説明

水封用のボーリング孔の給排水装置

【課題】パッカーホースを水封用トンネルの開口から3〜4m若しくはその近傍の目的の位置までボーリング孔内に容易に挿入し得て、水封用のボーリング孔をシール状態に閉鎖する作業を容易に行い得る水封用ボーリング孔の給排水装置を提供する。
【解決手段】水封用のボーリング孔12のパッカーホース18付きの給排水装置16において、排水用の外管50を、パッカーホース18内の固定管50Aと、外部の延長管50Bとの分割構成として、それらを接続する一方、内管をパッカーホース18に対し非固定として、パッカーホース18外の延長部を外管の延長管50Bの端部に接続固定するようになす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中で岩盤に設けた水封用のボーリング孔を開口側でシール状態に閉鎖した上で、ボーリング孔内に水封用の水を給水し、また過剰の水を取り出すためのパッカーホース付きの水封用のボーリング孔の給排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本で使用されるLPG(液化石油ガス)は大部分を輸入に頼っており、こうした情勢の下で供給の安定性を確保する観点から一定量のLPGを備蓄することが構想されている。
LPGの備蓄の方法としては(原油の備蓄についても同様)地上タンク方式と、地下に掘った岩盤の空洞をタンクとして、そこにLPGを蓄える水封式地下岩盤タンク方式とがある。
【0003】
水封式地下岩盤タンク方式では、地上タンク方式のように設備その他の制約がないので大容量の設備を作ることができ、また大気と遮断されるため火災や爆発の恐れがなく、更に地震などの自然災害の影響をあまり受けないなどの利点を有しており、現在この水封式地下岩盤タンク方式による備蓄が進められている。
【0004】
この水封式地下岩盤タンク方式の原理は、岩盤タンクを地下水位よりも深い位置(地下150m以深の位置)に設け、周りにある地下水の持つ圧力で高圧状態のLPGを岩盤タンク内に封じ込める(水封する)ものである。
【0005】
LPGを岩盤タンク内に貯蔵するには常温で約1MPa以上の高い圧力が必要で、高圧状態の岩盤タンク内のLPGは岩盤内部の亀裂を伝って外部に漏出しようとする。
水封式地下岩盤タンク方式では岩盤タンク周辺の地下水圧をLPG貯蔵圧力より高く保持し、岩盤タンク内へ向う岩盤内の地下水流により、亀裂を伝うLPGの漏出を防止する。
【0006】
ところで岩盤タンク内に周辺の地下水が岩盤の亀裂を通じて流入すると地下水位が低下し、地下水圧を維持することが難しくなる。
【0007】
そこでこの方式では、図6に示しているように岩盤タンク200周辺の地下水位を維持し、地下水の流れを確保するために、岩盤タンク200の周辺上部に水封用のトンネル(水封トンネル)202を設けて、その水封用のトンネル202から多数の水封用のボーリング孔204(孔径はφ90mm程度、長さが60m程度の長く延びた孔)を岩盤内に穿孔して、かかるボーリング孔204を組織的に配置し、そのボーリング孔204内に人工的に水を供給して、岩盤の亀裂をそのボーリング孔を通じて水封するとともに、岩盤タンク200に向う地下水流を確保し、以って岩盤タンク200へのLPGの水封機能を確保する。
【0008】
ここでボーリング孔204への水の供給は、縦管206を通じ地上からの高低差を利用して行う。
ボーリング孔204に供給された高圧の水は地山(岩盤)の亀裂等に注入され、そして岩盤タンク200に向う地下水流によって、岩盤タンク200内にLPGが水封される。
このボーリング孔204への水封用の水の供給及びボーリング孔204からの過剰の水の排出用として、本発明者はパッカーホース付きの給排水装置を案出し、提案している(下記特許文献1)。
図7はその具体例を示している。
【0009】
図において、204は水封用のボーリング孔で、210はその給排水装置である。給排水装置210は、パッカーホース212と、2重管構造の給排水管214とを有している。
パッカーホース212は、ゴム膨張管216と、その各端部に装着された一対の端部部材218,220と、端部部材220を貫通して設けられ、ゴム膨張管216の内部に加圧流体を導入する流体導入孔222とを備えており、加圧流体の導入によりゴム膨張管216を径方向に膨張させ、これをボーリング孔204の内面に密着させることで、ボーリング孔204を開口側でシール状態に閉鎖する。
