説明

水変色性クジ及びそれを用いた水変色性クジセット

【課題】容易且つ安価に製造でき、水等を付着することにより乾燥状態と異なる所望の像が現出して数字やアルファベット、当たり外れ等が分かると共に、繰り返しの使用が可能である水変色性クジ及びそれを用いた水変色性クジセットを提供する。
【解決手段】支持体表面2に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸液状態で不透明であり、吸液状態で透明化する多孔質層3が像形態で積層されると共に、前記多孔質層3の一部に撥水性樹脂を共存状態に内在させた非吸液部4を形成する水変色性クジ1。前記水変色性クジ1と水付着手段とからなる水変色性クジセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水変色性クジ及びそれを用いた水変色性クジセットに関する。更には、液体の付着により容易に内容が確認できると共に、繰返し使用できる水変色性クジ及びそれを用いた水変色性クジセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷面の空白部分を押圧することで、該空白部分に像が現出する印刷物が開示されており、クジとして使用されている(例えば、特許文献1参照)。
前記クジは、空白部分に無色から有色に変化する印像が形成されると共に、該印像の下層(印刷面の下層)に発色液を収容することにより、空白部分を押圧した際に当たり外れ等の像が現出するという意外性がある。しかしながら、内部に発色液を収容するため製造にコストと手間がかかることや、一定の厚みが生じる等の不具合がある。また、化合物の不可逆反応であるため、繰り返して使用することはできなかった。
【特許文献1】特開平6−206395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、容易且つ安価に製造でき、水等を付着することにより乾燥状態と異なる所望の像が現出して数字やアルファベット、当たり外れ等が分かると共に、繰り返しの使用が可能である水変色性クジ及びそれを用いた水変色性クジセットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、支持体表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸液状態で不透明であり、吸液状態で透明化する多孔質層が像形態で積層されると共に、前記多孔質層の一部に撥水性樹脂を共存状態に内在させた非吸液部を形成する水変色性クジを要件とし、前記多孔質層及び非吸液部が、文字、記号、英数字、図柄から選ばれるいずれかの像形態であることを要件とする。
更に、支持体表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸液状態で不透明であり、吸液状態で透明化する多孔質層が像形態で積層されると共に、該多孔質層と、像形態の非変色層とが併設される水変色性クジを要件とし、前記多孔質層及び非変色層が、文字、記号、英数字、図柄から選ばれるいずれかの像形態であることを要件とする。
更には、前記水変色性クジと水付着手段とからなる水変色性クジセットを要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、水等を付着することにより乾燥状態での様相と異なる像を容易に現出でき、数字やアルファベット、当たり外れ等が分かる、意外性の高い水変色性クジ及びそれを用いた水変色性クジセットを安価に提供できる。また、繰り返しの使用が可能であり、コストパフォーマンスの高い水変色性クジ及びそれを用いた水変色性クジセットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記支持体表面に形成される多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であり、液体の付着によって透明化するものである。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、液状組成物を吸液すると良好な透明性を示すものである。
尚、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
また、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造させる珪酸であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が特に効果的であり、実用性を満たす。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別されるが、本発明の意図する多孔質層として機能させるためには、湿式法珪酸が最適である。
これは、乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、前記乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、よって、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
また、前記本発明の多孔質層においては、水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
尚、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の汎用の低屈折率顔料を併用することもできる。
【0007】
前記多孔質層中の湿式法珪酸は、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1g/m〜30g/mであることが好ましく、より好ましくは、5g/m〜20g/mである。1g/m未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、30g/mを越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
