説明

水処理装置

【課題】線状電極が、スパークが原因で伸びたり溶融したりすることがない水処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】容器2内に、円筒状電極3とこの円筒状電極3の円筒内を臨むように配置された線状電極4aとを有するとともに、円筒状電極3と線状電極4aとの間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水Wを1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置1aであって、線状電極4aとしてステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼などからなち、中空部としての貫通孔41を有するチューブを用い、貫通孔41内に電極冷却装置6から絶縁油61を供給して線状電極4aを内側から冷却するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、下水、排水等に含有される有機物、無機物、微生物を放電により発生するラジカル、オゾン等の活性種により分解処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を放電によって発生するオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種によって分解処理するようにした水処理装置が既に提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この水処理装置は、円筒状電極と線状電極との間に、円柱状に長いストリーマ放電空間が形成され、この円柱状に長いストリーマ放電空間内に1500μm以下と細かい粒径の水滴を供給するようにしたので、水滴が長い時間放電空間内に曝されるとともに、上記活性種に接触する被処理水の総表面積が大きくなる。
したがって、この水処理装置は、水滴中の有機物が上記活性種によって効率よく分解される。
【0004】
【特許文献1】特開2009−241055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、先に提案された水処理装置は、上記のように処理性能に優れたものであるが、数〜十数時間連続して使用するだけで、正常な放電が行われなくなってしまうと問題がある。
【0006】
そこで、本発明の発明者がその原因について検討した結果、ストリーマ放電させる際に発生するスパークが以下のように影響していることがわかった。
(1)線状電極が、スパークの熱によって伸びて弛むため、線状電極と円筒状電極との間隔が一定せず、安定した放電が行われなくなり、さらに、伸びが大きいと線状電極と円筒状電極が短絡する。
(2)線状電極がスパークの熱によって溶融断線する。
【0007】
したがって、本発明は、線状電極が、スパークが原因で伸びたり溶融したりすることがない水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の水処理装置(以下、「第1発明の水処理装置」は、容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極に中空部が設けられるとともに、この中空部に冷却液を供給して線状電極を内側から冷却する電極冷却装置を備えていることを特徴としている。
【0009】
上記第1発明の水処理装置において、線状電極に設けられる中空部の形状は、特に限定されず、螺旋状に設けられていてもよいし、線状電極内部に複数本の貫通孔を設けるようにしてもよいが、線状電極の生産性を考慮すると、線状電極の中心軸に沿う貫通孔とすることが好ましい。また、線状電極は、特に限定されないが、外径がφ1〜8mm、貫通孔の内径φ0.5〜7mmとすることが好ましい。
できれば、上記数値範囲とする理由について記載を御願いします。
【0010】
第1発明の水処理装置において用いられる電極冷却装置としては、特に限定されず、例えば、ビルの空調用等に用いられる公知のチラーユニットと同じ構造を備えたものを用いることができる。
中空部内に供給される冷却液としては、特に限定されないが、例えば、絶縁油や水が挙げられる。
冷却液として用いられる絶縁油としては、特に限定されないが、例えば、鉱油、アルキルベンゼン、ポリブデン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルアルカン、シリコーンオイル、および鉱油とアルキルベンゼンの混合物が挙げられる。
【0011】