【0010】
2重管構造をなす給排水管214は、給水用の内管224と、排水用の外管226とを有しており、それらがパッカーホース212を貫通する状態で、かかるパッカーホース212に固定的に設けられている。
また外管226と内管224とは互いに固定されていて、それらが一体構造をなしている。
【0011】
内管224には、パッカーホース212の図中左側の外部で給水口228が設けられ、また外管226には給水口228と同じ側の外部で排水口230が設けられている。
尚、内管224にはパッカーホース212の図中右側の外部でチューブ224Aが接続されている。
このパッカーホース付きの給排水装置210では、パッカーホース212にてボーリング孔204をシール状態に閉鎖しておいて、給水口228を通じ水封用の水を供給する。
【0012】
供給された水は内管224内の給水路234を通じてボーリング孔204内部に連続的に供給される。そしてボーリング孔204内で過剰となった水が、内管224と外管226との間の環状の排水路236を通じて、パッカーホース212の図中左側の外部に取り出され、そして外管226に設けた排水口230から排出される。
【0013】
ところでこのパッカーホース付きのボーリング孔の給排水装置210は、次のような問題を有していることが判明した。
この給排水装置210を設置するに際しては、パッカーホース212を、ボーリング孔204の開口から3〜4m奥に位置させたところでこれを膨張させ、ボーリング孔204の内面に密着させてシール作用によりボーリング孔204を閉鎖するようになすことが好ましい。
【0014】
パッカーホース212は岩盤の強固なしっかりしたところで膨張させてボーリング孔204内面に密着させることが好ましく、この場合ボーリング孔204の開口近くの部位、即ち水封用のトンネル202の壁近くの部位は、強度的に弱くて土砂が崩落し易い個所であり、従ってパッカーホース212を設置する部位としては、岩盤が強固でしっかりとした、ボーリング孔204の開口から3〜4m奥の位置が望ましいのである。
【0015】
しかるに図7に示す給排水装置210の場合、内管224と外管226との2重管構造をなす給排水管214がパッカーホース212に固定され、且つ内管224と外管226とが剛固定の一体構造物となしてあるため、パッカーホース212をボーリング孔204の3〜4m奥の位置まで押し込むこと自体が難しいのである。
【0016】
この場合、2重管構造をなす給排水管214を、パッカーホース212から図中左方向に長く延び出させておくといったことが考えられるが、その場合、給排水管214のパッカーホース212から外部に露出した部分の長さが3〜4m近くの長さになってしまう。
【0017】
一方において水封用のトンネル202は幅が約6m程度の狭いものであり、そうした水封用のトンネル202の内部から、長く延長させた2重管構造の給排水管214をボーリング孔204内に押し込んで、パッカーホース212を目的とする位置に持ち来すことは、トンネル202の幅の狭さによって作業が著しく困難で、実際上そうした作業を水封用のトンネル202内で行うといったことには無理がある。
【0018】
また図7に示す給排水装置210の場合、パッカーホース212に固定してある内管224に対して、図中右側の外部でチューブ224Aを接続してあるため、パッカーホース212をボーリング孔204内の3〜4m奥の位置まで押し込む際にチューブ224Aごと行わなければならず、その際の作業性の点でも問題があった。
【0019】
【特許文献1】特開2005−23616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上のような事情を背景とし、パッカーホースを水封用のトンネルの開口から3〜4m若しくはその近傍の目的の位置まで作業性良くボーリング孔内に容易に挿入し得、パッカーホースによるボーリング孔の閉鎖の作業を簡単に容易に行い得る水封用のボーリング孔の給排水装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
