説明

水処理装置および水処理方法

【課題】電気分解処理により生じる溶存酸素濃度の上昇を防ぐ水処理装置を提供する。
【解決手段】
縦向きに配置し、密閉された円筒状の縦型容器部21と、縦型容器部21の下部に設け、被処理水を縦型容器部21内に流入させる流入管22と、縦型容器部21の上部に設け、縦型容器部21内に流入した被処理水を縦型容器部21の外へ流出させる流出管23と、縦型容器部21内に配置した電気分解用の電極部271、272、273と、電極部271、272、273とは非導通状態で、電極部271、272、273を取り囲み、縦型容器部21内に配置した電極カバー274と、流入管22に接続され、被処理水中に脱酸素ガスのマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置3とを有し、電極271、272、273および電極カバー274への通電による電気分解処理で溶存する無機系物質を電極カバー274に付着させ、縦型容器部21内の被処理水に対してマイクロバブルによる脱酸素処理を行うことを特徴とする水処理装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解により生じる酸素濃度の上昇を防ぐようにした水処理装置および水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、プレス成型機等が複数設置された工場において、プレス成型機の金型等を冷却水で冷却する冷却水の循環系が設けられている。このような、冷却水の循環系において、冷却中に溶解しているカルシウムが配管等にスケールとして析出し、様々な障害を生じさせる。
そこで、スケールの発生を防止するために、電気分解作用を利用して循環水中のカルシウムを捕集する水処理装置が提案されている(特許文献1、2)。
特許文献1に開示の水処理装置は、貯留槽内に電極および電極カバーを配置し、被処理水に対して陽極を電極とし、陰極を電極カバーとして電気分解して、溶け込んだカルシウムを電極カバーに析出させて、水溶液中に溶け込むカルシウム量を減らす。そして、この陰極であった電極カバーを陽極に反転させることで、電極カバー表面に付着したカルシウムを離脱させて、スケール回収容器内に捕集する。
特許文献2に開示の水処理装置は、電極を陽極から陰極に反転させ、電極に付着していたカルシウムを離脱させて、下部に設けた開口部から付着したカルシウムを排出する。
【0003】
【特許文献1】特許第4438570号公報
【特許文献2】特開2003−334561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献のいずれも被処理水中に溶け込むカルシウムを除去するために、電気分解処理を行うので、陽極から発生した酸素により、被処理水中における酸素濃度が高くなる傾向があった。そうすると、酸素濃度の高い被処理水が工場経路やプレス成型機の金型等を循環するため、冷却水循環系内の配管内に錆びを発生させるおそれがあり、金型等の表面に酸化被膜が形成される場合がある。
そこで、本発明は、冷却水経路内におけるスケール析出の抑制を維持しつつ、被処理水中に溶存する酸素濃度の上昇を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、縦向きに配置し、密閉された筒形状の縦型容器部と、縦型容器部の下部に設け、被処理水を縦型容器部内に流入させる流入管と、縦型容器部の上部に設け、縦型容器部内に流入した被処理水を縦型容器部の外へ流出させる流出管と、縦型容器部内に配置した電気分解用の電極部と、電極部とは非導通状態で、電極部を取り囲む縦型容器部内に配置した電極カバーと、流入管に接続され、被処理水中に脱酸素ガスのマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置とを有し、電極および電極カバーへの通電による電気分解処理で、溶存する無機系物質を電極カバーに付着させ、縦型容器部内の被処理水に対してマイクロバブルによる脱酸素処理を行うことを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の請求項4に記載された発明は、密閉された筒形