説明

水処理装置

【課題】 装置運転上の種々の問題を生じることなしに、水槽内の水を簡単かつ効率的に滅菌処理することのできる新規な水処理装置を提供する。
【解決手段】 処理水路の、電解槽より上流側に配設された、処理水路を開閉するための弁等と、処理水路に配設された、循環水路から処理水路に導入される水の水流の異常を検出するための水流異常検出手段と、この水流異常検出手段によって水流異常が検出された際に、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じることで、循環水路からの水の導入を停止するための導水制御手段と、を備える
【効果】 処理水路の水流に、定常時とは異なる大幅な変動が発生すると、この変動を水流異常検出手段によって検出して、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じることで、循環水路からの水の導入を停止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水泳プール、公衆浴場の浴槽といった大型の水槽から、ビルの屋上などに設置される給水槽、一般家庭用の浴槽といった小型の水槽まで、種々の水槽に溜めた水を滅菌処理することができる水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば屋内外に設置された水泳プールや公衆浴場の浴槽などの大型の水槽は、その水質を維持するために定期的に、カルキ(サラシ粉、高度サラシ粉)や次亜塩素酸ソーダ(NaClO)などを投入して滅菌処理をする必要がある。
【0003】
しかし従来は、この作業を、施設の従業者などが営業時間外(早朝や深夜など)に手作業で行う必要があり、しかもカルキや次亜塩素酸ソーダは刺激性を有するため十分に注意しながら作業を行わなければならないという問題がある。
【0004】
また、カルキは通常、粉末状やそれを固めたタブレット状であるため、水槽に投入後、溶解して濃度が均一になるまでに長時間を要し、その間、水槽を使用できないという問題もある。
【0005】
また、ビルの屋上などに配置される給水槽や、あるいは一般家庭用の浴槽などの、小型の水槽の場合は、水道水中に含まれる塩素の滅菌力のみに頼っているのが現状であり、特に給水槽の場合には、内部に藻が繁殖するなどして水質が悪化することがある。
【0006】
また、一般家庭用の浴槽の場合は通常、ほぼ1〜2日ごとに水を入れ替えるため水質の点で問題はないように思われがちであるが、浴槽に接続されたボイラー内は頻繁に清掃できないために雑菌やかびなどが繁殖しやすく、やはり水質の悪化が懸念される。
【0007】
そこで近時、塩素イオンを含む水を、電解槽内で、白金−イリジウム電極などを使用して電解処理することで、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO)、塩素(Cl)などを含む、滅菌作用を有する状態として、上記水槽に供給して滅菌処理する装置が開発された(例えば特許文献1等参照)。
【0008】
すなわち上記装置においては、例えば水道水などのあらかじめ塩素イオンを含む水や、あるいは必要に応じて塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl)、塩酸(HCl)などを加えた水などに、陰陽少なくとも2枚の電極によって直流電圧を印加する。そうすると水は、下記の電気化学反応によって、上述した各種の塩素イオン含む、滅菌作用を有する状態となる。そこでこの状態の水を水槽に供給すると、水槽内の水が滅菌される。
【0009】
(陽極側)
4HO−4e→4H+O↑+2H
2Cl→Cl+2e
O+Cl2⇔HClO+H+Cl
(陰極側)
4HO+4e→2H↑+4OH
(陽極側+陰極側)
+OH→H
【特許文献1】特開2001−170638号公報(第0025欄、第0027欄〜第0028欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記水処理装置においては、電解槽への水の供給過剰による、滅菌作用の指標となる残留塩素濃度の低下や、逆に水の供給不足による異常過熱等を生じないように、電解槽内の水位を一定の範囲に維持する必要がある。そのために通常は、電解槽に水を供給する配管に設けた電磁弁を、電解槽内に設けた水位センサによる水位の検出値などに応じて開閉して、水の供給を断続的に行うようにしている。
【0011】
しかし電磁弁が開閉されると、その都度、配管には、当該配管内の水圧が急激に変動することによって、ウォーターハンマーと呼ばれる衝撃が発生する。そしてこの衝撃によって配管が振動して、大きな音をたてるという問題がある。また電磁弁の開閉は頻繁に繰り返されるため、それによって発生する振動によって、配管が破損したり装置の電気部品などが故障したりしやすいという問題もある。
【0012】
また上記装置を、水泳プールや公衆浴場の浴槽などの大型の水槽に組み込む場合は、これらの水槽にあらかじめ設置されている、水槽内の水を取り込んで、水に混入した砂や汚れなどを除去したのち水槽に還流させる循環水路に、当該循環水路から水を導入し、電解槽で電解処理したのち循環水路に還流させるための処理水路を接続することが行われる。
【0013】
しかしこの構成では、
・ 循環水路内に水を循環させるための主循環ポンプの故障時や、
・ 循環水路を流れる水の、単位時間あたりの流量を調整するために、主循環ポンプの吐出量を切り換える際、あるいは
・ 砂ろ過のための装置の目詰まりを防止すべく、定期的に水流を逆流させる際、などに、当該循環水路に接続された処理水路の水流に、定常時とは異なる大幅な変動が発生する。これは、処理水路の流量よりも、循環水路の流量の方が圧倒的に大きいためである。
【0014】
そしてこの変動によって、処理水路に配設された水循環のためのポンプがエアー噛みを生じたり、装置の安全機能が働いて異常停止したりすることにより、水処理装置が運転不能に陥るおそれがある。
【0015】
また水処理装置には、例えば電解槽の周辺の故障時やメンテナンス時などに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液などの、水を滅菌する作用を有する滅菌液を水槽に注入するための、補助的な手段を設けることも行われる。
【0016】
しかし上記の手段は、装置の通常の運転時には全く運転されないなど、機構的に無駄が多いため、これを設けた場合には装置の設置面積が余分に必要となったり、コストアップにつながったりするという問題がある。また上記の手段は、平常時にはほとんど運転されないため、いざ動かそうとすると故障していて動かせないといった問題を生じるおそれもある。
【0017】
また装置には、前記の電解反応を促進するために、食塩等の促進剤を供給する促進剤槽を設けることも行われる。
【0018】
促進剤槽は、上記食塩等の、水溶性でかつ固形の促進剤の、所定温度での飽和濃度が一定であることを利用したものである。すなわち促進剤槽に充てんした促進剤に一定量の水を供給して、所定量の促進剤を溶解させることで、飽和濃度か、またはできるだけ飽和濃度に近い、一定濃度の促進剤溶液を生成させたのち、これを電解槽へ供給するためのものである。
【0019】
しかし促進剤槽内で生成した溶液の濃度は、実際には、水の供給口の付近が最も薄く、この供給口から最も離れた、促進剤槽の底部付近で飽和濃度に近づいて最も濃くなるという濃度分布を示す。
【0020】
このため、電解処理水の残留塩素濃度を一定に保つべく、上記のように飽和濃度か、もしくはできるだけ飽和濃度に近い、濃度が一定の促進剤溶液を電解槽に供給しようとすると、促進剤溶液を電解槽へ供給するための配管の、促進剤溶液の吸い込み口を、促進剤槽内の、できるだけ底の方に配設しなければならないが、その場合には、溶け残った固形の促進剤を一緒に吸い込んで、送出用のポンプが詰まるといった問題を生じる。
【0021】
また水処理装置は、水泳プールや浴槽の水質を維持するために、その営業時間中は継続して運転しつづける必要があり、もしも故障した際には、直ちに、手作業による薬液の投入に切り換えなければならないことから、故障を知らせる警報手段と、装置を構成する各部の異常を検出して警報手段を自動的に動作させる警報制御手段とを組み込むことが行われる。
【0022】
水処理装置の異常の中でも重要なものに、漏電の発生による漏電ブレーカーの作動と、それによる装置の緊急停止があげられる。警報制御手段は、通常、この漏電ブレーカーの作動を、装置内の主回路の電圧遮断によって検出するように設定される。
【0023】
しかし装置内の主回路の電圧遮断は、運転停止のために運転スイッチを切ったときにも起こるため、警報手段が誤動作するという問題がある。
【0024】
