説明

水処理システム

【課題】システムを簡素化すると共に、コストの低減が可能な水処理システムを提供する。
【解決手段】散水部112からの散水により冷却した循環水W110を貯留部116に貯留する冷却塔110と、循環水ラインL110と、軟化水補給水ラインL123と、原水補給水ラインL122と、軟化水補給水ラインL123におけるスケールの発生を抑制するスケール抑制手段135と、軟化水を補給水として貯留部116に供給する時間帯及び原水を補給水として貯留部116に供給する時間帯を検出する補給水検出手段101と、補給水検出手段101により、原水を補給水として貯留部116に供給する時間帯が検出された場合には、スケール抑制手段135により循環水ラインL110におけるスケールの発生を抑制させる制御手段101と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔と被冷却装置との間で循環水を循環させる水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
商業ビル、工業プラント等においては、空調機や冷凍機に組み込まれた熱交換器等の被冷却装置(冷却負荷装置)を冷却するために、冷却水が用いられる。冷却水は、その節約を図る観点から、冷却塔で冷却しながら循環して用いられる(以下、循環する冷却水を適宜に「循環水」という)。循環水は、循環水ラインを介して、冷却塔と被冷却装置との間を循環する。
【0003】
循環水は、冷却塔で冷却される際にその一部が蒸発して、濃縮度が高くなる。循環水の濃縮度が高くなると、循環系で腐食やスケールが発生しやすくなるため、定期的に外部から水(補給水)を補給して、循環水を希釈する必要がある。この補給水には、配管や機器の内部にスケールが堆積するのを抑制するため、硬度成分の低い軟化水が用いられる。軟化水は、硬水軟化装置において、原水(硬水)を軟水化処理することにより製造される。
【0004】
硬水軟化装置に用いられるイオン交換樹脂は、所定の採水量に達すると、イオン交換能力が低下する。このため、イオン交換樹脂のイオン交換能力を回復させる再生処理を定期的に実施する必要がある。しかし、再生処理を実施している間は、軟水化処理を行うことができなくなる。そこで、24時間稼動の冷却塔において、複数の硬水軟化装置を設け、一つの硬水軟化装置で再生処理を実施している間、他の硬水軟化装置で軟水化処理を行うようにしたシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−15265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記システムによれば、複数の硬水軟化装置を交代で使用することができるため、再生処理のために軟水化処理を一時的に中断する必要がない。しかしながら、複数の硬水軟化装置を設けると、システムの構成が複雑になるうえ、コストが高くなるという課題があった。
従って、本発明は、システムを簡素化すると共に、コストの低減が可能な水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被冷却装置へ供給する循環水を散水部により通風空間に散水して冷却し、冷却した循環水を貯留部に貯留する冷却塔と、前記貯留部から前記被冷却装置へ循環水を供給する循環水供給ライン及び前記被冷却装置から前記散水部へ循環水を回収する循環水回収ラインにより構成され、循環水を前記冷却塔と前記被冷却装置との間で循環させる循環水ラインと、軟化水を補給水として前記貯留部に供給する軟化水補給水ラインと、原水を補給水として前記貯留部に供給する原水補給水ラインと、前記循環水ラインにおけるスケールの発生を抑制するスケール抑制手段と、軟化水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯及び原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯を検出する補給水検出手段と、前記補給水検出手段により、原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合には、前記スケール抑制手段により前記循環水ラインにおけるスケールの発生を抑制させる制御手段と、を備える水処理システムに関する。
【0008】
また、前記水処理システムにおいて、前記スケール抑制手段は、循環水及び/又は補給水にスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給装置であり、前記制御手段は、前記補給水検出手段により原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合には、前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させることが好ましい。
【0009】
また、前記水処理システムにおいて、前記スケール抑制手段は、循環水及び/又は補給水にスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給装置であり、前記制御手段は、(i)前記補給水検出手段により軟化水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合には、前記循環水ラインにおけるスケール防止剤の濃度が、軟化水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯においてスケールの発生を抑制するのに必要な最低限の濃度である第1濃度となるように前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させる処理を実行し、(ii)前記補給水検出手段により原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合には、前記循環水ラインにおけるスケール防止剤の濃度が第1濃度よりも高い第2濃度となるように前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させる処理を実行することが好ましい。
【0010】
また、前記水処理システムにおいて、前記スケール抑制手段は、循環水及び/又は補給水にスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給装置であり、前記循環水ラインを流通する循環水の硬度を検出する硬度検出手段を備え、前記制御手段は、前記補給水検出手段により原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合に、(i)前記硬度検出手段により検出された循環水の硬度が、原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯においてスケールの発生が予想される硬度である警戒硬度を上回れば、前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させる処理を実行し、(ii)前記硬度検出手段により検出された循環水の硬度が警戒硬度を下回れば、前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させない処理を実行することが好ましい。
【0011】
また、前記水処理システムにおいて、循環水及び/又は補給水に防食剤を供給する防食剤供給手段を備え、前記制御手段は、前記補給水検出手段により原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合に、(i)前記硬度検出手段により検出された循環水の硬度が警戒硬度を上回れば、前記スケール防止剤供給装置からにスケール防止剤を供給させると共に、前記防食剤供給手段から防食剤を供給させない処理を実行し、(ii)前記硬度検出手段により検出された循環水の硬度が警戒硬度を下回れば、前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させないようにすると共に、前記防食剤供給手段から防食剤を供給させる処理を実行することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、システムを簡素化すると共に、コストの低減が可能な水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の水処理システム100を示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態の水処理システム100の制御に係る機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態の制御部102が軟水化処理及び再生処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態の制御部102が軟水化処理及び再生処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】第3実施形態の水処理システム100Bを示す概略構成図である。
【図6】第3実施形態の水処理システム100Bの制御に係る機能ブロック図である。
【図7】第3実施形態の制御部102が軟水化処理及び再生処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第3実施形態の制御部102が軟水化処理及び再生処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態の水処理システム100の概略構成について説明する。図1は、第1実施形態の水処理システム100を示す概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、第1実施形態の水処理システム100は、空調機や冷凍機に組み込まれた熱交換器等の被冷却装置131を冷却するために、循環水W110(冷却水)を循環させるシステムである。循環水W110は、その節約を図る観点から、冷却塔110で冷却しながら循環して用いられる。本実施形態における冷却塔110は、いわゆる開放式冷却塔である。
【0016】
第1実施形態の水処理システム100は、主な構成として、冷却塔110と、被冷却装置131と、電気伝導率測定装置133と、硬度測定装置134と、スケール抑制手段としてのスケール防止剤供給装置135と、システム制御装置101と、を備える。また、水処理システム100は、循環水ラインL110と、補給水ラインL120と、を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、図1では、電気的な接続の経路を破線で示している。
【0017】
