説明

水和性ポリマー材料

本発明は、水和性ポリマー材料及びヒドロゲルの分野に関する。特に、本発明は、放出可能に水を保持するポリウレタンポリマーの網目構造、及びその製造法について説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水和性ポリマー材料(hydratable polymer materials)の分野に関係し、特に、改良された水膨潤性(water− swellable)材料に関係する。加えて、本発明は、水膨潤性材料を製造するための改良された方法に関係する。更に、本発明は、水で膨潤した(water−swollen)(ヒドロゲル)材料、水膨潤性発泡体、及びヒドロゲル発泡体に関係する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の文脈で、用語「発泡体」(foam)は、多孔質発泡ポリマーマトリックス材料を意味すると解釈されるであろう。多くの水膨潤性発泡体は、水を吸収してヒドロゲルを形成することができ、これらのヒドロゲルは、「ヒドロゲル発泡体」と呼ばれる。用語「ヒドロゲル発泡体」は、発泡体が水を吸収する前(通常、キセロゲル状態と呼ばれる)でも、したがって、発泡体がヒドロゲル状態になる前であっても、水膨潤性発泡体のことを言うために用いることができる。本明細書の文脈では、ヒドロゲルは、その分子構造内に比較的大量の水を吸収できるポリマーであると理解される。
【0003】
ヒドロゲル発泡体は、園芸及び植物への給水システムを含む多様な分野で多くの用途を見出した、ポリマーの実用上の分類である。特に、これらの分野は、植物への給水の改良及び持続性に対する恒常的な要望があるために、多くの研究の目標であった。
【0004】
従来の給水タンクは、吸い上げ作用により植物に対し利用可能になるように自由液体水を保持し、通常は、一度に3週間まで植物に給水を行うことができるに過ぎない。しかも、この給水は、コントロール不良で、十分に満足する様式で作動しない。更に、従来の給水タンクは、それらが用いられる容器の特殊なサイズや形状に適合するように設計されねばならない。
【0005】
このような従来の給水タンクは、かなりの距離にわたり、かなりの時間をかけて植物を輸送する時に、よく用いられる。消費者の需要に合わせて、世界中に種々の植物を出荷することは、今では日常的に行われている。しかし、従来の給水タンク(又は自由水)を用いることは、特に植物の低温輸送において、幾つかの問題を提起する。例えば、空輸により、開放容器中で自由水の運搬は実施できない。
【0006】
植物の輸送に関する別の問題、実際に、一般的に植物への給水に関する問題は、植物が曝される恐れがある極端な温度である。低温輸送の場合には、輸送中に3から10℃に冷却される可能性があり、しかも、到着時には、20から25℃以上の温度に曝される可能性がある。植物への給水の要求は、植物が曝される温度に依存して、大きく変わることがあり、従来の給水システムは、この要求の変化を解決できない。同様に、通常の温室内の植物は、24時間の過程で20から30℃の温度サイクルを経験することがあり、したがって一日の異なる時間に、様々な給水要求を示す。
【0007】
この変化する給水要求のために、植物は、水の欠乏が原因でよく枯死することがあり、或いは、この反対に、過剰給水になることがある。過剰給水は、植物の根に空気が到達することを妨げ、それにより、植物の健康に悪影響を与え、かつ根腐れを起こす恐れがある嫌気的条件を作り出す。
【0008】
ヒドロゲル、特に、著しい量の水を吸収できるヒドロゲルは、よく知られており、市販されている。これらは、特に、架橋結合ポリマー及びコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸、アクリル酸とアクリルアミドのコポリマー、ポリビニルピロリドン、及び「超吸収材料」として知られているグラフト澱粉である。
【0009】
EP0647093に開示された多孔質固体材料などの、既存のヒドロゲルは、適度の量の水を蓄えるために用いることができる。この文献で説明された組成物は、パーライトを含有し、開放セルの親水性発泡体を用いて粒子を一緒に結合することにより製造された、粒状塊であることができる。得られた製品(パーライトを含有する塊)は、水に曝された時、乾燥重量で350パーツ・パー・ハンドレド(pph)未満の水膨潤容量である。強調すべきは、この含水量が、EP0647093において、350%と不正確に言及されていることである。350pph未満の含水量は、従来のプラスチック製タンクに対比して、商業的に優位性があるとは考えられない。
【0010】
EP0647093に開示されたような多孔質固体材料の使用に関連して、更なる問題及び不都合がある。例えば、調合に際して、パーライト(又は、その他の任意の)粒体を使用する時、懸濁した固体が、ポンプ及び機器のラインの両者を塞ぐために、ウレタン用の標準的液体計量分注機を使用することができない。更に、鉱物の鋭利なエッジが、多数の内部亀裂発生位置として働き、水膨潤条件下で形成されたヒドロゲルの物理的強度を著しく弱めるので、パーライト(又は、同様な粒体)の存在は、発泡給水タンク用の材料としては望ましくない。EP0647093に開示されたような多孔質固体材料は、一方では有用であるが、特に園芸分野では、それらの有用性に制約を加える幾つかの欠点があることが明白である。
【0011】
特に、植物給水培地として、経済的に商業的に有用であるためには、材料が、物理的強度を維持しながら、80%(重量%)から95%(重量%)超の膨潤レベルに到達可能であることが望ましい。 EP0647093に開示されたような多孔質固体材料は、この規準を満たさない。
【0012】
既存の給水システムが、ある程度の制御力に欠け、調整された給水を長時間に亘り行うことができないことは明らかである。更に、既存の吸収性多孔質固体材料が、十分な吸水能力を持たず、また、植物給水培地として用いるために、十分な物理的強度を持ち合わせないことも明らかである。加えて、粒状固体を含有する既存の多孔質固体材料は、従来の機械及び装置で容易に、又は従来のように製造されない。したがって、制御された仕方で、長期間に亘り、商業的に存続可能な価格で、植物に水を供給するシステムの改良が望まれるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、先行技術に関連する少なくとも幾つかの欠点を取り除くこと、又は少しでも緩和することである。
【0014】
本発明の更なる狙い及び目的は、以下の明細書を読むことにより明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の観点に従って、水を放出可能に保持するポリウレタンポリマーの網目構造(network)を含む、水和性ポリマー材料が供給される。その際、このポリウレタンポリマーの網目構造は、少なくともある比率の利用可能な水酸基を含む。
【0016】
「利用可能な」ポリオール水酸基は、反応していないポリオール水酸基であり、特に、重合工程の一部として反応していないものである。多くの場合、これらの利用可能なポリオール水酸基は、結果として、一末端だけでポリマーの網目構造に結合したペンダントポリオール鎖となる。
【0017】
本明細書の文脈で、「利用可能な」ポリオール水酸基は、ポリマーの網目構造材料に存在するが、構造的に反応から封鎖された、少数の未反応水酸基を含めない。ポリマーの網目構造の形成で、全てのポリオール水酸基を反応させることは、理論的には可能であるが、実際には、これは、少数の水酸基に認められる、及び/又はこの水酸基と反応する少数の化学種に認められる、構造的制約が原因で、達成不可能である。
【0018】
したがって、本発明では、利用可能なポリオール水酸基は、ポリマーの網目構造の形成で、自由に反応できるが、しかし反応しないで残っている。これに反して、構造的に制約された水酸基は、未反応であるが、ポリマーの網目構造の形成においては反応に利用されない。利用可能な、及び制約された水酸基は、両者とも、水と相互作用することができ、網目構造の水膨潤性を高めると考えられる。
【0019】
水膨潤性材料は、大量の水を吸収して、水で膨潤した材料、又はヒドロゲルを形成する。
【0020】
好ましくは、利用可能な水酸基は、ポリウレタンポリマーの網目構造に結合したポリオール水酸基である。
【0021】
好ましくは、利用可能な水酸基と尿素及び/又はウレタン結合との比率は、およそ1対3である。
【0022】
利用可能な水酸基と尿素及び/又はウレタン結合との比率、1対3は、約75%のポリオール水酸基とイソシアネート基との反応により達成できる。この比率は、実用に適した十分な強度をもつポリマーの網目構造を提供し、一方で、好都合な水膨潤特性を示す材料を可能にする。
【0023】
好ましくは、ポリマー材料は、実質的に多孔質構造を含む。
【0024】
多孔質構造の材料は、大量の水を吸収できる。更に、多孔質構造は、材料の外部表面から内部構造に水の吸収を容易にする。同様に、多孔質構造は、発泡体の内部構造から材料の外部表面へ、及び別の培地へ水の移送を容易にする。この材料は、気孔に毛管水及び自由水を蓄え、かつ気孔に分子結合水を吸収し、かつ配送する。
【0025】
実質的に多孔質な構造は、発泡体であることができる。
【0026】
発泡体は、約5容量%から95容量%の気孔率を含むことができる。
【0027】
発泡体は、約10容量%から90容量%の気孔率を含むことができる。
【0028】
発泡体は、約20容量%から80容量%の気孔率を含むことができる。
【0029】
発泡体は、約50容量%の気孔率を含むことができる。
【0030】
発泡体は、実質的に開放セル構造を含むことができる。
【0031】
好ましくは、開放セルの比率は、少なくとも約50%である。開放セルの比率は、約50%であることができる。
【0032】
発泡体は、少なくともある比率の独立セル構造を含むことができる。
【0033】
この開放セルの比率は、全開放セルと全独立セル含有量に対する比率である。しかし、開放セル含有量は、圧縮(即ち、膨張により又は通常の使用時)により増加することができる。この材料中の開放セルの直接の利用可能性は、最初に使用する時に、水膨潤性材料の膨潤によって速やかに引き上げられる。
【0034】
開放セル構造は、独立セル構造より迅速に水を吸収かつ放出することができるので、この材料の内部構造が実質的に開放セルであることが望ましい。しかし、ある程度の独立セル構造の導入により、かつ独立セル構造と開放セル構造間でバランスを持たせることにより、この材料の特性を制御、調節することができる。
【0035】
発泡体が、発泡体の少なくとも一つの外部表面上の少なくとも一つの第一の点から、発泡体の少なくとも一つの外部表面上の少なくとも一つの第二の点に達する、複数の連続した通路を含むことができる。
【0036】
発泡体が、発泡体内のセルから、発泡体の少なくとも一つの外部表面上の少なくとも一つの点に達する、複数の連続した通路を含むことができる。
【0037】
この連続した通路は、水を発泡体内のセルに届けることができる。
【0038】
任意選択的に、ポリマー材料は、少なくとも一種の添加剤を含む。
【0039】
この少なくとも一種の添加剤は、水膨潤性材料を含むことができる。この少なくとも一種の添加剤は、植物栄養素を含むことができる。この少なくとも一種の添加剤は、酸化防止剤を含むことができる。
【0040】
この添加剤は、水と接触した時に、ヒドロゲル又はヒドロゲル発泡体を形成する水膨潤性材料であることができる。水を吸収する本発明の材料の総体的物理特性、及び能力は、既知のヒドロゲル形成性材料を添加することにより容易に変えることができる。これに代わって、又は加えて、添加剤は、安定剤、酸化防止剤、肥料、植物ホルモン、染料(可溶性又は不溶性)、顔料、特殊効果剤(蛍光剤など)、又は添加可能な任意の他の望ましい薬剤であることができる。
【0041】
好ましくは、ポリマー材料は、水膨潤性材料である。
【0042】
好ましくは、ポリマー材料は、ヒドロゲルである。
【0043】
ポリマー材料は、分子的結合水を含むことができる。
【0044】
分子的結合(又は分子的複合)水は、徐放型(自由水又は毛管水より遅い)の水である。これは、水で膨潤した材料中に、ポリマー水和物として存在する。分子的複合は、水で膨潤した材料が長期間に亘り水を供給し続けることを可能にしている。
【0045】
ポリマー材料は、毛管水を含むことができる。
【0046】
毛管水は、適切なサイズの気孔、セル、及び/又はそのように形成された水で膨潤した材料中の連続した通路内に蓄えられる。より具体的には、毛管結合水は、表面張力が低い、かつ水/表面接触角が低い微細孔内に存在する。この水は、毛細管中に保持され、重力下で排除されない。毛管水は、液体水が生育培地に移送されることを可能にし、したがって、自由水だけの場合よりも長期間に亘って植物に液体水を移送できる。明確にするために、生育培地は、土壌、根及び任意の他の添加剤の組み合わせからなる。毛管水は、水で膨潤した材料が、適度に延長された期間に亘って、生育培地を経由して、植物に追加水を供給し続けることを可能にする。
【0047】
このポリマー材料は、自由液体水を含むことができる。
【0048】
自由液体水は、植物に即座に到達できるタイプの水であり、植物が通常的に利用するタイプの水である。この自由水は、水で膨潤した材料内の大きな空孔及び気孔に保持され、重力下で排出される。自由水は、実質的な量の迅速に利用可能な水を必要とする開花植物にとって、特に適切である。
【0049】
水和性ポリマー材料は、上記したように水を吸収する。ポリマーは水和性であり、ポリマーは、自由水、毛管水及び分子水を吸収することができ、かつ制御可能な仕方でその水を放出することができる。水で膨潤した材料を作成するために水膨潤性材料を浸透圧膨潤させることは、風船を膨らませることに類似しており、即ち、水が、浸透圧で分子網目構造を膨潤させる。本発明の材料は、亀裂発生及び伝播に耐性を有し、かつ材料に高い物理強度を与える高伸張性を有する。
【0050】
物理的強度は、水で膨潤した状態の伸び(伸長性)の用語で定義することができる。水で膨潤した状態の材料は、外力が開放された時に、材料が元に戻るか、又は元の状態に近づくように、伸ばすことができる。この水で膨潤した材料の伸長性は、任意の方向に100から5,000pphである。この高い伸長性は、材料を破壊するために大量のエネルギーが必要であることを意味し、このエネルギー量は、抗張力に伸び率を乗じた値にほぼ等しい。
【0051】
本発明の第二の観点に従えば、少なくとも一種のポリオールと少なくとも一種のイソシアネートを反応させるステップを含むポリマー材料の製造法であって、十分なポリオール水酸基が反応してポリウレタンポリマーの網目構造を形成し、かつ少なくともある比率の利用可能なポリオール水酸基が未反応で残ることを特徴とする製造法が提供される。
【0052】
好ましくは、この製造法は、発泡体を形成する手段を提供するステップを更に含む。
【0053】
この発泡体を形成する手段は、水を含む。
【0054】
水は、イソシアネートと反応して二酸化炭素を生成し、これが発泡剤として作用する。また、場合によっては、表面活性剤が用いられ、発泡体の構造、並びにその「隆起特性」(rising characteristics)を制御する。
【0055】
発泡体を形成するために、場合によっては、十分な重量の発泡剤又は起泡剤が供給される。
【0056】
必要な発泡剤の重量は、用いられるポリオールのタイプに従って変更される。
【0057】
好ましくは、ポリオール水酸基とイソシアネート基との相対比率、OH:NCOが、ほぼ1.0:2.0であり、かつ水分子の相対比率が、0.4から2.4の範囲である
【0058】
水とポリオール水酸基は、互いに競合してイソシアネート基と反応する。正確な構成、及び正確な反応条件次第で、様々な量の水が容認されるであろう。例えば、適切な網目構造が形成されている限り、大量の水を用いることが可能になる。同様に、発泡した材料を形成するための十分な発泡剤がある限り、少量の水を用いることが可能になる。
【0059】
しかし、水の量を上記の限定された範囲に制限するならば、発泡材料の形成を様々な程度に制御することができ、かつポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシドをベースにした、業界に知られた材料に比較してはるかに優れた、驚異的かつ好都合な特性を有する発泡体の形成を可能にする。例えば、概説した方法を用いて製造した材料は、先行技術で報告された任意のポリイソシアネート反応製品をはるかに上回って、大量の水を吸収できる。更に、ヒドロゲル発泡体を形成するために水和させた場合、この材料は、かなりな物理的強度を有し、例えば、植木鉢内の植物により与えられた適度の応力に耐えることができる。同時に、この材料は、十分な変形性を有し、植物用の容器の底部形状、及び接触する容器の底部にある、任意の排水孔/呼吸孔の形状に成形され、水や空気の送出通路を成形する。
【0060】
イソシアネートは、2以上の官能価を有する芳香族ポリイソシアネートであることができる。
【0061】
2超の官能価を有するイソシアネートを用いると、架橋ポリマーを生成する。架橋は、ポリマーに物理的剛性及び強度を与えるので、望ましい。
【0062】
ポリオールは、ポリエチレングリコールを含むことができる。
【0063】
ポリオールは、直鎖状又は分枝状でもよく、かつ分子中に、2個以上の水酸基又は他の反応性末端基を有する。
【0064】
ポリエチレングリコールは、5,000と20,000Daの間の数平均分子質量を持つことができる。
【0065】
この性質のポリエチレングリコールポリマーは、PEG5000からPEG20000として知られる。この範囲のポリマーは、水膨潤性発泡体、及び相当するヒドロゲル発泡体を与え、議論したような望ましい特性を示すので、この範囲のポリマーを用いることが望ましい。
【0066】
ポリエチレングリコールは、6,000と9,000Daの間の数平均分子質量を持つことができる。
【0067】
任意選択的に、この製造法は、少なくとも一種の異種ポリオールを添加するステップを更に含む。
【0068】
少なくとも一種の異種ポリオールは、ポリプロピレングリコールであることができる。
【0069】
好ましくは、反応は、ポリマーの網目構造を形成するために十分な温度で実施される。
【0070】
この温度は、約70℃と約130℃の間であることができる。
【0071】
この温度は、約80℃と約100℃の間であることができる。
【0072】
この製造法は、少なくとも一種の触媒を供給するステップを更に含むことができる。
【0073】