前記珪酸の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
【0008】
前記珪酸はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、基材に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記珪酸とこれらのバインダー樹脂の混合比率は、珪酸の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、珪酸1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2重量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5重量部である。珪酸1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、従来より公知の一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、本発明においては水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバイン
ダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分重量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤や界面活性剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0009】
尚、前記多孔質層中には、従来より公知の二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄−二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、グアニン、絹雲母、塩基性炭酸鉛、酸性砒酸鉛、オキシ塩化ビスマス等の金属光沢顔料を添加したり、一般染料や顔料、蛍光染料や蛍光顔料を混在させて色変化を多様化させることができる。
また、温度変化により可逆的に色変化する、従来より公知の可逆熱変色顔料を混在させて、環境温度や付着させる水温により色変化させることができる。
【0010】
更に、前記多孔質層の上層、下層、及び/又は近傍には非変色層(着色層)を配設、併設して様相変化や表示情報をより多様化させることができる。
前記多孔質層及び非変色層は、文字、記号、英数字、図柄等の像形態で形成される他、ベタ印刷状で形成することもできる。
前記多孔質層及び非変色層は、従来より公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
【0011】
尚、多孔質層と非変色層(着色層)を併設する場合、非変色層(像)の色調と多孔質層(像)の色調を合わせることで、常態(非吸水状態)では判別し難い非変色像と多孔質像が、多孔質像への吸水により判別可能となる。そのため、吸液状態で当たり外れ、何等、何賞、何番等が初めて確認できるクジを形成できる。
【0012】
また、前記多孔質層の一部に撥水性樹脂を共存状態に内在させることにより非吸液部を形成することができる。
前記非吸液部は、シリコン系、パラフィン系、ポリエチレン系、アルキルエチレン尿素系、フッ素系等の撥水性樹脂から選ばれる樹脂を含む撥水処理液を多孔質層上に適宜形状を形成するよう付着させ、浸透乾燥して得られる。
前記撥水性樹脂のうち、フッ素系撥水剤が、撥水効果及び加工適性の面で効果的であり、固形分として、1g/m〜50g/m、好適には、2g/m〜30g/mの範囲の付着量が有効である。
【0013】
撥水性樹脂による非吸液部を多孔質層の一部に配設することにより、非吸液部が設けられた箇所の多孔質層は、撥水効果により吸水状態が形成されず、不透明状態が保持される。従って、常態(非吸水状態)では、判別し難い非吸液部と多孔質層が、非吸液部が配設されていない部分の多孔質層への吸水により判別可能となる。そのため、吸液状態で異なる像が発現することを用いて、当たり外れ、何等、何賞、何番等が液体を付着させることにより初めて確認できるクジが形成できる。尚、前記様相変化は液体の付着、乾燥により、互変的である。
【0014】
前記非吸液部を用いて、多孔質層に文字、記号、英数字、図柄等の像を形成することにより、クジとしての情報と様相変化を付与することができる。
更に、前記非変色層(着色層)を併設することで、デザイン性の向上や、表示情報の多様化が可能となる。
【0015】
前記多孔質層を形成する支持体としては、合成紙、上質紙、アート紙、コート紙等の紙類、織物、編物、組物、不織布等の布帛、プラスチックフィルム、樹脂板等のシート状物や、木材、陶器、金属、樹脂成型物等の立体物を適用することができる。
【0016】
また、前記支持体と多孔質層との間に、非浸水性フィルムや接着剤からなる防水層を介在することもできる。これにより多孔質層の下層に液体が侵入することを抑制できるので、支持体の劣化を抑制できる。前記防水層は透明のものに限らず、着色したものを用いることもできる。また、前記防水層を支持体の裏面に設けることも可能である。
【0017】
前記支持体の形状は特に限定されるものではなく、例えば、正方形、長方形、三角形、六角形等の多角形、円、楕円、瓢箪形、その他動物、植物、乗物等の形象物を模した形状のシート状物や立体物を用いることができる。
【0018】
前記水変色性クジに水を付着させる方法としては、直接水に浸す方法、手や指を水で濡らして多孔質層に接触させる方法、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具、或いは、スポンジに水を含浸させて多孔質層に接触させる方法、水を収容した容器を多孔質層に近接又は接触させ、容器内から水を導出して付着させる方法、印面に連続気泡又は独立気泡を有する発泡体を固着したスタンプ具に水を含浸させて多孔質層に付着させる方法、プラスチックやゴムの印面を粗面に形成したスタンプ具に水を付着させ、多孔質層に接触させる方法が挙げられる。
