説明

水平羽根および空気調和装置

【課題】左右方向も含めて風向制御のバリエーションを豊富にすることができる水平羽根を提供する。
【解決手段】空気調和装置の室内機には、左側面の側に開口された左側面開口部および右側面の側に開口された右側面開口部並びに左側面開口部と右側面開口部との間にある前方開口部を持つ吹出口が形成されている。水平羽根6は、吹出口の開閉を行うとともに吹出口から吹き出される調和空気の風向きを上下に変更する機能を有する。そして、水平羽根6は、吹出口の閉止時に、本体部6aの左右に、左側面部6bと右側面部6cとを備えている。これら左側面部6bと右側面部6cは、左側開口部および右側開口部を塞ぐ機能と同時に、調和空気の風向制御においても機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平羽根および空気調和装置に関し、特に調和空気の吹き出し方向を変更するための水平羽根、および水平羽根を備える空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置の壁掛け型室内機は、ケーシング本体内に、室内側熱交換器を備えている。壁掛け型室内機は、クロスフローファンなどの送風ファンにより室内空気をケーシング本体内に室内空気を吸い込み、吸込んだ室内空気を室内側熱交換器に通して空気調和を行い、調和空気を吹出口からケーシング本体外に吹き出している。吹出口から吹き出される調和空気の風向を制御するために、壁掛け型室内機には、左右方向の風向を調節する垂直羽根と上下方向の風向を調節する水平羽根が設けられるのが一般的である。
【0003】
従来の壁掛け型室内機の吹出口は、一般に室内機前面または室内機底面に設けられる。室内のインテリアとの調和のために室内機の外観を重視する場合、室内機の停止時には水平羽根によって吹出口が塞がれ、室内機の運転時には水平羽根によって上下方向の風向が調節されるような構造を採用することがある。そのため、水平羽根は、吹出口と同じ長さ、すなわちケーシング本体の長手方向の長さよりも短いものである。
【0004】
このように室内機前面や室内機底面に吹出口が設けられている場合には、室内機の奥行きがあるために、壁掛け型室内機が取り付けられている壁面に近いゾーンには調和空気を送り届けることが難しくなる。吹出口から吹き出される調和空気の風向が壁面に対して所定の角度を持つため、この傾向は室内機からの距離が遠くなればなるほど顕著になる。
【0005】
そこで、例えば特許文献1(特開2006−2984号公報)では、水平羽根を閉じた状態で水平羽根とケーシング本体の左右側面に開口ができるように構成して、これらの開口から左右に吹き出される風の流れを形成することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、左右方向への空気の流れを制限したいときに、垂直羽根でしか制御できないため、左右側面に開口がある分だけ、従来よりも左右方向への空気の流れの制限が難しくなる。
【0007】
本発明の課題は、左右方向も含めて風向制御のバリエーションを豊富にすることができる水平羽根を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る水平羽根は、空気調和装置の室内機に設けられる。この空気調和装置の室内機は、左側面および右側面を有し、左側面の側に開口された左側面開口部および右側面の側に開口された右側面開口部並びに左側面開口部と右側面開口部との間にある前方開口部を持つ吹出口が形成されている。また、水平羽根は、このような室内機において、吹出口の開閉を行うとともに吹出口から吹き出される調和空気の風向きを上下に変更することが可能である。そして、水平羽根は、吹出口の閉止時に前方開口部を覆うために設けられ、吹出口の開放時に調和空気の風向を上下に変更する本体部と、吹出口の閉止時に左側面開口部を覆うため本体部の左端に設けられた左側面部と、吹出口の閉止時に右側面開口部を覆うため本体部の右端に設けられた右側面部とを備えている。
【0009】
本発明によれば、水平羽根に当たった調和空気を左側面部および右側面部で前後方向に誘導し易くなるため、水平羽根の全体が平坦な場合に比べて前方における調和空気の制御に有利になる。
【0010】
第2発明に係る水平羽根は、第1発明の水平羽根であって、本体部は、略平坦な上面を有し、上面が略水平になる姿勢を取りうる。
【0011】
本発明によれば、冷房運転時などに、左側面部および右側面部を有する水平羽根の略平坦な本体部の上面を略水平な姿勢にすることで、調和空気を比較的遠くまで届かせることができ、部屋全体の空気調和が容易になる。
【0012】
第3発明に係る水平羽根は、第1発明または第2発明の水平羽根であって、左側面部は、左方向に調和空気を誘導するための左側スリットを持ち、右側面部は、右方向に調和空気を誘導するための右側スリットを持つ。
【0013】
本発明によれば、左側スリットおよび右側スリットを通して左右方向に調和空気を誘導でき、左右方向への調和空気の流れをつくり易くなる。
【0014】
第4発明に係る空気調和装置は、左側面および右側面を有し、左側面の側に開口された左側面開口部および右側面の側に開口された右側面開口部並びに左側面開口部と右側面開口部との間にある前方開口部を持つ吹出口が形成されているケーシング本体と、第3発明の水平羽根と、水平羽根が吹出口を覆った状態で、左側スリットから左方向に調和空気を吹出し、右側スリットから右方向に調和空気を吹き出すように制御し得る制御部とを備えている。
【0015】
本発明によれば、制御部により水平羽根が吹出口を覆った状態で調和空気を吹き出させるように制御することで、前方に調和空気を吹き出させず、左右にだけ調和空気を吹き出させることができる。
【0016】
第5発明に係る空気調和装置は、左側面および右側面を有し、左側面の側に開口された左側面開口部および右側面の側に開口された右側面開口部並びに左側面開口部と右側面開口部との間にある前方開口部を持つ吹出口が形成されているケーシング本体と、第1発明から第3発明のいずれかの水平羽根と、本体部、左側面部および右側面部が吹出口の周囲に接しないように迫出させることが可能な迫出し機構とを備える。
【0017】
本発明によれば、迫出し機構によって水平羽根が迫出すことにより、吹出口の周囲と水平羽根との距離の調節が多様化し、風向や風速などの制御のバリエーションが増える。
【0018】
第6発明に係る空気調和装置は、第5発明の空気調和装置であって、迫出し機構は、前後左右の4方向に調和空気を導くことができる状態に本体部、左側面部および右側面部を迫出させ得る。
【0019】
本発明によれば、迫出し機構は、前後左右の4方向に調和空気を導くことができる状態に本体部、左側面部および右側面部を迫出させたところから、例えば先端部を少し下に傾けるなど微調整をすることにより、調和空気が周囲に分散する状態に近い状態を作り出せるので、調和空気の流れを人が感じ難い静粛性の高い状態で空気調和を行うことができる。
【0020】
第7発明に係る空気調和装置は、第5発明または第6発明の空気調和装置であって、迫出し機構は、本体部を左または右に傾け得る。
【0021】
