説明

水処理装置

【課題】オゾン発生装置の発生圧能力に依存することなく、高圧力内で被処理水とオゾンの接触面積を大きくしてオゾンの溶解量を増大させ、汚水処理能力を向上させる。
【解決手段】上部に気体混合液供給口2が設けられ、下部に液体排出口3が設けられた圧力容器1を備え、供給口2の圧力容器1内部に複数のノズル41を有する噴霧装置4から被処理水とオゾンをエジェクター9で混合して噴霧する。噴霧された被処理水は導流板14を流下し、圧力容器1内に一定時間滞留して底部の排出口3から圧力容器1の外部に排出される。高圧に保たれた圧力容器内でも微細液滴の被処理水は圧力に左右されず表面積が大きいため、オゾンが溶解しやすく、難分解質とされるトリクロロエチレン等の有機溶媒も分解されるので、被処理水は浄化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体産業などで洗浄液として使用されるトリクロロエチレンなど分解処理が困難である有機溶媒を含む産業排水を処理するための水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トリクロロエチレン等の難分解性有機物を含む汚水浄化装置としては、浄化槽内に合成樹脂膜を多数垂下させ、この樹脂膜に汚濁物質を除去するバクテリアを付着させ、汚水と接触させて浄化する汚水浄化装置が知られている。ところが、この汚水浄化装置にあっては、処理効率が低いので大量の汚染水を処理するために広大な沈殿池や大型の設備を必要とするので多大な設備投資を要した。
【0003】
特許文献1(特許第3375348号公報)に開示された液体浄化装置は、圧力容器と、この圧力容器に酸素を供給する酸素供給源を備え、圧力容器内に供給した汚染水に酸素供給源から酸素を供給して、汚染水に酸素を接触させて汚染水を浄化して外部に排水するようにしたものである。
【0004】
特許文献2〜特許文献4(特開2007−175627号公報〜特開2007−175629号公報)には、特許文献1に開示された液体浄化装置の処理能力を向上させた浄化装置が提案されている。これらの液体浄化装置は、上部に液体供給口と気体供給口が設けられ、下部に液体排出口が設けられた圧力容器を備え、液体供給口から被処理水が供給され、圧力容器内に気体供給口からオゾン等の気体を供給して気体を被処理水に接触させて浄化すると共に、この浄化した液体を液体排出口から圧力容器の外部に排出する液体浄化装置である。
【特許文献1】特許第3375348号公報
【特許文献2】特開2007−175627号公報
【特許文献3】特開2007−175628号公報
【特許文献4】特開2007−175629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の汚水浄化装置は、酸素を被処理液に溶解させて活性化して汚染物質を分解するものであるが、トリクロロエチレンなどの有機溶媒を分解する能力が十分でなかった。特許文献2〜4の汚水浄化装置は、酸素やオゾンを気体供給口から圧力容器内に供給し、圧力容器内の気体圧力を1kg/cm2〜3kg/cm2にして被処理液に溶解させるものであり、圧力容器内圧力と比例的に関係する汚水浄化装置の処理能力は、オゾンや酸素の気体発生器の能力に依存することになる。特にオゾンについては現存のオゾン発生装置の最高供給圧力が3kg/cm2に制限されていることから、汚水の処理能力に限界があり、トリクロロエチレンなどの有機溶媒の分解処理に対しては十分な能力を有しているとはいえなかった。
また、供給口から供給される被処理水は、容器本体下部に貯留された処理済みの被処理水と混合されるため、液体排水口から排水される処理水の水質が劣化したり、安定しないという問題があった
【0006】
本発明は、圧力容器を使用した汚水処理装置において、気体と汚水の接触面積を大きくし、汚水(被処理水)へのオゾン等の気体の溶解量を増大させて汚水処理装置の処理能力を向上させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上部に被処理水の供給口が、下部に排出口が設けてある圧力容器と、圧力容器の供給口にオゾン発生装置がエジェクターを介して連結してあり、圧力容器内部には噴霧装置が供給口に連結されて設けてある水処理装置である。
エジェクターでオゾンと被処理水を混合し、圧力容器内に気体オゾンを混合した被処理水を噴霧供給することで、圧力容器内の圧力を高圧にし、更に噴霧によってオゾンと被処理水の接触面積を大きくしてオゾンを被処理水に溶解させて有機汚染物を分解するものである。
噴霧された被処理水は噴霧装置の下側に傾斜させてジグザグ状に配列した導流板を流下して圧力容器底部の排出口から順次排出される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被処理水供給口から圧力容器内に高圧で供給され、噴霧装置で霧状に圧力容器内に噴霧された被処理水に、エジェクターで混合されたオゾンが大きな接触面積で接触して被処理水に効率よく溶解され、導流板により圧力容器内を順次流下することで難分解性の汚染物質が短時間に効率よく分解され、被処理水が未処理水と混合せず浄化される。
