説明

水分散性フィルム

エタノールを含む有機溶媒混合物から流延することにより製造した、軟らかく柔軟なセルロースアセテートフタレート(CAP)−ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)複合フィルムを提供する。前記フィルムは、急速に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)、ヘルペスウイルス(HSV)、非ウイルス性感染症病原体(例えば、ナイセリア・ゴノレア、ヘモフィルス・デュクレイ、クラミジア・トラコマティス、およびトレポネーマ・パリダム)および細菌性膣疾患(BV)に関連した細菌を含む、いく種かの性感染症病原体の感染性を減少させる。フィルムは、ゲル/クリームに変換され、これより、適用および使用の後に除去する必要がない。前記フィルムは、局所殺微生物剤であることに加えて、セルロースアセテートフタレート以外の医薬の粘膜送達に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス、および非ウイルス性感染症病原体の性感染を予防するための殺微生物剤として、および薬物送達システムとして使用できる、水分散性フィルムに関する。本発明はまた、このようなフィルムを作成する方法にも関する。より特定すると、本発明は、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)およびセルロースアセテートフタレート(「CAP」)フィルムを含む、水分散性の殺微生物剤に関する。
【0002】
発明の背景
過去に医薬賦形剤としておよび薬物送達で使用されたポリマーは、特定の治療的および予防的適用に考慮されることがますます増えている(Liao J.、Ottenbrite R.M.、「ポリマー薬物の生物学的効果」、制御された薬物送達、Park K.著、ワシントンDC:米国化学学会;1997、455-467;Uglea C.V.、Panaitescu L.、「抗ウイルスおよび抗腫瘍活性を有する合成ポリアニオン性巨大分子、Current Trends in Polymer Science、1997、2:241-251;Chiellini E.、Sunamoto J.、Migliaresi C.、Ottenbrite R.M.、Cohn D.(著)、Proceedings of the Third International Symposium on Frontiers in Biomedical Polymers including Polymer Therapeutics:From Laboratory to Clinical Practice:23-27、1999年5月;Shiga Dordrecht:Kluwer Academic/Plenum Publishers:2001;Duncan R.、「ポリマー治療薬の新時代」、Nat Rev Drug Discov.2003、2:347-360;Kabanov A.V.、Okano T.、「ポリマー治療薬の挑戦:ポリマー薬物の技術の現状および展望」、臨床段階のポリマー薬物、Maeda H.、Kabanov A.、Kataoka K.、Okano T.著、ニューヨーク:Kluwer Academic/Plenum Publishers:2003、1-27)。このようなポリマーは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)を含む、性感染症(STD)病原体による感染を予防するための殺微生物剤のように局所適用において見込みがあるようである(Stone A.、「殺微生物剤:HIVおよび他の性感染性感染を予防するための新規アプローチ」、Nat.Rev.Drug.Discov、2002、1:977-985)。
【0003】
これらの見込みあるポリマー殺微生物剤の内の一種は、セルロースアセテートフタレート(CAP)である。(Neurath A.R.、Strick N.、Li Y-Y.、Lin K.、Jiang S.、「不活性な」医薬添加剤を使用した性感染症の予防のための「殺微生物剤」の設計」、1999、27:11-21;Gyotoku T.、Aurelian L.、Neurath A.R.、「セルロースアセテートフタレート(CAP):生殖器ヘルペスウイルス感染のマウスモデルにおいて抗ウイルス活性を有する「不活性な」医薬添加剤」、Antiviral Chem.Chemother.、1999、10:327-332;Manson K.H.、Wyand M.S.、Miller C.、Neurath A.R.、「アカゲザルにおけるサル免疫不全ウイルスの膣感染に対する、セルロースアセテートフタレート局所クリームの効果」、Antimicrob.Agents Chemother、2000、44:3199-3202;Neurath A.R.、Li Y-Y.、Mandeville R、Richard L、「細菌性膣疾患に関連した生物に対するセルロースアセテートフタレート局所クリームのインビトロ活性」、J.Antimicrob Chemother.、2000、45:713-714;Kawamura T.、Cohen S.S.、Borris D.L.、Aquilino E.A.、Glushakova S.、Margolis L.B.、Orenstein J.M.、Offord R.、Neurath A.、Blauvelt A.、「候補殺微生物剤は、上皮組織外植片内のヒト未熟ランゲルハンス細胞のHIV−1感染を遮断する」、J.Exp Med.2000、192:1491-1500;Neurath A.R.、Strick N.、Li Y-Y.、Debnath A.K.、「一般的な医薬賦形剤であるセルロースアセテートフタレートは、HIV−1を失活させ、ウイルスエンベロープ糖タンパク質gp120上のコレセプター結合部位を遮断する」、BMC Infect.Dis.、2001、1:17;Neurath A.R.、Strick N.、Jiang S.、Li Y-Y.、Debnath A.K.、「セルロースアセテートフタレートの抗HIV−1活性:可溶性CD4との相乗作用および「行き詰まりの」gp41六本へリックス束状構造の誘導」、BMC Infect.Dis.、2002、2:6;およびNeurath A.R.、Strick N.、Li Y-Y.、「アニオン性ポリマーの抗HIV−1活性:候補殺微生物剤の比較研究」、BMC Infect.Dis.、2002、2:27)。