而して請求項1のものは、(イ)(a)ゴム膨張管と、(b)該ゴム膨張管の各端部に装着された端部部材と、(c)該端部部材を貫通して設けられ、該ゴム膨張管の内部に加圧流体を導入する流体導入孔とを備え、該加圧流体の導入により該ゴム膨張管を径方向に膨張させ、地中に設けた水封用のボーリング孔の内面に該ゴム膨張管を密着させることで、該ボーリング孔を開口側でシール状態に閉鎖するパッカーホースと、(ロ)給水用の内管及び排水用の外管を備えて前記パッカーホースを長手方向に貫通する状態に設けられ、該内管には該パッカーホースに対して前記ボーリング孔の前記開口側の外部で給水口が、前記外管には該給水口と同じ側の外部で排水口が設けられ、該給水口より供給された水封用の水を前記内管の内部の給水路を通じて前記ボーリング孔内に給水する一方、該ボーリング孔内の過剰水を該内管と外管との間の排水路を通じて取り出し、前記排水口より排出する2重管構造の給排水管と、を有する水封用のボーリング孔の給排水装置において、前記外管を、前記パッカーホース内に位置し、該パッカーホースに固定された固定管と、該固定管に対し分離した、前記排水口側の外部の延長管との分割構成として、それら固定管と延長管とを該パッカーホースの外部で接続する一方、前記内管を前記パッカーホースに対し非固定状態で前記固定管に挿通し、且つ前記給水口側の延長部を該パッカーホースの外部で前記外管の前記延長管の内部に通して、該給水口側の端部を該延長管の端部に接続固定してあることを特徴とする。
【0022】
請求項2のものは、請求項1において、前記外管の前記延長管が複数の管体を継手にて長手方向に接続して構成してあることを特徴とする。
【0023】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記内管の前記延長部の端部には前記給水口を備えた給水口部材が接続固定してあるとともに、前記外管の前記延長管には前記排水口を備えた排水口部材が接続固定してあり、それら給水口部材と排水口部材とが直接に又は前記延長管の一部をなす継手若しくは前記管体を介して接続固定してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0024】
以上のように本発明は、2重管構造をなす給排水管における排水用の外管を、パッカーホース内に位置して、これに固定された固定管と、固定管に対し分離した排水口側の外部の延長管との分割構成として、それら固定管と延長管とを接続して全体の外管を構成するようになす一方、給水用の内管をパッカーホースに対し非固定状態で上記の固定管に挿通し、更に給水口側の延長部をパッカーホースの外部で、上記外管における延長管の内部に通して給水口側の端部を、延長管の端部に接続固定するようになしたものである。
【0025】
本発明では、給水用の内管がパッカーホースに対して直接的に固定されていないため、それらパッカーホース,内管をそれぞれ独立で水封用のボーリング孔内に押し込むことが可能である。
即ちパッカーホースをボーリング孔内に押し込む際に、内管を非接続状態でパッカーホース単独で押し込むことが可能であり、従ってパッカーホースを押し込む際の作業を作業性良く容易に行うことができる。
【0026】
而して本発明では、水封用のボーリング孔とほぼ同じ長さの、長い内管(長さは60m近くある)を、ボーリング孔内に押し込み、またパッカーホースをボーリング孔内の適正な深さ位置、例えば3〜4m奥の位置に押し込んだ後に、内管の給水口側の端部を、外管における固定管とは別体に構成された延長管の端部に接続することで、内管と外管との2重管構造をなす給排水管を構成することができる。
【0027】
このような本発明では、パッカーホースに固定してある外管の固定管の内部に内管の先端側を挿入し、そしてその固定管をガイド管として内管を構成する短尺の管体を次々と接続し、長くしながら水封用のボーリング孔内に送り込んで行くことで、全体の必要な長さの内管を構成することができ、その際の内管のボーリング孔内への挿入作業も容易となすことができる。
【0028】
本発明では、外管を、パッカーホース内に位置してパッカーホースに固定された固定管と、排水口側の外部の延長管とを分割構成とし、それらを接続することで全体の外管を構成するようになしていることから、かかる延長管を、多数の短尺の管体を接続することで構成することが可能であり(請求項2)、而してそのようにすることで、水封用のトンネル内の幅の小さな狭い空間内で、短尺の管体を次々と接続しながらパッカーホースを、水封用のトンネルに続くボーリング孔内に漸次深く押し込んで行き、最終の目的の深さにパッカーホースを位置させることができる。