なお、冷却液として絶縁油が用いる場合、線状電極と接続する電極冷却装置の冷却液配管は、線状電極と電気的に絶縁された状態に接続するようにすれば、その材質が特に限定されるものではないが、冷却液として水を用いた場合、冷却水である水が線状電極内を流れる際に線状電極に直接接触すると高圧の電流が流れ出て危険であるため、中空部の内壁面を絶縁材で絶縁することが好ましい。
上記絶縁材としては、線状電極の熱に耐えることができれば特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂(商品名テフロン)が挙げられる。
【0012】
本発明の請求項4に記載の水処理装置(以下、「第2発明の水処理装置」は、容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、線状電極の外径が0.5〜5mmであることを特徴としている。
【0013】
第2発明の水処理装置において、線状電極の外径は、0.5〜5mmに限定されるが、その理由は、以下のとおりである。
すなわち、線状電極の外径が0.5mm未満となると、スパークの熱によって伸びて弛むため、線状電極と円筒状電極との間隔が一定せず、安定した放電が行われなくなったり、線状電極と円筒状電極とが短絡したり、線状電極が溶融したりする。一方、5mmを超えると、放電を開始させるのに高い電圧が必要となり、エネルギー効率が悪くなる。
【0014】
第2発明の水処理装置において、線状電極は、中実でもチューブ状のものでも構わない。
【0015】
本発明(第1発明及び第2発明)に用いられる線状電極の材質としては、導電性があり耐食性、耐熱性に優れたものであれば、特に限定されないが、ステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼が好適である。
【0016】
本発明において、ストリーマ放電空間に供給される水滴の粒径は、1500μm以下(好ましくは10μm以上1500μm以下)に限定されるが、その理由は、粒径が大きくなりすぎると、ストリーマ放電空間のプラズマに接触する体積あたりの表面積が小さくなり、処理効率が悪くなるためである。
本発明において、水滴の粒径の測定方法は液浸法による。水滴はシリコーンオイルを満たしたシャーレに、シャーレの上部に設置した噴射ノズルの先端から水滴を噴霧し、噴射軸に対して垂直に置かれたシャーレにより採取した。採取した水滴は素早く撮像し、サイズ毎の粒径をカウントし、ザウター平均粒径を求め水滴の粒径とした。
【0017】
本発明において、被処理水を水滴化して供給する手段(以下、「水滴供給手段」と記す)としては、被処理水を粒径が1500μm以下の水滴にして供給することができれば、特に限定されないが、例えば、噴射ノズルが好適である。
また、上記水滴供給手段としては、被処理水を蒸気化して供給する蒸気発生装置でも構わない。この蒸気発生装置としては、特に限定されず、加熱式、超音波式及びこれらを併用したものが挙げられる。
【0018】
上記水滴供給手段として噴射ノズルを用いる場合、その噴角は、噴射ノズルから噴射される水滴の最外縁がストリーマ放電空間の最外縁に沿うように調整されていることが好ましい。
すなわち、ストリーマ放電空間の最外縁より外側まで広がるように水滴を噴射させても効率が落ちるとともに、容器の内壁面にぶつかり、大きな水滴となり内壁面に沿って流れ落ちて効率が悪くなるおそれがある。
なお、本発明において、上記噴角(噴霧角度)とは、ノズルからミスト状の水滴にされて噴射された水滴は、放物線を描きつつ落下するため、ノズルの噴射口から出た直後の被処理水ミストの広がり角度を意味する。
【0019】
噴射ノズルに水滴の噴射方向は、特に限定されないが、例えば、ストリーマ放電空間の上から下側、ストリーマ放電空間の下側からストリーマ放電空間に向かって上側、ストリーマ放電空間の側方からストリーマ放電空間に向かって噴射される。
噴射ノズルの数は、特に限定されず、1つ以上備えていればよい。また、円筒状電極及び線状電極を2対以上備えるような場合は、噴射ノズルは2つ以上備えていてもよい。
【0020】
本発明において用いられる円筒状電極の材質は、導電性があり耐食性、耐熱性に優れたものであれば、特に限定されないが、ステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼が好適である。
また、円筒状電極は、円筒状電極が上記水滴供給手段から供給される水滴が通過可能な大きさの多数の孔を壁面に備えていることが好ましく、金網やパンチングメタルを用いることができる。
【0021】
円筒状電極の開孔率は、処理効率を考えると、50%以上であることが好ましい。
孔の大きさは、円筒状電極が円筒形状を保持できるとともに、水滴供給手段から供給される水滴が通過可能であれば特に限定されないが、一般的には開口面積が0.01mm2〜625mm2程度である。