触媒は、反応体の一つ、例えば、ポリオール中に存在することができ、又は、単独で反応に添加されてもよい。反応速度を微細に調節するためには、触媒量を制御して用いる。したがって、触媒量を制御して用いることは、上で概説した望ましい特性をもつ材料を製造するための望ましい反応速度を提供する。
【0074】
任意選択で、この製造法は、少なくとも一種の異種水膨潤性材料を添加するステップを更に含む。
【0075】
任意選択で、この製造法は、少なくとも一種の植物栄養素を添加するステップを更に含む。
【0076】
任意選択で、この製造法は、少なくとも一種の酸化防止剤を添加するステップを更に含む。
【0077】
本発明の第三の観点に従って、第二の観点の方法で製造されたポリマー材料が提供される。
【0078】
本発明の第四の観点に従って、第一の観点又は第三の観点に従うポリマーを含む、植物のための鉢植え配合物が提供される。
【0079】
本発明の第五の観点に従って、第一の観点又は第三の観点に従うポリマーを含む、植物のための栽培培地が提供される。
【0080】
本発明の第六の観点に従って、植物の根又は根巻きを収容するための容器を含む、植物輸送用のパッケージであって、この容器が、第一の観点又は第三の観点に従うある量のポリマーを含有することを特徴とするパッケージが提供される。
【0081】
また、任意選択で、このパッケージが、鉢植え配合物又は生育培地を含有し、任意選択で可溶性植物栄養素を含有する。
【0082】
場合により、ポリマーは、必須植物栄養素を含有する水溶液で予め水和されている。
【0083】
本発明の第七の観点に従って、植物用の水利用可能性を安定化する方法であって、第一の観点又は第三の観点に従うポリマーを、鉢植え配合物又は栽培培地に取り入れること、及びポリマーを水和させることを含む方法が提供される。
【0084】
このポリマーを水和した後、ポリマーを鉢植え配合物、又は栽培培地に加えることができる。
【0085】
代わって、このポリマーを水和する前に、ポリマーを鉢植え配合物、又は栽培培地に加えることができる。
【0086】
このポリマーを、必須植物栄養素を含有する水溶液で水和することができる。
【0087】
ここで、本発明は、添付の図面を参考にして実施例により説明されるであろう。
【0088】
図1は、水で膨潤した発泡体の内部構造の説明図である。
【0089】
図2は、試験1から、ピースリリー(Peace Lily)に関する、植物、鉢、及び総体の重量の時間に対する変化を示すグラフである。
【0090】
図3は、試験2から、ピースリリーに関する、植物、鉢、及び総体の重量の時間に対する変化を示すグラフである。
【0091】
図4は、試験1から、ポットマムレッド(Potmum Red)に関する、植物、鉢、及び総体の重量の時間に対する変化を示すグラフである。
【0092】
図5は、試験1から、サクラソウに関する、植物、鉢、及び総体の重量の時間に対する変化を示すグラフである。
【0093】
図6は、試験2から、サクラソウに関する、植物、鉢、及び総体の重量の時間に対する変化を示すグラフである。
【0094】
図7は、試験2から、あじさい、球根に関する、植物、鉢、及び総体の重量の時間に対する変化を示すグラフである。
【0095】
(発明の実施形態)
先ず図1を参考にして、切片の形態をした水で膨潤した水和性ポリマー材料11の断面の分解立体図は、微視的構造を説明するものであり、一般的に7で示される。水で膨潤した材料11の微視的構造7は、大きい通路9及び毛管10が存在する、ポリマーの網目構造材料8を含む。毛管10は、重力に反して微細孔及び通路内に保持される毛管結合水を含有する。大きい通路9は、大きい孔及び気孔内に自由水を含有する。この水は重力の作用下で排水できる。ポリマーの網目構造材料8は、分子的に複合化した水を、ポリマー材料の水和物として含有する。このポリマーは水を放出可能に保持できる。
【0096】
好ましい実施形態において、水膨潤性材料は、尿素又はウレタン結合で結合されたポリエチレングリコール(PEG)8000鎖をもつポリマーの網目構造体である。ポリオール上に約25%の水酸基が利用可能な形で残る。即ち、この水酸基は、これらが反応に利用可能であるが、ポリマーの網目構造に寄与していない。したがって、水和性ポリウレタンポリマー材料中で、水酸基と尿素及び/又はウレタン基の比率は、約1:3である。好ましい実施形態において、水膨潤性材料は、発泡体であり、かつ約50容量%の気孔率を有する。有用な水膨潤性材料が必ずしも発泡体である必要がないことが理解されるであろう。また、発泡した材料が、50%超の又は未満の気孔率をもつことができること、かつ有用な材料が、5容量%と95容量%の間の気孔率に発見されることが理解されるであろう。また、有用な材料は、10容量%と90容量%の間の、かつ20容量%と80容量%の気孔率で発見される。更に、異なるタイプのポリオールを使用することができ、用いられるPEGは、PEG5000とPEG20000の間であることができ、かつ最も有効にはPEG6000とPEG9000の間である。
【0097】
本発明の水和性又は水膨潤性のポリマー材料は、水を吸収して水で膨潤した材料又はヒドロゲルを形成できる。加圧反応容器内で高められた圧力下で、発泡が阻止できる。好ましい実施形態では、水膨潤性材料は、発泡体であり、かつ水を吸収して水で膨潤したヒドロゲル発泡体を形成するであろう。
【0098】
ポリマー網目構造の肝要な部分を形成するために、反応した約75%のポリオール水酸基があることは、莫大な量の水を吸収する能力を示す一方で、使用に耐える十分な強度を持つ材料を提供する。特に、約25%のフリーなポリオール水酸基があることは、ポリエチレングリコールとポリイソシアネートの反応生成物として従来技術で報告されたものを、はるかに上回って莫大な量の水を吸収する材料を提供する。
【0099】
本方法の好ましい実施形態において、この水膨潤性材料は、ポリエチレングリコール(PEG)8000と、芳香族イソシアネートと、制御された量の水とを反応させることにより製造される。用いられる水の量は、多孔質発泡ポリマーマトリックス材料を形成するために十分でなければならず、かつポリマー網目構造の形成に容認されるであろう量を超えてはならない。この反応は、材料が溶融しかつ硬化して固体ポリマーを形成するような高められた温度で実施される。この高められた温度は、外部エネルギー源からであってもよく、又は反応自身の熱によりもたらされてもよい。水膨潤性発泡体は、議論された望ましい特性を示すような任意の程度の気孔率をもつことができると理解されるが、好ましい実施形態においては、水膨潤性発泡体の容積の50%が多孔質である。また、この材料は、5から95容量%の、種々の程度の気孔率を持つことができることが理解されるであろう。
【0100】
好ましい実施形態では、ポリオール水酸基とイソシアネート基の相対比率、OH:NCOが、ほぼ1.0:2.0であり、かつ水分子の相対比率が、0.4から2.4の範囲である。しかし、適切に発泡した構造体が得られる限りは、より少量の水を用いることができることが理解されるであろう。同様に、有用なポリマー網目構造が生成する限りでは、追加の水が使用できることが理解されるであろう。網目構造を得るためには、反応混合物の有効な反応性官能価は、2より大きくなければならない。この官能価は、部分的に又は全体的に、ポリオール又は添加した低分子量多価アルコールによって、同様に十分に達成することができる。1,2,6−ヘキサントリオールは、使用できる好都合な三官能低分子量ポリオールの例である。このようにして、ポリオールは、二官能性ポリエチレングリコールに限定されないが、しかし発泡体製造に好適な、低分子量の三及び四官能性ポリエチレングリコールであることができる。
【0101】
好ましい実施形態では、芳香族ジイソシアネートを用いるが、脂肪族イソシアネートなどの他のイソシアネートも用いることができる。理想的には、このイソシアネートは、2以上の官能価を有するが、好ましくは、2.1の官能価である。2超の官能価をもつイソシアネートを用いることは、架橋ポリマーを生成するが、この架橋が物理的剛性及び強度を与えるので、架橋ポリマーの生成は望ましい。これは、確かにジオールと反応させる場合であるが、より一般的には、反応体が、水酸基に対してモル的に過剰のイソシアネート基を含むことが好ましい。脂肪族イソシアネートは、遅反応性であり、単独使用のイソシアネートとしては好ましくないが、イソシアネートの一部として用いて、反応速度(硬化時間)を低下、制御するために有効に使用できる。
【0102】
先に述べたように、5,000と20,000Daの間の平均分子質量を有するポリエチレングリコールが使用できるが、好ましいポリマーは、PEG8000である。この範囲内のポリマーが、製造時に流動溶融混合物を与え、かつ議論した望ましい特性を示す水膨潤性発泡体、及び相当するヒドロゲル発泡体を与えるので、この範囲内のポリマーを用いることが望ましい。ポリエチレングリコールの範囲の高い方の終端(約PEG20000まで)は、このような高分子量ポリマーの高い粘度を低下させるために、高温度にしなければならない。また、その他のポリオール、種々の分子量のポリプロピレングリコール及びポリプロピレンオキシドなども用いることができる。ポリプロピレンオキシドは、硬化速度を遅くするための改質剤を提供する第一及び第二の両方の脂肪族末端基を含有し、反応の発泡段階で流動時間をある程度制御する。ポリプロピレンオキシド単独、又は末端封止されたエポキシド又はエトキシドなどの多くのポリオールが市場から入手でき、使用することができる。
【0103】
上に説明したように、水膨潤性発泡体を製造する時に、使用する水の量をこの限定された範囲内に制限することは、分子構造の質を大いに制御して、驚異的かつ好都合な特性をもつ材料の製造を可能にする。概説した方法を用いて製造した材料は、ポリイソシアネートと反応したポリエチレングリコールから作成されたヒドロゲルに関する先行技術に報告された如何なる材料をも、はるかに上回って、大量の水を吸収できる。更に、水和されてヒドロゲル発泡体を製造する時、この材料は、かなりな物理的強度を有し、かつ中程度の応力に耐えて、その形状を保持する。
【0104】
この十分に限定された範囲内に水の量を制御することは、反応中に生成した二酸化炭素ガス(発泡剤)の重量を制御し、かつ、水和性水膨潤性発泡体、及び相当する水で膨潤した(ヒドロゲル)発泡体の形成、及びそれ故に、物理的特性を正確に制御することができる。少量の水しか用いない場合、発泡体を製造するための二酸化炭素の生成が不十分になる。過剰な水を用いた場合、製造された材料は、本発明の材料が示すような高められた水吸収性を示さないか、或いは液体又は溶解性非架橋製品を生成するであろう。これは、後ほどの実験的製造法の議論で証明される。
【0105】
発泡した材料の製造時に起こる化学反応は、種々雑多で、競合性があり、かつ相互作用的である。製品材料は、別の因子に加えて、反応基の初期及び一時的濃度により変化する様々な反応速度、温度、反応基が結合する単位の分子量、任意の時点での反応混合物の粘度及び誘電率の結果として生成する。これらの因子は確定されたものではなく、かつ手引きとしてだけ用いられるに違いない。
【0106】
起きていると思われる主要な反応は、反応の開始時である。起こる反応は、以下の1から4の番号をつけた式で説明される。
【0107】
R'OH+RNCO → R'OCONHR (1)
2O+RNCO → RNHCOOH (2)
RNHCOOH → RNH2+CO2 ↑ (3)
RNH2+RNCO → RNHCONHR (4)
【0108】
最初に、反応1及び2だけが起きる可能性がある。これらは、それぞれ、将来のPEGヒドロゲル網目構造の発達の端緒であり、非網目構造のカルバミン酸の生成である。この段階では、反応混合物は、液体であり、かつ結合していない。第二段階は、反応3が主要に進展して発泡が進む段階であり、二酸化炭素を発生させて、発泡体を形成させる。二酸化炭素が発生しなくなるか、又は架橋により反応主要部が液体であることを終了するまで続く。この段階では、反応主要部は、温度の上昇を伴って膨張し続け、反応を制御された状態で伝播する。アミノ基は、反応することによりポリ尿素架橋領域を形成することができる。通常、架橋網目構造で見られるように、少量の未反応の水酸基、アミン及びイソシアネート基が残り、これらの基は、物理的に相互作用することができず、したがって、別の反応性基と反応する。
【0109】
本発明では、残留の水酸基がPEG単位上の末端基のはずであり、これらの基は、主に構造:NHCOO−(CH2CH2O)nH(式中、nは、概ねMnPEG/Mw(CH2CH2O)=8,000/42=190である)のペンダント基である。
【0110】
この簡単な分析は、アミノ基が水酸基より早くイソシアネート基と反応するという仮定と組み合わせて、反応体の比率(OH:NCO=1.0:2.0)が、反応する最初の水酸基の割合と、反応の終期に存在する水酸基の量の決めていることを示す。網目構造は、両末端水酸基が反応したPEG分子、及び2個の末端基のうち1個だけが反応したPEG分子から形成された側鎖をもつPEG分子から構成される。
【0111】
本発明の発泡体材料の(主要な)内部構造のための式が、式5から8として以下に示される。これらの式が、発泡体の代表的構造の例であることは理解されるであろう。これらの式において、nは、典型的には100から300の値の整数であり、mは、一単位以上の任意の値の整数である。
【0112】
−(−CONH−X−NHCO−O−(CH2CH2O−)n− (5)
−(−CO−X−CO−(CH2CH2O−)n− (6)
−(CH2CH2O−)n−(CONH−[X−NHCONH]m− (7)
【0113】
この組成物は、Xが2超の官能価である少なくとも幾つかの単位を含有しなければならない。また、Xの位置でだけ網目構造から分枝した分子が存在でき、その際、この分子は別の末端で網目構造に結合していない。したがって、この分子は、網目構造にペンダントした、しかし網目構造の一部ではない単位を形成する。この例は、下記の構造で与えられる。
X−(CH2CH2O−)n−CH2CH2OH (8)
【0114】
Xは、脂肪族又は芳香族の、二価又は多価官能性単位であり、この単位が二価官能性の時に、伸長構造による効果的な鎖状網目構造を形成する。Xが高官能価である時、分子状及び/又は架橋構造を形成し、その結果として分子網目構造を形成する。網目構造を形成するために、ペンダント単位への分枝、及び分枝鎖の伸長は、本発明の材料の構造的一体化に寄与する。特に、多官能性イソシアネート、或いは多官能性アルコール又はアミンにより、架橋官能基の分枝を導入することができる。
【0115】
本明細書の文脈において、用語「網目構造」は、結合を介して機械的応力をそれぞれの単位内に及び単位の外へ伝達できる構造に、弾性的に効果的に結合している全ての単位を意味する。これは、議論の対象になる全ての単位が、少なくとも2つの結合を通して、それ自身、網目構造に結合しなければならないことを意味する。
【0116】
上記の構造は、本発明のポリマーの構成要素として認められた代表的な構造を表す。したがって、ポリ(エチレンオキシド)単位は、別の単位、例えばポリ(プロピレングリコール)などの他のポリエーテルにより、部分的に又は全面的に置き換えることができる。式8において、水酸基の末端基Hは、例えばメチル又はベンゾイルなどの、多くの代替の非官能性基で置換できる。これらの基は、当業者にはよく知られている。これらは、例えば、唯一の末端水酸基を含有するポリ(エチレングリコール)分子の一部が発泡性混合物の成分の一つとして用いられるように、ポリ(エチレングリコール)の事前反応により、容易に、個別に製造できる。それにより最終製品中にその存在を保証する。
【0117】
前記の分析及び説明は、発泡速度を制御し、かつ望ましい物理的特性をもつ製品を製造するために反応を理論的に改質できることを、当業者に教示するために提示される。例えば、用いられた初期のイソシアネートの官能価及び/又は反応性を減少させて、ゲル化時の反応率を高めることができ、それにより流動発泡する発泡時間を延長することができる。
【0118】
異なる手法を用いて、1個の第一級アルコール及び1個の第二級アルコールを含有するポリプロピレングリコールなどのポリオール改質剤の使用が、ゲル化点を遅らせ、かつペンダント側鎖比率を増加させるであろう。同様に、単一末端封止されたPEG/PPGコポリマー(市販されている)が使用できる。反応及び製品を制御するために、多くのこのような変更は、本明細書に含まれる開示の文脈で当業者に明白になるであろう。反応体の全ての特定の初期組成物に関して、最適の水分量は、一連の実験により、実験的に決めることができる。その際に反応混合物の水分量は、供給された時のPEGに与えられた水分量から変更され、かつ増加したレベルの水が、重合段階で加えられる(実験の注釈を参照されたい)。
【0119】
Solkane(登録商標)などの異なる発泡剤の使用も可能である。また、発泡加工に寄与可能な泡の核を生成できる溶解ガスが、反応体中に存在してもよい。更に、既知の泡立ち技術及び/又は既知の泡立ち剤を用いて、発泡を達成できる。
【0120】
反応に用いる水は、反応体中に存在することができ、特に、ポリエチレンオキシドオキシド又はポリオール中に存在することができる。これに代わって、又は加えて、望ましい量の水を達成するために、制御されたやり方で水が加えられる。幾つかの場合には、必要な範囲内で存在する水を用いて、反応が行われることを保証するために、反応を行う前に、反応体から水を除去することが必要であるかもしれない。
【0121】
本発明の方法の更なる実施形態では、水が存在しない状態で、ポリエチレングリコール(PEG)8000と芳香族イソシアネートを反応させて、水膨潤性材料を製造する。この実施形態では、非発泡の水膨潤性材料が形成される。材料が硬化して固体ポリマーを生成するほどの、高められた温度で、必要に応じて加圧下で、反応が行われる。高められた温度は、外部エネルギー源から与えられるか、又は反応熱により供給されてもよい。
【0122】
本発明の更なる実施形態では、ポリオール水酸基とイソシアネート基の相対比率、OH:NCOは、概ね1.0:0.75である。この比率を用いることは、概ね25%の利用可能な又はフリーなポリオール水酸基を残す。一方、75%のポリオール水酸基は、反応して尿素又はウレタン結合を形成し、ポリマー網目構造の部分を形成する。
【0123】
本発明の水膨潤性発泡体は、先行技術で報告された、ポリエチレングリコールとイソシアネートの反応から形成された、発泡体をはるかに上回る、大量の水を吸収することができる。特に、本発明の材料は、典型的には、83.3から95.2重量%の水を吸収して、水で膨潤した材料(ヒドロゲル発泡体)を形成する。この材料は、分子的及び毛管的結合水として、概ね500から4,000pphの水を吸収することができる。更に、この材料は、概ね更なる500から4,000pphの水のための従来の貯蔵体として機能することができる。このようにして、本発明の材料は、典型的には、1,000pphから(を上回って)8,000pph(即ち、約80%超まで)の水を保持できる。