従って狭い水封用のトンネル内においても容易にパッカーホースのボーリング孔内への押込み作業を行うことができる。
そしてこれにより、給排水装置の設置作業を狭い水封用のトンネル内でも作業性良く容易且つ簡単に行うことが可能となる。
【0029】
本発明では、内管の延長部の端部に、給水口を備えた給水口部材を接続固定する一方、外管の延長管には、排水口を備えた排水口部材を接続固定し、それら給水口部材と排水口部材とを直接に又は延長管の一部をなす継手若しくは管体を介して接続固定しておくことができる(請求項3)。
このようにすることで、2重管構造をなす給排水管の、パッカーホースから外部に露出した部分を容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は水封用のトンネル、12は水封用のトンネル10から岩盤Gに穿孔された長い水封用のボーリング孔で、14はそのボーリング孔のトンネル側の開口である。
ここでボーリング孔12は長さが60m程度の長いものである。
【0031】
16は、ボーリング孔12に給水を行い、また過剰水を排出するためのボーリング孔12の給排水装置である。
この給排水装置16は、パッカーホース18と、給排水管20とを有している。
尚パッカーホース18は、図1において開口14から3〜4mボーリング孔12内に入り込んだ位置に位置させられている。
【0032】
図4に、パッカーホース18の構成が具体的に示してある。
図に示しているようにパッカーホース18は、ゴム膨張管22と、ゴム膨張管22の各端部に装着されて、ゴム膨張管22の両端の開口を閉鎖する一対の端部部材24,26とを有している。
ここで各端部部材24,26は金属製である。
【0033】
ゴム膨張管22は、内ゴム層28と、補強層30と、外ゴム層32との積層構造を成している。
補強層30は、補強糸を編組して構成したものである。ここで編組としてはブレード編組,スパイラル編組,ニット編組等各種の編組構造とすることができる。また場合によって補強糸を長手方向に引き揃えてなるすだれ構造の補強層となすこともできる。
【0034】
上記一対の端部部材24,26はゴム膨張管22の端部においてその内部に嵌入されている。
これら端部部材24,26の嵌入部の外周面には鋸歯状の係合歯34が設けられ、これら係合歯34がゴム膨張管32の内面に食い込むことによって、それら端部部材24,26がゴム膨張管22から抜け防止されている。
【0035】
ここで一方の端部部材24には、ストッパリング47が螺着されている。
また他方の端部部材26には、これをゴム膨張管32の長手方向に貫通する流体(ここでは水)の導入孔(流体導入孔)36が設けられ、そしてその導入孔36に継手38を介して加圧水を供給する加圧チューブ40が接続されている。
即ちこの実施形態ではゴム膨張管18内部に加圧水が供給され、その加圧水の圧力によって、ゴム膨張管22が径方向に膨張せしめられる。
【0036】
尚、図4(B)に示しているように端部部材26には導入孔36の他に貫通孔42が設けられているが、この貫通孔42は止水プラグ44にて閉鎖されている。
46は金属製の締付スリーブで、この締付スリーブ46の締付けによって、ゴム膨張管22の各端部が一対の端部部材24,26のそれぞれに圧縮状態で強く締付固定されている。
【0037】
図4に示しているように上記給排水管20は、給水用の内管48と、排水用の外管50との2重管構造をなしている。
ここで給水用の内管48は、ここでは樹脂製(塩化ビニル製,ポリエチレン製等)のチューブから成っている。
この内管48は、内部に給水路52を有しており、この給水路52を通じて、ボーリング孔12内に水封用の水を給水する。
一方外管50は、内管48との間に環状の排水路54を形成しており、ボーリング孔12内に供給された水封用の水のうちの過剰分がこの排水路54を通じて図中左向きに取り出され、ボーリング孔12外に排出される。
【0038】
この実施形態において、外管50は、パッカーホース18内に位置してパッカーホース18に固定された固定管50Aと、図2に示すようにパッカーホース18からボーリング孔12の開口14側に延出した延長管50Bとが分割されており、それらが互いに接続されることによって、全体の外管50が構成されている。
【0039】
