説明

水分含有油の脱水処理装置及び方法

【課題】大量の水分を含む油から効率よく水分を処理できる水分含有油の脱水処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】水分含有油の脱水処理装置10Aは、水分含有油11を導入した後静置し、油11Aと水11Bとに分離する油水分離装置12と、該油水分離装置12で分離した油11A部分を別途投入して脱水処理する脱水装置13と、該脱水装置13に投入された油11A内に気泡14を発生する気泡発生手段15とを具備し、前記油水分離装置12の静置処理により油と水とを分離することができ、その後、油中にのみ溶解する水(溶解水分)を脱水装置で除去することで、大量に水分を含む油から水分を除去する脱水時間の短縮を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分含有油の脱水処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水分を含む燃料油、潤滑油から水分を除去する脱水方法として、例えば沈殿分離方法、加熱処理方法、フィルタ濾過(吸着)方法、遠心分離方法等が存在する。
【0003】
沈殿分離方法、遠心分離方法等は、分離水の除去は可能であるが、油中に溶解する溶解水の除去ができないという、問題がある。
また、過熱処理方法は、油の劣化を加速するので、好ましくないという問題がある。
【0004】
溶解水を除去することができるフィルタ濾過法として、原油中に含まれる水分を除去する中空糸膜ユニットを用いた方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−244668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フィルタ濾過方法は、水分を多量に含むような油を処理する場合には、ランニングコストが多大となる、という問題がある。
【0007】
そこで、水分を多量に含む油から溶解水を効率よく処理することができる、水分含有油の脱水処理装置及び方法の出現が切望されている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、大量の水分を含む油から効率よく水分を処理できる水分含有油の脱水処理装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、水分含有油を導入した後静置し、油と水とに分離する油水分離装置と、該油水分離装置で分離した油部分を投入する脱水装置と、該脱水装置に投入された油内に気泡を発生する気泡発生手段とを具備することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記脱水装置本体を加温する加温手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記油水分離装置を冷却する冷却手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置にある。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、前記冷却手段の排熱を加温手段に供給することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置にある。
【0013】
第5の発明は、第1の発明において、前記気泡発生手段に供給する気体が空気の場合、空気を除湿する除湿手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置にある。
【0014】
第6の発明は、第1の発明において、前記気泡発生手段に供給する気体を循環させる気体循環手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置にある。
【0015】
第7の発明は、第6の発明において、前記気体循環手段に気体中に含まれる水分及び油分を除去する水・油除去手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置にある。
【0016】
第8の発明は、第1乃至7のいずれか一つの発明において、前記脱水装置本体の油層から油の一部を外部に抜出し、抜出した油を脱水装置本体の油層の上方に供給し、気泡と対向接触させることを特徴とする水分含有油の脱水処理装置にある。
【0017】
第9の発明は、油水分離装置に、水分含有油を導入した後静置し、油と水とに分離した後、該分離した油部分を脱水装置に投入し、投入された油内に気泡を導入して、油に溶解する溶解水分を除去し、脱水処理を行うことを特徴とする水分含有油の脱水処理方法にある。
【0018】
第10の発明は、第9の発明において、前記脱水に用いた気体を循環させることを特徴とする水分含有油の脱水処理方法にある。
【0019】
第11の発明は、第9又は10の発明において、前記脱水装置本体の油層から油の一部を外部に抜出し、抜出した油を脱水装置本体の油層の上方に供給し、気泡と対向接触させつつ脱水することを特徴とする水分含有油の脱水処理方法にある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、先ず、多量に水分が存在する場合の大部分の分離水をこの油水分離装置の静置処理により分離する。その後、油中にのみ溶解する水(溶解水分)を脱水装置で除去することで、大量に水分を含む油から水分を除去する脱水時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施例1に係る水分含有油の脱水処理装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係る水分含有油の脱水処理装置の概略図である。
【図3】図3は、実施例2に係る気体処理装置の概略図である。
【図4】図4は、脱水装置13での脱水処理時間と油中の水分量との関係を示す図である。
【図5】図5は、実施例3に係る水分含有油の脱水処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0023】
