説明

水処理方法及び水処理装置

【課題】より処理性能の高い水処理方法及びこの水処理方法に用いる水処処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】容器2に設けられた円筒状電極3と、円筒状電極3の内部を貫通するように配置された線状電極4との間に高電圧を印加することによって、円筒状電極3と線状電極4との間にストリーマ放電を生じさせ、噴射ノズル7から被処理水を1500μm以下の水滴にしてミスト状に容器2内に供給してストリーマ放電によって生じたオゾンを含む活性種によって被処理水中の被処理物質を分解処理するとともに、容器2内を通過した水滴を一次処理水Wbとして一次処理水タンクTbに貯めたのち、一次処理水Wbを被処理原水Waと混合してこの混合水を再び被処理水として噴射ノズル7から容器2内に噴射するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、下水、排水等に含有される有機物、無機物、微生物を放電により発生するラジカル、オゾン等の活性種により分解処理する水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を放電によって発生するオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種によって分解処理するようにした水処理装置が既に提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この水処理装置は、円筒状電極と線状電極との間に、円柱状に長いストリーマ放電空間が形成され、この円柱状に長いストリーマ放電空間内に1500μm以下と細かい粒径の水滴を供給するようにしたので、水滴が長い時間放電空間内に曝されるとともに、上記活性種に接触する被処理水の総表面積が大きくなる。
したがって、この水処理装置は、水滴中の有機物が上記活性種によって効率よく分解される。
【0004】
【特許文献1】特開2009−241055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、先に提案された水処理装置は、上記のように処理性能に優れたものであるが、処理水の種類によっては更に処理性能を向上させる必要があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて、より処理性能の高い水処理方法及びこの水処理方法に用いる水処処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる水処理方法(以下、「本発明の処理方法」と記す)は、円筒状電極と、円筒状電極の内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μ以下の水滴にして供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理方法であって、前記被処理水が前記ストリーマ放電空間を通過して得られた一次処理水を、被処理原水に混合し、被処理原水とともに、被処理水として再び前記ストリーマ放電空間内に水滴化して供給する工程を備えることを特徴としている。
【0008】
一方、本発明にかかる水処理装置(以下、「本発明の処理装置」と記す)は、円筒状電極と、円筒状電極の内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に水滴供給手段を介して被処理水を1500μ以下の水滴にして供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、被処理原水が貯水される被処理原水タンクと、被処理水がストリーマ放電空間を通過して得られる一次処理水を貯める一次処理水タンクと、被処理原水タンク内の被処理原水と、一次処理水タンク内の一次処理水とを混合して前記水滴供給手段に供給可能な送液手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記送液手段としては、特に限定されないが、例えば、被処理原水タンクに繋がる開度調整可能な流量調整バルブを備えた原水配管と、一次処理水タンクに繋がる開度調整可能な流量調整バルブを備えた一次処理水配管とをT字配管やY字配管を介して送液ポンプを途中に設けた被処理水配管に接続し、送液ポンプによって、被処理原水タンクの被処理原水と、一次処理水タンクの一次処理水とをそれぞれ流量調整バルブによって流量を調整しながら、T字配管やY字配管の合流部分での被処理原水と一次処理水との衝突によって、被処理原水と一次処理水とを混合して被処理水として水滴供給手段に送る構造のものが挙げられる。
【0010】
