説明

水域浄化フェンス

【課題】水浄化領域の面積(吸着剤や微生物付着担体の量)及び水流量調節領域の面積(透水性やろ過性)を、浄化の状況に応じて、簡易な操作で、適宜容易に変更することができる水域浄化フェンスの提供。
【解決手段】フロート部材、水浄化部材、水流量調節部材、及びこれらを接続する接続手段を含む水域浄化フェンスであって、該水浄化部材と該水流量調節部材が共に、略四角形の平面パネル状の単位構成要素(ユニット)として形成され、所定数の水浄化部材ユニットと所定数の水流量調節部材ユニットが、略平面を呈するように接続され、該略平面に、一又は複数の前記フロート部材が接続されていることを特徴とする前記水域浄化フェンス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水域浄化フェンスに関する。本発明は、より詳しくは、水浄化領域の面積(吸着剤や微生物付着担体の量)及び水流量調節領域の面積(透水性やろ過性)を浄化の状況に応じて容易に変更することができる水域浄化フェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚濁防止、一定水域の水質浄化、流出した油類の拡散防止や回収等のために、平面状のフェンス(以下、総じて「水域浄化フェンス」ともいう。)が使用されている。
【0003】
以下の特許文献1には、フロート部、スカート部及びアンカー部を備えた汚濁物質の水中拡散防止フェンスにおいて、スカート部表面に必要に応じ除去できる補助膜が取付けてあることを特徴とする汚濁物質の水中拡散防止フェンスが開示されている。
【0004】
以下の特許文献2には、浮き体を浮上させて汚濁防止膜を垂下させるか重錘を水底に着床させて汚濁防止膜を浮き体により水中に立ち上がらせることにより水域に設けられる汚濁防止フェンスにおいて、汚濁防止膜は索条体からなる骨格部と膜体からなり、これらの骨格部、膜体及び上記浮き体、重錘を部材として適宜選択しかつ上記いずれかの形態又はこれらを組み合わせた形態に組立可能に設け、膜体を骨格部の任意の位置に現場の具体的状況に合わせて取りつけ可能にするとともに上記骨格部、浮き体、重錘の連結部の任意の個所の連結部を円形可撓性緩衝体を介して行なうことを特徴とする現場組立用汚濁防止フェンスが開示されている。
【0005】
以下の特許文献3には、海洋において作業をする際に発生する汚物が所定範囲から外方へ拡散することを防止する防止膜の構造であつて、防止膜は芯体とこの芯体の表裏面の少なくとも片面に着脱自在に重合被覆された被膜布とを有してなると共にこの防止膜の下縁は海底に係着され上縁には浮材が取付けられてなることを特徴とする海洋汚濁防止膜構造が開示されている。
【0006】
以下の特許文献4には、水面に浮上するフロートに汚濁防止膜が吊設され、且つ、該汚濁防止膜の下端部には重錘が取付けられて成る汚濁防止装置において、上記汚濁防止膜の構成部材であるカーテンは所定サイズの合成樹脂材から成り、且つ、前記フロートには合成樹脂製のテンションベルトが連結されており、該テンションベルトには汚濁防止膜として配設せらるべき各カーテンの周縁部の対応位置に縦横の合成樹脂製の補強ベルトが配設されて格子状の枠部を形成し、最上段のカーテンの上端縁は前記テンションベルトに連結され、下方段の各カーテンの上端縁は夫々対応する枠部の各格子の上方部横方向補強ベルトに連結して下方部を開閉自在にし、且つ、該カーテンの下端縁に所定巾を有する高透水性膜体の一側縁を取付け、該高透水性膜体の他側縁を夫々対応する各格子の下方部横方向補強ベルトに連結して成る汚濁防止装置が開示されている。
【0007】
以下の特許文献5には、両岸に張り渡したロープと、ロープから水中に垂下した流木止めネットと、ロープに係止しロープを水面上に支持するフロートよりなる網場において、前記ロープに植生浮島を連結して係留したことを特徴とする水質浄化用網場が開示されている。特許文献5に記載された発明は、自然景観を損ねることなく、水面の緑化と、表層部から深水部にわたる効率のよい水質浄化を行なうとともに、流木、塵芥をせき止めて回収することを課題としている。そのため網場に植生浮島を連結、或いは網場と植生浮島を一体に構成し、植生浮島の植生基盤材の中に水質浄化作用を有する微生物を固定化した粒子を封入した通水性の微生物容器を挿入し、下面に微生物を吸着する多孔質の合成樹脂よりなる複数個の接触ろ材を垂下している。
【0008】
