水処理装置
【課題】線状電極に断線が発生しても、断線した線状電極が円筒状電極に接触して短絡したりするおそれが少ない水処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極の給電部が前記円筒状電極の端部より外側に設けられているとともに、前記線状電極の断線時における線状電極のたるみあるいは傾きによる円筒状電極へ接触を防止する絶縁材料からなる短絡防止手段を前記線状電極の給電部と円筒状電極の端面との間に備えていることを特徴としている。
【解決手段】処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極の給電部が前記円筒状電極の端部より外側に設けられているとともに、前記線状電極の断線時における線状電極のたるみあるいは傾きによる円筒状電極へ接触を防止する絶縁材料からなる短絡防止手段を前記線状電極の給電部と円筒状電極の端面との間に備えていることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、下水、排水等に含有される有機物、無機物、微生物を放電により発生するラジカル、オゾン等の活性種により分解処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上水、下水、産業排水、プールなどの分野で、水中の有機物の酸化分解、殺菌、脱臭等の処理のためにオゾンが用いられている(特許文献1参照)。
しかしながら、オゾンは酸化力が弱く、親水化、低分子化はできても無機化することはできない。また、ダイオキシン等の難分解性有機物は分解できない。
【0003】
そこで、処理能力を向上させるために、放電によりオゾンを発生させるとともに、オゾンより酸化力が強いOHラジカルやOラジカル等を発生させ、このオゾン及びラジカルを含む放電空間に被処理水を曝すことによって、オゾンだけでなく、ラジカルによっても酸化処理するようにした水処理装置が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、ラジカルは寿命が短く、消滅しやすく、そのため効率が悪く、上記のような先に提案された水処理装置ではラジカルによる酸化作用を十分に発揮させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−267096号公報
【特許文献2】特開2000−279977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の発明者は、処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置を既に提案している(特願2008-289467号)。
しかし、この水処理装置は、効率よく処理対象物質を分解処理できるようになったのであるが、つぎのような問題を備えている。
【0006】
すなわち、上記水処理装置では、線状電極は、円筒状電極の円筒内を臨むように配置され、円筒状電極の外側に出た部分に高圧パルス電圧を給電するようになっているが、この給電部分で接触不良等が原因と考えられる線状電極の断線が発生することがある。
そして、このように断線した線状電極は、折れ曲がったり、たおれたり、たるんだりして、円筒状電極に接触し、線状電極と円筒状電極が短絡してしまう。
このような短絡が生じると、線状電極と円筒状電極とからなる複数の電極対を備えた水処理装置においては、短絡が生じた電極対だけではなく、線状電極が断線していない他の電極対においても線状電極に高電圧を印加できなくなり、処理能力を全く発揮させることができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、線状電極に断線が発生しても、断線した線状電極が円筒状電極に接触して短絡したりするおそれが少ない水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる水処理装置は、処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極の給電部が前記円筒状電極の端部より外側に設けられているとともに、前記線状電極の断線時における線状電極のたるみあるいは傾きによる円筒状電極へ接触を防止する絶縁材料からなる短絡防止手段を前記線状電極の給電部と円筒状電極の端面との間に備えていることを特徴としている。
【0009】
円筒状電極の材質は、導電性があり耐食性に優れたものであれば、特に限定されないが、ステンレス鋼が好適である。
また、円筒状電極は、特に限定されないが、噴射ノズルから噴射されたミストが円筒状電極と線状電極との間の放電空間内に円筒状電極の壁面を通して供給できるように、円筒状電極を多数の透孔を備えたパンチングメタル様の板材あるいは網状材を円筒状に加工することで得られる。
なお、円筒状電極を網目あるいは透孔を備えたものとした場合、網目部分や透孔部分の開口率は、円筒の外周面の見かけ表面積(円筒の外周面が平滑面としたときの表面積)の50%以上が好ましい。
【0010】
線状電極の形状は、例えば、表面平滑な丸棒状、撚り線状、表面にネジ状溝が設けられた棒状、表面に細かい針状体が突出するように設けられた棒状などが挙げられる。
線状電極の材質は、導電性があり耐食性に優れたものであれば、特に限定されないが、チタンやステンレス鋼が好適である。
【0011】
また、線状電極と円筒状電極とは、複数対一体化してユニット化しても構わない。
そして、このような電極ユニットは、各円筒状電極と線状電極との間に形成される放電空間内に被処理水を供給でき、かつ、その処理槽内での装着位置が周壁に沿って設けられていれば、水平方向に並べたり、上下方向に並べたり、処理槽内の壁面に沿うように並べたりすることができる。
【0012】
本発明において、短絡防止手段としては、絶縁材料かなり、断線した線状電極の折れ曲がりやたるみによる短絡を防止できれば、特に限定されないが、例えば、線状電極が貫通する貫通孔を備えたもの、線状電極の一部を把持する機構を備えたものなどが挙げられる。
上記貫通孔の口径としては、特に限定されないが、挿通性を考慮すると、線状電極の直径+0.2mm以上が好ましい。なお、上限は、線状電極に折れ曲がりやたるみによる短絡を防止できれば特に限定されない。
上記短絡防止手段に用いられる絶縁材料としては、特に限定されないが、例えば、セラミック、マイカ、石綿、ガラス繊維等の無機材料、天然ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン等の樹脂が挙げられる。
【0013】
処理槽の材質は、内面が耐食性に優れたものであれば、特に限定されないが、例えば、
ステンレス鋼や、繊維強化樹脂が挙げられ、漏電防止のため絶縁体でできているか絶縁体で覆われていることが好ましい。
また、処理槽は、メンテナンス性を考慮すれば、その周壁に処理槽内の電極ユニットの着脱口を備えていることが好ましい。また、着脱口の蓋に電極ユニットの支持固定部を設け、蓋を開けるだけで、電極ユニットが処理槽外に取り出せる構成としても構わない。
【0014】
被処理水をミスト状にして放電空間に供給するには、被処理水供給配管を処理槽内に導入し、ポンプを介して送られてくる被処理水を被処理水供給配管の端末部に設けた噴射ノズルからミスト状にして放電空間内に噴射する方法が採られるが、電極ユニットに多数の電極対が平行に並んでいるとともに、円筒状電極が網目あるいは透孔を備えたものである場合、噴射ノズルを円筒状電極の側面に直交する方向から噴射するように配置し、噴射されたミストを円筒状電極の網目あるいは透孔を通して放電空間に供給することが好ましい。
【0015】
また、このように、ミストを円筒状電極の網目あるいは透孔を通して放電空間に噴射する場合、特に限定されないが、四角錐状にミストを噴射する構造を備えた噴射ノズルを用いることが好ましい。
四角錐状にミストを噴射する構造を備えた噴射ノズルとしては、例えば、市販のいけうち社の商品名充角錐ノズルSSXPが使用できる。
【0016】
噴射ノズルから噴射されるミストの水滴の大きさは、特に限定されないが、1500μm以下(好ましくは10μm以上1500μm以下)が好ましい。
【0017】
また、本発明の水処理装置は、処理槽の下部に放電空間内を通り処理された処理済み水を受ける受槽を備えているとともに、受槽内に空気を供給する空気供給手段を備えていることが好ましい。
空気供給手段としては、特に限定されないが、できるだけ細かい気泡にして受槽内に供給することが好ましい。
細かい気泡にする方法としては、特に限定されないが、ABS樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂やセラミック等を焼結した微細気泡を発生する硬質多孔体を備える散気装置、超高速旋回せん断方式、ベンチュリー減圧発泡方式、高速攪拌方式、受槽内に配管した空気供給管の先端にマイクロバブル化ノズル(例えば、商品名ナノプラネット社M2型マイクロバブル発生装置)を設ける方法などが挙げられる。
