説明

水分搬送装置

【課題】水分搬送装置において人や任意の場所を局所的に狙うには、水分搬送装置の設置面に対して略水平方向に渦輪を放出する必要があるが、加圧室に高湿空気を溜める際に加圧室の側部に設けた渦輪吹出し口から高湿空気が渦輪を形成しないまま加圧室外にあふれ出し、水分搬送装置の美観を損ねたり、漏れ出た高湿空気によって吹き出した渦輪の進行が邪魔され、渦輪が破壊されやすいという課題があった。
【解決手段】制御手段108は加振器105が駆動する前の所定時間は送風手段107を停止させ、かつ送風手段107の駆動タイミングと加振器105の駆動タイミングとを同期させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内および室外の任意エリアに対して、例えば渦輪状の高湿空気を気相中に搬送する水分搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水分を含む高湿空気を生成する手段として、水を保持した気化エレメントに対して通風することにより高湿空気を搬送する方式や水を超音波振動により水界面で微細粒子を生成して霧化する方式、または、水を高湿空気発生手段で加熱して蒸発する方式がある。いずれの方式も生成した高湿空気はファンを用いて気流に乗せて遠方領域に搬送される。
【0003】
前述のように生成した高湿空気をファンを用いて搬送する装置にあっては、開口面より放出された高湿空気はすぐに拡散する。つまり高湿空気は搬送装置を中心として外側へ徐々に拡散し、それにより部屋全体が加湿されるため、部屋内の特定の対象のみに高湿空気を搬送することができないという問題がある。
【0004】
前述した問題を解決する方法として、生成した高湿空気を任意の空間である加圧室に貯め、その空間を加圧して渦輪状空気を生成させることで、遠方への搬送に優れ所定の対象へ迅速に渦輪状の高湿空気を搬送できるようにしたものが提案されている。
【0005】
渦輪を用いた水分搬送装置としては、例えば特許文献1のように渦輪吹出し口を構成するエッジにフレキシブルダクトを設置して任意の方向に向けることで渦輪の進行方法を自由に変化させるものがある。また、非特許文献1のように渦輪の生成において、吹出し口のノズル形状は、シリンダ内の流動抵抗を低減させるような形状よりも、積極的に剥離させるような形状の方が良く、飛行距離が長くなることが報告されている。また、特許文献2のように、所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出する放出穴を開閉する放出シャッターを設け、制御手段の制御によってオン・オフを制御するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】3675203号公報
【特許文献2】特開2007−261320号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】アロマリサーチNO.30 Vol.8 香料を内包した渦輪114による効率的運搬のためのコンピュータ・シミュレーション
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし従来の渦輪状の高湿空気を放出する水分搬送装置においては、例えば渦輪が人や任意の場所を局所的に狙うには、水分搬送装置の設置面に対して略水平方向に渦輪を放出する必要がある。しかし渦輪が設置面に対して略水平方向に放出される場合、渦輪が設置面の略上方に放出される場合と比較して加圧室に高湿空気を溜める際に加圧室の側部に設けた渦輪吹出し口から高湿空気が渦輪を形成しないまま加圧室外にあふれ出し、水分搬送装置の美観を損ねたり、漏れ出た高湿空気によって吹き出した渦輪の進行が邪魔され、渦輪が破壊されやすいという課題があった。これに対し、特許文献2のように渦輪吹出し口にシャッターを設けて渦輪を形成しない高湿空気の加圧室の外への漏れを抑制しようとすると、シャッター等の駆動機構を高湿空気によって湿度が高い渦輪吹出し口付近に設ける必要があるため、駆動機構の錆びによって水分搬送装置100の寿命が確保できない課題や、駆動機構の音がうるさいという課題があった。
【0009】