冷却塔110は、被冷却装置131を冷却するための循環水W110を冷却する設備である。冷却塔110は、塔本体111と、散水部112と、貯留部116と、ルーバ118と、ファン120と、上部開口部121と、ファン駆動部122と、を備える。
【0018】
塔本体111は、冷却塔110の外郭を形成する筐体である。塔本体111の上部には、複数の散水部112、ファン120、上部開口部121及びファン駆動部122が設けられている。塔本体111の下部には、貯留部116が設けられている。塔本体111の側部には、ルーバ118が設けられている。
【0019】
散水部112は、被冷却装置131を冷却する循環水W110を冷却するために、循環水W110を散布する部位である。散水部112は、循環水回収ラインL112(後述)を介して被冷却装置131から回収された循環水W110を、塔本体111の内部に散布(散水)する。
【0020】
散水部112は、上部水槽113と、散水口114とを備える。上部水槽113には、循環水回収ラインL112(循環水ラインL110)が接続されている。上部水槽113は、循環水回収ラインL112を介して被冷却装置131から回収された循環水W110を貯留する。散水口114は、上部水槽113に貯留された循環水W110を散布するために上部水槽113の下側に形成されたノズルからなる。
【0021】
貯留部116は、散水部112から散布された循環水W110を貯留する部位である。貯留部116は、塔本体111の下部に設けられている。散水部112から下方に向けて散布された循環水W110は、塔本体111の内部を落下する過程において、温度の低い外気E1(後述)と熱交換することにより冷却される。貯留部116の底部には、循環水ラインL110の循環水供給ラインL111(後述)が接続される。貯留部116に貯留された循環水W110は、循環水供給ラインL111を介して被冷却装置131へ供給される。
【0022】
ルーバ118は、塔本体111の内部へ外気(エア)E1を導入するための通気孔である。塔本体111の外部の外気E1は、ルーバ118を介して塔本体111の内部へ導入される。
【0023】
上部開口部121は、塔本体111の上部に形成された開口部である。上部開口部121は、塔本体111の内部に位置する外気E1を塔本体111の外部に排出する。上部開口部121から排出されたエアを「排気E2」ともいう。
【0024】
ファン120は、上部開口部121に配置されている。ファン120は、ファン駆動部122の回転軸(符号略)と連結されている。ファン120は、回転することにより内部に負圧を発生させ、ルーバ118から塔本体111の内部へ外気E1を導入すると共に、塔本体111の内部に導入された外気E1を、上部開口部121を介して塔本体111の外部に排出させる。
【0025】
ファン駆動部122は、ファン120を回転させる駆動源である。ファン駆動部122は、モータ(不図示)により構成される。ファン駆動部122は、ファン120の上方に配置されている。ファン駆動部122は、システム制御装置101と電気的に接続されている。ファン駆動部122の運転(駆動及び停止)、回転速度の調整(変速)等は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。
【0026】
循環水ラインL110は、冷却塔110と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させるラインである。循環水ラインL110は、貯留部116に貯留された循環水W110を冷却塔110から被冷却装置131へ供給する循環水供給ラインL111と、循環水W110を被冷却装置131から冷却塔110の散水部112へ回収する循環水回収ラインL112と、から構成される。
【0027】
循環水供給ラインL111は、冷却塔110の貯留部116と被冷却装置131との間を接続するラインである。循環水供給ラインL111は、貯留部116に貯留された循環水W110を被冷却装置131に供給することができる。
【0028】
循環水供給ラインL111の途中には、循環水ポンプ132が接続されている。循環水ポンプ132は、循環水ラインL110(循環水供給ラインL111、循環水回収ラインL112)の上流側から下流側へ向けて、循環水W110を送り出すことができる。循環水ポンプ132は、システム制御装置101と電気的に接続されている。循環水ポンプ132の運転(駆動及び停止)は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。循環水供給ラインL111の接続部J112には、測定ラインL113の上流側の端部が接続されている。
【0029】
循環水回収ラインL112は、被冷却装置131と冷却塔110の散水部112との間を接続するラインである。循環水回収ラインL112は、被冷却装置131において熱交換により加温された循環水W110を、冷却塔110の散水部112へ回収することができる。循環水回収ラインL112の下流側は、分岐部J111において複数のラインに分岐している。分岐したラインは、複数の散水部112にそれぞれ接続されている。
【0030】
被冷却装置131は、循環水W110による冷却が必要な熱交器機等の各種装置である。被冷却装置131は、例えば、各種の化学プラントのターボ冷凍機や吸収冷凍機、建築物の空調用冷却機、食品工場の冷水製造機や真空冷却機等である。被冷却装置131は、内部に循環水流路(不図示)を備える。
【0031】
被冷却装置131において、循環水流路の一方の端部には、循環水供給ラインL111の下流側の端部が接続されている。また、被冷却装置131において、循環水流路の他方の端部には、循環水回収ラインL112の上流側の端部が接続されている。従って、循環水流路は、循環水供給ラインL111及び循環水回収ラインL112と共に、冷却塔110の塔本体111と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させるための循環経路を形成する。
【0032】
電気伝導率測定装置133は、循環水W110の電気伝導率を測定する装置である。電気伝導率測定装置133は、測定ラインL113を介して、接続部J112において循環水ラインL110に接続されている。また、電気伝導率測定装置133は、システム制御装置101と電気的に接続されている。電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率は、システム制御装置101へ検出信号として送信される。電気伝導率測定装置133は、所定の時間間隔(又はリアルタイム)で電気伝導率を測定し、システム制御装置101へ送信する。
【0033】
硬度測定装置134は、循環水W110の硬度Hを測定する装置である。硬度測定装置134は、全硬度を測定できるものでもよく、カルシウム硬度のみを測定できるものでもよい。硬度測定装置134は、測定ラインL113を介して、接続部J112において循環水供給ラインL111に接続されている。
【0034】
硬度測定装置134は、システム制御装置101と電気的に接続されている。硬度測定装置134で測定された硬度Hに関する情報は、システム制御装置101へ検出信号として送信される。硬度測定装置134は、所定の時間間隔(又はリアルタイム)で硬度Hを測定し、システム制御装置101へ送信する。
【0035】
硬度測定装置134としては、例えば、カルマガイト、エリオクロムブラックT、NN試薬等の色素を含む試薬を試料水に添加したときの呈色反応により、硬度を検出する比色式センサが用いられる。比色式センサは、所定量の試料水を収容した透明容器へ試薬を添加し、色素の反応による試料水の色相変化を、特定波長の光を照射したときの吸光度から測定する。そして、比色式センサは、測定された吸光度に基づいて、試料水中の硬度を判定する。なお、硬度測定装置134は、比色式センサに制限されず、電極式センサ、滴定式センサ等でもよい。
【0036】
スケール防止剤供給装置135は、冷却塔110の貯留部116へスケール防止剤を供給する装置である。スケール防止剤供給装置135は、スケール防止剤供給ラインL140を介して、冷却塔110の貯留部116に接続されている。スケール防止剤は、水中でのスケールの成長、或いは配管表面等へのスケールの堆積を防止するために用いられる薬品である。ここで利用可能なスケール防止剤としては、例えば、カルボン酸系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ホスホン酸系キレート剤、カルボン酸系キレート剤等を挙げることができる。
【0037】
スケール防止剤供給装置135は、システム制御装置101と電気的に接続されている。スケール防止剤供給装置135から貯留部116へスケール防止剤を供給するタイミング及び供給量は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。
【0038】
一方、冷却塔110には、補給水ラインL120が接続されている。補給水ラインL120は、補給水を冷却塔110の貯留部116へ補給するラインである。補給水ラインL120は、第1補給水ラインL121と、第2補給水ラインL122と、第3補給水ラインL123と、第4補給水ラインL124と、第5補給水ラインL125と、第6補給水ラインL126と、を備える。
【0039】
第1補給水ラインL121の下流側は、分岐部J121において、第2補給水ラインL122及び第5補給水ラインL125に分岐している。第2補給水ラインL122及び第5補給水ラインL125の下流側は、集合部J122において、第3補給水ラインL123の上流側と接続されている。第3補給水ラインL123の下流側は、分岐部J123において、第4補給水ラインL124及び第6補給水ラインL126に分岐している。第4補給水ラインL124及び第6補給水ラインL126の下流側の端部には、それぞれ冷却塔110の塔本体111に接続されている。
【0040】
第1補給水ラインL121の上流側は、水道水や工業用水等の原水W120の供給源(図示せず)に接続されている。第1補給水ラインL121には、上流側から順に、原水ポンプ141及び原水バルブ142が設けられている。また、第2補給水ラインL122、第5補給水ラインL125及び第6補給水ラインL126には、それぞれ硬水軟化装置143、バイパスバルブ144及び補給水バルブ145が設けられている。
【0041】
原水ポンプ141は、補給水ラインL120の上流側から下流側へ向けて、原水W120を送り出すことができる。原水ポンプ141は、システム制御装置101と電気的に接続されている。原水ポンプ141の運転(駆動及び停止)は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。
【0042】
原水バルブ142は、原水ポンプ141の吐出側において、補給水ラインL120を開閉することができる。原水バルブ142は、システム制御装置101と電気的に接続されている(図示せず)。原水バルブ142における弁体の開閉は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。