【0124】
この方法は、制御された量の触媒を用いることにより更に改良される。触媒は、反応体の一つ、例えば、ポリエチレンオキシド又はポリオール中に存在することができ、又は、個々に反応に添加することができる。制御された量の触媒を用いることは、上に概説したような望ましい特性をもつ水膨潤性材料を製造するために、望ましい反応速度の選択を可能にする。また、触媒は、反応1から4の相対的速度を変えて、反応及び/又は製品特性を改良することができる。
【0125】
触媒は、反応体の一つに存在することができ、又は、個々に反応に添加することができる。多くの場合、触媒は、これらの材料の製造に含まれる中和ステップの生成物として、ポリオール(又はポリエチレンオキシド)中に存在する塩類である。これらの中和により生成した塩類は、灰として知られ、しばしば灰分と呼ばれる。バッチが異なるポリマー、及び供給業者が異なるPEGは、異なるタイプの、かつ異なる量の灰分を含有する。しかし、適切な水膨潤性材料を製造するためには、430ppmと710ppmの間の灰分が望ましいことが判明した。適切な灰分が存在しない場合(例えば、供給されたポリマーの灰分が430ppm未満である場合)、望ましい総合反応速度を提供するために、適切な量の別の塩を添加することができる。例えば、望ましい反応速度を提供するために、適切な量の20%硫酸ナトリウム溶液を添加することができる。また、これに限定されないが、金属塩類(塩化第二鉄など)、スズ化合物、第四級アミン、及び酸類(p−トルエンスルホン酸及び塩化ベンゾイル)などを用いることができる。用いた触媒のタイプ及び量は、用いた特別の硬化システム及び混合システムに依存するであろう。
【0126】
また、反応速度を変えるために、反応混合物に溶媒を導入することができる。特に、反応混合物中の不活性溶媒の量の変更により、反応速度を変えることができる。溶媒がより多く存在すれば、反応がより遅くなる。また、より良い混合を可能にするために、又は重合技術でよく知られるように、膨脹剤として作用させるために、少量の溶媒を添加することができる。本明細書の文脈では、膨脹剤は、重合反応時に、プラスチック/ガス発泡体を生成する揮発性、非反応性混和性液体である。これらは、通常は、低沸点炭化水素、又はハロゲン化炭化水素である。
【0127】
これらに限定する積もりはないが、追加的な膨脹吸収材料、ヒドロゲル、発泡体、酸化防止剤、染料、顔料又はその他の着色剤、安定剤、植物栄養素、肥料、植物ホルモン、特殊効果剤(蛍光剤など)、又は添加することができる任意のその他の薬剤などの更なる添加剤が、この材料に含まれてもよい。
【0128】
本発明の材料に既知の粒状ヒドロゲルを添加することが、水を吸収する能力、及び相対的物理特性を変え、それによって、材料を容易に調整する。これらの既知のヒドロゲルは、産業界で使用される混合機械を通して反応混合物が計量分配されることをヒドロゲルが妨げないように、超微細粒子サイズで使用されることが好ましい。添加に適した既知の材料は、特に、架橋ポリマー及びコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸の塩、アクリル酸とアクリルアミドのコポリマー、ポリビニルピロリドン、及び数ある中でもグラフト澱粉を含む。
【0129】
発泡体材料は、実質的に開放セル構造を含み、また一部の独立セルを含有する。開放セル構造は、独立セル構造に比較して、より迅速に水を吸収かつ放出する。このセルは、細長い球状の、楕円形の、又は円筒形の空洞であることができる。しかし、発泡体材料は、非円筒形状を含むその他の形状の空洞を含むことができる。また、開放セルは、発泡体材料の外部表面に通じる連続通路を形成することができる。これにより、材料の内外に水を送るための輸送手段を提供する。
【0130】
水膨潤性発泡体は、水に曝された時に、自由液体水、毛管水及び分子的結合水を含むヒドロゲル発泡体を形成する。自由液体水は、即座に植物に到達でき、植物が通常利用するものである。自由水は、通常、給水貯蔵体により供給される水と同じタイプである。毛管水は、形成されたヒドロゲル発泡体の気孔、セル、空洞、及び/又は連続的通路中に蓄えられる。x%の毛管通路を含有する小重量の固体発泡体は、全体積に対して10倍の体積で増加することができ、したがって、毛管通路の体積に対して10倍に増量することができる。
【0131】
本発明の材料は、液体水を生育培地に移送させることができ、それ故に自由水よりも長時間に亘って植物に移送される。毛管水は、ヒドロゲル発泡体に、中程度に延長された時間に亘って、追加の水を供給させることを可能にする。分子的結合水は、徐放型の水(自由水又は毛管水より遅い)である。このタイプの水は、ヒドロゲル発泡体に、延長された時間に亘って、給水を行わせることを可能にする。分子的結合水は、種々の水和タイプとして、発泡体に存在する。例えば、分子的結合水は、種々のタイプのポリエチレンオキシド水和物(一水和物から六水和物)として存在することができる。
【0132】
それぞれの特定の水和物の分子結合水は、典型的には70%相対湿度から100%相対湿度の直下までの値の範囲で、水蒸気と平衡になる。この複合した、又は分子結合した水は、含有水が、例えば、70%から95%相対湿度で水蒸気と平衡になるような範囲に乾燥した生育培地で、植物根に利用されるようになる。この材料中の複合水は、この値で、生育培地中に蒸発及び/又は拡散して植物を維持する。この水準の平衡相対湿度で供給された水で、多くの植物は十分に生き残る。それ故、分子結合水は、長時間に亘って放出され、この材料は、先行技術で報告された時間を上回る時間で給水できる。
【0133】
本発明の材料のこの特性は、これを有効利用するために最も重要である。多くの商業上の非PEGヒドロゲルにおいて、生育培地は、(例えば)20%から70%の相対湿度を必要とし、含有水をこの生育培地に引き入れる。これは、植物の維持のために利用されず、実際には、水分を育成培地から引き出し植物の枯死を早める。この単純な例は、シリカゲル(乾燥剤)を使用する試みであろう。シリカゲルは、20%相対湿度で水と平衡に達し、明らかに植物に水を供給するヒドロゲルとして使用されない。
【0134】
先行技術文献EP0647093は、一方で物理的強度を保持しながら、大量の水を吸収できる材料について述べることなく、またこの文献は、約25%の利用可能なポリオール水酸基をもつ材料が、経済的にかつ商業的に記載された望ましい水準に水を吸収することができ、一方で同時に良好な物理的強度を維持する材料を提供するであろうことを何ら示唆していない。更に、含水量及び発泡剤の重要性について先行技術に何ら示唆は無く、特に、特定された範囲に反応の水分量を制御することが、好都合な特性を有する材料を生成するであろうこと示唆していない。
【0135】
ヒドロゲル発泡体に存在する3タイプの水は、この材料に、再給水の必要がなく、長時間に亘って、植物に水を供給することを可能にする。それ故に、本発明の材料は、従来の給水タンクシステム又は先行技術のヒドロゲルで達成可能な時間を、はるかに上回る長い時間で、追加の給水を実施することなく、植物を長生きさせることができる。
【0136】
分子的に結合された水、毛管に保持された水、及び自由に利用できる水を遅延放出させることに加えて、ヒドロゲル発泡体は、水の揚水メカニズムを提供することができる。特に、親水性発泡材料の毛管作用は、例えば、植木鉢の底のレベル以下の水を鉢内に、又は鉢底に通常見られる孔を経由して、特に生育培地に水を移送する揚水メカニズムを提供する。即ち、この発泡材料は、植物及び生育培地が配置された鉢の外側に配置される。この材料は、利用者が任意の望ましい量の水を安全かつ便利に加えることを可能にし、自由水及び結合水の混合水として、植物のニーズを満足させる。種々の植物に、非常に異なる給水の要求がある時に、これは特に有用である。例えば、花が満開の菊及びシュウカイドウなどの植物は、ドラセナなどのある種の青葉植物の水要求の100倍まで要求することがある。
【0137】
水膨潤性発泡体を製造する時、硬化が起きる前に、多孔質生成系が、手で混合されてもよく、又は機械的混合及び計量分配機により混合及び計量分配されてもよい。反応体の混合物は、立方体、円筒及び特に設計された形状を含む任意の望まれた形状に計量分配することができる。多くの場合、成形された水膨潤性発泡体材料を0.5cmから5cmの間の最短側面を持つ薄い切片に加工することが望ましい。切片の膨潤速度は、実際的にかなり重要であり、この切片の膨潤速度は、薄い切片ほど、かつセル構造が100%開放セル構造に近づく材料ほど早くなる。これに反して、高い独立セル含水量をもつ組成物は、水吸収に長時間を要し、しかも吸収した水の放出に長時間を要する。独立セル構造のこの特徴は、少量の水を要求する植物の世話などの、非常に長期に亘る給水を必要とする時に、有用になるかもしれない。しかし、一般的には、開放セルからの早い応答が好ましい。
【0138】
水で膨潤した発泡体の開放セル含有量は、きわめて簡単な試験で解明することができる。発泡体の均一な切片が切断され、水中で一晩かけて膨潤させる。切片が浮揚したとき、薄いプラステイック定規が切片と平行して置かれる。水面上の切片の体積及び水面下の切片の体積を測定することができ、膨潤した切片の密度が、アボガドロの原理から計算できる。切片の膨潤したヒドロゲル部分の密度が概ね水の密度であると仮定すると、構成された密度の差異は、水を含まない独立セルによるものである。50%未満の値が望ましい。したがって、十分に膨潤しても、成功した発泡体は水中で浮上し、水面下に50%から90%が沈むであろう。
【0139】
水和した時の、かつヒドロゲル発泡体状態の、水膨潤性発泡体の別の驚異的、かつ有用な特性は、温度依存水吸収性である。周囲温度が高くなるほど、ヒドロゲル発泡体は毛管結合水及び分子的複合水をより多く放出する。結果的に、発泡体は、より多くの自由水を利用し易くする。反対に、周囲温度が低くなるほど、ヒドロゲル発泡体はより多くの毛管結合水及び分子的複合水を保持する。結果的に発泡体は、自由水を利用させない。
【0140】
先に述べたように、植物の低温輸送は、今や大規模な多国籍事業である。しかるに、輸送中に植物を維持するために自由水を用いることは、望ましくない。特に空輸の場合は、自由水の使用が抑制されている。ヒドロゲル発泡体の温度依存水吸収特性は、この問題を克服する。低温度(例えば、3℃から10℃)で植物が輸送される時、ヒドロゲル発泡体中の水の主要部分は、毛管結合水又は分子的複合水であり、利用可能な自由水を最小量にする。これに反して、配送時に植物が曝される高い温度(例えば、10℃から35℃)では、水の主要部分は、毛管結合水又は分子的複合水から自由水となって放出され、植物に迅速に利用される。
【0141】
切り取られた又は鉢植えされた植物は、芽をつけた植物又は茎として、しばしば出荷され、到着後に開花させ展示することを目的とするが、この時に多量の水を必要とする。暖かくなった時に都合よく水を放出できることは、この開花時の突然に高まる給水要求に備えるもので、植物に与える緊張を軽減することに役立つ。それ故、このヒドロゲル発泡体の特徴は、短い寿命で、又は予想不可能な寿命で植物が売買されること防ぐ。
【0142】
本発明の同様な特徴は、ヒドロゲル発泡体が、植物が水を最も必要とする時に、植物に水を供給するようにし、植物が水を殆ど必要としない時に、植物から水を取り除くようにする。例えば、ヒドロゲル発泡体は、一晩中(低温状態で)水を吸収し、かつ日中の高い温度で水を放出するであろう。それ故、植物は、水やり過ぎ及び水浸しから同時に保護される。更に、ヒドロゲル発泡体は、水を生育培地と自由に交換する。このように、ヒドロゲル発泡体は、植物の水に対する要求に応じて、生育培地に水を供給し、又は生育培地から水を取り除くであろう。この結果は、ヒドロゲル発泡体は、高い温度(日中)で生育培地に水を供給し、かつ低い温度(夜間)で生育培地から水を取り除くということである。これは、植物根が、多孔質培地内にあり、かつ植物の健康に有害な嫌気性条件(即ち根腐れ)を防ぐ必要がある時、空気を取り入れることができることを保証する。この特性は、本明細書で明白に述べてないが、種々の手段で更に利用できる。
【0143】
また、ヒドロゲル発泡体は、その外観により、植物がいかに多量の水を使用するか、及び/又はいかに多量の水を植物に加える必要があるかを示すために用いることができる。例えば、厚さ1.5cm及び直径3cmの水膨潤性発泡体の切片は、乾燥状態で、約200mLの分子的複合水及び毛管結合水を吸収する。このような切片は、閉ざされた植木鉢内に置かれてもよく、かつ植物を植えた第二の植木鉢(底面に孔を有する)が、閉ざされた鉢内の切片の上に置かれてもよい。水和された切片は、十分な物理的強度を持ち、植物を植えた第二の植木鉢を下から支える。水和された切片(又は、ヒドロゲル発泡体)は、柔軟な材料であり、植物を植えた第二の植木鉢の底部が切片上に押し付けられ、第二の植木鉢の内側の育成培地と切片の間に有効な毛管接触が作られる。
【0144】
最初の給水、又は再給水する時に、余分な水を添加してもよく、任意の所望する程度に切片を覆うことができる。例えば、菊に給水する時、約1週間の再吸水期間が望ましく、1週間に消費される水量は、約500mLから約600mLである。したがって、切片に添加される及び切片により吸収される200mLの水に加えて、別の(約)300mLが添加されて、それぞれ再給水で切片を覆う。再給水時に、消費される水量、及び利用できる水は、目視できる液体水の存在の有無、及び切片の膨脹程度によって判断することができる。水添加時に明らかに膨脹した幾らか目減りした切片が、最も望ましい状況であり、これは、植物が全給水期間を通じて給水を受けることを示す。
【0145】
菊は、水が不足すると、1日又は2日で突然枯死する恐れがある。しかし、給水システムとしてヒドロゲル発泡体を用いることにより、菊などの植物は、初期に急速放出水が供給され、後に緩徐放出水が供給される。これは、枯死が起きるまでは、長期間植物に安全をもたらし、この長期間後に、給水したならば、植物は完全に再生できる。
【0146】
前記した配置形式で、ヒドロゲル発泡体を用いることが、根及び生育培地を水浸しから護り、一方で、植物が必要とする時に、根及び生育培地に水を供給して、嫌気性の根腐れを防ぐ。
【0147】
2個、3個又はそれ以上の切片が配置され、より長期間、植物に水を供給することができる。例えば、前記した寸法の3個の切片を用い、3倍だけ給水間隔を引き伸ばすことができる。前記した菊の場合、この期間は、約3週間であろう。この期間は、例えば、使用者が休暇に入る時に有用な、延長された給水期間を裏付ける。また、ヒドロゲル発泡体の使用は、顕花植物を維持するための給水間隔が、通常2から3週間であるから、顕花植物の商業的提供をより実行可能にする。現在に至るまで、この期間を超えた給水を提供する、簡単で信頼性がある手段は存在しなかった。
【0148】
水膨潤性発泡体を用いるための代替の手段は、植物が植えられている植木鉢(底面に孔があるか、又は無い)の底部に1個以上の切片を置くことである。底部に孔を有する植木鉢を用いる時、この鉢は、水を満たすことができる受け皿(又は、任意の適切な容器)の上に置くことができる。植物が水を必要とする、及びヒドロゲル発泡体が水和を必要とする時、水は、受け皿が最早見えなくなるまで、この受け皿に添加することができる。水の吸収は、受け皿を観察することにより肉眼で判断することができる。
【0149】
ヒドロゲル発泡体が、底部に孔がない植木鉢に用いられる時、植物の状態は、この植物が給水を要求しているか否かを表す最良の指標である。しかし、前にも述べたように、給水により再生することができる延長された期間がある。この期間は、従来の給水システムの下で完全に乾いた植物に関して現れる短期間に比べてかなり長い。勿論、この期間は、問題の植物のタイプに応じて変わる。
【0150】
(実験−ポリマーの調製)
ポリエチレングリコール、PEG8000標準品/Ineos社の医薬品グレードを、供給されたまま用いた。Brian Jones & Associates社から供給されたバイエル社製のジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(デスモジュール(登録商標)CD)を、供給されたまま用いた。この材料は、2.1官能価、及び28.5〜30%のNCO値を有する。
【0151】
用いたポリイソシアネートは、通常、2以上の官能価をもつイソシアネートである。このタイプの混合物は、ジオール(ポリエチレングリコールのような)と反応して、架橋製品を形成する。この架橋製品は、水膨潤性発泡体を形成する時に望ましい。特定の例では、このイソシアネートは、デスモジュール(登録商標)CDであり、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(芳香族ジイソシアネート)を含有し、かつ全体的に約2.1の官能価を有する。
【0152】
官能価が2であるイソシアネートも使用できる。この場合、官能価が2超の追加の混和性ポリオール、例えば1,2,6−ヘキサントリオールを添加することが最良である。反応速度を遅くするために、追加のイソシアネート、特に脂肪族ポリイソシアネートを反応混合物に添加することができる。
【0153】
水膨潤性発泡体を、以下の手順に従って製造した。ポリプロピレンビーカー中でPEGを秤量し、電子レンジ中で溶融させ、その後に、このビーカーを90℃のオーブンに移した。次に、ビーカーを天秤上に置き、その重量を測った。適切な量の染料(Fat Brown)、酸化防止剤(ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA))、及びジイソシアネート(デスモジュール(登録商標)CD)を加え、この内容物を激しく攪拌した。次に、ビーカーを再びオーブン内に置き、数分間硬化させた。代わりに、内容物を適切な成形型に迅速に注入し、追加の熱源を用いることなく硬化させた。重合反応が発熱性であり、重合反応で発生した熱が、ポリマーを硬化させるために十分であることに留意されたい。
【0154】
異なる灰分をもつPEG8000を用いて、幾つかの実験を実施した。以下に示したように、灰分710ppmのPEGバッチ、と灰分150ppmのPEGバッチを混合して、PEGの灰分濃度を変更した。これらの実験で変数を減らすために、染料及び酸化防止剤を排除した。この実験はビーカー中で行われ、目視による観察を記録した。生成物を試験して、周囲温度で水中の膨潤程度を表1に示した。
【0155】
【表1】