本発明は前述した課題を解決するためになされたもので、渦輪が設置面に対して略水平方向に放出される場合でも、渦輪吹出し口付近にシャッター等の駆動機構を設けることなく、渦輪を形成できずに加圧室の外へあふれた高湿空気が水分搬送装置本体外へ流出することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る水分搬送装置は、水を貯えて該水を気化ないし霧化させる高湿空気生部と、高湿空気生部から搬送された水を含む高湿空気に間欠的に圧力を加える加圧手段を有する加圧室と、高湿空気生部と加圧室とを接続する流路と、高湿空気を流路を介して高湿空気生部から加圧室へ搬送する送風手段と、加圧室を形成する壁面に開口して設けられ、加圧手段により圧力を加えられた高湿空気を渦輪状に放出する渦輪形成口と、送風手段を駆動させた後に送風手段を所定時間停止させ、その後加圧手段を駆動させる制御を繰り返す制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水分搬送装置によれば、制御手段が送風手段の運転および停止を時間によって制御し、制御手段が送風手段を駆動させ、その後所定時間送風手段を停止させ、その後加振器を駆動させる制御を繰り返すため、渦輪が設置面に対して略水平方向に放出される場合でも、高湿空気が渦輪を形成できずに加圧室の外へあふれることを抑制することができる。その結果渦輪吹き出し口にシャッターなどの駆動機構を設けなくても本体周辺の床が濡れたり、あふれによる美観低下を抑制し、かつ漏れ出た高湿空気による渦輪の崩壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における水分搬送装置の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における水分搬送装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1における水分搬送装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1における水分搬送装置の部品の動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1における水分搬送装置の渦輪形成口付近の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る水分搬送装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る水分搬送装置を説明する構成図であって、概略断面図に対応するものである。
本実施の形態の水分搬送装置100は、外周が本体ケース101で囲まれている。本体ケース101の内部には、給水タンク102、高湿空気生成部103、空気加圧手段である加振器105と渦輪形成口104aを開口して設けた中ケース123とで区画された加圧室104、加熱手段106、高湿空気生成部103から出た高湿空気や加熱手段106で加熱された空気を加圧室104に送る送風手段107、高湿空気生成部103、およびこの水分搬送装置100の動作に係わる各機器、例えば加熱手段106、高湿空気生成部103、加振器105、送風手段107等を制御して加圧制御や温度制御を行う制御手段108が収容されている。
【0015】
給水タンク102と加熱手段106が設置された加温部109と高湿空気生成部103とは給水路110でつながっており、給水タンク102から高湿空気生成部103への給水量は、給水タンク102の底部に設けられた給水弁102aによって調整される。また、給水路110には第一の排水経路118aと排水弁119が設けられている。この排水弁119は電気式でもよいし、手動で開閉するものでもよい。
【0016】
また、高湿空気生成部103と加圧室104とは流路111を介して接続され、高湿空気生成部103と送風手段107とは空気流路112を介して接続されている。また、送風手段107と水分搬送装置100の外部との間、つまり送風手段107上流側には制御手段108が配置され、送風手段107が吸引した空気によって制御手段108が冷却されるようになっている。
【0017】
高湿空気生成部103は、貯水タンク103aおよびそこに貯えられた水を気化ないし霧化した状態の高湿空気にする高湿空気生成手段103bを有している。なお、高湿空気生成手段103bは、超音波式、加熱式、若しくは気化式(ヒータレスファン式)などが利用できるが、渦輪114の視認性および搬送性は超音波式が最も良く、遠方まで搬送している様子を見ることができ、また遠方まで渦輪114を搬送することができる。
