説明

水崩壊性吸収体及び吸収性物品

【課題】使用時の防漏性と、廃棄後の水解性とに優れる吸収体及び吸収性物品を提供すること。
【解決手段】水解性吸収層41と非水溶性樹脂層42とを備えた水崩壊性吸収体4において、水解性吸水層41の吸水量を300g/m2以上とし、非水溶性樹脂層42の平面方向の引裂強度が、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向ともに0.15N/40mm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水崩壊性吸収体及び該吸収体を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、オムツ、失禁者用パッド等の吸収性物品には、一般的に、非水解性材料が含まれている。したがって、使用済みの吸収性物品は、トイレに設置された収納箱に廃棄され、回収、処分される。しかしながら、使用済みの吸収性物品が、誤って水洗トイレに流されてしまい、水洗トイレの配管を詰まらせる場合がある。このため、使用後にそのまま水洗トイレに流すことができる水解性材料及びそれを含む吸収性物品が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水溶性樹脂シートの一面に撥水層が積層され、水溶性樹脂シートの他面に水解性基材が積層されている衛生パッド用防漏シートが記載されている。
特許文献1に記載の防漏シートは、水解性基材、水溶性樹脂シート及び撥水層からなる3層構造を有し、撥水層及び水溶性樹脂シートの2層により、吸収された液体を衛生パッド内に保持し、漏れを防ぐ設計がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−333933号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吸収体及び吸収性物品には、使用時の防漏性と廃棄後の水解性(水崩壊性)との点から改良が求められていた。
そこで、本発明は、使用時の防漏性と廃棄後の水解性(水崩壊性)とに優れた吸収体及び吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、水解性吸収層と非水溶性樹脂層とを備えた水崩壊性吸収体であって、水解性吸水層の吸水量が300g/m2以上であり、非水溶性樹脂層の平面方向の引裂強度が、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向ともに0.15N/40mm以下である、水崩壊性吸収体を提供する。
【0007】
また、本発明は、液透過性を有する第1の水解性シート、第2の水解性シート、及び第1の水解性シートと第2の水解性シートとの間に設けられた吸収体を備えた吸収性物品であって、吸収体が本発明の水崩壊性吸収体である、吸収性物品を提供する。
【0008】
本発明の水崩壊性吸収体は、使用時及び廃棄後に下記作用を発揮する。
[使用時]
液体は水解性吸収層によって吸収される。水解性吸収層の吸水量(300g/m2以上)は、生理用品、衛生用品等の一般的な吸収性物品にとって十分な吸水量である。水解性吸収層は、吸収した液体によって水解し、強度が低下するが、非水溶性樹脂層は耐水性を有するので、強度が低下しない。したがって、水解性吸収層は、非水溶性樹脂層で補強されて形態を保持し、継続的に液体を吸収することができる。
【0009】
水解性吸収層に吸収された液体は非水溶性樹脂層を透過し得ないので、水解性吸収層に吸収された液体の漏れは、非水溶性樹脂層によって防止される。非水溶性樹脂層の耐水性は、水解性吸収層に吸収された液体中の水分、非水溶性樹脂層が接する空気中の水分等に影響を受けないので、非水溶性樹脂層の防漏性は安定して維持される。
このように、本発明の水崩壊性吸収体は、優れた防漏性を発揮する。
【0010】
[廃棄後]
本発明の水崩壊性吸収体が廃棄されると、水洗トイレ、浄化槽、下水道等の水流の力を受ける。水流の力により、水解性吸収層は速やかに水解して消失する。非水溶性樹脂層は、平面方向の引裂強度が、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向ともに0.15N/40mm以下であるので、これよりも大きい力を水流から受けることにより崩壊する。水解性吸収層が消失すると、非水溶性樹脂層は、水解性吸収層の存在していた側からも水流の力を受けるので、崩壊し易くなる。