【0018】
また、受槽は、受槽に受けられた処理済み水がオーバーフローすることにより処理済み水を処理槽外に流出させる処理済み水流出経路を備えるとともに、処理済み水流出経路の入口が受槽の底近傍に設けられていることが好ましい。
処理済み水流出経路は、受槽の底側の一部を除き受槽内部を仕切る邪魔板によって形成されていることが好ましい。
【0019】
本発明の水処理装置において、処理対象物質としては、特に限定されず、各種有機物や細菌等の微生物が挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる水処理装置は、以上のように、処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極の給電部が前記円筒状電極の端部より外側に設けられているとともに、前記線状電極の断線時における線状電極のたるみあるいは傾きによる円筒状電極へ接触を防止する絶縁材料からなる短絡防止手段を前記線状電極の給電部と円筒状電極の端面との間に備えているので、線状電極に断線が発生しても、断線した線状電極が円筒状電極に接触することがない。
したがって、線状電極が断線していない他の電極対においては、安定して線状電極に高電圧を印加し続けることができ、処理能力の低下を最小限に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる水処理装置の第1の実施の形態の正面図である。
【図2】図1の水処理装置の平面図である。
【図3】図1のX−X線断面図である。
【図4】図1の水処理装置における電極ユニットの装着状態を説明する処理槽内を断面でみてあらわす図である。
【図5】図3のY−Y線断面図である。
【図6】図1の水処理装置の着脱口の開口した状態の要部斜視図である。
【図7】図1の水処理装置の電極ユニットの正面図である。
【図8】図7の電極ユニットの円筒状電極ブロックの正面図である。
【図9】図8の円筒状電極ブロックの円筒状電極固定板の平面図である。
【図10】図8の円筒状電極ブロックの円筒状電極と円筒状電極固定板との固定状態を説明する要部断面図である。
【図11】図7の電極ユニットの線状電極固定板の平面図である。
【図12】図7の電極ユニットの短絡防止手段の斜視図である。
【図13】図7の電極ユニットの上部電極サポートへの固定状態を説明する断面図である。
【図14】図7の電極ユニットの下部電極サポートへの固定状態を説明する断面図である。
【図15】図1の水処理装置の高電圧パルス発生装置の配線図である。
【図16】他の短絡防止手段を用いた電極ユニットの他の例をあらわす正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図5は、本発明にかかる水処理装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0023】
図1〜図5に示すように、この水処理装置1は、処理槽2と、4つの電極ユニット3と、被処理水供給手段4と、制御ボックス5と、空気供給手段6と、高電圧パルス発生装置10と、を備えている。
処理槽2は、図3及び図4に示すように、処理部2aと、受槽2bとを備え、金網入りの繊維強化樹脂(FRP)で形成されている。
【0024】
処理部2aは、略四角筒状をした本体筒部21と、この本体筒部21の上部開口を閉じる天板部22とから構成されている。
天板部22は、高圧ケーブル導入管22aと、接続管22bと、2つの通気管22cと、高圧ケーブル保護管22dを上面から突出するように備えている。
【0025】
高圧ケーブル導入管22aは、天板部22の中央に設けられ、碍子等の絶縁体で形成されていて、内部に後述する高圧ケーブル28aが挿通されるようになっている。
接続管22bは、天板部22の高圧ケーブル導入管22aを避けた位置に設けられ、後述する被処理水供給手段4の外部配管41と内部配管42との間に介在し、外部配管41と内部配管42とを接続するようになっている。
【0026】
2つの通気管22cは、天板部22の高圧ケーブル導入管22a及び接続管22bを避けた位置で高圧ケーブル導入管22aを中心にして対称位置に設けられ、処理槽2内の雰囲気を処理槽2外と連通させるようになっている。
高圧ケーブル保護管22dは、例えば、亜鉛メッキ鋼板をダクト形状に加工することによって得られ、高圧ケーブル導入管22aと、後述する高圧ケーブル28aを覆うように設けられている。
【0027】
本体筒部21は、図1,図3〜図6に示すように、着脱口23を四方の壁にそれぞれ備えている。
着脱口23は、その入口側に周囲に張り出すフランジ23aを備えていて、蓋24によって開閉自在になっており、蓋24を取り除き開放状態にすることによって、後述する電極ユニット3を取り付け及び取り外しを行えるようになっている。
蓋24は、略コの字形をした2つの把手24aを備え、周縁部がシールパッキン(図示せず)を介してボルト24bによってフランジ23aに固定されることによって着脱口23を水密に封止するようになっている。また、ボルト24bを緩めて取り外すことによって着脱口23を開放できるようになっている。
【0028】
また、本体筒部21内の4隅には、図3〜図6に示すように、着脱口23の上端より少し下方に上部電極サポート25aが設けられ、着脱口23の下端より少し上方に下部電極サポート25bが設けられている。
上部電極サポート25aは、図5に示すように平面視略L字形をしていて、図3、図6に示すように、L字の両辺の着脱口23を臨む位置に、それぞれ、着脱口23側で開口する切欠251が穿設されている。
【0029】
切欠251は、ボルト37より少し幅広で、ナット36,39の外径より狭い幅に形成されている。
切欠251は、本体筒部21の隣接する上部電極サポート25aの切欠251との間隔が、後述する電極ユニット3の2本のボルト37間の間隔と同じになるように設けられている。
【0030】
上部電極サポート25aの下面は、本体筒部21の内壁面に固定した側面視三角形をした補強リブ252によって下方から支持されている。
下部電極サポート25bは、上部電極サポート25aを下方に平行移動させた形状になっている。
【0031】
受槽2bは、処理部2aで処理された側壁部の1つの側壁面にオーバーフロー管27が取り付けられているとともに、このオーバーフロー管27が設けられた側壁面に沿って邪魔板(バッフル)20が設けられている。
邪魔板20は、その上端側がオーバーフロー管27の上端と略同じか少し高くなっていて、処理槽2の底板部との間に隙間20aが設けられている。
すなわち、受槽2bは、処理部2aで処理された処理済み水W2が邪魔板20の下端に設けられた隙間20aを通り、処理済み水流出経路となる邪魔板20とオーバーフロー管27が設けられた側壁面との間を通り、オーバーフロー管27から外部に排出されるようになっている。
【0032】
電極ユニット3は、図7に示すように、円筒状電極ブロック3aと、10本の線状電極31と、長方形をした2枚の線状電極固定板32と、4つの絶縁碍子33と、短絡防止手段30とを備えている。
円筒状電極ブロック3aは、図8に示すように、10本の円筒状電極34と、2枚の円筒状電極固定板35とを備えている。
【0033】
各円筒状電極34は、例えば、線径1.1mmのステンレス鋼線を用いた2.5メッシュ、開口率79.5%のステンレス鋼製網を円筒状に加工することによって得られ、内径が40mmになっているとともに、その円筒部分の中心軸方向の長さが500mmとなっている。
円筒状電極固定板35は、例えば、ステンレス板を加工することによって得られ、図9に示すように、上記円筒状電極34の外径と略同じか少し大きい外径をした円形の円筒状電極装着孔35aが、例えば50mmピッチで総計10個穿設されていて、両端に絶縁碍子33のボルト37bが挿通されるボルト挿通孔35bが穿設されている。
【0034】
そして、円筒状電極ブロック3aは、図10に示すように、各円筒状電極34が、その両端部を2つの円筒状電極固定板35の対応する円筒状電極装着孔35aに挿入されたのち、端縁部が外側に折り曲げられ、折り曲げ部分が円筒状電極固定板35の円筒状電極装着孔35aの周縁に接することにより電気的に導通状態で固定一体化されて形成されている。
【0035】
線状電極固定板32は、例えば、ステンレス板を加工することによって得られ、図11に示すように、円筒状電極固定板35と同じ大きさをしていて、線状電極固定板32の各円筒状電極34の中心軸に対応する位置には、例えば、直径2mmの線状電極挿通孔32aが穿設され、両端部に円筒状電極固定板35と同様に絶縁碍子33のボルト37aが挿通されるボルト挿通孔32bが穿設されている。
【0036】
短絡防止手段30Aは、一般に使用されている磁器などのセラミック材料で形成されていて、固定板部301と、10本の筒部302とを備えている。
固定板部301は、線状電極固定板32と同じ大きさの平面視長方形をしていて、両端部にそれぞれ絶縁碍子33のボルト37bが挿通されるボルト挿通孔301aが穿設されている。