状の縦型容器部における下部から、脱酸素機能を備えたマイクロバブルを混入した被処理水を流入させ、縦型容器部の上部から外部に流出させる間に、縦型容器部内で被処理水を電気分解処理することを特徴とする水処理方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、工場等に設備される循環水系の経路内におけるスケールの析出を抑制するとともに、被処理水中に溶存する酸素濃度の上昇を防ぐことで、被処理水が循環する配管等の錆の発生を低減、抑制して、メンテナンスの手間を低減させるとともに、循環効率を高めるという効果が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】水処理装置の実施形態を示す概略図である。
【図2】マイクロバブル発生装置の概略図である。
【図3】装置本体部の正面図である。
【図4】装置本体部の側面図である。
【図5】装置本体部の上面図である
【図6】水処理装置を含む冷却水循環系の概略図である。
【図7】水処理装置により処理した被処理水を貯留する処理槽内における被処理水中の溶存酸素濃度を計測した試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1は水処理装置全体の概略図、図2は装置本体部の正面図、図3は装置本体部の側面図、図4は装置本体部の上面図、図5はマイクロバブル発生装置の概略図、図6は水処理装置を含む工場用処理経路の概略図、および図7は水処理装置により処理した処理槽内における被処理水中の溶存酸素濃度を計測した試験結果である。
X軸、Y軸およびZ軸は互いに直交する異なる三軸を示している。
なお、各座標軸の矢印方向を正方向とする。
【0011】
図6に示すように、処理槽4に冷却水循環系5を接続し、循環ポンプ6により処理槽4内に被処理水を取り入れ、被処理水を冷却循環系5へと排出する。この処理槽4内に取り入れた被処理水は、取水接続管41を介して本実施形態の水処理装置1内へと取水する。取水した被処理水は、脱酸素処理を行う窒素マイクロバブルを発生させるためのマイクロバブル発生装置3、電気分解処理を行う装置本体部2へと順に送り、被処理水に対して各種の水処理を行う。
【0012】
図1、2、3に示すように装置本体部2は、密閉型の縦型容器部21、窒素マイクロバブルを含む被処理水が縦型容器部21内に流入する流入管22、この流入した被処理水が処理槽4へと流出する流出管23、縦型容器部21の外に無機系物質であるスケールおよび被処理水を排出する排出管25、および縦型容器部21の蓋の役割をなす蓋本体部26を有する。この蓋本体26の裏面には、縦型容器部21の内側に電気分解するための電気分解装置27を取り付けている。
【0013】
縦型容器部21は、内径が一定の同径筒状部211と下方に向かって内径が漸減するテーパー筒状部212とを上下に設けた構造としている。この同径筒状部211の側面下方に流入管22、側面上方には流出管23がそれぞれ設けられている。また、テーパー筒状部212の底部に排出管25が設けられている。
【0014】
流入管22の一端は、マイクロバブル発生装置3の流出口34に接続されており、マイクロバブル発生装置3内で発生した窒素マイクロバブルを含む被処理水を縦型容器部21内に流入させる。図4の矢印で示すように窒素マイクロバブルを含む被処理水が、縦型容器部21の内周面における接線方向に流入して、流入管22の接続口が、x−y断面視における円周面縁側に臨むように縦型容器部21に設ける。そうして、流入管22から縦型容器部21内に流入した被処理水が、同径筒状部211の内周面に沿うように旋回渦を形成しながら、流出管23から縦型容器部21の外へと排出される。
【0015】
流出管23は、縦型容器部21の上部に設け、下部に設けられた流入管22に対してx軸方向において、離間対向して配置する。縦型容器部21の中心を通る水平面の軸線、垂直面の軸線をそれぞれLx、Lyとすると、流出管23と流入管22とは、軸線Lxを中心に線対称に配置され、かつ、流入管22と流出管23の被処理水の流入方向と流出方向は、ともに軸線Lzと平行に設けられている。ここで、流入管22と流出管23は、軸線Lxからできるだけ遠ざかった位置に配置するのが望ましい。この構成により、流入管22から軸線Lx方向に向けて縦型容器部21内に流入した被処理水は、縦型容器部21の内周面に沿って移動して、旋回流となり、縦型容器部21内を上方に向けて移動する。その際、縦型容器部21の内側に配置された電極271、272、273および電極カバー274の下から上へ旋回流が通過するため、被処理水が満遍なく電極および電極カバーに触れる。そうして、縦型容器部21内に流入する被処理水を効率良く電気分解することができる。