ここで固定管50Aは、パッカーホース18における一対の端部部材24,26の貫通の嵌合孔56に内嵌状態に嵌合され、その状態で溶接により端部部材24,26に固定状態とされている。
尚樹脂製のチューブから成る内管48は、約3〜4mごとに継手57(図2参照)にて接続され、全体が構成されている。
即ち内管48は、全長に亘り多数の管体58を継手57で接続して構成してある。
一方外管50における上記の延長管50Bは、図2に示しているように複数の短尺の管体60を継手61,62にて長手方向に接続して、その全体が構成してある。
【0040】
図3に示しているように内管48には、パッカーホース18からその外部且つ図中左方向に延出した延長部48Bの端部に給水口63が設けられている。
64は、この給水口63を備えた給水口部材としての継手で、かかる継手64が、継手66を介して樹脂製のチューブに接続されることで、延長部48Bの端部に給水口63が備えられている。
一方外管50には、上記の延長管50Bの端部において排水口68が設けられている。
【0041】
70は、排水口68を有する、延長管50Bの一部をなす排水口部材としての継手で、この継手70の接続によって、延長管50Bに排水口68が備えられている。
ここで給水口63を有する継手64と、排水口68を有する継手70とは、中間継手72にて互いに接続されている。
尚この中間継手72もまた、延長管50Bの一部をなすものである。
【0042】
この中間継手72は、軸方向の一端側と他端側とにテーパ状の雄ねじ74を有しており、その雄ねじ74に、継手64,70の対応するテーパ形状の雌ねじが螺合され、以って中間継手72を介して継手64と70とが軸方向に接続されている。
尚、継手70に備えられた排水口68は、延長管50Bの長手方向と直角方向を向いている。また一方、上記の給水口63は延長管50Bの軸方向を向いている。
【0043】
上記継手61はソケット状のもので、図2の部分拡大図に示しているように一対のテーパ状の雌ねじ65を有し、それら雌ねじ65と、隣接する一対の管体60の雄ねじとの螺合によって、管体60と60とを接続している。
他方継手62は、ユニオンジョイントから成るもので、この継手62は、図3に示しているように一対の雌ねじ部材76,78と袋ナット80とを有している。
雌ねじ部材76,78は、それぞれ隣接する管体60のそれぞれの端部の雄ねじに螺合されている。
【0044】
一方の雌ねじ部材76には、径方向外方に突出する外フランジ部82が設けられ、この外フランジ部82に対して、袋ナット80の内フランジ部84が係合させられている。
また他方の雌ねじ部材78には外周面に雄ねじが形成され、その雄ねじに、袋ナット80の雌ねじが螺合されている。
尚、図2に示しているように継手62はボーリング孔12外に位置しており、図中最も左端の管体60とその右側の管体60とを接続している。
他の継手61は、設置状態でボーリング孔12内に位置している。
【0045】
本実施形態の給排水装置16は、次のようにしてボーリング孔12内に設置することができる。
即ち、2重管構造をなす給排水管20における内管48を、パッカーホース18に対して非接続状態としておいて、パッカーホース18を単独で(但しこのときパッカーホース18には外管50における固定管50Aが固定状態である)ボーリング孔12内に少しずつ押し込んで行く。
【0046】
具体的には、図5(I)に示しているように、図2において最も右端の短尺の管体60を、パッカーホース18に固定の固定管50Aにソケット状の継手61にて接続し、その状態でパッカーホース18を水封用のトンネル10内から、ボーリング孔12内に開口14から押し込む。
【0047】
そしてパッカーホース18がボーリング孔12内に、ある程度押し込まれ、入り込んだところで、図5(II)に示しているように次に第2の短尺の管体60を継手61にて接続し、パッカーホース18をボーリング孔12内に、その短尺の管体60の長さ分だけ更に奥側へと押し入れる。
【0048】
そして図5(III),(IV)に示しているように同様の作業を行いながら、パッカーホース18をボーリング孔12内に奥へ奥へと少しずつ押し込んで行く。
そして、そのようにしてパッカーホース18をボーリング孔12内の目的の位置、例えば開口部14から3〜4m奥側に入り込んだところに位置させる。
【0049】
