説明

水処理施設用可動式覆蓋

【課題】本発明は、覆蓋本体を支持する車輪に設計値以上の荷重が加わる状況が発生しても、その荷重によって車輪を破壊させることがない水処理施設用可動式覆蓋を提供する。
【解決手段】
覆蓋本体7,14を支持すると共に覆蓋本体7,14を移動させることが可能な移動手段4と、覆蓋本体7,14を鉛直上方に持ち上げるジャッキ6を有した覆蓋1を提供する。当該覆蓋本体7,14がジャッキ6により持ち上げられると、移動手段4が覆蓋本体7,14を支持する状態から離脱すると共に、ジャッキ6が覆蓋本体7,14を支持する状態となる。これにより、移動手段4に設計値以上の荷重が掛かる状況が防止され、移動手段4が破壊することが阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪等の移動手段を備えた水処理施設用可動式覆蓋に関するものであり、特定の状況において覆蓋の移動手段への負荷を無くすことが可能な水処理施設用可動式覆蓋である。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理施設には施設の目的や用途に応じて覆蓋が設けられている。例えば、浄水施設における水槽等(ろ過池など)の覆蓋は、主に水槽内における藻類の発生防止や、鳥類の糞やゴミの飛来防止、最近では毒などの混入を防止するためのテロ対策設備を目的として設置されている。また、下水処理施設における水槽等(沈砂池など)の覆蓋は、主に防臭や水槽内への転落防止を目的として設置されている。
【0003】
この種の覆蓋は、水槽内の状態(濾過状態や沈殿状態)を確認する場合や、水槽内部のメンテナンスを行う場合に開放する必要がある。そこで、覆蓋に可動用の車輪のような移動手段を設けて適宜可動させる技術(可動式覆蓋)が知られている。このような可動式覆蓋においては、覆蓋のほぼ全ての自重が移動手段に掛かるため、移動手段には少なくとも覆蓋の自重に耐えることができる程の強度が必要となる。このような可動式覆蓋として、例えば、特許文献1に開示されている覆蓋がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−24716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、冬季に頻繁に降雪する積雪地域においては、家屋の屋根等に多量の雪が積もるため、建築基準法において、建築構造物の設計には積雪荷重を加味することが定められている。即ち積雪地域において、積雪荷重が構造物に与える負荷は無視することができない程度の大きさを有している。
【0006】
同様に積雪地域では、可動式覆蓋の移動手段(車輪)に積雪荷重による大きな負担が生じてしまう場合がある。したがって、可動式覆蓋に積雪荷重対策を行わない場合、積雪荷重によって移動手段が破壊されてしまう虞がある。
【0007】
ここで可動式覆蓋の積雪荷重対策として、可動式覆蓋の車輪の数を増やして1車輪あたりの荷重を低減させたり、積雪荷重が加わっても破壊されるおそれがない十分な設計強度を備えた大きな車輪にすること等が考えられる。
しかしながら、前記勘案される対策を講じることによって製造コストが増加したり、車輪が大きくなり過ぎて覆蓋全体として収まりが悪くなる等の不満があった。
【0008】
そこで本発明では、覆蓋を支持する移動手段に設計値以上の荷重が加わる状況が発生しても、その荷重によって移動手段が破壊されることがなく、安価に製造可能であって、移動手段が大きくなりすぎることを防止可能な水処理施設用可動式覆蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、水槽又は水路上部に形成された開口を覆って閉塞可能な覆蓋本体と、当該覆蓋本体を支持すると共に当該覆蓋本体を移動させることが可能な移動手段とを有した水処理施設用可動式覆蓋であって、覆蓋本体を鉛直上方に持ち上げる昇降手段を有し、覆蓋本体が昇降手段により持ち上げられると、移動手段が覆蓋本体を支持する状態から離脱すると共に、昇降手段が覆蓋本体を支持する状態となることを特徴とする水処理施設用可動式覆蓋である。
【0010】
本発明の水処理施設用可動式覆蓋は、昇降手段により覆蓋本体を持ち上げることによって、移動手段が覆蓋本体を支持する状態から離脱させ、昇降手段が覆蓋本体を支持する状態にすることができる。そのため本来は移動手段に設計値以上の荷重が掛かるような状況であっても、移動手段に過度の荷重が掛かることを阻止できる。具体的には、例えば、覆蓋本体上に雪が多量に降り積もった場合、昇降手段により覆蓋本体を鉛直上方に持ち上げて支持することで、設計値以上の積雪荷重が移動手段に掛からない。そのことにより、積雪荷重による移動手段の破壊を阻止することができる。