【0022】
本発明の水処理装置は、円筒状電極及び線状電極は、処理効率を考えると2対以上備えていることが好ましい。
また、上記のように、円筒状電極及び線状電極を複数対設けた場合、噴射ノズルの噴射軸方向は、各円筒状電極の中心軸とが平行になっていて、噴射ノズルの噴射軸から遠い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面が、前記噴射軸に近い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面に比べ、前記噴射ノズルから遠い位置に設けられている構成とすることが好ましい。
【0023】
円筒状電極と線状電極との間に印加される充電電圧は、ストリーマ放電が起きる電圧であれば特に限定されない。
【0024】
さらに、本発明の水処理装置においては、円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加する高圧電源や、ストリーマ放電空間を通過してきた水滴を受けて貯める貯水槽と、この貯水槽に貯められた水を被処理水として水滴供給手段に送るポンプとからなる被処理水循環構造を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
上記のように、第1発明の水処理装置は、容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極に中空部が設けられるとともに、この中空部に冷却液を供給して線状電極を内側から冷却する電極冷却装置を備えているので、線状電極が、冷却液によって内側から冷却されて低温に保たれ、スパークが原因で伸びたり溶融したりすることがない。
したがって、この水処理装置は、被処理水中の有機物などを効率よく分解処理することができるとともに、長時間その処理能力を持続できる。
【0026】
また、第2の発明の水処理装置は、容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、線状電極の外径が0.5〜5mmであるので、線状電極が、スパークが原因で伸びたり溶融したりすることがない。
したがって、この水処理装置は、被処理水中の有機物などを効率よく分解処理することができるとともに、長時間その処理能力を持続できる。
【0027】
また、上記水滴供給手段として、噴射ノズルを用い、この噴射ノズルから噴射されるミスト状になった水滴の最外縁がストリーマ放電空間の最外縁に沿うように噴射ノズルの噴角を調整すれば、被処理水を円筒状電極の径に併せて効率的にストリーマ放電空間に供給することができ、より効率的に処理を行うことができる。
【0028】
また、円筒状電極が水滴供給手段から供給された水滴が通過可能な大きさの多数の孔を壁面に備えていれば、円筒状電極の側方から被処理水の水滴を供給するようにしてもストリーマ放電空間内に水滴を供給することができる。
【0029】
本発明の水処理装置は、より効率よく処理を行うために、円筒状電極及び線状電極を2対以上備えている構成としてもよい、
また、円筒状電極及び線状電極を2対以上、円筒状電極の中心軸を平行にして配置し、上記のように円筒状電極が水滴供給手段から供給された水滴が通過可能な大きさの多数の孔を壁面に備えている構成にすれば、円筒状電極の内側に一旦入った水滴が孔を介して外側に出て、隣接する円筒状電極内に入る。したがって、効率よく処理を行うことができる。
【0030】
また、上記のように円筒状電極及び線状電極を2対以上備えている構成の場合、噴射ノズルの噴射軸方向と、各円筒状電極の中心軸とが平行になっていて、噴射ノズルの噴射軸から遠い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面が噴射軸に近い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面に比べ、噴射ノズルから遠い位置に設けられているように円筒状電極を配置すれば、ストリーマ放電空間へ無駄なく、被処理水ミストを供給することができ、より効率よく処理できる。
【0031】
さらに、ストリーマ放電空間を通過した水滴を受けて貯める貯水槽と、この貯水槽に貯められた水を被処理水として水滴供給手段に送るポンプとからなる被処理水循環構造を備えていれば、被処理水中の有機物の分解率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1発明の水処理装置の第1の実施の形態の断面図である。