【0037】
10本の筒部302は、線状電極挿通孔32aと同じピッチで固定板部301の一方の面に対して垂直に設けられている。
また、各筒部302は、中心軸に沿って、固定板部301の他面まで貫通する貫通孔302aが穿設されている。
貫通孔302aは、線状電極31の線径+0.2mm以上の内径を備えている。
【0038】
絶縁碍子33は、両端から突出するようにボルト37a,37bを一体に備えている。ボルト37aとボルト37bとは、図12,13に示すように、絶縁碍子33の内部で絶縁状態になっているとともに、円筒状電極固定板35の固定側のボルト37bが、線状電極固定板32の固定側のボルト37aに比べて、絶縁碍子33の端面から少し長く突出している。
【0039】
線状電極31は、例えば、チタン製で直径が1mm、その長さが、両線状電極固定板32間に距離より少し長く(例えば、750mm)なっているとともに、その外周面にねじ(図示せず)が設けられている。
【0040】
そして、電極ユニット3Aは、例えば、以下のようにして組み立てられる。
(1)図7に示すように、ボルト挿通孔301aと、ボルト挿通孔35bとを一致させた状態で円筒状電極固定板35と短絡防止手段30Aの固定板部301とを重ね合わせ、固定板部301側からボルト37bをボルト挿通孔301a及びボルト挿通孔35bに絶縁碍子33の端面が固定板部301に当接するまで挿通したのち、ナット36を締めこむことによって円筒状電極固定板35及び短絡防止手段30と、絶縁碍子33とを固定する。
(2)ボルト37bに、ナット36との間で上部電極サポート25aあるいは下部電極サポート25bを挟着するためのナット39を螺合する。
(3)線状電極31を、一方の短絡防止手段30Aの貫通孔302aから円筒状電極34を通って、他方の短絡防止手段30Aの貫通孔302aに向かって挿通し、両端が両側の短絡防止手段30Aの貫通孔302aから突出するように挿通する。
(4)線状電極31の両側の突出部にナット38aをほぼ短絡防止手段30Aに接する状態になるまで1つずつ螺合させて、線状電極31が抜け落ちないようにする。
(5)線状電極固定板32を、絶縁碍子33のボルト37aが両側のボルト挿通孔32aに挿通され、線状電極31の端部が線状電極挿通孔32bに挿通された状態にしたのち、ボルト37aにナット36を螺合させて絶縁碍子33に固定する。
(6)線状電極31の両端にナット38bを螺合し、ナット38aと、ナット38bとによって線状電極固定板32を挟み込み、線状電極31の両端部をそれぞれ線状電極固定板32に固定するとともに、線状電極31と線状電極固定板32とを導通状態にする。
【0041】
このように組み立てられた電極ユニット3Aは、図7に示すように、ナット39を緩めて、ナット36との間に上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bの厚み分以上の隙間を形成した状態で、図6に示すように、蓋24を取り除き、着脱口23を開放状態として、この着脱口23から処理部2a内に挿入され、ボルト37のナット39とナット36との間の部分が上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bの切欠251に入り込むようにスライドさせたのち、図12あるいは図13に示すように、ナット39を、ナット36側に締め込んで、ナット39とナット36との間で切欠251の側縁部を挟み込むことで上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bに固定されるようになっている。
【0042】
被処理水供給手段4は、図1及び図2に示すように、被処理水供給配管4aと、被処理水供給ポンプ4bと、を備えている。
被処理水供給配管4aは、図3及び図4に示すように、外部配管41と、内部配管42とを備えている。
【0043】
外部配管41は、一端が処理槽2の接続管22bに接続され、図1及び図2に示すように、中間部に被処理水供給ポンプ4bが配設され、図示していないが、他端が被処理水タンクに接続されている。
内部配管42は、一端が処理槽2内で接続管22bに接続されるとともに、図3及び図4に示すように、一旦垂下され、後述するブスバー28bより下方で処理部2aの中心方向に折れ曲がり、処理部2aの中心で再び垂下されたのち、処理部2aにセットされた各電極ユニット3A方向にそれぞれ向かうように4つの分岐管42aに分岐されている。
【0044】
各分岐管42aの先端には、噴射ノズル42bが設けられている。
噴射ノズル42bは、被処理水W1を円筒状電極34の網目の大きさより小さなミスト状にして四角錐状に噴射し、電極ユニット3Aに達したときに、ミストの上下方向の広がり幅が略円筒状電極34の中心軸方向の長さと略一致し、幅方向の広がり幅が、電極ユニット3Aの両端に配置された円筒状電極34間に距離と略同じなるように設けられている。
【0045】
高電圧パルス発生装置10は、図14に示すように、高圧直流電源101、コンデンサ102、抵抗103、トリガトロンギャップスイッチ104、パルストランス105およびトリガ回路106を備えている。
【0046】
そして、高電圧パルス発生装置10は、以下のように動作する。
すなわち、高圧直流電源101からの電流が抵抗103を介してコンデンサ102に供給され、コンデンサ102が充電される。目標電圧までコンデンサ102が充電された後、トリガ回路106からの高電圧のトリガパルスによりトリガトロンギャップスイッチ104がオン状態になる。このとき、コンデンサ102に充電された電荷がパルストランス105の1次側に流れ込み、相互インダクタンスにより2次側にパルス状の誘起電圧が発生する。
【0047】
このようにしてパルストランス105の2次側に生じた高電圧パルスは、線状電極31と円筒状電極34との間に印加される。
すなわち、端子107が、高圧ケーブル28aの一端に接続されるとともに、後述するように、高圧ケーブル28a、ブスバー28b、線状電極固定板32を介して線状電極31に導通状態にされる。また、端子108が、高圧ケーブル保護管22dの一端に接続されるとともに、後述するように、高圧ケーブル保護管22d、アース線29、円筒状電極固定板35を介して円筒状電極34と導通状態にされる。
【0048】
端子107、108間に出力されるパルスの繰り返し数は、トリガ回路106におけるトリガパルスの出力頻度を変えることによって制御される。また出力パルスの電圧は、高圧直流電源101の出力電圧を切り替えることによって制御される。
【0049】
高圧ケーブル28aは、高圧パルス発生回路10の端子107に一端が接続され、他端部が高圧ケーブル導入管22aを介して処理部2a内に挿入され、ブスバー28bに接続されている。
【0050】
ブスバー28bは、図5に示すように、ステンレス鋼からなる平面視十字状をしていて、図示していないが、十字の中央部に高圧ケーブル28aの他端が溶接やボルト止めによって導通状態で接続されている。
そして、ブスバー28bは、図3及び図4に示すように、十字の各先端部が装着位置に装着されたいずれかの電極ユニット3Aの線状電極固定板32にボルト・ナット(図示せず)によって固定されて各線状電極31に導通状態とされるようになっている。
【0051】
アース線29は、図3に示すように、一端が高圧ケーブル保護管22dに接続され、他端が、各電極ユニット3Aが上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bによって支持固定された状態で、各電極ユニット3Aの上側の円筒状電極固定板35に、ボルト・ナットによって導通状態で固定されるようになっている。
【0052】
空気供給手段6は、図1〜図4に示すように、空気供給ポンプ6aと、空気供給管6bとを備えている。
空気供給ポンプ6aは、処理槽2に隣接して設けられ、大気を吸気して空気供給管6bに空気を供給するようになっている。
空気供給管6bは、受槽2bの壁面を貫通して受槽2b内に臨み、受槽2b内で分岐し、各分岐管61の先端に、散気装置(例えば、ダイセン・メンブレン・システムズ社製商品名パールコン)62が装着されている。
すなわち、空気供給手段6は、大気中の空気を吸気して受槽2b内に送り込み、散気装置62から受槽2b内に溜められた処理済み水に供給するようになっている。
【0053】
制御ボックス5は、図示していないが、被処理水供給手段4及び空気供給手段6の制御
回路が内蔵されている。
【0054】
この水処理装置1は、例えば、以下のようにして被処理水W1を処理するようになっている。
まず、蓋24を開放して各電極ユニット3Aを上述のようにしてその装着位置にセットする。
【0055】
そして、ブスバー28bを各電極ユニット3Aの上側の線状電極固定板32に接続するとともに、4つのアース線29を各電極ユニット3Aの上側の円筒状電極固定板35に接続する。