本発明によれば、水平羽根を迫出し機構により左または右に傾けた方へ強く調和空気を吹き出せるので、また、傾けた方とは逆の方に吹き出すときには調和空気の気流を弱めることができるので、気流のバリエーションを増やすことができ、室内の状況に合わせた空気調和を行うことができる。
【0022】
第8発明に係る空気調和装置は、左側面および右側面を有し、左側面の側に開口された左側面開口部および右側面の側に開口された右側面開口部並びに左側面開口部と右側面開口部との間にある前方開口部を持つ吹出口が形成されているケーシング本体と、第1発明から第3発明のいずれかの水平羽根と、水平羽根が吹出口を覆った状態で水平羽根に覆われる空間側に設けられ、水平羽根の左側スリットおよび右側スリットに調和空気を導く位置に配置されている左側ガイドおよび右側ガイドとを備える。
【0023】
本発明によれば、左側ガイドおよび右側ガイドを通すことにより、調和空気の左右方向への吹き出しを効率よく行わせることができる。また、水平羽根の左側面部および右側面部で左側ガイドおよび右側ガイド覆ってしまえるため、運転停止時などにおいては外観に表れないことから、洗練された外観を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
第1発明の水平羽根によれば、左右方向への調和空気の気流調節が可能である一方、前方への吹出しが容易で、室内の状況や環境状態に適した気流を生じさせ易くなり、快適な空気調和が実現し易くなる。
【0025】
第2発明の水平羽根によれば、左側面部および右側面部を有する水平羽根の略平坦な本体部に略水平な姿勢を取らせて比較的遠くまで調和空気を届かせ易くなり、比較的広い室内に適した空気調和が行い易くなる。
【0026】
第3発明の水平羽根によれば、左側スリットおよび右側スリットによって左右方向への調和空気の流れをつくり易くなるので、室内機が取り付けられている壁に沿った領域の空気調和を行い易くなる。
【0027】
第4発明の空気調和装置によれば、制御部によって前方方向には調和空気を吹き出させず左右方向に調和空気を吹き出させることができるので、左右方向を強く空気調和したい場合に対応することができる。
【0028】
第5発明の空気調和装置によれば、迫出し機構によって風向や風速などの制御のバリエーションが増えて快適な空気調和が実現し易くなる。
【0029】
第6発明の空気調和装置によれば、静粛性の高い状態で空気調和を行うことができ、所望の空気調和状態に近い状態になった状況において、空気調和の快適性を向上させることができる。
【0030】
第7発明の空気調和装置によれば、迫出し機構による本体部の左右への傾きによって、左右へ吹き出す調和空気の気流の微調整ができ、さらに調和空気の調整のバリエーションを増やすことができる。
【0031】
第8発明の空気調和装置によれば、左側ガイドおよび右側ガイドを水平羽根によって覆うことができ、停止時の室内機の外観の審美性を低下させることなく、左側ガイドおよび右側ガイドによって左右方向の空気調和の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態の室内機の正面図。
【図2】第1実施形態の室内機の底面図。
【図3】第1実施形態の室内機の側面図。
【図4】第1実施形態の室内機の斜視図。
【図5】第1実施形態の室内機の水平羽根を取外した状態を示す斜視図。
【図6】(a)第1実施形態の水平羽根の正面図。(b)第1実施形態の水平羽根の底面図。(c)第1実施形態の水平羽根の右側面図。
【図7】(a)第1実施形態の水平羽根の斜視図。(b)第1実施形態の水平羽根の右側面部近傍部分を拡大した斜視図。
【図8】第1実施形態の制御部の構成を説明するためのブロック図。
【図9】第1実施形態の室内機の右底面近傍の部分拡大図。
【図10】(a)第1実施形態の冷房運転時の室内機の正面図。(b)第1実施形態の冷房運転時の室内機の底面図。
【図11】(a)第1実施形態の冷房運転時の室内機の側面図。(b)第1実施形態の冷房運転時の室内機の斜視図。
【図12】(a)第1実施形態の暖房運転時の室内機の正面図。(b)第1実施形態の暖房運転時の室内機の底面図。
【図13】(a)第1実施形態の暖房運転時の室内機の側面図。(b)第1実施形態の暖房運転時の室内機の斜視図。
【図14】(a)第1実施形態の無感気流モード時の室内機の正面図。(b)第1実施形態の無感気流モード時の室内機の底面図。
【図15】(a)第1実施形態の無感気流モード時の室内機の側面図。(b)第1実施形態の無感気流モード時の室内機の斜視図。
【図16】第2実施形態に係る室内機の斜視図。
【図17】第2実施形態の制御部の構成を説明するためのブロック図。
【図18】第2実施形態の無感気流モード時の室内機の正面図。
【図19】第2実施形態の無感気流モード時の室内機の斜視図。
【図20】第2実施形態の暖房運転時の室内機の正面図。
【図21】第2実施形態の暖房運転時の室内機の斜視図。
【図22】(a)変形例に係る水平羽根の正面図。(b)変形例に係る水平羽根の底面図。
【図23】変形例に係る水平羽根の部分拡大斜視図。
【図24】(a)変形例に係るガイドを説明するための部分拡大斜視図。(b)変形例に係るガイドを説明するための部分拡大斜視図。
【図25】(a)変形例に係る室内機の水平羽根が閉じている状態を示す側面図。(b)変形例に係る室内機の水平羽根が開放されている状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1実施形態>
<空気調和装置の構成の概要>
この発明の第1実施形態に係る空気調和装置は、室内の壁面に取り付けられる壁掛け型の室内機と、室外に設置される室外機とを備えている。室内機と室外機とは、冷媒配管、加湿ホース、伝送線及び通信線などを集合した集合連絡管によって接続される。空気調和装置は、熱交換を行って室内の空気調和を行うために、例えば、室内機の室内側熱交換器(冷房時は蒸発器/暖房時は凝縮器として機能する)及び、室外機の圧縮機と室外側熱交換器(冷房時は凝縮器/暖房時は蒸発器として機能する)と膨張弁などが、集合連絡管の中を通る冷媒配管で連結されて構成されている冷媒回路を備えている。また、空気調和装置を制御するために、リモートコントローラなどの制御端末から指令を受けて室内機のファンモータなどの室内側機器を制御するための電装品箱が室内機に設けられ、室外機のファンモータなどの室外側機器を制御するための電装品箱が室外機に設けられている。そして、室内機の電装品箱と室外機の電装品箱とが集合連絡管の中を通る伝送線で接続されている。
【0034】
<空気調和装置の室内機の構成>
(室内機の概観)
図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和装置の室内機の正面図であり、図2は室内機の底面図であり、図3は室内機の右側面図であり、図4は右斜め下から見た室内機を示す斜視図である。室内機1は、ケーシング本体2の前面1a、左側面1b、右側面1c、天面1dおよび底面1eすなわち背面1fを除く5つの面が化粧パネル5で覆われている。なお、以下の説明において、室内機1の背面1fから前面1a(正面)に向かう方向を前方といい、室内機1の左側面1bおよび右側面1cを結ぶ方向すなわち吹出口4の長手方向に沿う方向を左右方向という。