この発明の目的は、以上で説明した装置運転上の種々の問題を生じることなしに、水槽内の水を簡単かつ効率的に滅菌処理することのできる新規な水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に係る発明は、水を電解処理して滅菌作用を付与するための電解槽を有し、プール等の水槽に、電解槽で電解処理した水を供給して滅菌するための水処理装置であって、水槽に設けた、水を循環させるための循環水路に接続され、当該循環水路から水を導入し、電解槽で電解処理したのち循環水路に還流させるための処理水路と、処理水路の、電解槽より上流側に配設された、水を、処理水路を通して電解槽に流入させるための流入ポンプと、処理水路の、電解槽より上流側に配設された、処理水路を開閉するための弁等と、処理水路に配設された、循環水路から処理水路に導入される水の水流の異常を検出するための水流異常検出手段と、この水流異常検出手段によって水流異常が検出された際に、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じることで、循環水路からの水の導入を停止するための導水制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、水流異常検出手段が、
(1) 処理水路の、弁等より上流側に配設され、循環水路から処理水路に導入される水の水圧の変動を検出するための水圧検出手段、
(2) 処理水路の、電解槽より上流側に配設され、流入ポンプによって処理水路を流れて電解槽に流入される水の流量の変動を検出するための流量検出手段、
(3) 電解槽に配設され、電解槽内の水の、水位の変動を検出するための水位検出手段、および
(4) 流入ポンプの動作電流の変動を検出するための電流検出手段のうちの少なくとも1つであることを特徴とする。
【0027】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の発明において、導水制御手段は、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じた状態で、水圧検出手段によって検出した水圧値が変動前の範囲に戻った時点で、弁等を開くとともに流入ポンプの動作を再開することを特徴とする。
【0028】
請求項4に係る発明は、請求項1記載の発明において、導水制御手段は、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じている間、電解槽での水の電解処理を停止することを特徴とする。
【0029】
請求項5に係る発明は、水を電解処理して滅菌作用を付与するための電解槽を有し、プール等の水槽に、電解槽で電解処理した水を供給して滅菌するための水処理装置であって、電解槽で電解処理した水を水槽に注入するための注入ポンプを備えた第1の注入水路と、水を滅菌する作用を有する滅菌液を蓄える滅菌液槽と、この滅菌液槽に蓄えた滅菌液を、同じ注入ポンプによって水槽に注入すべく、滅菌液槽から、第1の注入水路の、注入ポンプの上流側に合流、接続された第2の注入水路と、第1および第2の注入水路の、両者の合流点よりそれぞれ上流側に配設された弁等と、この弁等を切り換えることで、注入ポンプによって、電解槽で電解処理した水を水槽に注入するか、滅菌液槽に蓄えた滅菌液を水槽に注入するかを切り換えるための切り換え制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0030】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の発明において、切り換え制御手段は、弁等を切り換えた際に、水槽に注入される滅菌成分の、単位時間あたりの濃度が同等となるように、注入ポンプによる、単位時間あたりの注水量を切り換えることを特徴とする。
【0031】
請求項7に係る発明は、請求項5記載の発明において、切り換え制御手段は、弁等を切り換えて、滅菌液槽に蓄えた滅菌液を水槽に注入する状態としたときに電解槽側の動作を防止するためのインターロック機能を有することを特徴とする。
【0032】
請求項8に係る発明は、水を電解処理して滅菌作用を付与するための電解槽を有し、プール等の水槽に、電解槽で電解処理した水を供給して滅菌するための水処理装置であって、電解槽での電解処理を促進するための、水溶性でかつ固形の促進剤を蓄える促進剤槽と、この促進剤槽に一定量の水を供給して所定量の促進剤を溶解することで促進剤溶液を生成させたのち、生成した促進剤溶液を、送出ポンプによって電解槽に供給するための供給水路とを備えているとともに、上記促進剤槽内に、当該促進剤槽の底部近傍から、生成した促進剤溶液は通すが固形の促進剤を通さないフィルターを通して、選択的に促進剤溶液を取り込む溶液抽出室を設け、この溶液抽出室内に、供給水路のうち促進剤槽より下流側の、促進剤溶液の吸い込み口を配設したことを特徴とする。
【0033】
請求項9に係る発明は、プール等の水槽に、電解槽で電解処理した水などの、滅菌作用を有する液体を供給するための水処理装置であって、装置に異常が発生したことを知らせる警報手段と、装置の異常を検出して警報手段を動作させる警報制御手段と、水処理装置の稼動時にのみ警報手段を動作可能とする動作制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
請求項1の構成では、前述したように循環水路での様々な問題が原因となって、処理水路の水流に、定常時とは異なる大幅な変動が発生すると、この変動を水流異常検出手段によって検出して、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じることで、循環水路からの水の導入を停止することができる。
【0035】
よって処理水路に配設された水循環のためのポンプがエアー噛みしたり、装置の安全機能が働いて異常停止したりするのを防止して、水処理装置が運転不能に陥らないように維持することが可能となる。
【0036】
水流異常検出手段としては、請求項2に記載のように、
(1) 処理水路の、弁等より上流側に配設され、循環水路から処理水路に導入される水の水圧の変動を検出するための水圧検出手段、
(2) 処理水路の、電解槽より上流側に配設され、流入ポンプによって処理水路を流れて電解槽に流入される水の流量の変動を検出するための流量検出手段、
(3) 電解槽に配設され、電解槽内の水の、水位の変動を検出するための水位検出手段、および
(4) 流入ポンプの動作電流の変動を検出するための電流検出手段、のうちの少なくとも1つがあげられる。すなわち請求項6記載の発明は、水流異常検出手段が、上記(1)〜(4)の4種の手段のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の水処理装置である。
【0037】
特に、上記4種の手段のうちの2種以上を併用するのが、水流異常の検出の精度を向上できるため好ましい。
【0038】
水流異常が検出されて停止した装置の運転を再開するためには、水流異常が解消されたことを検出する必要がある。そのためには、上記4種の手段のうち(1)の水圧検出手段によって検出した水圧値を基準とするのが好ましい。他の3種の手段は、装置が停止しているため水流異常を検出することができないのに対し、(1)の水圧検出手段によれば、処理水路の、弁等より上流側における、循環水路から処理水路に導入される水の水圧の変動を正確に検出して、水流異常が解消されたか否かを判断することができる。
【0039】
したがって請求項3記載の発明は、導水制御手段は、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じた状態で、水圧検出手段によって検出した水圧値が変動前の範囲に戻った時点で、弁等を開くとともに流入ポンプの動作を再開することを特徴とする請求項2記載の水処理装置である。
【0040】
また水流異常を検出して装置が停止している間は、安全性等を考慮して、電解処理を停止するのが好ましい。したがって請求項4記載の発明は、導水制御手段は、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じている間、電解槽での水の電解処理を停止することができる。
【0041】
請求項5の構成によれば、滅菌液槽に蓄えた滅菌液を水槽に注入する注入ポンプおよび配管を、電解槽で電解処理した水を水槽に注入する注入ポンプおよび配管によって併用できるため、機構的な無駄を少なくして、装置の設置面積の増分を抑制したり、コストアップを抑えたりすることができる。
【0042】
また上記注入ポンプは、平常時から常に運転されているため、故障の有無の判断が容易である。例えば電解槽の周辺の故障が注入ポンプ以外の部分である場合には、注入ポンプをそのまま滅菌液の注入に使用して、装置の運転を続けることができる。また、注入ポンプが故障した場合には、直ちに装置の運転を停止して、手作業による薬液の投入に切り換えればよい。
【0043】
なお、電解槽で電解処理した水と滅菌液とでは、滅菌成分としての残留塩素の濃度が異なる。通常は、電解槽で電解処理した水の残留塩素濃度が、滅菌液の残留塩素濃度の1/10〜1/30程度である。
【0044】
それゆえ電解槽の周辺で故障が発生したり、装置のメンテナンスを行ったりするために、滅菌液の注入に切り換えて装置の運転を続ける場合や、あるいは故障の修理やメンテナンスが完了して、再び電解処理に戻して装置の運転を続ける場合には、水槽に注入される滅菌成分の、単位時間あたりの濃度が同等となるように揃えることが必要となる。
【0045】
この調整を手動で行うこともできるが、弁等を切り換えた際に、注入ポンプによる、単位時間あたりの注水量を自動的に切り換えるようにすると、調整のし忘れ等をなくして、水槽に注入される滅菌成分の、単位時間あたりの濃度を常に一定に保つことが可能となる。
【0046】