【0018】
また、貯水タンク103aの上部にはタンクカバー103cが設置され、取り外せる構造としている。また、貯水タンク103aには第二の排水経路118bが設けられており、第一の排水経路118aと合流し、排水弁119に連結している。
【0019】
加圧室104は、搬送された高湿空気を送り出すための部屋で、その壁面には空気加圧手段としての加振器105を連通するように備えている。そして、加圧室104の加振器105に対向する面には、加圧された空気を渦輪状に放出させる少なくとも1つの渦輪形成口104aが形成されており、空気の流れを整流するために規則的に開口を配列させた整流板113にて覆われている。
【0020】
流路111は高湿空気生成部103と加圧室104とを接続する。接続する理由は加圧室104のレイアウトの自由度を上げるためである。つまり高湿空気生成部103は中に水が入っており重心の関係から設置位置が水分搬送装置100本体の下部に限定されるため、加圧室104を高い位置や高湿空気生成部103の前方などに配置したい場合は図1に示すようにそれぞれを流路111を介して接続し、送風手段107で高湿空気を搬送する。
【0021】
渦輪形成口104a周縁には渦輪形成口104aに対して内側方向に略垂直に延設されたリブ104bを有することで、加圧室104に進入した高湿空気が直接水分搬送装置100の外部に流出し難くなるような経路を構成している。
【0022】
加振器105は一般的なスピーカと同様の構造で、駆動信号が入力されるボイスコイルに接着層によって振動板105aが定位置に固着されているものでありボイスコイルに印加する入力電圧によりマグネットとの間で電磁駆動を行い、振動板105aを振動させるようになっている。振動板105aは、蒸気に対して変形することのない耐熱性の機能をも有する材料を用いることが好ましい。なお、振動板105aと接触するようにゴムなどの振動減衰能の大きい材料が付与されて構成されることにより、加圧室104内で生じる異音の共鳴による増幅などを防ぐこともできる。なお、渦輪形成口104a周縁の材料厚さを加圧室104外郭を形成する材料厚さよりも厚くすることで振動板105aが発生する振動により耐えることができる。
【0023】
本体ケース101は加振器105を保持する後ろケース101b、加圧室104を覆う前ケース101aで構成されている。なお、「前ケース101a」は本発明の「貯留部」に相当する。前ケース101aは渦輪吹出し口101cを有し、回収経路116の一端が接続されている。
【0024】
後ろケース101bには打ち出した振動板105aが戻る際の進行と逆方向への空気の排出を行うために任意位置に任意形状を有する空気弁(図示せず)が形成されている。なお、後ろケース101bは加圧室104および前ケース101aと連通しない独立した構造とすることで後ろケース101bまで高湿空気が行渡ることを防ぐ。
また、前ケース101aの下部に設けられた回収経路116は吸湿フィルター117を経由して、送風手段107の吸込み口112aに連結している。
【0025】
次に、本実施の形態に係る水分搬送装置100の動作について説明する。
図2は水分搬送装置100の動作に関するブロック図である。
図3は動作を説明するフローチャートである。
【0026】
まず、外部から水が供給された給水タンク102は、水分搬送装置100に設けられた給水タンク102を収納する給水タンク収納部に設置される。これにより、給水路110を通して貯水タンク103aに給水タンク102の水圧を利用して一定量の水が流れ込む。
【0027】
次に、図3のステップS1において水分搬送装置100に設けられた電源が押され、運転が開始すると、ステップS2にて制御手段108が加熱手段106に電流を流すことで加熱手段106が発熱し、これによって加温部109が加熱される。そして加温部109の熱が給水路110と貯水タンク103a内の水に伝わり、水温が上昇する。
【0028】