【0035】
この室内機1は、ケーシング本体2の天面1dに吸込口3を備え、底面1eに吹出口4を備えている。図1には、吹出口4に設けられている水平羽根6が閉じられた状態が示されている。通常は運転停止時に吹出口4を閉じ、運転時に吹出口4を開放するのであるが、図1の室内機1は水平羽根6で吹出口4を塞いだ状態でも左右方向に調和空気を吹き出すことができる構成となっている。このような室内機1の動作の詳細については後述する。なお、以下の説明において、『水平羽根6が吹出口4を塞ぐ』という表現は吹出口4と水平羽根6の間に調和空気を吹き出す隙間がない状態を説明する場合に用い、水平羽根6が吹出口4を覆うという言い回しは閉じる動作に説明の重点を置いて調和空気を吹き出す隙間がある場合もない場合も許容する表現として用いる。
【0036】
図1に示す室内機1では、前面1aから室内空気の吸い込みは行われず、室内機1はもっぱらケーシング本体2の天面1dの吸込口3から室内空気の吸い込みを行っている。そのため、室内機1の内部における室内空気の移動は、室内機1の天面1dの側から室内機1の底面1eの側に向けて行われる。このような室内機1のケーシング本体2の内部には、図3に示すように、側面視においてケーシング本体2の略中央の背面側寄りにクロスフローファン7が設けられる。このクロスフローファン7の上流側には、側面視において、逆V字形状をした室内側熱交換器(図示省略)が配置され、クロスフローファン7に吸込まれる前に室内側熱交換器を室内空気が通過することによって空気調和が行われる。また、室内側熱交換器の上流にはエアフィルタ(図示省略)が設けられており、クロスフローファン7に導かれる調和空気にエアフィルタの隙間より大きな埃は完全に取り除かれる。図示を省略するが、正面視においては、このクロスフローファン7は、吸込口3と同じ程度の長さを有し、ケーシング本体2の長手方向に沿って長く水平に配置されている。このようにケーシング本体2の長手方向に長く延びるクロスフローファン7により室内空気の吸い込みと調和空気の吹き出しとを行って効率良く室内の空気調和を実施させるため、室内側熱交換器もケーシング本体2の長手方向に長く延びる形状に形成され、長く延びる吸込口3と吹出口4との間に配置される。
【0037】
クロスフローファン7と吹出口4との間には、図3に示すように、ディフューザー構造の吹出通路8が設けられる。吹出通路8の案内面8aは、側面視において、クロスフローファン7の側に曲率中心を持つ滑らかな曲線を描いており、下方に向かうに従って曲率半径が大きくなる。また、クロスフローファン7が、右側面から見て、時計回りに回転して送風し、その中心軸が背面1fの方に寄って配置されているので、吹出通路8は、底面1eの前方側に向けて斜めに形成される。そのため、吹出通路8から吹出口4に向かう調和空気は、天面1dから底面1eの方に向く方向ベクトルと背面1fから前面1aの方に向く方向ベクトルとを有し、乱れの少ない層流になる。
【0038】
<風向装置の構成>
吹出口4の前方には、水平羽根6が設けられる。水平羽根6は、運転時に開く場合と、閉じたまま運転を行う場合の2つの状態を取り得る。室内機1は、この水平羽根6によって室内機1の上下方向の風向きを調節することができる。この室内機1では、暖房時および冷房時などにおいて吹出口4から前方へ送風する場合に水平羽根6が開き、吹出口4から左右にのみ送風する場合に水平羽根6が閉じる。図1には、吹出口4が水平羽根6で塞がれて閉じている状態が示されている。
【0039】
図5は、左斜め下から見上げた室内機1を示す斜視図であり、吹出通路8の内部の構造を説明し易くするため、水平羽根6を取外した状態を示している。吹出通路8には、垂直羽根連結棒10によって連結された複数枚の垂直羽根9が揺動可能に取り付けられている。これら複数の垂直羽根9の面9aは、ケーシング本体2の長手方向に対して垂直な状態を中心にして左右に揺動する。これら垂直羽根9は、揺動することにより、あるいは揺動した後に任意の角度で止まることにより、左右方向における調和空気の吹出し方向を調整する。垂直羽根9は、2本の垂直羽根連結棒10で連結されているため、左側面1bに近いグループAと右側面1cに近いグループBの2つのグループに分けることができる。揺動方向は、異なる垂直羽根連結棒10に連結されているグループAとグループBで独立しており、例えばグループAが右に傾いているときに、グループBが左に傾くことがある。また、グループAとグループBにおいて、例えば同じ方向に傾いているときであっても傾く角度を異ならせることができる。当然、グループAとグループBに属する垂直羽根9を同じ向きに揺動させることもできる。
【0040】
図5において、二点鎖線11で示した位置は、底面1eと左側面1bおよび右側面1cの境界である稜線の延長線である。従来は、通常、二点鎖線11のところで底面1eと化粧パネル5の左側面1bおよび右側面1cとが分かれていた。この二点鎖線11の上の底面1eが窪んでいる部分は、左側に吹出すための開口部12bおよび、右側に吹出すための開口部12cになる。吹出口4は、これら開口部12b,12cを含んでいる。吹出口4の底面1eの開口部12aは、これら開口部12b,12cの間にある。このように、吹出口4が左側の開口部12bおよび右側の開口部12cを室内機1が持ち、水平羽根6の形状は、開口部12bおよび開口部12cを塞げるような構造となっている。
【0041】
次に、水平羽根6の構造について説明する。図6(a)に水平羽根の正面、図6(b)に水平羽根の底面、そして図6(c)に水平羽根の右側面を示している。また、図7(a)には、水平羽根の斜視図が示され、図7(b)には、右側面部を左斜め上から見た部分拡大図が示されている。水平羽根6は、本体部6a、本体部6aの左端からさらに左に延びる左側面部6b、および本体部6aの右端からさらに右に延びる右側面部6cを備えている。水平羽根6は、閉じた状態で、左側面部6bが左側面1bの開口部12aを塞ぎ、右側面部6cが右側面1cの開口部12bを塞ぐように構成されている。
【0042】
水平羽根6の先端部6dおよび後端部6eは、本体部6aにおいて、左側面部6bと右側面部6cとの間を真直ぐに略一直線に繋いでいる。左側面部6bの左側端部6fおよび右側面部6cの右側端部6gは、先端部6dから下に凸の放物線を描くように後端部6eへと続き、左側面部6bおよび右側面部6cの後端部は、本体部6aの後端部6eから延びて左側端部6fおよび右側端部6gと繋がる。
【0043】
図6(c)を見ると、本体部6aの底面6hは、側面視において、後端部6eから先端部6dにかけて、弓形に反り上がっている。水平羽根6の本体部6aは、通常可動のアームなどによって2点または3点で支えられることから撓まないように剛性を高めるため、また水平羽根6での結露などの防止が必要なことから断熱性を持たせるため、所定の厚みを有している。そのため、先端部6dから稜線6jまでは、側面視の底面6hの形状に沿って徐々に厚みが増し、多少の凹凸はあるものの比較的平坦な上面6iが続き、稜線6jから後端部6eにかけて急激に厚みが減少する。この水平羽根6が吹出口4を塞いでいる状態で、本体部6aの平坦な上面6iが略水平に保たれる。
【0044】