したがって請求項6記載の発明は、切り換え制御手段は、弁等を切り換えた際に、水槽に注入される滅菌成分の、単位時間あたりの濃度が同等となるように、注入ポンプによる、単位時間あたりの注水量を切り換えることを特徴とする請求項5記載の水処理装置である。
【0047】
また上記の構成では、例えば操作ミスなどにより、電解槽と滅菌液槽の両方が運転されるなどの混乱を防止すべく、滅菌液槽側の運転中に電解槽側が動作しないように、インターロック機能を設けておくのが好ましい。
【0048】
したがって請求項7記載の発明は、切り換え制御手段は、弁等を切り換えて、滅菌液槽に蓄えた滅菌液を水槽に注入する状態としたときに電解槽側の動作を防止するためのインターロック機能を有することを特徴とする請求項5記載の水処理装置である。
【0049】
請求項8の構成によれば、促進剤槽に水を供給することで生成した、当該促進剤槽の底部近傍の、飽和濃度か、もしくはそれに近い一定濃度の促進剤溶液を、固形の促進剤と分離して選択的に、溶液抽出室内に集めることができる。したがって送出ポンプが固形の促進剤で詰まったりするのを防止しつつ、一定濃度の促進剤溶液を、供給水路を通して電解槽に供給することが可能となる。
【0050】
請求項9の構成によれば、運転停止のために運転スイッチを切ったときに警報手段が誤動作するのを防止しつつ、漏電ブレーカーの作動による装置の緊急停止などを、より確実に警報することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下に、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
【0052】
図1は、この発明の一実施形態にかかる水処理装置1を、水泳プールや浴場の浴槽などの、大型の水槽2に組み込んだ構造を簡略化して示す図である。
【0053】
図に見るように水槽2には、砂ろ過装置21を組み込んだ、循環ポンプ22によって多量の水Wを常時、循環させるための主循環水路20を設置している。そして水処理装置1の処理水路10を、上記主循環水路20の、砂ろ過装置21より下流側の分岐点J1から分岐して、電解槽11を経たのち、上記分岐点J1より下流側の合流点J2で、再び上記主循環水路20に合流するように接続している。
【0054】
処理水路10の、分岐点J1から電解槽11に至る途上には順に、開閉弁V1、流量調整のための調整弁V2、調整弁V2による流量調整の際に使用する流量計S1、水をろ過して有機物などを除去するためのフィルター12、および電磁弁V3を配設している。
【0055】
また、上記のうちフィルター12と電磁弁V3との間の位置には、分岐点J3で分岐して、電磁弁V4と、減圧のための減圧弁V5と、流量調整のための調整弁V6とを介して、水中の残留塩素濃度を測定するための残留塩素センサS2に接続したのち、電解槽11に至る分岐水路10aを接続している。
【0056】
残留塩素センサS2は、その構造上、測定時に、処理水路10を流れる水量よりも少ない、ごく少量の水を常時、流しつづける必要があるため、上記のような配置とされる。
【0057】
処理水路10の、電解槽11から合流点J2に至る途上には順に、電解槽11内から水Wを送出することで、当該水Wを処理水路10内で循環させるための循環ポンプP1、逆流防止のための逆止弁V7、次の、調整弁V8による流量調整の際に使用する流量計S3、流量調整のための調整弁V8、および開閉弁V9を配設しており、また逆止弁V7と流量計S3との間には水圧測定のための圧力計S4を接続している。
【0058】
上記処理水路10の、流量計S1とフィルター12との間の位置には、分岐点J4で分岐し、調整弁V10を経由して、逆止弁V7と圧力計S4との間の合流点J5で再び処理水路10と合流するバイパス水路10bを接続している。
【0059】
バイパス水路10bは、前述したようにウォーターハンマーの衝撃を和らげるべく、装置1の運転時に、処理水路10を流れる水の少なくとも一部を常時、電解槽11の下流側に流し続けるためのものである。また調整弁V10は、これも前述したように、上記バイパス水路10bを流れる水の流量を調整するためのものである。
【0060】
また図の、一点鎖線で囲った領域の外に記載したように、調整弁V10に代えて圧力逃がし弁V10aを用いても、同様の効果が得られる。
【0061】
すなわち圧力逃がし弁V10aが開かれる設定圧力を、電磁弁V3を開いた通常運転時にバイパス水路10bに加わる水圧よりも高く、かつ電磁弁V3を閉じた際にバイパス水路10bに加わる水圧よりも低く調整する。
【0062】
そうすると、電磁弁V3を閉じて、バイパス水路10bに加わる水圧が上記設定値以上になった時点で圧力逃がし弁V10aが開かれて、水が、バイパス水路10bを通して還流されるため、水圧の急激な上昇によるウォーターハンマーの衝撃を和らげることができる。
【0063】
また電磁弁V3を開いて、バイパス水路10bに加わる水圧が上記設定値以下になった時点で圧力逃がし弁V10aが閉じられるため、水圧の急激な低下によるウォーターハンマーの衝撃を和らげることもできる。
【0064】
また、電磁弁V3を開いた通常運転時には、バイパス水路10bに水が流入しないように圧力逃がし弁V10aが閉じられているため、処理水路10を通る水の全量を、無駄なく効率よく、電解槽11に供給することができる。
【0065】
このため、電解槽11に水を供給する時間を短縮したり、装置運転時の消費電力を低減したりすることができる。
【0066】
処理水路10の、上記合流点J5と圧力計S4との間には、水を滅菌する作用を有する滅菌液としての次亜塩素酸ソーダの水溶液Lを、滅菌液槽13から、定量ポンプP2を介して、合流点J6で処理水路10に供給するための分岐水路10cを接続している。
【0067】
電解槽11内には、上流側から順に、当該電解槽11内の水位を検出するためのフロートスイッチS5、水Wを電解反応するための、陰陽少なくとも2枚の電極11a、および電解によって水中に発生した微細気泡を除去するための、2枚のフィルター11b、11bを配設している。また電解槽11の天板側には、ブロワBMを備えた排気管14を接続している。
【0068】
上記のうちフィルター11bは、水Wは通過させるが微細気泡は通過させずに貯留する機能を有しており、この機能によってフィルター11bの上流側に貯留された微細気泡は、それまで径が小さすぎて水と分離できなかったものが、貯留によってその多数個が結合して大径化することで浮力を生じて水W中から水面に上昇する。そして、水面上の気相側に移動して水Wから分離、除去される。
【0069】
このため、電解処理後の水を再び水槽2に還流する際に、上記微細気泡に起因して、水槽2内の水が白濁化するのを防止でき、常に澄んだ、見た目もきれいな水を供給することが可能となる。
【0070】
フィルター11bによって水Wから分離されたガスは、ブロワBMの排気力によって、排気管14を通して装置外へ排出される。
【0071】
電解槽11の下側には、漏れた水の受け皿15を配設しており、万が一、電解槽11で水漏れが発生したとしても、漏れた水による短絡や漏電などのおそれを、最小限に抑えることができる。
【0072】
符号10dは、受け皿15で受けた水を、流量調整のための調整弁V11を介してドレン口Dへ送るための排水路である。
【0073】
また符号10eは、処理水路10の、電解槽11と循環ポンプP1との間の分岐点J7から分岐し、流量調整のための調整弁V12を介して、合流点J8で上記排水路10dに接続された排水路である。この排水路10eは、装置のメンテナンス時などに、電解槽11から水を抜く際などに使用する。
【0074】
電極11aとしては、例えばチタニウム(Ti)製の基板の表面全面に金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、白金−パラジウム(Pt−Pd)、白金−イリジウム(Pt−Ir)などの貴金属の薄膜を、めっき法や焼成処理によってコーティングしたものなどを使用する。
【0075】
また微細気泡除去用のフィルター11bや、有機物等を除去するフィルター12としては、いずれも天然あるいは化学繊維製の不織布などが使用できる。
【0076】
ただしフィルター11bとしては、当該フィルター11bを、電極11aによる電解反応の直後に配設して使用するため、電解反応によって発生する含塩素化合物や活性酸素等に対して十分な耐性を有するポリプロピレン繊維などで形成し、しかも微細気泡を容易に透過させないために目の細かい不織布状としたものが好ましい。
【0077】
通孔のサイズは、平均径が1〜100μm程度であるのが好ましく、10〜50μm程度であるのがさらに好ましい。この範囲未満では、水流に対するフィルター11bの抵抗が大きくなりすぎて、水を電解処理する効率が低下するおそれがあり、逆にこの範囲を超える場合には、微細気泡を透過させずに貯留する効果が不十分となるために、微細気泡除去の効率が低下するおそれがある。
【0078】
一方、有機物等を除去するフィルター12としては、その耐久性などを考慮すると、やはりポリプロピレン繊維などの繊維で形成し不織布などが好ましい。ただしフィルター12としては、処理水路10を通る水量を低下させないために、先のフィルター11bよりも通孔の平均径が大きい、つまり平均径が100μmを超えるような不織布がさらに好ましい。
【0079】
図2は、図1の水処理装置1の、電気的な構成を示すブロック図である。
【0080】