【0016】
流出管23は、流入管22よりも上に設けられているため、流入した被処理水は、窒素マイクロバブルの浮力を利用して、流出管23へと誘導することができる。さらに、流入管22および流出管23は、縦型容器部21の軸線Lyよりも図4において左側に形成している。これにより図中右側に給電部263等を備えた制御盤7等を設けて、水処理装置1をコンパクトに設計することができる。
【0017】
また、流出管23の途中には処理槽4へ向かう流路と大気へ開放される流路へと分岐する分岐管24が設けられており、大気へ開放させる流路には、流路を開口または閉止するように切り替える給気電磁弁241が設けられている。
【0018】
さらに、分岐管24と給気電磁弁241との間には、給気用逆止弁242を設ける。これにより、一度、縦型容器部21内に流入した空気が、逆流して給気電磁弁241を介して外へ排出されるのを防ぐことができる。
【0019】
排出管25には、流路を開口または閉止するように切り替える排出電動弁251が設けられている。
【0020】
蓋本体部26は、ハット形状をしており、中央に凸形状部261およびこの凸形状部261の中心において制御盤7から電力を給電する給電部263を有する。この給電部263は、蓋本体部26の裏面に取り付けた電気分解装置27の各電極端子と接続し、電気分解装置27が作動するための電力を供給する。また、蓋本体部26は外周にフランジ部262を有し、縦型容器部21の上面にあるフランジと位置を合わせて、ボルトおよびナットにより蓋本体部26と縦型容器21とを固定する。
【0021】
図2に示すように、電気分解装置27は、第1、第2、第3の電極、271、272、273(図面に符号なし)および電極カバー274を有する。第1、第2、第3の電極、271、272、273は、互いの電極が干渉しないように蓋本体部26のx−y平面視における中心から見て周方向に120°間隔で、円弧上に湾曲したプレートを3箇所設けている。電極カバー274は、これらの第1、第2、第3の電極、271、272、273の長手方向外側を覆うように位置する。
【0022】
第1、第2、第3の電極、271、272、273は、縦型容器部21の長手方向に延びるx-y断面視において円弧上に湾曲した網目状のプレートである。この網目状のプレートにすることで、各電極と被処理水が接触する面積を増やし、被処理水中に溶け込むカルシウムイオン等のスケールを回収することができる。
【0023】
また、第1、第2、第3の電極、271、272、273は、例えば、亜鉛、マグネシウム合金、銅、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム合金、白金、セラミックスが使用される。酸化還元電位を低下させる電極としては、これらいずれの金属を用いた場合でも酸化還元電位の低下は見られるが、特にチタンに白金鍍金を施したものがより顕著である。また、電極の形状として、網目状のシート形状としたが、これに限定されるものではなく、板状、棒状、円筒状のいずれであっても良い。さらに、電極の数は、必ずしも3つである必要はなく、2つ以上あれば良い。
【0024】
電極カバー274は、全体が略円筒状で、水を内部に流通させるために複数の矩形の貫通孔が設けられている。この形状により、電極カバー274の内側に位置する第1、第2、第3の電極、271、272、273に対して流水させるとともに、流入管22から流入する被処理水の水撃による破損等から第1、第2、第3の電極、271、272、273を保護することができる。
【0025】
