予め圧入させ、任意の水中深度において浮上速度および浮上深度を維持、調整させるに、前記主浮力体が折りたたみ式浮力体であり、主浮力体内に圧入させたガス圧を変えずに容積を拡大させることにより浮力を調整させ、かつ、任意の水中深度地点において折り畳み式主浮力体内の内圧を膨張および収縮させることにより容積を制御させ、外圧となる水圧と主浮力体の内圧とが平衡を保持する機構を有し、かつ、任意の水中深度地点において該潜水艇が停止状態の作動保持も可能とさせることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の潜水艇による重量物の水中での浮上方法。
【請求項5】
前記潜水艇に具備された主浮力体の内圧が任意の深度において水圧と平衡を保持する機構として、主浮力体の外部に取り付けられ、水圧を検知する水圧センサーと主浮力体内部に取り付けられた内圧センサーとの差圧を最小値にさせるため、主浮力体の内圧より水圧が高い場合は、液化ガス又はガスを圧入したボンベの電磁弁を開き、主浮力体の内圧を水圧に近づけ、主浮力体の内圧より水圧が低い場合は、主浮力体の伸縮機構を駆動させ、主浮力体の容積を拡張させる制御機構を具備することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3及び請求項4記載の潜水艇による重量物の水中での降下及び浮上方法。
【請求項6】
前記浮力を得る主浮力体及び補助浮力体がプラスチックス、金属又はゴムからなる蛇腹式若しくは折り畳み式風船体であり、主浮力体に封入させる浮力剤である気体が二酸化炭素、空気、酸素、窒素あるいは水素ガスから選ばれた気体種であり、水深度1300m以内の水中で採用する補助浮力体に封入させる気体はドライアイスを昇華させたガスであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4及び請求項5記載の潜水艇による重量物の水中での浮上方法。
【請求項7】
深海底及び/又は深湖底で掘削、回収した重量物を順次荷揚げさせる手段として、該潜水艇の船尾部分には荷物を牽引するロープを固定するフックが取り付けられ、荷揚用重量物物が複数個の場合は複数個の荷揚げ容器に回収物を分取させ、各単位毎の回収物は複数個の荷揚げ用容器の下部に取り付けられたフックと牽引ロープの両端に取り付けてあるシャクルで籠若しくは折りたたみ式容器を順次繋ぎ、浮上の開始時には主浮力体の容積を前記液化ガスを気化させた浮力剤を主浮力体に封入させ、浮上するに連れ水圧減少分に相当する浮力が主浮力体の容積膨張により増大し、重量物が水深1300m以内に浮上した時点で昇華させたドライアイスを荷揚げ容器間の任意の位置に連結させた複数個の補助浮力体に封入させることにより主浮力体及び補助浮力体の内圧と水圧とが平衡を保持させ、任意の水深において回収物の重量に応じて所望する浮力を得ることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5及び請求項6記載の水中における潜水艇による重量物の浮上方法。
【請求項8】
該潜水艇が動力源を得る手段としての発電装置が水中を降下及び浮上する際に、潜水艇の末端部に取り付けられた発電機の回転軸と連動する増速ギアーとプロペラ(スクリュー)とが一体構造を成し、流体エネルギーによりプロペラ(スクリュー)が回転し発電させ、深海底及び/又は深湖底で回収物採取用の動力源となる電力を得ると同時に、該電力は、該潜水艇内部の駆動用機器の駆動に供し、更に、余剰電力は送電線によりは洋上や陸上での電源として供されることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の潜水艇による水中における重量物の沈降及び浮上方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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