【0004】
CAPは、錠剤およびカプセル剤の腸溶性フィルムコーティングのために使用されており(Goskonda S.R.、Lee J.C.、「セルロースアセテートフタレート」、医薬賦形剤のハンドブック、Kibbe A.H.著、ワシントンD.C./ロンドン、英国:アメリカ薬剤協会/薬剤会誌;2000:99-101)、従って、ヒトへの使用に対して十分に確立された安全記録を有する。CAPは、pH<約5.8の水に溶けない。この理由から、水分散液からの両方の錠剤コーティングについて微細形で、局所殺微生物剤として使用しなければならない。微細化は、シュードラテックス(pseudolatex)エマルション工程により達成される(Banker G.S.、「医薬コーティング組成物、および調製およびこのようにコーティングされた用量」、米国特許第4,330,338号、1982;McGinley E.J.、Tuason D.C.、「医薬投与形態用の腸溶性コーティング」、米国特許第4,518,433号、1985;McGinley E.J.、「医薬投与形態用の腸溶性コーティング」、欧州特許第EP0111103、1989:Wu S.H.、Greene C.J.、Sharma M.K.、「水分散性のポリマー組成物」、米国特許第4,960,814号、1990;Wu S.H.W.、Greene C.J.、Sharma M.K.、「水分散性ポリマー組成物」、米国特許第5,025,004号、1991;Sakellariou P.、Rowe R.C.、「エチルセルロース/セルロースアセテートフタレートブレンドにおける相分離および形態」、J.Applied Polymer Science、1991、43、845-855;Ibrahim H.、Bindschaedler C.、Doelker E.、Buri P.、Gurny R.、「塩析工程により調製した水性ナノ分散液」、Int.J.Pharm.、1992、87、239-246;Quintanar-Guerrero D.、Allemann E.、Fessi H.、Doelker E.、「蒸留による部分水混和性溶媒の直接置換を伴う、新規エマルション拡散工程を使用したシュードラテックス調製」、Int.J.Pharm.、1999、188、155-164;Yuan J.、Wu S.H.W.、「ポリマー粉末の製造工程」、米国特許第6,541,542号;2003)。前記した以下の米国特許の各々の全内容を、本明細書中に援用する;米国特許第4,330,338号;米国特許第4,518,433号;米国特許第4,960,814号;米国特許第5,025,004号;および米国特許第6,541,542号。
【0005】
適切なゲル製剤中の「アクアテリック(Aquateric)」(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア所在のFMC社)(63〜70重量%のCAP、ポロキサマーおよびアセチル化モノグリセリドを含む)の商標名で市販されている微細化形態のCAPは、HIV−1およびいくつかの他のSTD病原体をインビトロおよび動物モデルにおいて失活することが示された(Neurathら、Biologicals、(1999)、27、11-21;Gyokuら、Antiviral Chem.Chemother.、(1999)、10、327-33;Mansonら、Antimicrob.Agents Chemother.2000、44、3199-3202;Neurathら、BMC Infect.Dis.、(2002)、2、7)。微細化CAPは、生理的液体からの吸着によりHIV−1を迅速に除去し、ウイルスを非感染性とする能力を有する唯一の候補殺微生物剤であることが示された。
【0006】
CAPまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMEP)は、ヒト免疫不全ウイルスまたはヘルペスウイルス感染の感染頻度を減少させ(両方共がNeurathらの米国特許第5,985,313号および米国特許第6,165,493号);及び細菌性膣疾患を処置または予防するために使用されている(Neurathらの米国特許第6,462,030号)。
【0007】
避妊活性を有するまたは有さない殺微生物ゲルは、欠点を有する。それらは局所送達にアプリケーターを必要とし、これにより費用を増し廃棄問題が生じる(これは環境的な関心事である)。これらの欠点は、以下の特性を有する水中に分散可能なユニット用量の生分解性装置により克服できる:(1)殺微生物活性は、装置の組込まれた特性であり、すなわち、活性成分は、装置の一体構造的構成成分であり;(2)装置は、生理的液体を吸収し、その後崩壊し;(3)感染物質が、生じた構造に結合し、迅速に不活性化されることになり;及び(4)最後に、装置は軟らかいゲルに変換され、これは除去する必要がない。1種のこのような生分解性の殺微生物膣障壁装置は、生体接着性の部分的に置換されたセルロースのエーテル(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(NeurathおよびStrickの米国特許第6,572,875号))の溶液中のアクアテリックの水懸濁液から生じた泡状物を凍結乾燥することにより調製したスポンジである。CAPまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)およびペクチンを含む別の生分解性殺微生物膣障壁装置は、NeurathおよびStrickの米国特許第6,596,297号に記載されている。
【0008】
代りに、スポンジは、セルロースエーテルの内の一種の水溶液と混合された酢酸エチル中のCAPのマイクロエマルション(Kietzke T.、Neher D.、Landfester K.、Montenegro R.、Guntner R.、Scherf U.、「ポリマーナノ粒子に基づいたポリマーブレンドへの新規なアプローチ」、Nat.Mater、2003、2:408-412)を凍結乾燥することにより調製できる。これらのスポンジは、34〜40重量%の活性成分であるCAPを含んでいた。単位用量スポンジの利点は、凍結乾燥のコストが比較的高いことにより軽減される。これにより、発展途上国における殺微生物剤としての使用は制限される。それ故、代替的なアプローチを探索しなければならなかった。