したがって本発明によれば、覆蓋本体の移動手段に設計値以上の荷重が加わることを事前に防止できるため、過度の荷重により車輪等の移動手段が破壊されることを阻止できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、昇降手段はねじを備えたジャッキであって、ねじは覆蓋本体に対して鉛直下方へ相対的に移動可能な状態で取り付けられており、ねじを床面に押しつけて覆蓋本体を鉛直上方に持ち上げることを特徴とする請求項1に記載の水処理施設用可動式覆蓋である。
【0012】
かかる構成によれば、ジャッキがねじを備えた構成であるため、製造コストが飛躍的に増加することがなく、安価な水処理施設用可動式覆蓋を提供できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記移動手段は複数の車輪によって構成されており、前記昇降手段は少なくとも車輪と同等の数が配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理施設用可動式覆蓋である。
【0014】
かかる構成によれば、昇降手段(ジャッキ)が少なくとも移動手段(車輪)と同等の数が配されているため、ジャッキにより覆蓋本体が支持されている状態であっても、移動手段に覆蓋本体が支持されている状態と同様に安定性を維持することができる。即ち、ジャッキにより覆蓋本体が支持されている際に、バランスを崩すことにより覆蓋本体や移動手段等に大きな衝撃を与えることを阻止できる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、昇降手段は移動手段の近傍であって覆蓋本体の移動方向における中央側に配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水処理施設用可動式覆蓋である。
【0016】
かかる構成によれば、昇降手段が覆蓋本体の移動方向における中央側に配されているため、覆蓋本体に発生した荷重により、覆蓋本体の移動方向における中央部分が撓む現象を抑制することができる。即ち、覆蓋本体に荷重が発生しても、撓みによる覆蓋本体の寿命の低下を抑制できる。
【0017】
覆蓋本体は、長手方向に長繊維が配向する繊維強化樹脂で形成された樹脂板であることが望ましい。(請求項5)
【発明の効果】
【0018】
本発明の水処理施設用可動式覆蓋では、移動手段に代わって覆蓋を支持可能な昇降手段を有しているため、移動手段に設計値以上の荷重が掛かるような状況であっても、事前に昇降手段によって覆蓋を支持させることで、移動手段が破壊されることを阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る覆蓋を示す斜視図である。
【図2】図1に示す覆蓋を開いた状態で示した斜視図である。
【図3】図1の覆蓋をA方向からみた正面図である。
【図4】図1の覆蓋の側面図である。
【図5】本発明の覆蓋が走行時に使用するレールを示す斜視図である。
【図6】図1に示す覆蓋が鉛直方向上側へ移動する状態を示す側面図であり、(a)は覆蓋が上側へ移動する前の状態を示し、(b)は覆蓋が上側へ移動した状態を示す。
【図7】図1とは異なる昇降手段を示す斜視図である。
【図8】図1,6とは異なる昇降手段を示す斜視図である。
【図9】図3とは別の実施形態の覆蓋を示す正面図である。
【図10】図3,9とは別の実施形態の覆蓋を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下さらに本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態の覆蓋(水処理施設用可動式覆蓋)1は、図1,2に示される様に上段側覆蓋2と下段側覆蓋3によって構成されるものであり、図示しない水処理施設用水槽の開口部の上側に配されるものである。そして、上段側覆蓋2及び下段側覆蓋3はそれぞれ車輪部材(移動手段)4を備えており、レール5上を互いに独立して移動させることができる。
この覆蓋1は図1で示されるように、上段側覆蓋2及び下段側覆蓋3を隣り合う位置に配置することによって水処理施設用水槽の開口を覆って蓋をすることが可能である。このようにすることで飛来物のような物や鳥のような動物が外側から水槽内に落下することや、水処理施設用水槽から発生した異臭が周囲に拡散すること等を防止できる。
