水冷変圧器
【課題】変圧器カバーへの熱伝達を抑制して表面温度を低減した水冷変圧器を提供する。
【解決手段】冷却板150は鉄心130を覆っている冷却部材150aと、二次コイル部材111a、111bに接続されている冷却部材150bとから構成されており、主に鉄心130から外部に放出される熱を冷却部材150aで吸収し、冷却部材150bから二次コイル部材111a、111bに伝熱する構成としている。二次コイル110が内部に冷却水路112を有して効率的に冷却されることから、冷却部材150bを二次コイル部材111a、111bに接続することで、冷却板150に伝達された熱を二次コイル110を経由して効率的に冷却できるようにしている。
【解決手段】冷却板150は鉄心130を覆っている冷却部材150aと、二次コイル部材111a、111bに接続されている冷却部材150bとから構成されており、主に鉄心130から外部に放出される熱を冷却部材150aで吸収し、冷却部材150bから二次コイル部材111a、111bに伝熱する構成としている。二次コイル110が内部に冷却水路112を有して効率的に冷却されることから、冷却部材150bを二次コイル部材111a、111bに接続することで、冷却板150に伝達された熱を二次コイル110を経由して効率的に冷却できるようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却効率が高く、小型化に好適な水冷変圧器の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水冷変圧器は、図4に示すように、通常は巻数を1とした二次コイル901に冷却水路902を形成し、この二次コイル901を挟んで両側に一次コイル903を配設した構造が採られており、この一次コイル903への入力電圧、入力電流、及び一次コイル903の巻数を変化させて目的とする出力電圧、出力電流が得られるようにしている。
【0003】
また、従来の水冷変圧器の別の例として、二次コイルが複数配設された水冷変圧器も知られている(特許文献1〜5)。例えば、図5に示すロボット搭載型スポット溶接用水冷変圧器では、内周部に鉄心挿通部912を形成した略環状形状の二次コイル部材911を複数対並列に配設して二次コイル910を構成しており、二次コイル部材911には内部を貫通する冷却水路915が形成されている。この二次コイル910の対をなす二次コイル部材911をそれぞれ並列に溶接により接続し、この各二次コイル部材911を一次コイルの直列に接続された複数の巻線からなる一次コイル部材で挟着している。
【0004】
図5に示すロボット搭載型スポット溶接用水冷変圧器は、複数対の二次コイル部材911を分割して並列に配設し、それぞれ対をなすコイル部材を並列に接続して二次コイル910を形成するようにしたため、二次コイル部材911の断面積を大きく拡げて直流抵抗値を下げることができ、また、各二次コイル部材911およびその接続部をも貫通した冷却水路915に冷却液体を流動させることにより、全体的に均一に冷却効果を高められ、さらに、二次コイル部材911は一次コイルとの接触面積が拡大し、表皮効果による交流抵抗値を低減することができる。
【特許文献1】特開平5−82357号
【特許文献2】特開平5−82358号
【特許文献3】実開平5−95018号
【特許文献4】実用新案第2571683号
【特許文献5】特許第3103776号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、以下のような問題があった。水冷変圧器は、通常外周が所定の変圧器カバーで覆われており、この変圧器カバーの表面温度に対して基準の温度以下に維持するよう規格が設けられている。水冷変圧器は、この規格に従って変圧器を冷却するために、二次コイルの内部に冷却水を流すようにしたものである。特に、特許文献1〜5に開示されている水冷変圧器では、二次コイルを複数に分割し、それぞれに冷却水路を設けて冷却効果を高めるようにしている。しかし、出力電圧及び出力電流によっては特許文献1〜5に記載の水冷変圧器でも十分な冷却効果が得られず、変圧器カバーの表面温度が基準温度を超えてしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、変圧器カバーへの熱伝達を抑制して表面温度を低減した水冷変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の水冷変圧器の第1の態様は、一次コイルと、内部を貫通する冷却水路が形成された二次コイルと、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通するように配置された鉄心と、前記一次コイルと前記二次コイルと前記鉄心とで構成された変圧器本体の外表面を覆う変圧器カバーと、を備えた水冷変圧器であって、前記変圧器本体と前記変圧器カバーとの間に設置された冷却板をさらに備え、前記冷却板が前記二次コイルに伝熱可能に接続されていることを特徴とする。