また、上記の構造の送液手段のT字配管やY字配管部分は、三方コックを設けるようにしてもよい。三方コックによって、被処理水配管が、原水配管及び一次処理水配管と連通状態だけでなく、原水配管とのみの連通状態、一次処理水配管とのみの連通状態を選択可能となり、処理パターンを多様化することができる。
【0011】
なお、一次処理水と被処理原水との混合方法は、上記の衝突以外に、被処理水配管中に、スタティックミキサーやインラインミキサー等を設けて被処理水配管中で混合する方法を用いてもよいし、スタティックミキサーやインラインミキサー等を併用するようにしても構わない。
【0012】
一次処理水と被処理原水との混合比率は、被処理物質の種類、被処理原水の濃度等で適宜決定されるが、容量比で、一次処理水:原水=20:80〜90:10が好ましい。
すなわち、この範囲を外れると処理性能が低減するおそれがある。
【0013】
本発明において、上記円筒状電極の材質は、導電性があり耐食性、耐熱性に優れたものであれば、特に限定されないが、ステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼が好適である。加工のし易さ、コストの面からステンレス鋼が好ましい。
また、円筒状電極は、水滴化して供給される被処理水を、ストリーマ放電空間内に効率よく供給できるように、水滴が通過可能な大きさの多数の小孔や隙間を周壁面に備えていることが好ましい。
【0014】
上記小孔または隙間は、処理効率を考慮すると、小孔または隙間部分の総面積の、円筒状電極の周壁の全面積に占める割合である開口率が50%以上であることが好ましい。
上記小孔を備えた円筒状電極を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、上記材質の金網やパンチングメタルを円筒状に加工する方法が挙げられる。
上記小孔の大きさは、円筒状電極の形状が保持でき、水滴が通過可能であれば特に限定されないが、一般的には開口面積が0.01mm2〜625mm2程度である。
【0015】
一方、上記隙間を備えた円筒状電極を得る方法としては、上記材質の線材を螺旋状に巻回する方法が挙げられる。
上記線材としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼などが挙げられ、円筒形状の保持と加工のし易さの観点から線径3〜10mm(より好ましくは5〜10mm)のステンレス鋼線を用いることが好ましい。
【0016】
円筒状電極の内径は、線状電極との間でストリーマ放電が安定して発生すれば、特に限定されないが、放電のしやすさから、40〜70mmとすることが好ましい。
【0017】
本発明において、上記線状電極の材質としては、導電性があり耐食性、耐熱性に優れたものであれば、特に限定されないが、ステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼、炭素が好適である。
線電極の線径はストリーマ放電が安定に発生すれば特に限定されないが、放電のし易さ安定性から0.1mmから5mmが好ましい。
【0018】
本発明において、ストリーマ放電空間に供給される水滴の粒径は、1500μm以下(好ましくは10μm以上1500μm以下)に限定されるが、その理由は、粒径が大きくなりすぎると、ストリーマ放電空間のプラズマに接触する体積あたりの表面積が小さくなり、処理効率が悪くなるためである。
本発明において、水滴の粒径の測定方法は液浸法による。水滴はシリコーンオイルを満たしたシャーレに、シャーレの上部に設置した噴射ノズルの先端から水滴を噴霧し、噴射軸に対して垂直に置かれたシャーレにより採取した。採取した水滴は素早く撮像し、サイズ毎の粒径をカウントし、ザウター平均粒径を求め水滴の粒径とした。
【0019】
本発明において、被処理水を水滴化して供給する手段(以下、「水滴供給手段」と記す)としては、被処理水を粒径が1500μm以下の水滴にして供給することができれば、特に限定されないが、例えば、噴射ノズルが好適である。
【0020】
上記水滴供給手段として噴射ノズルを用いる場合、その噴角は、噴射ノズルから噴射される水滴の最外縁がストリーマ放電空間の最外縁に沿うように調整されていることが好ましい。
すなわち、ストリーマ放電空間の最外縁より外側まで広がるように水滴を噴射させても効率が落ちるとともに、容器の内壁面にぶつかり、大きな水滴となり内壁面に沿って流れ落ちて効率が悪くなるおそれがある。
なお、本発明において、上記噴角(噴霧角度)とは、ノズルからミスト状の水滴にされて噴射された水滴が、放物線を描きつつ落下するため、ノズルの噴射口から出た直後の被処理水ミストの広がり角度を意味する。
【0021】
噴射ノズルによる水滴の噴射方向は、特に限定されないが、例えば、ストリーマ放電空間の上側から下側、ストリーマ放電空間の下側から上側、あるいは、円筒状電極の側方からストリーマ放電空間方向のいずれでも構わない。