【0156】
幾つかの重合実験をプラスチックカップ中で行い、一貫した質の水膨潤性発泡体のために必要な水分含有量の水準を確認した。これらの実験において、PEG8000:デスモジュール(登録商標)CDの比率は、94:6で一定に保った。
【0157】
PEGを溶融するために3種の加熱方法、即ち、オーブン、反応器、及び電子レンジを用いて、水膨潤性発泡体に及ぼす影響を調べた。通常の組成を用いて幾つかの実験を行った。水を吸収する能力に関して、得られた水膨潤性発泡体の品質又は特性に明白な差がないことを結論づけた。
【0158】
開放された長方形のプラスチックボックス中で、水膨潤性発泡体を製造する時、材料中の開放セル構造は低比率である。しかし、反応混合物を電子ミキサーで激しく混合した後、ポリプロピレン管に注入し、反応が進行する時に、この管の中で発泡させる場合、開放セル構造の比率が著しく増大する。これが起こるのは、イソシアネートと水の反応により発生したガス(二酸化炭素)が管の長手を通って流出するときであり、それによって破裂し、セルを形成し、究極的には発泡体を形成する。この特性が明らかになるのは、そのように形成された水膨潤性発泡体の切片を試験して、種々の寸法の延長した毛管通路を形成させ、この通路を通って自由水が容易に輸送される時である。同時に、これらの通路は、自由水のための潜在的タンクとして機能する。更に、これらの通路は、水吸収速度、及び水排出速度を高める大表面積を作り出す。
【0159】
円筒形状に水膨潤性発泡体を製造するためには、反応体を適切な容器中で混合し、適当に末端封止された管状型に迅速に注入する。これは、材料が漏れないことを確実にするためである。この型は、重合反応が終了するまで垂直姿勢に維持される。ポリマーの硬化、即ち、反応の完結は、反応体の重合により発生する熱により促進される。
【0160】
PVC及びポリプロピレン型を含む、種々の管状型を試験した。表面平滑性及び水膨潤性発泡体構造の精度に関しては、ポリプロピレン型がより良い製品を与えた。加えて、製品は、全く容易に型から取り出された。しかし、時には、得られた製品の一方向に沿って、ポリマーの若干の不均一な収縮が観察された。また、反応が殆ど完了した時、ポリマー構造の物理的膨脹が原因で、材料の末端表面は、材料の残りの部分に比べて平滑さに劣る。
【0161】
PVC型を用いて得られた製品の質は、表面平滑性及びマトリックスの統一性に関して劣っている。また、型の内面に離型剤が塗布された時であっても、液体窒素で冷却しない限り、型から材料を取り出すことはきわめて難しい。それ故、漏れを防ぐために適切に一つの末端を封止した、1m長のポリプロピレン型を用いることが好ましい。
【0162】
また、材料の美的品質を改良するために、任意の油脂溶解性染料、又は非水性流体中の顔料分散液を添加することができる。加えて、材料の保存期限を改良するために、重合反応の前に、酸化防止剤を添加することができる。同様に、任意の栄養素、無機質、着香料及び/又は芳香剤を、反応体と混合して、有利な効果を得ることができる。更に、所望の特性を得るために、材料に若干の界面活性剤及び/又は膨脹剤を用いることができる。以下の実施例は、議論した種々の添加剤を含んだ、管状及び/又は円筒状の水膨潤性発泡体の製造を説明する。
【実施例1】
【0163】
(実施例1)
PEG8000(モルテン) =1,410g
BHA(酸化防止剤) =0.75g
Fat Brown B =1.5g
デスモジュール(登録商標)CD=90.0g
【0164】
モルテンPEG(温度〜70℃)をポリプロピレンビーカーに加えた。BHA(Sigma Aldrich社から)及びFat Brown B(Clariant社から)をPEGに加え、電気泡立て器で混合した。最後に、デスモジュール(登録商標)CDを加えて、数秒間(約6から8秒)十分に混合し、事前に暖めたポリプロピレン型に迅速に注入した。ポリマーが硬化するまで、型は垂直に保持した。周囲温度に冷却後、製品を型から外した。
【実施例2】
【0165】
(実施例2)
PEG8000(モルテン) =94.0g
DC57添加剤(界面活性剤) =0.5g
デスモジュール(登録商標)CD=6.0g
【0166】
DC57をPEGに加え、混合した後デスモジュール(登録商標)CDを加えて、十分に混合した。次に、この混合物を垂直に保持された管状型に注入した。周囲温度に冷却後、製品を型から外した。
【実施例3】
【0167】
(実施例3)
PEG8000(モルテン) =94.0g
DC57添加剤(界面活性剤) =0.5g
Solkane(登録商標)(膨脹剤)=2.4g
デスモジュール(登録商標)CD =6.0g
【0168】
界面活性剤及び膨脹剤をPEGと混合した。次に、デスモジュール(登録商標)CDを加え、混合し、得られた混合物を迅速に管状型に注入した。周囲温度に冷却後、製品を引き出した。
【実施例4】
【0169】
(実施例4)
PEG8000(モルテン) =1,410g
BHA =0.75g
Fat Brown B =1.5g
パーライト =7.0g
デスモジュール(登録商標)CD=90.0g
【0170】
BHA、Fat Brown及びパーライトをPEGと混合した。デスモジュール(登録商標)CDを加え、混合した後、得られた混合物を型に注入して、反応硬化させて、固体の管状製品を得た。
【0171】
膨潤特性、即ち、水膨潤性発泡体の水保持能力(即ち、材料が水を吸収してヒドロゲル発泡体を形成する時)は、その他の高膨潤性ヒドロゲル材料を添加することにより更に改良可能である。重合前にAlcosorb(登録商標)−ポリアクリルアミド(チバ社から)を反応体に混合した、以下の試験がこれを代表する。表2は、反応体の詳細、混合物中のAlcosorb(登録商標)濃度を提供し、かつ周囲温度における水中の膨脹データを提供する。
【0172】
重合は、プラスチックカップ中で行われ、かつ混合は、ガラス棒の助けをかりて手で行われた。硬化を助けるために、反応体を混合した後、カップを90℃のオーブンに3分間置いた。
【0173】
【表2】