ステップS3において、図2に示す水分搬送装置100に設けられた温度センサ121が貯水タンク103a内の水の温度が90℃を越えたことを検知するか、もしくは運転開始からの経過時間がT1を超えるとステップS4に移行し、制御手段108は加熱手段106の発熱を停止させ、その後ステップS5へ進む。ここで時間T1は加熱手段106の入力と給水路110から貯水タンク103aに含まれる水を加温するのに十分な時間を設定する。ただし経過時間T1はユーザにとっては待ち時間になるため、より少なく、できれば2、3分以下が好ましい。
【0029】
次に、ステップS5において制御手段108は高湿空気生成手段103b、送風手段107、および加振器105を駆動させる。
高湿空気生成手段103bが駆動すると、貯水タンク103aに流れ込んだ水は気化ないし霧化された水となり、貯水タンク103a内に該水を含む空気である高湿空気が充満する。なお本実施の形態では、加温部106と高湿空気生成手段103bを別としたが、加熱手段106を高湿空気生成部103に設置し、高湿空気生成手段103bと兼ねてもよい。
【0030】
そして送風手段107が駆動すると、本体ケース101の外部から吸込まれた空気はまず制御手段108周辺を冷却し、次に空気流路112を経由して高湿空気生成部103に進入する。そして貯水タンク103aに充満した高湿空気は送風された空気とともに流路111を経由し、加圧室104に移送される。
【0031】
この状態で制御手段108により加振器105に駆動信号が入力されると、振動板105aが振動し、その振幅により加圧室104内の容積が変動し、加圧室104内部に貯えられていた高湿空気は、同じく加圧室104に設けられた渦輪形成口104aから外部の空間に向かって間欠的に吹出される。
【0032】
加圧室104内の高湿空気が吹出される際に、渦輪形成口104aの口縁部と高湿空気との間に強いせん断方向の摩擦が生じ、その巻き込み作用により口縁部で渦流が生成するため、渦輪形成口104aから吹出された高湿空気は渦輪114となる。渦輪114は吹出し口101cを通過し、前ケース101a外へ放出される。渦輪114は内部で回転する流体を閉じ込めたまま移動する、つまり周囲の流体へ拡散する効果が小さいため、渦輪114を作らずに高湿空気をそのまま放出するものと比べてより遠方まで高湿空気を輸送することができる。
【0033】
放出された渦輪114は、内部で回転する高湿空気を閉じ込めたまま渦輪114外周部から徐々に拡散し、渦輪114の形状が保持できなくなるまで並進する。
【0034】
図4は各部品の動作を説明するタイムチャートで、縦軸が電源、加振器105、加熱手段106、送風手段107および高湿空気生成手段103bのON/OFF動作、横軸が時間を示している。
図4に示すように、加振器105は瞬間的にONになって駆動した後、一定時間OFFになり駆動を停止する。そしてまた瞬間的にONになる、という間欠動作を繰り返す。ここで、送風手段107は加圧室104に高湿空気を搬送することが目的だが、搬送される高湿空気は途中で流路111を経由する。そのため、送風手段107を停止してから実際に加圧室104内への高湿空気が到達するまでにタイムラグが発生する。また、高湿空気が加圧室104内の渦輪形成口104a周縁まで満たされるくらいに供給された状態でも送風手段107がONの状態のまま連続的に加圧室104へ高湿空気を搬送している場合は、高湿空気が渦輪114を形成せずに渦輪形成口104aから加圧室104の外部へと溢れ出ることとなる。そして、渦輪形成口104aの外部付近に高湿空気が滞留すると、渦輪114の吹き出しが妨げられ、崩壊しやすく飛行距離の短い渦輪114になってしまう。
【0035】
このように送風手段107を連続運転させて高湿空気が加圧室104の外部へ流出することを防ぐため、本実施の形態1ではステップS5において、加振器105は駆動間隔yにて駆動することにより渦輪114の発射タイミングを制御する。例えば、駆動タイミングyが5秒であるとき、運転サイクルzは運転3秒/停止2秒とし、図3に示すように、制御手段108は送風手段107の運転と加振器105の駆動とを同期させ、加振器105が再び駆動する前に任意の時間送風手段107の運転を停止させる。このとき、運転3秒は加圧室104内を高湿空気で満たすのに十分な時間、停止2秒は高湿空気が加圧室104まで到達するのに必要な時間であり、つまり、加振器105が駆動する直前で、加圧室104が高湿空気でちょうど満タンになりあふれ出ないように、制御するものである。よって、運転サイクルzは高湿空気生成手段103b、送風手段107の仕様、流路111、加圧室104の構造などによって設定される。