図に見るように水処理装置1は、電極11aに通電制御しつつ処理水路10等を構成する各部を作動させる制御手段としての制御部30を備えている。
【0081】
残留塩素センサS2、圧力計S4、およびフロートスイッチS5の出力は制御部30へ与えられる。制御部30内には、各種動作のタイミングを規定するためのタイマ31と、例えば水槽2に貯留する水量や基準塩素濃度などの初期値を登録したメモリ32とを設けている。
【0082】
制御部30は、上記各センサS2、S4、およびS5の出力、タイマ31によって規定したタイミング、並びにメモリ32に記録した初期値に基づいて種々の演算を行い、それに基づいて制御信号をドライバ33へ与える。そしてドライバ33は、与えられる信号に基づいて電極11aへの通電出力(通電電流)、通電時間等の通電制御を行い、かつ電磁弁V3、V4の開閉、ブロワBM、ポンプP1、P2の駆動制御を行う。
【0083】
このうちバイパス水路10bと関っているのは、電磁弁V3、V4の開閉である。
【0084】
すなわち制御部30は、装置の運転時に、電解槽11内の水位を一定範囲に維持すべく、フロートスイッチS5による水位の検出結果に基づいて、電磁弁V3を開閉する。具体的には、電解槽11内の水位が所定の上限値に達したことをフロートスイッチS5によって検出すると、制御部30は、電磁弁V3を閉じて、それ以上の水が電解槽11内に流入するのを防止する。そうすると、その間も運転を続けている循環ポンプP1の送出力によって、電解槽11内の水が処理水路10を通して出てゆく結果、水位が徐々に低下する。そして今度は、電解槽11内の水位が所定の下限値に達したことを再びフロートスイッチS5によって検出して、制御部30は、電磁弁V3を開いて電解槽11への水の流入を再開する。
【0085】
制御部30は、装置の運転中、上記の操作を繰り返し行う。
【0086】
また制御部30は、上記の操作とは別に、あらかじめメモリ32に記録した初期値に基づき、定期的に、通常は閉じている電磁弁V4を一定時間だけ開くことで、分岐水路10aを通して、一定量の水を残留塩素センサS2に供給して、そのときの残留塩素濃度を測定する。
【0087】
これらの操作を行う際に、従来は、処理水路10内の水圧の急激な変動によって、ウォーターハンマーの衝撃が発生していた。しかし図1の例では、電磁弁V3、V4を閉じている間も常時、処理水路10を流
れる水の少なくとも一部を、電解槽11を通さずに、バイパス水路10bを通して水槽2に還流させているので、先に説明したようにウォーターハンマーの衝撃を緩和することができる。
【0088】
図3は、水処理装置1の変形例を示す図である。
【0089】
この例の水処理装置1は、処理水路10とバイパス水路10bとの分岐点に電磁駆動式の三方弁V22を設けて、電磁弁V3や調整弁V10、圧力逃がし弁V10aを省略した点が、図1の例と相違している。
【0090】
またこの例の水処理装置1は、分岐水路10aを、処理水路10からではなく、主循環水路20の、循環ポンプ22と砂ろ過装置21との間の分岐点J16から分岐させて、開閉弁V23、減圧弁V5、固形分除去のためのストレーナST、定流量弁V24、電磁弁V4、調整弁V6、および残留塩素センサS2を介して、電解槽11に接続している点も、図1の例と相違している。
【0091】
しかし、それ以外の部分は図1の例と同一であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0092】
処理水路10とバイパス水路10bとの分岐点に設けた電磁駆動式の三方弁V22は、省略した電磁弁V3の働き、すなわち装置の運転時に、電解槽11内の水位を一定範囲に維持すべく、フロートスイッチS5による水位の検出結果に基づいて開閉されて、断続的に、電解槽11に水を供給する働きをする。
【0093】
それとともに三方弁V22は、前述したように水を、電解槽11と、バイパス水路10bのいずれか一方のみを通して水槽2に還流させる働きもする。
【0094】
つまり三方弁V22は、電解槽11内の水位が低下して水を供給する必要が生じた際には、当該電解槽11側に切り換えられて、水を、電解槽11を通して水槽2に還流させ、電解槽11内の水位が上昇して水を供給する必要がなくなった際にはバイパス水路10b側に切り換えられて、水を、バイパス水路10bを通して水槽2に還流させるために機能する。
【0095】
またそれゆえに、三方弁V22を切り換えて、水を、電解槽11を通して水槽2に還流させる状態では、処理水路10を通る水の全量を、無駄なく効率よく、電解槽11に供給できるため、当該電解槽11に水を供給する時間を短縮したり、装置運転時の消費電力を低減したりすることができる。
【0096】
また水は、三方弁V22を切り換える瞬間を除いて、電解槽11またはバイパス水路10bのいずれか一方を経由して常時、流れ続けるため、水圧の急激な上昇や低下を抑制することができ、ウォーターハンマーの衝撃を和らげることもできる。
【0097】
また分岐水路10aを、前記のように主循環水路20に直接に接続しているのは、このようにすると、装置の運転とは関係なしに、残留塩素センサS2に水を流しつづけることができ、装置の故障や停電などが発生した際にも残留塩素センサS2を保護できるためである。
【0098】
次に、図4に示した水処理装置1について説明する。
【0099】
この例の水処理装置1は、先の図1のものと同様に、水泳プールや浴場の浴槽などの、大型の水槽2に組み込んで使用されるものである。
【0100】
図に見るように水槽2には、砂ろ過装置21を組み込んだ、循環ポンプ22によって多量の水Wを常時、循環させるための主循環水路20を設置している。そして水処理装置1の処理水路10を、上記主循環水路20の、砂ろ過装置21より下流側の分岐点J1から分岐して、電解槽11を経たのち、上記分岐点J1より下流側の合流点J2で、再び上記主循環水路20に合流するように接続している。
【0101】
処理水路10の、分岐点J1から電解槽11に至る途上には順に、開閉弁V1、流量調整のための調整弁V2、水流異常検出手段のうち(2)の流量検出手段としての流量計S6、電磁弁V3、および電解槽11に水Wを流入させるための流入ポンプP3を配設している。
【0102】
また、上記のうち調整弁V2と流量計S6との間の位置には、水流異常検出手段のうち(1)の水圧検出手段としての圧力計S7を接続している。
【0103】
さらに流入ポンプP3には、水流異常検出手段のうち(4)の電流検出手段としての電流計S8を接続している。
【0104】
処理水路10の、電解槽11から合流点J2に至る途上には順に、電解槽11内から水Wを送出することで、当該水Wを処理水路10内で循環させるためのための循環ポンプP4、逆流防止のための逆止弁V7、流量調整のための調整弁V8、および開閉弁V9を配設している。
【0105】
電解槽11内には、上流側から順に、水流異常検出手段のうち(3)の水位検出手段としての水位スイッチS9、水Wを電解反応するための、陰陽少なくとも2枚の電極11a、および電解によって水中に発生した微細気泡を除去するための、2枚のフィルター11b、11bを配設している。また電解槽11の天板側には、ブロワBMを備えた排気管14を接続している。
【0106】
電解槽11の下側には漏れた水の受け皿15を配設しており、受け皿15には、受けた水をドレン口Dへ送るための排水路10dを接続している。
【0107】
また処理水路10には、電解槽11と循環ポンプP4との間の分岐点J7から分岐し、流量調整のための調整弁V12を介して合流点J8で上記排水路10dに接続する排水路10eと、電磁弁V3と流入ポンプP3との間の分岐点J9から分岐し、流量調整のための調整弁V13を介して合流点J10で上記排水路10dに接続する排水路10fとを配設している。これらの排水路10e、10fは、装置のメンテナンス時などに、処理水路10および電解槽11から水を抜く際などに使用する。
【0108】
図5は、図4の水処理装置1の、電気的な構成を示すブロック図である。
【0109】
水処理装置1は、電極11aに通電制御しつつ処理水路10等を構成する各部を作動させる制御手段としての制御部30を備えている。
【0110】
流量計S6、圧力計S7、電流計S8、および水位スイッチS9の出力は制御部30へ与えられる。制御部30内には、各種動作のタイミングを規定するためのタイマ31と、例えば水槽2に貯留する水量や基準塩素濃度などの初期値を登録したメモリ32とを設けている。またメモリ32には、流量計S6によって水流異常を検出する際の基準となる流量の基準値Q、圧力計S7によって水流異常を検出する際の基準となる水圧の基準値P、電流計S8によって水流異常を検出する際の基準となる電流の基準値I、および水位スイッチS9によって水流異常を検出する際の基準となる水位の基準値Tも登録している。
【0111】
制御部30は、上記各センサS6〜S9の出力、タイマ31によって規定したタイミング、並びにメモリ32に記録した初期値に基づいて種々の演算を行い、それに基づいて制御信号をドライバ33へ与える。そしてドライバ33は、与えられる信号に基づいて電極11aへの通電出力(通電電流)、通電時間等の通電制御を行い、かつ電磁弁V3の開閉、ブロワBM、ポンプP3、P4の駆動制御を行う。
【0112】
このうち水流異常検知の流れを図6、図7に示す。
【0113】