本発明による実施例に係る脱水処理装置について、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係る脱水処理装置の概略図である。
図1に示すように、水分含有油の脱水処理装置(以下「脱水装置」という)10Aは、水分含有油11を導入した後静置し、油11Aと水11Bとに分離する油水分離装置12と、該油水分離装置12で分離した油11A部分を別途投入して脱水処理する脱水装置13と、該脱水装置13に投入された油11A内に気泡14を発生する気泡発生手段15とを具備するものである。
【0024】
また、本実施例では、脱水装置13の内部を加温する加温手段16を設け、油11Aを加温するようにしている。
図1中、符号13aは蓋、13bは本体、18は乾燥気体、19は脱水処理油、L1は水含有油導入ライン、L2は分離油供給ライン、L3は乾燥気体供給ライン、L4は排気ライン、V1〜V2は開閉バルブ、Pは乾燥気体供給ポンプを各々図示する。
【0025】
そして、油水分離装置12に水含有油11を水含有油導入ラインL1により導入し、所定時間静置させることで、油11Aと水11Bとにその比重差により分離するようにしている。
【0026】
所定時間静置後、分離した油11Aのみを、分離油供給ラインL2を介して脱水装置13に供給するようにしている。
静置する時間は、少なくとも5時間以上静置することが好ましい。これは、水分含有油11が懸濁状態の場合、少なくとも5時間以上静置することで、分離水がわかれるからである。なお、静置時間は長いほど好ましい。
【0027】
油11Aと水11Bとの分離は、比重差により分離しており、バルブV1、V2のいずれかを操作して、下層部分から外部に抜き出している。
【0028】
なお、油11Aと水11Bとの分離のバルブの切替えには、配管の内部が確認できるような例えばカラーセンサ、紫外線センサ等を用いて、油11Aと水11Bとを判別して、バルブV1、V2の切替え操作の自動化を図るようにしてもよい。
【0029】
これにより、脱水装置13には油11Aのみが分離油供給ラインL2を介して供給されることとなり、脱水装置13においては、分離水の除去が不要となる。
この結果、多量に水分が存在する場合の大部分の分離水をこの油水分離装置12の静置処理により分離することができる。
すなわち、油水分離装置12を設けない場合には、水分を含む油に単に気泡を長時間に亙って発生させ、水分を脱気するような場合では、長時間の時間を要する。
これに対し、本発明のように、油水分離装置12を設け、分離水である水11Bを予め除去し、油11A部分のみを分離し、油中にのみ溶解する水(溶解水分)を除去することで、脱水時間の短縮が可能となる。
本発明における水分の含有量は限定されるものではないが、数%から数10%程度の水を含有する場合においても、本発明の脱水装置で迅速に処理することができる。
【0030】
ここで、本実施例では、油水分離装置12の周囲を冷却する冷却手段21が設けられている。
これは、油の温度が低い場合には、油11A側への水分の溶解量が小さくなるからである。
【0031】
図4は脱水装置13での脱水処理時間と油中の水分量との関係を示す図である。
図4では、試験例として脱水装置を加温し、そこに窒素ガスを導入した。
比較例1は脱水装置を加温したのみである。比較例2は窒素ガスを導入したのみである。
図4に示すように、脱水装置を加温しつつ窒素ガスを導入して脱水処理することで、水分除去率が大幅に向上するのが確認された。
【0032】
また、例えば、油と水とを5:1の割合(容量)で混合し、所定時間(12時間)静置後、油を分離し、油中の水分をカールフィッシャー法測定器により計測した一例を、「表1」に示す。
【0033】
下記「表1」に示すように、28℃の場合では、溶解水分量が0.36%であったものが、冷却手段で冷却して5℃の場合では、溶解水分量が0.23%と、0.13%も少ないことが判明した。
【0034】
【表1】

【0035】
よって、水含有油11を油水分離装置12に投入後、冷却手段21により冷却することで、溶解水分量を1/3程度減らすことが可能となる。
【0036】
よって、静置する間に冷却手段21で冷却することで、油中に溶解する水(溶解水分)を低減させることができ、脱水装置13での溶解水分量を減らすようにしている。
【0037】
本発明で処理する油の一例としては、燃料油、作動油、潤滑油等を挙げることができるが、水分が混入しやすい油であればいずれをも対象とすることができる。
【0038】
また、脱水装置13においては、加温手段16で加温することが、脱水効率を向上するので好ましい。
なお、加温手段16での好適な加温温度としては、例えば30℃以上に加温すればよく、対象とする油の耐熱温度以下とすることが必要である。これは、水分を除去するための、油自体が劣化するのを防止するためである。
【0039】
ここで、加温手段16としては、本実施例のようにヒータを用いても良いが、冷却手段21で用いる冷却装置から発生する廃熱を加温の熱源に用いるようにしてもよい。
【0040】
また、気泡発生手段15に供給する気体として、空気を用いる場合には、供給する空気に含まれる水分を除湿する除湿手段を有するようにしてもよい。
【実施例2】
【0041】
本発明による実施例に係る脱水処理装置について、図面を参照して説明する。図2は、実施例2に係る脱水処理装置の概略図である。なお、実施例1の脱水処理装置の構成部材と同一の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、実施例2に係る脱水処理装置10Bは、実施例1に係る脱水処理装置10Aにおいて、さらに脱水装置13の気泡発生手段15で発生させた気体を再循環する気体循環手段を有している。
【0042】
本実施例の気体循環手段は、蓋13aから発生した気泡14を集めて循環させる気体循環ラインL5と、循環気体18aに同伴される水分及び油を分離処理する気体処理装置31と、気体処理装置31の前後に設けられ、循環気体18a中の水分及び油分を計測するガス測定手段32A、32Bとを具備するものである。