【0043】
硬水軟化装置143は、原水(硬水)W120を軟水化処理し、軟化水W121を製造する装置である。硬水軟化装置143は、原水W120に含まれる硬度成分、具体的には、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを低減し、軟化水W121を製造することができる。
【0044】
硬水軟化装置143は、軟水化処理を行うことができれば特に制限されない。硬水軟化装置143としては、陽イオン交換樹脂からなる単床を利用してイオン交換を行うことにより、軟水化処理を行う陽イオン交換装置が特に好ましい。また、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂からなる混床を利用してイオン交換を行うことにより、脱イオン処理を行うイオン交換装置、逆浸透膜(RO膜)を利用して膜分離を行うことにより、脱イオン処理を行う逆浸透膜装置、イオン交換膜を利用して膜分離を行うことにより、脱イオン処理を行う電気透析装置等を適用することもできる。
【0045】
硬水軟化装置143は、陽イオン交換樹脂床塔としての圧力タンクと、プロセス制御バルブと、を備える(いずれも不図示)。プロセス制御バルブは、内部の流路を切り替える複数の弁(不図示)を有する。
【0046】
プロセス制御バルブは、システム制御装置101と電気的に接続されている。プロセス制御バルブにおける各弁の開閉は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。システム制御装置101は、プロセス制御バルブにおいて、各弁の開閉を制御することにより、内部の流路を切り替えることができる。システム制御装置101は、プロセス制御バルブの内部の流路を切り替えることにより、軟水化処理又は再生処理(再生プロセス)のいずれかの処理を実行することができる。
【0047】
軟水化処理は、圧力タンクに原水W120を通過させることにより、軟化水W121を製造するプロセスである。再生処理は、圧力タンクに再生液(例えば、塩化ナトリウム水溶液)等を流通させることにより、陽イオン交換樹脂床塔のイオン交換能力を回復させるプロセスである。
【0048】
また、硬水軟化装置143は、内部に設けられた流量計(不図示)により、軟水化処理により製造された軟化水W121の積算流量(すなわち、採水量)を計測する。そして、硬水軟化装置143は、製造した軟化水W121の積算流量が所定量に達した場合には、システム制御装置101に再生要求信号を送信する。また、硬水軟化装置143は、再生処理の終了を再生終了信号としてシステム制御装置101へ送信する。
【0049】
バイパスバルブ144は、硬水軟化装置143の軟水化処理の実行時に、第5補給水ラインL125を閉鎖する(すなわち、硬水軟化装置143に通水する)ことにより、第2補給水ラインL122を介して軟化水W121を第3補給水ラインL123へ向けて供給する給水設備である。また、バイパスバルブ144は、硬水軟化装置143の再生処理の実行時に、第5補給水ラインL125を開放する(すなわち、硬水軟化装置143をバイパスする)ことにより、第5補給水ラインL125を介して原水W120を第3補給水ラインL123へ向けて供給する給水設備である。バイパスバルブ144は、システム制御装置101と電気的に接続されている。バイパスバルブ144における弁体の開閉は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0050】
補給水バルブ145は、第6補給水ラインL126を開閉することにより、貯留部116に対して原水W120又は軟化水W121を補給水として強制的に供給する給水設備である。補給水バルブ145は、システム制御装置101と電気的に接続されている。補給水バルブ145における弁体の開閉は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0051】
また、第4補給水ラインL124の下流側の端部には、給水栓146が設けられている。給水栓146は、貯留部116に貯留される循環水W110の水位(すなわち、水量)を管理するボールタップ式の給水設備である。給水栓146において、貯留部116に貯留される循環水W110の水位が低下すると、ボールタップが作動し、第4補給水ラインL124を流通する原水W120又は軟化水W121が補給水として貯留部116へ補給される。
【0052】
上記の補給水ラインL120の構成により、バイパスバルブ144を閉状態に設定し、且つ硬水軟化装置143の軟水化処理を実行している場合には、第2補給水ラインL122、第3補給水ラインL123、第4補給水ラインL124及び第6補給水ラインL126は、軟化水補給水ラインとして機能する。一方、バイパスバルブ144を開状態に設定し、且つ硬水軟化装置143の再生処理を実行している場合には、第5補給水ラインL125、第3補給水ラインL123、第4補給水ラインL124及び第6補給水ラインL126は、原水補給水ラインとして機能する。
【0053】
排水ラインL130は、貯留部116の底部に接続され、下方に延びている。排水ラインL130は、後述するブロー処理において、冷却塔110の貯留部116に貯留された循環水W110を、水処理システム100の系外に強制的に排出するラインである。排水ラインL130の途中には、排水バルブ147が接続されている。排水バルブ147は、排水ラインL130を開閉することができる。排水バルブ147は、システム制御装置101と電気的に接続されている。排水バルブ147における弁体の開閉は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。
【0054】
更に、冷却塔110には、オーバーフローラインL150が接続されている。オーバーフローラインL150は、補給水バルブ145を開放して原水W120又は軟化水W121を強制的に供給した場合に、冷却塔110の貯留部116から溢れた循環水W110を、水処理システム100の系外に排出するラインである。すなわち、オーバーフローラインL150は、後述するブロー処理において、排水バルブ147の開閉制御に替えて、補給水バルブ145を開閉制御することにより、冷却塔110の貯留部116に貯留された循環水W110を、水処理システム100の系外に強制的に排出するラインとして機能する。
【0055】
次に、図2を参照して、第1実施形態の水処理システム100の制御に係る機能について説明する。図2は、第1実施形態の水処理システム100の制御に係る機能ブロック図である。
【0056】
システム制御装置101は、第1実施形態の水処理システム100における各部の動作を制御する。図2に示すように、システム制御装置101は、例えば、ファン駆動部122、循環水ポンプ132、原水ポンプ141、バイパスバルブ144、補給水バルブ145、排水バルブ147、硬水軟化装置143及びスケール防止剤供給装置135に電気的に接続される。
【0057】
また、システム制御装置101は、水処理システム100の各測定装置と電気的に接続され、これら測定装置から測定情報を受信する。例えば、システム制御装置101は、電気伝導率測定装置133と電気的に接続され、電気伝導率測定装置133において測定された循環水W110の電気伝導率に関する情報を電気伝導率検出信号として受信する。また、システム制御装置101は、硬度測定装置134と電気的に接続され、硬度測定装置134において測定された循環水W110の硬度に関する情報を硬度検出信号として受信する。
【0058】
システム制御装置101において、受信した電気伝導率及び硬度は、メモリ103(後述)に記憶される。また、電気伝導率及び硬度は、所定の時間間隔(又はリアルタイム)で最新の値に順次更新される。
【0059】
システム制御装置101は、制御部102と、メモリ103と、を備える。制御部102は、濃縮度判定部181、補給水制御部182、補給水検出手段としての再生制御部183、及び制御手段としての水質制御部184を備える。
【0060】
濃縮度判定部181は、電気伝導率測定装置133により測定される循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上であるか否かを判定する。第1閾値EC1としては、例えば、スライムの発生の抑制を確保できる上限の電気伝導率が設定される。
【0061】
補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率が第1閾値EC1以上であると判定された場合には、循環水W110の濃縮度が高いため、ブロー処理を実行することにより、貯留部116へ原水W120又は軟化水W121のいずれかを補給水として補給させる。
【0062】
ブロー処理では、循環水W110の排水及び補給を同時に実施する。循環水W110を排水する場合、次のいずれかの方法によって行われる。
【0063】
(強制排水ブロー)
補給水制御部182は、排水バルブ147を開状態として、冷却塔110の貯留部116に貯留された循環水W110の一部を排水ラインL130から外部に排出する。循環水W110の一部が排出されると、貯留部116の水位が低下するため、給水栓146のボールタップが作動し、新たな補給水が第4補給水ラインL124を通じて補給される。なお、この強制排水ブローを実施する場合には、補給水バルブ145は閉状態のままとし、開閉操作は行わない。
【0064】
(強制補水ブロー)
補給水制御部182は、補給水バルブ145を開状態として、第6補給水ラインL126を通じて新たな補給水を貯留部116に強制的に補給する。補給水が補給されると、貯留部116の水位が上昇するため、溢れた循環水W110がオーバーフローラインL150から外部に排出される。なお、この強制補水ブローを実施する場合には、排水バルブ147は閉状態のままとし、開閉操作は行わない。
【0065】
補給水制御部182は、通常運転時においては、バイパスバルブ144を閉状態にして、貯留部116へ補給水を供給するラインとして軟化水補給水ライン(すなわち、第2補給水ラインL122、第3補給水ラインL123、第4補給水ラインL124及び第6補給水ラインL126)を設定する。そして、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC以上であると判定された場合には、補給水バルブ145又は排水バルブ147を制御して、貯留部116へ軟化水W121を補給水として補給させる。
【0066】