【0174】
これらの結果は、水膨潤性発泡体の特性が、追加のヒドロゲル、又は追加の吸収性材料の添加により、更に高められることを証明する。
【0175】
望ましい特性をもつヒドロゲル発泡体材料を生成する重合反応について、ポリエチレングリコール、PEG8000中の水分の下限及び上限確認するために、更なる実験を行った。
【0176】
実験は、プラスチックカップ中で行われ、PEG:デスモジュール(登録商標)CDの比率を、94:6の重量比で一定に保った。
【0177】
表3は、用いた反応体の量を示す。Ineos OxideからのPEG8000(〜450g)を、標準法によりロータリー・エバポレータを用いて、真空下105℃で5時間脱水した。カールフィッシャー滴定器による事前の測定で、このような脱水PEGが〜0.006%の水分を含有することが判っている。この値を考慮して、特定の試料の脱水PEGに必要な水の量を計算して、0.006〜5.0%水分の範囲を含有した。
【0178】
水の量を正確に秤量してラベル付きプラスチックカップに入れた。次に、溶融した脱水PEGをそれぞれのカップに添加し、80℃のオーブンに置いた。最後に1つずつ、デスモジュール(登録商標)CDを直接秤量してカップに入れ、ガラス棒の助けをかりて十分に混合した。カップを再び80℃のオーブンに15分間置き、硬化させ、取り出して観察した。観察結果を表4に示す。24時間後、これらの製品を型から取り出し、膨潤試験に用いた。
【0179】
膨潤試験を実施するために、試料を個別に秤量し、過剰な水を含有する適切にラベル付けした大きなプラスチックビーカー内に置き、80時間放置して膨潤させた。観察を行ない、記録し、可能な場合は、膨潤を測定して表5に記録した。
【0180】
【表3】