この電極カバー274は、第1、第2、第3の電極、271、272、273と非導通とする。電極カバー274を陰極とし、スケールとなる陽イオンの無機系物質であるカルシウムイオン等を電極カバー274で回収する。この電極カバー274の材質としては、金属を用いることが好ましく、より好適には、防錆性に優れたチタン、白金メッキチタン等が用いられる。
【0026】
さらに、第1、第2、第3の電極、271、272、273のいずれか2本をプラス電極とし、残りの1本をマイナス電極として9〜34kHの周波数で切替りながら電気分解処理を行う。すなわち、3本の電極で構成された電極の極性を順切替える電極ロータリー機能とすることにより、プラス電極の消耗を減らすとともにマイナス電極で回収するスケール量を多くすることができる。
【0027】
また、水溶液中に溶け込むスケールとなるカルシウムイオン等は、電極カバー274で回収して、長時間の電気分解処理を行うと、被処理水の濁度が安定して透明になる。このような電気分解処理を利用して、被処理水の改質を行うため、薬品を必要とせず、低コストでの設備とすることができる。
【0028】
図5に示すようにマイクロバブル発生装置3は、端部の一端を塞いだ筒形状の筒形状部31と、この筒形状部31の流路に対して直交して固定された被処理水供給管32および窒素ガス供給管33からなる。
【0029】
被処理水供給管32は、筒形状部31の開口端側(流出口34側)に位置しており、一端を取水接続管41に接続している。そうして、処理槽4内の被処理水が、被処理水供給管32を介して筒形状部31内へ流入する。
【0030】
窒素ガス供給管33は、一端を不図示である高圧の窒素ボンベに接続されており、窒素ガスを筒形状部31内に流入させる。ただし、高圧の窒素ボンベの代わりに窒素ガス発生装置に窒素ガス供給管33を接続して、窒素ガスを筒形状部31内に流入させるようにしても良い。
【0031】
これらの被処理水供給管32からの被処理水および窒素ガス供給管33からの窒素ガスは、それぞれ筒形状部31の内周面に沿って流入され、旋回渦を形成する。特に、窒素ガスについては、高圧の窒素ガスを吸入するため、超高速の旋回渦となる。この超高速の窒素ガスの旋回渦と被処理水の旋回渦が筒形状部31の流路内で混入し、気体と液体が入り混じった気液二層流体の超高速旋回渦となり、窒素ガスのマイクロバブル(窒素マイクロバブル)を発生させる。そうして、窒素マイクロバブルが入り混じった被処理水を装置本体部2へと送る。なお、窒素ガス供給管33を細径化して流路断面積を小さくすることで、窒素ガスの流入速度を上げ、より高速の旋回渦を形成し、より細かい窒素マイクロバブルを発生させるようにしても良い。
【0032】
ここで、被処理水供給管32には、図1に示すように被処理水流入管バルブ35、逆止弁36および被処理水供給ポンプ37が設けられている。被処理水供給ポンプ37は、処理槽4内で流入した被処理水をマイクロバブル発生装置3および装置本体部2へと供給する。被処理水流入バルブ35は、バルブにより絞り量を調整することができ、被処理水供給ポンプ36から供給される被処理水が処理槽4からマイクロバブル発生装置3内に流入するのを調整する。さらに、被処理水供給管32において逆止弁36を設けることで、マイクロバブル発生装置3で発生した窒素マイクロバブルを含む被処理水が処理槽4側へと流出するのを防ぐことができる。
【0033】
図6に示すように処理槽4は、循環ポンプ6の吸い込み口および冷却水循環系5の給水口を接続しており、冷却循環系5を循環する被処理水を内部に一旦貯留する。
【0034】
取水接続管41は、処理槽4内の貯留された被処理水を水処理装置1内に取水する。また、排水接続管42は、水処理装置1により電気分解処理および脱酸素処理をした被処理水を処理槽4に排水する。
【0035】
ここで、取水接続管41および排水接続管42の材質としては、例えば、塩化ビニール、ポリブデン、ポリエステル、ポリプロピレン、マープレン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ナイロン、クロロプレン、ネオプレン、シリコン、フッ素ゴム等が使用可能であるが、特に伸縮性のある塩化ビニールが好適に使用される。
【0036】