以下の特許文献6には、正面形状が四角形で、かつ所定の厚さを有し、網材にて袋状に構成され、内部に中込材を充填してなる複数個の単位ネットを、それぞれの側辺で連結し、上側辺に、複数のフロートを連結し、さらに陸側に係留する索条を連結したことを特徴とする吊りネットが開示されている。特許文献6に記載された発明は、流木が岸辺に漂着するのを阻止でき、流水の流水を減殺すことができ、さらに、露出した岸辺を流木や波浪から保護することができるようにすることを課題としている。
【0009】
さらに、以下の特許文献7には、袋状のネット内を、複数の区画に仕切部で区切り、該仕切部で区切られた各区画の各開閉部から、少なくとも1枚以上または1個以上の油吸着材を各区画毎に収納可能としたことを特徴とする油吸着機能性オイルネットが開示されている。特許文献7に記載された発明は、河川、海洋等の水面や路上等に流出した油類の拡散防止、吸着性能および回収除去作業に優れた吸着機能性オイルネットを提供することである。
【0010】
以上、特許文献1〜7には、様々な水域浄化フェンスが記載されているが、水浄化領域の面積(吸着剤や微生物付着担体の量)及び水流量調節領域の面積(透水性やろ過性)を、浄化の状況に応じて、簡易な操作で、適宜容易に変更することができる水域浄化フェンスは未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭62−159542号公報
【特許文献2】実開昭63−36530号公報
【特許文献3】実平3−83222号公報
【特許文献4】特開平9−53221号公報
【特許文献5】特開平10−110424号公報
【特許文献6】特開平11−124834号公報
【特許文献7】特開2000−17640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記した従来技術の状況に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、水浄化領域の面積(吸着剤や微生物付着担体の量)及び水流量調節領域の面積(透水性やろ過性)を、浄化の状況に応じて、簡易な操作で、適宜容易に変更することができる水域浄化フェンスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、以下の構成を有することにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]フロート部材、水浄化部材、水流量調節部材、及びこれらを接続する接続手段を含む水域浄化フェンスであって、該水浄化部材と該水流量調節部材が共に、略四角形の平面パネル状の単位構成要素(ユニット)として形成され、所定数の水浄化部材ユニットと所定数の水流量調節部材ユニットが、略平面を呈するように接続され、該略平面に、一又は複数の前記フロート部材が接続されていることを特徴とする前記水域浄化フェンス。
【0015】
[2]前記フロート部材に、網からなる基材が、略平面を呈するように接続され、かかる基材に、所定数の水浄化部材ユニットと所定数の水流量調節部材ユニットが接続されている、前記[1]に記載の水域浄化フェンス。
【0016】
[3]所定数の水浄化部材ユニットと所定数の水流量調節部材ユニット同士が、直接接続されている、前記[1]に記載の水浄化フェンス。
【0017】
[4]前記フロート部材の幅よりも広い幅の水浄化部材ユニット又は水流量調節部材ユニットが、該各フロートに縦方向に1列で接続され、短冊状を呈しており、各フロートが左右に隣接して敷設される際、左右に隣接するユニット同士が一部互いに重なるが、該ユニット同士は接続されていない、前記[2]又は[3]に記載の水浄化フェンス。
【0018】
[5]前記水浄化部材は、複数の孔を配した略四角形の補強枠に固定した網からなる外袋の中に、より目の細かい網からなる単数又は複数の内袋の中に吸着剤を収容したものを、さらに収容した二重構造の袋体構造を有する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の水域浄化フェンス。
【0019】
[6]前記水流量調節部材は、複数の孔を配した略四角形の補強枠に固定した網、編物、織物、不織布又は非透水性シートである、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の水域浄化フェンス。
【0020】
[7]前記接続手段による接続は、前記水浄化部材と前記水流量調節部材の補強枠に配した孔に、結束バンド、インシュロック(登録商標)、糸、紐、てぐす(天蚕糸)、針金、ロープ、安全ピン、クリップ又はフックの一部を通して行われる、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の水域浄化フェンス。
【0021】