尚、水を収容した容器を多孔質層に近接又は接触させ、容器内から水を導出して付着させる方法としては、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けて水を塗布する方法、容器内に水を収容し、且つ、噴霧装置を設けて、水をスプレーする方法、注射器のように容器内の水を押圧して、水を噴出させる方法等が挙げられる。
前記水を付着させる手段としては、筆記又は塗布具、スポンジ、スタンプ具、スプレー装置、注射器を例示でき、水変色性クジと組み合わせて水変色性クジセットが得られる。
尚、好ましい水付着手段としては、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具、或いは、スタンプ具であり、任意の筆記像又は印像を簡便に形成でき、実用性を高めることができる。
前記における連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体は、水を適宜量、吸収し、吐出させるものであればよく、従来より汎用のポリオレフィン系、ポリウレタン系、その他各種プラスチックの連続気孔体や繊維を集束させた毛筆状のもの、繊維の樹脂加工又は熱溶着加工によるもの、フェルト、不織布形態のものを挙げることができ、形状、寸法は目的に応じて任意に設定できる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を示すが、本発明は実施例に限定されない。尚、実施例中の部は重量部を示す。
【0020】
実施例1(図1参照)
厚さ1mmの合成紙(裏面に非変色性メッセージが記載してある。)を支持体2とし、表面全体に黒色インキを塗布して着色層6を形成した後、該着色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて1〜10の数字をランダムに印刷し、70℃で10分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成したものを10枚作製した。そのうちの1枚に、多孔質層3のうち数字の「1」の上に、フッ素系樹脂撥水剤〔商品名:ディックガードDF−30、大日本化学工業(株)製、固形分10重量%〕80部、油性系増粘剤1.0部、油性系遅乾溶剤19.0部を均一に混合攪拌してなる無色透明スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュのスクリーン版にて全体を覆うように印刷し、70℃で3分間乾燥硬化させることで非吸液部4を形成し、カード形態の水変色性クジ1を得た。
前記水変色性クジ1は、乾燥状態では黒色の背景に白色の多孔質層3(1〜10の数字)が視認されるが、水を付着させると多孔質層3(1以外の数字)は吸液により白色不透明状態から無色透明状態に変化して下層の色調(黒色)が視認され、非吸液部4(白色数字の1)のみが視認される状態を維持するものとなった。この様相は吸液状態で維持しているが、水が蒸発乾燥すると元の様相(1〜10の白色数字が視認される)へと変化する。
【0021】
更に、支持体2上に多孔質層3を形成したもの(残りの9枚)に、それぞれ2〜10のいずれかの数字上に、前記と同様の手段で非吸液部4を形成することで、吸液状態でそれぞれ1〜10のいずれかの数字が視認される10枚の水変色性クジ1を得た。
前記10枚の水変色性クジ1はいずれも、乾燥状態では黒色の背景に白色の多孔質層3(1〜10の数字)が視認されるが、吸液状態では非吸液部4(各1〜10の数字のうちのいずれか一つ)のみが視認される状態を維持するものとなった。この様相は吸液状態で維持しているが、水が蒸発乾燥すると元の様相へ変化する。
そのため、複数人に前記クジを配布した後、それぞれに水を付着させることで、配布されたクジが何番のものかが分かるクジとなる。
【0022】
実施例2
実施例1で得た10枚の水変色性クジ1と、水付着手段として軸筒内に水を収容可能に構成し、且つ、繊維加工ペン体を設けたペンとを組み合わせて水変色性クジセットを得た。
前記水変色性クジ1は、乾燥状態で白色の数字(多孔質層3)を前記ペンで塗ると、1〜10の数字のうちいずれか一つを残して透明状態に変化する。この状態は多孔質層3が吸液状態では保持されており、乾燥すると元の状態に戻った。この現象は何度も繰り返し行うことができた。
【0023】
実施例3(図2参照)
厚さ1mmの合成紙(裏面に非変色性メッセージが記載してある。)を支持体2とし、表面全体に黒色インキを塗布して着色層6を形成した後、該着色層6上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にてA〜Eまでのアルファベットをランダムに印刷し、70℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成した。
更に、白色スクリーン印刷用インキ(多孔質層3との類似色)を用いてアルファベットの「F」の文字を印刷し、非変色層5を形成することで、カード形態の水変色性クジ1を得た。
前記水変色性クジ1は、乾燥状態では黒色の背景に白色の多孔質層3(A〜Fのアルファベット)が視認されるが、水を付着させると多孔質層3(F以外の文字)は吸液により白色不透明状態から無色透明状態に変化して下層6の色調(黒色)が視認され、非変色層5(白色文字のF)のみが視認される状態を維持するものとなった。この様相は吸液状態で維持しているが、水が蒸発乾燥すると元の様相(A〜Fまでの白色文字が視認される)へと変化する。
【0024】
更に、前記クジと同様に、支持体2上に多孔質層3を形成したもの(A〜Fのアルファベットのうち、A〜Eのいずれかを除いた像)を五枚作製し、それぞれ多孔質層3として形成しなかった文字(A〜Eのいずれか)を、前記と同様の白色インキで形成することで、吸液状態でそれぞれA〜Eの文字が視認される五枚の水変色性クジ1を得た。