【0011】
このように、本発明の水崩壊性吸収体は、優れた水崩壊性を発揮する。例えば、本発明の水崩壊性吸収体は、振盪速度240rpmで48時間、水中で振盪したときの分散率が50質量%以上であるという水崩壊性を発揮する。
【0012】
本発明の吸収性物品は、本発明の水崩壊性吸収体の上記作用に加え、下記作用を発揮する。
本発明の吸収性物品において、第1の水解性シートを透過した液体は、水崩壊性吸収体の水解性吸収層に吸収され、水解性吸収層に吸収された液体の漏れは、水崩壊性吸収体の非水溶性樹脂層によって防止される。このように、本発明の水崩壊性吸収体はそれ自体で防漏性を発揮することから、本発明の吸収性物品の第2の水解性シートに防漏機能を担わせる必要がない。もちろん、第2の水解性シートに防漏機能を担わせてもよく、それにより本発明の吸収性物品の防漏性が向上する。
【0013】
第2の水解性シートに防漏機能を担わせる必要がないことから、第2の水解性シートに別の機能を担わせることができる。例えば、第2の水解性シートに通気機能を担わせることにより、本発明の吸収性物品の着用時のムレを低減することができる。
【0014】
第1の水解性シート及び第2の水解性シートも水解性を有するので、水洗トイレ、浄化槽、下水道等の水流の力を受けて崩壊する。したがって、本発明の吸収性物品は、全体が水中で崩壊する。
【0015】
本発明の水崩壊性吸収体において、非水溶性樹脂層の平面方向の引裂強度が、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向ともに0.10N/40mm以下であることが好ましい(態様1)。態様1では、非水溶性樹脂層の水崩壊性が向上する。
【0016】
本発明の水崩壊性吸収体において、水解性吸収層が、非水溶性樹脂層に直接積層されていることが好ましい(態様2)。態様2では、非水溶性樹脂層が、水解性吸収層の存在していた側からも水流の力を直接受けるので、非水溶性樹脂層の水崩壊性が向上する。
【0017】
本発明の水崩壊性吸収体において、非水溶性樹脂層が生分解性を有することが好ましい(態様3)。態様3では、環境負荷の低減が可能となる。
【0018】
本発明の水崩壊性吸収体において、非水溶性樹脂層の耐水圧が300mm以上であることが好ましい(態様4)。態様4では、非水溶性樹脂層の防漏性が安定して維持される。
【0019】
本発明の水崩壊性吸収体において、温度36℃及び相対湿度90%の条件下で3時間貯蔵した後の非水溶性樹脂層の耐水圧が300mm以上であることが好ましい(態様5)。態様5では、高湿度下でも、非水溶性樹脂層の防漏性が安定して維持される。
【0020】
本発明の水崩壊性吸収体において、振盪速度240rpmで48時間、水中で振盪したときの分散率が50質量%以上であることが好ましい(態様6)。態様6では、優れた水崩壊性が発揮される。
【0021】
本発明の水崩壊性吸収体において、非水溶性樹脂層の厚みが10〜15μmであることが好ましい(態様7)。態様7では、非水溶性樹脂層の防漏性が安定して維持される。
【0022】
本発明の水崩壊性吸収体において、非水溶性樹脂層に含有される非水溶性樹脂がポリ乳酸であることが好ましい(態様8)。態様8では、非水溶性樹脂層が生分解性を兼ね備える。
【0023】
本発明の水崩壊性吸収体において、水解性吸収層が水分散性繊維及び水溶性バインダーを含有することが好ましい(態様9)。態様9では、水解性吸収層の水解性が向上する。
【0024】
本発明の水崩壊性吸収体において、水分散性繊維の繊維長が20mm以下であることが好ましい(態様10)。態様10では、水解性吸収層の水解性が向上する。
【0025】
本発明の水崩壊性吸収体において、水解性吸収層の繊維目付量が30〜100g/m2以上であることが好ましい(態様11)。態様11では、水解性吸収層の水解性が向上する。
【0026】