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の水域浄化フェンスを使用することを特徴とする水域浄化方法。
【0022】
[9]前記水域浄化フェンスを、前記略平面を、水面と略直交する方向に展張して設置する、前記[8]に記載の水域浄化方法。
【0023】
[10]前記水域浄化フェンスを、前記略平面を、水面と略平行する方向に展張して設置する、前記[8]に記載の水域浄化方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る水域浄化フェンスは、水浄化部材ユニット及び水流量調節部材ユニットを、水浄化の状況に応じて適宜選択し、それぞれ、所定数を略平面上に容易に配置又は変更することができるため、作業効率が向上し、ひいては最適な水域浄化に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る水流量調節部材ユニットの概要図である。図中、13は、所望の透水性、ろ過性、微生物担持性等を有する網、編物、織物、不織布又は非透水性シートから選ばれる。
【図2】本発明に係る水浄化部材ユニットの概要図である。該ユニット20は、補強枠21に挟みこんだ網からなる外袋23の中に、より目の細かい網からなる内袋24の中に吸着剤25を収容したものを、さらに収容した二重構造の袋体構造を有する。
【図3】本発明の第一の態様を示す。この態様においては、網からなる基材(ネット)33が、水平方向及び水深方向に拡がって略平面を呈するように接続され、このネット33に、所定数の水浄化部材ユニット20と所定数の水流量調節部材ユニット10が接続されている。
【図4】本発明の第二の態様を示す。この態様においては、網からなる基材(ネット)を用いずに、所定数の水浄化部材ユニット20と所定数の水流量調節部材ユニット10同士が、直接接続されている。
【図5】本発明の第三の態様を示す。この態様においては、一定幅のフロート51に該一定幅よりも広い幅の水浄化部材ユニット20又は水流量調節部材ユニット10を、該フロートに縦方向に1列で接続し、短冊状を呈している。左右に隣り合うユニット同士は補強枠が互いに重なるが、該ユニット同士は接続されていない。
【図6】本発明に係る水域浄化フェンスを、略平面を、水面と略直交する方向、すなわち、略垂直方向に展張して設置した場合の概要図である。
【図7】本発明に係る水域浄化フェンスを、略平面を、水面と略直交する方向に展張して設置し、該フェンスが、アンカーによって水底に固定されており、フロートが水中にある場合の概要図である。
【図8】本発明に係る水域浄化フェンスを、略平面を、水面と略平行する方向、すなわち、略水平方向に展張して設置し、該フェンスが水底から離れ浮いている場合の概要図である。
【図9】本発明に係る水域浄化フェンスを、略平面を、水面と略平行する方向に展張して設置し、該フェンスが、水底に沈んでいる場合の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、フロート部材、水浄化部材、水流量調節部材、及びこれらを接続する接続手段を含む水域浄化フェンスであって、該水浄化部材と該水流量調節部材が共に、略四角形の平面パネル状の単位構成要素(ユニット)として形成され、所定数の水浄化部材ユニットと所定数の水流量調節部材ユニットが、該フロート部材に、略平面を呈するように、接続されていることを特徴とする前記水域浄化フェンスであり、その第一の態様においては、前記フロート部材に、網からなる基材が、略平面を呈するように接続され、かかる基材に、所定数の水浄化部材ユニットと所定数の水流量調節部材ユニットが接続されている。
【0027】
本明細書中、「水域」とは、河川、ダム、水路、湖沼、お堀、海等を含み、水が存在する領域である限り特に限定されない。
本明細書中、「浄化」とは、該水域内に存在する水のいずれかの性質が変化することをいい、特定の性質の変化を意味しない。
【0028】
本明細書中、「フェンス」とは、二次元の面を意味し、水域を閉じたものであってもなくてもよく、また、水底に届いていないものでもよく、また、可撓性を有するものであるかどうかを問わない。また、「フェンス」は、水域の水面から水底に向かって略垂直方向に展張したものであってもよく、水面と略平行に、すなわち、略水平方向に展張したものであってもよい。
【0029】
本明細書中、「水浄化部材」とは、主に、水を浄化する機能を有する材料、例えば、塩類、窒素、リン、重金属、有機溶剤、放射性物質等の吸着剤、例えば、天然又は合成ゼオライト、有機物を分解する微生物の担体、例えば、活性炭、炭素繊維等を提供する部材である。