つぎに、蓋24を閉じたのち、高電圧パルス発生装置10を作動させ、各線状電極31と円筒状電極34との間に高圧パルス電圧を印加してストリーマ放電を発生させる。
【0056】
ストリーマ放電が発生しだした段階で、被処理水供給手段4を作動させて被処理水を噴射ノズル42bからミスト状にして各電極ユニット3A方向に噴霧させて、被処理水を円筒状電極34の網目を介してストリーマ放電空間内に供給する。
すなわち、上記のようにして、ストリーマ放電空間内に供給されたミスト状の被処理水は、ストリーマ放電空間内で発生するオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種と接触する。そして、これらの活性種によって被処理水中の有機物等が上記活性種によって分解処理される。
【0057】
分解処理された処理済み水W2は、受槽2bに受けられたのち、オーバーフロー管27を介して処理槽2外に流出し、例えば、そのまま放流あるいは洗浄水として再利用される。
また、受槽2b内の処理済み水W2には、空気供給手段6によって空気が供給される。
【0058】
一方、線状電極31及び円筒状電極34の交換の必要がある場合には、被処理水供給手段4、高電圧パルス発生装置10、及び、空気供給手段6を停止した状態で、蓋24を開放し、交換の必要な線状電極31及び円筒状電極34の電極ユニット3Aと、ブスバー28b及びアース線29との接続を解除するとともに、電極ユニット3Aの上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bとの接続を解除する。
そして、電極ユニット3Aを着脱口23から取り出し、交換が必要な線状電極31あるいは円筒状電極34を交換したのち、電極ユニット3Aを再び上記のようにして固定するとともに、ブスバー28b及びアース線29と接続する。または、電極ユニット3Aごと交換しても構わない。
【0059】
この水処理装置1は、以上のように、線状電極31と円筒状電極34との間でストリーマ放電させるようになっているので、線状電極31と円筒状電極34と間にオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種が効率よく発生する。そして、これら活性種が発生したストリーマ放電空間内に被処理水をミスト状にして供給するようにしたので、活性種と被処理水との接触面積が大きくなり、活性種が被処理水中で処理対象物質を攻撃するまでに減衰せず、効率よく処理対象物質を分解処理できる。したがって、少ない電力によって短時間で分解処理を行うことができる。
【0060】
しかも、短絡防止手段30Aを備えているので、線状電極31に断線が発生しても、断線した線状電極31が円筒状電極34の内壁面に接触して短絡することがない。したがって、断線していない線状電極31によって処理を続けることができる。
【0061】
また、この水処理装置1は、10対の線状電極31と円筒状電極34とを有する4つの電極ユニット3Aを備え、この電極ユニット3Aを着脱口23から簡単に着脱できる。したがって、メンテナンスが容易である。
【0062】
さらに、被処理水供給手段4の噴射ノズル42bが処理槽2の中央部に設けられているので、噴射ノズル42bの本数を少なくすることができ、被処理水の供給配管がコンパクトになり、装置全体を小型化できる。
また、噴射ノズル42bが、被処理水W1を円筒状電極34の網目の大きさより小さなミスト状にして四角錐状に噴射し、電極ユニット3Aに達したときに、ミストの上下方向の広がり幅が略円筒状電極34の中心軸方向の長さと略一致し、幅方向の広がり幅が、電極ユニット3Aの両端に配置された円筒状電極間に距離と略同じなるので、被処理水W1が効率よくストリーマ放電空間内に供給され、処理効率を高いものとすることができる。
【0063】
この水処理装置1は、空気供給手段6を備え、受槽2b内の処理済み水W2に空気を供給するようにしたので、処理対象物質の酸化により消費された酸素を処理部2a内に新たに供給することができ、さらに処理済み水W2を通して空気を供給することで、湿度の高い空気を処理部2a内に供給することができる。したがって、酸化力の高いOHラジカルをより多く発生させることができる。したがって、処理効率がさらによくなる。
また、受槽2bが邪魔板20によって空気供給手段6による空気のバブリング部と、オーバーフロー管27の部分とを分離されているので、バブリングによって処理済み水W2に溶け込んだ空気が処理済み水W2とともにオーバーフローすることがない。したがって、空気をより有効に利用できる。
さらに、処理済み水W2は、処理部2aで発生したオゾン等の寿命の長い活性種を含んでいるので、受槽2bに邪魔板20を設け、十分な時間滞留させることによりさらに分解処理をすすめることができる。
【0064】
図16は、本発明にかかる水処理装置の電極ユニットの第2の実施の形態をあらわしている。
図16に示すように、この水処理装置の電極ユニット3Bは、短絡防止手段30Bが、上記筒部302を持たない以外は上記短絡防止手段30Aと同様の平面視長方形をしている防止手段本体303と、たるみ防止用ナット304とから構成されている以外は、上記電極ユニット3Aと同様になっている。
【0065】
すなわち、この電極ユニット3Bは、以下のようにして組み立てられる。
まず、防止手段本体303を円筒状電極ブロック3aと共に上記短絡防止手段30Aと同様にして絶縁碍子33に固定し、線状電極31の両端部がそれぞれ両側の防止手段本体303から突出するようにセットしたのち、たるみ防止用ナット304及びナット38aを線状電極31に螺合する。その後、線状電極固定板32を上記電極ユニット3Aと同様に絶縁碍子33に固定する。そして、ゆるみ防止用ナット304を防止手段本体303に略あたるまで防止手段本体303方向にねじ込むとともに、ナット38bを線状電極31に螺合させて、上記電極ユニット3Aと同様にナット38aとナット38bとによって線状電極固定板32を挟み込む。
【0066】
この電極ユニット3Bの構成によれば、短絡防止手段30B断線するたるみで抜け落ちたりする線径の細い線状電極31を用いたとしても、たるみ防止用ナット304が断線した線状電極31のたるみによる抜け落ちを防止して、結果として短絡を防止することができる。
【0067】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、円筒状電極固定板側に短絡防止手段が固定されていたが、線状電極固定板側に固定されていても構わない。
上記の実施の形態では、10対の電極対からなる電極ユニットを備えていたが、電極対を1対ずつカートリッジ化しても構わない。
【0068】
上記の実施の形態では、受槽の処理済み水をオーバーフロー管からオーバーフローさせそのまま放流するようになっていたが、オーバーフローした処理済み水を被処理水タンクに戻し、所定時間循環させて、所定時間経過後、循環水を全て放流する方式としても構わない。
上記の実施の形態では、処理槽外の空気を受槽内に供給するようにしていたが、噴霧された被処理水が吸い込まれない位置で、処理部内の雰囲気を吸引して受槽内に供給するようにしても構わない。すなわち、オゾンは、他の活性種に比べて寿命が長いため、処理部内には、分解処理に消費されず、余剰に処理槽内に存在する場合がある。したがって、この余剰のオゾンを吸引して受槽に供給すれば、酸化力の強いオゾンによって処理済み水中に残存する処理対処物質を効率よく酸化分解処理できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の水処理装置は、特に限定されないが、例えば、有機物を含む排水の浄化、汚染水の殺菌などに用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 水処理装置
2 処理槽
2a 処理部
2b 受槽
23 着脱口
24 蓋
25a 上部電極サポート
25b 下部電極サポート
27 オーバーフロー管
20 邪魔板
20a 隙間
200 曲がり管(処理済み水流出経路)
3A,3B 電極ユニット
30A,30B 短絡防止手段
31 線状電極
34 円筒状電極
4 被処理水供給手段
42b 噴射ノズル
6 空気供給手段
10 高電圧パルス発生装置
W1 被処理水
W2 処理済み水
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、下水、排水等に含有される有機物、無機物、微生物を放電により発生するラジカル、オゾン等の活性種により分解処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上水、下水、産業排水、プールなどの分野で、水中の有機物の酸化分解、殺菌、脱臭等の処理のためにオゾンが用いられている(特許文献1参照)。
しかしながら、オゾンは酸化力が弱く、親水化、低分子化はできても無機化することはできない。また、ダイオキシン等の難分解性有機物は分解できない。
【0003】
