説明

水平目地材

【課題】上側のパネル壁の荷重によって水平目地材が圧縮されたときの奥行き方向への圧縮変位量を抑制することができる水平目地材を提供する。
【解決手段】コンクリート擁壁を構築するための多数のパネル壁1のうち、上下に隣接するパネル壁1の間の目地空間部10に介在されるゴム製の水平目地材11であって、水平目地材11の主体部をなす目地本体12は、未加硫のゴム材料と繊維材料とが混練された目地材料を、目地空間部10に対応する帯板状に成形して加硫することで形成され、ゴム弾性を有すると共に、繊維材料が厚さ方向、長手方向及び奥行き方向の全域にわたって内設される。目地本体12の上下両面のうち、少なくとも片側面には、上側のパネル壁1の荷重によって目地本体12が圧縮されたときの奥行き方向への圧縮変位量を抑制する凹部13が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート擁壁を構築するための多数のパネル壁のうち、上下に隣接するパネル壁の間の目地空間部に介在されるゴム製の水平目地材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、テールアルメ工法において、コンクリートスキンをなすコンクリート擁壁を構築するための多数のパネル壁のうち、上下に隣接するパネル壁の間の目地空間部に水平目地材が介在される。
この種の水平目地材において、緩衝材として機能するようにゴム材料を主体として形成されたものがある。
また、ゴム製の水平目地材において、タイヤを製造する際に生じる繊維入りゴム原反の原反端切れ部よりなる繊維入り中間ゴム層と、この繊維入り中間ゴム層を間に挟む上下の表面ゴム層とを有して三層構造に形成された水平目地材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−321847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示された水平目地材においては、上側のパネル壁の荷重によって水平目地材が圧縮されたときに、繊維入り中間ゴム層の上下に積層された両表面ゴム層が奥行き方向へ大きく圧縮変位される場合がある。これによって、両表面ゴム層の一部が目地空間部より外方にはみ出したり、あるいは、パネル壁の上面の前側に突設された突出部を前方に押圧してその突出部を破損する場合があった。
【0004】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、上側のパネル壁の荷重によって水平目地材が圧縮されたときの奥行き方向への圧縮変位量を抑制することができる水平目地材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、この発明の請求項1に係る水平目地材は、コンクリート擁壁を構築するための多数のパネル壁のうち、上下に隣接するパネル壁の間の目地空間部に介在されるゴム製の水平目地材であって、
前記水平目地材の主体部をなす目地本体は、未加硫のゴム材料と繊維材料とが混練された目地材料を、前記目地空間部に対応する帯板状に成形して加硫することで形成され、ゴム弾性を有すると共に、前記繊維材料が厚さ方向、長手方向及び奥行き方向の全域にわたって内設され、
前記目地本体の上下両面のうち、少なくとも片側面には、前記上側のパネル壁の荷重によって前記目地本体が圧縮されたときの奥行き方向への圧縮変位量を抑制する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0006】
前記構成によると、厚さ方向、長手方向及び奥行き方向の全域にわたって内設された繊維材料によって耐荷重性に優れた目地本体が得られると共に、上側のパネル壁の荷重によって目地本体が圧縮されたときの奥行き方向への圧縮変位量を目地本体の凹部によって良好に抑制することができる。
ひいては、目地本体の一部が目地空間部より外方にはみ出したり、あるいは、パネル壁上面の前側に突設された突出部を前方に押圧して破損する等の不具合を防止することができる。
また、目地本体の凹部によって軽量化を図ることもでき、取り扱いが容易となり、運送費の低減においても効果が大きい。
【0007】
請求項2に係る水平目地材は、請求項1に記載の水平目地材であって、
目地本体の凹部は、同目地本体の奥行き方向に所定間隔を隔てかつ長手方向に平行する複数条をなして配列されていることを特徴とする。
【0008】
前記構成によると、上側のパネル壁の荷重によって目地本体が圧縮されたときの奥行き方向への圧縮変位量を目地本体の複数条の凹部によって効率よく良好に抑制することができる。
【0009】
請求項3に係る水平目地材は、請求項1又は2に記載の水平目地材であって、
目地本体には、その奥側端から下向きに突出され、かつ下側のパネル壁の上端部内面に当接又は接近可能な位置決め片が形成されていることを特徴とする。