噴射ノズルの数は、特に限定されず、1つ以上備えていればよい。また、円筒状電極及び線状電極を2対以上備えるような場合は、噴射ノズルは2つ以上備えていてもよい。
【0022】
本発明の水処理装置は、円筒状電極及び線状電極は、処理効率を考えると2対以上備えていることが好ましい。
例えば、円筒状電極及び線状電極を2対以上、円筒電極の中心軸を平行にして配置すれば、上記のように円筒状電極が、線材を螺旋円筒状に巻回して形成され、螺旋ピッチ間に隙間が形成されているため、噴射ノズルから噴射された水滴が、螺旋ピッチ間の隙間を水通過する。したがって、円筒状電極の内側に一旦入った水滴がこの隙間を介して一旦外側に出て、隣接する円筒状電極内に入り、再び円筒状電極内で形成されるストリーマ放電空間を通過し、効率よく処理が行なわれる。
【0023】
また、上記のように、円筒状電極及び線状電極を複数対設けた場合、噴射ノズルの噴射軸方向が、各円筒状電極の中心軸に平行になっていて、噴射ノズルの噴射軸から遠い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面が、前記噴射軸に近い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面に比べ、前記噴射ノズルから遠い位置に設けられている構成とすると、噴射ノズルから噴射された水滴が、効率よく各円筒状電極内、すなわち、ストリーマ放電空間内に供給できる。
【0024】
また、上記水滴供給手段として、噴射ノズルを用い、この噴射ノズルから噴射されるミスト状になった水滴の最外縁がストリーマ放電空間の最外縁に沿うように噴射ノズルの噴角を調整すれば、被処理水を円筒状電極の径に併せて効率的にストリーマ放電空間に供給することができ、より効率的に処理を行うことができる。
また、上記のように円筒電極及び線状電極を2対以上備えている構成の場合、ストリーマ放電空間へ無駄なく、被処理水ミストを供給して効率よく処理することができるように、噴射ノズルの噴射軸方向と、各円筒状電極の中心軸とが平行になっていて、噴射ノズルの噴射軸から遠い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面が噴射軸に近い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面に比べ、噴射ノズルから遠い位置に設けられているように円筒状電極を配置してもよい。
【0025】
さらに、本発明の水処理装置においては、円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加する高圧電源や、ストリーマ放電空間を通過してきた水滴を受けて貯める貯水槽と、この貯水槽に貯められた水を被処理水として水滴供給手段に送るポンプとからなる被処理水循環構造を備えていてもよい。
さらに、上記貯水槽に貯められた水を被処理水として水滴供給手段に送るポンプとからなる被処理水循環構造を備えていれば、被処理水中の有機物の分解率を向上させることができる。
【0026】
円筒状電極と線状電極との間に印加される充電電圧は、ストリーマ放電が起きる電圧であれば、特に限定されない。
【発明の効果】
【0027】
上記のように、本発明の水処理方法は、円筒状電極と、円筒状電極の内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μ以下の水滴にして供給し、水滴中の被処理物質を分解処理するようにした水処理方法であって、前記被処理水が前記ストリーマ放電空間を通過して得られた一次処理水を、被処理原水に混合し、被処理原水とともに、被処理水として再び前記ストリーマ放電空間内に水滴化して供給するようにしたので、より処理効率を高めることができる。
【0028】
すなわち、ストリーマ放電空間で発生する分解処理に寄与せず残ったオゾンの一部が、ストリーマ放電空間を通過した水滴からなる一次処理水中に溶け込む。
したがって、このオゾンが溶存する一次処理水を被処理原水に混合すれば、混合水中で、溶存するオゾンが被処理物質の酸化分解処理に寄与して被処理原水中の処理効率を高めることができる。
【0029】
また、本発明の水処理装置は、円筒状電極と、円筒状電極の内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に水滴供給手段を介して被処理水を1500μ以下の水滴にして供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、被処理原水が貯水される原水タンクと、被処理水がストリーマ放電空間を通過して得られる一次処理水を貯める一次処理水タンクと、前記原水タンク内の被処理原水と一次処理水タンク内の一次処理水とを混合して前記水滴供給手段に供給可能な送液手段と、を備えているので、上記本発明の水処理方法を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第1の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図2】図1の水処理装置の三方コックの動きを説明する断面図であって、同図(a)が第1接続状態をあらわし、同図(b)が第2接続状態をあらわし、同図(c)が第3接続状態をあらわしている。
