説明

水処理装置

【課題】下水汚泥処理工程から排出される汚泥脱離液中に含まれる浮遊固形分とリンを、吸着剤を用いて同時に分離すると共に、吸着剤をリン含有資源として回収再利用することができる水処理装置を提供する。
【解決手段】無機層状化合物に由来する粉末状のリン吸着剤の固定床21を形成するための第1の支持体31を有し、前記固定床により被処理水からリンおよび固形分を分離し、前記リン吸着剤に吸着したままの状態で利用可能な形態でリンを回収する第1処理槽3と、前記リン吸着剤の流動床または固定床22を形成するための第2の支持体41を有し、前記流動床または固定床22により前記第1処理槽3から導入した処理水からリンを分離し、前記リン吸着剤に吸着したままの状態で利用可能な形態でリンを回収する第2処理槽4と、リンを吸着させたリン吸着剤を前記第2処理槽4から前記第1処理槽3へ移送するリン吸着剤移送手段L5を有する水処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水中に含まれるリンを回収再利用するための水処理装置に係り、特に、下水道や、食品加工工場等の産業排水処理に用いられる、活性汚泥法をはじめとする生物学的排水処理から排出される、余剰汚泥の処理工程から排出される水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的な将来のリン資源の枯渇化が予測されており、リン資源の確保を輸入に依存する我が国の国内事情から、排水中に含まれるリンの回収技術が注目されている。これまで、排水中のリンは、環境系への排出は富栄養化の一因になることから、その除去と排出状況管理とが必須とされ、このため、リンの除去技術のほうにもっとも注力されていた。代表的なリン除去技術として、微生物のリン蓄積能を利用する生物学的リン除去方法や、凝集沈殿法によるリン除去方法などがある。
【0003】
これらのリン除去方法を直接リン回収利用手段とするためには、例えば、生物学的リン除去法から発生する余剰汚泥の焼却や化学処理等のプロセスが必要であり、多量の薬剤や複数の処理工程を追加して配する必要がある。例えば、リンを資源として再利用するために、使用する薬品や、由来する汚泥等に含有する不純物の影響を排除する必要もあるため、その調整や精製工程が必須となる。
【0004】
これらの技術背景に鑑みて、近時、リンを選択的に吸着するリン吸着剤を利用する水処理技術が注目されている。陰イオンを選択的に除去する素材である陰イオン交換体として、陰イオン交換樹脂や、ハイドロタルサイト様の無機層状化合物などがあり、これらの製法や、この素材特性を発展させた吸着剤に関して、多くの方法が開発されている。
【0005】
例えば特許文献1および特許文献2には、ハイドロタルサイト様物質の機能を付与した吸着剤を利用するリン回収システムが記載されている。
【0006】
特許文献1の技術では、有機系素材にハイドロタルサイト様物質の機能を付与したリン吸着剤を用いて、該吸着剤に排水中のリンを吸着させた後に、薬液を用いて吸着剤からリンを脱離させ、脱離液からリン含有塩を晶析回収する。また、特許文献2の技術においても同様にハイドロタルサイト様素材を含有する吸着剤を用いて、排水中のリンを吸着させた後に、該吸着剤からリンを脱離させ、その後に吸着剤を再利用する。
【0007】
また、特許文献3には、吸着剤を用いた多段の半回分式吸着システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−260561号公報
【特許文献2】特開2008−49241号公報
【特許文献3】特開2004−261729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1,2に記載された従来技術においては、リン吸着機能の他に、処理系にリン吸着剤を固定化するための構造を付加すること、吸着剤の製造費等が増加して高コストになること、および吸着剤を再利用する形態をとる方法が必須になることなどから、リン吸着以外の後工程を配する必要があり、その後工程において吸着剤からリンを脱離させるために多量の薬剤が必要になるという課題がある。また、素材の機能付与に伴って、回収物のリン含有割合を高めることが困難になる他、付与素材が含有することで、リンを吸着させた素材そのものを資源として再利用形態とするのが難しいという課題がある。
【0010】
また、特許文献3の従来技術では、特許文献1,2と同様に、吸着素材は廃棄もしくは吸着剤として再利用する形態となっており、資源として再利用する形態ではないばかりでなく、吸着剤が被処理水中に浮遊固形分が含有する場合、その固形分によって吸着剤表面を汚損するという課題がある。