【0009】
水溶性または水分散性フィルムが、粘膜表面への薬物送達に使用されてきた(Heusser J、Martin M.、「医薬的な膣に適用可能な製剤およびその調製工程」、米国特許第5,380,529号、1995;Meyers M、「チューインガムの賞味期限を延長するための食用フィルムの使用」、米国特許第5,409,715号、1995;Staab R.、「避妊のための溶解可能な装置または医薬品の送達」、米国特許第5,529,782号、1996;Thombre A.G.、Wigman L.S.、「迅速に崩壊し速く溶解する固体投与形態」、米国特許第6,497,899号、2002)。
【0010】
発明の要約
本発明の目的は、水分散性の殺微生物性セルロースフタレートフィルムを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、薬物送達システムとして使用できる水分散性フィルムを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、このような水分散性フィルムを製造する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、膣疾患を処置するか、または、ヒト免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス感染および他の性感染症を予防することである。
【0014】
本発明は、このようなゲル/クリームを、精液または膣分泌液のような生理的液体に分散可能な単位用量生分解性装置で置き換えることにより、殺微生物性ゲルによる前記の困難を回避する働きをする。
【0015】
本発明は、水の存在下で、微細化CAPを含む滑らかなクリームへと変換される粘膜接着性フィルムを提供する。これより、本発明は、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびグリセロールを含む水分散性フィルムに関し、前記フィルムは、乾燥時に、35〜45重量%のセルロースアセテートフタレート、35〜45重量%のヒドロキシプロピルセルロース、および10〜30重量%のグリセロールを含み、前記フィルムは、水または生理的液体との十分な接触後に、微細化セルロースアセテートフタレートを含むゲルまたはクリームへと変換される。
【0016】
本発明はさらに、薬物送達システムに関する。これより、本発明は、(i)セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、およびグリセロールを含む複合物、および(ii)医薬的に有効な量の、前記有機溶媒中に溶解できる医薬とを含む組成物を指向するものであり、前記複合物は、有機溶媒中で乾燥した時に、35〜45重量%のセルロースアセテートフタレート、35〜45重量%のヒドロキシプロピルセルロース、および10〜30重量%のグリセロールを含む。
【0017】
本発明はまた、このようなヒトの粘膜に本発明のフィルムを適用することにより、必要とするヒトにおける、ヒト免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス、および非ウイルス性の性感染症感染を予防する方法にも関する。
【0018】
本発明はさらに、女性に本発明のフィルムを膣内投与することにより、細菌性膣疾患を処置する方法に関する。
【0019】
本発明はまた、CAPをヒドロキシプロピルセルロース(HPC)と組み合わせ、エタノールを含む有機溶媒混合物から流延することにより、このようなフィルムを製造する方法も指向する。従って、本発明は、エタノールと、アセトン、酢酸エチルおよび氷酢酸からなる群より選択された別の有機溶媒とを含む有機溶媒混合物中に、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、およびグリセロールを溶解することを含む水分散性フィルムの製造方法を提供し、ここで、セルロースアセテートフタレートは、1.75重量%以上の量であり、ヒドロキシプロピルセルロースは、1.75重量%以上の量であり、グリセロールは、0.75重量%以上の量であり、残りは有機溶媒混合物であり、ただし、乾燥フィルムが、前記したような乾燥フィルムと同じ組成を有する限りにおいてである(35〜45重量%のCAP、35〜45重量%のHPC、および10〜30重量%のグリセロール)。フィルムは、適切なフィルム流延および乾燥設備を使用してこの混合物から注入成形する。
【0020】
本発明を説明するために、図面を提供する。しかし、本発明は、図面に示した精確な配置および手段に制限されないことを理解されたい。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明の1つの実施態様では、活性成分であるCAPが一体構造的構成成分である、軟らかい柔軟な複合フィルムを提供する。フィルムは、乾燥時に、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびグリセロールを含む。好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース成分は、75〜6,500cpsの粘度等級を有する。十分な量のグリセロールを使用してフィルムを軟らかくする。
【0022】
乾燥フィルムは、35〜45重量%のCAP(好ましくは38〜42重量%のCAP)、35〜45重量%のHPC(好ましくは38〜42重量%のHPC)および10〜30重量%のグリセロール(好ましくは16〜24重量%のグリセロール)を含む。
【0023】
本発明のフィルムは、水を吸収して崩壊し、微細化CAP粒子を形成するに至り、これらがHIV−1を吸収し(Neurathら、BMC Infect.Dis.、(2002)、2、27)、STD病原体を不活性化することが示された。これより、本発明のCAP−HPC複合フィルムは、水または生理的液体との十分な接触後に、ゲル/クリームへと漸進的に変換され(図1D)、こうして、アプリケーターによる送達を必要のないものにする。類似のゲルが、HIV−1、HSV、および他のSTD病原体を迅速に不活性化することが以前に示されていた(Neurathら、Biologicals、(1999)、27、11-21、Gyotokuら、Antiviral Chem.Chemother.、(1990)、10、327-332;Neurathら、BMC Infect.Dis.、(2001)、1、17;Neurathら、BMC Infect.Dis.、(2002)、2、6;Neurathら、BMC Infect.Dis.、(2002)、2、27)。