【0181】
【表4】

【0182】
【表5−1】


【表5−2】

【0183】
(結論)
発泡構造に重合させるために適した(PEG8000中の)水分の下限は、0.2〜0.5%の範囲であり、一方発泡構造に重合させるために適した(PEG8000中の)水分の上限は、0.5〜1.0%の範囲である。
【0184】
水分の最適水準は、概ね0.3〜0.5%の範囲である。要求された重合は、1.0%以上の水分を含有した試料で起きなかった。これらの特別の実験では、有効に発泡した、かつ高い膨潤を示した所望のポリマー構造は、試料4で得られ、この試料では、ポリマーの調製のために用いたPEG8000は、0.5%の水を含有した。
【0185】
(実験)
水膨潤性発泡体の特性、及び相当する水で膨潤した(ヒドロゲル)発泡体を、室内用鉢植え植物の注水の問題に当てはめた。植物の給水問題に対する革新的解決法を生み出すために、これらの特性を用いた。水膨潤性材料が、切片状で使用され、かつ水和されるので、この実験の目的のために、本発明の材料は、「ヒドロゲル発泡体切片」と呼ばれるであろう。
【0186】
この実験は、異なる吸水体制:通常の注水・水抜き的な給水法、過剰給水法、及び種々の配置でヒドロゲル発泡体切片を組み込む給水法、の下で一連の植物を観察し、比較することを含む。実験の目的は、室内用鉢植え植物の注水を2週間まで引き伸ばすことであった。
【0187】
三つの実験は、一連の選択された人気のある室内用鉢植え植物を用いて実施した。選択された植物は、ピースリリー、菊、シクラメン、サクラソウ、アザレア、あじさい、及びヒヤシンス球根であった。
【0188】
第一の実験は、水で飽和した後、植物がどれだけ長く持ちこたえるかの情報を提供するために行われ、続いて2週間にわたり監視した。第二の実験は、飽和させたヒドロゲル発泡体切片上に置いた植物を、対照植物及び過剰な水がある植物と比較した。第三の実験は、隙間の無い底部をもつ単一のプラスチック鉢の内側に膨潤した切片を含有する鉢に植えた植物と、対照植物を比較した。上記の三つの実験で提供された情報は、選択された室内用鉢植え植物の水の要求に関するデータ、及び植物の根に水を届ける最良の手段を提供した。
【0189】
この実験は、ヒドロゲル発泡体切片を一連の位置に置くように、かつ注水・水抜き的な給水及び過剰自由水の通常の給水技術に対して、切片を穴を掘って入れるように構成された。結果は、給水間隔を2週間以上に延長し、植物の枯死を少なくし、かつ健康な繁茂する植物を提供するために、ヒドロゲル発泡体切片の最良の用法に関する情報を提供した。
【0190】
(実験1:対照vs単一切片vs二重切片)
水の要求の広がりを提供するために、5種類の最も人気のある室内用鉢植え植物、ピースリリー、黄色菊(ポットマムY)、シクラメン、サクラソウ、赤色菊(ポットマムR)を選択した。
【0191】
それぞれの植物の3個の試料を選択し、番号をつけ、かつ鉢植えにした。1個は、通常の注水・水抜き的な給水条件下の対照とした。その他の2試料は、植木鉢の底部の下に水和したヒドロゲル発泡体切片を置いて鉢植えにし、鉢底部の水抜き孔を通して根及び土壌と切片を接触させた。この実験は、過剰の水を使用することなく、水抜きされ、十分に水和されたヒドロゲル発泡体切片を用いて行った。
【0192】
図2を参照して、総重量1(全システム重量)、鉢重量2(外側の鉢カバー及び任意の水和ヒドロゲル発泡体切片)、及び植物重量3(植物、及び水抜き孔を有する内側の鉢)を測定した。測定は、一連の植物について、2週間の期間−通常の休暇給水期間に亘って行った。
【0193】
この結果は、給水要求、及び健康な植物を維持するために十分な割合で水を供給する最良の方法に関する情報を提供するために使うことができる。
【0194】
(結果)
【表6−1】