【0008】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、前記鉄心が、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通してそれらの外周の一部を取り巻くように形成されており、前記鉄心の外周表面に前記冷却板が伝熱可能に密接されていることを特徴とする。
【0009】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、前記冷却板と前記変圧器カバーとは、伝熱可能に密接されていることを特徴とする。
【0010】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、前記冷却板は、前記鉄心及び前記変圧器カバーと電気的に絶縁されていることを特徴とする。
【0011】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、内部を貫通する冷却水路が形成された略環状形状の二次コイル部材を1又は2以上並列に配設して構成された二次コイルと、複数の巻線からなる略環状形状の一次コイル部材で前記二次コイル部材を挟着する一次コイルと、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通してそれらの外周の一部を取り巻くように形成された鉄心と、前記一次コイルと前記二次コイルと前記鉄心とで構成された変圧器本体の外表面を覆う変圧器カバーと、を備えた水冷変圧器であって、 前記変圧器本体と前記変圧器カバーとの間に設置された冷却板をさらに備え、前記冷却板が前記二次コイルに伝熱可能に接続されており、前記伝熱板が、前記鉄心の外周表面及び前記変圧器カバーの内面と伝熱可能に密接されていることを特徴とする。
【0012】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、溶接機に用いられる変圧器であることを特徴とする。
【0013】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、溶接用ロボットに搭載して用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変圧器カバーの内面に冷却板を設け、これを冷却水路を備えた二次コイルに接続して排熱させるように構成することにより、鉄心等から放出される熱が変圧器カバーに伝達されるのを抑制して表面温度を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面を参照して本発明の好ましい実施の形態における水冷変圧器の構成について詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0016】
本発明の実施の形態に係る水冷変圧器の概略の構成を図1及び図2に示す。図1は、本実施形態に係る水冷変圧器100の正面図(a)及び背面図(b)を示しており、図2は水冷変圧器100の上面図を示している。
【0017】
水冷変圧器100は、略環状形状の2つの二次コイル部材111aと111bとを並列に配設して構成される二次コイル110と、複数の巻線からなる略環状形状の一次コイル部材121で二次コイル部材111a、111bを挟着している一次コイル120とから構成されている。一次コイル120及び二次コイル110は、銅などの導電材料で形成され、鉄心130がそれらを貫通して外周の一部を取り巻くように配設されている。
【0018】
一次コイル120、二次コイル110、及び鉄心130とで構成された変圧器本体は、その外表面を変圧器カバー140で覆われている。変圧器カバー140は、変圧器本体の上面、下面、左右の両側面の4面を覆うように形成されており、二次コイル側端子台101、102及び103を備えた正面側とその背面側は、変圧器カバー140が設けられていない。変圧器カバー140は、アルミ板で形成することができる。
【0019】
図2では、水冷変圧器100の内部構造をわかりやすくするために、変圧器カバー140を取り除いた状態の水冷変圧器100の上面図を示している。同図に示すように、二次コイル110の2つの二次コイル部材111a、111bには、それぞれ冷却水路112が設けられている。二次コイル部材111a、111bに設けられた各冷却水路112は、途中で接続されて冷却水が両方を通過するように形成されている。冷却水は、二次コイル側端子台102に設けられた冷却水注入口104から冷却水路112に注入され、二次コイル部材111a及び111bの内部を通過した後、二次コイル側端子台103に設けられた冷却水排出口105から外部に排出される。なお、冷却水注入口104と冷却水排出口105とを、上記とは逆の二次コイル側端子台103,102に設けるようにしてもよい。