水平羽根6の左側面部6bおよび右側面部6cには、それぞれ左側スリット13および右側スリット14が形成されている。左側スリット13は左上部スリット13aと左下部スリット13bからなり、右側スリット14は右上部スリット14aと右下部スリット14bからなる。左下部スリット13bは、斜面6kと斜面6mとの間に形成されている。斜面6kは、本体部6aの左端部において、上面6iから斜めに底面6hの左端部近傍に達する斜面である。斜面6mは、左横吹誘導板15の裏側に形成され、左側面部6bにおいて、後端上部6b1と後端部6eとの中間の高さのところから先端部6d近傍に向けて略水平に延びる。右下部スリット14bは、斜面6lと斜面6nとの間に形成されている。斜面6lは、本体部6aの右端部において、上面6iから斜めに底面6hの右端部近傍に達する斜面である。斜面6nは、左横吹誘導板15の裏側に形成され、左側面部6bにおける後端上部6b1および右側面部6cにおける後端上部6c1と後端部6eとの中間の高さのところから先端部6d近傍に向けて略水平に延びる。
【0045】
そして、左下部スリット13bと左上部スリット13aとの間に左横吹誘導板15が形成され、右下部スリット14bと右上部スリット14aとの間に右横吹誘導板16が形成されている。左横吹誘導板15および右横吹誘導板16は、平面視において、斜面6k,6lと一部が重なるが、大部分が重ならないように形成されている。また、左横吹誘導板15および右横吹誘導板16は、それぞれ左側面部6bおよび右側面部6cに向かって下方に傾斜している。そのため、吹出口4から斜面6k,6lに向けて直接吹き付けられる調和空気は、斜面6k,6lに沿って左右両端に向かって斜め下方に誘導され、左下部スリット13bおよび右下部スリット14bを通り抜けて、左側面部6bおよび右側面部6cから左右に斜め下方に向かって吹き出される。また、本体部6aに沿って左右両端に向かう調和空気は、左横吹誘導板15および右横吹誘導板16よりも上面6iに近いものについては、左横吹誘導板15および右横吹誘導板16により上方へ逃げないように流れが制限されて左下部スリット13bおよび右下部スリット14bに誘導される。
【0046】
左横吹誘導板15および右横吹誘導板16に上方から向かう空気は、左横吹誘導板15および右横吹誘導板16によって左右両端に向かって斜め下方に誘導され、左上部スリット13aおよび右上部スリット14aを通り抜けて、左側面部6bおよび右側面部6cから左右に斜め下方に向かって吹き出される。左上部スリット13aおよび右上部スリット14aの上部周辺には、水平羽根6より上方に向かう気流を抑制する補助板17,18が形成されている。
【0047】
風向装置は、水平羽根6の開閉および開放時の角度を調整するため水平羽根6を駆動する迫出し機構を備えている。迫出し機構は、ケーシング本体2の長手方向の中央とその左右に、互いに平行に配置されている3本のアーム40,41,42を含んでいる(図10参照)。この3本のアーム40,41,42は、ラックアンドピニオン機構(図示省略)によって前方に向かって斜め下方に伸びるように移動(迫出し)したり、それとは逆の方向に移動して収納されたりする。これらアーム40,41,42は、移動量が同じになるようにラックアンドピニオン機構によって駆動されるため、アーム40,41,42によって支持されている水平羽根6の動きは平行移動になる。アーム40,41,42は、水平羽根6に駆動軸(図示省略)を介して同一の軸線上に取り付けられており、水平羽根6を駆動軸の軸線の回りに回転させることができる。風向装置は、ラックアンドピニオン機構によるアーム40,41,42の迫出し量の調整と、駆動軸による水平羽根6の回転角度の調整とによって、水平羽根6の平行移動と回転移動を組み合わせることにより、水平羽根6に種々の姿勢を取らせることができる。例えば、平坦な水平羽根6の本体部6aの上面6iが水平になる姿勢を、水平羽根6が取りうるものとなっている。
【0048】
以上のように、空気調和装置の風向装置は、水平羽根6と垂直羽根9およびそれらを駆動するための迫出し機構および垂直羽根駆動部を備えている。垂直羽根駆動部は、垂直羽根9を駆動するため、上述の垂直羽根連結棒10を有している。迫出し機構および垂直羽根駆動部の制御については後述する。
【0049】
上述の水平羽根6と垂直羽根9の吹出し方向の調整および、クロスフローファン7の風速の調整により、室内の形態や室内の状況に対応した適切な空気調和を行うことができる。これら水平羽根6や垂直羽根9やクロスフローファン7の制御を行うために、図8に示すような制御部20を備えている。制御部20は、室内機1の各機器を制御するための室内制御部21と、室外機の各機器を制御するための室外制御部22とを備えており、室内制御部21と室外制御部22との間を信号線23で接続して構成されている。
【0050】
室外制御部22には、圧縮機24、室外電動膨張弁25、四路切換弁26、室外ファン27、複数の圧力センサ28および複数の温度センサ29などが接続されている。室外制御部22は、例えば圧縮機24の回転数を制御することにより冷媒回路の冷媒循環量を制御し、室外電動膨張弁25の開度を制御することにより冷媒回路を流れる冷媒の圧力を制御する。室外制御部22は、四路切換弁26を切り換えることにより、冷凍回路に流れる冷媒の循環経路の切換を行って暖房運転と冷房運転の切換などの運転切換の制御を行う。また、室外制御部22は、室外ファン27の回転数を制御することにより、室外熱交換器における熱交換効率の制御などを行う。そのため、冷媒回路や各機器に設置された複数の温度センサ29や圧力センサ28などによって検知された各部の温度や圧力を、室外制御部22は、制御のための判断に用いている。
【0051】
一方、室内制御部21には、送受信部30、迫出し機構31、垂直羽根駆動部32、クロスフローファン用モータ33、複数の温度センサ34および表示部35などが接続されている。室内制御部21は、制御のために、使用者のリモートコントローラなどと送受信部30との間でデータの送受信を行っている。室内制御部21は、室内の状態や使用者の設定に従って、迫出し機構31、垂直羽根駆動部32およびクロスフローファン用モータ33の制御を行って、水平羽根6および垂直羽根9の角度や揺動の状態、およびクロスフローファン用モータ33の回転数を調整し、調和空気の吹出し方向や吹き出す強さなどを変更することができる。室内制御部21は、冷媒回路や各機器に設置された複数の温度センサ29などによって検知された各部の温度などの状態情報を、制御のための判断に用いている。また、室内制御部21は、表示部35を介して、室内機1の設定状態や環境などを使用者に知らせる。
【0052】
<風向装置の動作>
室内機1は、停止時には、図1〜図4を用いて説明したように、通常、水平羽根6を閉じた状態になる。それにより、室内機1の停止時に水平羽根6に埃や花粉などが積もるのを防止している。図6および図7に示したように、水平羽根6には左側スリット13および右側スリット14が形成されている。しかし、水平羽根6の左側面部6bおよび右側面部6cが、湾曲しているため、左側スリット13および右側スリット14は、室内機1の左側面1bおよび右側面1cではなく、むしろ室内機1の底面1eに位置している。また、斜面6k,6lや左横吹誘導板15および右横吹誘導板16が斜め下方に向けて傾いているため、水平羽根6が閉じることで埃や花粉などが積もり難くい状態となる。