【0036】
また、ステップS5にて渦輪114を生成している間は、ステップS6において、ユーザが操作手段120を操作することによって、加振器105の駆動タイミングy、つまり渦輪114の発射タイミングを変更することができる。このとき、ステップS8では変更された加振器105の駆動タイミングyに連動して、制御手段が送風手段107の運転サイクルzを変更する。なお、図3に示すフローチャート上ではステップS6はステップS5の後に来ているが、ステップS6で行う加振器105の駆動タイミングyの設定は、ステップS1〜ステップS5において自由に行うことができる。
【0037】
また、水分搬送装置100は例えばナイトモードと呼称されるような、ユーザが就寝中に使用するモードを備えており、ステップS5にて渦輪114を生成している間は、ステップS7において、ユーザが操作手段120を操作することによって、運転モードを切り替えることができる。その際、ステップS8にて加振器105の駆動タイミングyは、通常使用の数倍の時間に設定する。これによって夜から次の日の朝まで運転する場合でも、的確にユーザに向かって肌、髪周辺、のど、鼻を最適湿度に保ちつつ、寝具が濡れるのを抑制することができる。なお、図3に示すフローチャート上ではステップS7はステップS5の後に来ているが、ステップS7で行う運転モードを切り替えは、ステップS1〜ステップS5において自由に行うことができる。
【0038】
次にステップS9において、温度センサ121が貯水タンク103a内の水の温度が90℃以下になったことを検知するか、もしくはステップS3からの経過時間がT2を超えるとステップS2へ戻り、制御手段108は再度加熱手段106に電流を流し発熱させ、水を加温する。ここで経過時間T2は給水の水温、高湿空気生成手段103と加振器105の駆動タイミングなどによって設定される。
【0039】
次にステップS10において、操作手段120が操作され本体電源が停止されるか、あらかじめタイマー機能にてユーザが設定した設定時間T3が終了するか、給水タンク102の水が無くなる、あるいは予め定められた高湿空気生成最低水位以下となると運転を終了する。操作手段120による操作または手動によりユーザが排水弁119を開くことで、給水路110や貯水タンクに103aに残された水を水分搬送装置100本体外へ排出することができる。水を排出することができるので、未使用時に残った水の中での菌の繁殖や、悪臭の発生を抑制できる。
【0040】
図5は水分搬送装置100の渦輪形成口付近の要部拡大図である。なお、図5(a)は渦輪形成口104aの渦輪吹き出し方向前方に何も設けない場合を示し、図5(b)は渦輪形成口104aの渦輪吹き出し方向前方に前ケース101aおよび回収経路116を備えた場合を示す。なお、図中の白抜き矢印は渦輪114の進行方向を示し、左向き矢印は渦輪114にかかる高湿空気からの流動抵抗を示し、黒抜き矢印は高湿空気が回収される方向を示す。
上述したように本実施の形態に係る水分搬送装置100は加振器105の駆動タイミングと同期させて送風手段107を間欠駆動させる制御を行うことで渦輪114を形成しない高湿空気の加圧室104外部への漏れを抑制する。しかし、このような制御を行わない場合と比べて低減されるとはいえ多少は高湿空気が漏れる可能性がある。渦輪114を形成しなかった高湿空気は外部へあふれ出て水分搬送装置100本体の美観を損なうだけでなく、図5(b)に示すように渦輪114を形成しなかった高湿空気が渦輪形成口104a前方に留まることで、この高湿空気が留まっている空間内を通過する渦輪114に対して図の矢印の方向に抵抗が働くため、何も抵抗が働かない場合と比べて渦輪114の飛距離が短くなり、渦輪114が壊れやすくなる。
そこで本実施の形態1では、外部へ流出した高湿空気を貯留するために渦輪形成口104aの前方に前ケース101aを備えている。前ケース101aは水分搬送装置100に対して着脱可能に構成されており、加圧室104ならびに前ケース101aが結露あるいは水が残ったとしてもユーザによって清掃することができる。
【0041】