そこで、処理能力を向上させるために、放電によりオゾンを発生させるとともに、オゾンより酸化力が強いOHラジカルやOラジカル等を発生させ、このオゾン及びラジカルを含む放電空間に被処理水を曝すことによって、オゾンだけでなく、ラジカルによっても酸化処理するようにした水処理装置が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、ラジカルは寿命が短く、消滅しやすく、そのため効率が悪く、上記のような先に提案された水処理装置ではラジカルによる酸化作用を十分に発揮させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−267096号公報
【特許文献2】特開2000−279977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の発明者は、処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置を既に提案している(特願2008-289467号)。
しかし、この水処理装置は、効率よく処理対象物質を分解処理できるようになったのであるが、つぎのような問題を備えている。
【0006】
すなわち、上記水処理装置では、線状電極は、円筒状電極の円筒内を臨むように配置され、円筒状電極の外側に出た部分に高圧パルス電圧を給電するようになっているが、この給電部分で接触不良等が原因と考えられる線状電極の断線が発生することがある。
そして、このように断線した線状電極は、折れ曲がったり、たおれたり、たるんだりして、円筒状電極に接触し、線状電極と円筒状電極が短絡してしまう。
このような短絡が生じると、線状電極と円筒状電極とからなる複数の電極対を備えた水処理装置においては、短絡が生じた電極対だけではなく、線状電極が断線していない他の電極対においても線状電極に高電圧を印加できなくなり、処理能力を全く発揮させることができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、線状電極に断線が発生しても、断線した線状電極が円筒状電極に接触して短絡したりするおそれが少ない水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる水処理装置は、処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極の給電部が前記円筒状電極の端部より外側に設けられているとともに、前記線状電極の断線時における線状電極のたるみあるいは傾きによる円筒状電極へ接触を防止する絶縁材料からなる短絡防止手段を前記線状電極の給電部と円筒状電極の端面との間に備えていることを特徴としている。
【0009】
円筒状電極の材質は、導電性があり耐食性に優れたものであれば、特に限定されないが、ステンレス鋼が好適である。
また、円筒状電極は、特に限定されないが、噴射ノズルから噴射されたミストが円筒状電極と線状電極との間の放電空間内に円筒状電極の壁面を通して供給できるように、円筒状電極を多数の透孔を備えたパンチングメタル様の板材あるいは網状材を円筒状に加工することで得られる。
なお、円筒状電極を網目あるいは透孔を備えたものとした場合、網目部分や透孔部分の開口率は、円筒の外周面の見かけ表面積(円筒の外周面が平滑面としたときの表面積)の50%以上が好ましい。
【0010】
線状電極の形状は、例えば、表面平滑な丸棒状、撚り線状、表面にネジ状溝が設けられた棒状、表面に細かい針状体が突出するように設けられた棒状などが挙げられる。
線状電極の材質は、導電性があり耐食性に優れたものであれば、特に限定されないが、チタンやステンレス鋼が好適である。
【0011】
また、線状電極と円筒状電極とは、複数対一体化してユニット化しても構わない。
そして、このような電極ユニットは、各円筒状電極と線状電極との間に形成される放電空間内に被処理水を供給でき、かつ、その処理槽内での装着位置が周壁に沿って設けられていれば、水平方向に並べたり、上下方向に並べたり、処理槽内の壁面に沿うように並べたりすることができる。
【0012】
本発明において、短絡防止手段としては、絶縁材料かなり、断線した線状電極の折れ曲がりやたるみによる短絡を防止できれば、特に限定されないが、例えば、線状電極が貫通する貫通孔を備えたもの、線状電極の一部を把持する機構を備えたものなどが挙げられる。
上記貫通孔の口径としては、特に限定されないが、挿通性を考慮すると、線状電極の直径+0.2mm以上が好ましい。なお、上限は、線状電極に折れ曲がりやたるみによる短絡を防止できれば特に限定されない。
上記短絡防止手段に用いられる絶縁材料としては、特に限定されないが、例えば、セラミック、マイカ、石綿、ガラス繊維等の無機材料、天然ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン等の樹脂が挙げられる。
【0013】
処理槽の材質は、内面が耐食性に優れたものであれば、特に限定されないが、例えば、
ステンレス鋼や、繊維強化樹脂が挙げられ、漏電防止のため絶縁体でできているか絶縁体で覆われていることが好ましい。
また、処理槽は、メンテナンス性を考慮すれば、その周壁に処理槽内の電極ユニットの着脱口を備えていることが好ましい。また、着脱口の蓋に電極ユニットの支持固定部を設け、蓋を開けるだけで、電極ユニットが処理槽外に取り出せる構成としても構わない。
【0014】
被処理水をミスト状にして放電空間に供給するには、被処理水供給配管を処理槽内に導入し、ポンプを介して送られてくる被処理水を被処理水供給配管の端末部に設けた噴射ノズルからミスト状にして放電空間内に噴射する方法が採られるが、電極ユニットに多数の電極対が平行に並んでいるとともに、円筒状電極が網目あるいは透孔を備えたものである場合、噴射ノズルを円筒状電極の側面に直交する方向から噴射するように配置し、噴射されたミストを円筒状電極の網目あるいは透孔を通して放電空間に供給することが好ましい。
【0015】
また、このように、ミストを円筒状電極の網目あるいは透孔を通して放電空間に噴射する場合、特に限定されないが、四角錐状にミストを噴射する構造を備えた噴射ノズルを用いることが好ましい。
四角錐状にミストを噴射する構造を備えた噴射ノズルとしては、例えば、市販のいけうち社の商品名充角錐ノズルSSXPが使用できる。
【0016】
噴射ノズルから噴射されるミストの水滴の大きさは、特に限定されないが、1500μm以下(好ましくは10μm以上1500μm以下)が好ましい。
【0017】
また、本発明の水処理装置は、処理槽の下部に放電空間内を通り処理された処理済み水を受ける受槽を備えているとともに、受槽内に空気を供給する空気供給手段を備えていることが好ましい。
空気供給手段としては、特に限定されないが、できるだけ細かい気泡にして受槽内に供給することが好ましい。
細かい気泡にする方法としては、特に限定されないが、ABS樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂やセラミック等を焼結した微細気泡を発生する硬質多孔体を備える散気装置、超高速旋回せん断方式、ベンチュリー減圧発泡方式、高速攪拌方式、受槽内に配管した空気供給管の先端にマイクロバブル化ノズル(例えば、商品名ナノプラネット社M2型マイクロバブル発生装置)を設ける方法などが挙げられる。
【0018】
また、受槽は、受槽に受けられた処理済み水がオーバーフローすることにより処理済み水を処理槽外に流出させる処理済み水流出経路を備えるとともに、処理済み水流出経路の入口が受槽の底近傍に設けられていることが好ましい。
処理済み水流出経路は、受槽の底側の一部を除き受槽内部を仕切る邪魔板によって形成されていることが好ましい。
【0019】
本発明の水処理装置において、処理対象物質としては、特に限定されず、各種有機物や細菌等の微生物が挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる水処理装置は、以上のように、処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極の給電部が前記円筒状電極の端部より外側に設けられているとともに、前記線状電極の断線時における線状電極のたるみあるいは傾きによる円筒状電極へ接触を防止する絶縁材料からなる短絡防止手段を前記線状電極の給電部と円筒状電極の端面との間に備えているので、線状電極に断線が発生しても、断線した線状電極が円筒状電極に接触することがない。
したがって、線状電極が断線していない他の電極対においては、安定して線状電極に高電圧を印加し続けることができ、処理能力の低下を最小限に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる水処理装置の第1の実施の形態の正面図である。
【図2】図1の水処理装置の平面図である。
【図3】図1のX−X線断面図である。
【図4】図1の水処理装置における電極ユニットの装着状態を説明する処理槽内を断面でみてあらわす図である。
【図5】図3のY−Y線断面図である。