また本実施形態の覆蓋1は、図2のように上段側覆蓋2の下部に下段側覆蓋3を移動させることで、蓋を開けた状態にすることが可能である。このようにすることで、水処理施設用水槽の内部の状態を確認することができる。
ここで、上段側覆蓋2及び下段側覆蓋3はそれぞれジャッキ(昇降手段)6を備えており、蓋を閉めた状態及び蓋を開けた状態で上段側覆蓋2と下段側覆蓋3を上下方向(図1,2におけるX方向)へ移動させることができる。そのことにより、上段側覆蓋2及び下段側覆蓋3は車輪4をレール5に接触させた状態と、車輪4をレール5から離した状態を切り替えて使用できる。したがって、上段側覆蓋2及び下段側覆蓋3は蓋を閉めた状態及び蓋を開けた状態において車輪部材4に荷重がかからない状態を維持したまま使用することができる。
【0022】
上段側覆蓋2は、図1に示されるように、覆蓋本体7に取付用部材8を介して車輪部材4及びジャッキ6を取り付けたものである。
【0023】
覆蓋本体7は、図1で示されるように下側(図1における下側)が開放された略箱状の蓋体であって、天板部7a、2つの側壁部7b、前壁部7c、後壁部7dより形成されるものである。具体的には、天板部7aの下面(図1における下側の面)に2つの側面部7b、前壁部7c、後壁部7dがそれぞれ垂設されている。また2つの側面部7b、前壁部7cと後壁部7dはそれぞれ対向する位置にあり、前壁部7cと後壁部7dは2つの側面部7bの間に設けられている。したがって天板部7aの下側には、2つの側壁部7b、前壁部7c、後壁部7dによって囲まれた空間が形成されている。
ここで前壁部7cは、2つの側面部7bに比べて高さ方向(図1におけるX方向)の長さが短くなっている。そのことにより、前壁部7cの下側(図1における下側)には外部と内側の空間を貫通する開口20が形成されている。
【0024】
本実施形態で採用する覆蓋本体7は、繊維強化樹脂(例えば、商品名「エスロンネオランバー FFU」積水化学工業株式会社製)でその一部又は全体を形成されている。そのため、金属製の覆蓋等に比べて耐腐食性が高いという利点がある。またさらに、軽量化と同時にたわみ等に対する剛性を高くすることができるという利点もある。
【0025】
取付用部材8は、図1,3に示されるように、断面形状がT字状の長尺状の部材であり、具体的には2つの等辺山形鋼を組み合わせることにより構成されている。したがって取付用部材8は、あたかも平板状の取付部8aの中央位置に同じく平板状の突出部8bが立設されたような形状となり、取付部8aは突出部8bより薄くなる。
【0026】
車輪部材4は、図1,3に示される様に、車輪4aと取付部材4bより構成されるものであり、車輪4aは取付部材4bに回転可能な状態で取り付けられているものである。
【0027】
ジャッキ6は、図1に示される様にボルト10(ねじ)とナット11より構成されるものである。ボルト10は六角ボルトであって、ナット11に螺合可能となっている。
【0028】
ここで、上段側覆蓋2の組み立て構造について図3,4を参照しながら説明する。図3に示されるように覆蓋本体7の2つの側壁部7bには、それぞれの下端側(図3における下側)に図示しないボルト等の固着手段によって取付用部材8が取り付けられている。なお、このとき取付用部材8の突出部8bは側壁部7bに対して垂直な方向(図3におけるZ方向)へ突出している。
【0029】
さらに取付用部材8の突出部8bの下面(図3における下面)には、車輪部材4が取り付けられている。このとき車輪部材4の車輪4aの車軸方向は、突出部8bの突出方向(図3におけるZ方向)と平行となっている。ここで、図4で示されるように、取付用部材8には長手方向の両端近傍にそれぞれ2つの車輪部材4が取り付けられている。上記したように上段側覆蓋2には2つの取付用部材8が取り付けられているため、上段側覆蓋2には合計4つの車輪部材4が取り付けられている。このことにより、上段側覆蓋2は車輪4aの車軸方向に対して垂直な方向(図4におけるY方向)に走行可能となっている。
なお、取付用部材8及び車輪部材4は上段側覆蓋2の幅方向(図3におけるZ方向)において、対向する位置に配置されることが、覆蓋本体7を支持する際や上段側覆蓋2を走行させる際に安定するので望ましい。
【0030】
さらにまた、取付用部材8の突出部8bには本発明の特徴的構成部材たるジャッキ6が設けられている。このジャッキ6は車輪部材4と同数設けられており、具体的には、図4で示されるようにそれぞれ車輪部材4の近傍であり、且つ車輪部材4より上段側覆蓋2の長手方向(図4におけるY方向)の中心側の位置に設けられている。