【0010】
前記構成によると、下側のパネル壁の上端面に目地本体を載置してセットする際に、目地本体の位置決め片を下側のパネル壁の上端部内面に当接又は接近させることで、奥行き方向に位置決めしてセットすることができ、作業性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための最良の形態を実施例にしたがって説明する。
【実施例】
【0012】
図1はこの発明の実施例に係るテールアルメ工法のコンクリートスキンをなすコンクリート擁壁が多数のパネル壁によって構築された状態を示す正面図である。図2は下側のパネル壁上面の積載面に水平目地材がセットされた状態を示す斜視図である。図3は水平目地材を示す斜視図である。図4は水平目地材の平面図である。図5は図4のV−V線に基づく断面図である。図6は上下に隣接するパネル壁の間の目地空間部に水平目地材が介在された状態を示す側断面図である。
【0013】
図1と図2に示すように、テールアルメ工法のコンクリートスキンをなすコンクリート擁壁は多数のパネル壁1が縦横方向に組み付けられることで構築される。
なお、パネル壁1は、上下部が狭く中央部が幅広に形成されて略十字状に形成され、幅広部分の両張出部上面には金属製の連結ピン2が突設され、張出部下面には連結ピン2が挿入可能な連結孔(図示しない)が形成されている。
また、図2と図5に示すように、パネル壁1の上面の奥側には平坦な積載面4が形成され、この積載面4の前側には上向き傾斜面5をもって突出部6が形成されている。
また、パネル壁1の下面の奥側には載置面4に対向して被積載面7が形成され、この被積載面7の前側には下向き傾斜面8をもって除去部9が形成されている。そして、多数のパネル壁1のうち、上下に隣接するパネル壁1の積載面4と被積載面7との間の目地空間部10に緩衝性(ゴム弾性)を有する水平目地材11が介在されている。
【0014】
図3〜図5に示すように、水平目地材11の主体部をなす目地本体12は、未加硫のゴム材料(例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の複数種類のゴム材料が適宜に混合された混合ゴム材料)と、ナイロン繊維等の繊維材料(短繊維も含む)とが混練された目地材料を、目地空間部10に対応する帯板状に成形して加硫(架橋)させることで形成されている。これによって、目地本体12は、ゴム弾性を有すると共に、繊維材料が厚さ方向、長手方向及び奥行き方向の全域にわたって内設されている。
【0015】
なお、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR等の未加硫のゴム材料のうち、一つの未加硫のゴム材料が選択され、この単一のゴム材料に繊維材料(短繊維も含む)が混練された目地材料を成形型(図示しない)に充填して目地空間部10に対応する帯板状に成形した後、所要温度に加熱して未加硫のゴム成分を加硫(架橋)させることで、目地本体12を形成することもできる。この場合においても、目地本体12は、ゴム弾性を有すると共に、繊維材料が厚さ方向、長手方向及び奥行き方向の全域にわたって内設される。
【0016】
図3と図4に示すように、目地本体12の上下両面のうち、少なくとも片側面には、上側のパネル壁1の荷重によって目地本体12が圧縮されたときの奥行き方向への変位量を抑制する凹部13が形成されている。
この実施例において、目地本体12の上下両面に、奥行き方向に所定間隔を隔てかつ長手方向に平行する複数条をなして凹部13がそれぞれ配列されている。
また、この実施例において、目地本体12には、その奥側端から下向きに突出され、かつ下側のパネル壁1の上端部内面に当接又は接近可能な左右の両位置決め片15が形成されている。
【0017】
上述したように構成されるこの実施例に係る水平目地材11において、基礎コンクリート上にパネル壁1が段差状に配列されてから、各パネル壁1上面の積載面4に水平目地材11が載置されてセットされる(図5参照)。
その後、下側のパネル壁1の連結ピン2に上側のパネル壁1の連結孔(図示しない)が嵌挿されながら積み重ねられ、これら作業が順次繰り返し行われることで、テールアルメ工法のコンクリートスキンをなすコンクリート擁壁が構築される。
また、下側のパネル壁1の積載面4上に水平目地材11を載置してセットする際に、目地本体12の位置決め片15を下側のパネル壁1の上端部内面に当接又は接近させることで、水平目地材11を奥行き方向に正確に位置決めしてセットすることができ、作業性に優れる。
【0018】
目地本体12は、厚さ方向、長手方向及び奥行き方向の全域にわたって繊維材料が内設されているため、耐荷重性に優れたものとなる。