まず図6に示すように、水処理装置1の運転を開始すると、制御部30は、メモリ32から、圧力計S7によって水流異常を検出する際の基準となる水圧の基準値Pを取り込み(ステップSP1)、次いで電磁弁V3を開くとともに流入ポンプP3を駆動して、電解槽11への水の流入を開始する(ステップSP2)。
【0114】
次に制御部30は、メモリ32から、流量計S6によって水流異常を検出する際の基準となる流量の基準値Qと、電流計S8によって水流異常を検出する際の基準となる電流の基準値Iとを取り込み(ステップSP3)、循環ポンプP4を駆動させるとともに、電極11aに通電して水の電解処理を開始し(ステップSP4)、さらにメモリ32から、水位スイッチS9によって水流異常を検出する際の基準となる水位の基準値Tを取り込む(ステップSP5)。
【0115】
以上の各ステップを経て、水処理装置1による通常の電解処理が実行開始される。
【0116】
この電解処理中、制御部30は、流入ポンプP3が駆動しているかどうかを判断し(ステップSP6)、駆動中であれば次に、
・ 電流計S8によって測定される流入ポンプP3の動作電流Iinが正常値の範囲内、すなわち図の例の場合は前記基準値Iの0.8倍以上でかつ1.2倍未満の範囲内であるか否か(ステップSP7)、
・ 流量計S6によって測定される、流入ポンプP3によって処理水路10を流れて電解槽11に流入する水の流量Qinが正常値の範囲内、すなわち図の例の場合は前記基準値Qの0.8倍以上でかつ1.2倍未満の範囲内であるか否か(ステップSP8)、
・ 水位スイッチS9によって測定される電解槽11内の水Wの水位Tinが正常値の範囲内、すなわち図の例の場合は前記基準値Tの0.8倍以上でかつ1.2倍未満の範囲内であるか否か(ステップSP9)、
を順に判断する。
【0117】
そして、いずれも基準値の範囲内であれば制御部30は、水位スイッチS9によって測定される電解槽11内の水Wの水位Tinが、あらかじめ設定された水位の上限値に達したか否かを判断し(ステップSP10)、上限値に達しない間は、ステップSP12にジャンプして装置の運転終了が選択されたか否かを判断し、運転終了でない場合はステップSP6に戻って、上記の状態を維持しつつ運転を続ける。つまりステップSP6〜SP12がこの順に繰り返される(水の流入モード)。
【0118】
また制御部30は、ステップSP10で、水位スイッチS9によって測定される電解槽11内の水Wの水位Tinが上限値に達したと判断した場合、ステップSP11で、電磁弁V3を閉じるとともに流入ポンプP3の運転を停止して、電解槽11から水が溢れるのを防止する。
【0119】
この状態で、ステップSP12で装置の運転終了が選択されないと、制御部30は、ステップSP6に戻って流入ポンプP3が駆動していないと判断して、図7のサブルーチンのAに移行する。
【0120】
そして、まずステップSP13で、圧力計7によって測定される、循環水路2から処理水路10に導入される水の水圧Pinが正常値の範囲内、すなわち図の例の場合は前記基準値Pの0.8倍以上でかつ1.2倍未満の範囲内であるか否かを判断し、基準値の範囲内であれば次に、水位スイッチS9によって測定される電解槽11内の水Wの水位Tinが、あらかじめ設定された水位の下限値に達したか否かを判断する(ステップSP14)。
【0121】
これは、電磁弁V3を閉じて流入ポンプP3の駆動を停止した状態でも、電極11aへの通電による水の電解処理と、循環ポンプP4の駆動による電解槽11からの水の送出とは続けられており、電解槽11内の水位は徐々に低下するからである。
【0122】
水位が下限値に達しない場合、制御部30は、図6のCにジャンプして、ステップSP12で装置の運転終了が選択されるか、あるいはステップSP14で水位が下限値に達したことが検出されるまで、上記の状態を維持しつつ運転を続ける。つまりステップSP6→SP13→SP14→SP12がこの順に繰り返される(水の流入停止モード)。
【0123】
また水位が下限値に達すると、制御部30は、ステップSP15で、電磁弁V3を開くとともに流入ポンプP3を駆動して、電解槽11への水の流入を再開する。そしてステップSP12に戻って装置の運転終了が選択されていない場合は、ステップSP6で流入ポンプP3が駆動していると判断するため、初期の状態に戻って運転を続ける。つまり水の流入モードに戻って、ステップSP6〜SP12がこの順に繰り返される。
【0124】
以上の繰り返しが、通常の運転モードである。
【0125】
この通常の運転モードにおいて、先に述べたように、循環水路20に接続され
た処理水路10の水流に定常時とは異なる大幅な変動が発生すると、それを前記
4種の水流異常検出手段、すなわち流量計S6、圧力計S7、電流計S8、およ
び水位スイッチS9のいずれかによって検出して、制御部30は、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じることで、循環水路20からの水の導入を停止する非常停止モードに移行する。
【0126】
例えば電磁弁V3を開き、かつ流入ポンプP3を駆動させている水の流入モードでは、制御部30は、流量計S6、電流計S8、および水位スイッチS9のいずれかによって水流異常を検出する。詳しくは
・ ステップSP7で、電流計S8によって測定される流入ポンプP3の動作電流Iinが正常値の範囲外、すなわち基準値Iの0.8倍未満であるか、もしくは1.2倍以上であると判断する、
・ ステップSP8で、流量計S6によって測定される、流入ポンプP3によって処理水路10を流れて電解槽11に流入する水の流量Qinが正常値の範囲外、すなわち基準値Qの0.8倍未満であるか、または1.2倍以上であると判断する、
・ ステップSP9で、水位スイッチS9によって測定される電解槽11内の水Wの水位Tinが正常値の範囲外、すなわち基準値Tの0.8倍未満であるか、あるいは1.2倍以上であると判断すると、いずれの場合にも制御部30は、図7のBにジャンプしてステップSP16に移行する。
【0127】
また電磁弁V3を閉じ、かつ流入ポンプP3を停止させている水の流入停止モードでは、制御部30は、ステップSP13で、圧力計S7によって測定される、循環水路2から処理水路10に導入される水の水圧Pinが正常値の範囲外、すなわち基準値Pの0.8倍未満であるか、もしくは1.2倍以上であると判断すると、同様にステップSP16に移行する。
【0128】
そしてステップSP16で、制御部30は、電磁弁V3を閉じ、流入ポンプP3、循環ポンプP4を停止させるとともに、電極11aへの通電を停止して電解処理を停止して非常停止モードに入る。
【0129】
この操作により、水処理装置1が循環水路2から遮断されるため、水流異常が発生しているにもかかわらず、ポンプP3、P4がエアー噛みを生じたり、あるいは安全機能が働いて異常停止したりすることが防止される。したがって、水処理装置1は運転不能に陥ることがなく、水流異常がなくなった後、直ちに運転を再開することができる。
【0130】
すなわち制御部30は、ステップSP17で、圧力計S7によって測定される、循環水路2から処理水路10に導入される水の水圧Pinが正常値の範囲内、つまり基準値Pの0.8倍以上でかつ1.2倍未満の範囲内であるか否かを判断する。そして水圧Pinが上記正常値の範囲外であるときは、ステップSP16に戻って待機を続ける。
【0131】
一方、水圧Pinが正常値の範囲内になると、制御部30は、水流異常がなくなったと判断して、ステップSP18で電磁弁V3を開き、流入ポンプP3、循環ポンプP4を駆動させるとともに、電極11aに通電して電解処理を再開し、次いで図6のCにジャンプして通常の運転モードに戻る。
【0132】
また、上記各モードのいずれにおいても、ステップSP12で装置の運転終了が選択されたと判断すると、制御部30は、上記各部をすべて停止して、水処理装置1の運転を終了する。
【0133】
次に、図8に示した水処理装置1について説明する。
【0134】
図の装置は、やはり水泳プールや浴場の浴槽などの、大型の水槽2に組み込んで使用されるものであるが、これまでのものとは違い、例えば水道水や井戸水などの水源から供給された水に、必要に応じて、食塩等の、水溶性でかつ固形の促進剤を溶解しながら、電解槽11を経て電解処理したのち、水槽2に接続した循環水路20に供給するためのものである。循環水路20には、砂ろ過装置21、循環ポンプ22、および水を加熱するための熱交換器23を配設している。
【0135】
図示しない水源から電解槽11に至る供給水路は第1〜第3の供給水路10i〜10kに分かれており、このうち第1の供給水路10iの途上には順に、開閉弁V1、電磁弁V14、促進剤を蓄える促進剤槽4、および送出ポンプP5を配設している。
【0136】
この第1の供給水路10iは、前記のように促進剤を充てんした促進剤槽4に、電磁弁V14を一定時間開いて一定量の水を供給して所定量の促進剤を溶解させることで、飽和濃度もしくはそれに近い一定濃度の促進剤溶液を生成させたのち、それを送出ポンプP5によって電解槽11に供給するためのものである。図において符号S10は、これらの動作をする際の基準となる、促進剤槽4内の、促進剤溶液の水位を検出するための水位センサである。また促進剤槽4には、余剰の促進剤溶液をドレン口Dへ送るための排水路10mを設けている。
【0137】
また第2の供給水路10jは、上記第1の供給水路10iのうち開閉弁V1と電磁弁V14との間の分岐点J11で分岐して、送出ポンプP6と電磁弁V15とを介して、再び第1の供給水路10iのうち送出ポンプP5と電解槽11との間の合流点J12で合流している。