【0031】
このときジャッキ6が設けられている部分では、取付用部材8の突出部8bの下面(図4における下面)にナット11が一体に取り付けられており、ナット11の雌ネジ孔(図示せず)と中心軸の位置及び開口の大きさが略同じである孔(図示せず)が突出部8bに設けられている。つまり、取付用部材8の突出部8bを上下方向(図4におけるX方向)に貫通する孔(図示せず)と、ナット11の雌ネジ孔(図示せず)が重なりあっている。そして、これら2つの孔にボルト10が挿通されており、ボルト10はナット11と螺合している。このことにより、ボルト10を適宜の方向に回転させると、ボルト10は覆蓋本体7及び車輪部材4等に対して相対的に上下動(図4におけるX方向に移動)する。
【0032】
加えて図3に示される様に、取付用部材8の取付部8aの下側には走行ガイド12が取り付けられている。具体的には、走行ガイド12はナイロン等の適宜の材料で形成される長尺状の部材であって、取付用部材8の長手方向に沿って取り付けられている。
【0033】
下段側覆蓋3は、図1に示されるように、覆蓋本体14に取付用部材8を介して車輪部材4及びジャッキ6を取り付けたものである。具体的には、上段側覆蓋2の覆蓋本体7とは形状の異なる覆蓋本体14に対して上段側覆蓋2と同様の取付用部材8を取り付けたものである。
【0034】
下段側覆蓋3の覆蓋本体14も上段側覆蓋2の覆蓋本体7と同様に、下側(図1における下側)が開放された略箱状の蓋体であって、天板部14a、2つの側壁部14b、前壁部14c、後壁部14d(図4)により形成されるものである。
ここで下段側覆蓋3の覆蓋本体14と上段側覆蓋2の覆蓋本体7を比較すると、下段側の天板部14aは上段側の天板部7aに比べて、短手方向(図1におけるZ方向)の長さが短く、長手方向(図1におけるY方向)の長さが長くなっている。
また下段側の側壁部14b,後壁部14d(図4)は、それぞれ上段側の側壁部7b,後壁部7dに比べて、高さ方向(図1におけるX方向)の長さが短くなっている。
そして下段側の前壁部14cは上段側の前壁部7cのように開口20にあたる部分が形成されておらず、高さ方向の長さが側壁部14bと同じとなっている。
【0035】
そして図3に示されるように、覆蓋本体14の2つの側壁部14bにもそれぞれの下端側(図3における下側)に図示しないボルト等の固着手段によって取付用部材8が取り付けられている。このとき、図3,4で示されるように下段側覆蓋3に取り付けた取付用部材8の高さ方向(図3,4におけるX方向)の位置と、上段側覆蓋2に取り付けた取付用部材8の高さ方向(図3,4におけるX方向)の位置は同じとなっている。したがって、下段側覆蓋3と上段側覆蓋2の車輪部材4及びジャッキ6の高さ方向(図3,4におけるX方向)の位置も同じとなっている。
ここで下段側覆蓋3全体の幅W1と高さh1は、上段側覆蓋2の開口20の幅と高さより小さくなっている。
【0036】
レール5は図5で示されるように、平板状の基板部材15上に、断面形状L字状であり長尺状の2つレール片16,17を図示しない固着手段によって取り付けることによって構成されている。また、レール5は基板部材15に挿通したボルト18により地面等に固設されるものである。
【0037】
次に本実施形態の覆蓋1の動作について説明する。本実施形態1は、図1に示されるように水処理施設用水槽の周縁部分といった適宜な場所にレール5を固着し、当該レール5上に上段側覆蓋2及び下段側覆蓋3を設置して使用する。このとき、図3で示されるようにレール5の被覆対象(例えば水処理施設用水槽)に近い位置のレール片16には下段側覆蓋3の車輪4aが載置され、被覆対象に遠い位置のレール片17には上段側覆蓋2が載置される。
【0038】
そして、その状態で上段側覆蓋2と下段側覆蓋3の少なくとも1つを走行させることによって覆蓋1を開閉する。なお、上段側覆蓋2と下段側覆蓋3のいずれもレール5の長手方向(図1,2におけるY方向)に沿って移動するものである。
なお、上記したように上段側覆蓋2と下段側覆蓋3の取付用部材8の取付部8aの下部には走行ガイド12が取り付けられている。そのことにより、上段側覆蓋2又は下段側覆蓋3が走行時に走行方向(図1,2におけるY方向)と鉛直な方向(図1,2におけるZ方向)側へ向かって移動してしまっても、走行ガイド12がレール5に当接し、取付用部材8とレール5の直接の接触を防止できる。そして、走行ガイド12は潤滑性が高い部材であるため、走行ガイド12はレール5が接触した状態においても上段側覆蓋2又は下段側覆蓋3の走行方向(図1,2におけるY方向)への走行を妨げない。そのことにより、上段側覆蓋2と下段側覆蓋3は規定の方向へ円滑に移動することができる。