【表6−2】

【0195】
2週間後の植物重量が、対照(ヒドロゲル発泡体切片を含まない)に比較して全て高いことは、利用可能な水が、この時点ではヒドロゲル発泡体切片でより高いことを例証する。ヒドロゲル発泡体切片を含む植物の枯死は、対照の枯死後、2から4日後に起きた。これらの結果から、種々の植物の健康な週間給水所要量が計算された。この結果は、水の減量が主に植物(植物重量は全ての土壌及びプラスチック鉢を含む)からであるか、又は水和したヒドロゲル発泡体切片からであるかの結論を引き出せるようになっている。
【0196】
図2を再び参照して、理想的な結果は、植物重量3の時間経過に対する変化が小さいことを示し、他方、水和したヒドロゲル発泡体切片及び外側の鉢カバーを含む鉢重量2からの水の減量を示すであろう。1個のヒドロゲル発泡体切片に代わって、2個のヒドロゲル発泡体切片の影響は、最終の測定で、より高い植物重量3となることであり、ふやしたヒドロゲル発泡体切片の数が鉢含水量に有益な影響を及ぼすことを例証した。この有益な影響は、ヒドロゲル発泡体切片中の結合水(分子的及び毛管的)から来るものであり、水分の欠乏からの植物の枯死を遅らせるのに最も有効である。
【0197】
図2は、植物の生育培地内の相対湿度が、水和したヒドロゲル発泡体切片の相対湿度より低下するに従い、植物が、水和したヒドロゲル発泡体切片から、もっと多い量を「吸い込み」始める時に、鉢重量が、第1週の間に植物重量より少なく減少し、第2週の間に等量減少することを示す。これは、ヒドロゲル発泡体切片が、植物の要求により救命作用を開始することを証明する。これは、少ない水を必要とする植物を維持するには十分である。
【0198】
(結論)
集められた情報を用いて、研究に使用したそれぞれのタイプの植物について、平均的週間水蒸散量を計算することが可能になった。以下の表7は、選択された通常の室内用鉢植え植物には、水の要求に著しい相違があることを示す。開花した植物が、開花を維持するために、より多くの水を必要とすることは、よく知られている。ある植物は、開花中に、1週間に0.5Lまでの水を必要とすることが表6から理解できる。本発明のヒドロゲル発泡体材料は、異なる吸水要求を有する植物に対してこの給水を提供することができる。
【0199】
【表7】

【0200】
(実験2:対照vs自由水vsヒドロゲル発泡体切片)
5種類の最も人気がある室内用鉢植え植物の3個の試料が、選択され、番号付けして、鉢植えをした。それぞれのタイプの1試料は、通常の注水・水抜き的な給水条件下の対照として選択された。それぞれのタイプの1試料が選択され、自由水の体制下で給水され、残りの試料が、植木鉢の底部の下に水和したヒドロゲル発泡体切片を置いて鉢植えにし、鉢底部の水抜き孔を通して根及び土壌と切片を接触させた。この実験は、過剰な水を使用することなく、水抜きされ、十分に水和されたヒドロゲル発泡体切片を用いて行った。注水・水抜き的な給水は、植物を含む植物鉢を水中に数時間浸漬することを含む。この時間の後に、植物鉢及び植物が取り除かれ、最早水が排出されなくなるまで、自由に水抜きする。これを一定の日数又は週数の期間放置した後、繰り返す。これに反して、自由給水体制は、植物を観察して、水を要求していると見えた時にはいつでも、植物に給水することを含む。与えられる水の量は、植物に給水する人の裁量である。
【0201】
図3を参照して、総重量4−全システムの重量、鉢重量5−外側の鉢カバー及び任意の膨潤した切片、及び植物重量6−植物、及び水抜き孔を有する内側の鉢を再び測定した。測定は、一連の植物について、2週間の期間−通常の休暇給水期間に亘って行った。
【0202】
結果は、適切な休暇期間に亘って、植物の根に水を供給するために、水和したヒドロゲル発泡体切片利用の調整法に関する情報を提供するために使用できる。
【0203】
(結果)
【表8−1】


【表8−2】

【0204】
上の表8に示したデータは、種々の植物が、ヒドロゲル発泡体切片の給水システムを用いて、1週間の給水間隔を生存し続けるであろうことを証明する。開花し、高い給水要求をもつ、2つのタイプの対照植物が、第1週以内で突然枯死した。水和したヒドロゲル発泡体切片中で、結合水(分子的かつ毛管的)を用いて、植物に水分を供給することにより、ヒドロゲル発泡体切片は、これらの植物が追加の5日間を生存し続けることを可能にする。
【0205】
2週間の終わりに、対照植物の5個中の4個が死滅し、一方で、2個の高給水を要求する植物(アザレア及びあじさい)だけが、ヒドロゲル発泡体切片を用いて枯死した。理解できるように、250mLの過剰自由水の添加でも、これらの高給水要求植物には不十分であった。
【0206】
(結論)
再び、図3を参照して、第1週の間、植物重量のプロット6は、植物が十分に水和して生き残ることを示唆する、理想的な横ばいのプロフィールに非常に接近していることが示される。鉢重量のプロット5は、総重量4のプロフィールに非常に接近しており、これは、第1週の間、植物を維持するために必要な水の大部分が、ヒドロゲル発泡体切片及び与えられた自由水から供給されたことを示唆する。
【0207】
実験が第2週に移った時、水タンクが使い果たされ、土壌が乾燥し始めた。ヒドロゲル発泡体切片は、通常の2週間ごとの休暇期間を通して、3種の植物(ピースリリー、球根及びサクラソウ)の健康な生き残りを可能にした。
【0208】
(実験3:対照vs鉢に入れたヒドロゲル発泡体切片)
先行の実験で集めたデータを用いて、2種の植物を選択した。アザレア及びヒヤシンス球根が、選択された2つの植物であり、実験ではそれぞれが、最高の及び最低の水要求植物であった。それぞれの植物の3検体を選択し、番号付けし、かつ鉢植えをした。一対を、対照として、通常の注水・水抜き的な給水条件の下で設けた。第二及び第三の対を、水和したヒドロゲル発泡体切片を内蔵して鉢植えをし、自由水を添加し、実験の目的で記録をとった。植物は、2週間監視した。
【0209】
総重量−全システムの重量、かつ対照の場合は、鉢重量−植物及び水抜き孔をもつ内側の鉢の重量を測定した。これらの測定結果は、水和したヒドロゲル発泡体切片からの自由水及び結合水の理想的パターンが、協力して植物を健康的かつ繁茂した状態に十分に保つことを示した。
【0210】
(結果)
【表9−1】