その状態で、パッカーホース12内に加圧水を導入してこれを径方向に膨張させ、パッカーホース18即ちゴム膨張管32を、ボーリング孔12の内面に密着させ、ボーリング孔12を開口14側でシール状態に閉鎖する。
【0050】
尚、内管48は次のようにしてボーリング孔12内に設置することができる。
即ち、図2に示す内管48構成用の短尺の管体58を、継手57にて次々と接続しながらその長さを長くして行くとともに、これをパッカーホース18に固定してある外管50の固定管50A、及びこれに接続してある延長管50B(詳しくはこれを構成する管体60)内に通して、これらをガイド管としてボーリング孔12内に奥深くまで押し込んで行く。
【0051】
そしてその長さが60m近くまで、即ちボーリング孔12の長さ近くまで長くなり、最終的にその先端がボーリング孔12の先端に当ったところで、これを僅かに水封用のトンネル10側に引き戻す。
【0052】
そしてその状態で、内管48における図3の延長部48Bの端部に、給水口63を有する給水口部材としての継手64を接続固定し、また併せてその継手64を、中間継手72を介して排水口68を有する継手70に接続固定する。
【0053】
そしてこの継手70に、延長管50Bの図中最も左端の短尺の管体60を雌ねじ部材78を介して接続し、次いでその左端の管体60をユニオンジョイントから成る継手62にて、予めパッカーホース18の固定管50Aに接続してある管体60のうちの最も左端側のものとボーリング孔12外で接続する。
これによって内管48,外管50の全体を構成すると同時に、それらを接続状態とする。
【0054】
このようにして給排水装置16を設置した後、図3の給水口63から水封用の水を供給し、これをボーリング孔12の最奥の先端位置で内管48Bから流出させ、ボーリング孔12内に給水する。
【0055】
ボーリング孔12内に流出した水はボーリング孔12内を埋め、そして過剰な水がパッカーホースに固定の外管50における固定管50Aと内管48との間の環状の排水路54を通じて図中左向きに取り出され、外管50における延長管50Bの端部の排水口68から外部に排出される。
【0056】
尚、給排水管20によるボーリング孔12への水封用の水の供給は、ボーリング孔12が満水状態となった後においても継続して行なわれ、過剰の水がその後も継続して給排水管20を通じて外部へと排出される。
このようにしてボーリング孔12内で絶えず水流が生じることによって、岩盤Gの亀裂内に常に水封用の水が供給される。
【0057】
給排水装置16は、ボーリング孔12の最も奥の位置で水封用の水を流出させるが、これは次の理由による。
即ち、パッカーホース18の図中右端近くで水封用の水をボーリング孔12内に給水するようになした場合、ボーリング孔12内の途中個所に流れの抵抗個所があったりすると、ボーリング孔12内が満水化していなくても、ボーリング孔12内に給水した水が途中で給排水装置16を通じて、ボーリング孔12外へと排出されてしまう。
そこでこうしたことを防止するため、給排水管20における内管48を、図中右方向に長く延び出させ、その先端をボーリング孔12の先端近くに位置させて、そこから水封用の水をボーリング孔12内に給水するようになしている。
【0058】
以上のような本実施形態では、給水用の内管48がパッカーホース18に直接的に固定されていないため、それらパッカーホース18,内管48をそれぞれ独立で、ボーリング孔12内に押し込むことが可能である。
即ちパッカーホース18をボーリング孔12内に押し込む際に、内管48を非接続状態でパッカーホース18単独で押し込むことが可能であり、従ってパッカーホース18を押し込む際の作業を作業性良く容易に行うことができる。
【0059】
また本実施形態では、パッカーホース18に固定してある外管50の固定管50Aの内部に内管48の先端側を挿入し、そしてその固定管50Aをガイド管として、内管48を構成する短尺の管体58を次々と接続し、長くしながらボーリング孔12内に送り込んで行くことで、全体の必要な長さの内管48を構成することができ、その際の内管48のボーリング孔12内への挿入作業も容易となすことができる。
【0060】