【図3】本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第2の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図4】本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第3の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図5】本発明の水処理方法に用いる水処理装置第4の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図6】本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第5の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図7】本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第6の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0032】
図1に示すように、この水処理装置1aは、容器(処理槽)2と、円筒電極3と、線状電極4と、原水タンクTaと、一次処理水タンクTbと、送液手段6と、噴射ノズル7と、最終処理水タンクTcと、高圧電源であるパルスパワー発生装置8とを備えている。
容器2は、例えば、アクリル樹脂、FRPの絶縁材料や、内面が絶縁材で被覆されたステンレス鋼などの金属材料で形成されている。
【0033】
円筒状電極3は、例えば、ステンレス鋼製の平織り金網を円筒状に加工することによって得られ、開口率が50%以上になっている。
【0034】
そして、円筒状電極3は、中心軸が、後述する噴射ノズル7の噴射軸方向に一致するように、円筒状電極3の上下に設けられた円筒状電極固定治具(図示せず)を介して支持されている。
円筒状電極固定治具は、絶縁性の高い材料(例えば、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂)で形成され、噴射ノズル7から噴射される被処理水ミストMの円筒状電極3内へ供給を阻害しないように設けられている。
【0035】
線状電極4は、ステンレス鋼製の線径0.1〜5mmの線材によって形成されていて、円筒状電極3の上下に配置された線状電極固定治具41を介して、円筒状電極本体部31の中心軸に沿うように支持され、円筒状電極3と絶縁された状態になっている。
線状電極固定治具41は、例えば、線状電極4の挿通孔を備えた袋ナットを、治具本体の割りを設けたねじ筒部に締め込むことによって、ねじ筒部を縮径させて線状電極4の端部をねじ筒部の内面で着脱可能に把持できる構造になっている。
【0036】
原水タンクTaは、被処理原水を貯水するようになっている。
【0037】
一次処理水タンクTbは、容器2を下方に設けられ、容器2を通過した水滴を受けて一次処理水として貯水するようになっている。
また、一次処理タンク5は、オーバーフローした一次処理水を最終処理水タンクTcに送るオーバーフロー管9を備えている。
【0038】
送液手段6は、原水配管61と、一次処理水配管62と、被処理水配管63と、三方コック64とを備えている。
【0039】
原水配管61は、一端が原水タンクTaに接続され、図2に示すように、他端が三方コック64の第1接続口65aに接続されるとともに、途中に第1流量調整バルブ61a及び第1流量計61bを備えている。
第1流量調整バルブ61aは、無段階で開度が調整できるようになっていて、開閉は、手動でも電動モータによって行なうようにしても構わない。
【0040】
一次処理水配管62は、一端が一次処理水タンクTbに接続され、他端が三方コック64の第2接続口65bに接続されるとともに、途中に第2流量調整バルブ62a及び第2流量計62bを備えている。
第2流量調整バルブ62aは、無段階で開度が調整できるようになっていて、開閉は、手動でも電動モータによって行なうようにしても構わない。
【0041】
被処理水配管63は、一端が噴射ノズル7に接続され、他端が三方コック64の第3接続口65cに接続されるとともに、途中に噴射ポンプ63aを備えている。
【0042】
三方コック64は、図2に示すように、継手部65と、コック本体66とを備えている。