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、生物学的水処理工程から排出される汚泥処理工程から排出される汚泥脱離液を被処理水とし、該被処理水中に含まれる浮遊固形分とリンを、吸着剤を用いて同時に分離すると共に、吸着剤をリン含有資源として回収再利用することができる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る水処理装置は、被処理水が導入され、無機層状化合物に由来する粉末状のリン吸着剤の固定床を形成するための第1の支持体を有し、前記形成されたリン吸着剤の固定床により前記被処理水からリンおよび固形分を分離し、前記リン吸着剤に吸着したままの状態で利用可能な形態でリンを回収する第1処理槽と、前記第1処理槽で処理された処理水が導入され、無機層状化合物に由来する粉末状のリン吸着剤が導入され、前記リン吸着剤の流動床または固定床を形成するための第2の支持体を有し、前記形成されたリン吸着剤の流動床または固定床により前記第1処理槽から導入した処理水からリンを分離し、前記リン吸着剤に吸着したままの状態で利用可能な形態でリンを回収する第2処理槽と、前記第2処理槽内でリンを吸着させたリン吸着剤を前記第2処理槽から前記第1処理槽へ移送するリン吸着剤移送手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水処理装置によれば、系外へ排出するリン濃度の変動への影響を抑え、導入する被処理水中の固形分の影響を抑制し、吸着剤への汚損を抑制しつつ、薬剤の使用やリン吸着以外の工程(リン脱離工程など)を排した構成とし、被処理水中のリンを効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水処理装置を示す構成ブロック図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る水処理装置を示す構成ブロック図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る水処理装置を示す構成ブロック図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る水処理装置を示す構成ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、下水道や、食品加工工場等の産業排水処理に用いられる、活性汚泥法をはじめとする生物学的排水処理から排出される、余剰汚泥の処理工程から排出される汚泥の脱離液の水処理装置に適用され、特に該汚泥の由来する生物学的水処理工程上流側へ返送される経路を有する生物学的排水処理工程を有する水処理装置に適用されるものである。すなわち、本発明の処理対象となる被処理水は、生物学的水処理に由来する汚泥処理工程から排出される脱離液である。
【0016】
本発明の水処理装置では、被処理水を導入する第1処理槽を固定床式反応器形態とする必要があるが、吸着剤を導入する第2処理槽のほうは流動床式(図2〜図4)または固定床式(図1)または移動床のいずれの方式の反応器形態も採用することができる。本発明の水処理装置において第2処理槽内に形成される吸着剤の反応器形態は、固定床、移動床、流動床のいずれであってもよく、ここではとくに限定されない。しかし、第2処理槽を流動床式反応器形態とするほうがより好ましい場合がある(図2〜図4)。第2処理槽内に吸着剤の流動床を形成すると、第2処理槽から第1処理槽への吸着剤の移送を円滑・容易化することができるからである。
【0017】
本発明装置は、第2処理槽から排出される処理水からリン吸着剤を分離する固液分離手段をさらに有することが好ましい(図3、図4)。また、本発明装置は、第1処理槽から排出される処理水からリン吸着剤および被処理水に由来する固形分をそれぞれ分離するための手段をさらに有することが好ましい(図2〜図4)。このような固液分離手段としてサイクロンを用いることができる。無機層状化合物に由来する粉末状のリン吸着剤としてハイドロタルサイト様物質を用いることができ、このハイドロタルサイト様物質は比重1を超えて2前後にあり、実際は汚泥由来の固形分に比べてハイドロタルサイト様物質は比重が大きい。そのため第1処理槽から排出される処理水からリン吸着剤および被処理水に由来する固形分をそれぞれ分離するための固液分離手段としてサイクロンが適する。