【0020】
二次コイル部材111aの水平断面図を図3に示す。二次コイル側端子台102に設けられた冷却水注入口104から注入された冷却水は、二次コイル部材111aに設けられた冷却水路112を通過した後、連絡水路113から二次コイル部材111bに設けられた冷却水路112を通過する。そして、二次コイル部材111bの冷却水路112を通過した後、二次コイル側端子台103に設けられた冷却水排出口105から外部に排出される構造としている。
【0021】
本実施形態の水冷変圧器100では、上記構成に加えてさらに、変圧器カバー140の内面に冷却板150を設けることを特徴としている。図1に示すように、冷却板150は鉄心130を覆っている冷却部材150aと、二次コイル部材111a、111bに接続されている冷却部材150bとから構成されており、主に鉄心130から外部に放出される熱を冷却部材150aで吸収し、冷却部材150bから二次コイル部材111a、111bに伝熱する構成としている。
【0022】
上記説明のように、本実施形態の水冷変圧器100では、二次コイル110が内部に冷却水路112を有して効率的に冷却されることから、冷却部材150bを二次コイル部材111a、111bに接続することで、冷却板150に伝達された熱を二次コイル110を経由して効率的に冷却できるようにしている。冷却部材150bは、二次コイル部材111a、111bにネジ止めして固定することができる。
【0023】
図2の上面図に示すように、冷却板150は鉄心130の上部で冷却部材150aと冷却部材150bとが一体に連結されており、主に鉄心130から冷却部材150aに伝達された熱が冷却部材150bに伝えられ、さらに二次コイル部材111a、111bに伝えられて効率よく冷却される。
【0024】
なお、本実施形態では、冷却部材150bを水冷変圧器100の正面側(端子台101〜103が設置されている側)のみに設けているが、これを水冷変圧器100の背面側に設けるようにしてもよく、さらに正面側と背面側の両側に設けるようにしてもよい。
【0025】
冷却板150を形成する材料として、熱伝導率の高い金属を用いるのが好ましく、例えば銅板を用いて形成することができる。このような金属を用いた場合、電気的にも伝導率が高いことから、冷却板150と鉄心130との間を電気的に絶縁する必要がある。また、変圧器カバー140がアルミ材等の伝導性の材料で形成されている場合で、変圧器カバー140を絶縁する必要がある場合は、冷却板150との間も絶縁する必要がある。冷却板150の表面に絶縁被膜を形成するために、例えば冷却板150をエポキシ樹脂に浸漬する、あるいは冷却板150を加熱後にエポキシ樹脂ハウダーを吹き付け塗布して絶縁被膜を形成させることができる。あるいは、絶縁材を冷却板150と鉄心130及び変圧器カバー140(伝導性の材料の場合)との間に挟着させるようにしてもよい。冷却板150が鉄心130と絶縁されていれば、冷却板150と二次コイル110とを電気的に絶縁する必要はない。この場合、電気的な接続状態にすることで、より高い伝熱性が得られる。
【0026】
本発明の変圧器は、溶接機に用いられるものとして特に好適である。とりわけ溶接用ロボットに搭載して用いられる場合は、変圧器の小型化が求められており、本発明は変圧器カバーの温度上昇の抑制を実現しながら小型化を実現するものである。
【0027】
本実施形態の水冷変圧器100は、溶接用ロボットに搭載して用いることができる。溶接用ロボット搭載変圧器としては、一次コイル120の巻数を例えば54巻とし、二次コイルの巻数を2巻とすることで低電圧大電流を出力する水冷変圧器として用いることができる。本実施形態の水冷変圧器100を溶接用ロボット搭載用変圧器に用いることにより、変圧比が大きくなる場合でも、変圧器カバーの表面温度を基準温度以下に維持することが可能となる。
【0028】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る水冷変圧器の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における水冷変圧器の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態にかかる水冷変圧器の概略の構成を示す正面図及び背面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる水冷変圧器の上面図である。
【図3】二次コイル部材の水平断面図である。
【図4】従来の水冷変圧器の1例を示す側面図及び正面図である。
【図5】従来のロボット搭載型スポット溶接用水冷変圧器を示す正面図である。
【符号の説明】
【0030】
100 水冷変圧器
101、102,103 二次コイル側端子台
104 冷却水注入口
105 冷却水排出口
110 二次コイル