【0053】
(左右吹き)
図9は、右下方の前方側から見上げた室内機の状態を示す部分拡大図である。図9は、水平羽根6を閉じた状態で、左右方向にのみ調和空気を吹き出している状態を示している。また、上述の図1から図4にもこの状態での調和空気の吹出し方向を矢印で示している。このとき制御部20の室内制御部21は、迫出し機構31に対して、水平羽根6を閉じた状態にするように指示信号を出力する。そして、左右に吹出し易くするため、垂直羽根9のグループAは左側へ、そしてグループBは右側へ気流を変更するように傾けるように、室内制御部21から垂直羽根駆動部32に指示信号を出力する。それにより、例えば、図9に示すように、右側であれば、右上部スリット14aと右下部スリット14bから室内機1の下方右方向D1,D2に向けて調和空気が吹き出される。例えば、右下部スリット14bから吹き出される調和空気の方向D2は、斜面6mと右横吹誘導板16の下面の角度で規制されるため、この角度をどのように形成するかによって、方向D2を設定することができる。
【0054】
ここでは、右横吹誘導板16が固定されている場合について説明しているが、この右横吹誘導板16の下面の角度を変更で切るように構成することもでき、その場合には手動でまたは自動で方向D2を状況に応じて変更できるものになる。方向D1についても方向D2と同様に右横吹誘導板16の上面の角度によって設定することができる。なお、吹き出される調和空気を吹出す強さは、クロスフローファン7の回転数を適当な値に設定することにより調整され、その調整のための指示信号が室内制御部21からクロスフローファン用モータ33に出力される。
【0055】
(冷房運転時の吹出し)
図10(a)には、冷房運転時の室内機の正面図を示し、図10(b)には、冷房運転時の室内機の底面図を示している。また、図11(a)には、冷房運転時の室内機の側面図を示し、図11(b)には、冷房運転時の室内機の斜視図を示している。冷房運転時には、水平羽根6の先端部6dが後端部6eよりも下がり、水平羽根6の上面6iが水平に対して例えば30度程度傾斜している。中央のアーム40と左右のアーム41,42によって吊られている水平羽根6を図10および図11に示す状態にするには、アーム40,41,42を延ばすことにより水平羽根6を迫出させる動作と、アーム40の先端にある駆動軸43によりアーム40に対する水平羽根6の角度を変化させる動作とを行うことが必要になる。図10および図11に示す角度に水平羽根6が開放されている状態で、吹出口4から調和空気が吹き出されると、水平羽根6の先端部6dと室内機1の底面1eとの間から前方に向かう調和空気の気流が形成される。この気流によって調和空気は、室内機1が取り付けられる室内の壁とは反対側の壁に向かって運ばれる。
【0056】
このとき、例えば垂直羽根9をケーシング本体2の長手方向に対して垂直に固定すると、水平羽根6の左右両端の左側スリット13および右側スリット14には、吹出口4から吹き出された調和空気が案内されない。このように垂直羽根9を略垂直に固定すると、ほぼ全ての調和空気は真直ぐ前方に流れる。このときの気流の向きが図10(a)の矢印で示されている。この場合、左側面部6bおよび右側面部6cがあることにより、前方への流れがスムーズになる。一方、垂直羽根9を左右に傾け、かつ左右両端の左側スリット13および右側スリット14には調和空気が達しない角度に垂直羽根9を調節することができる。この場合には、水平羽根6によって前方に向かって流れる調和空気が扇型に広がる。このときの気流の向きが図11(b)の矢印で示されている。さらに、垂直羽根9を左右に傾けて、左右両端の左側スリット13および右側スリット14に調和空気が達する角度にすることができる。この場合には、水平羽根6によって前方に向かって流れる調和空気が扇型に広がるだけでなく、左側スリット13を通過した調和空気は、左横吹誘導板15および右横吹誘導板16や斜面6k,6lに沿って左右方向に流れる。このときの気流の向きが図10(b)の矢印で示されている。この場合には、左横吹誘導板15および右横吹誘導板16と斜面6k,6lが水平羽根6の上面6iに対して角度をつけることのよって、気流に、やや後方に向かう方向ベクトルを持たせることができる。その様な設定にすると、室内機1の奥行きがあるために垂直羽根9だけでは誘導することが難しい、室内機1の真横の壁面に沿ったゾーンに調和空気を吹き出させることができる。なお、右横吹誘導板16に角度を持たせず、真横に吹き出させるように構成することもできる。
【0057】
また、水平羽根6の角度を変化させることによって左右方向に向かう気流の強さを変化させるように構成することもできる。例えば、水平羽根6の上面6iが、吹出口4から吹き出される層流の向きに対して垂直になる方向に近づければ近づけるほど、気流の前方に向かう強さが弱まる一方、左右方向へ向かう気流の強さが増す。
【0058】
(暖房運転時の吹出し)
図12(a)には、暖房運転時の室内機の正面図を示し、図12(b)には、暖房運転時の室内機の底面図を示している。また、図13(a)には、暖房運転時の室内機の側面図を示し、図13(b)には、暖房運転時の室内機の斜視図を示している。暖房運転時には、水平羽根6の後端部6eが先端部6dよりも下にあって、水平羽根6の上面6iがほぼ垂直な状態になる。図12および図13に示す状態は、上面6iがほぼ垂直な状態よりも後端部6eが前方に出て、上面6iがやや下方に向いている。中央のアーム40と左右のアーム41,42によって吊られている水平羽根6を図12および図13に示す状態にするには、上述の冷房運転と同様に、アーム40,41,42により水平羽根6を迫出させ、アーム40の先端にある駆動軸43により水平羽根6を垂直に立った状態に変化させる。図12および図13に示す角度に水平羽根6が開放されている状態で、吹出口4から調和空気が吹き出されると、水平羽根6に遮られて調和空気は下方に向かって流れる。
【0059】
このとき、垂直羽根9をケーシング本体2の長手方向に対して垂直に固定すると、水平羽根6の左右両端の左側スリット13および右側スリット14には、吹出口4から吹き出された調和空気は案内されず、ほぼ全ての調和空気は真直ぐ下方に流れる。このとき、左側面部6bおよび右側面部6cがあることにより、下方への流れがスムーズになる。一方、垂直羽根9を左右に傾けて、左右両端の左側スリット13および右側スリット14には調和空気が達しない角度にして、水平羽根6によって下方に向かって流れる調和空気を扇型に広げることができる。このときの気流の向きが図13(b)の矢印で示されている。さらに、垂直羽根9を左右に傾けて、左右両端の左側スリット13および右側スリット14に調和空気が達する角度にすることができる。この場合には、水平羽根6によって前方に向かって流れる調和空気が扇型に広がるだけでなく、左側スリット13を通過した調和空気は、左横吹誘導板15および右横吹誘導板16や斜面6k,6lに沿って左右方向に流れる。このとき、左横吹誘導板15および右横吹誘導板16と斜面6k,6lが水平羽根6の上面6iに対して角度を持っているため、気流に、やや前方に向かう方向ベクトルを持たせることができる。それにより、水平羽根6で遮っただけでは誘導することが難しい、室内機1の左右側方の下方でやや前方に向かうゾーンに調和空気を吹き出させることができる。このときの気流の向きが図12(a)および図12(b)に示されている。なお、図12(b)において真下に向かう気流の記載は省略している。暖房運転時において、水平羽根6の角度を変化させることもできる。例えば、水平羽根6の上面6iが、吹出口4から吹き出される層流の向きに対して垂直になる方向に近づければ近づけるほど、気流の前方に向かう強さが弱まる一方、左右方向へ向かう気流の強さが増す。