また、補給水制御部182は、硬水軟化装置143の再生処理時においては、バイパスバルブ144を開状態にして、貯留部116へ補給水を供給するラインとして原水補給水ライン(すなわち、第5補給水ラインL125、第3補給水ラインL123、第4補給水ラインL124及び第6補給水ラインL126)を設定する。そして、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが所定の第1閾値EC1以上である(循環水W110の濃縮度が高い)と判定された場合には、補給水バルブ145又は排水バルブ147を制御して、貯留部116へ原水W120を補給水として補給させる。
【0067】
その後、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満である(循環水W110の濃縮度が低い;EC1>EC2)と判定された場合には、補給水バルブ145又は排水バルブ147を制御して、貯留部116への原水W120又は軟化水W121の補給を停止する。この結果、貯留部116における循環水W110の濃縮度が低下する。
【0068】
このように、本実施形態の補給水制御部182は、硬水軟化装置143の軟水化処理時には、貯留部116へ補給水を供給するラインとして軟化水補給水ラインを設定して、貯留部116へ軟化水W121を補給水として補給させる。一方、補給水制御部182は、硬水軟化装置143の再生処理時には、貯留部116へ補給水を供給するラインとして原水補給水ラインを設定して、貯留部116へ原水W120を補給水として補給させる。
【0069】
再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生要求信号を受信することにより、原水W120を補給水として貯留部116へ供給する時間帯、すなわち、再生処理を実行する時間帯を検出する。再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生要求信号を受信すると、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに弁制御のための駆動信号を送信して、所定の弁の開閉を制御する。これにより、プロセス制御バルブでは、内部の流路が再生処理のための流路に切り替えられる。この後、再生制御部183は、硬水軟化装置143の圧力タンクに再生液等を流通させることにより、再生処理を開始させる。
【0070】
また、再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生終了信号を受信することにより、軟化水W121を補給水として貯留部116へ供給する時間帯、すなわち、軟水化処理を実行する時間帯を検出する。再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生終了信号を受信すると、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに駆動信号を送信して、所定の弁の開閉を制御する。これにより、プロセス制御バルブでは、内部の流路が軟水化処理のための流路に切り替えられる。この後、再生制御部183は、硬水軟化装置143の圧力タンクに原水W120を流通させることにより、軟水化処理を開始させる。
【0071】
水質制御部184は、硬水軟化装置143からの再生要求信号を再生制御部183が受信した場合、すなわち、再生制御部183において、再生処理を実行する時間帯が検出された場合には、スケール防止剤供給装置135に駆動信号を送信して、貯留部116へスケール防止剤を供給させる。本実施形態において、スケール防止剤は、再生処理が終了するまでの間、原水W120の補給量に比例して循環水W110に供給される。具体的には、例えば、第3補給水ラインL123に瞬間流量計を設けておき、検出される原水W120の瞬間流量に比例する量のスケール防止剤を、原水W120の補給に同期して供給することができる。また、例えば、第3補給水ラインL123に積算流量計を設けておき、再生処理中の原水W120の積算流量に比例する量のスケール防止剤を、再生処理の終了時点に一括して供給することもできる。
【0072】
なお、再生処理時において、スケール防止剤の使用量を少なくするためには、循環水ラインL110を流通する循環水W110の硬度を出来る限り低く維持することが望ましい。このため、再生処理の実行中においては、ブロー処理を開始する第1閾値EC1、又はブロー処理を終了する第2閾値EC2を通常よりも高い値に設定することにより、原水W120の補給量を出来る限り少なく(すなわち、ブロー処理の頻度又はブロー量を出来る限り少なく)するように制御することも好適である。通常、硬水軟化装置143の再生処理時間は、概ね2時間前後で終了するので、原水W120の補給を行う場合よりも、軟化水W121の濃縮を進行させた場合の方が循環水W110の硬度が低くなる場合も多い。そのため、ブロー処理の頻度又はブロー量を抑制することにより、スケール防止剤の使用量も抑制することができる。
【0073】
メモリ103は、水処理システム100の制御に必要な制御プログラムや各種データ等を記憶する。具体的には、メモリ103には、水処理システム100の制御に必要な各種機能を動作させる制御プログラム、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率、硬度測定装置134で測定された硬度、各種閾値や各種計算値等が、それぞれに割り当てられた所定の記憶エリアに記憶される。
【0074】
次に、第1実施形態の水処理システム100において、軟水化処理及び再生処理を実行する場合の動作を、図3を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態の制御部102が軟水化処理及び再生処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートの制御は、メモリ103に記憶された制御プログラムに基づいて、制御部102(補給水制御部182、再生制御部183、水質制御部184)により実行される。
【0075】
図3に示すように、ステップST101において、再生制御部183は、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに弁制御のための駆動信号を送信して、プロセス制御バルブの内部を軟水化処理のための流路に切り替える動作を実行させる。プロセス制御バルブの流路を、軟水化処理のための流路に切り替えることにより、再生処理が停止する。
ステップST102において、補給水制御部182は、バイパスバルブ144を閉状態に制御して、貯留部116へ補給水を供給するラインとして軟化水補給水ラインを設定する。
【0076】
ステップST103において、再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生要求信号を受信したか否かを判定する。このステップST103において、再生制御部183が、再生要求信号を受信した(YES)と判定した場合には、処理はステップST104へ移行する。また、ステップST103において、再生制御部183が、再生要求信号を受信していない(NO)と判定した場合には、処理はステップST111へ移行する。
【0077】
ステップST104(ステップST103:YES)において、補給水制御部182は、バイパスバルブ144を開状態に制御して、貯留部116へ補給水を供給するラインとして原水補給水ラインを設定する。
【0078】
ステップST105において、再生制御部183は、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに弁制御のための駆動信号を送信して、プロセス制御バルブの内部を再生処理のための流路に切り替える動作を実行させる。プロセス制御バルブの流路を、再生処理のための流路に切り替えることにより、軟水化処理が停止する。
【0079】
ステップST106において、再生制御部183は、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに再生処理のための駆動信号を送信して、圧力タンクに再生液等を流通させることにより、再生処理を開始させる。
【0080】
ステップST107において、再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生終了信号を受信したか否かを判定する。このステップST107において、再生制御部183が、再生終了信号を受信した(YES)と判定した場合には、処理はステップST101へ戻る。また、ステップST107において、再生制御部183が、再生終了信号を受信していない(NO)と判定した場合には、処理はステップST121へ移行する。
【0081】
さて、ステップST111(ステップST103:NO)において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上であるか否かを判定する。このステップST111において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が高いため、処理はステップST112へ移行する。また、ステップST111において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1未満である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低いため、処理はステップST113へ移行する。
【0082】
ステップST112(ステップST111:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116へ軟化水W121を補給水として補給させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を開始する。
【0083】
ステップST113において、水質制御部184は、貯留部116へ軟化水W121を補給中か否かを判定する。このステップST113において、水質制御部184が、貯留部116へ軟化水W121を補給中である(YES)と判定した場合には、処理はステップST114へ移行する。また、ステップST113において、水質制御部184が、貯留部116へ軟化水W121を補給中でない(NO)と判定した場合には、処理はステップST103へ移行する。
【0084】
ステップST114(ステップST113:YES)において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満であるか否かを判定する。このステップST114において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下しているため、処理はステップST115へ移行する。また、ステップST114において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2以上である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下していないため、YESと判定されるまでステップST114をループする。