111 二次コイル部材
112 冷却水路
113 連絡水路
120 一次コイル
121 一次コイル部材
130 鉄心
140 変圧器カバー
150 冷却板
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却効率が高く、小型化に好適な水冷変圧器の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水冷変圧器は、図4に示すように、通常は巻数を1とした二次コイル901に冷却水路902を形成し、この二次コイル901を挟んで両側に一次コイル903を配設した構造が採られており、この一次コイル903への入力電圧、入力電流、及び一次コイル903の巻数を変化させて目的とする出力電圧、出力電流が得られるようにしている。
【0003】
また、従来の水冷変圧器の別の例として、二次コイルが複数配設された水冷変圧器も知られている(特許文献1〜5)。例えば、図5に示すロボット搭載型スポット溶接用水冷変圧器では、内周部に鉄心挿通部912を形成した略環状形状の二次コイル部材911を複数対並列に配設して二次コイル910を構成しており、二次コイル部材911には内部を貫通する冷却水路915が形成されている。この二次コイル910の対をなす二次コイル部材911をそれぞれ並列に溶接により接続し、この各二次コイル部材911を一次コイルの直列に接続された複数の巻線からなる一次コイル部材で挟着している。
【0004】
図5に示すロボット搭載型スポット溶接用水冷変圧器は、複数対の二次コイル部材911を分割して並列に配設し、それぞれ対をなすコイル部材を並列に接続して二次コイル910を形成するようにしたため、二次コイル部材911の断面積を大きく拡げて直流抵抗値を下げることができ、また、各二次コイル部材911およびその接続部をも貫通した冷却水路915に冷却液体を流動させることにより、全体的に均一に冷却効果を高められ、さらに、二次コイル部材911は一次コイルとの接触面積が拡大し、表皮効果による交流抵抗値を低減することができる。
【特許文献1】特開平5−82357号
【特許文献2】特開平5−82358号
【特許文献3】実開平5−95018号
【特許文献4】実用新案第2571683号
【特許文献5】特許第3103776号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、以下のような問題があった。水冷変圧器は、通常外周が所定の変圧器カバーで覆われており、この変圧器カバーの表面温度に対して基準の温度以下に維持するよう規格が設けられている。水冷変圧器は、この規格に従って変圧器を冷却するために、二次コイルの内部に冷却水を流すようにしたものである。特に、特許文献1〜5に開示されている水冷変圧器では、二次コイルを複数に分割し、それぞれに冷却水路を設けて冷却効果を高めるようにしている。しかし、出力電圧及び出力電流によっては特許文献1〜5に記載の水冷変圧器でも十分な冷却効果が得られず、変圧器カバーの表面温度が基準温度を超えてしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、変圧器カバーへの熱伝達を抑制して表面温度を低減した水冷変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の水冷変圧器の第1の態様は、一次コイルと、内部を貫通する冷却水路が形成された二次コイルと、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通するように配置された鉄心と、前記一次コイルと前記二次コイルと前記鉄心とで構成された変圧器本体の外表面を覆う変圧器カバーと、を備えた水冷変圧器であって、前記変圧器本体と前記変圧器カバーとの間に設置された冷却板をさらに備え、前記冷却板が前記二次コイルに伝熱可能に接続されていることを特徴とする。
【0008】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、前記鉄心が、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通してそれらの外周の一部を取り巻くように形成されており、前記鉄心の外周表面に前記冷却板が伝熱可能に密接されていることを特徴とする。
【0009】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、前記冷却板と前記変圧器カバーとは、伝熱可能に密接されていることを特徴とする。
【0010】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、前記冷却板は、前記鉄心及び前記変圧器カバーと電気的に絶縁されていることを特徴とする。