本発明の水崩壊性吸収体において、態様1〜11のうち2以上の態様が組み合わされていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、使用時の防漏性と廃棄後の水解性(水崩壊性)とに優れた吸収体及び吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るパンティライナーの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すパンティライナーの部分破断図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の吸収性物品の種類及び用途は特に限定されるものではない。吸収性物品としては、例えば、生理用ナプキン、オムツ、パンティライナー、失禁パッド、汗取りシート等の衛生用品・生理用品が挙げられ、これらはヒトを対象としてもよいし、ペット等のヒト以外の動物を対象としてもよい。本発明の吸収性物品が吸収対象とする液体は特に限定されるものではなく、例えば、使用者の液状排泄物、体液等が挙げられる。
以下、パンティライナーを例として、本発明の吸収性物品の実施形態を説明する。
【0030】
本発明の一実施形態に係るパンティライナー1は、図1〜3に示すように、表面シート2と、裏面シート3と、表面シート2と裏面シート3との間に配置された吸収体4とを備えている。
【0031】
パンティライナー1は、使用者の液状排泄物(例えば、経血、尿、下り物等)を吸収する目的で、使用者に着用される。この際、表面シート2が使用者の肌側に、裏面シート3が使用者の着衣(下着)側に位置するように、使用者に着用される。使用者の液状排泄物は、表面シート2を通じて吸収体4に浸透し、吸収体4によって吸収される。
【0032】
表面シート2は使用者の肌と接触する面に設けられおり、裏面シート3は使用者の着衣(下着)と接触する面に設けられている。
【0033】
表面シート2は液透過性及び水解性を有するシートであり、裏面シート3は水解性を有するシートである。裏面シート3には、防水処理により液不透過性を付与してもよい。裏面シート3が液不透過性を有することにより、吸収体4に吸収された液状排泄物の防漏性が向上する。裏面シート3は、パンティライナー1の着用時のムレを低減させるために、通気性を有することが好ましい。
【0034】
表面シート2及び裏面シート3としては、例えば、水解性不織布、水解性ティッシュ、水解紙等の水解性基材を用いることができる。
【0035】
表面シート2の液透過性の程度は、使用者の液状排泄物が透過し得る限り特に限定されるものではない。表面シート2の液透過性は、空隙率の調節、透過孔の形成等により適宜調節することができる。液透過性を有するシートとしては、例えば、不織布、織布、透過孔が形成された樹脂フィルム、網目を有するネット状シート等が挙げられるが、これらのうち不織布が好ましい。不織布としては、例えば、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等が挙げられるが、これらのうちエアースルー不織布が好ましい。エアースルー不織布は空隙率が大きいので良好な液透過性を有する。
【0036】
表面シート2及び裏面シート3の水解性の程度は、水流(例えば水洗トイレ、浄化槽、下水道等の水流)の力を受けて又は受けることなく、水中で溶解又は崩壊し得る限り特に限定されるものではない。表面シート2及び裏面シート3の水解性は、構成材料の選択等により適宜調節することができる。水解性材料としては、例えば、水分散性繊維、水溶性樹脂、水溶性セルロース、水溶性澱粉等が挙げられる。水分散性繊維としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ(例えば綿、麻等)、レーヨン、キュープラ、アセテート、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール繊維、カルボキシメチルセルロース繊維、アクリル繊維等の親水性繊維;ポリ乳酸繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ナイロン繊維等の疎水性繊維が挙げられる。水分散性繊維の繊維長は、水分散性の点から、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下である。なお、繊維長の下限は通常2mmである。
【0037】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0038】
水溶性セルロースとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
水溶性澱粉としては、例えば、小麦粉澱粉、トウモロコシ澱粉等が挙げられる。
【0039】