【0018】
本発明装置は、第1処理槽の固定床からリン吸着剤および被処理水に由来する固形分を分離するために第1処理槽内に導入する逆洗水として、第1処理槽および第2処理槽の少なくとも一方から排出される処理水を第1処理槽に導入する逆洗水導入手段をさらに有することが好ましい(図3、図4)。
【0019】
さらに、本発明装置では、第1処理槽が並列に2つ以上配置されていることが望ましく、また第1処理槽の下流側に第2処理槽が並列に2つ以上配置されていることが望ましい(図4)。逆洗水処理しているほうの第1処理槽からは処理水を第2処理槽に送ることができないので、流路を切り替えて、その間において逆洗水処理していない他の第1処理槽から処理水を第2処理槽に送ることができるからである。また、第2処理槽を並列に2つ以上配置することにより、リンを吸着した吸着剤を効率よく第1処理槽に移送することができる。
【0020】
本発明の水処理装置においては、リン濃度の低い被処理水が流れる第2処理槽に対してはリン吸着能の高いフレッシュな吸着剤が導入されるとともに、第2処理槽内でリンを吸着させたリン吸着剤を前記第2処理槽から前記第1処理槽へ移送することにより、吸着能力の低下した吸着剤に対してリン濃度の高い被処理水(導入原水)が接触するので、第1及び第2処理槽の吸着反応効率がバランスよく、常に最良の状態でリン吸着反応を維持できる。このため全体としてリン回収効率が非常に良好である。本発明によればリン吸着剤に吸着したままの状態で利用可能な形態でリンを回収でき、例えば肥料として回収したリンを吸着剤ごと耕作地に投肥することができる。
【0021】
本発明に係る水処理装置を余剰汚泥の処理工程から排出される排水に適用するメリットとしては、通常、処理工程から排出される汚泥脱離液は、汚泥の由来する生物学的水処理工程上流側へ返送される。このため、リン再資源化をするための水処理装置としての目的を有する本発明により、処理系全体系内への流入水や処理系全体からの流出水部分に適用する場合と比べ、処理系全体から排出される放流水中でのリン濃度変動に伴う水質汚濁のリスクを軽減できる。
【0022】
また、リン吸着剤からのリン成分脱離や吸着剤再生、リン成分の晶析回収といった、多数のプロセス付与が不要であり、薬品等も不要となる。
【0023】
さらに、膜分離等の固液分離装置を付与することなく、リン回収水処理装置に流入する浮遊固形分によるリン吸着能の低下を抑制しながら、リンを回収できるため、吸着剤が保持できるリン含有量を高めた状態で、吸着剤そのものをリン回収資源化するメリットがある。
【0024】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る水処理装置の種々の好ましい実施の形態をそれぞれ説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1を参照して本発明の第1の実施形態の水処理装置を説明する。
【0026】
本実施形態の水処理装置1は、反応器形態の処理槽としての第1処理槽3および第2処理槽4を備えている。第1処理槽3は、上流側に配置され、図示しない原水供給源から被処理水を受け入れ、受け入れた被処理水を下降流で通流させ、被処理水中に含まれるリンを回収するものである。リンを回収するために第1処理槽3の支持体31上には粒子状のリン吸着剤の固定床21が形成されている。第2処理槽4は、第1処理槽3よりも下流側に配置され、第1処理槽3から被処理水を上方に受け、受け入れた被処理水を下降流で通流させ、被処理水中に含まれるリンを回収するものである。リンを回収するために第2処理槽4の支持体41上には粒子状のリン吸着剤の固定床22が形成されている。
【0027】
これらの固定床21,22を形成するリン吸着剤は、無機層状の陰イオン交換体からなり、望ましい形態としては吸着部がハイドロタルサイト様の無機粒子があげられる。ハイドロタルサイト様の無機粒子は例えば比重が約2であり、吸着剤供給源20から第2処理槽4内に投入されると、速やかに沈降して支持体41の上に堆積する。なお、ここで示すリン吸着剤は、他の有機素材や無機素材との複合素材ではないことが望ましい。
【0028】