継手部65は、第1接続口65a〜第3接続口65cを備え、第1接続口65aの中心軸と第2接続口65bの中心軸とが一直線状に並び、第3接続口65cの中心軸と、第1接続口65a及び第2接続口65bの中心軸とが直角(T字)に交差している。
コック本体66は、第1分岐流路66a〜第3分岐流路66cを内部に備え、継手部65に360度回転可能に支持されていて、回転によって、以下の第1接続状態〜第3接続状態を選択できる。なお、図1では、三方コック64の構造がわかるように、上下方向から見た状態を水平方向に向けて描いているが、実際は、第1接続口65a〜第3接続口65cが全て水平方向を向いている。
【0043】
(第1接続状態)
第1接続状態は、図2(a)に示すように、第1分岐流路66aが第1接続口65a側に、第2分岐流路66bが第2接続口65b側に、第3分岐流路66cが第3接続口65c側に配置され、被処理原水配管61と、一次処理水配管62と、被処理水配管63とが三方コック64を介して互いに連通する状態である。
(第2接続状態)
第2接続状態は、図2(b)に示すように、第2分岐流路66bが第3接続口65c側に、第3分岐流路66cが第1接続口65a側に配置され、被処理原水配管61と被処理水配管63とが連通し、一次処理水配管62が他の配管と連通しない状態である。
(第3接続状態)
第3接続状態は、図2(c)に示すように、第1分岐流路66aが第3接続口65c側に、第3分岐流路66cが第2接続口65b側に配置され、一次処理水配管62と被処理水配管63とが連通し、被処理原水配管61が他の配管と連通しない状態である。
【0044】
噴射ノズル7は、被処理水配管63を介して送られてきた被処理水を粒径が1500μm以下の水滴からなる被処理水ミストMにして円筒状電極3の上部開口に向かって噴射するようになっている。
また、噴射ノズル7の噴角は、噴射される被処理水ミストMの最大広がり部でストリーマ放電空間の最外縁である円筒状電極3の内壁面に沿うような角度に調整されている。
【0045】
パルスパワー発生装置8は、円筒状電極3が陰極、線状電極4が陽極となるように円筒状電極3及び線状電極4に接続され、円筒状電極3と線状電極4との間にパルス状に高電圧を印加して円筒状電極3と線状電極4との間でストリーマ放電を起こすようになっている。
【0046】
そして、この水処理装置1aを用いれば、以下のようにして水処理を行うことができる。
【0047】
〔貯水工程〕
(1)原水タンクTaに被処理原水Waを仕込む。
(2)三方コック64を図2(b)に示す第2接続状態にする。すなわち、被処理水配管63が、被被処理原水配管61と連通するが、一次処理水配管62とは非連通状態とする。
(3)パルスパワー発生装置8を稼動させて円筒状電極3と線状電極4との間でストリーマ放電を発生させる。すなわち、ストリーマ放電によって、オゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種がストリーマ放電空間内に発生する。
(4)噴射ポンプ63aを稼動させて、原水タンクTaの被処理原水Waを被被処理原水配管61及び被処理水配管63を介して噴射ノズル7から1500μm以下の細かい水滴からなる被処理水ミストMとして、容器2内にストリーマ放電空間に向かって上方から噴射させ、容器2内を通過した水滴を一次処理水Wbとして一次処理水タンクTb内に貯める。
なお、容器2内に噴射された被処理水ミストMは、大部分の水滴がストリーマ放電空間を通過し、各水滴中に含まれた有機物等の被処理物質が円筒状をしたストリーマ放電空間内を落下していく間に上記活性種に接触し、各水滴中の有機物が酸化分解処理される。
また、活性種中に含まれるオゾンの一部が各水滴の落下中の水滴および一次処理水タンク中の一次処理水Wb内に溶け込む。
(5)一次処理水Wbが、一次処理水タンクTbに満水状態(オーバーフロー管9からオーバーフロー水が最終処理水タンクTcに流入開始する状態)となると、一次処理水Wbの貯水工程を終了する。
なお、容器2内に噴射された被処理水ミストMは、大部分の水滴がストリーマ放電空間を通過し、各水滴中に含まれた有機物等の被処理物質が円筒状をしたストリーマ放電空間内を落下していく間に上記活性種に接触し、各水滴中の有機物が酸化分解処理される。
また、オゾンの一部が各水滴の落下中に水滴内に溶け込む。
したがって、一次処理水タンクTb内の一次処理水Wb中には、オゾンが溶け込んだ状態になっている。
【0048】
〔本処理工程〕
(1)三方コック64を図2(a)に示す第1接続状態、すなわち、被処理水配管63と、被被処理原水配管61及び一次処理水配管62が三方コック64を介して連通状態にする。
(2)貯水工程と同様にしてパルスパワー発生装置8を稼動させて円筒状電極3と線状電極4との間でストリーマ放電を発生させる。
(3)噴射ポンプ63aを稼動させて、第1流量計61b及び第2流量計62bで被処理水配管63へ流れ込む被処理原水Waの流量及び一次処理水Wbの流量を確認しながら、第1流量調整バルブ61a及び第2流量調整バルブ62aの開度を調整する。
