説明

水処理装置用の流体フローディレクタ

水処理装置用のプラスチック製流体フローディレクタが提供される。流体フローディレクタは、紫外線に対して実質的に不透過性である保護コーティングが施されたプラスチック基盤を有する。プラスチック基盤を超高分子ポリエチレンとし、UV不透過性コーティングを未発泡ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とすることができる。UV不透過性コーティングは、水処理工程においてプラスチックを破壊する可能性のある紫外線からプラスチック基盤を保護する。コーティングは水との接触に適し、長期間紫外線にさらされても破損せず、従来の水処理装置において機能する。UV不透過性コーティングが施されたプラスチック基盤はステンレス鋼の流体フローディレクタの適切な代替品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置特に紫外線(UV)が存在するところで水処理装置に使用するための流体フローディレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
水中の汚染物を濾過してこれを処理するための水処理装置は既知である。多くの水処理装置は、水処理装置を流れる水の流量または流路を偏向、分流、点検、調節またはその他操作するために、水の経路に流体フローディレクタ(fluid flow director)またはバッフルを採用する。流体は流体フローディレクタに接触するので、流体フローディレクタは、一般に不純物を浸出させないまたは水を汚染しない材料から製造される。多くの場合、このような流体フローディレクタは紫外線が存在するところに配置される。紫外線は、多くのプラスチックを含めて様々な材料を破壊するかまたは悪影響を与えるという固有の傾向を有する。水の汚染を防止し、水処理装置に使用される紫外線に耐えるようにするために、物理的特性及び化学的不活性の点から、流体フローディレクタは一般にステンレス鋼で作られる。残念ながら、ステンレス鋼は比較的高価なので、水処理装置の総原価を著しく増大させる結果となる。一部の用途においては、流体フローディレクタは使い捨てフィルタカートリッジの中に設置される。従って、ステンレス鋼の流体フローディレクタはフィルタカートリッジが交換されるたびに交換される。このことは、ステンレス鋼の使用に係るコストの問題をさらに深刻にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、水質に悪影響を及ぼさずかつ長期間の紫外線への露出に耐える、ステンレス鋼の流体フローディレクタの安価な代替品が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の問題は、紫外線に対して実質的に不透過性の保護コーティングが施されたプラスチック基盤を有する流体フローディレクタ(すなわち、バッフル)を提供する本発明によって克服される。1つの実施形態において、プラスチック基盤はポリエチレンであり、UV不透過性コーティングはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0005】
UV不透過性コーティングはプラスチックにとって破壊的となり得る紫外線からプラスチック基盤を保護する。さらに、コーティングは水との接触に適し、長期間紫外線にさらされても破壊せず、嫌な臭または味を生ぜず、適切な量の外部水圧に耐えることができ、かつ従来の水処理装置の定格寿命期間その他の全ての構造的要件を実質的に満たす。
【0006】
UV不透過性コーティングが施されたプラスチック基盤は、ステンレス鋼の流体フローディレクタの適切な代替品であり、ずっと安価である。従って、UV不透過性コーティングが施されたプラスチック基盤は水処理装置の品質及び性能を低下させることがなくコスト効率のよい解決法となる。
【0007】
本発明の以上の及びその他の目的、利点及び特徴は、現在の実施形態の詳細な説明及び図面を参照することによって容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】UV不透過性コーティングが施されたプラスチック基盤で作られる流体フローディレクタを採用する水処理装置の1つの実施形態の断面図である。
【図2】図1に示される水処理装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示される水処理装置のフィルタカートリッジの分解斜視図である。
【図4】図3に示されるフィルタカートリッジの前面図である。
【図5】図4の線A−Aに沿って見たフィルタカートリッジの断面図である。
【図6】図4の線B−Bに沿って見たフィルタカートリッジの断面図である。
【図7】図5のエリアCの拡大断面図であり、開放端キャップ境界面を示す。
【図8】図5のエリアDの拡大断面図であり、閉鎖端キャップ境界面を示す。
【図9】図3に示されるフィルタカートリッジの流体フローディレクタの前面図である。
【図10】図9に示される流体フローディレクタの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態による水処理装置が図1において全体として100で示される。この実施形態において、水処理装置は、一般にベースユニット102及びフィルタカートリッジ104を含む。本発明の実施形態によるフィルタカートリッジ104は図3に示される。この実施形態のフィルタカートリッジ104は、特に紫外線(UV)組立品302及びUV不透過性コーティング902が施されたプラスチック流体フローディレクタ900(全体として304で示される)を含む。この実施形態のUV不透過性コーティング902は未発泡ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作られ、プラスチック900が紫外線によって傷つくことから保護する。本発明は特定の水処理装置に関して説明される。しかし、本発明は、一般的に言って基本的にどのような水処理装置に使用するのにも非常に適する。
【0010】
ステンレス鋼の流体フローディレクタを含む水処理装置は既知である。ステンレス鋼の流体フローディレクタを、UV不透過性コーティングが施されたプラスチックの流体フローディレクタと交換しても水処理装置の作用を実質的に変化させない。従って、水処理装置については詳細に説明しない。水処理装置の作動については詳細には説明しないが、2002年9月17日にKuennen他に発行された米国特許第6,451,202号(US−6,451,202)(参照により本出願に組み込まれる)において水処理装置の作動及び構造がより詳細に説明される。