【0085】
ステップST115(ステップST114:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116への軟化水W121の補給を停止させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を終了する。ブロー処理が終了すると、処理はステップST103へ移行する。
【0086】
更に、ステップST121(ステップST107:NO)において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上であるか否かを判定する。このステップST121において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が高いため、処理はステップST122へ移行する。また、ステップST121において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1未満である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低いため、処理はステップST123へ移行する。
【0087】
ステップST122(ステップST121:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116へ原水W120を補給水として補給させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を開始する。
【0088】
ステップST123において、水質制御部184は、貯留部116へ原水W120を補給中か否かを判定する。このステップST123において、水質制御部184が、貯留部116へ原水W120を補給中である(YES)と判定した場合には、処理はステップST124へ移行する。また、ステップST123において、水質制御部184が、貯留部116へ原水W120を補給中でない(NO)と判定した場合には、処理はステップST107へ移行する。
ステップST124において、水質制御部184は、スケール防止剤供給装置135に駆動信号を送信して、貯留部116へスケール防止剤を供給させる。
【0089】
ステップST125において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満であるか否かを判定する。このステップST125において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下しているため、処理はステップST126へ移行する。また、ステップST125において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2以上である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下していないため、処理はステップST124へ戻る。
【0090】
ステップST126(ステップST125:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116への原水W120の補給を停止させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を終了する。
ステップST127において、水質制御部184は、スケール防止剤供給装置135に停止信号を送信して、貯留部116へのスケール防止剤の供給を停止させる。スケール防止剤の供給が停止すると、処理はステップST107へ移行する。
【0091】
上述した第1実施形態の水処理システム100によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
第1実施形態の水処理システム100は、軟化水W121を補給水として貯留部116へ供給する時間帯及び原水W120を補給水として貯留部116へ供給する時間帯を検出する再生制御部183と、再生制御部183において、原水W120を補給水として貯留部116へ供給する時間帯が検出された場合には、スケール防止剤供給装置135から冷却塔110の貯留部116へスケール防止剤を供給させる水質制御部184と、を備える。
【0092】
そのため、硬水軟化装置143を再生処理している間、貯留部116には硬度の高い原水W120が補給されるが、同時にスケール防止剤が供給されるので、循環水系におけるスケールの発生を抑制することができる。これによれば、冷却塔110を24時間稼動する場合に、硬水軟化装置143において軟水化処理が実施できない期間においても、循環水W110の水質は、スケールの発生を抑制することができるレベルに維持される。従って、第1実施形態の水処理システム100によれば、冷却塔110を24時間稼動する場合においても、硬水軟化装置143を1台とすることができるので、システムを簡素化できると共に、設備コストの低減が可能となる。
【0093】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態の水処理システム100Aの全体的な構成は、第1実施形態の水処理システム100と同じであるため、第1実施形態との相違点についてのみ説明する(図1参照)。第2実施形態において、第1実施形態と同等部分については、同一符号を用いて説明する。
【0094】
第2実施形態の水処理システム100Aは、制御部102において、水質制御部184A(図2参照)の機能が第1実施形態と異なる。制御部102における他の機能は第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0095】
第2実施形態の水質制御部184Aは、再生制御部183において、軟化水W121を補給水として貯留部116へ供給する時間帯、すなわち、軟水化処理を実行する時間帯が検出された場合に、循環水ラインL110におけるスケール防止剤の濃度が、軟化水W121を補給水として貯留部116へ供給する時間帯において、スケールの発生を抑制するのに必要な最低限の濃度である第1濃度となるように貯留部116へスケール防止剤を供給させる。
【0096】
また、水質制御部184Aは、再生制御部183において、原水W120を補給水として貯留部116に供給する時間帯、すなわち、再生処理を実行する時間帯が検出された場合に、循環水ラインL110におけるスケール防止剤の濃度が、第1濃度よりも高い第2濃度となるように貯留部116へスケール防止剤を供給させる。
【0097】
上述したように、第2実施形態の水質制御部184Aでは、軟水化処理を実行する時間帯及び再生処理を実行する時間帯のいずれにおいても、貯留部116へスケール防止剤を供給させる。そして、水質制御部184Aは、軟水化処理を実行する時間帯か、再生処理を実行する時間帯かに基づいて、スケール防止剤の濃度(典型的には、補給水に対する供給濃度)を制御する。なお、スケール防止剤の第1濃度及び第2濃度は、補給水の硬度等により適宜に設定されるが、少なくとも、第1濃度<第2濃度となるように設定される。
【0098】
次に、第2実施形態の水処理システム100Aにおいて、軟水化処理及び再生処理を実行する場合の動作を、図4を参照しながら説明する。図4は、第2実施形態の制御部102が軟水化処理及び再生処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートの制御は、メモリ103に記憶された制御プログラムに基づいて、制御部102により実行される。
【0099】
図4に示すように、ステップST201において、再生制御部183は、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに弁制御のための駆動信号を送信して、プロセス制御バルブの内部を軟水化処理のための流路に切り替える動作を実行させる。プロセス制御バルブの流路を、軟水化処理のための流路に切り替えることにより、再生処理が停止する。
ステップST202において、補給水制御部182は、バイパスバルブ144を閉状態に制御して、貯留部116へ補給水を供給するラインとして軟化水補給水ラインを設定する。
【0100】
ステップST203において、再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生要求信号を受信したか否かを判定する。このステップST203において、再生制御部183が、再生要求信号を受信した(YES)と判定した場合には、処理はステップST204へ移行する。また、ステップS203において、再生制御部183が、再生要求信号を受信していない(NO)と判定した場合には、処理はステップST211へ移行する。
【0101】
ステップST204(ステップST203:YES)において、補給水制御部182は、バイパスバルブ144を開状態に制御して、貯留部116へ補給水を供給するラインとして原水補給水ラインを設定する。
ステップST205において、再生制御部183は、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに弁制御のための駆動信号を送信して、プロセス制御バルブの内部を再生処理のための流路に切り替える動作を実行させる。プロセス制御バルブの流路を、再生処理のための流路に切り替えることにより、軟水化処理が停止する。
【0102】
ステップST206において、再生制御部183は、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに再生処理のための駆動信号を送信して、圧力タンクに再生液等を流通させることにより、再生処理を開始させる。
【0103】
ステップST207において、再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生終了信号を受信したか否かを判定する。このステップST207において、再生制御部183が、再生終了信号を受信した(YES)と判定した場合には、処理はステップST201へ戻る。また、ステップST207において、再生制御部183が、再生終了信号を受信していない(NO)と判定した場合には、処理はステップST221へ移行する。
【0104】
さて、ステップST211(ステップST203:NO)において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上であるか否かを判定する。このステップST211において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が高いため、処理はステップST212へ移行する。また、ステップST211において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1未満である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低いため、処理はステップST213へ移行する。