【図6】図1の水処理装置の着脱口の開口した状態の要部斜視図である。
【図7】図1の水処理装置の電極ユニットの正面図である。
【図8】図7の電極ユニットの円筒状電極ブロックの正面図である。
【図9】図8の円筒状電極ブロックの円筒状電極固定板の平面図である。
【図10】図8の円筒状電極ブロックの円筒状電極と円筒状電極固定板との固定状態を説明する要部断面図である。
【図11】図7の電極ユニットの線状電極固定板の平面図である。
【図12】図7の電極ユニットの短絡防止手段の斜視図である。
【図13】図7の電極ユニットの上部電極サポートへの固定状態を説明する断面図である。
【図14】図7の電極ユニットの下部電極サポートへの固定状態を説明する断面図である。
【図15】図1の水処理装置の高電圧パルス発生装置の配線図である。
【図16】他の短絡防止手段を用いた電極ユニットの他の例をあらわす正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図5は、本発明にかかる水処理装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0023】
図1〜図5に示すように、この水処理装置1は、処理槽2と、4つの電極ユニット3と、被処理水供給手段4と、制御ボックス5と、空気供給手段6と、高電圧パルス発生装置10と、を備えている。
処理槽2は、図3及び図4に示すように、処理部2aと、受槽2bとを備え、金網入りの繊維強化樹脂(FRP)で形成されている。
【0024】
処理部2aは、略四角筒状をした本体筒部21と、この本体筒部21の上部開口を閉じる天板部22とから構成されている。
天板部22は、高圧ケーブル導入管22aと、接続管22bと、2つの通気管22cと、高圧ケーブル保護管22dを上面から突出するように備えている。
【0025】
高圧ケーブル導入管22aは、天板部22の中央に設けられ、碍子等の絶縁体で形成されていて、内部に後述する高圧ケーブル28aが挿通されるようになっている。
接続管22bは、天板部22の高圧ケーブル導入管22aを避けた位置に設けられ、後述する被処理水供給手段4の外部配管41と内部配管42との間に介在し、外部配管41と内部配管42とを接続するようになっている。
【0026】
2つの通気管22cは、天板部22の高圧ケーブル導入管22a及び接続管22bを避けた位置で高圧ケーブル導入管22aを中心にして対称位置に設けられ、処理槽2内の雰囲気を処理槽2外と連通させるようになっている。
高圧ケーブル保護管22dは、例えば、亜鉛メッキ鋼板をダクト形状に加工することによって得られ、高圧ケーブル導入管22aと、後述する高圧ケーブル28aを覆うように設けられている。
【0027】
本体筒部21は、図1,図3〜図6に示すように、着脱口23を四方の壁にそれぞれ備えている。
着脱口23は、その入口側に周囲に張り出すフランジ23aを備えていて、蓋24によって開閉自在になっており、蓋24を取り除き開放状態にすることによって、後述する電極ユニット3を取り付け及び取り外しを行えるようになっている。
蓋24は、略コの字形をした2つの把手24aを備え、周縁部がシールパッキン(図示せず)を介してボルト24bによってフランジ23aに固定されることによって着脱口23を水密に封止するようになっている。また、ボルト24bを緩めて取り外すことによって着脱口23を開放できるようになっている。
【0028】
また、本体筒部21内の4隅には、図3〜図6に示すように、着脱口23の上端より少し下方に上部電極サポート25aが設けられ、着脱口23の下端より少し上方に下部電極サポート25bが設けられている。
上部電極サポート25aは、図5に示すように平面視略L字形をしていて、図3、図6に示すように、L字の両辺の着脱口23を臨む位置に、それぞれ、着脱口23側で開口する切欠251が穿設されている。
【0029】
切欠251は、ボルト37より少し幅広で、ナット36,39の外径より狭い幅に形成されている。
切欠251は、本体筒部21の隣接する上部電極サポート25aの切欠251との間隔が、後述する電極ユニット3の2本のボルト37間の間隔と同じになるように設けられている。
【0030】
上部電極サポート25aの下面は、本体筒部21の内壁面に固定した側面視三角形をした補強リブ252によって下方から支持されている。
下部電極サポート25bは、上部電極サポート25aを下方に平行移動させた形状になっている。
【0031】
受槽2bは、処理部2aで処理された側壁部の1つの側壁面にオーバーフロー管27が取り付けられているとともに、このオーバーフロー管27が設けられた側壁面に沿って邪魔板(バッフル)20が設けられている。
邪魔板20は、その上端側がオーバーフロー管27の上端と略同じか少し高くなっていて、処理槽2の底板部との間に隙間20aが設けられている。
すなわち、受槽2bは、処理部2aで処理された処理済み水W2が邪魔板20の下端に設けられた隙間20aを通り、処理済み水流出経路となる邪魔板20とオーバーフロー管27が設けられた側壁面との間を通り、オーバーフロー管27から外部に排出されるようになっている。
【0032】
電極ユニット3は、図7に示すように、円筒状電極ブロック3aと、10本の線状電極31と、長方形をした2枚の線状電極固定板32と、4つの絶縁碍子33と、短絡防止手段30とを備えている。
円筒状電極ブロック3aは、図8に示すように、10本の円筒状電極34と、2枚の円筒状電極固定板35とを備えている。
【0033】
各円筒状電極34は、例えば、線径1.1mmのステンレス鋼線を用いた2.5メッシュ、開口率79.5%のステンレス鋼製網を円筒状に加工することによって得られ、内径が40mmになっているとともに、その円筒部分の中心軸方向の長さが500mmとなっている。
円筒状電極固定板35は、例えば、ステンレス板を加工することによって得られ、図9に示すように、上記円筒状電極34の外径と略同じか少し大きい外径をした円形の円筒状電極装着孔35aが、例えば50mmピッチで総計10個穿設されていて、両端に絶縁碍子33のボルト37bが挿通されるボルト挿通孔35bが穿設されている。
【0034】
そして、円筒状電極ブロック3aは、図10に示すように、各円筒状電極34が、その両端部を2つの円筒状電極固定板35の対応する円筒状電極装着孔35aに挿入されたのち、端縁部が外側に折り曲げられ、折り曲げ部分が円筒状電極固定板35の円筒状電極装着孔35aの周縁に接することにより電気的に導通状態で固定一体化されて形成されている。
【0035】
線状電極固定板32は、例えば、ステンレス板を加工することによって得られ、図11に示すように、円筒状電極固定板35と同じ大きさをしていて、線状電極固定板32の各円筒状電極34の中心軸に対応する位置には、例えば、直径2mmの線状電極挿通孔32aが穿設され、両端部に円筒状電極固定板35と同様に絶縁碍子33のボルト37aが挿通されるボルト挿通孔32bが穿設されている。
【0036】
短絡防止手段30Aは、一般に使用されている磁器などのセラミック材料で形成されていて、固定板部301と、10本の筒部302とを備えている。
固定板部301は、線状電極固定板32と同じ大きさの平面視長方形をしていて、両端部にそれぞれ絶縁碍子33のボルト37bが挿通されるボルト挿通孔301aが穿設されている。
【0037】
10本の筒部302は、線状電極挿通孔32aと同じピッチで固定板部301の一方の面に対して垂直に設けられている。
また、各筒部302は、中心軸に沿って、固定板部301の他面まで貫通する貫通孔302aが穿設されている。
貫通孔302aは、線状電極31の線径+0.2mm以上の内径を備えている。
【0038】
絶縁碍子33は、両端から突出するようにボルト37a,37bを一体に備えている。ボルト37aとボルト37bとは、図12,13に示すように、絶縁碍子33の内部で絶縁状態になっているとともに、円筒状電極固定板35の固定側のボルト37bが、線状電極固定板32の固定側のボルト37aに比べて、絶縁碍子33の端面から少し長く突出している。
【0039】
線状電極31は、例えば、チタン製で直径が1mm、その長さが、両線状電極固定板32間に距離より少し長く(例えば、750mm)なっているとともに、その外周面にねじ(図示せず)が設けられている。
【0040】
そして、電極ユニット3Aは、例えば、以下のようにして組み立てられる。
(1)図7に示すように、ボルト挿通孔301aと、ボルト挿通孔35bとを一致させた状態で円筒状電極固定板35と短絡防止手段30Aの固定板部301とを重ね合わせ、固定板部301側からボルト37bをボルト挿通孔301a及びボルト挿通孔35bに絶縁碍子33の端面が固定板部301に当接するまで挿通したのち、ナット36を締めこむことによって円筒状電極固定板35及び短絡防止手段30と、絶縁碍子33とを固定する。
(2)ボルト37bに、ナット36との間で上部電極サポート25aあるいは下部電極サポート25bを挟着するためのナット39を螺合する。