【0039】
ここで本発明の覆蓋1は、図1,2に示されるような覆蓋1が開いた状態又は閉じた状態であるとき、上段側覆蓋2と下段側覆蓋3のいずれか一方又は両方を鉛直方向上方(図1,2のX方向上側)へ移動させることができるものである。上段側覆蓋2を鉛直方向上方へ移動する場合を例に挙げて具体的に説明する。
【0040】
図6で示されるように、上段側覆蓋2の各車輪4aがレール片16,17と接触している状態(図6(a))において、上段側覆蓋2のいずれかのジャッキ6のボルト10を回転させ、ボルト10を下側(図6における下側)へ移動させる。
【0041】
ここで、ボルト10が下側へ移動していくとボルト10の移動方向の先端がレール5に近づいていき、ついには、ボルト10の先端がレール5に接触する。そして、その状態においてさらにボルト10を回転させることにより、ボルト10の位置はそのままでボルト10に螺合されているナット11がボルト10に対して相対的に上側へ移動する。すると、ナット11と一体になっている上段側覆蓋2の覆蓋本体7及び取付用部材8の一部が上側に持ち上げられる。
【0042】
そして、上段側覆蓋2の他のジャッキ6のボルト10についてもそれぞれ同様に回転させ、下側(図6における下側)へ移動させる。すると、上段側覆蓋2が鉛直方向上方へ移動して4つのボルトに支持される状態(図6(b))となり、上段側覆蓋2の全ての車輪4aがレール5から離れて荷重がかからない状態となる。
【0043】
ここで上段側覆蓋2を鉛直方向上方へ移動した状態から再び移動可能な状態にするためには、鉛直方向上方に移動させる場合とは逆方向に各ジャッキ6のボルト10を回転させればよい。具体的には、まず任意のボルト10を回転させることで、ナット11がボルト10に対して相対的に下側へ移動していき、それに伴って上段側覆蓋2の覆蓋本体7及び取付用部材8の一部が下側へ下がっていく。そして、回転させたボルト10の近傍にある車輪4aがレール5に接触してボルト10がレール5から離れることで、車輪4aに荷重がかかり、ボルト10に荷重がかからない状態となる。
【0044】
さらに上段側覆蓋2の全てのジャッキ6のボルト10に対して同様の操作を行う。すると、上段側覆蓋2の全ての車輪4aがレールに接触し、全てのボルト10がレールから離れる。そのことにより上段側覆蓋2が再びレール5上を走行可能な状態となる。
【0045】
このように、上段側覆蓋2をボルト10によって支持される状態にすると、積雪等により上段側覆蓋2より設置部分にかかる負荷が増大しても、車輪4aに負荷がかからない状態で覆蓋を使用できる。そのため、車輪4aが過度の負荷によって破壊されることがない。
【0046】
また本実施形態では、車輪部材4及びジャッキ6が上段側覆蓋2の幅方向(図3におけるZ方向)両端において同数であり且つ対向する位置にあるため、走行可能な状態やボルト10によって支持された状態において安定性が高い。
【0047】
さらにまた、本実施形態では上段側覆蓋2の長手方向(図6におけるY方向)において、ジャッキ6が車輪部材4より覆蓋本体7の中心よりに位置している。このことにより、車輪部材4より覆蓋本体の長手方向両端よりにジャッキ6を設ける場合に比べて積雪荷重に対して強い構成とすることができる。つまり、積雪等により覆蓋本体7の荷重が増加しても、ジャッキ6が覆蓋本体7の中心よりの位置で支持しているので、荷重の増加に伴う覆蓋本体7の長手方向中心近傍の落ち込みによって、覆蓋本体7が撓んでしまうことを防止できる。
【0048】
なお、上記した上段側覆蓋2の鉛直方向(図6におけるX方向)への移動方法並びにその作用効果は下段側覆蓋3においても同様である。即ち、下段側覆蓋3の各ジャッキ6のボルト10を上下方向に移動させることにより、下段側覆蓋3を鉛直方向上下に移動するものである。
【0049】
上記した実施形態では、覆蓋1が開いた状態又は閉じた状態のとき、覆蓋1を構成する上段側覆蓋2と下段側覆蓋3を鉛直方向上下に移動する場合について記載したが、本発明の覆蓋1の鉛直方向上下への移動方法はこれに限るものではない。
例えば開閉動作時において上段側覆蓋2と下段側覆蓋3のいずれか一方しか動かさない場合、動いていない側の覆蓋を鉛直方向上下に移動させてもよい。即ち本発明の覆蓋1は、覆蓋1を構成する覆蓋(例えば、上段側覆蓋2や下段側覆蓋3)を単独で鉛直方向上下に移動することが可能であって、いつ鉛直方向上下に移動させてもよい。これらは用途に応じて適宜変更してよい。