【0011】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、内部を貫通する冷却水路が形成された略環状形状の二次コイル部材を1又は2以上並列に配設して構成された二次コイルと、複数の巻線からなる略環状形状の一次コイル部材で前記二次コイル部材を挟着する一次コイルと、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通してそれらの外周の一部を取り巻くように形成された鉄心と、前記一次コイルと前記二次コイルと前記鉄心とで構成された変圧器本体の外表面を覆う変圧器カバーと、を備えた水冷変圧器であって、 前記変圧器本体と前記変圧器カバーとの間に設置された冷却板をさらに備え、前記冷却板が前記二次コイルに伝熱可能に接続されており、前記伝熱板が、前記鉄心の外周表面及び前記変圧器カバーの内面と伝熱可能に密接されていることを特徴とする。
【0012】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、溶接機に用いられる変圧器であることを特徴とする。
【0013】
この発明の水冷変圧器の他の態様は、溶接用ロボットに搭載して用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変圧器カバーの内面に冷却板を設け、これを冷却水路を備えた二次コイルに接続して排熱させるように構成することにより、鉄心等から放出される熱が変圧器カバーに伝達されるのを抑制して表面温度を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面を参照して本発明の好ましい実施の形態における水冷変圧器の構成について詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0016】
本発明の実施の形態に係る水冷変圧器の概略の構成を図1及び図2に示す。図1は、本実施形態に係る水冷変圧器100の正面図(a)及び背面図(b)を示しており、図2は水冷変圧器100の上面図を示している。
【0017】
水冷変圧器100は、略環状形状の2つの二次コイル部材111aと111bとを並列に配設して構成される二次コイル110と、複数の巻線からなる略環状形状の一次コイル部材121で二次コイル部材111a、111bを挟着している一次コイル120とから構成されている。一次コイル120及び二次コイル110は、銅などの導電材料で形成され、鉄心130がそれらを貫通して外周の一部を取り巻くように配設されている。
【0018】
一次コイル120、二次コイル110、及び鉄心130とで構成された変圧器本体は、その外表面を変圧器カバー140で覆われている。変圧器カバー140は、変圧器本体の上面、下面、左右の両側面の4面を覆うように形成されており、二次コイル側端子台101、102及び103を備えた正面側とその背面側は、変圧器カバー140が設けられていない。変圧器カバー140は、アルミ板で形成することができる。
【0019】
図2では、水冷変圧器100の内部構造をわかりやすくするために、変圧器カバー140を取り除いた状態の水冷変圧器100の上面図を示している。同図に示すように、二次コイル110の2つの二次コイル部材111a、111bには、それぞれ冷却水路112が設けられている。二次コイル部材111a、111bに設けられた各冷却水路112は、途中で接続されて冷却水が両方を通過するように形成されている。冷却水は、二次コイル側端子台102に設けられた冷却水注入口104から冷却水路112に注入され、二次コイル部材111a及び111bの内部を通過した後、二次コイル側端子台103に設けられた冷却水排出口105から外部に排出される。なお、冷却水注入口104と冷却水排出口105とを、上記とは逆の二次コイル側端子台103,102に設けるようにしてもよい。
【0020】
二次コイル部材111aの水平断面図を図3に示す。二次コイル側端子台102に設けられた冷却水注入口104から注入された冷却水は、二次コイル部材111aに設けられた冷却水路112を通過した後、連絡水路113から二次コイル部材111bに設けられた冷却水路112を通過する。そして、二次コイル部材111bの冷却水路112を通過した後、二次コイル側端子台103に設けられた冷却水排出口105から外部に排出される構造としている。
【0021】
本実施形態の水冷変圧器100では、上記構成に加えてさらに、変圧器カバー140の内面に冷却板150を設けることを特徴としている。図1に示すように、冷却板150は鉄心130を覆っている冷却部材150aと、二次コイル部材111a、111bに接続されている冷却部材150bとから構成されており、主に鉄心130から外部に放出される熱を冷却部材150aで吸収し、冷却部材150bから二次コイル部材111a、111bに伝熱する構成としている。
【0022】