また、図6に示すように、上側のパネル壁1の荷重によって目地本体12が圧縮されたときの奥行き方向への圧縮変位量を目地本体12の凹部13によって抑制することができる。ひいては、目地本体12の一部が目地空間部10より外方にはみ出したり、あるいは、パネル壁1積載面3の前側に突設された突出部6の傾斜面5を前方に押圧して突出部6を破損する等の不具合を防止することができる。
【0019】
また、この実施例において、目地本体12の凹部13は、同目地本体12の奥行き方向に所定間隔を隔てかつ長手方向に平行する複数条をなして配列されている。このため、上側のパネル壁1の荷重によって目地本体12が圧縮されたときの奥行き方向への圧縮変位量を目地本体12の複数条の凹部13によって効率よく良好に抑制することができる。
さらに、目地本体12の上下両面にそれぞれ形成された複数条の凹部13によって軽量化を図ることもでき、取り扱いが容易となり、運送費の低減においても効果が大きい。
【0020】
なお、この発明は前記実施例に限定するものではない。
例えば、前記実施例においては、目地本体12の上下両面に、奥行き方向に所定間隔を隔てかつ長手方向に平行する複数条の凹部13が配列される場合を例示したが、目地本体12の上下両面の片側に対してのみ凹部13が形成される場合においてもこの発明を実施することができる。
また、目地本体12の上下両面のうち、少なくとも片側面に対する凹部13の配列は適宜に設定すればよい。
例えば、図7に示すように、目地本体12の上下両面のうち、少なくとも片側面に複数の凹部13aを格子状に配列してもよい。
また、図8に示すように、目地本体12の上下両面のうち、少なくとも片側面に複数の凹部13bを千鳥格子状に配列してもよい。
さらに、図9に示すように、目地本体12の上下両面のうち、少なくとも片側面に複数の凹部13cを斜め格子状に配列してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例に係るテールアルメ工法のコンクリートスキンをなすコンクリート擁壁が多数のパネル壁によって構築された状態を示す正面図である。
【図2】同じく下側のパネル壁上面の積載面に水平目地材がセットされた状態を示す斜視図である。
【図3】同じく水平目地材を示す斜視図である。
【図4】同じく水平目地材の平面図である。
【図5】同じく図4のV−V線に基づく断面図である。
【図6】同じく上下に隣接するパネル壁の間の目地空間部に水平目地材が介在された状態を示す側断面図である。
【図7】この発明の目地本体の複数の凹部を格子状に配列した実施態様を示す平面図である。
【図8】同じく目地本体の複数の凹部を千鳥格子状に配列した実施態様を示す平面図である。
【図9】同じく目地本体の複数の凹部を斜め格子状に配列した実施態様を示す平面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 パネル壁
10 目地空間部
11 水平目地材
12 目地本体
13 凹部
15 位置決め片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート擁壁を構築するための多数のパネル壁のうち、上下に隣接するパネル壁の間の目地空間部に介在されるゴム製の水平目地材であって、
前記水平目地材の主体部をなす目地本体は、未加硫のゴム材料と繊維材料とが混練された目地材料を、前記目地空間部に対応する帯板状に成形して加硫することで形成され、ゴム弾性を有すると共に、前記繊維材料が厚さ方向、長手方向及び奥行き方向の全域にわたって内設され、
前記目地本体の上下両面のうち、少なくとも片側面には、前記上側のパネル壁の荷重によって前記目地本体が圧縮されたときの奥行き方向への変位量を抑制する凹部が形成されていることを特徴とする水平目地材。
【請求項2】
請求項1に記載の水平目地材であって、
目地本体の凹部は、同目地本体の奥行き方向に所定間隔を隔てかつ長手方向に平行する複数条をなして配列されていることを特徴とする水平目地材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水平目地材であって、
目地本体には、その奥側端から下向きに突出され、かつ下側のパネル壁の上端部内面に当接又は接近可能な位置決め片が形成されていることを特徴とする水平目地材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−2262(P2008−2262A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133974(P2007−133974)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000123549)化成工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】