【0105】
ステップST212(ステップST211:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116へ軟化水W121を補給水として補給させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を開始する。
【0106】
ステップST213において、水質制御部184は、貯留部116へ軟化水W121を補給中か否かを判定する。このステップST213において、水質制御部184が、貯留部116へ軟化水W121を補給中である(YES)と判定した場合には、処理はステップST214へ移行する。また、ステップST213において、水質制御部184が、貯留部116へ軟化水W121を補給中でない(NO)と判定した場合には、処理はステップST203へ移行する。
【0107】
ステップST214(ステップST213:YES)において、水質制御部184は、スケール防止剤供給装置135に駆動信号を送信して、循環水ラインL110におけるスケール防止剤の濃度が、第1濃度となるように貯留部116へスケール防止剤を供給させる。
【0108】
ステップST215において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満であるか否かを判定する。このステップST215において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下しているため、処理はステップST216へ移行する。また、ステップST215において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2以上である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下していないため、処理はステップST214へ戻る。
【0109】
ステップST216(ステップST215:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116への軟化水W121の補給を停止させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を終了する。
ステップST217において、水質制御部184は、スケール防止剤供給装置135に停止信号を送信して、貯留部116へのスケール防止剤の供給を停止させる。スケール防止剤の供給が停止すると、処理はステップST203へ移行する。
【0110】
更に、ステップST221(ステップST207:NO)において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上であるか否かを判定する。このステップST221において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が高いため、処理はステップST222へ移行する。また、ステップST221において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1未満である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低いため、処理はステップST223へ移行する。
【0111】
ステップST222(ステップST221:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116へ原水W120を補給水として補給させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を開始する。
【0112】
ステップST223において、水質制御部184は、貯留部116へ原水W120を補給中か否かを判定する。このステップST223において、水質制御部184が、貯留部116へ原水W120を補給中である(YES)と判定した場合には、処理はステップST224へ移行する。また、ステップST223において、水質制御部184が、貯留部116へ原水W120を補給中でない(NO)と判定した場合には、処理はステップST207へ移行する。
【0113】
ステップST224(ステップST223:YES)において、水質制御部184は、スケール防止剤供給装置135に駆動信号を送信して、循環水ラインL110におけるスケール防止剤の濃度が、第2濃度となるように貯留部116へスケール防止剤を供給させる。
【0114】
ステップST225において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満であるか否かを判定する。このステップST225において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下しているため、処理はステップST226へ移行する。また、ステップST225において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2以上である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下していないため、処理はステップST224へ戻る。
【0115】
ステップST226(ステップST225:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116への原水W120の補給を停止させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を終了する。
ステップST227において、水質制御部184は、スケール防止剤供給装置135に停止信号を送信して、貯留部116へのスケール防止剤の供給を停止させる。スケール防止剤の供給が停止すると、処理はステップST207へ移行する。
【0116】
上述した第2実施形態の水処理システム100Aによれば、第1実施形態と同等の効果が奏される。特に、第2実施形態においては、循環水W110におけるスケール防止剤の濃度が、少なくとも第1濃度となるようにスケール防止剤が供給される。このため、再生処理を実行する時間帯において、貯留部116へ供給されたスケール防止剤の効果が、循環水W110に反映されるまでのタイムラグを生じることがない。従って、いずれの時間帯においても、循環水W110の水質を、スケールの発生を抑制できるレベルに維持することができる。
【0117】
なお、第2実施形態の水処理システム100Aにおいて、軟水化処理を実行する時間帯では、循環水ラインL110におけるスケール防止剤の濃度が所定の濃度範囲(上限値〜下限値)となるようにスケール防止剤の供給量を制御してもよい。その場合、再生処理を実行する時間帯においては、スケール防止剤の濃度の上限値を高く設定する。これにより、再生処理を実行する時間帯では、軟水化処理を実行する時間帯よりも多くのスケール防止剤が供給されるため、実質的に本実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0118】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態の水処理システム100Bの全体的な構成は、図1に示す第1実施形態の水処理システム100と同じであるため、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。第3実施形態において、第1実施形態と同等部分については、同一符号を用いて説明する。
【0119】
図5は、第3実施形態の水処理システム100Bを示す概略構成図である。第3実施形態の水処理システム100Bは、防食剤供給装置136を備える。防食剤供給装置136は、冷却塔110の貯留部116へ防食剤を供給する装置である。防食剤供給装置136は、防食剤供給ラインL160を介して、冷却塔110の貯留部116に接続されている。
【0120】
防食剤は、おもに配管系等における全面腐食、或いはピッチング等の部分腐食の発生を抑制するために用いられる薬品である。ここで利用可能な防食剤としては、例えば、ケイ酸塩、亜硝酸塩、亜鉛塩、モリブデン塩、ホスホノカルボン酸塩、ベンゾトリアゾール誘導体等を挙げることができる。
【0121】
防食剤供給装置136は、システム制御装置101と電気的に接続されている。防食剤供給装置136から貯留部116へ防食剤を供給するタイミング及び供給量は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。
【0122】
図6は、第3実施形態の水処理システム100Bの制御に係る機能ブロック図である。第3実施形態の水処理システム100Bは、制御部102において、水質制御部184B(図3参照)の機能が第1実施形態と異なる。制御部102における他の機能は第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0123】
第3実施形態の水質制御部184Bは、再生制御部183において、原水W120を補給水として貯留部116へ供給する時間帯、すなわち、再生処理を実行する時間帯が検出された場合に、硬度測定装置134により測定された循環水W110の硬度Hが、原水W120を補給水として貯留部116へ供給する時間帯において、スケールの発生が予想される下限硬度である第1警戒硬度Hth1以上であれば、スケール防止剤供給装置135からスケール防止剤を供給させると共に、防食剤供給装置136から貯留部116へ防食剤を供給させない処理を実行する。
【0124】
また、水質制御部184Bは、再生制御部183において、原水W120を補給水として貯留部116へ供給する時間帯、すなわち、再生処理を実行する時間帯が検出された場合に、硬度測定装置134により測定された循環水W110の硬度Hが、原水W120を補給水として貯留部116へ供給する時間帯において、腐食の発生が予想される上限硬度である第2警戒硬度Hth2(<Hth1)未満であれば、スケール防止剤供給装置135からスケール防止剤を供給させないようにすると共に、防食剤供給装置136から貯留部116へ防食剤を供給させる処理を実行する。
【0125】
本実施形態では、警戒硬度を2段階に設定している。第1警戒硬度Hth1は、例えば、10mgCaCO/Lに設定することができる。また、第2警戒硬度Hth2は、例えば、5mgCaCO/Lに設定することができる。
また、警戒硬度を一つにしてもよい。その場合は、循環水W110の硬度Hが警戒硬度以上であればスケール防止剤を供給し、循環水W110の硬度Hが警戒硬度未満であればスケール防止剤の供給を停止する。また、警戒硬度を一つとした場合には、警戒硬度を、例えば、20mgCaCOL程度に設定することができる。