すなわち、被処理原水Waと、一次処理水Wbとが、噴射ポンプ63aによって第3分岐流路66c側に同時に吸引され、第1分岐流路66a及び第2分岐流路66bと第3分岐流路66cの交点で衝突混合されて、この混合水が、第1流量計61bで計測された流量と、第2流量計62bで計測された流量との合計流量の被処理水となって被処理水配管63を介して噴射ノズル7から貯水工程と同様にして噴射されるようになる。
また、この工程で被処理原水Wa及び一次処理水Wbが混合されて被処理水配管63を介して噴射ノズル7に送られる被処理水には、一次処理水Wb中の溶存オゾンが含まれているので、被処理水中の被処理物質は、噴射されるまでに一部がオゾンによって分解され、噴射ノズル7から噴射される被処理水中の被処理物質濃度は、被処理原水Wa中の被処理物質濃度より低くなっている。
したがって、本発明の水処理方法である本処理工程では、ストリーマ放電空間を通過一次処理水タンクTbに受けられる一次処理水中に含まれる被処理物質濃度が、貯水工程のみで得られる一次処理水中の被処理物質濃度より低いものとなる。
すなわち、貯水工程と同様の水処理方法である従来の水処理方法に比べより効率よく処理物質を分解処理することができる。
また、一次処理水タンクTbに受けられた一次処理水Wbは、上記のように再び被処理水として用いられる一方、オーバーフロー管9を介してオーバーフロー水が、被処理原水Waの流量分だけ最終処理水タンクTcに流れ込み、最終処理水Wcとして貯められる。
さらに、本処理工程は、貯水工程が完了後、パルスパワー発生装置8及び噴射ポンプ63aを稼動状態で、三方コック64の切り替えのみで貯水工程に連続して行うようにしても構わない。
また、貯水工程から本処理工程への移行は、一次処理水タンクTbの一次処理水が満水になる前に行なうようにしても構わない。
【0049】
〔一次処理水循環工程〕
(1)三方コック64を図2(c)に示す第3接続状態、すなわち、被処理水配管63が、一次処理水配管62と連通するが、被処理原水配管61とは非連通状態とし、被処理原水Waを混合せず、一次処理水Wbのみを被処理水配管63を介して循環させる以外は、上記本処理工程と同様にして水処理を行う。
なお、一次処理水循環工程は、例えば、被処理原水Wa中の被処理物質濃度が高く、貯水工程において、被処理原水Waを一度だけ容器2内に噴射して処理した一次処理水Wbでは、一次処理水Wb中の残存被処理物質濃度が十分低くならない場合に行う。すなわち、一次処理水タンクTb内の一次処理水Wbを循環させてストリーマ放電空間内を複数回通すことによって、上記本処理工程を行った場合に残存被処理物質濃度がそのまま放流できるような濃度のオーバーフロー水を得ることができる。
【0050】
図3は、本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第2の実施の形態をあらわしている。
図3に示すように、この水処理装置1bは、同じサイズ及び同じ形状の円筒状電極3及び線状電極4が4対容器2内で水平方向に並ぶように配置されている以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
【0051】
図4は、本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第3の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、この水処理装置1cは、噴射ノズル7が円筒状電極3の下方に設けられ、被処理水ミストを垂直上向き噴射するようにした以外は、上記水処理装置1bと同様になっている。
【0052】
この水処理装置1cによれば、被処理水ミストMが、放電空間の下側から放電空間に向かって噴射されるので、被処理水ミストM中の各水滴が一旦上昇した後、その重力により下降することにより、放電空間での滞留時間が増加し、より効率的に処理することができる。
【0053】
図5は、本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第4の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この水処理装置1dは、噴射ノズル7を円筒状電極3の側方に設け、被処理水ミストMを円筒状電極3の側面から水平方向に噴射するようにした以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
【0054】
図6は、本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第5の実施の形態をあらわしている。