【0011】
上述のように、水処理装置100はベースユニット102及びフィルタカートリッジ104を含む。ベースユニット102の構成要素には、図2から分かるように上部遮壁200、パワーアダプタ202、電子モジュール204、カラー206、フィルタブラケット208、管類212及び下部遮壁214が含まれる。上部遮壁200及び下部遮壁214は協働して、水処理装置の内部機能を収容する。パワーアダプタ202はパワーアウトレット(図示せず)と電子モジュール204とを接続して水処理装置へ動力を供給する。電子モジュール204は水処理装置の作動を可能にする電子機器を含む。カラー206及びフィルタブラケット208は作動時に取外し可能なフィルタカートリッジ104を所定の位置に着座させておくために役立つ。さらに、フィルタブラケット208及び管類212は水処理装置を出入りする水の流れを導く。
【0012】
図3から分かるように、フィルタカートリッジ104の構成要素は、開放端キャップ300、紫外線組立品302、UV不透過性コーティング304が施されたプラスチック基盤で作られる流体フローディレクタ304、カーボンフィルタ306及び閉鎖端キャップ308、及び任意に補助フィルタ310を含む。組立済みフィルタカートリッジ全体が図4〜6に示される。紫外線組立品302、流体フローディレクタ304及びフィルタ306は、図7から分かるように開放端キャップ300と同軸で嵌り合って、紫外線組立品302を流体フローディレクタ304から分離するほぼ円筒形リング状の空間及び流体フローディレクタ304をフィルタ306から分離するほぼ円筒形リング状の空間を形成する。流体フローディレクタ304及びフィルタ306は、また、図8から分かるように閉鎖端キャップ308とも同軸で嵌り合うので、水がフィルタ306を流れるとき、水の流れは閉鎖端キャップ308へ向けられる。現在の実施形態において、流体フローディレクタは所定の位置で閉鎖端キャップ308に接着される。任意の補助フィルタ310はフィルタ306の周りを包む。プラスチック繊維など不織材料で補助フィルタを製造することができる。補助フィルタ310に適した材料の1つはポリプロピレンである。
【0013】
現在の実施形態の水処理装置を流れる水の流れが図1に矢印106で示される。水は管類212を介してタンクへ供給され、タンクにおいてカーボンフィルタ306を通過して前進する。カーボンフィルタ306を通過した後、水は流体フローディレクタ304によって閉鎖端キャップ308へ向かうよう導かれる。閉鎖端キャップ308に達すると、水は、殺菌のために紫外線組立品302と流体フローディレクタ304との間の空間へ入ることができる。殺菌後、水は管類212を介して水処理装置の外へ出される。
【0014】
UV不透過性コーティングが施されたプラスチック基盤から作られる流体フローディレクタ304の形状、サイズ、組成及びその他の特徴は、用途によって変わり得る。上述の実施形態においては、プラスチック基盤は超高分子ポリエチレンであり、UV不透過性コーティングは未発泡ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。現在の実施形態において、UV不透過性コーティングが施されたプラスチック基盤は、閉鎖端キャップ308及び開放端キャップ300と嵌り合うために開放端チューブの形状及びサイズを持つ。現在の実施形態のPTFE材料は、500 Bohannon Road, Fairburn, GA30213のPorex Corporation社から部品番号PM3VRとして入手可能なMupor(商標)マイクロポーラスPTFEである。PTFE材料の厚みは透過性に、従って紫外線からの保護の程度に直接影響すると考えられる。現在の実施形態において、PTFEコーディングの厚みは0.2mm(8.5mil)である。分光光度試験の結果は、この厚みのPTFEは現在の実施形態のUV波長254ナノメートルに対して十分に不透過性であることを示している。すでに積層化され、チューブに形成され、溶接され、所望の長さに切断されたポリエチレン及びPTFEを、同様にPorex Corporation社から部品番号41192号として入手することができる。
【0015】
プラスチック基盤及びUV不透過性コーティングの形状、サイズ、組成及びその他の特徴は単なる例示であり、限定的なものであることを意図しない。例えば、用途によっては、プラスチック基盤を高密度または低密度ポリエチレンまたは他の同様の共重合体材料から製造することができる。UV不透過性がもっと大きいコーティングが施される場合には、紫外線による損傷に対する耐性がもっと小さい基盤を使用することが可能だろう。また、特定のUV波長に応じて不透過性を制御するようにPTFEコーティングの厚みまたは層の数を選択することができる。本出願において使用される場合、「不透過性」という技術用語は絶対的な「不透過性」を意味するものではなく、流体フローディレクタの耐用寿命期間に基盤を望ましくない量の腐食から保護するのに十分な程度の不透過性を意味する。
【0016】
図示される実施形態において、UV不透過性コーティング902は基盤900の1つの表面に施される。希望する場合には、UV不透過性コーティング902を複数の面に施すことができる。例えば、基盤900の複数の面が紫外線を受ける場合には、紫外線を受ける表面の各々にUV不透過性コーティングを施すことができる。UV不透過性コーティングの特性は、例えばUV露出の深刻さによって決定されるので、表面(領域)によって変わる可能性がある。
【0017】
本発明は図示される水処理装置に関連して説明されているが、基本的に紫外線の存在するところに流体フローディレクタまたはバッフルを配置することが望ましいどのような水処理装置においても本発明を実施できることを理解すべきである。本発明の思想及び広義の形態から逸脱することなく様々な改変及び変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースユニットと、
前記ベースユニットによって支持されるフィルタと、
前記ベースユニットによって支持される紫外線組立品と、