【0024】
STD病原体を含む液体との接触時に、本発明のフィルムは、ゲルへと変換されるかなり前に、ウイルスおよび/または細菌を迅速に不活性化する。生理的工程中に期待される高い剪断速度に暴露により、図1Dに示したよりも迅速なフィルムからゲルへの崩壊および変換を生じる。これは、フィルムが、インビボ条件下で効能が出ることになることを示す。
【0025】
CAPをベースにしたゲル(Neurathら、J.Antimicrob.Chemother.、(2000)、45、713-714)と同様に、本発明のCAP−HPCフィルムは、HIV−1感染に対する感受性を増加することが知られている、BVに関連した数種の細菌に対して活性である(Martin H.L.、Jr.Richardson B.A.、Nyange P.、Lavreys L.、Hillier S.L.、Chohan B、Mandaliya K.、Ndinya-Achola J.O.、Bwayo J.、Kreiss J.、「膣乳酸菌、微生物叢、およびヒト免疫不全ウイルス1型および性感染症獲得のリスク」、J.Infect.Dis.、1999、180:1863-1868)。このように、挿入されたCAP−HPCフィルムは、BVの処置に使用できる。
【0026】
本発明のフィルムは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)、ヘルペスウイルス(HSV−1またはHSV−2)、および非ウイルス性感染症感染(例えばナイセリア・ゴノレア、ヘモフィルス・デュクレイ、クラミジア・トラコマティス、およびトレポネーマ・パリダム)の予防のために、または、細菌性膣疾患(BV)の処置のために、男性または女性の粘膜に適用できる。これより、フィルムは、膣、直腸、口腔、鼻道などのような内部生体領域に適用できる。
【0027】
フィルムは、保存剤、香料、芳香剤、および/または着色剤のような添加剤を含み得る。これらの添加剤は、任意の望ましい濃度で存在し得る。これらの添加剤の濃度は、所望の特性、放出する薬剤、効力、所望の投与量、溶解時間などに依存することになる。
【0028】
本発明の別の実施態様では、CAP−HPC複合フィルムは、CAP以外の医薬の粘膜表面への送達に使用できる。医薬は、アセトンのようなフィルムの作成に使用される有機溶媒中に溶解できる薬物にすべきである。粘膜表面に関するこのような適用は、経口および眼科適用を含む(Gates K.A.、Grad H.、Birek P.、Lee P.I.、「メトロニダゾールの放出制御のための新しい生体内分解性ポリマーインサート」、Pharm. Res.、1994、11:1605-1609;Baeyens V.、Kaltsatos V.、Boisrame B.、Fathi M.、Gurny R.、「ゲンタマイシンの長時間放出のための可溶性生体接着性眼科薬物インサート(BODI)の評価:涙壺薬物動態および眼耐容性」、J.Ocul.Pharmacol.Ther.、1998、14:263-272)。
【0029】
このようにして送達できる医薬のタイプには、抗生物質、抗ウイルス剤、真菌剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗掻痒剤、殺精子剤、鎮痛剤、および防腐剤が含まれ、これらに限定されない。
【0030】
本発明の細断した複合フィルムは、他の賦形剤と組み合わせて、圧縮して錠剤にでき、錠剤は即座に崩壊し、代替的な殺微生物剤および一般的な薬物送達システムを提供する。
【0031】
CAP−HPC複合物は、例えば顆粒などのフィルム以外の物理形で、エタノール(EtOH)(本明細書に記載した通り)を含む有機溶媒混合物から乾燥でき、錠剤崩壊剤と組み合わせ(マンノゲム(Mannogem)またはファーマバースト(Pharmaburst)[SPIファーマ、米国MI州グランドヘイブン)、圧縮して錠剤にできる。錠剤は、水と接触すると即座に崩壊し、その後、フィルムにより生じたものと類似した平滑なクリームへと変換される(図1D)。このような錠剤は、局所殺微生物剤および薬物送達ツールとしてのCAP−HPC複合物の適用可能性を広げる。一般に、記載の複合物は、腸溶性コーティング材料から、固有の抗微生物特性を有する新規粘膜薬物送達システムの構成成分となるまで、CAPの機能を広げることに寄与している。
【0032】
錠剤は、任意の薬物粉末を用いて形成できる。薬物粉末は、必ずしも、有機溶媒中に溶けることができなければならない必要はない。このようにして使用できる適切な薬物には、以下が含まれるがこれに限定されない:(1)抗感染剤、例えば抗生物質、例えばアジスロマイシン、トロバフロキサシン、およびスルホンアミド、抗ウイルス剤、抗真菌剤、例えばフコナゾールおよびボリコナゾール、抗原虫剤および抗細菌剤;(2)抗炎症剤、例えばヒドロコルチゾン、オキサプロジン、セレコキシブ、バルデコキシブ、デキサメタゾン、トリアムシノロン、および種々のプレドニゾロン化合物;(3)エストロゲンステロイド、例えばエストロン;(4)妊娠促進剤、例えばプロゲステロン;(5)プロスタグランジン;(6)冠血管拡張剤および冠疾患処置用の他の薬物;(7)鎮咳剤;(8)抗ヒスタミン剤、例えばセチリジン;(9)麻酔剤、(10)高血圧剤、例えばインドルミン、アムロジピン、およびニフェジピン;(11)麻酔剤、例えばメプタジノールおよびペンタゾシン;(12)精神安定剤、例えばロラゼパム、オキサゼパム、およびテンパゼパム;(13)避妊剤、例えばエチニルエストラジオールおよびノルゲストレル;(14)向精神剤;(15)咳/風邪治療薬(鬱血除去剤を含む);(16)アルツハイマー病の処置薬、例えばドネペジル;(17)尿失禁の処置薬、例えばダリフェナシン;(18)骨粗鬆症の処置薬、例えばドロロキシフェン;(19)筋肉弛緩剤、例えばオルフェナドリン;(20)アルドースレダクターゼ阻害剤、例えばゾポルレスタット;(21)神経筋薬、例えばピリドスチグミン;(22)性腺ホルモン;(23)副腎皮質ステロイド、例えばプレドニゾロン;(24)HGM−CoAレダクターゼ阻害剤、例えばアトロバスタチン;(25)子宮に作用する薬物、例えばヒヨスチンブチルブロミド;(26)抗アレルギー剤、例えばトリプロリジン;(27)毒を軽減する薬物;(28)代謝機能不全のための薬物、例えばメチルセルギド;(29)男性勃起機能不全の処置薬、例えばシルデニフィル;(30)糖尿病の処置薬、例えばグリピジド;(31)偏頭痛処置薬、例えばエレトリプラン、スマトリプタン;および(32)アドレナリン作用拮抗剤、例えばドキサゾシン。使用できる他の特定の薬物には、クロトリマゾール、ミコナゾール、チコナゾール、ベンズアルコニウムクロリド、ナイスタチン、ベンゾカイン、およびニトログリセリンが含まれる。