【0050】
上記した実施形態では、覆蓋1を構成する覆蓋が上段側覆蓋2と下段側覆蓋3の2つの場合について説明したが、覆蓋1を構成する覆蓋の数はこれに限るものではない。覆蓋(水処理施設用覆蓋)を1つの覆蓋で構成してもよく、また3つ以上の覆蓋で構成してもよい。
【0051】
上記した実施形態では、ジャッキ6のボルト10に六角ボルトを使用する場合について説明したが、ボルト10はこれに限るものではない。
例えば、図7で示されるように、頭部形状を四角柱状としたボルト23を使用して、レンチ24によってボルト23を回動させてもよい。さらに、ボルト23の先端に皿状部分25を設けてもよい。このようにすると、覆蓋を鉛直方向上側へ移動させた状態における安定性が上昇するという利点がある。
【0052】
また図8で示されるように、ウォームギア26を使用してボルト28を上下動させる構成であってよい。具体的には、まず中心部分に雌ネジ孔を有するウォームホイール27を図示しない固定部材により上下動しないように取付用部材に取り付ける。次に、ウォームホイール27の雌ネジ孔にボルト28を螺合する。そして、ウォームホイール27とウォームギア26を組み合わせた状態で、ウォームギア26を回転させることにより、ボルト28を上下動させるものである。このような構成によると、覆蓋本体を上下動させる力を大きくすることができるという利点がある。
【0053】
上記した実施形態では、所謂陸屋根(平屋根)のような形状の上段側覆蓋2及び下段側覆蓋3を採用したが、本発明で採用される覆蓋の形状はこれに限るものではない。例えば、図9に示されるように切妻屋根のような形状の上段側覆蓋30、下段側覆蓋31を使用した覆蓋32を採用してもよい。また、図10に示されるようにアーチ状の上段側覆蓋33、下段側覆蓋34を使用した覆蓋35を採用してもよい。つまり、本発明で採用される覆蓋の形状は特に限定されず、切妻屋根、片流れ屋根、鋸屋根等のような形状であってよく、アーチ状、ドーム型のように丸みを帯びたものであってもよい。なお、覆蓋に採用する上段側覆蓋と下段側覆蓋の形状は異なる形状でよく、例えば、切妻屋根のような形状の上段側覆蓋30とアーチ状の下段側覆蓋34を組み合わせた覆蓋としてよい。上段側覆蓋と下段側覆蓋の組み合わせは任意であり適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0054】
1 覆蓋(水処理施設用可動式覆蓋)
4 車輪部材(移動手段)
6 ジャッキ(昇降手段)
7 覆蓋本体
10 ボルト
14 覆蓋本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽又は水路上部に形成された開口を覆って閉塞可能な覆蓋本体と、当該覆蓋本体を支持すると共に当該覆蓋本体を移動させることが可能な移動手段とを有した水処理施設用可動式覆蓋であって、
覆蓋本体を鉛直上方に持ち上げる昇降手段を有し、
覆蓋本体が昇降手段により持ち上げられると、移動手段が覆蓋本体を支持する状態から離脱すると共に、昇降手段が覆蓋本体を支持する状態となることを特徴とする水処理施設用可動式覆蓋。
【請求項2】
昇降手段はねじを備えたジャッキであって、
ねじは覆蓋本体に対して鉛直下方へ相対的に移動可能な状態で取り付けられており、
ねじを床面に押しつけて覆蓋本体を鉛直上方に持ち上げることを特徴とする請求項1に記載の水処理施設用可動式覆蓋。
【請求項3】
前記移動手段は複数の車輪によって構成されており、
前記昇降手段は少なくとも車輪と同等の数が配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理施設用可動式覆蓋。
【請求項4】
昇降手段は移動手段の近傍であって覆蓋本体の移動方向における中央側に配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水処理施設用可動式覆蓋。
【請求項5】
覆蓋本体は、長手方向に長繊維が配向する繊維強化樹脂で形成された樹脂板であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水処理施設用可動式覆蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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