次に、本発明の実施形態である水処理装置1における被処理水の処理方法について説明する。水処理装置1における水処理の開始状態は、処理槽4内に被処理水を貯留している状態であり、マイクロバブル発生装置3における被処理水流入管バルブ35の絞りを全開とし、装置本体部2における排出電動弁251および給気電磁弁241を閉状態とする。
【0037】
まず、取水接続管41から処理槽4内の被処理水をマイクロバブル発生装置3内へと取水する。マイクロバブル発生装置3内に取水した被処理水は、窒素ガス供給管33を介して流入した高圧の窒素ガスを混合して、超高速の気液二層の旋回渦を形成して、被処理水中に窒素マイクロバブルを発生させる。
【0038】
窒素マイクロバブルを含んだ被処理水は、筒形状部31の流出口34から流出され、流入管22を介して縦型容器部21の側面下方から縦型容器部21内に流入する。流入した窒素マイクロバブルを含む被処理水は、縦型容器部21の内周面を沿うように旋回し、第1、第2、第3の電極、271、272、273および電極カバー274を通る。この際、窒素マイクロバブルは、被処理水中に溶け込む酸素を窒素マイクロバブル内に取り込む。そうして、酸素を取り込んだ窒素マイクロバブルを含む被処理水は、縦型容器部21の上方にある流出管23を介して排水接続管42から処理槽4内に排水される。このように被処理水とともに酸素を取り込んだ窒素マイクロバブルも処理槽4内に排水して、処理槽4の上面に酸素を取り込んだ窒素マイクロバブルを浮上させて大気に放出する。これにより、循環する被処理水中における溶存酸素濃度を下げることができる。
【0039】
また、縦型容器部21に流入した被処理水が旋回することにより、縦型容器部21の内側全体を流れることができるとともに、縦型容器部21内における経路を長くすることができるため、被処理水と窒素マイクロバブルを効率的に接触させることができる。これにより、被処理水中に溶け込む酸素を効率的に窒素マイクロバブル内に取り込み、被処理水における溶存酸素濃度を効率的に下げることができる。
【0040】
マイクロバブル発生装置3は、常時稼働させて縦型容器部21に窒素マイクロバブルを連続供給させても良い。さらには、タイマーや溶存酸素濃度センサ等を用いて間欠運転としても良い。このように間欠運転とすることで、縦型容器部21内を所定の溶存酸素濃度に保ちながら、水処理装置1(装置本体部2およびマイクロバブル発生装置3)として必要な消費電力を下げることができる。
【0041】
電気分解処理については、第1、第2、第3の電極、271、272、273および電極カバー274は、縦型容器部21内に流入した被処理水に大部分を浸漬して、第1、第2、第3の電極、271、272、273のいずれか2つを陽極とし、残りの電極および電極カバー274を陰極として電気分解を行う。第1、第2、第3の電極、271、272、273は、順次極性を入れ替えながら通電する。そのように通電することで、被処理水中に溶け込むカルシウム等の陽イオンを電極カバー274に付着させて、回収することができる。さらに、水を電気分解することで生じる溶存酸素濃度の上昇は、前述の窒素マイクロバブルにより防ぐことができる。
【0042】
このような脱酸素処理および電気分解処理を行った被処理水は、流出管23から、処理槽4内へ流出する。流出した被処理水は、循環ポンプ6により、冷却水循環系5を循環する。そして、経路内全体を循環した被処理水は、再び処理槽4内に貯留され、取水接続管41を介してマイクロバブル発生装置3および装置本体部2へと取水され、前述同様の処理を繰り返す。
【0043】
本実施の形態のように水処理装置1と冷却水循環系5に接続された処理槽4を別体にすることで、水処理装置1が故障した場合でも、冷却水循環系5における被処理水の循環を停止させないようにすることができる。
【0044】
ところで、このような処理を繰り返すと、陰極の働きをなす電極カバー274には、カルシウム等の析出量が多くなる。そこで、所定時間経過後に、極性を切替えて、電極カバー274を陰極から陽極に変えて、電極カバー274に付着するカルシウム等を自然に離脱させ、装置本体部2の底部へと貯留させる。この際、被処理水流入管バルブ35の絞りを全閉とし、排出電動弁251および給気電磁弁241をともに開状態に切り替える。そして、縦型容器部21の下端にある排出管25を開口させるとともに、縦型容器部21の上部にある流出管23の途中にある分岐管24を介して大気に開放している流路を開口する。そうして、外気を流出管23から縦型容器部21に給気して、縦型容器部21内にある被処理水の排出に伴って離脱させたカルシウム等のスケールも縦型容器部21の外へと排出する。