【図2】第1発明の水処理装置の第2の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図3】第1発明の水処理装置の第3の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図4】第1発明の水処理装置の第4の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図5】第1発明の水処理装置の第5の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図6】第1発明の水処理装置の第6の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図7】図6の水処理装置の円筒状電極と線状電極の配置を上面側から見て模式的にあらわした図である。
【図8】第2発明の水処理装置の第1の実施の形態の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、第1発明の水処理装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0034】
図1に示すように、この水処理装置1aは、容器2と、円筒状電極3と、線状電極4aと、被処理水タンク5と、電極冷却装置6と、被処理水ポンプ70と、噴射ノズルであるシャワーノズル7と、被処理水供給ホース71と、高圧電源であるパルスパワー発生装置8と、被処理水タンク収容ボックス9とを備えている。
容器2は、例えば、アクリル樹脂等の絶縁材料で形成され、円筒状をした容器本体21と、容器本体21の下端を、通水孔22a部分を除いて閉鎖するように設けられた下部蓋部22と、容器本体21の上端を、シャワーノズル設置孔23a部分を除いて閉鎖するように設けられた上部蓋部23とを備え、下部蓋部22が被処理水タンク収容ボックス9の開口部91を塞いだ状態で被処理水タンク収容ボックス9の開口部91周縁に受けられている。
【0035】
円筒状電極3は、例えば、ステンレス鋼製の1〜100メッシュの厚さ0.35mmの網を円筒状に加工することによって得られ、外径が容器本体21の内径より少し小さくなっている。
【0036】
線状電極4aは、例えば、図1に示すように、外径φ1〜5mmをしていて、内径φ0.5〜4mmの貫通孔41を備えたステンレスチューブで形成され、円筒状電極3の中心軸に沿うように設けられている。
【0037】
電極冷却装置6は、冷却液タンク61と、冷却液送り配管62と、冷却液戻り配管63と、冷却液ポンプ64と、熱交換装置65とを備えている。
冷却液タンク61は、内壁面がFRP(繊維強化プラスチック)によってライニングされるとともに、冷却液としての絶縁油66が貯留されている。
【0038】
冷却液送り配管62は、一端が冷却液タンク61に接続され、他端が線状電極4aの下端に電気的に絶縁された状態で接続され、冷却液ポンプ64を介して貫通孔41に冷却液タンク61内の絶縁油66を送り込むようになっている。
冷却液戻り配管63は、一端が線状電極4aの下端に冷却液送り配管62と同様の接続方式で電気的に絶縁された状態で接続され、貫通孔41を通った絶縁油66を他端から冷却液タンク61に戻すようになっている。
【0039】
熱交換装置65は、冷却液タンク61内の絶縁油66が設定温度(例えば、20℃)以下になるように絶縁油66を冷却できるようになっている。
【0040】
すなわち、電極冷却装置6は、上記のように線状電極4aと冷却液送り配管62及び冷却液戻り配管63が接続されて、冷却液タンク61内で設定温度以下に保持された絶縁油66を線状電極4a内の貫通孔41に通して線状電極4aを内側から冷却するようになっている。
【0041】
被処理水タンク5は、下部蓋部22の通水孔22aを下方から臨むように処理水タンク収容ボックス9内に収容されている。
被処理水ポンプ70は、処理水タンク収容ボックス9内で被処理水タンク5に隣接して設けられ、被処理水タンク5内の被処理水Wを、被処理水供給ホース71を介してシャワーノズル7に送るようになっている。
【0042】
シャワーノズル7は、被処理水供給ホース71を介して送られてきた被処理水を粒径が1500μm以下の水滴からなる被処理水ミストMにして円筒状電極3の上部開口に向かって噴射するようになっている。
また、シャワーノズル7の噴角は、噴射される被処理水ミストMの最大広がり部でストリーマ放電空間の最外縁である円筒状電極3の内壁面に沿うような角度に調整されている。
【0043】
パルスパワー発生装置8は、円筒状電極3が陰極、線状電極4aが陽極となるように円筒状電極3及び線状電極4aに接続され、円筒状電極3と線状電極4aとの間にパルス状に高電圧を印加して円筒状電極3と線状電極4aとの間でストリーマ放電を起こすようになっている。
【0044】