前記フィルタと前記紫外線組立品との間に配置される流体フローディレクタであって、該流体フローディレクタがプラスチックの基盤層及び紫外線に対して実質的に不透過性の保護層を含み、前記基盤層が紫外線と対面する表面を有し、前記保護層が前記紫外線と対面する表面の少なくとも一部に配置される、流体フローディレクタと、
を備える、水処理装置。
【請求項2】
前記ベースユニットが、
協働して前記水処理装置用のハウジングとなる上部遮壁及び下部遮壁と、
前記水処理装置を作動するための、前記ハウジング内部に配置される電子モジュールと、
該電子モジュールへ動力を供給するためのパワーアダプタと、
前記ハウジング内に前記フィルタを着座させるためのフィルタブラケット及びカラーと、
前記水処理装置を出入りする水の流れを導く管類と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記フィルタブラケットも前記水処理装置における水の流れを導くことを特徴とする、請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
さらに取外し可能なフィルタカートリッジを含む、請求項2に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記フィルタカートリッジが開放端キャップ及び閉鎖端キャップを含み、かつ前記フィルタが前記開放端キャップ及び前記閉鎖端キャップと同軸で嵌り合って、前記紫外線組立品と前記流体フローディレクタとの間にほぼ円筒形リング状の空間及び前記流体フローディレクタと前記フィルタとの間にほぼ円筒形リング状の空間を形成することを特徴とする、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記フィルタカートリッジがさらに不織材料から作られる補助フィルタを含み、該補助フィルタが前記フィルタの周りを包むことを特徴とする、請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
水が前記管類から前記フィルタを通過して流れ、前記流体フローディレクタによって前記閉鎖端キャップへ向かって導かれ、前記水が前記管類を介して前記水処理装置から出される前に殺菌のために前記紫外線組立品と前記流体フローディレクタとの間の前記空間へ流れ込むことを特徴とする、請求項5に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記管類が取水チューブ及び排水チューブを含むことを特徴とする、請求項2に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記プラスチックの基盤層が超高分子ポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記保護層が未発泡ポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項11】
前記プラスチックの基盤層が高密度または低密度ポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項12】
前記保護層が約0.2mm(8.5mil)の厚みであることを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項13】
前記フィルタカートリッジが前記流体フローディレクタを含むことを特徴とする、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項14】
プラスチック基盤と、
紫外線に対して実質的に不透過性の保護コーティングと、
を備える、水処理装置に使用するための流体フローディレクタ。
【請求項15】
前記プラスチック基盤が超高分子ポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項14に記載の流体フローディレクタ。
【請求項16】
前記保護コーティングが未発泡ポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする、請求項14に記載の流体フローディレクタ。
【請求項17】
前記プラスチック基盤が高密度または低密度ポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項14に記載の流体フローディレクタ。
【請求項18】
前記保護コーティングが約0.2mm(8.5mil)の厚みであることを特徴とする、請求項14に記載の流体フローディレクタ。
【請求項19】
水処理装置を製造するための方法であって、
第一及び第二の水処理組立品を供給するステップであって、前記第二の水処理組立品が紫外線水処理組立品である、ステップと、
前記第一の水処理組立品と第二の水処理組立品との間に流体流路を与えるステップと、
基盤層と保護層を持つ流体フローディレクタを供給するステップと、
前記保護層が前記第二の水処理組立品に直面して前記第二の水処理組立品によって発せられる紫外線から前記基盤層を保護するように、前記第一の水処理組立品と前記第二の水処理組立品との間の前記流体流路に前記流体フローディレクタを配置するステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記流体フローディレクタの全記基盤層が超高分子ポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項19に記載の水処理装置を製造するための方法。
【請求項21】
前記流体フローディレクタの前記保護層が未発泡ポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする、請求項19に記載の水処理装置を製造するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−511510(P2010−511510A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539864(P2009−539864)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054957
【国際公開番号】WO2008/068726
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(302070822)アクセス ビジネス グループ インターナショナル リミテッド ライアビリティ カンパニー (122)
【Fターム(参考)】