第2処理槽4内には吸着剤供給源20から新鮮なリン吸着剤が随時必要に応じて補給されるようになっている。また、処理開始前において第1処理槽3内には所定量の吸着剤が投入されることにより初期の固定床21が形成されているが、支持体31に保持された吸着剤が徐々に流出して吸着能が低下するため、これを補うために第2処理槽4から第1処理槽3に吸着剤を移送することができる。すなわち、三方弁6を排出ラインL6から移送ラインL5に切り替え、第2処理槽4の固定床22に連通するラインL4を介して第2処理槽4から随時抜き取る吸着剤を移送ラインL5により第1処理槽3に移送することができる。これにより第1処理槽21内の固定床21に吸着剤が補充され、第1の固定床21の吸着能が改善される。また、第1処理槽3内での固定床21の吸着能(若干低い)と被処理水中のリン濃度(高濃度)との組み合わせと、第2処理槽4内での固定床22の吸着能(高い吸着能)と被処理水中のリン濃度(若干低い濃度)との組み合わせと、の両者のバランスが良くなり、システム全体として効率的にリン回収処理を行うことができる。
【0029】
なお、ラインL1〜L6,L8の各々には図示しないポンプが取り付けられ、これらのポンプの動作が図示しないコントローラにより制御されることにより、各ラインを通る流量と圧力が最適制御されるようになっている。
【0030】
被処理水は、図示しない生物学的排水処理設備から排出される余剰汚泥の処理工程である汚泥脱離液に由来するものであり、例えば20〜140mg/リットル程度の有機リンを含んでいる。ここでいう余剰汚泥の処理工程とは、汚泥濃縮や汚泥脱水工程、嫌気性消化処理の汚泥脱離液いずれであってもよい。また、被処理水は、下水処理の汚泥処理工程に適用した場合、被処理水の排水量や水質が安定していることから、計画的なリン回収に寄与することができるため、更に望ましい。
【0031】
被処理水は、原水導入ラインL1を通って上方から第1処理槽3内に導入され、第1段階として第1処理槽3内を流下する間に第1の固定床21の吸着剤にリンが吸着され、次いで移送ラインL2を通って第1処理槽3の下部から第2処理槽4の上部へ移送され、第2段階として第2処理槽4内を流下する間に第2の固定床22の吸着剤にリンが吸着され、第2処理槽4の下部の排出ラインL3を通って系外に排出される。
【0032】
三方弁6を切り替え、第2処理槽4内でリンを吸着したリン吸着剤の一部を移送ラインL5を介して第1処理槽3に移送することにより、それまで第2の固定床22において使用していた吸着剤を第1の固定床21で利用することができる。
【0033】
次に本実施の形態における効果作用について示す。
【0034】
被処理水は、汚泥の固液分離操作によって排出される脱離液であり、通常、浮遊固形分を含有する。このため、吸着剤を用いるプロセスにおいては、この浮遊固形分が吸着剤に付着することによって、吸着剤の汚損を引き起こす可能性がある。このため、この浮遊固形分の影響を排した水処理装置の構成が求められる。そこで、本発明では、以下の方法で、リン吸着剤のもつリン吸着容量が確保される。
【0035】
第1に、第1処理槽3内のリン吸着剤を固定床形態とし、ここに浮遊固形分とリンを含有する被処理水を導入することにより、リン吸着剤固定床21を通水する際に、浮遊固形分がろ過されると共に、リンの吸着が起こる。この第1処理槽3にて処理された、浮遊固形分を含まない第1処理槽処理水を第2処理槽4に通水することによって、第2処理槽4内に配されるリン吸着剤は、浮遊固形分の影響なしに、リンを吸着することができる。
【0036】
第2に、第1処理槽3から第2処理槽4に導入される処理水は、原水供給源からの被処理水に比べて含まれるリン濃度が低減されているため、この第1処理槽の処理水から、より多くのリンを回収する場合、リン吸着量が少ない状態でのリン吸着剤利用形態が望ましく、このため、未使用の新鮮なリン吸着剤を供給源20から第2処理槽4内に導入して利用することにより、リンを効率的に吸着できる。また、第2処理槽4内でリンを吸着した吸着剤を、第1処理槽の固定床21に利用することで、一定のリンを吸着した形で、リン吸着および浮遊固形分の排除を行うため、第1処理槽3から排出される使用済みのリン吸着剤のリン吸着量を常に一定上確保することができるため、使用済みリン吸着剤を、リン資源として再利用する際の品質を確保できる。
【0037】
よって、これら2つの効果から、使用劣化したリン吸着剤をリン資源として活用できる。ここで、リン吸着剤を、無機陰イオン交換体であり、高いリン吸着能を有することで広く知られているハイドロタルサイト様物質を初めとする無機層状化合物を適用することで、再利用環境への適合性が高い回収リン資源として活用できる。ここで、ハイドロタルサイト様物質を構成する金属イオン分については、アルカリ土類等の2価の金属イオンと3価の金属イオンの複合形態を利用することができるが、リン資源として再利用できる形態である元素から、任意に選定すればよく、ここでは種類や含有比率、製造方法等は限定は無く、公知の手法から選定する。また、リン吸着剤を構成する素材は、再利用する形態に併せた、再利用環境への適合性の高い素材から構成することが望ましい。また、第2処理工程は、処理プロセス方向に直列配置などの複数多段とすることによって、リン回収量を高めることが出来るため好適である。