表面シート2の厚み、目付、密度等は、表面シート2の液透過性及び水解性が保持される範囲で適宜設定することができるが、厚みは、通常0.1〜0.5mm、好ましくは0.2〜0.4mmであり、目付は、通常20〜80g/m2、好ましくは25〜60g/m2であり、密度は、通常0.13〜0.2g/cm3、好ましくは0.14〜0.18g/cm3である。厚み、目付、密度がこのような範囲にあると、不織布と同様の柔らかな触感を実現することができる。
【0040】
裏面シート3の厚み、目付、密度等は、裏面シート3の水解性が保持される範囲で適宜設定することができるが、厚みは、通常0.1〜0.5mm、好ましくは0.2〜0.4mmであり、目付は、通常20〜80g/m2、好ましくは25〜60g/m2であり、密度は、通常0.13〜0.2g/cm3、好ましくは0.14〜0.18g/cm3である。厚み、目付、密度がこのような範囲にあると、不織布と同様の柔らかな触感を実現することができる。
【0041】
吸収体4は、図3に示すように、水解性吸収層41と非水溶性樹脂層42とを備えており、水解性吸収層41は、非水溶性樹脂層42に直接積層されている。吸収体4は、図3に示すように、水解性吸収層41が表面シート2側に、非水溶性樹脂層42が裏面シート3側に位置するように、表面シート2と裏面シート3との間に配置されており、表面シート2及び裏面シート3の端部同士は接着されている。
【0042】
水解性吸収層41の吸水量は300g/m2以上である。なお、水解性吸収層41の吸水量(g/m2)は、例えば、サンプル(例えば100mm×100mm)を蒸留水に1分間浸漬させた後、網上で1分間放置して水切りし、吸水後のサンプル重量(g)を測定し、吸水前のサンプル重量(g)との差に基づいて算出することができる。この際、水切り用の網としては、例えば、250メッシュの網を用いることができ、250メッシュの網としては、例えば、250メッシュナイロンネット(株式会社NBCメッシュテック製N−No.250HD)を用いることができる。
【0043】
水解性吸収層41を構成する材料は、水解性吸収層41の水解性及び吸収性が保持される範囲で適宜選択することができる。水解性吸収層41は、例えば、水分散性繊維及び水溶性バインダーで構成することができる。水解性吸収層41として、好ましくは、水分散性繊維を水溶性バインダーで固定したエアレイド不織布が用いられる。このようなエアレイド不織布を用いることにより、水解性吸収層41の水解性が向上する。
【0044】
水分散性繊維は、水中で繊維同士の絡合が解けて分散し得る限り特に限定されるものではない。水分散性繊維は、親水性繊維であってもよいし、疎水性繊維であってもよいが、水解性吸収層41に含有される水分散性繊維の一部又は全部は親水性繊維であり、水解性吸収層41には、パンティライナー1が備えるべき吸収性に応じた量の親水性繊維が含有される。水解性吸収層41の水分散性繊維の目付量は、水解性吸収層41の水解性及び吸収性が保持される範囲で適宜調節することができるが、30〜100g/m2であることが好ましく、40〜80g/m2であることがさらに好ましい。
【0045】
水分散性繊維としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ(例えば綿、麻等)、レーヨン、キュープラ、アセテート、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール繊維、カルボキシメチルセルロース繊維、アクリル繊維等の親水性繊維;ポリ乳酸繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ナイロン繊維等の疎水性繊維が挙げられるが、これらのうち木材パルプが好ましい。水分散性繊維の繊維長は、水分散性の点から、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。なお、繊維長の下限は通常2mmである。
【0046】
水分散性繊維の固定に用いられる水溶性バインダーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、澱粉類、糖類等が挙げられる。
【0047】
水解性吸収層41の厚みは、水解性吸収層41の水解性及び吸収性が保持される範囲で適宜設定することができるが、通常0.3〜1.2mm、好ましくは0.4〜1.0mmである。
【0048】
非水溶性樹脂層42は非水溶性樹脂で構成される。非水溶性樹脂層42を構成する非水溶性樹脂は、生分解性を有することが好ましい。非水溶性樹脂層42に含有される非水溶性樹脂の量は、非水溶性樹脂層42の100質量%であることが好ましい。