【0060】
(無感気流モード時の吹出し)
以下の説明において、人体が気流を感じ難いように気流を非常に弱くする調和空気の吹出しモードを無感気流モードという。図14(a)には、無感気流モード時の室内機の正面図を示し、図14(b)には、無感気流モード時の室内機の底面図を示している。また、図15(a)には、無感気流モード時の室内機の側面図を示し、図15(b)には、無感気流モード時の室内機の斜視図を示している。無感気流モード時には、水平羽根6の先端部6dが後端部6eよりもやや上がり、水平羽根6の上面6iが吹出口4に対向する状態になっている。つまり、無感気流モードでの水平羽根6の姿勢は、水平羽根6が吹出口4を閉じている姿勢に対して概ね平行である。中央のアーム40と左右のアーム41,42によって吊られている水平羽根6を図14および図15に示す状態にするには、アーム40,41,42により水平羽根6を所定量だけ迫出させ、アーム40の先端にある駆動軸43(図11(b)参照)により水平羽根6の後端部6eを少し下げた状態に変化させる。つまり、室内機1は、水平羽根6を迫出させて、吹出口4から吹き出される気流に対して水平羽根6が直交する状態で吹出口4を開放することができる。水平羽根6が吹出口4から吹き出される気流に対して直交する角度に保たれると、調和空気は水平羽根6に当たって前方と左右方向だけでなく後方にも流れ、すなわち4方向に吹出し可能な状態となる。
【0061】
図14および図15に示す状態は、吹出口4から吹き出される層流の吹出し方向に対して上面6iが垂直になる状態よりもやや先端部6dが下がった状態である。この状態では、水平羽根6に当たって気流は弱められるが、調和空気の後方への流れは、ほとんど存在しないといえる状態か、あるいは極めて弱い状態である。図14および図15には後方に発生した極めて弱い気流が前方や左右方向に向いた矢印よりも小さな矢印で示されている。また、このとき、クロスフローファン7の回転数も下げて、吹出口4から吹き出させる風量を下げる。それにより、吹き出される調和空気の風量が少なくなって風速が弱くなるのに加え、水平羽根6に調和空気を当てて風速を減少させることで人に空気の流れを感じ難くさせている。この状態で、アーム40,41,42の迫出し量を調整して吹出口4の周囲と水平羽根6との間隔を変えることにより、調和空気の流れを調整することもできる。
【0062】
この場合に、垂直羽根9によって左右に流れる気流を制御できるのは冷房運転や暖房運転のときと同様である。左右に流れた調和空気は、左横吹誘導板15と右横吹誘導板16に沿って流れるので、左横吹誘導板15と右横吹誘導板16で規定した所望の角度で左右に吹き出される。
【0063】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る空気調和装置の概要は、上述した第1実施形態の空気調和装置と同様である。第2実施形態に係る空気調和装置の室内機は、第1実施形態の室内機と異なる空気調和装置の風向装置を備えている。第2実施形態の風向装置が第1実施形態の風向装置と異なる点は、迫出し機構の構成である。図16は、第2実施形態の室内機1Aを右斜め下から見た斜視図である。化粧パネル5は、第1実施形態と第2実施形態で同じであって、吹出口4が底面1eの開口部12aと、その左右に設けられた開口部12b,12cを有している。そのため、水平羽根6Aが本体部6Aaと左側面部6Abと右側面部6Acとを有している。
【0064】
<風向装置の構成>
この水平羽根6Aを駆動するための迫出し機構は、図16に示すように、水平羽根6Aを支持しつつ平行に移動させるための左支持アーム51および右支持アーム52を備えている。左支持アーム51および右支持アーム52は、ラックアンドピニオン機構(図示省略)によって前方に向かって斜め下方に伸びるように移動(迫出し)したり、それとは逆の方向に移動して収納されたりする。これら左支持アーム51および右支持アーム52は、水平羽根6Aと連結される連結部51aが軸支されるのではなく、ボールジョイント(図示省略)で水平羽根6Aに連結されるため、水平羽根6Aを支持した状態での水平羽根6Aの前後への回動だけでなく、水平羽根6Aの左右の傾動にも対応できる。
【0065】
また、迫出し機構は、回動アーム50aと揺動アーム50bを含む回動機構を備えている。回動アーム50aは、ケーシング本体2に連結される一端側が駆動軸(図示省略)により軸支されており、駆動軸の周りに回動可能である。回動アーム50aの他方端側と揺動アーム50bの一端側とは可動軸50cにより連結されており、揺動アーム50bは、可動軸50cの周りで揺動可能である。また、揺動アーム50bの他方端側がボールジョイントの連結部50dにより水平羽根6Aに支持されており、揺動アーム50bは、連結部50dの周りに揺動可能である。連結部50dにより水平羽根6Aが連結されている位置は、左支持アーム51および右支持アーム52を連結している連結部51a、52aを結ぶ軸が先端部6Adの近傍であるのに対し、後端部6Aeの近傍である。左支持アーム51および右支持アーム52の連結部51a,52aを結ぶ軸と揺動アーム50bの連結部50dの位置が水平羽根6Aの前後方向にずれているため、回動アーム50aを回動させることによって水平羽根6Aを回動させることができる。また、揺動アーム50bが揺動することにより、回動アーム50aの一端側の駆動軸と揺動アーム50bの連結部50dとの距離を変化させることができるため、支持アーム51,52の移動に対して回動アーム50aの回動を追随させることにより水平羽根6Aを平行に移動させることも可能になっている。それにより、例えば、本体部6Aaの平坦な上面6Aiが水平になる姿勢を、水平羽根6Aが取りうるものとなっている。
【0066】
以上のように、空気調和装置の風向装置は、水平羽根6Aと垂直羽根9およびそれらを駆動するための迫出し機構および垂直羽根駆動部を備えている。迫出し機構および垂直羽根駆動部の制御については後述する。垂直羽根駆動部は、垂直羽根9を駆動するため、上述の垂直羽根連結棒10を有している。上述の水平羽根6Aと垂直羽根9の吹出し方向の調整により、またクロスフローファン7の風速の調整により、室内の形態や室内の状況に対応した適切な空気調和のための調和空気の気流を発生する。これら水平羽根6Aや垂直羽根9やクロスフローファン7の制御を行うために、図17に示すような制御部20Aを備えている。制御部20Aは、室内機1の各機器を制御するための室内制御部21Aと、室外機の各機器を制御するための室外制御部22とを備えており、室内制御部21Aと室外制御部22との間を信号線23で接続して構成されている。第1実施形態の制御部20と第2実施形態の制御部20Aの異なる点は、室内制御部21と室内制御部21Aの違いだけであるため、以下室内制御部21Aについて説明し、室外制御部22については説明を省く。また、送受信部30、クロスフローファン用モータ33、温度センサ29および表示部35などと室内制御部21Aとの関係は、室内制御部21の場合と同じであるので、説明を省略する。