この水処理装置1aは、上記のようになっており、被処理水タンク5に有機物等を含む被処理水Wを仕込むとともに、パルスパワー発生装置8によって、円筒状電極3と線状電極4aとの間に、高電圧をパルス状に印加し、円筒状電極3内に上下方向に円柱状となったストリーマ放電空間を形成する。
そして、被処理水ポンプ70を駆動させて、被処理水タンク5内の被処理水Wを、ホース71を介してシャワーノズル7に送り、円筒状電極3の上方から円筒状電極3の中心軸方向に向かって噴射することによって被処理水Wを循環しながら処理するようになっている。
【0045】
すなわち、ストリーマ放電によって、オゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種がストリーマ放電空間内に発生し、シャワーノズル7から噴射された被処理水ミストM中の水滴が円筒状をしたストリーマ放電空間内を落下していく間にこれら活性種に接触し、各水滴中の有機物が効率よく酸化分解処理される。
しかも、電極冷却装置6を備え、冷却液である絶縁油66を線状電極4a内に設けた貫通孔41に通し、線状電極4aを内側から冷却することができるので、線状電極4aが低温に保たれ、スパークが原因で伸びたり溶融したりすることがない。
したがって、この水処理装置は、被処理水中の有機物などを効率よく分解処理することができるとともに、長時間その処理能力を持続できる。
【0046】
図2は、第1発明の水処理装置の第2の実施の形態をあらわしている。
図2に示すように、この水処理装置1bは、同じサイズの円筒状電極3及び線状電極4aが4対容器2内で水平方向に並ぶように配置されている。また、冷却液送り配管62及び冷却液戻り配管63は、それぞれ容器2内で4本の分岐配管62aあるいは分岐配管63aにそれぞれ分岐していて、4本の線状電極4aがそれぞれ分岐配管62a及び分岐配管63aに接続されている。
そして、この水処理装置1bは、上記した以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
なお、図2においては、パルスパワー発生装置8の図示を省略しているが、この水処理装置1bのおいても、円筒状電極3が陰極、線状電極4aが陽極となるようにパルスパワー発生装置8と接続されている。
【0047】
図3は、第1発明の水処理装置の第3の実施の形態をあらわしている。
図3に示すように、この水処理装置1cは、シャワーノズル7が円筒状電極3の下方に設けられ、被処理水ミストを垂直上向き噴射するようにした以外は、上記水処理装置1bと同様になっている。
なお、図3においては、パルスパワー発生装置8の図示を省略しているが、この水処理装置1cのおいても、円筒状電極3が陰極、線状電極4aが陽極となるようにパルスパワー発生装置8と接続されている。
【0048】
この水処理装置1cによれば、被処理水ミストMが、ストリーマ放電空間の下側からストリーマ放電空間に向かって噴射されるので、被処理水ミストM中の各水滴が一旦上昇した後、その重力により下降することにより、ストリーマ放電空間での滞留時間が増加し、より効率的に処理することができる。
【0049】
図4は、第1発明の水処理装置の第4の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、この水処理装置1dは、シャワーノズル7を円筒状電極の側方に設け、被処理水ミストを円筒状電極3の側面から水平方向に噴射するようにした以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
なお、図4においては、パルスパワー発生装置8の図示を省略しているが、この水処理装置1dのおいても、円筒状電極3が陰極、線状電極4aが陽極となるようにパルスパワー発生装置8と接続されている。
【0050】
図5は、第1発明の水処理装置の第5の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この水処理装置1eは、シャワーノズル7の噴射軸Cに近い側の2本の円筒状電極3aより、遠い側の2本の円筒状電極3bの中心軸方向の長さが短くなっているとともに、短い円筒状電極3bの上端面を長い円筒状電極3aの上端面よりシャワーノズル7から離れた位置、すなわち、下方に位置するように配置し、シャワーノズル7から噴射された被処理水ミストMの最外縁が短い円筒状電極3b内に確実に納まるように調整した以外は、上記水処理装置1bと同様になっている。
なお、図5においては、パルスパワー発生装置8の図示を省略しているが、この水処理装置1eのおいても、円筒状電極3が陰極、線状電極4aが陽極となるようにパルスパワー発生装置8と接続されている。
【0051】
図6及び図7は、第1発明の水処理装置の第6の実施の形態をあらわしている。