図6に示すように、この水処理装置1eは、噴射ノズル7の噴射軸Cに近い側の2本の円筒状電極3aより、遠い側の2本の円筒状電極3bの中心軸方向の長さが短くなっているとともに、短い円筒状電極3bの上端面を長い円筒状電極3aの上端面より噴射ノズル7から離れた位置、すなわち、下方に位置するように配置し、噴射ノズル7から噴射された被処理水ミストMの最外縁が短い円筒状電極3b内に確実に納まるように調整した以外は、上記水処理装置1bと同様になっている。
【0055】
図7は、本発明の水処理方法に用いる水処理装置の第6の実施の形態をあらわしている。
図7に示すように、この水処理装置1fは、円筒状電極3及び線状電極4からなる電極対を6対備え、1つの電極対を線状電極4が容器2の中心軸に一致するように配置し、他の5つの電極対をその周囲を放射状に囲むように同一円周上に等間隔で並ぶように配置した以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
【0056】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、被処理原水配管及び一次処理水配管の途中に流量計及び流量調整バルブが設けられていたが、被処理原水配管及び一次処理水配管の途中の流量計及び流量調整バルブを無くすとともに、被処理水配管63の途中に流量計及び流量調整バルブを設けるとともに、原水タンクTaと一次処理水タンクTbとの設置高さ位置を相違させて、被処理原水タンク側から第1接続口65aにかかる被処理原水Waの水圧と、一次処理水タンク側から第2接続口にかかる一次処理水の水圧とに差を設けておけば、第1接続口65aと第1分岐流路66aとの連通状態、第2接続口65bと第2分岐流路66bとの連通状態、第3接続口65cと第3分岐流路66cとの連通状態をそれぞれ損なわない範囲で、三方コック64のコック本体66を回転させることによって、三方コック64のみで被処理原水Waと一次処理水Wbとの混合比率を変えることができる。なお、上記構成とした場合、流量は、噴射ポンプ63aを容量の大きいものとすることで被処理水配管に設けた流量調整バルブの開度を調整することで行うことができ、混合比率は、被処理水配管に設けられ流量計で計測された被処理水流量と、オーバーフロー管からオーバーフローするオーバーフロー水量から算出することができる。すなわち、オーバーフロー水量が、被処理原水配管から被処理水配管に流入する被処理原水量であるから、一次処理水配管から被処理水配管に流入する一次処理水量は、流量計の計測値からオーバーフロー水量を差し引くことで求めることができる。
【0057】
また、上記の実施の形態では、パルスパワー発生装置を備えていたが、パルスパワー発生装置は市販のものを別途容易するようにしても構わない。
また、上記第4の実施の形態では、容器内に1つの電極対しか設けられていなかったが、容器を大きくし、容器の周壁全周に沿って平行に多数の電極対を設けるとともに、被処理水をこれらの電極対の中央の空間部に配置された噴射ノズルから周囲の各電極対に向かって噴射するようにしても構わない。
【0058】
上記第6の実施の形態の水処理装では、1つの電極対の周囲を5つの電極対で囲む2重構造であったが、さらに外側に多くの電極対を3重、4重に配置するようにしても構わないし、第5の実施の形態の水処理装置のように容器の外側に配置された円筒状電極の上端面の位置を内側に配置された円筒状電極の上端面より下方に設けるようにしても構わない。
また、上記第4の実施の形態では、容器内に1つの電極対しか設けられていなかったが、容器を大きくし、容器の周壁全周に沿って平行に多数の電極対を設けるとともに、被処理水をこれらの電極対の中央の空間部に配置された噴射ノズルから周囲の各電極対に向かって噴射するようにしても構わない。
【0059】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と対比させて説明する。
なお、
【0060】
(実施例1)
図1に示す水処理装置1aを用い、以下の実験条件で、オーバーフロー管9からオーバーフローして最終処理水タンクTcに入り込むオーバーフロー水中の被処理物質であるインジゴカルミンの平衡濃度を調べた。
〔水処理装置〕
充電電圧:25kV
放電回数:100回/秒
円筒状電極3の材質:10メッシュのステンレス製金網
円筒状電極の内径:39.5mm
円筒状電極の長さ(中心軸方向の長さ):300mm
線状電極の材質:外径1mm、長さ500mmのタングステン鋼線
被処理水ミストの粒径:750〜970μm
噴射ノズル7の噴角:30°
噴射ノズル7から円筒状電極3までの距離:被処理水ミストの最外縁が円筒状電極3の上端最外縁にほぼ一致するように調整した。
〔実験条件〕
被処理原水:精製水にインジゴカルミンが50ppm濃度となるように調製したもの
被処理原水流量(被処理原水配管61を流れる被処理原水流量):15L/分