【0067】
室内制御部21Aには、送受信部30、迫出し機構31A、垂直羽根駆動部32、クロスフローファン用モータ33、温度センサ34および表示部35などが接続されている。室内制御部21Aが制御する迫出し機構31Aは、水平羽根6Aを左または右に傾けるようにするため、左支持アーム駆動部36と右支持アーム駆動部37とを備えている。そして、室内制御部21Aは、左支持アーム駆動部36と右支持アーム駆動部37とを独立して駆動させることができる。室内制御部21Aは、水平羽根6Aを平行移動させるときには、左支持アーム51の移動量と右支持アーム52の移動量とが同じになるように制御し、水平羽根6Aを左右のいずれかに傾けるときには、左支持アーム51の移動量と右支持アーム52の移動量とが異なるように制御する。
【0068】
水平羽根6Aが吹出口4を塞いだ状態から開放して、水平羽根6Aを所望の状態にするには、室内制御部21Aは、まず、左支持アーム駆動部36と右支持アーム駆動部37により左支持アーム51と右支持アーム52を移動して水平羽根6Aを迫出させる。それにより水平羽根6Aによって塞がれていた吹出口4は開放されるが、このとき、回動機構駆動部38は、水平羽根6Aが平行移動するように追従して、回動アーム50aを回動させる。
【0069】
次に、左支持アーム51および右支持アーム52を固定した状態にするとともに、回動機構駆動部38により、回動アーム50aを回動させ、左支持アーム51の連結部51aと右支持アーム52の連結部52aとを結ぶ軸の周りで水平羽根6Aを回動させる。以上のような平行移動と回動移動の2ステップの操作で水平羽根6Aを所望の状態に移動することができる。
【0070】
なお、上述のような2ステップの操作を並行して行わせ、平行移動させつつ回動移動をさせることにより1ステップで水平羽根6Aを所望の状態に移動させるように、室内制御部21Aが制御することもできる。
【0071】
<風向装置の動作>
第2実施形態に係る風向装置の動作において、水平羽根6Aが水平な状態で、吹出口4から調和空気を吹き出させる場合は、上述の第1実施形態と同様に、次の4つの動作を行わせることができる。すなわち、水平羽根6Aで吹出口4を塞いだ状態での左右吹き、あるいは水平羽根6Aが水平状態であるときの冷房運転時の吹出し、暖房運転時の吹出し、および無感気流モード時の吹出しについては、第2実施形態の風向装置も第1実施形態の風向装置と同じである。
【0072】
(無感気流モード時の吹出し)
無感気流モード時に水平羽根を傾けたときの正面状態が図18に示されており、斜め右か方から見た状態が図19に示されている。図18および図19に示されているのは、左支持アーム51を右支持アーム52よりも長く延ばすことにより水平羽根6Aの左側が下がった状態である。また、無感気流モード時であるから、水平羽根6Aの先端部6Adが後端部6Aeよりもやや上がり、水平羽根6Aの上面が吹出口4に対向する状態になっている。つまり、無感気流モードでの水平羽根6Aの姿勢は、左支持アーム51および右支持アーム52を同じ長さに延ばしているときには、水平羽根6Aが吹出口4を閉じている姿勢に対して概ね平行であり、左支持アーム51を長く延ばすことによりその状態からさらに左側が下がった状態になる。
【0073】
このように水平羽根6Aの左側が下がった状態で、垂直羽根9をケーシング本体2の長手方向に対して左に傾けると、水平羽根6Aの左端の左側スリット13に、吹出口4から吹き出された調和空気を案内することができる。このとき水平羽根6Aが左に傾いているため、左側へ誘導し易くなる。また、水平羽根6Aが左に傾いているため、左側スリット13の左横吹誘導板15の角度がさらに下向きに傾くことになるので、ケーシング本体2の左側面1bにさらに近いゾーンに調和空気を流すことができる。
【0074】
一方、水平羽根6Aの左側が下がった状態で、垂直羽根9をケーシング本体2の長手方向に対して右に傾けると、水平羽根6Aの右端の右側スリット14に、吹出口4から吹き出された調和空気を案内することができる。このとき水平羽根6Aが左に傾いているため、右側へ誘導されるときに水平羽根6Aに沿って戻る方向になることから調和空気の気流がさらに弱まるので、調和空気の弱い気流の制御が行い易くなる。また、水平羽根6Aが左に傾いているため、右側スリット14の右横吹誘導板16が下向きに傾く角度が小さくなるので、ケーシング本体2の右側面1cから遠いゾーンに調和空気を流し易くなる。
【0075】
なお、冷房運転時においても、水平羽根6Aを傾けることにより、無感気流モード時の吹出しと同じように、左右方向への気流の流れのバリエーションを加えることができる。冷房運転時における水平羽根6Aについては、無感気流モード時の水平羽根6Aの位置よりもさらに先端部6Adが下がるが、外観は似ているので図示は省略する。水平羽根6Aが傾いている方に吹き出すように垂直羽根9を傾けると、速い気流を吹き出し易くなる。また、左横吹誘導板15または右横吹誘導板16の角度が水平羽根6Aが傾くことによって変化させられるため、左右の吹出し方向を微細に調整できる。一方、水平羽根6Aが傾いている方とは逆の向きに吹出すように垂直羽根9を傾けると、遅い気流を吹出し易くなる。
【0076】
(暖房運転時の吹出し)
暖房運転時に水平羽根を傾けたときの正面状態が図20に示されており、斜め右か方から見た状態が図21に示されている。図20および図21に示されているのは、左支持アーム51を右支持アーム52よりも長く延ばすことにより水平羽根6Aの左側が下がった状態である。また、暖房運転時であるから、水平羽根6Aの先端部6Adが後端部6Aeよりも下がり、水平羽根6Aの上面が垂直の状態よりも後端部6Aeが前方へ出て、上面がやや下方を向いた状態になっている。
【0077】
このように水平羽根6Aの左側が下がった状態で、垂直羽根9をケーシング本体2の長手方向に対して左に傾けると、水平羽根6Aの左端の左側スリット13に、吹出口4から吹き出された調和空気を案内することができる。このとき水平羽根6Aが左に傾いているため、水平羽根6Aが水平のときよりも左側へ強く吹き出すことができる。また、水平羽根6Aが左に傾いているため、左側スリット13の左横吹誘導板15の角度によりケーシング本体2の左側前方に調和空気を流し易くなる。
【0078】
一方、水平羽根6Aの左側が下がった状態で、垂直羽根9をケーシング本体2の長手方向に対して右に傾けると、水平羽根6Aの右端の右側スリット14に、吹出口4から吹き出された調和空気を案内することができる。このとき水平羽根6Aが左に傾いているため、右側へ誘導されるときに水平羽根6Aに調和空気が当たって気流がさらに弱まるので、調和空気の弱い気流の形成が容易になる。また、水平羽根6Aが左に傾いているため、右側スリット14の右横吹誘導板16が下向きに傾く角度が小さくなるので、ケーシング本体2の右側面1cから遠いゾーンに調和空気を流し易くなる。