【0038】
第1の実施形態の水処理装置によれば、従来おこなっていた前処理や使用後のリン吸着剤や回収リン成分の処理工程を省略することができ、被処理水に含まれるリンを浮遊固形分の影響を抑制した形で、リン含有量を一定以上含んだリン吸着剤の運用が可能となるため、使用済みリン吸着剤をリン再利用形態とした、リン回収操作を効率よく適切に運用できる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に図2を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態を説明するにあたり、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明を省略するか又は簡略化する。
【0040】
第2実施形態の水処理装置1Aでは、第2処理槽4を流動床とし、第2処理槽4の処理水が排出される排出ラインL3に固液分離器5を接続し、処理水と共に第2処理槽4から流出する流動床22からの吸着剤を固液分離器5で分離回収するようにしている。すなわち、固液分離器5の底部を三方弁6に連通するラインL4に接続し、三方弁6を排出ラインL6から移送ラインL5に切り替え、固液分離器5で分離回収した固形分(吸着剤)を移送ラインL5を通って第1処理槽3に移送することができる。なお、本実施形態の各ラインL1〜L8においても図示しないポンプがそれぞれ設けられている。
【0041】
本実施形態では第2処理槽4を流動床とすることで、系内の被処理水とリン吸着剤の接触効率を高めると共に、固定床形態と比べて、導入水方向の上流側から下流側までの吸着剤のリン吸着量の差分を小さくすることができる。第2処理槽4の流動床22に利用する吸着剤を第1処理槽3の固定床21の吸着剤として利用する本実施形態においては、一定のリン吸着量を確保した、使用済みリン吸着剤を得ることができる。
【0042】
第2処理槽の固液分離器5にはサイクロン等の公知の固液分離装置を利用することができる。この固液分離器5の導入によって、第2処理槽4の処理水に付随して排出される、リン吸着量の少ない状態のリン吸着剤の系外への排出を抑制できると共に、第1処理槽3にて利用するリン吸着剤を過不足なく確保できる。なお、第2処理槽の固液分離器5にサイクロンを用いる場合、沈殿槽等の重力沈降を利用する固液分離に比べて省スペースでコンパクトな装置構成が図れる。また、サイクロンを直列多段に設置することで、さらに第2処理槽5の流動床22からのリン吸着剤の流出を抑制することができる。
【0043】
第2の実施形態の水処理装置によれば、より安定にリン吸着量を一定以上確保した使用済みリン吸着剤を回収することができるため、従来おこなわれていた前処理や使用後のリン吸着剤や回収リン成分の処理工程を省略することができ、被処理水に含まれるリンを浮遊固形分の影響を抑制した形で、リン含有量を一定以上含んだリン吸着剤の運用が可能となるため、使用済みリン吸着剤をリン再利用形態とした、リン回収操作を効率よく適切に運用できる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に図3を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態を説明するにあたり、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明を省略するか又は簡略化する。
【0045】
第3実施形態の水処理装置1Bでは、リン吸着剤の固定床21を有する第1処理槽3の底部に逆洗水ラインL31を接続するとともに、逆洗水時に第1処理槽3から排出される固形分を逆洗水から分離するための固液分離器10を排出ラインL8に取り付けている。なお、第2処理槽4を流動床とし、第2処理槽4の処理水が排出される排出ラインL3に固液分離器5を接続し、処理水と共に第2処理槽4から流出する流動床22からの吸着剤を固液分離器5で分離回収する点は、上記第2の実施形態の装置1Aと実質的に同じである。なお、本実施形態のラインL1〜L9,L42,L43においても図示しないポンプがそれぞれ設けられている。