【0033】
様々な薬物の組合せを所望の通りに使用してよい。典型的には、薬物の範囲は、0.0001重量%から約5重量%の量であり得る。薬物は、様々な化学形態、例えば非荷電分子、分子複合体、または非刺激性の薬理学的に許容される塩などであり得る。このような薬物の単純な誘導体、例えばエーテル、エステル、アミドなどもまた、保持、放出および生体内pH、酵素などによる容易な加水分解のような、所望の特性のために使用できる。使用する薬物の量は、特定の薬物、所望の治療効果または予防効果、ならびに必要な放出時間に応じて変わる。
【0034】
本発明のさらなる実施態様では、本発明の水分散性フィルムを製造する方法を提供する。このような方法は、CAP、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびグリセロールを、エタノールおよび別の有機溶媒(例えばアセトン)中に溶解し、得られた混合物を、皿またはプレート、例えばテフロン(登録商標)コーティングしたもしくはアルミニウムプレート、または固体ポリマー材料のような容器中に移す(例えば注ぐことにより)ことを伴い、容器から乾燥フィルムを容易に取り出すことができる。好ましくは、ほとんど50重量%に等しいからほとんど65重量%に等しいエタノールを含む、溶媒混合物を使用する。その後、溶媒または溶媒混合物を、乾燥により蒸発する。
【0035】
本発明のフィルムを調製するために、0.2〜3重量%のCAP;2〜5重量%のHPC;0.8〜1.2重量%のグリセロールを使用することが好ましく、残りは、エタノールおよび別の有機溶媒(例えば酢酸エチル、氷酢酸およびアセトン)を含む有機溶媒である。他の有機溶媒はアセトンであることが好ましい。
【0036】
多孔性の凍結泡状物の真空乾燥とは異なり(スポンジが得られる)、流延形成フィルムの乾燥によって、十分な水の除去がなされない。残留した湿気により、CAPのゆっくりとした加水分解のために、室温を超えた温度での保存中にフィルムが不安定となる(Goskondaら、医薬賦形剤のハンドブック、(2000)、99-101;Gatesら、Pharm.Res.、(1994)、11、1605-1609;Karlsson A.、Singh S.K.、「医薬錠剤コーティングのためのセルロースアセテートフタレートフィルムの熱的および機械的特性解析:測定中の湿度の効果」、Drug Dev.Ind.Pharm.、1998、24:827-834)。
【0037】
水懸濁液から流延したCAPフィルムにおける残留湿気から生じる問題は、理論的には、有機溶媒からフィルムを調製することにより克服できる。しかし、このことは、有機溶媒から流延したCAPフィルムは、耐水性であり(Goskondaら、医薬賦形剤のハンドブック、(2000)、99-101)、pH>約5.8の場合にのみ溶解し始めるので、常識に反すると思われる。さらに、スポンジの製造のためにCAP/アクアテリックと一緒に使用した粘膜接着性セルロースエーテルはいずれも(米国特許第6,572,875号)、CAPを溶解する有機溶媒に可溶性であると報告されており(Goskondaら、医薬賦形剤のハンドブック、(2000)、99-101)、塩化メチレンに可溶性のHPCは例外である(R.J.Hawood、「ヒドロプロピルセルロース」、医薬賦形剤のハンドブック、A.H.Kibbe著、ワシントンD.C.、ロンドン、英国、アメリカ薬剤協会、薬剤会誌、(2000)、244-248)。HPCはまた、セルロースエーテルの中で最善の生体接着性ポリマーの一種である(K.R.Tambweker、V.K.Gujan、R.Kandarapu、L.J.D.Zaneveld、S.Garg、「膣錠剤の特性解析に対する種々の生体接着性ポリマーの効果」、Microbicides 2002 Conference Abstract、15(2002)。
【0038】
複合CAP(例えば40重量%)−HPC(例えば40重量%)−グリセロール(例えば20重量%)フィルムは、以下の無水有機溶媒の内の一種から流延できる:酢酸エチル;氷酢酸;塩化メチレン;およびアセトン/EtOH 9:1(v/v)。得られたフィルムは硬く脆く、水中に分散しないことが判明した。驚くべきことに、流延用溶媒であるそれぞれ酢酸エチル、CHCOOH、およびアセトンへのEtOH(最終濃度は50〜65重量%)の添加により、劇的に変化した特性を有するフィルムが得られた。フィルムは軟らかく柔軟性があり、水中に分散され、最終的には滑らかなクリームを生じた。アセトン/EtOH4:6から流延した、40重量%のCAP、40重量%のHPC、および20重量%のグリセロールを含む、選択したフィルム(「H」と表示する)の特性を本明細書中に記載する。
【0039】
実施例
本発明を、今、以下の実施例を参照して説明することにするが、実施例は制限するものではない。
【0040】
実施例1:CAP−HPCフィルムの調製および物理的特性
CAP、HPC(150〜400cps、NF、スペクトル(Spectrum)、米国ニュージャージー州ニューブランズスウィック)、HPC(4,000〜6,500cps、NF、スペクトル)、およびグリセロールを、アセトン−エタノール(EtOH)4:6中に、それぞれ最終濃度2、1、1、および1%(w/w)で溶かした。粘性液体を、テフロン(登録商標)コーティングされたスティールまたはアルミニウムホイル皿(0.425g/cm)に注ぎ、これらをその後、40℃で16時間維持し、その後、1時間50℃の真空オーブン中でフィルムを乾燥した。
【0041】