図2中、V11〜V13は開閉バルブを図示する。
【0043】
気体処理装置31は、循環気体18aを冷却して、脱水処理で同伴される水分及び油分を回収するものである。
図3は、気体処理装置の一例を示す図である。
図3に示すように、循環気体18aを導入する気体処理装置本体31aと、導入された循環気体18aを冷却する冷却手段21と、気体処理装置本体31aの下側に設けられ、ガスから分離された水分及び油分を静置分離する分離装置33とを具備するものである。図3中、符号V21〜V22は開閉バルブを各々図示する。
分離装置33で分離された油11Aは、分離油供給ラインL2に供給して脱水装置13に戻し、再度脱水処理を行い、乾燥気体18bとするようにしている。
【0044】
本実施例によれば、実施例1のように、脱水装置13内に導入する乾燥気体18を外部から連続して供給する必要がなくなる。
【0045】
また、気体処理装置31で冷却の際に発生する排熱は、実施例1と同様に脱水装置13の加温手段16に利用することができる。
【0046】
ガス測定手段32A、32Bは、循環気体18aの性状を監視するものであり、気体処理装置31での冷却能力の調整を行うようにしている。
すなわち、ガス測定手段32Aにおいて測定した結果、脱水装置13から抜出した循環気体18a中の水分含有量が高い場合には、気体処理装置31での冷却手段21の冷却効率を向上させて、より低温での水分分離を行うようにしている。
【0047】
また、ガス測定手段32Bにおいて、処理後の乾燥気体18bのガス性状を計測した結果、水分が規定値よりも高い場合には、バルブV11を閉じると共に、バルブV12を開けて、再度気体処理装置31で処理を行うようにして、所定値以下の水分量の乾燥気体18bとなるように再度脱水処理するようにしている。
なお、この再度脱水処理する場合においては、乾燥気体18を乾燥気体供給ラインL3から脱水処置13に導入して、脱水処理を継続するようにしている。
【実施例3】
【0048】
本発明による実施例に係る脱水処理装置について、図面を参照して説明する。図5は、実施例3に係る脱水処理装置の概略図である。なお、実施例1の脱水処理装置の構成部材と同一の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、実施例3に係る脱水処理装置10Cは、実施例1に係る脱水処理装置10Aにおいて、さらに脱水装置13の下端側から油11Aを抜出し、脱水装置13の上方から再循環する油循環ラインL6を有している。
また、油循環ラインL6の導入側には、油をシャワー状に流すノズル41が装着されている。
【0049】
このノズル41を利用して脱水装置13の上部から油11Aを導入することで、気泡発生手段15から発生した気泡14と対向接触するようにしている。この結果、気泡14は、上方から導入される油11Aに押されながら上昇することとなるので、脱水装置13内部での滞留時間が増加し、さらに脱水処理能力の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係る水分含有油の脱水処理装置及び方法によれば、水分を多量に含む油から溶解水を効率よく処理することができ、例えば燃料油、潤滑油の処理が簡易になる。
【符号の説明】
【0051】
10A〜10C 水分含有油の脱水処理装置
11 水分含有油
11A 油
11B 水
12 油水分離装置
13 脱水装置
14 気泡
15 気泡発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含有油を導入した後静置し、油と水とに分離する油水分離装置と、
該油水分離装置で分離した油部分を投入する脱水装置と、
該脱水装置に投入された油内に気泡を発生する気泡発生手段とを具備することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記脱水装置本体を加温する加温手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記油水分離装置を冷却する冷却手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記冷却手段の排熱を加温手段に供給することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記気泡発生手段に供給する気体が空気の場合、空気を除湿する除湿手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記気泡発生手段に供給する気体を循環させる気体循環手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記気体循環手段に気体中に含まれる水分及び油分を除去する水・油除去手段を有することを特徴とする水分含有油の脱水処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、
前記脱水装置本体の油層から油の一部を外部に抜出し、抜出した油を脱水装置本体の油層の上方に供給し、気泡と対向接触させることを特徴とする水分含有油の脱水処理装置。
【請求項9】
水分含有油を導入した後静置し、油と水とに分離した後、該分離した油部分を脱水装置に投入し、投入された油内に気泡を導入して、油に溶解する溶解水分を除去し、脱水処理を行うことを特徴とする水分含有油の脱水処理方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記脱水に用いた気体を循環させることを特徴とする水分含有油の脱水処理方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記脱水装置本体の油層から油の一部を外部に抜出し、抜出した油を脱水装置本体の油層の上方に供給し、気泡と対向接触させつつ脱水することを特徴とする水分含有油の脱水処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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