(3)線状電極31を、一方の短絡防止手段30Aの貫通孔302aから円筒状電極34を通って、他方の短絡防止手段30Aの貫通孔302aに向かって挿通し、両端が両側の短絡防止手段30Aの貫通孔302aから突出するように挿通する。
(4)線状電極31の両側の突出部にナット38aをほぼ短絡防止手段30Aに接する状態になるまで1つずつ螺合させて、線状電極31が抜け落ちないようにする。
(5)線状電極固定板32を、絶縁碍子33のボルト37aが両側のボルト挿通孔32aに挿通され、線状電極31の端部が線状電極挿通孔32bに挿通された状態にしたのち、ボルト37aにナット36を螺合させて絶縁碍子33に固定する。
(6)線状電極31の両端にナット38bを螺合し、ナット38aと、ナット38bとによって線状電極固定板32を挟み込み、線状電極31の両端部をそれぞれ線状電極固定板32に固定するとともに、線状電極31と線状電極固定板32とを導通状態にする。
【0041】
このように組み立てられた電極ユニット3Aは、図7に示すように、ナット39を緩めて、ナット36との間に上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bの厚み分以上の隙間を形成した状態で、図6に示すように、蓋24を取り除き、着脱口23を開放状態として、この着脱口23から処理部2a内に挿入され、ボルト37のナット39とナット36との間の部分が上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bの切欠251に入り込むようにスライドさせたのち、図12あるいは図13に示すように、ナット39を、ナット36側に締め込んで、ナット39とナット36との間で切欠251の側縁部を挟み込むことで上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bに固定されるようになっている。
【0042】
被処理水供給手段4は、図1及び図2に示すように、被処理水供給配管4aと、被処理水供給ポンプ4bと、を備えている。
被処理水供給配管4aは、図3及び図4に示すように、外部配管41と、内部配管42とを備えている。
【0043】
外部配管41は、一端が処理槽2の接続管22bに接続され、図1及び図2に示すように、中間部に被処理水供給ポンプ4bが配設され、図示していないが、他端が被処理水タンクに接続されている。
内部配管42は、一端が処理槽2内で接続管22bに接続されるとともに、図3及び図4に示すように、一旦垂下され、後述するブスバー28bより下方で処理部2aの中心方向に折れ曲がり、処理部2aの中心で再び垂下されたのち、処理部2aにセットされた各電極ユニット3A方向にそれぞれ向かうように4つの分岐管42aに分岐されている。
【0044】
各分岐管42aの先端には、噴射ノズル42bが設けられている。
噴射ノズル42bは、被処理水W1を円筒状電極34の網目の大きさより小さなミスト状にして四角錐状に噴射し、電極ユニット3Aに達したときに、ミストの上下方向の広がり幅が略円筒状電極34の中心軸方向の長さと略一致し、幅方向の広がり幅が、電極ユニット3Aの両端に配置された円筒状電極34間に距離と略同じなるように設けられている。
【0045】
高電圧パルス発生装置10は、図14に示すように、高圧直流電源101、コンデンサ102、抵抗103、トリガトロンギャップスイッチ104、パルストランス105およびトリガ回路106を備えている。
【0046】
そして、高電圧パルス発生装置10は、以下のように動作する。
すなわち、高圧直流電源101からの電流が抵抗103を介してコンデンサ102に供給され、コンデンサ102が充電される。目標電圧までコンデンサ102が充電された後、トリガ回路106からの高電圧のトリガパルスによりトリガトロンギャップスイッチ104がオン状態になる。このとき、コンデンサ102に充電された電荷がパルストランス105の1次側に流れ込み、相互インダクタンスにより2次側にパルス状の誘起電圧が発生する。
【0047】
このようにしてパルストランス105の2次側に生じた高電圧パルスは、線状電極31と円筒状電極34との間に印加される。
すなわち、端子107が、高圧ケーブル28aの一端に接続されるとともに、後述するように、高圧ケーブル28a、ブスバー28b、線状電極固定板32を介して線状電極31に導通状態にされる。また、端子108が、高圧ケーブル保護管22dの一端に接続されるとともに、後述するように、高圧ケーブル保護管22d、アース線29、円筒状電極固定板35を介して円筒状電極34と導通状態にされる。
【0048】
端子107、108間に出力されるパルスの繰り返し数は、トリガ回路106におけるトリガパルスの出力頻度を変えることによって制御される。また出力パルスの電圧は、高圧直流電源101の出力電圧を切り替えることによって制御される。
【0049】
高圧ケーブル28aは、高圧パルス発生回路10の端子107に一端が接続され、他端部が高圧ケーブル導入管22aを介して処理部2a内に挿入され、ブスバー28bに接続されている。
【0050】
ブスバー28bは、図5に示すように、ステンレス鋼からなる平面視十字状をしていて、図示していないが、十字の中央部に高圧ケーブル28aの他端が溶接やボルト止めによって導通状態で接続されている。
そして、ブスバー28bは、図3及び図4に示すように、十字の各先端部が装着位置に装着されたいずれかの電極ユニット3Aの線状電極固定板32にボルト・ナット(図示せず)によって固定されて各線状電極31に導通状態とされるようになっている。
【0051】
アース線29は、図3に示すように、一端が高圧ケーブル保護管22dに接続され、他端が、各電極ユニット3Aが上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bによって支持固定された状態で、各電極ユニット3Aの上側の円筒状電極固定板35に、ボルト・ナットによって導通状態で固定されるようになっている。
【0052】
空気供給手段6は、図1〜図4に示すように、空気供給ポンプ6aと、空気供給管6bとを備えている。
空気供給ポンプ6aは、処理槽2に隣接して設けられ、大気を吸気して空気供給管6bに空気を供給するようになっている。
空気供給管6bは、受槽2bの壁面を貫通して受槽2b内に臨み、受槽2b内で分岐し、各分岐管61の先端に、散気装置(例えば、ダイセン・メンブレン・システムズ社製商品名パールコン)62が装着されている。
すなわち、空気供給手段6は、大気中の空気を吸気して受槽2b内に送り込み、散気装置62から受槽2b内に溜められた処理済み水に供給するようになっている。
【0053】
制御ボックス5は、図示していないが、被処理水供給手段4及び空気供給手段6の制御
回路が内蔵されている。
【0054】
この水処理装置1は、例えば、以下のようにして被処理水W1を処理するようになっている。
まず、蓋24を開放して各電極ユニット3Aを上述のようにしてその装着位置にセットする。
【0055】
そして、ブスバー28bを各電極ユニット3Aの上側の線状電極固定板32に接続するとともに、4つのアース線29を各電極ユニット3Aの上側の円筒状電極固定板35に接続する。
つぎに、蓋24を閉じたのち、高電圧パルス発生装置10を作動させ、各線状電極31と円筒状電極34との間に高圧パルス電圧を印加してストリーマ放電を発生させる。
【0056】
ストリーマ放電が発生しだした段階で、被処理水供給手段4を作動させて被処理水を噴射ノズル42bからミスト状にして各電極ユニット3A方向に噴霧させて、被処理水を円筒状電極34の網目を介してストリーマ放電空間内に供給する。
すなわち、上記のようにして、ストリーマ放電空間内に供給されたミスト状の被処理水は、ストリーマ放電空間内で発生するオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種と接触する。そして、これらの活性種によって被処理水中の有機物等が上記活性種によって分解処理される。
【0057】
分解処理された処理済み水W2は、受槽2bに受けられたのち、オーバーフロー管27を介して処理槽2外に流出し、例えば、そのまま放流あるいは洗浄水として再利用される。
また、受槽2b内の処理済み水W2には、空気供給手段6によって空気が供給される。
【0058】
一方、線状電極31及び円筒状電極34の交換の必要がある場合には、被処理水供給手段4、高電圧パルス発生装置10、及び、空気供給手段6を停止した状態で、蓋24を開放し、交換の必要な線状電極31及び円筒状電極34の電極ユニット3Aと、ブスバー28b及びアース線29との接続を解除するとともに、電極ユニット3Aの上部電極サポート25a及び下部電極サポート25bとの接続を解除する。
そして、電極ユニット3Aを着脱口23から取り出し、交換が必要な線状電極31あるいは円筒状電極34を交換したのち、電極ユニット3Aを再び上記のようにして固定するとともに、ブスバー28b及びアース線29と接続する。または、電極ユニット3Aごと交換しても構わない。