図6及び図7に示すように、この水処理装置1fは、円筒状電極3及び線状電極4aからなる電極対を6対備え、1つの電極対を線状電極4aが容器本体21の中心軸に一致するように配置し、他の5つの電極対をその周囲を放射状に囲むように同一円周上に等間隔で並ぶように配置した。
また、冷却液送り配管62及び冷却液戻り配管63は、それぞれ容器2内で6本の分岐配管62aあるいは分岐配管63aに分岐していて、6本の線状電極4aがそれぞれ分岐配管62a及び分岐配管63aに接続されている。
そして、この水処理装置1fは、上記した以外は、上記水処理装置1bと同様になっている。
なお、図6においては、パルスパワー発生装置8の図示を省略しているが、この水処理装置1fのおいても、円筒状電極3が陰極、線状電極4aが陽極となるようにパルスパワー発生装置8と接続されている。
【0052】
図8は、第2発明の水処理装置の第1の実施の形態をあらわしている。
図8に示すように、この水処理装置1gは、線状電極4bがその外径が0.5〜5mmのステンレス鋼、タングステン鋼、あるいは、チタン鋼製の中実の棒材で形成されていて、電極冷却装置6を備えていない以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
この水処理装置1gは、上記のように、外径が0.5〜5mmであるので、線状電極4bが、スパークが原因で伸びたり溶融したりすることがない。
したがって、この水処理装置1gは、被処理水中の有機物などを効率よく分解処理することができるとともに、長時間その処理能力を持続できる。
【0053】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、パルスパワー発生装置を備えていたが、パルスパワー発生装置は市販のものを別途容易するようにしても構わない。
上記第6の実施の形態の水処理装では、1つの電極対の周囲を5つの電極対で囲む2重構造であったが、さらに外側に多くの電極対を3重、4重に配置するようにしても構わないし、第5の実施の形態の水処理装置のように容器本体の外側に配置された円筒状電極の上端面の位置を内側に配置された円筒状電極の上端面より下方に設けるようにしても構わない。
【0054】
上記の実施の形態では、冷却液送り配管を線状電極の下端に接続するようにしていたが、冷却送り配管を線状電極の上端に接続するようにしても構わない。また、1つの容器内に線状電極及び円筒状電極を複数対備えている場合、冷却液送り配管を1本の線状電極の下端あるいは上端に接続し、冷却液戻り配管を他の1本の線状電極の下端あるいは上端に接続するとともに、隣接する線状電極の線状電極の上端同士または下端同士を例えばU字形をした連結管を介して接続して、1つの線状電極の貫通孔を下端から上端(上端から下端)に向かって通った冷却液が連結管を介して連結されたつぎの線状電極の上端から下端(下端から上端)に向かって方向を変えてつぎつぎに流れていくようにしても構わない。
【0055】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と対比させて説明する。
【0056】
(実施例1)
図1に示す水処理装置1aを用い、以下の実験条件で脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
〔実験条件〕
被処理水量:15リットル
被処理水の噴射速度(循環速度):12〜15L/分
充電電圧:25kV
放電回数:100回/秒
円筒状電極のメッシュ:2.5メッシュ、線径1.1mm、開孔率79.5%、平織金網
円筒状電極の内径:39.5mm
円筒状電極の長さ(中心軸方向の長さ):300mm
被処理水ミストの水滴粒径:750〜970μm
シャワーノズルの噴角:30°
シャワーノズルから円筒状電極までの距離:被処理水ミストの最外縁が最外部に位置する円筒状電極外縁の上端になるように調整した。
線状電極:外径1mm、内径0.5mm、長さ500mmのタングステン鋼製チューブ
冷却液:絶縁油(シリコーンオイル)
冷却液設定温度:20℃
貫通孔内冷却液流速:3L/min
(脱色性評価)
上記の実験条件で精製水にインジゴカルミンが20ppmの濃度で含まれる被処理水を水処理し、インジゴカルミンの分解完了時間を調べた。
なお、分解完了時間は、紫外可視分光光度計(島津製作所社製商品名UVmini−1240)を用いて610nmでの被処理水の吸光度を調べ、吸光度が0になった時間を分解完了時間とした。
(耐熱性評価)
図1に示す水処理装置1aを用い、スパークが発生しやすい状態にするため、精製水にMgSO4が100ppmの濃度で含まれる水溶液を被処理水として用い、上記の実験条件で48時間連続処理して、線状電極が伸びて弛むあるいは溶融する時間を測定した。
【0057】
(実施例2)