上記説明のように、本実施形態の水冷変圧器100では、二次コイル110が内部に冷却水路112を有して効率的に冷却されることから、冷却部材150bを二次コイル部材111a、111bに接続することで、冷却板150に伝達された熱を二次コイル110を経由して効率的に冷却できるようにしている。冷却部材150bは、二次コイル部材111a、111bにネジ止めして固定することができる。
【0023】
図2の上面図に示すように、冷却板150は鉄心130の上部で冷却部材150aと冷却部材150bとが一体に連結されており、主に鉄心130から冷却部材150aに伝達された熱が冷却部材150bに伝えられ、さらに二次コイル部材111a、111bに伝えられて効率よく冷却される。
【0024】
なお、本実施形態では、冷却部材150bを水冷変圧器100の正面側(端子台101〜103が設置されている側)のみに設けているが、これを水冷変圧器100の背面側に設けるようにしてもよく、さらに正面側と背面側の両側に設けるようにしてもよい。
【0025】
冷却板150を形成する材料として、熱伝導率の高い金属を用いるのが好ましく、例えば銅板を用いて形成することができる。このような金属を用いた場合、電気的にも伝導率が高いことから、冷却板150と鉄心130との間を電気的に絶縁する必要がある。また、変圧器カバー140がアルミ材等の伝導性の材料で形成されている場合で、変圧器カバー140を絶縁する必要がある場合は、冷却板150との間も絶縁する必要がある。冷却板150の表面に絶縁被膜を形成するために、例えば冷却板150をエポキシ樹脂に浸漬する、あるいは冷却板150を加熱後にエポキシ樹脂ハウダーを吹き付け塗布して絶縁被膜を形成させることができる。あるいは、絶縁材を冷却板150と鉄心130及び変圧器カバー140(伝導性の材料の場合)との間に挟着させるようにしてもよい。冷却板150が鉄心130と絶縁されていれば、冷却板150と二次コイル110とを電気的に絶縁する必要はない。この場合、電気的な接続状態にすることで、より高い伝熱性が得られる。
【0026】
本発明の変圧器は、溶接機に用いられるものとして特に好適である。とりわけ溶接用ロボットに搭載して用いられる場合は、変圧器の小型化が求められており、本発明は変圧器カバーの温度上昇の抑制を実現しながら小型化を実現するものである。
【0027】
本実施形態の水冷変圧器100は、溶接用ロボットに搭載して用いることができる。溶接用ロボット搭載変圧器としては、一次コイル120の巻数を例えば54巻とし、二次コイルの巻数を2巻とすることで低電圧大電流を出力する水冷変圧器として用いることができる。本実施形態の水冷変圧器100を溶接用ロボット搭載用変圧器に用いることにより、変圧比が大きくなる場合でも、変圧器カバーの表面温度を基準温度以下に維持することが可能となる。
【0028】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る水冷変圧器の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における水冷変圧器の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態にかかる水冷変圧器の概略の構成を示す正面図及び背面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる水冷変圧器の上面図である。
【図3】二次コイル部材の水平断面図である。
【図4】従来の水冷変圧器の1例を示す側面図及び正面図である。
【図5】従来のロボット搭載型スポット溶接用水冷変圧器を示す正面図である。
【符号の説明】
【0030】
100 水冷変圧器
101、102,103 二次コイル側端子台
104 冷却水注入口
105 冷却水排出口
110 二次コイル
111 二次コイル部材
112 冷却水路
113 連絡水路
120 一次コイル
121 一次コイル部材
130 鉄心
140 変圧器カバー
150 冷却板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと、内部を貫通する冷却水路が形成された二次コイルと、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通するように配置された鉄心と、前記一次コイルと前記二次コイルと前記鉄心とで構成された変圧器本体の外表面を覆う変圧器カバーと、を備えた水冷変圧器であって、
前記変圧器本体と前記変圧器カバーとの間に設置された冷却板をさらに備え、
前記冷却板が前記二次コイルに伝熱可能に接続されている
ことを特徴とする水冷変圧器。
【請求項2】
前記鉄心が、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通してそれらの外周の一部を取り巻くように形成されており、前記鉄心の外周表面に前記冷却板が伝熱可能に密接されている
ことを特徴とする請求項1に記載の水冷変圧器。
【請求項3】