【表9−2】

【0211】
(結論)
表9の上記結果は、期待したように、注水・水抜き的な給水をしたアザレアが、3日後に枯死したが、一方プランターの底部に水和したヒドロゲル発泡体切片を含む同じ植物が、1週間生存した後に水を必要とするサインを示したことを表している。この時点で、900mLの水を植物Bに加え、500mLの水を植物Cに加えた。これらの植物は、それぞれ追加の14日及び10日生存した後、追加の水を必要とした。これは、水和したヒドロゲル発泡体切片及び自由水0.5Lの追加が、標準的な注水・水抜き的な給水で達成したものより、3から5倍の期間に亘り最高に水を要求する植物を開花状態に十分に維持することを証明している。
【0212】
試験したヒヤシンス球根は、1週間に最小量の水を必要としていると判断され、水和したヒドロゲル発泡体切片及び0.5Lの水の添加が、球根を購入した時から開花の終点までのサイクルに亘り健康状態を十分に維持した。また、対照は、開花するように管理されたが、質的に貧弱で、まもなく枯死した。
【0213】
行った実験から得られた追加の結果は、以下で論じられる。
【0214】
図4及び5を参照して、実験1から得られた、ポットマムレッド及びサクラソウのグラフは、鉢重量2が、植物重量3より小さく減少したことを示す。理想的なプロットは、一定の植物重量3、及び総重量1の変動に類似した鉢重量2の変動を示すであろう。鉢重量2の重量損失プロフィールが、総重量1のプロフィールに接近してよく似るほど、理想に接近する。最初に述べたように、結合水に追加して、ヒドロゲル発泡体切片に自由水を加えることは、植物が必要な水分を迅速に吸収できるようにする。したがって、理想的給水法は、ヒドロゲル発泡体切片及び自由水の両者を加えることである。
【0215】
図6及び7を参照して、実験2からグラフを作成する。サクラソウ、あじさい、及び球根は、少量の自由水、この場合は100mLの水を加えた時、ヒドロゲル発泡体切片とともに、類似の総重量4及び鉢重量5の減量については理想に近いプロフィールが、及び横ばいの植物重量6が、ある期間観察されたことを示す。これは、自由水及び水和したヒドロゲル発泡体切片の添加により、植物は2週間以上ほったらかしにできることを示唆する。自由水の水準が低下した時にはいつでも、ヒドロゲル発泡体切片の真上に再給水することにより、植物を健康に保つことができ、延長された期間繁茂させることができる。
【0216】
実験の結果から、以下の結論を引き出すことができる。ヒドロゲル発泡体切片を水和させ、過剰の自由水で覆い、かつその上面に鉢植えにした植物を置いた時(鉢がその底部に孔をもつならば)、水和したヒドロゲル発泡体切片は、要求に応じて自由水を提供し、かつ給水間隔を2週間の期間に伸ばすことができるであろう。
【0217】
土壌が乾燥したとユーザーが感じた時、第一の場合の再給水が発生しなければならない。この時点で、500mL見当の水をシステムに添加しなければならず、土壌が乾燥した時にはいつでも、これを反復しなければならない。そこには、明白な目視による指標が存在するので、再給水間隔は容易に判断されるに違いない。ヒドロゲル発泡体切片の周辺の自由水が空になった時、ヒドロゲル発泡体切片の平面上に水を添加すべきである−これは、土壌及びヒドロゲル発泡体切片の両者を再鼓舞するであろう。
【0218】
水和したヒドロゲル発泡体切片は、水やり不足及び水のやり過ぎの両者から植物を護る二重の利点を持っている。水やり不足に対して保護することが、水の過剰供給をもたらすであろう。同時に、ヒドロゲル発泡体切片は、自由水との接触による損傷から根を保護するであろう。これは、しばしば、酸素不足及び嫌気性細菌の増加をもたらす恐れがあり、これは根の弱体化(根腐れ)につながる。
【0219】
本発明の材料は、特に、植物の小売販売店が販売する植物の平均寿命を保証できる、給水システムを提供する。延長した寿命及び開花期間を保証する能力は、このような販売店及び同様にその顧客に大きな利益になるであろう。
【0220】
また、本発明の特性は、職業的及び素人の植物栽培者に利益をもたらし、かつ、特に、節水の観点で、及び植物の発育過程の早い段階で植物を販売可能にする観点で、園芸店の利益になるであろう。一方で、この特性は、植物が小売販売店に配達時に良好な状態を保つであろうことを保証できる。実際に、きわめて小さい鉢では、用いる生育培地内に十分な水を供給することは殆ど不可能であり、このような植物は、しばしば、購入後すぐに枯死する。鉢の底に配置された、小さな水和したヒドロゲル発泡体切片は、きわめて小さい鉢に収容された植物が利用できる水の量を大いに増量することにより、この問題を容易に解決する。
【0221】
本発明の材料は、その他の多くの園芸用途をもち、その用途には、垂直の表面に孔をもつ高い塔での植物栽培、その際ヒドロゲル発泡体切片は選ばれた数だけ、選ばれた高さに配置できる;ハーブの維持;トマト、コショウ、及びキュウリなどの作物の栽培、薬用植物の栽培、水耕栽培、並びにその他の多くの植物の形態及び品種ある。
【産業上の利用可能性】
【0222】
加えて、本発明の材料は、油及びガス探査(例えば、ボーリング泥水として)の分野、医薬及び健康管理(例えば、尿又は他の適切な液体を収容するための吸蔵体として)の分野などの、園芸分野以外の用途をもつことができる。
【0223】
本明細書で意図した本発明の観点から逸脱することなく、更なる変更及び改良を組み入れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1】水で膨潤した発泡体の内部構造の説明図である。
【図2】ピースリリーを用いた、植物、鉢、及び総体重量の時間に対する変化を説明するグラフである。
【図3】ピースリリーを用いた、植物、鉢、及び総体重量の時間に対する変化を説明するグラフである。
【図4】ポットマムレッドを用いた、植物、鉢、及び総体重量の時間に対する変化を説明するグラフである。
【図5】サクラソウを用いた、植物、鉢、及び総体重量の時間に対する変化を説明するグラフである。
【図6】サクラソウを用いた、植物、鉢、及び総体重量の時間に対する変化を説明するグラフである。
【図7】あじさいを用いた、植物、鉢、及び総体重量の時間に対する変化を説明するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を放出可能に保持するためのポリウレタンポリマーの網目構造を含む水和性ポリマー材料であって、ポリウレタンポリマーの網目構造が少なくともある比率の利用可能な水酸基を含む水和性ポリマー材料。
【請求項2】
利用可能な水酸基が、ポリウレタンポリマーの網目構造に結合したポリオール水酸基である請求項1に記載のポリマー材料。
【請求項3】
利用可能な水酸基と、尿素及び/又はウレタン結合の比率が、約1対3である請求項1又は2に記載のポリマー材料。
【請求項4】
材料が、実質的に多孔質な構造を含む請求項1から3の任意の一項に記載のポリマー材料。
【請求項5】
実質的に多孔質な構造が、発泡体である請求項4に記載のポリマー材料。
【請求項6】
発泡体が、約5容量%から95容量%の気孔率である請求項5に記載のポリマー材料。
【請求項7】
発泡体が、約10容量%から90容量%の気孔率である請求項5に記載のポリマー材料。
【請求項8】
発泡体が、約20容量%から80容量%の気孔率である請求項5に記載のポリマー材料。
【請求項9】
発泡体が、約50容量%の気孔率である請求項5に記載のポリマー材料。
【請求項10】
発泡体が、実質的に開放セル構造を含む請求項5から9の任意の一項に記載のポリマー材料。
【請求項11】
開放セルの比率が、少なくとも約50%である請求項10に記載のポリマー材料。
【請求項12】
開放セルの比率が、約50%である請求項10に記載のポリマー材料。
【請求項13】
発泡体が、少なくともある比率の独立セル構造を含む請求項5から12の任意の一項に記載のポリマー材料。
【請求項14】
発泡体が、発泡体の少なくとも一つの外部表面上の少なくとも一つの第一の点から、発泡体の少なくとも一つの外部表面上の少なくとも一つの第二の点に達する、複数の連続した通路を含む請求項5から13の任意の一項に記載のポリマー材料。
【請求項15】
発泡体が、発泡体内のセルから、発泡体の少なくとも一つの外部表面上の少なくとも一つの点に達する、複数の連続した通路を含む請求項5から14の任意の一項に記載のポリマー材料。
【請求項16】
ポリマー材料が、少なくとも一種の添加剤を含む請求項1から15の任意の一項に記載のポリマー材料。
【請求項17】
少なくとも一種の添加剤が、水膨潤性材料を含む請求項16に記載のポリマー材料。
【請求項18】
少なくとも一種の添加剤が、植物栄養素を含む請求項16に記載のポリマー材料。
【請求項19】
少なくとも一種の添加剤が、酸化防止剤を含む請求項16に記載のポリマー材料。
【請求項20】
ポリマー材料が、水膨潤性材料である請求項1から19の任意の一項に記載のポリマー材料。
【請求項21】
ポリマー材料が、ヒドロゲルである請求項1から19の任意の一項に記載のポリマー材料。
【請求項22】
ポリマー材料が、分子的結合水を含む請求項21に記載のポリマー材料。
【請求項23】
ポリマー材料が、毛管水を含む請求項21又は22に記載のポリマー材料。
【請求項24】
ポリマー材料が、自由液体水を含む請求項21から23の任意の一項に記載のポリマー材料。
【請求項25】
少なくとも一種のポリオールと少なくとも一種のイソシアネートを反応させるステップを含む水和性ポリマー材料の製造法であって、十分なポリオール水酸基が反応してポリウレタンポリマーの網目構造を形成し、かつ少なくともある比率の利用可能なポリオール水酸基が未反応で残る製造法。
【請求項26】
約25%のポリオール水酸基が、未反応で残る請求項25に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項27】
製造法が、発泡体を形成する手段を提供するステップを更に含む請求項25又は26に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項28】
発泡体を形成する手段が、水を含む請求項27に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項29】
発泡体を形成するために、十分な重量の発泡剤又は泡立て剤が供給される請求項27又は28に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項30】
ポリオール水酸基とイソシアネート基の相対比率、OH:NCOが、ほぼ1.0:2.0であり、かつ水分子の相対比率が、0.4から2.4の範囲である請求項28又は29に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項31】
イソシアネートが、2以上の官能価をもつ芳香族ポリイソシアネートである請求項25から30の任意の一項に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項32】
ポリオールが、ポリエチレングリコールを含む請求項25から30の任意の一項に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項33】
ポリエチレングリコールが、5,000と20,000Daの間の数平均分子質量を有する請求項32に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項34】
ポリエチレングリコールが、6,000と9,000Daの間の数平均分子質量を有する請求項32に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項35】
製造法が、少なくとも一種の異種ポリオールを添加するステップを更に含む請求項25から34の任意の一項に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項36】
少なくとも一種の異種ポリオールが、ポリプロピレングリコールである請求項35に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項37】
反応が、ポリマーの網目構造を形成するために十分な温度で実施される請求項25から36の任意の一項に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項38】
温度が、約70℃と約130℃の間である請求項37に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項39】
温度が、約80℃と約100℃の間である請求項37に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項40】
製造法が、少なくとも一種の触媒を供給するステップを更に含む請求項25から39の任意の一項に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項41】
製造法が、少なくとも一種の異種水膨潤性材料を添加するステップを更に含む請求項25から40の任意の一項に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項42】
製造法が、少なくとも一種の植物栄養素を添加するステップを更に含む請求項25から41の任意の一項に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項43】
製造法が、少なくとも一種の酸化防止剤を添加するステップを更に含む請求項25から42の任意の一項に記載のポリマー材料の製造法。
【請求項44】
請求項25から43の任意の一項に記載の方法により製造したポリマー材料。
【請求項45】
請求項1から24の任意の一項に記載の、又は請求項44に記載のポリマーを含む植物用の鉢植え配合物。
【請求項46】
請求項1から24の任意の一項に記載の、又は請求項44に記載のポリマーを含む植物用の栽培培地。
【請求項47】
植物の根又は根巻きを収容するための容器を含む植物輸送用のパッケージであって、容器が、請求項1から24の任意の一項に記載の、又は請求項44に記載の、ある量のポリマーを含有するパッケージ。
【請求項48】
パッケージが、鉢植え配合物又は生育培地を含有し、任意選択的に可溶性植物栄養素を含有する請求項47に記載のパッケージ。
【請求項49】
ポリマーが、必須植物栄養素を含有する水溶液で予め水和されている請求項47に記載のパッケージ。
【請求項50】
植物のために水利用可能性を安定化する方法であって、請求項1から24の任意の一項に記載の、又は請求項44に記載のポリマーを、鉢植え配合物又は栽培培地に取り入れること、及びポリマーを水和させることを含む方法。
【請求項51】
ポリマーを水和した後、このポリマーを鉢植え配合物、又は栽培培地に加える請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ポリマーを水和する前に、ポリマーを鉢植え配合物、又は栽培培地に加える請求項50に記載の方法。
【請求項53】
ポリマーが、必須植物栄養素を含有する水溶液で水和される請求項51又は52のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−504868(P2009−504868A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526557(P2008−526557)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003123
【国際公開番号】WO2007/023270
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508051540)スマート テック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】