【0126】
次に、第3実施形態の水処理システム100Bにおいて、軟水化処理及び再生処理を実行する場合の動作を、図7及び図8を参照しながら説明する。図7及び図8は、第3実施形態の制御部102が、軟水化処理及び再生処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図7及び図8に示すフローチャートの制御は、メモリ103に記憶された制御プログラムに基づいて、制御部102により実行される。
【0127】
図7に示すように、ステップST301において、再生制御部183は、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに弁制御のための駆動信号を送信して、プロセス制御バルブの内部を軟水化処理のための流路に切り替える動作を実行させる。プロセス制御バルブの流路を、軟水化処理のための流路に切り替えることにより、再生処理が停止する。
ステップST302において、補給水制御部182は、バイパスバルブ144を閉状態に制御して、貯留部116へ補給水を供給するラインとして軟化水補給水ラインを設定する。
【0128】
ステップST303において、再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生要求信号を受信したか否かを判定する。このステップST303において、再生制御部183が、再生要求信号を受信した(YES)と判定した場合には、処理はステップST304へ移行する。また、ステップST303において、再生制御部183が、再生要求信号を受信していない(NO)と判定した場合には、処理はステップST311へ移行する。
【0129】
ステップST304(ステップST303:YES)において、補給水制御部182は、バイパスバルブ144を開状態に制御して、貯留部116へ補給水を供給するラインとして原水補給水ラインを設定する。
ステップST305において、再生制御部183は、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに弁制御のための駆動信号を送信して、プロセス制御バルブの内部を再生処理のための流路に切り替える動作を実行させる。プロセス制御バルブの流路を、再生処理のための流路に切り替えることにより、軟水化処理が停止する。
【0130】
ステップST306において、再生制御部183は、硬水軟化装置143のプロセス制御バルブに再生処理のための駆動信号を送信して、圧力タンクに再生液等を流通させることにより、再生処理を開始させる。
【0131】
ステップST307において、再生制御部183は、硬水軟化装置143から再生終了信号を受信したか否かを判定する。このステップST307において、再生制御部183が、再生終了信号を受信した(YES)と判定した場合には、処理はステップST301へ戻る。また、ステップST307において、再生制御部183が、再生終了信号を受信していない(NO)と判定した場合には、処理はステップST321へ移行する。
【0132】
さて、ステップST311(ステップST303:NO)において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上であるか否かを判定する。このステップST311において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が高いため、処理はステップST312へ移行する。また、ステップST311において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1未満である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低いため、処理はステップST313へ移行する。
【0133】
ステップST312(ステップST311:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116へ軟化水W121を補給水として補給させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を開始する。
【0134】
ステップST313において、水質制御部184は、貯留部116へ軟化水W121を補給中か否かを判定する。このステップST313において、水質制御部184が、貯留部116へ軟化水W121を補給中である(YES)と判定した場合には、処理はステップST314へ移行する。また、ステップST113において、水質制御部184が、貯留部116へ軟化水W121を補給中でない(NO)と判定した場合には、処理はステップST303へ移行する。
【0135】
ステップST314(ステップST313:YES)において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満であるか否かを判定する。このステップST314において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下しているため、処理はステップST315へ移行する。また、ステップST314において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2以上である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下していないため、YESと判定されるまでステップST314をループする。
【0136】
ステップST315(ステップST314:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116への軟化水W121の補給を停止させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を終了する。ブロー処理が終了すると、処理はステップST303へ移行する。
【0137】
更に、ステップST321(ステップST307:NO)において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上であるか否かを判定する。このステップST321において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1以上である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が高いため、処理はステップST322へ移行する。また、ステップST321において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第1閾値EC1未満である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低いため、処理はステップST323へ移行する。
【0138】
ステップST322(ステップST321:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116へ原水W120を補給水として補給させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を開始する。
【0139】
ステップST323において、水質制御部184は、貯留部116へ原水W120を補給中か否かを判定する。このステップST323において、水質制御部184が、貯留部116へ原水W120を補給中である(YES)と判定した場合には、処理はステップST324へ移行する。また、ステップST323において、水質制御部184が、貯留部116へ原水W120を補給中でない(NO)と判定した場合には、処理はステップST307へ移行する。
【0140】
ステップST324において、水質制御部184は、貯留部116へのスケール防止剤又は防食剤の供給処理を実行する。この供給処理の詳細については、後述する。
【0141】
ステップST325において、補給水制御部182は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満であるか否かを判定する。このステップST325において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2未満である(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下しているため、処理はステップST326へ移行する。また、ステップST325において、補給水制御部182が、循環水W110の電気伝導率ECが第2閾値EC2以上である(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮度が低下していないため、処理はステップST324へ戻る。
【0142】
ステップST326(ステップST325:YES)において、補給水制御部182は、補給水バルブ145又は排水バルブ147に弁制御のための駆動信号を送信して、貯留部116への原水W120の補給を停止させる。すなわち、補給水制御部182は、循環水W110のブロー処理を終了する。
ステップST327において、水質制御部184は、スケール防止剤供給装置135及び防食剤供給装置136に停止信号を送信して、貯留部116へのスケール防止剤及び防食剤の供給を停止させる。薬剤の供給が停止すると、処理はステップST307へ移行する。
【0143】
次に、図8を参照して、貯留部116へのスケール防止剤又は防食剤の供給処理について説明する。
ステップST331において、水質制御部184は、硬度測定装置134で測定された循環水W110の硬度Hを取得する。
【0144】
ステップST332において、水質制御部184は、取得した硬度Hが第1警戒硬度Hth1以上か否かを判定する。このステップST332において、水質制御部184が、硬度H≧第1警戒硬度Hth1である(YES)と判定した場合には、処理はステップST333へ移行する。一方、ステップST332において、水質制御部184が、硬度H<第1警戒硬度Hth1である(NO)と判定した場合には、処理はステップST335へ移行する。
【0145】
ステップST333(ステップST332:YES)において、水質制御部184は、スケール防止剤供給装置135に駆動信号を送信して、貯留部116へスケール防止剤を供給させる。
【0146】
ステップST334において、水質制御部184は、防食剤供給装置136に停止信号を送信して、貯留部116への防食剤の供給を停止させる。水質制御部184が防食剤の供給を停止させると、本フローチャートの処理は終了し、処理はステップST325へ移行する。
【0147】