【0030】
本明細書中、「水流量調節部材」とは、主に、水が該部材を通過することを調節する機能を有するか、又は懸濁液物質(SS)、土砂の細粒成分、青粉、藻類、赤潮、プランクトン微生物等の浮遊物をろ過する機能を有する材料を提供する部材である。
【0031】
図3に、第一の態様を説明する。
フロート部材31は、略筒状の発泡スチロールや中空プラスチックなどからなるが水に浮く限り材質は特に限定されない。例えば、筒状の発泡スチロールにブルーシートを巻いたものでもよい。かかるフロート部材31は、長さ方向に複数個連結して使用することができる。該連結は、隣接する中空プラスチックのフロートの端同士をロープで連結することによるものであってもよいし、また、例えば、フロート部材31の中心部にロープを貫通させたり又は周縁部に複数のロープを長さ方向に沿わせたりすることにより行ってもよい。筒状フロート部材31の大きさは、例えば、直径670mm長さ1150mmであることができる。
【0032】
第一の態様においては、フロート部材31に網からなる基材33が接続される。フロート部材は基材の一側面部だけでなく、基材の二以上の側面部に接続していてもよい。また、基材の略平面上に接続してもよい。網からなる基材33は、例えば、ポリエチレン製の防球ネットやジオグリッドであることができる。防球ネットは直径約4mm、40×40mmの格子状のポリエチレン製防球ネットであることができる。フロート部材31への基材33の接続は、特に限定されないが、フロート部材31が円筒状の発泡スチロールである場合、これを最大直径において2分割し、基材33をその間に挟みこみ、かかる後に、2分割されたフロート部材の外周を紐32できつく縛ることによるものであることができる。また、基材の端に金属チェーン等の錘を付けることも、また、アンカー等で水底に固定することもできる。
【0033】
図1に示すように、水流量調節部材10は、複数の鳩目を含む孔12を配した略四角形の補強枠11に固定した網、編物、織物、不織布又は非透水性シート13であることができる。補助枠は、所定の張力があれば可撓性であってもよく、補助枠と不織布等の固定は、ミシン糸等で縫い合わせる方法により行ってもよい。また、2つの補助枠の間に不織布等を挟み込んでもよい。また、補強枠の形状は、ユニットを形成する、すなわち、以下に説明する水浄化部材との互換性を有するために、略四角形であることが好ましいが、ユニットの形成を妨害しない限り、他の形状であっても構わない。
【0034】
例えば、水の流出入を制限したい場合には、非透水性のシートや織り目の細かい織布を使用し、ある程度の流出入を許容する場合には、不織布を使用し、かなりの程度の水の流出入を許容する場合には、目の粗い編物又は網を使用することができる。これらの材質は特に問わないが、例えば、ポリエステル製の織布又は不織布である。ここで、留意すべきは、水流量調節部材は、ろ過や吸着剤や微生物の担体として機能することもできるということである。すなわち、「水流量調節部材」という名称であっても、水流量調節という機能だけではなく、水浄化の機能を兼ね備えることができる場合がある。補強枠11には、例えば、鳩目であることができる複数の孔12が設けられており、かかる孔に紐を通し、これをさらに前記した基材33の格子に通して、紐を結束することにより、水流量調節部材10を基材33に固定することができる。かかる接続は、例えば、紐に代えて、結束バンド、インシュロック(登録商標)、糸、てぐす(天蚕糸)、針金、ロープ、安全ピン、クリップ又はフックの一部を通して行われることもできる。水流量調節部材10は、例えば、一辺40cm〜2mの正方形であることができる。
【0035】
図2に示すように、水浄化部材20は、複数の鳩目を含む孔22を配した略四角形の補強枠21に固定した網からなる外袋23の中に、より目の細かい網からなる単数又は複数の内袋24の中に吸着剤等を収容したものを、さらに収容した二重構造の袋体構造を有する。
【0036】
ここで、水浄化部材20の孔22と補強枠21の構造、基材33への固定方法、大きさは、前記した水流量調節部材10と同様である。但し、水浄化部材20においては、前記した不織布13等に代えて、微生物を吸着する機能を有する吸着剤等25、例えば、多孔質の合成樹脂よりなる複数の接触ろ材、牡蠣殻を再利用したもの、微生物を付着させた炭素繊維、猿頬貝の殻を再利用したもの、窒素、リン、重金属、有機溶剤、放射性物質等を吸着し、また微生物をも担持するゼオライト、活性炭、油吸着剤等を、こぼれないように充填した目の細かい網からなる単数又は複数の内袋24を収容したより目が粗く、かつ、より強度の高い線材からなる網からなる外袋23が、補強枠21に固定されている。ゼオライトは、窒素吸着後に回収して肥料にすることができるため、好ましい吸着剤である。ここで、留意すべきは、単数又は複数の内袋24の中に収容される材料は、浄化の状況に応じて、適宜交換されることができるということである。すなわち、「水浄化部材」という名称であっても、内袋内の材料の有無、種類によっては、水流量調節部材と同様の機能を発揮することができる場合がある。