また、前ケース101aは下部に回収経路116を有しており、前ケース101a内に貯留された加湿蒸気は送風手段107によって回収経路116を介して水分搬送装置100内に吸引される。回収経路116と送風手段107との間には吸湿フィルター117が設けられ、送風手段107によって吸引された高湿空気は吸湿フィルター117を通過する際に除湿される。除湿された後の低湿空気は送風手段吸込み口112aにて外部空気と合流し、送風手段112に戻る。また、加圧室104内で結露した水分は蒸気風路111を逆流して、貯水ポット103aに回収される。
【0042】
なお、図1では前ケース101aは渦輪形成口104a周辺を囲うように構成されているが、前ケース101aは渦輪形成口104aから外部へ流出した高湿空気を貯留するための底部と側部さえ備えていればよい。また、渦輪形成口104a周縁にリブ104bを設けることで、進入した高湿空気はリブ104b周縁に蓄積されるため、高湿空気をより外部に流出し難くすることができる。
【0043】
また、前ケース101aやタンク用フタ101dとタンクカバー103cも取り外すことができるので、結露したり、水が残ったりする部分はユーザが確実にふき取ることができるので菌の繁殖や、悪臭の発生を抑制することができる。
【0044】
以上のように、本実施の形態1では、制御手段108が送風手段107の運転および停止を時間によって制御し、制御手段108が送風手段107を駆動させ、その後所定時間送風手段107を停止させ、その後加振器105を駆動させる制御を繰り返すことによって、送風手段107を常時運転させず間欠運転させることとなり、加圧室104への過剰な高湿空気移送を抑制し、加圧室104から高湿空気があふれることを抑制することができる。これによって、渦輪114が設置面に対して略水平方向に放出される場合でも、渦輪114を形成できない高湿空気の加圧室104の外への流出を抑制することができるので、その結果水分搬送装置100本体周辺のぬれによる美観低下を抑制し、かつ漏れ出た高湿空気による渦輪114の崩壊も抑制することができる。
【0045】
また、シャッター等の駆動機構による高湿空気の流出を抑制する構造を渦輪形成口104aに設けないようにしたことで、湿度の高い渦輪形成口104a付近に駆動部を設けずに済み、駆動機構の錆びによって水分搬送装置100の寿命が確保できなかったり、駆動機構の音がうるさかったりする問題がない。
【0046】
また、渦輪形成口104aの周囲に渦輪形成口104aから流出した高湿空気を貯留するための前ケース101aを設けることによって、渦輪114を形成せずに渦輪形成口104aの外部へ流出する高湿空気が前ケース101a内に貯留されるため、渦輪形成口104aからあふれた高湿空気の本体外への流出をより抑制することができる。また、水分搬送装置100本体周辺の水濡れも低減されるので、ユーザの清掃負荷を低減することができる。なお、制御手段108が加圧室104から高湿空気があふれることを抑制する制御を行うことで、前ケース101aを上記効果を維持したまま小型化することができる。
【0047】
また、前ケース101aは着脱可能のため、前ケース101a内の濡れた部分はユーザが確実にふき取ることができ、菌の繁殖や悪臭の発生等を抑制することができる。
【0048】
また、前ケース101aは回収経路116を有し、高湿空気は回収経路116から吸湿フィルター117を介して除湿された後送風手段まで回収されるため、前ケース101a内に貯留された高湿空気が水分搬送装置100本体内に回収することができ、前ケース101a内に結露する高湿空気の量を減らすことができるため、よりユーザの清掃負荷を低減することができる。
【0049】
また、渦輪114を前方に放出させる場合は、加熱式の高湿空気生成手段103bでは前ケース101aの内壁全周に高湿空気が結露するが、高湿空気生成手段103bに超音波式のものを使用すると、貯留された高湿空気は重力の影響で前ケース101aの下部に集まる。そのため高湿空気生成手段103bに超音波式のものを使用し、回収経路116を前ケース101aの下部に設けることでより効率的に高湿空気を回収することができる。
【0050】
また、送風手段107を利用して回収経路116から高湿空気を回収することによって、より効率よく流出した高湿空気を回収することができる。
【0051】
また、加振器105の駆動周期を操作手段120で行われた設定に基づいて変更することにより、給水タンク102の容量が少なくても例えばユーザが就寝中に使用することを想定した長時間水分搬送装置100を運転させる制御や、部屋内の湿度が低いときに短時間に大量の渦輪114を出して加湿する制御等を行うことができる。