線状電極として、外径3.05mm、内径1.99mm、長さ500mmのステンレス鋼製チューブを使用した以外は、実施例1と同様にして脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
【0058】
(実施例3)
図8に示す水処理装置1gを用い、以下の実験条件で実施例1,2と同様の脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
〔実験条件〕
被処理水量:15リットル
被処理水の噴射速度(循環速度):12〜15L/分
充電電圧:25kV
放電回数:100回/秒
円筒状電極のメッシュ:2.5メッシュ、線径1.1mm、開孔率79.5%、平織金網
円筒状電極の内径:39.5mm
円筒状電極の長さ(中心軸方向の長さ):300mm
被処理水ミストの水滴粒径:750〜970μm
シャワーノズルの噴角:30°
シャワーノズルから円筒状電極までの距離:被処理水ミストの最外縁が最外部に位置する円筒状電極外縁の上端になるように調整した。
線状電極:外径1mm、長さ500mmのステンレス鋼製中実棒材
【0059】
(比較例1)
線状電極として、外径0.28mm、長さ500mmのステンレス鋼製中実棒材を使用した以外は、実施例3と同様にして脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
(比較例2)
線状電極として、外径0.4mm、長さ500mmのチタン鋼製中実棒材を使用した以外は、実施例3と同様にして脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
【0060】
上記実施例1〜3及び比較例1,2で評価した脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価の結果を表1に示す。表1中、脱色性評価の単位は、時間である。
【0061】
【表1】

【0062】
上記表1から、本発明の水処理装置のようにすれば有機物が短時間で効率よく分解処理でき、かつストリーマ放電空間にスパークが発生しても、線状電極が伸びたり、溶融したりせず、長時間連続して水処理を行えることがよくわかる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の水処理装置は、特に限定されないが、例えば、有機物を含む排水の浄化、汚染水の殺菌などに用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g水処理装置
2 容器
21 容器本体
3,3a,3b 円筒状電極
4a,4b 線状電極
41 貫通孔(中空部)
5 被処理水タンク
6 電極冷却装置
61 冷却液タンク
62 冷却液送り配管
63 冷却液戻り配管
64 冷却液ポンプ
65 熱交換装置
66 絶縁油(冷却液)
7 シャワーノズル(噴射ノズル)
8 パルスパワー発生装置(高圧電源)
W 被処理水
M 被処理水ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、
前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、
前記線状電極に中空部が設けられるとともに、この中空部に冷却液を供給して線状電極を内側から冷却する電極冷却装置を備えていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
上記中空部が線状電極の中心軸に沿って設けられた貫通孔である請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
冷却液が絶縁油または水である請求項1または請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、
前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、
前記線状電極の外径が0.5〜5mmであることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
線状電極が、ステンレス鋼、タングステン鋼及びチタン鋼のいずれか1種から形成されている請求項1〜請求項4のいずれかに記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−130872(P2012−130872A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285647(P2010−285647)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】