【0138】
この第2の供給水路10jは、電磁弁V15を一定時間開くとともに送出ポンプP6を一定時間駆動させることで、電解槽11に、促進剤を溶解させていない水を一定量、供給して促進剤溶液を希釈するためのものである。水の供給は、第1の供給水路10iによる促進剤溶液の供給と同時に行っても良いし、交互にあるいはランダムに行っても良い。
【0139】
さらに第3の供給水路10kは、上記第2の供給水路10jのうち分岐点J11と送出ポンプP6との間の分岐点J13で分岐して、閉止弁V16を介して電解槽11に接続している。
【0140】
この第3の供給水路10kは、電極洗浄時に閉止弁V16を開いて、多量の水を連続的に電解槽11に供給するためのものである。
【0141】
電解槽11内には、水Wを電解反応するための、陰陽少なくとも2枚の電極11aを配設している。また電解槽11の天板側には、ブロワBMを備えた排気管14を接続している。さらに電解槽11には、開閉弁V17を介してドレン口Dへ至る排水路10nを設けている。この排水路10nは、装置のメンテナンス時などに電解槽11から水を抜いたり、あるいは第3の供給水路10kを通して多量の水を連続的に供給して電極を洗浄したりする際などに、開閉弁V17を開けて使用する。
【0142】
電解槽11は、当該電解槽11に設けた図示しない開口から溢れ出した、電解処理した水を貯えるための貯水槽16内に設置してあり、貯水槽16には、貯えた水の水位を検出するための水位センサS11を配設している。
【0143】
そしてこの貯水槽16に、電解処理した水を水槽2に注入するための第1の注入水路10pを接続している。第1の注入水路10pには順に、電磁弁V18、注入ポンプP7、および開閉弁V19を配設している。
【0144】
また第1の注入水路10pの、電磁弁V18と注入ポンプP7との間には、水を滅菌する作用を有する滅菌液としての次亜塩素酸ソーダの水溶液Lを、上記注入ポンプP7の吸い上げ力によって、滅菌液槽13から、電磁弁V20を介して、合流点J14で第1の注入水路10pに供給するための第2の注入水路10qを接続している。
【0145】
そしてこれにより、注入ポンプP7および注入水路の配管を併用できるため、機構的な無駄を少なくして、装置の設置面積の増分を抑制したり、コストアップを抑えたりすることができる。
【0146】
また貯水槽16には、その底部近傍から、前記排水路10nの開閉弁V17より下流側の合流点J15に、開閉弁V21を介して接続した排水路10rと、上縁部近傍から、上記合流点J15に接続した排水路10sとを配設している。
【0147】
前者の排水路10rは、装置のメンテナンス時などに、貯水槽16内の水を抜くためのものであり、後者の排水路10sは、余剰の水を逃がして、水が貯水槽16から溢れるのを防止するためのものである。
【0148】
図9は、図8の水処理装置1の、電気的な構成を示すブロック図である。
【0149】
水処理装置1は、電極11aに通電制御しつつ、装置を構成する各部を動作させる制御部30を備えている。
【0150】
水位センサS10、S11の出力は制御部30へ与えられる。制御部30内には、各種動作のタイミングを規定するためのタイマ31と、例えば水槽2に貯留する水量や基準塩素濃度などの初期値を登録したメモリ32とを設けている。
【0151】
制御部30は、上記両水位センサS10、S11の出力、タイマ31によって規定したタイミング、並びにメモリ32に記録した初期値に基づいて種々の演算を行い、それに基づいて制御信号をドライバ33へ与える。
【0152】
ドライバ33は、与えられる信号に基づいて電極11aへの通電出力(通電電流)、通電時間等の通電制御を行い、かつ電磁弁V14、V15、V18、V20の開閉、ブロワBM、送出ポンプP5、P6、注入ポンプP7の駆動制御を行う。
【0153】
図中、一点鎖線で囲んだ領域は、ドライバ33のうち、滅菌液槽13に蓄えた次亜塩素酸ソーダの水溶液Lを水槽2に注入する状態としたときに、電解槽11側の動作を防止するためのインターロック機能を備えた切り換え部33aである。
【0154】
切り換え部33aは、電解槽11側の通常の動作時に電磁弁V18を開き、かつ注入ポンプP7を動作させる回路C1と、電解槽11側の故障時などに電磁弁V20を開き、かつ注入ポンプP7を動作させる回路C2とを備えている。
【0155】
このうち回路C1は、電磁弁V18と、ドライバ33内の図示しない制御出力部とを繋ぐ2本の線路のうちの一方に、リレーR0の常閉接点R0aを直列に挿入するとともに、注入ポンプP7を、上記電磁弁V18と並列に接続したものである。
【0156】
また回路C2は、電磁弁V20と、ドライバ33内の図示しない制御出力部とを繋ぐ2本の線路に、リレーR0のコイルR0cと注入ポンプP7とを、それぞれ電磁弁V20と並列に接続するとともに、2本の線路のうちの一方と注入ポンプP7との間に、当該注入ポンプP7を間欠動作させるための、図示しないタイマの接点Tmを直列に挿入したものである。
【0157】
なお例では、回路C1、C2を、それぞれ注入ポンプP7の異なるタップ端子に接続して、単位時間あたりの注水量を切り換えるようにしている。具体的には、回路C1に通電したときよりも回路C2に通電したときの方が、注入ポンプP7の注水量が小さくなるように接続している。そしてこの接続と、前記のように回路C2にタイマの接点Tmを挿入したことによる注入ポンプP7の間欠動作とによって、滅菌液槽13側に切り換えた際に、水槽2に供給される次亜塩素酸ソーダの水溶液Lの量を制限して、単位時間あたりの残留塩素濃度の急激な変動を防止している。
【0158】
ドライバ33は、電解槽11側の通常の動作時には、回路C2への通電を停止した状態で、回路C1に通電する。そうすると切り換え部33aにおいて、リレーR0の常閉接点R0aが閉じられているため、回路C1を通して電磁弁V18と注入ポンプP7に通電されて、電磁弁V18が開かれるとともに注入ポンプP7が動作される。そして電解槽11から、電解処理した水が、第1の注入水路10pを通して水槽2に供給される。
【0159】
一方、電解槽11側に故障などが発生した際には、ドライバ33は、回路C1への通電を停止するとともに、回路C2への通電を開始する。また、図示しないタイマ本体へも通電する。そうすると切り換え部33aにおいて、リレーR0のコイルR0cへの通電によって常閉接点R0aが開かれて、回路C1を通しての、電磁弁V18および注入ポンプP7への通電がインターロックされた状態で、回路C2を通して、電磁弁V20と注入ポンプP7とに通電されて、電磁弁V20が開かれるとともに、タイマの接点Tmの開閉動作に伴って注入ポンプP7が間欠動作される。そして滅菌液槽13から、次亜塩素酸ソーダの水溶液Lが、第2の注入水路10qおよび第1の注入水路10pを通して水槽2に供給される。
【0160】
図10は、図8、9の水処理装置における水処理の流れのうち、電解槽11側と滅菌液槽13側の切り換えの流れを示すフローチャートである。
【0161】
水処理装置1の運転を開始すると制御部30は、まずステップSP21で、電解槽11側に異常があるかないかを検査し、異常がない場合には次にステップSP22で、装置のオペレータによって滅菌液槽13側への切り換えが選択されたか否かを検知する。
【0162】
切り換えが選択されていない、つまり電解槽11側が選択されている場合、制御部30は、ステップSP23で電磁弁V20を閉じ、回路C2を通しての通電による注入ポンプP7の駆動(この駆動を図ではP7bとした)を停止した状態とするとともに、電磁弁V18を開き、かつ回路C1を通しての通電によって注入ポンプP7を駆動する(この駆動を図ではP7aとした)。
【0163】
それとともに制御部30は、電極11aへの通電により水の電解処理を開始して、電解処理した水を、前記のように電解槽11から、第1の注入水路10pを通して水槽2に供給する。
【0164】
そして、ステップSP24において装置の運転終了が選択されたか否かを判断し、運転終了でない場合はステップSP21に戻って、上記の状態を維持しつつ運転を続ける。つまりステップSP21→SP22→SP23→SP24がこの順に繰り返される。これが、電解槽11側による、電界処理した水の注入モードである。
【0165】
また制御部30は、上記のモードで運転を続けている途中やあるいは装置の運転開始時に、ステップSP21において電解槽11側に異常があることを検知すると、ステップSP25に進んで電磁弁V18を閉じ、回路C1を通しての通電による注入ポンプP7の駆動(P7a)を停止した状態とする。
【0166】
また電磁弁V20を開くとともに、図示していないがタイマの作動を開始してその接点Tmを開閉動作させながら、回路C2を通しての通電を開始して注入ポンプP7を駆動(間欠動作、P7b)させることで、次亜塩素酸ソーダの水溶液Lを、滅菌液槽13から、第2の注入水路10q、および第1の注入水路10pを通して水槽2に供給する。
【0167】
そして、ステップSP24において装置の運転終了が選択されたか否かを判断し、運転終了でない場合はステップSP21に戻って、当該ステップSP21で、電解槽11側の異常が解消されたことが検知されるまで、上記の状態を維持しつつ運転を続ける。つまりステップSP21→SP25→SP24がこの順に繰り返される。
【0168】