【0052】
なお、加圧室104へ高湿空気を移送するための送風手段107と回収経路116から高湿空気を回収するための送風手段107を兼用することによって別途送風手段を設ける必要が無く安価、小型化が可能であるが、加圧室104へ高湿空気を移送するための送風手段107とは別に回収経路116を介して蒸気を回収するための第二の送風手段を設けてもよい。また、回収経路116を制御手段118と送風手段107の間に設けることで、制御手段118を保護することができる。
【0053】
また、前ケース101aを渦輪形成口104aの周囲を囲うように構成することによって、前ケース101a内に流出した高湿空気が外部から見えなくなるため、美観を損ねない効果を得られる。また、周囲を囲うように構成することによって、前ケース101a内に貯留した高湿空気をより効率よく回収経路116を介して水分搬送装置100内に回収することができる。
【0054】
また、渦輪形成口104aと距離を置いて対向する箇所に渦輪吹出し口101cを設けて、渦輪114の形成部と吹出し部とを別々に形成することで渦輪114をより指向性を持って飛ばすことができるので、より高湿空気を効率よく搬送することができる。なお、渦輪形成口104aで形成した渦輪114を壊さないようにするため、渦輪吹出し口101cは渦輪形成口104aよりも大きな口径である。
【0055】
また、渦輪吹出し口101cに砲筒やダクトとみなせるような構造物を設けないことで、渦輪吹出し口101cと高湿空気との接触面積が少なくなりせん断方向に働く摩擦力が強くなるため、より渦輪114の飛距離を長くすることができる。
【0056】
また、渦輪形成口104a周縁に渦輪形成口104aに対して内側方向に略垂直に延設されたリブ104bを有することで、加圧室104に進入した高湿空気が直接外部に流出することを抑制することができる。
【0057】
また、水分搬送装置100の運転開始直後は加熱手段106を駆動し、水温が一定の温度になるまで加温した後に加熱手段106を停止し、その後送風手段107を駆動することによって、供給された水や前回使用の残り水などに含まれる菌を殺菌することができる。
【0058】
また、渦輪114を生成中に水温が一定の温度まで下がるかあるいは前回加熱手段106を停止させてから所定時間が経過すると再度加熱手段106を駆動し、水温が一定の温度まで加温した後に加熱手段106を再び停止する制御を繰り返すことによって、万が一新しく給水タンク102から給水された水に菌が含まれていても殺菌することができる。
【0059】
なお、通常行われる送風手段107の駆動タイミングと加振器105の駆動タイミングとを同期させる制御の他に、制御手段108は加圧室104内の高湿空気が所定量を超えたことを検知すると送風手段107を停止する制御を行ってもよい。これによって例えば意図しない大量の高湿空気が加圧室内に搬送された場合でもより一層加圧室104から高湿空気が流出することを抑制することができる。
加圧室104内の高湿空気が所定量を超えたことを検知する方法としては、例えば図2に示したように加圧室104の湿度を計る湿度センサ122を設け、湿度センサ122が加圧室104内の湿度が所定値を超えたことを検知すると、制御手段108は送風手段107を停止する方法が挙げられる。なお、湿度センサ122は加圧室104内の湿度を検知できればどこに設けられていてもよい。また、加圧室104内の高湿空気が所定量を超えたことを検知する方法はこれに限るものでなく、例えば加圧室104内の温度で判断してもよく、その他の方法を用いてもよい。
【0060】
なお、本実施の形態に係る水分搬送装置100に、アロマテラピー装置(図示せず)を取り付け、渦輪吹出し口101cから香りつきの渦輪114を送り出すようにしてもよい。これによって加圧室104から送り出される渦輪114は、高湿空気生成部103にて生成された高湿空気に加え、アロマテラピー装置中のエッセンシャルオイルなどの香りが含まれることとなり、ユーザに癒しの効果を与えることができる。また、高湿空気生成部103を駆動させず、つまり高湿空気を加圧室104に搬送せずに高湿空気に比べて水分を含まない空気を渦輪114として吹き出してもよい。
【符号の説明】
【0061】