【0046】
本実施形態の水処理装置の効果作用を説明する。
【0047】
第1処理槽3は、リン吸着と同時に、被処理水に含まれる浮遊固形分の分離を行うため、浮遊固形分の蓄積等によって、被処理水の導入圧が高まる。このため、定期的に蓄積する浮遊固形分を排する必要がある。この浮遊固形分を排出するため、逆洗水ラインL31を通じて、固定床21に蓄積した浮遊固形分とリン吸着剤を定期的に固定床21の上から排除する必要がある。ここで、逆洗水ラインL31にて利用する水源としては、固液分離した水を用いることが望ましく、例えば第1処理槽からの処理水や第2処理槽からの処理水を貯槽(図示せず)等によって確保して利用することができる。また、第1処理槽の固液分離器10は、リン吸着剤と浮遊固形分とを分離できる既存の分離技術を用いることができる。ここでは第1処理槽の固液分離器10にサイクロンを用いることで、浮遊固形分とリン吸着剤の比重差などを利用して、両者を分離することができる。なお、回収されるリン吸着剤は、リンの吸着程度によっては、第1処理槽3に返送するようにしてもよい。この場合は、排出ラインL33を第1処理槽3の上部に接続することが望ましい。
【0048】
本実施の形態の水処理装置によれば、被処理水中に含有する固形分を適切に排除することにより、従来おこなわれていた前処理や使用後のリン吸着剤や回収リン成分の処理工程を省略することができ、被処理水1に含有するリンを浮遊固形分の影響を抑制した形で、リン含有量を一定以上含んだリン吸着剤の運用が可能となるため、使用済みリン吸着剤をリン再利用形態とした、リン回収操作を効率よく適切に運用できる。
【0049】
(第4の実施形態)
次に図4を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態を説明するにあたり、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明を省略するか又は簡略化する。
【0050】
第4実施形態の水処理装置1Cでは、2つの第1処理槽3a,3bおよび2つの第2処理槽4a,4bを並列に配置している。これらのうち第1処理槽3aと第2処理槽4aとの組み合わせ、および第1処理槽3bと第2処理槽4bとの組み合わせは、それぞれ上記第3の実施形態の装置1Bと実質的に同じ構成である。
【0051】
前者の組み合わせの被処理水移送ラインL12と後者の組み合わせの被処理水移送ラインL22とはバイパスラインL71によって接続されている。バイパスラインL71の両端には三方弁63a,63bがそれぞれ取り付けられている。
【0052】
また、前者の組み合わせの吸着剤移送ラインL15と後者の組み合わせの吸着剤移送ラインL25とはバイパスラインL72によって接続されている。バイパスラインL72の両端には三方弁64a,64bがそれぞれ取り付けられている。
【0053】
通常時の定常運転において、本実施形態の水処理装置1Cでは、ラインL12を通って第1処理槽3aから第2処理槽4aへ被処理水を送るとともに、ラインL15を通って第2処理槽4aから第1処理槽3aへ吸着剤を移送する。これと並行して、ラインL22を通って他方の第1処理槽3bから第2処理槽4bへ被処理水を送るとともに、ラインL25を通って第2処理槽4bから第1処理槽3bへ吸着剤を移送する。
【0054】
一方、逆洗水時の非定常運転において、本実施形態の水処理装置1Cでは、逆洗水ラインL31から第1処理槽3a内に逆洗水を導入する場合、三方弁63a,63b,64a,64bの流路をそれぞれ切り替え、被処理水移送ラインL22→バイパスラインL71→被処理水移送ラインL22の順に第2組の第1処理槽3bから第1組の第2処理槽4aに被処理水を移送する。これと並行して、吸着剤移送ラインL15→バイパスラインL72→吸着剤移送ラインL25の順に第1組の第2処理槽4aから第2組の第1処理槽3bに吸着剤(流動床22aでリンを吸着した吸着剤)を移送する。
【0055】
本実施の形態の水処理装置によれば、逆洗水時においてもリン吸着処理を部分的に継続することができ、システム全体としての処理効率を維持・向上させることができる。
【0056】
なお、本実施形態では第1処理槽と第2処理槽との組み合わせを2組としたが、本発明はこれのみに限定されず、3組以上を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
3,3a,3b…第1処理槽、
4,4a,4b…第2処理槽、