【0049】
非水溶性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が挙げられるが、これらのうちポリ乳酸が好ましい。ポリ乳酸は生分解性を有する。
【0050】
「非水溶性」の指標としては、例えば、25℃の純水100gに対する溶解度が1.0g以下であることが挙げられ、25℃の純水100gに対する溶解度が1.0以下である樹脂を非水溶性樹脂として選択することができる。例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)等の水溶性樹脂は非水溶性樹脂に該当しない。
【0051】
非水溶性樹脂層42の厚み、目付、密度等は、非水溶性樹脂層42の非水溶性が保持される範囲で適宜設定することができる。厚みは、通常10〜15μm、好ましくは10〜13μmである。厚みがこのような範囲にあると、非水溶性樹脂層42の防漏性及び水崩壊性の両機能が効果的に発揮される。なお、非水溶性樹脂層42の厚みは、市販の測定器(例えば、株式会社尾崎製作所社製PEACOCK PDN−20型(測定端子径φ8mm)を用いて測定することができる。
【0052】
非水溶性樹脂層42の平面方向の引裂強度は、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向ともに0.15N/40mm以下である。したがって、非水溶性樹脂層42は、これよりも大きい力を水流から受けることにより崩壊する。なお、「N/40mm」は、幅40mmあたりの引裂強度(N)を意味する。
【0053】
非水溶性樹脂層42の水崩壊性を向上させる点から、非水溶性樹脂層42の平面方向の引裂強度は、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向ともに0.10N/40mm以下であることが好ましく、0.08N/40mm以下であることがさらに好ましい。また、パンティライナー1の着用時に加わる荷重(例えば体重)によって非水溶性樹脂層42が破断しないように、非水溶性樹脂層42の上記引裂強度は0.03N/40mm以上であることが好ましい。
【0054】
第1の方向としては、例えば、非水溶性樹脂層42の製造時の搬送方向(MD方向)が挙げられ、第2の方向としては、例えば、MD方向と直交する方向(CD方向)が挙げられる。非水溶性樹脂層42の製造時に加えられる力(例えば、引き延ばし力)により、MD方向の引裂強度とCD方向の引裂強度との間に差異が生ずる場合があり、両者間の差異が大きくなると、引裂強度のバランスをとるのが難しくなる。したがって、非水溶性樹脂層42を製造する際、未延伸(低配向)であることが好ましい。
【0055】
非水溶性樹脂層42の引裂強度は、例えば、JIS K 6772:1994の7.5「引裂試験」に従って測定することができる。なお、その具体的な手順は、実施例に記載の通りである。
【0056】
非水溶性樹脂層42の耐水圧は300mm以上であることが好ましく、400mm以上であることがさらに好ましい。これにより、非水溶性樹脂層42の防漏性が安定して維持される。また、温度36℃及び相対湿度90%の条件下で3時間貯蔵した後の非水溶性樹脂層42の耐水圧は300mm以上であることが好ましく、400mm以上であることがさらに好ましい。これにより、高湿度下でも、非水溶性樹脂層42の防漏性が安定して維持される。なお、非水溶性樹脂層42の耐水圧は、例えば、JIS L 1092:2009の7.1.1「A法(低水圧法)」に従って測定した水位(mm)、より具体的には、試験片の裏側に3カ所から水が出たときの水位(mm)を指標としている。
【0057】
パンティライナー1は、使用時及び廃棄後に下記作用を発揮する。
[使用時]
使用者の液状排泄物は水解性吸収層41によって吸収される。水解性吸収層41の吸水量(300g/m2以上)は、一般的なパンティライナーにとって十分な吸水量である。水解性吸収層41は、吸収した液状排泄物によって水解し、強度が低下するが、非水溶性樹脂層42は耐水性を有するので、強度が低下しない。したがって、水解性吸収層41は、非水溶性樹脂層42で補強されて形態を保持し、継続的に液状排泄物を吸収することができる。
【0058】