フィルムからクリームへの変換の動態を測定するために、フィルムを、ガーディアンクロスカットシュレッダー(クオルテット(Quartet)GBC、米国イリノイ州スコーキー)で約1mm片に細断し、水またはヒト精液(ニューイングランドイミュノロジーアソシエーツ、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)のいずれかに75mg/mlで加えた。粘度を、DV−3PRデジタル粘度計(アントンパール(Anton Paar)GmbH、オーストリア・グラーツ)で、200〜2r.p.m.まで減速した速度でTR−8軸を使用して測定した。
【0042】
流延フィルムのイメージングは、JEOL6500電界放射型走査電子顕微鏡(SEM)(JEOL USA社、米国マサチューセッツ州ピーボディ)を用いて5,000倍の倍率で実施した。走査型白色光干渉顕微鏡(「SWLIM」)を、25倍の倍率で、フィルムの両面で実施した。フィルムH(厚さ≧100μ)の走査電子顕微鏡写真により、フィルムの一方の側に(A側;乾燥中に空気に暴露)粒子蓄積層が判明し(図1A)、他方の側は平滑であった(結果は示していない)。これはまた、フィルムの両側の3次元対話型ディスプレイでも示された(図1B、図1C)。図1A〜1Fは、セルロースアセテートフタレート(CAP)およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の「H」と以降称する選択された複合フィルムの形態、および、水へのフィルム分散後の粒子に関する。
【0043】
フィルムの完全な分散後に得られるCAP粒子を、10,000×gで5分間の遠心分離によりペレット化し、水で洗浄して過剰のHPCを除去し、凍結乾燥した。粒子を水中に分散し、自動走査型電子顕微鏡により、NORANボヤージャーシステムと連動したJEOL6400走査型電子顕微鏡(NORANインストルメンツ社、米国ウィスコンシン州ミドルトン)を使用して測定した。炭素基質上の粒子のイメージングは、JEOL6500電子顕微鏡を使用して実施した。
【0044】
フィルムの水への暴露により、崩壊が起こり、最終的にはクリームに変換可能であるより小さな粒子の形成がなされた。水中でフィルム片を低速で混合することにより、粘度が次第に増加することにより示されるように、平滑なクリームが生じ(図1D)、これは、フィルムを精液に懸濁した場合にはより急速であった。SEMにより、得られたクリーム中の微細化CAPの粒子が判明した(図1E)。粒子は、0.5〜3μのサイズを有していた(図1F)。
【0045】
実施例2:HIV−1およびヘルペスウイルス(HSV)の感染性の測定
HIV−1感染性を測定するために、ウイルスを、ポリエチレングリコール8000を有する10%ウシ胎児血清を含む組織培養培地(最終濃度は10mg/ml)から沈降させた。ウイルスを含むペレットを、225μlのアリコートの0.14M NaCl、0.01Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、pH7.2(TS)に溶解した。アリコートを37℃まで予め加温し、フィルム「H」の予め切断した片を加えた。37℃で5分後に、1.225mlの組織培養培地を加え、混合物を14,000rpmで1時間、エッペンドルフ54156マイクロヒュージ(ブリンクマン・インストルメンツ社、米国ニューヨーク州ウェストベリー)中で遠心分離してウイルスをペレット化した。ウイルスを再度溶解し、2倍に連続希釈し(2倍から2,048倍)、希釈液を、HIV−1 IIIBおよびHIV−1BaLについてそれぞれAIDSリージェントおよびリファレンス・リージェント・プログラム(米国メリーランド州ロックビル)から得られた、HeLa−CD4−LTR−β−galおよびMAGI−CCR5細胞を使用して感染性について試験した。
【0046】
ウイルス複製は、Neurathら、BMC Infect.Dis.、(2002)2、27に記載される通りに細胞溶解液中のβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)活性を測定することにより定量した。平行した一連の実験において、残留フィルムHを、フィルム−ウイルス混合物から2,000rpmで5分間の遠心分離により除去し、その後、ウイルスを14,000rpmでペレット化した。対照およびフィルムH処理HSV−1およびHSV−2の感染性を、それぞれ、HIV−1について記載したのと類似した条件下で測定した(Neurathら、Biologicals、(1999)、27、11-21)。HSV−1は、組換えウイルスvgCL5の形態であり、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)の発現は、後期遺伝子C調節領域の制御下にある。Vero細胞を、感染に使用し、これは、β−gal活性を測定することによりモニターした。誘導性HSVプロモーターの後に配置されたLacZ遺伝子を含むELVIS HSV細胞(ジアグノスティック・ハイブリッズ社、米国オハイオ州アセンズ)を、HSV−2による感染に使用した。感染は、β−galを測定することにより求めた。
【0047】
微細化CAP(アクアテリック)は、数分以内にHIV−1、HSV、および数個の非ウイルス性STD病原体(Neurathら、Biologicals、(1999)、27、11-21;Neurathら、BMC Infect.Dis.、(2002))の感染性を不活性化することが示された。水の存在下で完全に崩壊し、クリームに変換されるよりずっと前に、フィルムHが、類似の効果を有するかどうかを求めることが関心事であった。フィルムの最も高い用量において(56mg/ml)、HIV−1、HSV−1、およびHSV−2の≧99%の不活性化が、37℃で5分以内に観察された(図2Aから図2D)。図2A〜2Dは、漸次量のフィルムHによる、HIV−1 IIIB、HIV−1BaLおよびヘルペスウイルスHSV−1およびHSV−2の不活性化を示すグラフである。それぞれの対照およびフィルム処理(37℃で5分間)ウイルスの連続希釈液を細胞に加え、ウイルス複製を、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)活性を測定することによりモニターした。図2A〜2Dにおいて、円は「未処理」を示し;四角は56mg/mlのフィルムを示し;ひし形は、28mg/mlのフィルムを示し;上向きの三角は、14mg/mlのフィルムを示し;下向きの三角は、7mg/mlのフィルムを示す。別個の細胞コレセプターCXCR4およびCCR5をそれぞれ使用しているウイルス(Neurathら、BMC Infect.Dis.、(2001)、1、17)であるHIV−1IIIBおよびBaLの両方を不活性化した。フィルム用量が減少するにつれて、ウイルス不活性化の程度は減少し、7mg/mlの用量で、HIV−1IIIB、HIV−1BaL、HSV−1、およびHSV−2のそれぞれについて、89±4、82±9、99.7±0.1、および95±2%であった。全ての場合における残留感染性は、フィルムおよびそれから放出された粒子を遠心分離により除去した後に上澄み中に回収され、このことは、フィルム材料に吸着されていなかったウイルスだけが、不活性化を免れたことを示唆する。これは、別々の実験で確認された(データは示していない)。比較のために、殺微生物剤として示唆された単位用量のフィルムは、約1,000mgである。