ステップST335(ステップST332:NO)において、水質制御部184は、取得した硬度Hが第2警戒硬度Hth2未満か否かを判定する。このステップST335において、水質制御部184が、硬度H<第2警戒硬度Hth2である(YES)と判定した場合には、処理はステップST336へ移行する。一方、ステップST335において、水質制御部184が、硬度H≧第2警戒硬度Hth2である(NO)と判定した場合には、本フローチャートの処理は終了し、処理はステップST325へ移行する。
【0148】
ステップST336において、水質制御部184は、スケール防止剤供給装置135に停止信号を送信して、貯留部116へのスケール防止剤の供給を停止させる。
ステップST337において、水質制御部184は、防食剤供給装置136に駆動信号を送信して、貯留部116へ防食剤を供給させる。水質制御部184が防食剤の供給を実行させると、本フローチャートの処理は終了し、処理はステップST325へ移行する。
【0149】
上述した第3実施形態の水処理システム100Bによれば、第1実施形態と同等の効果が奏される。特に、第3実施形態においては、原水W120を補給水として貯留部116へ供給する時間帯において、循環水W110の硬度Hが第1警戒硬度Hth1以上の場合にはスケール防止剤が供給され、循環水W110の硬度Hが第2警戒硬度Hth2未満の場合にはスケール防止剤の供給が停止される。これによれば、循環水W110の硬度Hが比較的低く、スケールの発生が起こりにくい水質の場合には、スケール防止剤が供給されないので、スケール防止剤の使用量を抑制することができる。
【0150】
また、第3実施形態において、貯留部116へスケール防止剤が供給されない場合には、防食剤が供給される。このため、スケールの発生が起こりにくい水質、すなわち腐食の発生が起こりやすい水質の場合において、配管系等における腐食の発生を抑制することができる。また、貯留部116へスケール防止剤が供給される場合には、防食剤の供給が停止される。このため、腐食の発生が起こりにくい水質、すなわちスケールの発生が起こりやすい水質の場合において、防食剤の使用量を抑制することができる。
【0151】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
本実施形態では、薬剤としてスケール防止剤を単独で供給する例について説明したが、これに限らず、薬剤は、スケール防止剤に対して防食剤及び/又はスライムコントロール剤を適宜に組み合わせた複合処理剤でもよい。尚、利用可能なスライムコントロール剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム等のハロゲン系酸化剤、過酸化水素等の酸素系酸化剤、イソチアゾリン系化合物、カルバメート系化合物等を挙げることができる。
【0152】
本実施形態では、スケール防止剤を冷却塔110の貯留部116へ供給する例について説明したが、これに限らず、スケール防止剤を循環水ラインL110へ直接供給するようにしてもよい。すなわち、スケール防止剤を最終的に循環水ラインL110へ供給することができれば、スケール防止剤を供給する位置は、冷却塔110(散水部112、貯留部116)及び循環水ラインL110(循環水供給ラインL111、循環水回収ラインL112)のいずれであってもよい。更に、スケール防止剤は、循環水ラインL110に限らず、補給水ラインL120(例えば、第3補給水ラインL123又は第6補給水ラインL126)に供給してもよい。
【0153】
本実施形態では、循環水W110の電気伝導率に基づいて補給水の補給を開始する例について説明したが、これに限らず、システムの運転時間や補給水の水量等に基づいて補給を開始してもよい。
【0154】
また、本実施形態では、ブロー処理の実施に同期して薬剤を供給する例について説明したが、これに限らず、原水補給水ラインが設定されている状態(すなわち、バイパスバルブ144が開状態)であれば、ブロー処理の実施に関らず、常に薬剤を供給するようにしてもよい。
更に、本実施形態では、冷却塔110を開放式冷却塔として構成した例について説明したが、これに限らず、冷却塔110を密閉式冷却塔として構成してもよい。
【符号の説明】
【0155】
100,100A,100B 水処理システム
101 システム制御装置
102 制御部
103 メモリ
110 冷却塔
116 貯留部
133 電気伝導率測定装置
134 硬度測定装置(硬度検出手段)
135 スケール防止剤供給装置(スケール抑制手段)
136 防食剤供給装置(防食剤供給手段)
143 硬水軟化装置
144 バイパスバルブ
145 補給水バルブ
147 排水バルブ
181 濃縮度判定部
182 補給水制御部
183 再生制御部(補給水検出手段)
184,184A,184B 水質制御部(制御手段)
L110 循環水ライン
L120 補給水ライン
L121 第1補給水ライン
L122 第2補給水ライン(軟化水補給水ライン)
L123 第3補給水ライン(軟化水補給水ライン、原水補給水ライン)
L124 第4補給水ライン(軟化水補給水ライン、原水補給水ライン)
L125 第5補給水ライン(原水補給水ライン)
L126 第6補給水ライン(軟化水補給水ライン、原水補給水ライン)
W110 循環水
W120 原水(補給水)
W121 軟化水(補給水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却装置へ供給する循環水を散水部により通風空間に散水して冷却し、冷却した循環水を貯留部に貯留する冷却塔と、
前記貯留部から前記被冷却装置へ循環水を供給する循環水供給ライン及び前記被冷却装置から前記散水部へ循環水を回収する循環水回収ラインにより構成され、循環水を前記冷却塔と前記被冷却装置との間で循環させる循環水ラインと、
軟化水を補給水として前記貯留部に供給する軟化水補給水ラインと、
原水を補給水として前記貯留部に供給する原水補給水ラインと、
前記循環水ラインにおけるスケールの発生を抑制するスケール抑制手段と、
軟化水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯及び原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯を検出する補給水検出手段と、
前記補給水検出手段により、原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合には、前記スケール抑制手段により前記循環水ラインにおけるスケールの発生を抑制させる制御手段と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記スケール抑制手段は、循環水及び/又は補給水にスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給装置であり、
前記制御手段は、前記補給水検出手段により原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合には、前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させる請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記スケール抑制手段は、循環水及び/又は補給水にスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給装置であり、
前記制御手段は、(i)前記補給水検出手段により軟化水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合には、前記循環水ラインにおけるスケール防止剤の濃度が、軟化水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯においてスケールの発生を抑制するのに必要な最低限の濃度である第1濃度となるように前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させる処理を実行し、(ii)前記補給水検出手段により原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合には、前記循環水ラインにおけるスケール防止剤の濃度が第1濃度よりも高い第2濃度となるように前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させる処理を実行する請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記スケール抑制手段は、循環水及び/又は補給水にスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給装置であり、
前記循環水ラインを流通する循環水の硬度を検出する硬度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記補給水検出手段により原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合に、(i)前記硬度検出手段により検出された循環水の硬度が、原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯においてスケールの発生が予想される硬度である警戒硬度を上回れば、前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させる処理を実行し、(ii)前記硬度検出手段により検出された循環水の硬度が警戒硬度を下回れば、前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させない処理を実行する請求項1に記載の水処理システム。
【請求項5】
循環水及び/又は補給水に防食剤を供給する防食剤供給手段を備え、
前記制御手段は、前記補給水検出手段により原水を補給水として前記貯留部に供給する時間帯が検出された場合に、(i)前記硬度検出手段により検出された循環水の硬度が警戒硬度を上回れば、前記スケール防止剤供給装置からにスケール防止剤を供給させると共に、前記防食剤供給手段から防食剤を供給させない処理を実行し、(ii)前記硬度検出手段により検出された循環水の硬度が警戒硬度を下回れば、前記スケール防止剤供給装置からスケール防止剤を供給させないようにすると共に、前記防食剤供給手段から防食剤を供給させる処理を実行する請求項4に記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−13853(P2013−13853A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148119(P2011−148119)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】