【0059】
この水処理装置1は、以上のように、線状電極31と円筒状電極34との間でストリーマ放電させるようになっているので、線状電極31と円筒状電極34と間にオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種が効率よく発生する。そして、これら活性種が発生したストリーマ放電空間内に被処理水をミスト状にして供給するようにしたので、活性種と被処理水との接触面積が大きくなり、活性種が被処理水中で処理対象物質を攻撃するまでに減衰せず、効率よく処理対象物質を分解処理できる。したがって、少ない電力によって短時間で分解処理を行うことができる。
【0060】
しかも、短絡防止手段30Aを備えているので、線状電極31に断線が発生しても、断線した線状電極31が円筒状電極34の内壁面に接触して短絡することがない。したがって、断線していない線状電極31によって処理を続けることができる。
【0061】
また、この水処理装置1は、10対の線状電極31と円筒状電極34とを有する4つの電極ユニット3Aを備え、この電極ユニット3Aを着脱口23から簡単に着脱できる。したがって、メンテナンスが容易である。
【0062】
さらに、被処理水供給手段4の噴射ノズル42bが処理槽2の中央部に設けられているので、噴射ノズル42bの本数を少なくすることができ、被処理水の供給配管がコンパクトになり、装置全体を小型化できる。
また、噴射ノズル42bが、被処理水W1を円筒状電極34の網目の大きさより小さなミスト状にして四角錐状に噴射し、電極ユニット3Aに達したときに、ミストの上下方向の広がり幅が略円筒状電極34の中心軸方向の長さと略一致し、幅方向の広がり幅が、電極ユニット3Aの両端に配置された円筒状電極間に距離と略同じなるので、被処理水W1が効率よくストリーマ放電空間内に供給され、処理効率を高いものとすることができる。
【0063】
この水処理装置1は、空気供給手段6を備え、受槽2b内の処理済み水W2に空気を供給するようにしたので、処理対象物質の酸化により消費された酸素を処理部2a内に新たに供給することができ、さらに処理済み水W2を通して空気を供給することで、湿度の高い空気を処理部2a内に供給することができる。したがって、酸化力の高いOHラジカルをより多く発生させることができる。したがって、処理効率がさらによくなる。
また、受槽2bが邪魔板20によって空気供給手段6による空気のバブリング部と、オーバーフロー管27の部分とを分離されているので、バブリングによって処理済み水W2に溶け込んだ空気が処理済み水W2とともにオーバーフローすることがない。したがって、空気をより有効に利用できる。
さらに、処理済み水W2は、処理部2aで発生したオゾン等の寿命の長い活性種を含んでいるので、受槽2bに邪魔板20を設け、十分な時間滞留させることによりさらに分解処理をすすめることができる。
【0064】
図16は、本発明にかかる水処理装置の電極ユニットの第2の実施の形態をあらわしている。
図16に示すように、この水処理装置の電極ユニット3Bは、短絡防止手段30Bが、上記筒部302を持たない以外は上記短絡防止手段30Aと同様の平面視長方形をしている防止手段本体303と、たるみ防止用ナット304とから構成されている以外は、上記電極ユニット3Aと同様になっている。
【0065】
すなわち、この電極ユニット3Bは、以下のようにして組み立てられる。
まず、防止手段本体303を円筒状電極ブロック3aと共に上記短絡防止手段30Aと同様にして絶縁碍子33に固定し、線状電極31の両端部がそれぞれ両側の防止手段本体303から突出するようにセットしたのち、たるみ防止用ナット304及びナット38aを線状電極31に螺合する。その後、線状電極固定板32を上記電極ユニット3Aと同様に絶縁碍子33に固定する。そして、ゆるみ防止用ナット304を防止手段本体303に略あたるまで防止手段本体303方向にねじ込むとともに、ナット38bを線状電極31に螺合させて、上記電極ユニット3Aと同様にナット38aとナット38bとによって線状電極固定板32を挟み込む。
【0066】
この電極ユニット3Bの構成によれば、短絡防止手段30B断線するたるみで抜け落ちたりする線径の細い線状電極31を用いたとしても、たるみ防止用ナット304が断線した線状電極31のたるみによる抜け落ちを防止して、結果として短絡を防止することができる。
【0067】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、円筒状電極固定板側に短絡防止手段が固定されていたが、線状電極固定板側に固定されていても構わない。
上記の実施の形態では、10対の電極対からなる電極ユニットを備えていたが、電極対を1対ずつカートリッジ化しても構わない。
【0068】
上記の実施の形態では、受槽の処理済み水をオーバーフロー管からオーバーフローさせそのまま放流するようになっていたが、オーバーフローした処理済み水を被処理水タンクに戻し、所定時間循環させて、所定時間経過後、循環水を全て放流する方式としても構わない。
上記の実施の形態では、処理槽外の空気を受槽内に供給するようにしていたが、噴霧された被処理水が吸い込まれない位置で、処理部内の雰囲気を吸引して受槽内に供給するようにしても構わない。すなわち、オゾンは、他の活性種に比べて寿命が長いため、処理部内には、分解処理に消費されず、余剰に処理槽内に存在する場合がある。したがって、この余剰のオゾンを吸引して受槽に供給すれば、酸化力の強いオゾンによって処理済み水中に残存する処理対処物質を効率よく酸化分解処理できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の水処理装置は、特に限定されないが、例えば、有機物を含む排水の浄化、汚染水の殺菌などに用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 水処理装置
2 処理槽
2a 処理部
2b 受槽
23 着脱口
24 蓋
25a 上部電極サポート
25b 下部電極サポート
27 オーバーフロー管
20 邪魔板
20a 隙間
200 曲がり管(処理済み水流出経路)
3A,3B 電極ユニット
30A,30B 短絡防止手段
31 線状電極
34 円筒状電極
4 被処理水供給手段
42b 噴射ノズル
6 空気供給手段
10 高電圧パルス発生装置
W1 被処理水
W2 処理済み水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置であって、
前記線状電極の給電部が前記円筒状電極の端部より外側に設けられているとともに、前記線状電極の断線時における線状電極のたるみあるいは傾きによる円筒状電極へ接触を防止する絶縁材料からなる短絡防止手段を前記線状電極の給電部と円筒状電極の端面との間に備えていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
線状電極が短絡防止手段を貫通するように配置されている請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
短絡防止手段が、無機材料及び樹脂の少なくとも一方で形成されている請求項1または請求項2に記載の水処理装置。
【請求項1】
処理槽内に円筒状電極を設けるとともに、この円筒状電極の円筒の中心軸に沿って線状電極を設け、処理槽内で円筒状電極と線状電極との間に高圧パルス電圧を印加することによってストリーマ放電を発生させ、発生したストリーマ放電空間内に、被処理水供給手段から被処理水をミスト状にして供給し、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようにした水処理装置であって、
前記線状電極の給電部が前記円筒状電極の端部より外側に設けられているとともに、前記線状電極の断線時における線状電極のたるみあるいは傾きによる円筒状電極へ接触を防止する絶縁材料からなる短絡防止手段を前記線状電極の給電部と円筒状電極の端面との間に備えていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
線状電極が短絡防止手段を貫通するように配置されている請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
短絡防止手段が、無機材料及び樹脂の少なくとも一方で形成されている請求項1または請求項2に記載の水処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−31216(P2011−31216A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182348(P2009−182348)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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