水解性吸収層41に吸収された液状排泄物は非水溶性樹脂層42を透過し得ないので、水解性吸収層41に吸収された液状排泄物の漏れは、非水溶性樹脂層42によって防止される。非水溶性樹脂層42の耐水性は、水解性吸収層41に吸収された液状排泄物中の水分、非水溶性樹脂層42が接する空気中の水分等に影響を受けないので、非水溶性樹脂層42の防漏性は安定して維持される。
このように、パンティライナー1の吸収体4は、優れた防漏性を発揮する。
【0059】
吸収体4はそれ自体で防漏性を発揮することから、パンティライナー1の裏面シート3に防漏機能を担わせる必要がない。もちろん、裏面シート3に防漏機能を担わせてもよく、それによりパンティライナー1の防漏性が向上する。
【0060】
裏面シート3に防漏機能を担わせる必要がないことから、裏面シート3に別の機能を担わせることができる。例えば、裏面シート3に通気機能を担わせることにより、パンティライナー1の着用時のムレを防止することができる。一般的に、パンティライナーに要求される吸収量は、生理用ナプキン、オムツ等に要求される吸収量よりも少ないので、吸収体4の量を減少させ、表面シート2と裏面シート3との間に空隙を設け、この空隙と裏面シート3との間を通気させることにより、ムレを防止することができる。
【0061】
[廃棄後]
パンティライナー1が廃棄されると、水洗トイレ、浄化槽、下水道等の水流の力を受ける。水流の力により、水解性吸収層41は速やかに水解して消失する。非水溶性樹脂層42は、平面方向の引裂強度が、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向ともに0.15N/40mm以下であるので、これよりも大きい力を水流から受けることにより崩壊する。水解性吸収層41が消失すると、非水溶性樹脂層42は、水解性吸収層41の存在していた側からも水流の力を受けるので、崩壊し易くなる。
【0062】
このように、パンティライナー1の吸収体4は、優れた水崩壊性を発揮する。例えば、吸収体4は、振盪速度240rpmで48時間、水中で振盪したときの分散率が50質量%以上であるという水崩壊性を発揮する。
【0063】
パンティライナー1の表面シート2及び裏面シート3も水解性を有するので、水洗トイレ、浄化槽、下水道等の水流の力を受け、速やかに崩壊する。したがって、パンティライナー1は、全体が水中で崩壊する。これにより、廃棄されたパンティライナー1は、配管内、浄化槽内で詰まりにくい。非水溶性樹脂層42が生分解性を有する場合、微生物によって分解される。
【実施例】
【0064】
〔実施例1〜5及び比較例1〜4〕
(1)実施例品1の作製
吸収層として、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)80重量%と、ポリアクリル酸バインダー20重量%とからなる、目付が60g/m2の水解性エアレイド不織布を用いた。
樹脂層の材料として、水不溶性樹脂であるポリ乳酸樹脂を用いた。なお、ポリ乳酸樹脂は生分解性を有する。
ポリ乳酸樹脂(ユニチカ(株)製、テラマック樹脂)を、膜厚が10μmとなるように260℃で溶融押出し、ポリ乳酸樹脂層(ポリ乳酸樹脂100重量%)をエアレイド不織布に直接ラミネートし、吸収体サンプル(実施例品1)を作製した。
なお、樹脂層の厚みは、株式会社尾崎製作所社製PEACOCK PDN−20型(測定端子径φ8mm)を用いて測定した。他の実施例及び比較例でも同様である。
【0065】
(2)実施例品2の作製
ポリ乳酸樹脂層の膜厚を15μmとした点を除き、実施例品1と同様にして、吸収体サンプル(実施例品2)を作製した。
【0066】
(3)実施例品3の作製
水解性エアレイド不織布の目付を30g/m2とした点を除き、実施例品1と同様にして、吸収体サンプル(実施例品3)を作製した。
【0067】
(4)実施例品4の作製
水解性エアレイド不織布の目付を100g/m2とした点を除き、実施例品1と同様にして、吸収体サンプル(実施例品4)を作製した。
【0068】
(5)実施例品5の作製
樹脂層の材料として、ポリ乳酸(東レ(株)製,エコディア)70重量%と、ポリブチレンアジペート/テレフタレート(BASF社製,エコフレックス)30重量%とをドライブレンドした混合樹脂を用いた点を除き、実施例品1と同様にして、吸収体サンプル(実施例品5)を作製した。なお、ドライブレンドの際は、各ペレットを混合した後、溶融混合した。
【0069】
(6)比較例品1の作製