【0037】
本発明に係る水域浄化フェンスは、水流量調節部材10と水浄化部材20が、それぞれ、互換性のあるユニットとして提供されることを特徴とする。これにより、水域浄化の状況に応じて、これらのユニットを適宜、簡単な操作で、交換し又は増減することにより、該フェンスを通過する水の流出入量、懸濁浮遊物のろ過性、吸着剤や微生物担体の量を調節して最適な浄化が可能となる。例えば、水深6mの水域浄化フェンス4枚で浄化すべき水域を取り囲む場合、水深1mまでは全て不透水シートの水流量調節部材10を配置し、水深1m〜5mまでは不織布の水流量調節部材10と吸着剤の水浄化部材20とを交互に配置し、水深5m〜6mには、網の水流量調節部材10を全て配置するか又は水流量調節部材10と水浄化部材20のいずれも配置しないことができる。この場合に、浄化の程度に応じて、かかる互換性のあるユニットの位置や種類を適宜変更することによって、例えば、吸着剤の水浄化部材20の数の割合を増減することによって、浄化を最適化することができる。
【0038】
図4に示すように、本発明の第二の態様においては、所定数の水浄化部材ユニット20と所定数の水流量調節部材ユニット10同士が、網からなる基材を用いずに、直接接続されていることを特徴とする。これらの接続は、前記した基材への浄化部材ユニット20と水流量調節部材ユニット10の接続と同様であることができる。
【0039】
図5に示すように、本発明の第三の態様においては、一定幅の各フロート51に該一定幅よりも広い幅の水浄化部材ユニット20又は水流量調節部材ユニット10が、該各フロート51に縦方向に1列で接続され、短冊状を呈している。そしてかかる短冊状のものが左右に隣接することにより水域浄化フェンスが構成されている。ここで、左右に隣り合うユニット同士は補強枠が互いに重なるが、該ユニット同士は接続されていない。このようなユニット同士の重なりのみによっても、水域浄化フェンスとしての機能に影響を及ぼさない場合には、第三の態様は有効である。
【0040】
第三の態様においては、フロート51にフック53が設けられ、該フロート51同士は、連結ロープ52を介して接続されている。該フック53は、水浄化部材ユニット20又は水流量調節部材ユニット10の孔に貫通し、フロート51と該ユニットを接続する。縦方向に隣接するユニット同士は、前記した第二の態様と同様に、接続手段(紐)54により接続されている。
尚、第三の態様の変形として、第三の態様における短冊状のものが、第一の態様における基材を介して各ユニットが接続されたものが挙げられる(図示せず)。
【0041】
水域浄化フェンスの施工やユニットの交換作業における第三の態様の貢献は多大である。なぜなら、左右に隣り合うユニット同士の接続が不要であるため、潜水作業を伴わずに、各フロート51に縦方向に1列で接続され短冊状を呈するものを略ユニットの大きさに折り畳んだものを、フロート51毎に船上に積載し、これをフロート毎に順番に水域に敷設すること、また、ユニット交換時に1つの短冊状のもののみを船上に引き上げて交換作業を行い、その後水に沈めることができるからである。
【0042】
本発明に係る水域浄化フェンスは、前記したように、また、図6に示すように、水面に対し略直交する方向に展張して設置することができる。この際、図7に示すように、アンカー等を用いることにより、該水域浄化フェンスを水底に固定することもできる。図7の態様においては、フロートが水面下、水中に位置するため、船舶の通行を妨げることがなく好都合である。
【0043】
また、図8に示すように、該水域浄化フェンスの略平面が、水面と略平行に展張するように設置することもできる。本発明の水域浄化フェンスを、水面又は水面に近い箇所に、水面と略平行に敷設することにより、例えば、浄水場において、雨水等に含まれる有害物質を除去し、水質を好適に保つことができる。