100水分搬送装置、101本体ケース、101a前ケース101a後ろケース、101c渦輪吹出し口、101dタンク用フタ、102給水タンク、102a給水弁、103高湿空気生成部、103a貯水タンク、103b高湿空気生成手段、103cタンクカバー、104加圧室、104a渦輪形成口、104bリブ、105加振器、105a振動板、106加熱手段、107送風手段、108制御手段、109加温部、110給水路、111流路、112空気流路、112a送風手段吸込み口、113整流板、114渦輪、116回収経路、117吸湿フィルター、118a第一の排水経路、118b第二の排水経路、119排水弁、120操作手段、121温度センサ、122湿度センサ、123中ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯えて該水を気化ないし霧化させる高湿空気生部と、
前記高湿空気生部から搬送された水を含む高湿空気に間欠的に圧力を加える加圧手段を有する加圧室と、
前記高湿空気生部と前記加圧室とを接続する流路と、
前記高湿空気を前記流路を介して前記高湿空気生部から前記加圧室へ搬送する送風手段と、
前記加圧室を形成する壁面に開口して設けられ、前記加圧手段により圧力を加えられた前記高湿空気を渦輪状に放出する渦輪形成口と、
前記送風手段を駆動させた後に前記送風手段を所定時間停止させ、その後前記加圧手段を駆動させる制御を繰り返す制御手段と、を備えたことを特徴とする水分搬送装置。
【請求項2】
前記渦輪形成口の吹き出し方向前方に設けられ、渦輪を形成せずに前記渦輪形成口から流出した高湿空気を貯留するための貯留部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の水分搬送装置。
【請求項3】
前記貯留部に貯留された高湿空気を回収する回収経路と、
前記高湿空気を除湿するための吸湿フィルタと、を備え、
前記貯留部に貯留された高湿空気を前記吸湿フィルタを経由して前記回収経路から回収することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水分搬送装置。
【請求項4】
前記送風手段は前記吸湿フィルタの下流側かつ前記高湿空気生部より上流側に配置され、前記送風手段は前記回収経路を経由して前記貯留部にて貯留した高湿空気を吸い込むことを特徴とする請求項3に記載の水分搬送装置。
【請求項5】
前記貯留部にて貯留した高湿空気を、前記回収経路を経由して吸い込むための第二の送風手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の水分搬送装置。
【請求項6】
前記貯留部は前記渦輪形成口の周囲を囲うように形成され、前記貯留部は前記渦輪形成口と対向する箇所に前記渦輪形成口にて形成した渦輪を外部に放出する渦輪吹き出し部を有し、前記渦輪吹き出し部は前記渦輪形成口よりも寸法が大きいことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の水分搬送装置。
【請求項7】
前記制御手段を操作するための操作手段を備え、
前記制御手段は、前記加圧手段の駆動周期を前記操作手段で行われた設定に基づいて変更することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の水分搬送装置。
【請求項8】
前記渦輪形成口周縁の前記加圧手段の加圧方向内側にリブを有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の水分搬送装置。
【請求項9】
水を加熱するための加熱手段を備え、
前記制御手段は、運転開始直後は前記加熱手段を駆動し、前記高湿空気生部の水温が一定の温度まで達すると前記送風手段を運転することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の水分搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24479(P2013−24479A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159692(P2011−159692)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】