また、電解槽11側に異常がない場合であっても、ステップSP22において切り換えが選択された、つまり滅菌液槽13側が選択されたことを検知すると、制御部30は、ステップSP25に進んで上記と同じ操作をして、次亜塩素酸ソーダの水溶液Lを、滅菌液槽13から、第2の注入水路10q、および第1の注入水路10pを通して水槽2に供給する。
【0169】
そして、ステップSP24において装置の運転終了が選択されたか否かを判断し、運転終了でない場合はステップSP21に戻って、その次のステップSP22で、装置のオペレータによって電解槽11側が選択されたことが検知されるまで、上記の状態を維持しつつ運転を続ける。つまりステップSP21→SP22→SP25→SP24がこの順に繰り返される。
【0170】
これらが、電解槽13側による、次亜塩素酸ソーダの水溶液Lの注入モードである。
【0171】
また制御部30は、上記のモードを実行中、ステップSP21において、電解槽11側の異常が解消されたことを検知するか、あるいはステップSP22において、装置のオペレータによって電解槽11側が選択されたことを検知すると、SP23に進んで装置を初期状態、すなわち電解槽11側による、電界処理した水の注入モードに復帰させる。そしてこの状態で運転を続ける。
【0172】
また、上記いずれのモードにおいても、ステップSP24で運転終了が選択されると、制御部30は、上記各部を全て停止し、水処理装置の運転を終了する。
【0173】
次に、図11の水処理装置について説明する。
【0174】
図の水処理装置1は、次亜塩素酸ソーダの水溶液Lを供給するための滅菌液槽5を装置外に設けて省略したこと以外は、先の図8のものと同様である。
【0175】
すなわち図の装置は、電解槽11の上流側に、
・ 水道水や井戸水などの、図示しない水源から供給された水を、開閉弁V1および電磁弁V14を通して一定量ずつ、促進剤を充てんした促進剤槽4に供給して所定量の促進剤を溶解させることで、飽和濃度もしくはそれに近い一定濃度の促進剤溶液を生成させたのち、それを送出ポンプP5によって電解槽11に供給するための第1の供給水路10iと、
・ 水源から供給された水を、送出ポンプP6および電磁弁V15を介して電解槽11に供給するために、上記第1の供給水路10iに対して、分岐点J11で分岐して合流点J12で合流するように接続した第2の供給水路10jと、
・ 水を、電極洗浄のために、閉止弁V16を通して電解槽11に供給すべく、上記第2の供給水路10jから、分岐点J13で分岐して電解槽11に至る第3の供給水路10kと、
を備えている。
【0176】
促進剤槽4には水位センサS10を配設しているとともに、ドレン口Dへ至る排水路10mを接続している。
【0177】
電解槽11内には電極11aを配設しており、また電解槽11の天板側には、ブロワBMを備えた排気管14を接続している。さらに電解槽11には、開閉弁V17を介してドレン口Dへ至る、水抜きのための排水路10nを設けている。
【0178】
電解槽11は、溢れ出た水を貯えるための貯水槽16内に設置してあり、貯水槽16には、貯えた水の水位を検出するための水位センサS11を配設している。
【0179】
貯水槽16には、電解処理した水を、注入ポンプP7および開閉弁V19を介して水槽2に供給するための注入水路10pを接続している。
【0180】
また貯水槽16には、その底部近傍から、開閉弁V21を介して排水路10nの合流点J15に至る水抜きのための排水路10rと、上縁部近傍から上記合流点J15に至る余剰水排水のための排水路10sとを接続している。
【0181】
上記の水処理装置1は、例えば滅菌液槽5があらかじめ設置されている水槽2に組み込んだ際に、設備のムダをなくすることができる。
【0182】
なお符号51は、滅菌液槽5に蓄えた、滅菌液としての次亜塩素酸ソーダの水溶液Lを、注入水路52を通して循環水路20に供給するためのポンプである。
【0183】
図12は、図11の装置のうち、促進剤槽4の内部構造を略記した断面図である。
【0184】
図において符号40は、食塩等の促進剤を充てんするための、促進剤槽4の筐体である。筐体40の天板40aには、充てんした促進剤を溶解して促進剤溶液を生成する水を供給すべく、供給水路10iの配管(図示せず)を接続するための配管接続部41を、水の供給口として設けている。
【0185】
また筐体40内には、当該筐体40を仕切ることで、生成した促進剤溶液を取り込むための溶液抽出室42aを設けている。
【0186】
溶液抽出室42aは、図の例の場合、仕切りとなる筒体42を、筐体40の天板40aに形成した開口40bから筐体40内に挿入して、その上端に設けたフランジ42bの下面を天板40aの上面に当接させた状態で固定することで形成している。
【0187】
またこの際、筒体42の、上記フランジ42bから下の長さを、筐体40の、天板40aの上面から底板40cの上面までの距離より僅かに短くすることで、筒体42の下端の開口42cと、底板40cの上面との間に隙間を設けている。そしてこれにより、図中実線の矢印で示すように開口42cを、生成した促進剤溶液の取り込み口としている。また筒体42の側面の、下端より僅かに上方の位置には通孔42dを形成して、これも図中実線の矢印で示すように促進剤溶液の取り込み口としている。
【0188】
また筒体42の側面の、上端より僅かに下方の位置には通孔42eを形成して、図中二点鎖線の矢印で示すように、上端の開口42fとともに空気の取り入れ口としている。
【0189】
また筒体42の全体は、図中に太い破線で示すように、生成した促進剤溶液は通すが固形の促進剤を通さないフィルターFによって覆ってある。フィルターFは、筒体42の外形にあわせた有底筒状に形成したものを筒体42に被せた状態で、当該筒体42を前記のように筐体40に固定することで、筐体40と筒体42との間に挟んで固定している。
【0190】
そして筒体42内に、その上端の開口42fを通して、供給水路10iの、促進剤槽4より下流側の配管10i−1を挿入して、その先端の、促進剤溶液の吸い込み口10i−2を配設している。
【0191】
上記促進剤槽4において、例えば図中一点鎖線で示す位置まで食塩等の促進剤Sを充てんした状態で、供給水路10iの、促進剤槽4より上流側から、配管接続部41を通して一定量の水Wを供給すると、促進剤溶液が生成する。
【0192】
そして生成した促進剤溶液は、図中実線の矢印で示すようにフィルターFによって固形の促進剤が除去されたのち、筒体42の下端の開口42c、および通孔42dを通して筒体42内の溶液抽出室42aに取り込まれる。
【0193】
この際、促進剤溶液は、前記のように水の供給口としての配管接続部41の付近が最も薄く、ここから最も離れた、促進剤槽4の底部付近で飽和濃度に近づいて最も濃くなるという濃度分布を示す。したがって溶液抽出室42aに取り込まれた促進剤溶液は、その温度での飽和濃度か、またはそれに近い一定濃度を有しており、電解処理水の残留塩素濃度を一定に保つ効果に優れている。しかも溶液抽出室42aに取り込まれた促進剤溶液は、フィルターFによって固形の促進剤が除去されているため、送出ポンプP5を詰まらせたりするおそれもない。
【0194】
この状態で送出ポンプP5を作動させると、その吸い上げ力によって、溶液抽出室42a内の促進剤溶液が、吸い込み口10i−2から配管10i−1内に吸い込まれて、電解槽11に供給される。また、それによって溶液抽出室42a内の水位が下がると、その分の新たな促進剤溶液が、促進剤槽4内から、開口42c、および通孔42dを通して溶液抽出室42aに供給されるとともに、その分の空気が、開口42fおよび通孔42eを通して促進剤槽4内に供給される。
【0195】
上記の促進剤槽4を備えた図11の水処理装置1の電気的な構成は、滅菌液槽とそれに関連するインターロック機構とを省略したこと以外は先の図9のものとほぼ同様である。
【0196】
次に図13の水処理装置について説明する。図13は、水処理装置の電気的な構成を簡略化して示す回路図である。水処理装置の具体的な構成は、特に限定されない。少なくとも水を電解処理して滅菌作用を付与するための電解槽を有し、プール等の水槽に、電解槽で電解処理した水を供給して滅菌することができる種々の構成の水処理装置に、図13の構成を適用することができる。
【0197】
図の装置は、水処理装置の主要部を含む電解処理部1aを備えた主回路Aと、警報手段BZを動作させるための副回路Bとを備えている。
【0198】
このうち主回路Aは、電解処理部1aと図示しない主電源との間を繋ぐ2本の線路にそれぞれ直列に挿入した2つの接点SW1a、SW1bを含む、漏電を検知して遮断される漏電ブレーカーSW1と、一方の線路の、上記接点SW1aと電解処理部1aとの間に直列に挿入したヒューズF1と、他方の線路の、接点SW1bと電解処理部1aとの間に直列に挿入した接点SW2aを含む、水処理装置全体の運転スイッチSW2と、電解処理部1aに並列に接続した、後述するリレーR1とともに警報手段BZの動作を制御するための動作制御手段を構成する制御部1bとを備えている。
【0199】
また副回路Bは、警報手段BZと図示しない副電源との間を繋ぐ2本の線路のうちの一方に直列に挿入したヒューズF2と、水処理装置の稼動時にのみ警報手段BZを動作可能とする動作制御手段としての、前記運転スイッチSW2の接点SW2bと、リレーR1の常閉接点NCとを備えている。
【0200】