5,5a,5b,10,10a,10b…固液分離器、 6,61,61a,61b,62,62a,62b,63a,63b,64a,64b…三方弁、
20,20a,20b…吸着剤供給源、
21,21a,21b…第1処理槽内に形成されたリン吸着剤の固定床、
22,22a,22b…第2処理槽内に形成されたリン吸着剤の流動床または固定床、
31…第1の支持体、 41…第2の支持体、
L1,L11,L21…被処理水導入ライン、
L2,L12,L22…被処理水移送ライン、
L3,L13,L23…被処理水排出ライン、
L4,L41…リン吸着剤排出ライン、
L5,L15,L25…リン吸着剤移送ライン(リン吸着剤移送手段)、
L6,L16,L26…リン吸着剤排出ライン、
L7,L9,L17,L19,L27,L29…固液分離器処理水排出ライン、
L8,L18,L28…固形分排出ライン、
L31,L32…逆洗水導入ライン(逆洗水導入手段)、
L33,L34…リン吸着剤排出ライン、
L42…リン吸着剤移送ライン、
L43…リン吸着剤返送ライン、
L71,L72…バイパスライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が導入され、無機層状化合物に由来する粉末状のリン吸着剤の固定床を形成するための第1の支持体を有し、前記形成されたリン吸着剤の固定床により前記被処理水からリンおよび固形分を分離し、前記リン吸着剤に吸着したままの状態で利用可能な形態でリンを回収する第1処理槽と、
前記第1処理槽で処理された処理水が導入され、無機層状化合物に由来する粉末状のリン吸着剤が導入され、前記リン吸着剤の流動床または固定床を形成するための第2の支持体を有し、前記形成されたリン吸着剤の流動床または固定床により前記第1処理槽から導入した処理水からリンを分離し、前記リン吸着剤に吸着したままの状態で利用可能な形態でリンを回収する第2処理槽と、
前記第2処理槽内でリンを吸着させたリン吸着剤を前記第2処理槽から前記第1処理槽へ移送するリン吸着剤移送手段と、
を具備することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記第2処理槽が流動床式反応器形態であることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記第2処理槽から排出される処理水からリン吸着剤を分離する固液分離手段をさらに有することを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
【請求項4】
前記固液分離手段がサイクロンであることを特徴とする請求項3記載の水処理装置。
【請求項5】
前記第1処理槽から排出される処理水からリン吸着剤および前記被処理水に由来する固形分を分離するための手段としてサイクロンをさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の水処理装置。
【請求項6】
前記第1処理槽の固定床からリン吸着剤および前記被処理水に由来する固形分を分離するために前記第1処理槽内に導入する逆洗水として、前記第1処理槽および第2処理槽の少なくとも一方から排出される処理水を前記第1処理槽に導入する逆洗水導入手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の水処理装置。
【請求項7】
前記第1処理槽が並列に2つ以上配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の水処理装置。
【請求項8】
前記第1処理槽の下流側に前記第2処理槽が並列に2つ以上配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の水処理装置。
【請求項9】
前記被処理水は、生物学的水処理に由来する下水汚泥処理工程から排出される脱離液であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の水処理装置。
【請求項10】
前記無機層状化合物に由来する粉末状のリン吸着剤としてハイドロタルサイト様物質を用いることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−214260(P2010−214260A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61989(P2009−61989)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】