【0048】
実施例3:非ウイルスSTD病原体および細菌性膣疾患(BV)に関連した細菌の不活性化
細菌株および対応する増殖培地は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、米国バージニア州マナッサス)から得、Neurathら、Biologicals、(1999)、27、1、11-21およびNeurathら、J.Antimicrob.Chemother.(2000)、45、713-714に記載されているのと同じであった。使用したマイコプラズマ・カプリコルムは、ATCC番号23205であった。漸増量のフィルムH(0〜150mg/ml)を、37℃に予め加温したそれぞれの細菌の懸濁液(TS中に8×10〜1×10/ml)に加えた。37℃で5分後、懸濁液を、適切な増殖培地で10倍に希釈し、細菌を遠心分離してペレット化し、その後、元の容量の増殖培地に再度懸濁した。適切な増殖培地中の連続10倍希釈液を作成し、37℃で(ヘモフィルス・デュクレイでは30℃)20時間から5日間インキュベートした後、細菌株に応じて、濁度を600nmで測定した。連続2倍希釈液(100μl)の対照およびフィルムH処理クラミジア・トラコマティスを、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに播種した9×10McCoy細胞に加えた。48時間後、細胞を固定し、クラミジアに対するフルオレセインイソチオシアネート標識モノクローナル抗体(ジアグノスティック・ハイブリッズ)で染色し、蛍光封入体を、製造業者により提供された手順に従ってカウントした。
【0049】
フィルムHはまた、いく種かの非ウイルス性STD病原体も不活性化した(図3)。図3は、選択した非ウイルスSTD病原体および細菌性膣疾患(BV)に関連した細菌のフィルムHによる不活性化を示した棒グラフである。STD病原体(ナイセリア・ゴノレア、ヘモフィルス・デュクレイ、およびクラミジア・トラコマティス)および細菌性膣疾患(BV)に関連した細菌(ガルドネレラ・バギナリス、マイコプラズマ・カプリコルム、およびマイコプラズマ・ホミニス)を、37℃で5分間、漸次量のフィルムHで処理した。図3の横座標は、クラミジア・トラコマティスのフィルム用量が、他の細菌で使用したものとは異なっていたことを示す。この効果は、CAPにより付与される低いpHに起因し得(Neurathら、Biologicals、(1999)、27、11-21;Neurathら、J.Antimicrob.Chemother.、(2000)、45、713-714)、これは、酸性および中性pHの両方で起こる抗HIV−1および抗HSV−1/−2の効果(Neurathら、BMC Infect.Dis.、(2002)、2、6;Neurathら,BMC Infect.Dis.、(2002)、2、27)とは異なっていた。これより、フィルムは、クリームへと完全に変換される前、非ウイルス性STD病原体の感染性を、>1,000倍、≧75mg/mlの用量で減少させた(クラミジア・トラコマティスの場合には≧27.7mg/ml)。
【0050】
本明細書は、例示によって説明するものであって、制限するものでなく、様々な改変および変更を、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなし得ることを認めるものと思う。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】図1Aは、フィルムHの走査電子顕微鏡写真(「SEM」)である(「A」側は、乾燥中に空気に暴露されている)。 図1Aの図面の下の右手隅の尺度棒は、1μである。
【図1B】図1Bは、フィルムHの「A」側の3次元(3D)対話型ディスプレイである。 図1Bにおいて、下の棒は、上昇尺度に対応する。
【図1C】図1Cは、フィルムHの3D対話型ディスプレイである(「B」側は、乾燥中に流延表面と接触している)。 図1Cにおいて、下の棒は、上昇尺度に対応する。
【図1D】図1Dは、粘度の増加により測定したままの、細断したフィルムHからクリームへの変換の動態を示したグラフであり、ここでの円は、HOを示し、四角は、精液を示す。
【図1E】図1Eは、フィルムから形成されたクリームからのCAP粒子のSEMである。 図1Eの図面の下の右手隅の尺度棒は、1μである。
【図1F】図1Fは、粒子のサイズ分布を示した棒グラフである。
【図2A】図2Aは、HIV−1IIIBのグラフである。
【図2B】図2Bは、HIV−1BaLのグラフである。
【図2C】図2Cは、HSV−1のグラフである。
【図2D】図2Dは、HSV−2のグラフである。
【図3】図3は、6つの棒からなる4つのグループを示す。左から右への6つの棒は、それぞれ、ナイセリア・ゴノレア、ヘモフィルス・デュクレイ、クラミジア・トラコマティス、ガルドネレラ・バギナリス、マイコプラズマ・カプリコルム、およびマイコプラズマ・ホミニスを示す。
【図4】図4は、水中でのフィルムからゲルへの変換の動態を示したグラフである。このフィルムに使用したHPCは、75〜150cpsの粘度等級を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびグリセロールを含む水分散性フィルムであって、前記フィルムは乾燥時に、35〜45重量%のセルロースアセテートフタレート、35〜45重量%のヒドロキシプロピルセルロース、および10〜30重量%のグリセロールを含み、前記フィルムは、水または生理的液体との十分な接触後に、微細化セルロースアセテートフタレートを含むゲルまたはクリームに変換される、前記の水に分散性のフィルム。