運転スイッチSW2の2つの接点SW2a、SW2bは連動して、同時に開閉される。
【0201】
またリレーR1のコイルR1cは、制御部1bに接続してある。そして制御部1bは、水処理装置の各部に異常が見られない平常運転時には、コイルR1cに通電して常閉接点NCを開くことで副回路Bを遮断して、警報手段BZを動作停止状態とし、装置に異常が発生した際には、コイルR1cへの通電を停止して常閉接点NCを閉じることで副回路Bに通電して、警報・BR>闥IBZを動作させるように機能する。
【0202】
上記装置においては、漏電ブレーカーSW1の2つの接点SW1a、SW1bがともに閉じられた状態で、運転スイッチSW2の2つの接点SW2a、SW2bを閉じると、主電源から、主回路Aを介して電解処理部1aと制御部1bに駆動のための電力が供給される。
【0203】
この状態で、電解処理部1aを構成する各部に異常がない場合、制御部1bは、前記のようにコイルR1cに通電してリレーR1の常閉接点NCを開くことで、副回路Bを遮断して、警報手段BZを動作停止状態とし、電解処理部1aは、通常の電解処理を行う。
【0204】
また、水処理装置に漏電以外の異常が発生した場合、それを検出した制御部1bは、コイルR1cへの通電を停止して常閉接点NCを閉じることで、副回路Bに通電して警報手段BZを動作させる。
【0205】
さらに、水処理装置に漏電の異常が発生すると、漏電ブレーカーSW1が作動して、2つの接点SW1a、SW1bがともに開かれるため、電解処理部1aへの電力の供給が停止され、装置の運転が停止する。また、制御部1bへの電力の供給も停止されるため、制御部1bは、コイルR1cへの通電を停止して常閉接点NCを閉じることで、副回路Bに通電して警報手段BZを動作させる。
【0206】
また、水処理装置に異常がない状態で運転終了すべく、運転スイッチSW2を操作すると、接点SW2aが開かれることで、電解処理部1aへの電力の供給が停止され、装置の運転が停止する。また、制御部1bへの電力の供給も停止されるため、制御部1bは、コイルR1cへの通電を停止して常閉接点NCを閉じるが、運転スイッチSW2の接点SW2bが開かれているため副回路Bは遮断されたままであり、警報手段BZが誤動作することが防止される。
【0207】
この発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】この発明の一実施形態にかかる水処理装置を、水泳プールや浴場の浴槽などの、大型の水槽に組み込んだ構造を簡略化して示す図である。
【図2】図1の水処理装置の、電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】水処理装置の、他の実施形態を示す図である。
【図4】水処理装置の、さらに他の実施形態を示す図である。
【図5】図4の水処理装置の、電気的な構成を示すブロック図である。
【図6】制御部により行われる制御のうち、水流異常検出の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】水処理装置の、さらに他の実施形態を示す図である。
【図9】図8の水処理装置の、電気的な構成を示すブロック図である。
【図10】制御部により行われる制御のうち、注入ポンプの運転制御の流れを示すフローチャートである。
【図11】水処理装置の、さらに他の実施形態を示す図である。
【図12】図12の水処理装置の要部である促進剤槽の内部を示す断面図である。
【図13】水処理装置の、さらに他の実施形態を示す回路図である。
【符号の説明】
【0209】
1 水処理装置
10 処理水路
10b バイパス水路
11 電解槽
2 水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電解処理して滅菌作用を付与するための電解槽を有し、プール等の水槽に、電解槽で電解処理した水を供給して滅菌するための水処理装置であって、
水槽に設けた、水を循環させるための循環水路に接続され、当該循環水路から水を導入し、電解槽で電解処理したのち循環水路に還流させるための処理水路と、
処理水路の、電解槽より上流側に配設された、水を、処理水路を通して電解槽に流入させるための流入ポンプと、
処理水路の、電解槽より上流側に配設された、処理水路を開閉するための弁等と、
処理水路に配設された、循環水路から処理水路に導入される水の水流の異常を検出するための水流異常検出手段と、
この水流異常検出手段によって水流異常が検出された際に、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じることで、循環水路からの水の導入を停止するための導水制御手段と、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
水流異常検出手段が、
(1) 処理水路の、弁等より上流側に配設され、循環水路から処理水路に導入される水の水圧の変動を検出するための水圧検出手段、
(2) 処理水路の、電解槽より上流側に配設され、流入ポンプによって処理水路を流れて電解槽に流入される水の流量の変動を検出するための流量検出手段、
(3) 電解槽に配設され、電解槽内の水の、水位の変動を検出するための水位検出手段、および
(4) 流入ポンプの動作電流の変動を検出するための電流検出手段のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
導水制御手段は、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じた状態で、水圧検出手段によって検出した水圧値が変動前の範囲に戻った時点で、弁等を開くとともに流入ポンプの動作を再開することを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
【請求項4】
導水制御手段は、流入ポンプを停止するとともに弁等を閉じている間、電解槽での水の電解処理を停止することを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項5】
水を電解処理して滅菌作用を付与するための電解槽を有し、プール等の水槽に、電解槽で電解処理した水を供給して滅菌するための水処理装置であって、
電解槽で電解処理した水を水槽に注入するための注入ポンプを備えた第1の注入水路と、
水を滅菌する作用を有する滅菌液を蓄える滅菌液槽と、
この滅菌液槽に蓄えた滅菌液を、同じ注入ポンプによって水槽に注入すべく、滅菌液槽から、第1の注入水路の、注入ポンプの上流側に合流、接続された第2の注入水路と、
第1および第2の注入水路の、両者の合流点よりそれぞれ上流側に配設された弁等と、
この弁等を切り換えることで、注入ポンプによって、電解槽で電解処理した水を水槽に注入するか、滅菌液槽に蓄えた滅菌液を水槽に注入するかを切り換えるための切り換え制御手段と、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
切り換え制御手段は、弁等を切り換えた際に、水槽に注入される滅菌成分の、単位時間あたりの濃度が同等となるように、注入ポンプによる、単位時間あたりの注水量を切り換えることを特徴とする請求項5記載の水処理装置。
【請求項7】
切り換え制御手段は、弁等を切り換えて、滅菌液槽に蓄えた滅菌液を水槽に注入する状態としたときに電解槽側の動作を防止するためのインターロック機能を有することを特徴とする請求項5記載の水処理装置。
【請求項8】
水を電解処理して滅菌作用を付与するための電解槽を有し、プール等の水槽に、電解槽で電解処理した水を供給して滅菌するための水処理装置であって、
電解槽での電解処理を促進するための、水溶性でかつ固形の促進剤を蓄える促進剤槽と、
この促進剤槽に一定量の水を供給して所定量の促進剤を溶解することで促進剤溶液を生成させたのち、生成した促進剤溶液を、送出ポンプによって電解槽に供給するための供給水路とを備えているとともに、
上記促進剤槽内に、当該促進剤槽の底部近傍から、生成した促進剤溶液は通すが固形の促進剤を通さないフィルターを通して、選択的に促進剤溶液を取り込む溶液抽出室を設け、この溶液抽出室内に、供給水路のうち促進剤槽より下流側の、促進剤溶液の吸い込み口を配設したことを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
プール等の水槽に、電解槽で電解処理した水などの、滅菌作用を有する液体を供給するための水処理装置であって、装置に異常が発生したことを知らせる警報手段と、装置の異常を検出して警報手段を動作させる警報制御手段と、水処理装置の稼動時にのみ警報手段を動作可能とする動作制御手段とを備えることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−6325(P2009−6325A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213256(P2008−213256)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【分割の表示】特願2002−260291(P2002−260291)の分割
【原出願日】平成14年9月5日(2002.9.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】