液体供給口から供給された被処理水は、圧力容器本体下部に貯留された処理済みの被処理水と混合されることなく順次排出口から排水されるので、安定した水質の処理水が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施例の図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の水処理装置は、トリクロロエチレン等の有機溶媒を含む被処理水が貯留される貯留槽5、この貯留槽5から被処理水を水処理装置に送るポンプ6、被処理水を圧力容器に導く管路7、オゾン発生装置8、ポンプ6で送られた被処理水とオゾン発生装置8からのオゾンを混合するエジェクター9、及び圧力容器1からなる処理装置本体で構成される。
【0010】
処理装置本体は、ステンレス製の圧力容器1の上部に供給口2が設けてあり、下部に液体排出口3が設けてある。供給口2には貯留槽5から被処理水を圧力容器1に導く管路7がエジェクター9に流量計を介して連結されている。圧力容器1の内部には、供給口2に複数のノズル41が方向を変えて設けてある噴霧装置4が取り付けてあり、エジェクター9でオゾンと混合された被処理水が噴霧器4から圧力容器1の下側に向かって噴霧される。
【0011】
液滴状態となった被処理水は、圧力容器1の内部において容器内に充満しているオゾンと接触しながら降下し、ジグザグ状に配列してある導流板14上を流下して周縁部に設けてある切欠141から下方の導流板に流下し、一定時間圧力容器1の内部を流下しながら圧力容器内に滞留する。この間にオゾンを十分含んだ被処理水内では汚染物質がオゾンによって分解されて浄化される。浄化された被処理水は液体排出口3から圧力容器1の外部に排出される。
【0012】
試験例1
揮発性有機化合物(VOC)のトリクロロエチレン及び、シス−1,2−ジクロロエチレンを含有する被処理水を本発明の水処理装置を使用して処理試験を実施した。
圧力容器1は、内容積240L、被処理水140L・水温12℃を使用した。オゾン発生装置は30g/h・濃度100ppm(Vol)のものを使用した。濃度測定対象物質はトリクロロエチレン・シス−1,2−ジクロロエチレンの2成分を測定した。
【0013】
ポンプ6により35L/分で被処理水を0.6MPaの圧力でエジェクター9によりオゾン発生装置8からのオゾンガスと混合し、オゾンガスが0.2MPaの圧力に保持された圧力容器1内に噴霧した。圧力容器1内が0.4MPaになるまで内圧を上昇させ、排出口3より処理水を排出することで0.4MPaを保持した。噴霧された被処理水は、導流板14を流下し、圧力容器1内に約3.5分間滞留して下部の排出口3より排出した。本発明の水処理装置による処理後のVOC2成分について残留濃度を測定した。
本発明との比較のため、特許文献2〜4に示す技術についても同様の測定を実施した(圧力容器0.2MPa、エジェクター及び噴霧装置なし)。処理前後のVOCの濃度変化を表1に示す。
表1にあるように、本発明ではトリクロロエチレンは95%除去され、シス−1,2−ジクロロエチレンは100%の除去率であり、本発明の水処理装置が既存の水処理技術に比べて効率的にVOCを分解することが示された。
従来技術ではオゾン供給圧が0.3MPaであるため、圧力容器内圧は0.3MPaが限界であるが、本発明の水処理装置はこれに比べて2倍以上の圧力をかけることが可能であることから、ヘンリーの法則により、オゾンガスを2倍以上溶解させることができ、結果として効率が劇的に向上する。
【0014】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の水処理装置の概略構成図。
【図2】水処理装置の詳細図。
【図3】導流板の平面図。
【符号の説明】
【0016】
1 圧力容器
14 導流板
2 供給口
3 排出口
4 噴霧装置
41 ノズル
5 貯留槽
6 ポンプ
7 管路
8 オゾン発生装置
9 エジェクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に被処理水の供給口、下部に排出口が設けてある圧力容器と、前記圧力容器の供給口にエジェクターを介して連結してあるオゾン発生装置と、前記圧力容器内部の供給口に連結して設けてある噴霧装置とを有する水処理装置。
【請求項2】
請求項1において噴霧装置の下側に、導流板がジグザグに設けてあり、導流板の下端部周縁に開口が設けてある水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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