前記冷却板と前記変圧器カバーとは、伝熱可能に密接されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水冷変圧器。
【請求項4】
前記冷却板は、前記鉄心及び前記変圧器カバーと電気的に絶縁されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水冷変圧器。
【請求項5】
内部を貫通する冷却水路が形成された略環状形状の二次コイル部材を1又は2以上並列に配設して構成された二次コイルと、複数の巻線からなる略環状形状の一次コイル部材で前記二次コイル部材を挟着する一次コイルと、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通してそれらの外周の一部を取り巻くように形成された鉄心と、前記一次コイルと前記二次コイルと前記鉄心とで構成された変圧器本体の外表面を覆う変圧器カバーと、を備えた水冷変圧器であって、
前記変圧器本体と前記変圧器カバーとの間に設置された冷却板をさらに備え、
前記冷却板が前記二次コイルに伝熱可能に接続されており、前記伝熱板が、前記鉄心の外周表面及び前記変圧器カバーの内面と伝熱可能に密接されている
ことを特徴とする水冷変圧器。
【請求項6】
溶接機に用いられる変圧器である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水冷変圧器。
【請求項7】
溶接用ロボットに搭載して用いられる
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水冷変圧器。
【請求項1】
一次コイルと、内部を貫通する冷却水路が形成された二次コイルと、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通するように配置された鉄心と、前記一次コイルと前記二次コイルと前記鉄心とで構成された変圧器本体の外表面を覆う変圧器カバーと、を備えた水冷変圧器であって、
前記変圧器本体と前記変圧器カバーとの間に設置された冷却板をさらに備え、
前記冷却板が前記二次コイルに伝熱可能に接続されている
ことを特徴とする水冷変圧器。
【請求項2】
前記鉄心が、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通してそれらの外周の一部を取り巻くように形成されており、前記鉄心の外周表面に前記冷却板が伝熱可能に密接されている
ことを特徴とする請求項1に記載の水冷変圧器。
【請求項3】
前記冷却板と前記変圧器カバーとは、伝熱可能に密接されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水冷変圧器。
【請求項4】
前記冷却板は、前記鉄心及び前記変圧器カバーと電気的に絶縁されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水冷変圧器。
【請求項5】
内部を貫通する冷却水路が形成された略環状形状の二次コイル部材を1又は2以上並列に配設して構成された二次コイルと、複数の巻線からなる略環状形状の一次コイル部材で前記二次コイル部材を挟着する一次コイルと、前記一次コイル及び前記二次コイルを貫通してそれらの外周の一部を取り巻くように形成された鉄心と、前記一次コイルと前記二次コイルと前記鉄心とで構成された変圧器本体の外表面を覆う変圧器カバーと、を備えた水冷変圧器であって、
前記変圧器本体と前記変圧器カバーとの間に設置された冷却板をさらに備え、
前記冷却板が前記二次コイルに伝熱可能に接続されており、前記伝熱板が、前記鉄心の外周表面及び前記変圧器カバーの内面と伝熱可能に密接されている
ことを特徴とする水冷変圧器。
【請求項6】
溶接機に用いられる変圧器である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水冷変圧器。
【請求項7】
溶接用ロボットに搭載して用いられる
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水冷変圧器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2008−177184(P2008−177184A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6533(P2007−6533)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000139872)株式会社井上製作所 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000139872)株式会社井上製作所 (13)
【Fターム(参考)】
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