【0045】
排出を行った後は、再び電極カバー274を陰極に戻して、被処理水流入管バルブ35の絞りを全開に緩めて、排出電動弁251および給気電磁弁241を閉状態とし、処理槽4内に流入した被処理水を水処理装置1内に取水し、前述同様の脱酸素処理および電気分解処理を行う。
【0046】
なお、この電極カバー274を陽極に反転させた場合は、第1、第2、第3の電極、271、272、273のうちのいずれか2つを陰極とし、残りを陽極とする。
【0047】
このように、電気分解による被処理水中に溶け込むスケールの除去および、窒素マイクロバブルによる脱酸素処理を行うことで、冷却水循環系5の配管および水処理装置1内における腐食を防ぎ、メンテナンスの手間および費用を削減することができる。
【0048】
また、本実施の形態として、水処理装置1が、冷却水循環系5を循環する被処理水を貯留する処理槽4に接続した例を示したが、本発明は、これに限定されず、例えば、工業用排水・下水排水の前処理として、上水貯水タンクのメンテナンス等、水を貯留しているあらゆる箇所で、無機系物質の回収を目的として使用できる。
【0049】
(実施例)
次に、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実験では、被処理水として上水を使用し、処理槽4として0.05トンの水槽を使用し、冷却塔内の水温が32〜34℃の状態で水処理を実施した。また、この実験では、第1、第2、第3の電極、271、272、273の材質としては、白金メッキチタンを使用し、電気分解処理を行った。また、マイクロバブル発生装置3としては、NITTA MOORE社製の気液せん断方式のマイクロバブル発生装置を用いた。
【0050】
この構成において、時間に対する溶存酸素濃度との関係を計測したものが図7である。図7では、窒素マイクロバブルの脱酸素効果を確認するために、本実施例と同じ条件で、電気分解処理のみを行った比較例1と、窒素ガスをそのまま装置本体部2内に流入して電気分解処理を行った比較例2についての計測結果も併記する。
【0051】
図7から分かるように、本実験装置によれば、電解処理を開始する前において処理槽4内における被処理水の溶存酸素濃度が8.22mg/lあったものが、開始後50分で5.81mg/lまで下がり、さらに開始後300分では、2.79mg/l下がることが分かった。これに対して、窒素ガスをそのまま装置本体部2内に取水して電気分解処理を行った比較例1は、開始後50分で溶存酸素濃度が7.85mg/lまで下がるが、その後は若干の下がり勾配となり、開始後300分経っても溶存酸素濃度は7.15mg/lまでしか下がらなかった。また、電気分解処理のみを行う比較例2は、処理開始前の溶存酸素濃度が7.85mg/lであるものが、開始後50分で8.62mg/lまで上がり、開始後約300分では、8.66mg/lと平行に推移していた。
【0052】
このような結果から、比較例1(単に窒素ガスを注入して電解処理を行ったもの)の場合は、気泡径が大きいため、浮力が大きく、直ぐに上に設けた流出管23から排出されてしまうため、被処理水に溶存する酸素を気泡内に取り込むことが難しく、溶存酸素濃度を大きく下げられないと考えられる。また、比較例2(電気分解処理のみ)の場合は、第1、第2、第3の電極、271、272、273および電極カバー274による電気分解で生じる酸素が被処理水中に溶け込むため、電気分解処理を開始する前よりも被処理水中に溶け込む溶存酸素濃度が上昇すると考えられる。
【0053】
これらに対して、本実施例は、気泡径が極めて小さい窒素マイクロバブルを使用するため、浮力を極力抑え、上方に設けた流出管23から窒素マイクロバブルが流出されにくくする。また、縦型容器部21内で旋回流とすることにより、流入から流出までの縦型容器部21内の循環経路を長く取り、被処理水と窒素マイクロバブルが長く接しさせて、被処理水中に溶け込んだ酸素を窒素マイクロバブル内に効率的に取り込むことができる。このように効率的に取り込むことで、本実施例では、他の比較例に対して飛躍的に被処理水における溶存酸素濃度を下げることができる。