前記五枚及び先の一枚(計六枚)の水変色性クジ1はいずれも、乾燥状態では黒色の背景に白色の多孔質層3(A〜Fの文字)が視認されるが、吸液状態では非変色層5(各A〜Fのアルファベットのうちいずれか)のみが視認される状態を維持するものとなった。この様相は吸液状態で維持しているが、水が蒸発乾燥すると元の様相へ変化する。
そのため、複数人に前記クジを配布した後、それぞれに水を付着させることで、配布されたクジが何賞のものかが分かるクジとなる。
【0025】
実施例4
実施例3で得た六枚の水変色性クジ1と、水付着手段として軸筒内に水を収容可能に構成し、且つ、繊維加工ペン体を設けたペンとを組み合わせて水変色性クジセットを得た。
前記水変色性クジ1は、乾燥状態で白色の数字(多孔質層3)を前記ペンで塗ると、A〜Fのうちいずれか一つを残して透明状態に変化する。この状態は多孔質層3が吸液状態では保持されており、乾燥すると元の状態に戻った。この現象は何度も繰り返し行うことができた。
【0026】
実施例5(図1、図3参照)
厚さ0.5mmの耐水紙(裏面に非変色性メッセージが記載してある。)を支持体2とし、表面全体に青色インキを塗布して着色層6を形成した後、該着色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて「○」と「×」の記号(各5個ずつ)をランダムに印刷し、80℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成したものを10枚作製した(図3)。
10枚のうちの1枚に、多孔質層3の「○」の部分に、フッ素系樹脂撥水剤〔商品名:ディックガードDF−30、大日本化学工業(株)製、固形分10重量%〕80部、油性系増粘剤1.0部、油性系遅乾溶剤19.0部を均一に混合攪拌してなる無色透明スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュのスクリーン版にて全体を覆うように印刷し、70℃で3分間乾燥硬化させることで非吸液部4を形成し、カード形態の水変色性クジ1を得た(図1)。
前記非吸液部4を有する水変色性クジ1は、乾燥状態では青色の背景に白色の多孔質層3(ランダムに印刷された複数の○と×)が視認されるが、水を付着させると多孔質層3の「×」のみが吸液により白色不透明状態から無色透明状態に変化して下層の色調(青色)が視認され、非吸液部4の「○」のみが視認される状態を維持するものとなった。この様相は吸液状態で維持しているが、水が蒸発乾燥すると元の様相(ランダムに印刷された多数の○と×が視認される状態)へと変化する。
また、先に作製した9枚のクジ(非吸液部4を有さないもの)は、乾燥状態では青色の背景に白色の多孔質層3(ランダムに多数印刷された○と×の記号)が視認されるが、吸液状態では前記多孔質層3がすべて白色不透明状態から無色透明状態に変化して下層の色調(青色)が視認される状態を維持するものとなった。この様相は吸液状態で維持しているが、水が蒸発乾燥すると元の様相へ変化する。
【0027】
前記10枚の水変色性クジ1を複数人に配布した後、それぞれに水を付着させることで、乾燥状態では青色の背景に白色の多孔質層3(ランダムに多数印刷された○と×の記号)が視認されたものが、液体付着時には非吸液部4が印刷された1枚のみが、○の記号を視認される状態となるため、配布されたクジの当たりハズレが容易に分かるものとなる。
【0028】
実施例6
実施例5で得た10枚の水変色性クジ1と、水付着手段として軸筒内に水を収容可能に構成し、且つ、繊維加工ペン体を設けたペンとを組み合わせて水変色性クジセットを得た。
前記水変色性クジ1のうち9枚(図3形態)は、乾燥状態で白色の○×(多孔質層3)を前記ペンで塗ると透明状態に変化する。残りの1枚(図1形態)は、乾燥状態で白色の○×(多孔質層3)を前記ペンで塗ると「×」の部分が透明状態に変化し、「○」の部分は白色状態で維持される。この状態は多孔質層3が吸液状態では保持されており、乾燥すると元の状態に戻った。この現象は何度も繰り返し行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の水変色性クジの縦断面説明図である。
【図2】本発明の別の水変色性クジの縦断面説明図である。
【図3】図1や図2の水変色性クジと併用されるクジの縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 水変色性クジ
2 支持体
3 多孔質層
4 非吸液部
5 非変色層
6 着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸液状態で不透明であり、吸液状態で透明化する多孔質層が像形態で積層されると共に、前記多孔質層の一部に撥水性樹脂を共存状態に内在させた非吸液部を形成することを特徴とする水変色性クジ。
【請求項2】
前記多孔質層及び非吸液部が、文字、記号、英数字、図柄から選ばれるいずれかの像形態であることを特徴とする請求項1記載の水変色性クジ。
【請求項3】
支持体表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸液状態で不透明であり、吸液状態で透明化する多孔質層が像形態で積層されると共に、該多孔質層と、像形態の非変色層とが併設されることを特徴とする水変色性クジ。
【請求項4】
前記多孔質層及び非変色層が、文字、記号、英数字、図柄から選ばれるいずれかの像形態であることを特徴とする請求項3記載の水変色性クジ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の水変色性クジと水付着手段とからなる水変色性クジセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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