吸収層として、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)50重量%と、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)50重量%とからなる、目付が15g/m2の水解性ノークレープティッシュを用いた。
樹脂層の材料として、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール樹脂を用いた。なお、ポリ乳酸は水溶性に加えて生分解性を有する。
ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学工業(株)製,エコマティAX)を、膜厚が17μmとなるように約230℃で溶融押出し、ポリビニルアルコール樹脂層を水解性ノークレープティッシュに直接ラミネートした。次いで、ポリビニルアルコール樹脂層上に、5重量%の白金触媒を含むシリコーン系撥水剤(信越化学工業(株)製,KS−3705)を、目付が1g/m2となるようにグラビア印刷し、紫外線を照射して硬化させ、熱風乾燥させることにより、吸収体サンプル(比較例品1)を作製した。
【0070】
(7)比較例品2の作製
ポリ乳酸樹脂(東レ(株)製,エコディア)を、Tダイを用いて、膜厚が20μmとなるようにフィルム化し、未延伸のポリ乳酸樹脂フィルム(比較例品2)を作製した。
【0071】
(8)比較例品3の作製
ポリ乳酸樹脂層の膜厚を20μmとした点を除き、実施例品1と同様にして、吸収体サンプル(比較例品3)を作製した。
【0072】
(9)比較例品4の作製
水解性エアレイド不織布の目付を20g/m2とした点を除き、実施例品1と同様にして、吸収体サンプル(比較例品4)を作製した。
【0073】
(10)実施例品1〜5及び比較例品1〜4の評価試験
下記方法により、実施例品1〜5及び比較例品1〜4の引裂強度、水解性(分散率、目視)、耐水圧、高湿貯蔵後耐水圧及び吸水量を評価した。
【0074】
<引裂強度>
サンプルのMD方向及びCD方向の引裂強度を、JIS K 6772:1994の7.5「引裂試験」に従って測定した。
具体的な手順は、次の通りである。
(a)幅40mm×長さ150mmのサンプルを準備する。
(b)サンプル短辺の中央から長辺に平行して、長さ75mmの切り込みを入れる。
(c)切り込みを入れた切込み片を引張試験機に保持し、引張速度200mm/分にて引張強度を測定する。
(d)最大強度をサンプルの引裂強度(N/40mm)とする。
【0075】
<水解性>
サンプルの水解性を、シェイクフラスコ法で評価した。
シェイクフラスコ法の手順は、次の通りである。
(a)800mLの蒸留水が入っている1000mLフラスコに、サンプル(100mm×100mm)を入れ、振盪速度240rpmで、48時間、シェーカー(IWAKI社製 SHKV−200)で振盪する。
(b)振盪後のサンプルを、2メッシュ(線径:1.5mm、目開き:11.2mm、空間率:77.8%)の金網にて濾し取り、試験前のシート乾燥質量をM0とし、金網上に残ったシート繊維の乾燥質量をM1として、次式に基づいて分散率を算出する。この際、N=3で評価し、平均値を求める。
分散率(%)=100×(M0−M1)/M0
(c)(b)とは別に、振盪後のサンプルの分散状態を目視で評価する。この際、N=3で評価し、平均値を求める。
【0076】
評価基準は、次の通りである。
A:原形を留めないレベルまで分散している。
B:一部原形を留めるが、3つ以上に分散している。
C:原形を留めている。
【0077】
<耐水圧>
サンプルの耐水圧を、JIS L 1092:2009の7.1.1「A法(低水圧法)」に従って、サンプルの裏側の3カ所から水が出たときの水位(mm)を測定し、これを耐水圧の指標とした。この際、N=5で評価し、平均値を求めた。
【0078】
<高湿貯蔵後耐水圧>
温度36℃及び相対湿度90%の条件下、サンプルを3時間貯蔵した後、直ぐにJIS L 1092に従って、サンプルの裏側の3カ所から水が出たときの水位(mm)を測定し、これを高湿貯蔵後耐水圧の指標とした。この際、N=5で評価し、平均値を求めた。
【0079】
<吸水量>
サンプル(100mm×100mm)を蒸留水に1分間浸漬させた後、網上で1分間放置して水切りし、吸水後のサンプル重量(g)を測定し、吸水前のサンプル重量(g)との差に基づいて、吸水量(g/m2)を算出した。なお、水切り用の網として、250メッシュナイロンネット(株式会社NBCメッシュテック製N−No.250HD)を用いた。