【0054】
このようにして、電気分解処理に窒素マイクロバブルを組み合わせることで、極めて簡単な方法で水処理装置1を含む冷却水循環系5内における被処理水を低酸素濃度とすることができる。
【0055】
さらに、本実験装置では、効果の再現性や持続性が高く、経持劣化は極めて少ないことが確認された。
【0056】
以上の実施例において、マイクロバブル発生装置3内に窒素ガスを吸入した例を示したが、これに限定されるものではなく、例えばアルゴン等の脱酸素効果があるガスであればいずれでも良い。
【0057】
本発明における1実施形態について説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱しないかぎり、様々な変更および改質がなされ得ることは、当業者には自明であろう。
【符号の説明】
【0058】
1 水処理装置
2 装置本体部
21 縦型容器部
211 同径筒状部
212 テーパー筒状部
22 流入管
23 流出管
24 分岐管
241 給気電磁弁
242 吸気用逆止弁
25 排出管
251 排出電動弁
26 蓋本体部
261 凸形状部
262 フランジ部
263 給電部
27 電気分解装置
271 第1の電極
272 第2の電極
373 第3の電極
274 電極カバー
3 マイクロバブル発生装置
31 筒形状部
32 被処理水供給管
33 窒素ガス供給管
34 流出口
35 被処理水流入管バルブ
36 逆止弁
37 被処理水供給ポンプ
4 処理槽
41 取水接続管
42 排水接続管
5 冷却水循環系
6 循環ポンプ
7 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向きに配置し、密閉された筒形状の縦型容器部と、
前記縦型容器部の下部に設け、被処理水を前記縦型容器部内に流入させる流入管と、
前記縦型容器部の上部に設け、前記縦型容器部内に流入した被処理水を前記縦型容器部の外へ流出させる流出管と、
前記縦型容器部内に配置した電気分解用の電極部と、
前記電極部とは非導通状態で、前記電極部を取り囲む前記縦型容器部内に配置した電極カバーと、
前記流入管に接続され、被処理水中に脱酸素ガスのマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置とを有し、
前記電極および前記電極カバーへの通電による電気分解処理で、溶存する無機系物質を前記電極カバーに付着させ、前記縦型容器部内の被処理水に対して前記マイクロバブルによる脱酸素処理を行うことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記縦型容器部の下部に、前記縦型容器部内の被処理水を前記縦型容器部の外へ排出する排出管を有し、前記電極および前記電極カバーの極性を反転させた際に、前記電極カバーに付着した無機系物質を、前記電極カバーから離脱させて、前記縦型容器部の下部に沈降させ、該沈降させた無機系物質を前記排出管より外へと排出可能とすることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置
【請求項3】
前記マイクロバブルが、窒素マイクロバブルであることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
密閉された筒形状の縦型容器部における下部から、脱酸素機能を備えたマイクロバブルを混入した被処理水を流入させ、前記縦型容器部の上部から外部に流出させる間に、前記縦型容器部内で被処理水を電気分解処理することを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−255265(P2011−255265A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129885(P2010−129885)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(598138028)株式会社レイケン (5)
【Fターム(参考)】