また、図9に示すように、該水域浄化フェンスを水底に接するように敷設することもできる。図9に示す態様は、沈殿性の有害物質の除去に好適である。さらに、フロートを接続しておくことで、該水域浄化フェンスの回収が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る水域浄化フェンスは、水浄化ユニット及び水流量調節部材ユニットを、水浄化の状況に応じて適宜、選択し、それぞれ、所定数を略平面上に容易に配置又は変更することによって、水浄化領域の面積(吸着剤や微生物付着担体の量)、及び水流量調節領域の面積(透水性やろ過性)を最適化できるため、水域浄化に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 水流量調節部材ユニット
11 補強枠
12 孔(鳩目)
13 不織布等
20 水浄化部材ユニット
21 補強枠
22 孔(鳩目)
23 外袋(目の粗い網)
24 吸着剤を収容した内袋(目の細かい網)
25 吸着剤
30 水域浄化フェンスの第一の態様
31 フロート材
32 接続手段(紐)
33 基材(網・ネット)
34 接続手段(紐)
40 水域浄化フェンスの第二の態様
41 フロート材
42 ロープ
43 接続手段(紐)
44 接続手段(紐)
50 水域浄化フェンスの第三の態様
51 フロート材
52 フロート連結ロープ
53 フロート材に設けられたフック
54 接続手段(紐)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロート部材、水浄化部材、水流量調節部材、及びこれらを接続する接続手段を含む水域浄化フェンスであって、該水浄化部材と該水流量調節部材が共に、略四角形の平面パネル状の単位構成要素(ユニット)として形成され、所定数の水浄化部材ユニットと所定数の水流量調節部材ユニットが、略平面を呈するように接続され、該略平面に、一又は複数の前記フロート部材が接続されていることを特徴とする前記水域浄化フェンス。
【請求項2】
前記フロート部材に、網からなる基材が、略平面を呈するように接続され、かかる基材に、所定数の水浄化部材ユニットと所定数の水流量調節部材ユニットが接続されている、請求項1に記載の水域浄化フェンス。
【請求項3】
所定数の水浄化部材ユニットと所定数の水流量調節部材ユニット同士が、直接接続されている、請求項1に記載の水浄化フェンス。
【請求項4】
前記フロート部材の幅よりも広い幅の水浄化部材ユニット又は水流量調節部材ユニットが、該各フロートに縦方向に1列で接続され、短冊状を呈しており、各フロートが左右に隣接して敷設される際、左右に隣接するユニット同士が一部互いに重なるが、該ユニット同士は接続されていない、請求項2又は3に記載の水浄化フェンス。
【請求項5】
前記水浄化部材は、複数の孔を配した略四角形の補強枠に固定した網からなる外袋の中に、より目の細かい網からなる単数又は複数の内袋の中に吸着剤を収容したものを、さらに収容した二重構造の袋体構造を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水域浄化フェンス。
【請求項6】
前記水流量調節部材は、複数の孔を配した略四角形の補強枠に固定した網、編物、織物、不織布又は非透水性シートである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水域浄化フェンス。
【請求項7】
前記接続手段による接続は、前記水浄化部材と前記水流量調節部材の補強枠に配した孔に、結束バンド、インシュロック(登録商標)、糸、紐、てぐす(天蚕糸)、針金、ロープ、安全ピン、クリップ又はフックの一部を通して行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水域浄化フェンス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の水域浄化フェンスを使用することを特徴とする水域浄化方法。
【請求項9】
前記水域浄化フェンスを、前記略平面を、水面と略直交する方向に展張して設置する、請求項8に記載の水域浄化方法。
【請求項10】
前記水域浄化フェンスを、前記略平面を、水面と略平行する方向に展張して設置する、請求項8に記載の水域浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180733(P2012−180733A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100068(P2011−100068)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(591041196)旭化成ジオテック株式会社 (25)
【出願人】(509320737)一般社団法人グリーンディール推進協会 (3)
【Fターム(参考)】