一次処理水流量(一次処理水配管62を流れる一次処理水流量):15L/分
被処理水流量(被処理水配管63を流れる被処理水流量):30L/分
オーバーフロー水流量:15L/分
なお、上記平衡濃度は、オーバーフロー管9から排出されるオーバーフロー水を2分ごとにサンプリングし、インジゴカルミンの濃度が平衡になった濃度(3区間移動平均の濃度差が1%以内になった時点の濃度)で評価した。
また、インジゴカルミンの濃度は、紫外可視分光光度計(島津製作所社製商品名UVmini−1240)を用いて610nmでの被処理水の吸光度を調べ、この吸光度と、予め作製インジゴカルミンの吸光度と濃度との校正曲線から求めた
被処理原水と一次処理水の混合比は、第1流量計61b及び第2流量計62bを見ながら三方コック64で調節した。
【0061】
(実施例2)
以下の実験条件に変更した以外は、上記実施例1と同様にして平衡濃度を調べた。
〔実験条件〕
被処理原水:精製水にインジゴカルミンが50ppm濃度となるように調製したもの
被処理原水流量:12L/分
一次処理水流量:13L/分
被処理水流量:15L/分
オーバーフロー水流量:12L/分
【0062】
(比較例1)
以下の実験条件に変更した以外は、上記実施例1と同様にして平衡濃度を調べた。
〔実験条件〕
被処理原水:精製水にインジゴカルミンが50ppm濃度となるように調製したもの
被処理原水流量:15L/分
一次処理水流量:0L/分
被処理水流量:15L/分
オーバーフロー水流量:15L/分
【0063】
(比較例2)
以下の実験条件に変更した以外は、上記実施例1と同様にして平衡濃度を調べた。
〔実験条件〕
被処理原水:精製水にインジゴカルミンが50ppm濃度となるように調製したもの
被処理原水流量:12L/分
一次処理水流量:0L/分
被処理水流量:12L/分
オーバーフロー水流量:12L/分
上記実施例1,2及び比較例1,2で求められた平衡濃度を、実験条件と対比させて表1に示す。
【表1】

【0064】
上記表1から、本発明の水処理装置のようにすれば、一次処理水を被処理原水に混合すれば、一次処理水を混合しない場合に比べて、被処理原水量が同じでも有機物が効率よく分解処理できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の水処理装置は、特に限定されないが、例えば、有機物を含む排水の浄化、汚染水の殺菌などに用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1a,1b,1c,1d,1e,1f 水処理装置
2 容器
3,3a,3b 円筒状電極
4 線状電極
6 送液手段
61 原水配管
61a 第1流量調整バルブ
61b 第1流量計
62 一次処理水配管
62a 第2流量調整バルブ
62b 第2流量調整バルブ
63 被処理水配管
63a 噴射ポンプ
7 噴射ノズル
8 パルスパワー発生装置(高圧電源)
9 オーバーフロー管
M 被処理水ミスト
Ta 被処理原水タンク
Tb 一次処理水タンク
Tc 最終処理水タンク
Wa 被処理原水
Wb 一次処理水
Wc 最終処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状電極と、円筒状電極の内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μ以下の水滴にして供給し、水滴中の被処理物質を分解処理するようにした水処理方法であって、
前記被処理水が前記ストリーマ放電空間を通過して得られた一次処理水を、被処理原水に混合し、被処理原水とともに、被処理水として再び前記ストリーマ放電空間内に水滴化して供給することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
円筒状電極と、円筒状電極の内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に水滴供給手段を介して被処理水を1500μ以下の水滴にして供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、
被処理原水が貯水される原水タンクと、
被処理水がストリーマ放電空間を通過して得られる一次処理水を貯める一次処理水タンクと、
前記原水タンク内の被処理原水と一次処理水タンク内の一次処理水とを混合して前記水滴供給手段に供給可能な送液手段と、
を備えていることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−236131(P2012−236131A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105855(P2011−105855)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】