更にこの実施形態では、外管50を、パッカーホース18内に位置してこれに固定された固定管50Aと、排水口68側の外部の延長管50Bとを分割構成とし、それらを接続することで全体の外管50を構成するようになしていることから、かかる延長管50Bを、多数の短尺の管体60を接続することで構成することが可能であり、而してそのようにすることで、水封用のトンネル10内の幅の小さな狭い空間内で、短尺の管体60を次々と接続しながらパッカーホース18をボーリング孔12内に漸次深く押し込んで行き、最終の目的の深さにパッカーホース18を位置させることができる。
従って狭い水封用のトンネル10内のおいても、容易にパッカーホース18のボーリング孔12内への押込作業を行うことができる。
そしてこれにより、給排水装置16の設置作業を狭いトンネル10内でも作業性良く容易且つ簡単に行うことができる。
【0061】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態の給排水装置を設置状態で示した図である。
【図2】図1の要部を拡大して示した図である。
【図3】同実施形態の要部を拡大して示した図である。
【図4】同実施形態の図3とは異なる要部を拡大して示した断面図である。
【図5】同実施形態の給排水装置の設置手順の説明図である。
【図6】本発明の背景説明のための説明図である。
【図7】従来公知の給排水装置の図である。
【符号の説明】
【0063】
12 水封用のボーリング孔
14 開口
16 給排水装置
18 パッカーホース
20 給排水管
22 ゴム膨張管
24,26 端部部材
38,57,61,62,66 継手
48 内管
48B 延長部
50 外管
50A 固定管
50B 延長管
52 給水路
54 排水路
58,60 管体
63 給水口
64 継手(給水口部材)
68 排水口
70 継手(排水口部材)
72 中間継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)(a)ゴム膨張管と、(b)該ゴム膨張管の各端部に装着された端部部材と、(c)該端部部材を貫通して設けられ、該ゴム膨張管の内部に加圧流体を導入する流体導入孔とを備え、該加圧流体の導入により該ゴム膨張管を径方向に膨張させ、地中に設けた水封用のボーリング孔の内面に該ゴム膨張管を密着させることで、該ボーリング孔を開口側でシール状態に閉鎖するパッカーホースと、
(ロ)給水用の内管及び排水用の外管を備えて前記パッカーホースを長手方向に貫通する状態に設けられ、該内管には該パッカーホースに対して前記ボーリング孔の前記開口側の外部で給水口が、前記外管には該給水口と同じ側の外部で排水口が設けられ、該給水口より供給された水封用の水を前記内管の内部の給水路を通じて前記ボーリング孔内に給水する一方、該ボーリング孔内の過剰水を該内管と外管との間の排水路を通じて取り出し、前記排水口より排出する2重管構造の給排水管と、
を有する水封用のボーリング孔の給排水装置において、
前記外管を、前記パッカーホース内に位置し、該パッカーホースに固定された固定管と、該固定管に対し分離した、前記排水口側の外部の延長管との分割構成として、それら固定管と延長管とを該パッカーホースの外部で接続する一方、前記内管を前記パッカーホースに対し非固定状態で前記固定管に挿通し、且つ前記給水口側の延長部を該パッカーホースの外部で前記外管の前記延長管の内部に通して、該給水口側の端部を該延長管の端部に接続固定してあることを特徴とする水封用のボーリング孔の給排水装置。
【請求項2】
請求項1において、前記外管の前記延長管が複数の管体を継手にて長手方向に接続して構成してあることを特徴とする水封用のボーリング孔の給排水装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記内管の前記延長部の端部には前記給水口を備えた給水口部材が接続固定してあるとともに、前記外管の前記延長管には前記排水口を備えた排水口部材が接続固定してあり、
それら給水口部材と排水口部材とが直接に又は前記延長管の一部をなす継手若しくは前記管体を介して接続固定してあることを特徴とする水封用のボーリング孔の給排水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−243143(P2009−243143A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90986(P2008−90986)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】