評価結果を表1に示す。なお、比較例1の吸水量は、蒸留水への浸漬時にバインダーが溶解し、崩壊してしまったため測定できなかった。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例品1〜5は、下記基準を全て満たしており、耐水性と水解性(水崩壊性)とを兼ね備えていた。これに対して、比較例品1〜4は、下記基準のうち1種又は2種以上を満たしておらず、耐水性と水解性(水崩壊性)とを兼ね備えていなかった。
・MD方向の引裂強度が0.15N/40mm以下である。
・CD方向の引裂強度が0.15N/40mm以下である。
・分散状態が△又は○である。
・分散率が50%以上である。
・耐水圧が300mm以上である。
・高湿貯蔵後耐水圧が300mm以上である。
・吸水量が300g/m2以上である。
【符号の説明】
【0082】
1 パンティライナー(吸収性物品)
2 表面シート(液透過性を有する第1の水解性シート)
3 裏面シート(第2の水解性シート)
4 吸収体
41 水解性吸収層
42 非水溶性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水解性吸収層と非水溶性樹脂層とを備えた水崩壊性吸収体であって、
前記水解性吸水層の吸水量が300g/m2以上であり、
前記非水溶性樹脂層の平面方向の引裂強度が、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向ともに0.15N/40mm以下である、前記水崩壊性吸収体。
【請求項2】
前記非水溶性樹脂層の平面方向の引裂強度が、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向ともに0.10N/40mm以下である、請求項1記載の水崩壊性吸収体。
【請求項3】
前記水解性吸収層が、前記非水溶性樹脂層に直接積層されている、請求項1又は2記載の水崩壊性吸収体。
【請求項4】
前記非水溶性樹脂層が生分解性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水崩壊性吸収体。
【請求項5】
前記非水溶性樹脂層の耐水圧が300mm以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水崩壊性吸収体。
【請求項6】
温度36℃及び相対湿度90%の条件下で3時間貯蔵した後の前記非水溶性樹脂層の耐水圧が300mm以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水崩壊性吸収体。
【請求項7】
振盪速度240rpmで48時間、水中で振盪したときの分散率が50質量%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水崩壊性吸収体。
【請求項8】
前記非水溶性樹脂層の厚みが10〜15μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水崩壊性吸収体。
【請求項9】
前記非水溶性樹脂層に含有される非水溶性樹脂がポリ乳酸である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水崩壊性吸収体。
【請求項10】
前記水解性吸収層が水分散性繊維及び水溶性バインダーを含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水崩壊性吸収体。
【請求項11】
前記水分散性繊維の繊維長が20mm以下である、請求項10記載の水崩壊性吸収体。
【請求項12】
前記水解性吸収層の繊維目付量が30〜100g/m2以上である、請求項10又は11記載の水崩壊性吸収体。
【請求項13】
液透過性を有する第1の水解性シート、
第2の水解性シート、及び
前記第1の水解性シートと前記第2の水解性シートとの間に設けられた吸収体を備えた吸収性物品であって、
前記吸収体が請求項1〜12のいずれか1項に記載の水崩壊性吸収体である、前記吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75103(P2013−75103A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218013(P2011−218013)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】