【請求項2】
セルロースアセテートフタレートが、38〜42重量%の量である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
ヒドロキシプロピルセルロースが、38〜42重量%の量である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
グリセロールが、16〜24重量%の量である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
ヒドロキシプロピルセルロースが、75〜6,500cpsの粘度等級を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
ヒトの粘膜に、医薬的に有効な抗HIV−1量の請求項1に記載のフィルムを投与することを含む、HIV感染を予防する方法。
【請求項7】
ヒトの粘膜に、医薬的に有効な抗ヘルペスウイルス−1量の請求項1に記載のフィルムを投与することを含む、ヘルペスウイルス−1感染を予防する方法。
【請求項8】
ヒトの粘膜に、医薬的に有効な抗ヘルペスウイルス−2量の請求項1に記載のフィルムを投与することを含む、ヘルペスウイルス−2感染を予防する方法。
【請求項9】
女性に、医薬的に有効な抗細菌性膣疾患量の請求項1に記載のフィルムを膣内投与することを含む、細菌性膣疾患を処置する方法。
【請求項10】
必要とするヒトの粘膜に、医薬的に有効な抗非ウイルス性感染症量の請求項1に記載のフィルムを投与することを含む、非ウイルス性感染症感染を予防する方法。
【請求項11】
非ウイルス性感染症感染が、クラミジア・トラコマティス感染である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
非ウイルス性感染症感染が、ナイセリア・ゴノレア感染である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
非ウイルス性感染症感染が、ヘモフィルス・デュクレイである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
非ウイルス性感染症感染が、トレポネーマ・パリダム感染である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
(i)セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、およびグリセロールを含む複合物および(ii)医薬的に有効な量の、前記有機溶媒中に溶解できる医薬とを含み、前記複合物は、有機溶媒中で乾燥した時に、35〜45重量%のセルロースアセテートフタレート、35〜45重量%のヒドロキシプロピルセルロース、および10〜30重量%のグリセロールを含有する、組成物。
【請求項16】
医薬は、抗生物質、抗ウイルス剤、殺真菌剤、麻酔剤、抗炎症剤、殺精子剤、鎮痛剤、防腐剤、ステロイド、妊娠促進剤、冠血管拡張剤、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、精神安定剤、避妊剤、向精神剤、鬱血除去剤、筋肉弛緩剤、アルドースレダクターゼ阻害剤、神経筋薬、性腺ホルモン、副腎皮質ステロイド、HGM−CoAレダクターゼ阻害剤、およびアドレナリン拮抗剤からなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
医薬は、0.0001〜5重量%の量で含まれる、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
エタノールと、アセトン、酢酸エチルおよび氷酢酸からなる群より選択された別の有機溶媒とを含む有機溶媒混合物中に、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、およびグリセロールを溶解することにより混合物を調製し、そして、フィルムを乾燥し形成するための装置中に前記混合物を流し込むことを含み、ここで、セルロースアセテートフタレートは、1.75重量%またはそれ以上の量であり、ヒドロキシプロピルセルロースは、1.75重量%またはそれ以上の量であり、グリセロールは、0.75重量%またはそれ以上の量であり、残りは有機溶媒混合物であり、ここで、生成した乾燥フィルムは、35〜45重量%のセルロースアセテートフタレート、35〜45重量%のヒドロキシプロピルセルロース、および10〜30重量%のグリセロールを含有する、水分散性フィルムを製造する方法。
【請求項19】
ヒドロキシプロピルセルロースが、75〜6,500cpsの粘度等級を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記有機溶媒混合物が、アセトンと混合されたエタノールである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記有機溶媒混合物が、酢酸エチルと混合されたエタノールである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記有機溶媒混合物が、氷酢酸と混合されたエタノールである、請求項18に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−507499(P2007−507499A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533863(P2006−533863)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/028178
【国際公開番号】WO2005/034854
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(592239833)ニューヨーク・ブラッド・センター・インコーポレーテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】NEW YORK BLOOD CENTER INC.
【Fターム(参考)】