【0079】
<変形例>
(1)上記第1実施形態および第2実施形態においては、水平羽根6,6Aに左側スリット13および右側スリット14が形成されている場合について説明したが、図22に示すようなスリットがない水平羽根6Bを用いることもできる。図22(a)には水平羽根の正面図が示され、図22(b)には水平羽根の底面図が示されている。水平羽根6Bも、上述の水平羽根6,6Aと同様に、本体部6Ba、左側面部6Bbおよび右側面部6Bcを備えている。図23には、右側面部6Bcの内側を拡大した図を示しており、上面6Biよりも側端部6Bgが高くなっている。このように、水平羽根6Bの右側面部6Bcにおいて右側端部6Bgを高く形成し易くなり、この点については左側面部6Bbにおいても同様である。
【0080】
上面6Biより高く形成された左側面部6Bbおよび右側面部6Bcが左右方向への調和空気の流れを規制することのより、例えば垂直羽根9が真直ぐ前方に向いている場合には水平羽根6Bの前方に流れる調和空気の気流を形成し易くなる。一方、垂直羽根9を左右方向へ傾けて調和空気を左右方向へ誘導するときには、水平よりもやや上方へ向く調和空気の気流を発生させることができる。
【0081】
また、第2実施形態による風向装置に水平羽根6Bを組み合わせたときには、第2実施形態と同様に、水平羽根6Bを左右のいずれかに傾けることにより、垂直羽根9による調和空気の左右方向への気流の強さを微調整することができる。また、左側に流れる調和空気に対しては左側面部6Bbにより水平よりもやや上方へ案内される調和空気の気流の角度を水平羽根6Bの傾きによって調整することができる。同様に、右側に流れる調和空気に対しては右側面部6Bcにより水平よりもやや上方へ案内される調和空気の気流の角度を水平羽根6Bの傾きによって調整することができる。
【0082】
(2)上記第1実施形態および第2実施形態並びに上記変形例(1)においては、左側面部6b,6Ab,6Bbおよび右側面部6c,6Ac,6Bcは、左側スリット13および右側スリット14が形成されている場合、あるいは形成されていない場合について説明した。つまり、水平羽根6,6A,6Bは、左側面部6b,6Ab,6Bbおよび右側面部6c,6Ac,6Bcの状態が固定されており、途中で変更されることはなかった。
【0083】
しかし、左側スリット13および右側スリット14にスライドするシャッターを設けて、手動により開閉を行うようにして、上記第1実施形態および第2実施形態と変形例(1)の状態を切り換えるように構成することもできる。また、手動ではなく、自動的に、左側スリット13および右側スリット14の開閉を行わせるようにすることもできる。
【0084】
さらには、左側スリット13および右側スリット14の開口の大きさをシャッターにより調整するように構成してもよい。それにより、室内の状態や環境に応じてさらに細やかな空気調和を行わせることができる。
【0085】
(3)上記第1実施形態および第2実施形態並びに上記変形例(1)および変形例(2)において、図5に示すように、吹出口4の左側の開口部12bおよび右側の開口部12cは、単に開口が形成されているだけで気流を案内する部材が配置されていない場合について説明した。
【0086】
しかし、吹出口4に続く吹出通路8に図24に示すガイドを設けることもできる。図24(a)および図24(b)はいずれも室内機1Bを右下側から見た状態を示す斜視図である。図24(b)よりも図24(a)の方がさらに右側に移動した位置から見上げている。右側の開口部12cに設けられているガイド60は、水平に配置された略板状の部材であり、吹出口4の長手方向(水平羽根6,6A,6Bの長手方向)に調和空気を案内する。そのため、ガイド60の上方にあるケーシング本体2との間にスリット状の隙間61が形成されている。なお、図24(a)および図24(b)には右側のガイド60しか示されていないが、左側には右側と対称に左側に吹き出すためのガイドが設けられる。左側のガイドについては右側のガイド60と同じ機能であることから、以下の説明では左側のガイドの説明を省く。
【0087】
第1実施形態や第2実施形態の水平羽根6,6Aのように、右側スリット14が形成されている場合には、垂直羽根9を傾けて右に調和空気を吹き出させることによって、水平羽根6,6Aを閉じた状態でガイド60から右側スリット14に調和空気が案内される。そのため、ガイド60と右側スリット14との協働によって右方向への調和空気の吹き出しが容易になる。
【0088】
水平羽根6,6Aによってガイド60の隙間61が塞がれないところまで、右側スリット14がある水平羽根6,6Aを少し開放した場合には、ガイド60の隙間61から水平に右側に調和空気を吹き出させると同時に、右側スリット14からも右方向に調和空気を吹き出させることができる。そのため、より多くの調和空気をガイド60と水平羽根6,6Aとの協働により右方向に吹き出させることができる。
【0089】
また、上記変形例(1)の場合には、水平羽根6Bによってガイド60の隙間61が塞がれないところまで水平羽根6Bを少し開放した場合には、ガイド60の隙間61から水平に右側に調和空気を吹き出させることができる。そのため、水平羽根6Bの右側面部6Bcがあるにも拘らず、調和空気をガイド60により右方向に強く吹き出させることができる。なお、上記変形例(2)でも説明したように、スリットを設けた場合と設けない場合の両方の機能を持たせるためスリットを開閉可能に構成することもでき、またその開閉の程度を切り換えることもできる。
【0090】
また、上記第2実施形態の風向装置を用いて、水平羽根6Bを傾けることができる。この場合に、傾けることによって、例えば、左側面部6Bbで左のガイドを覆うことによって、右側のガイド60から強く、あるいは右側のガイド60からのみ吹き出させることができる。また、例えば、上記第2実施形態の風向装置の水平羽根6Aとガイド60とを組み合わせることで、右方向への調和空気の気流のバリエーションをさらに増やすことができる。
【0091】
(4)上記第1実施形態および第2実施形態並びに上記変形例(1)および変形例(2)において、図5に示すように、吹出口4の左側の開口部12bおよび右側の開口部12cは、化粧パネル5の左側面1bおよび右側面1cを切り欠くほどの大きな開口は形成されていない。そのため、化粧パネル5の意匠がすっきりと洗練され、室内機1,1Aとして美しい外観を呈している。しかし、室内機1,1Aの外観を犠牲にすることになるが、図25に示す水平羽根6Cのように右側面部6Ccおよび左側面部(図示省略)を大きくして、左右の開口を大きくすることもできる。図25(a)は水平羽根6Cを閉じた状態を示し、図25(b)は水平羽根6Cを開いた状態を示している。図25に示す室内機1Cの右側面1cは一部切り欠かれており、吹出口4を構成する右側の開口部12cが大きくなっている。図25には記載されていないが、水平羽根6Cは、第1実施形態や第2実施形態と同様に、本体部および左側面部を備える。
【0092】
<特徴>
(a)
室内機1,1A,1B,1Cに設けられる水平羽根6,6A,6B,6Cは、吹出口4の開閉を行うとともに、吹出口4から吹き出される調和空気の風向きを上下に変更することができる。この水平羽根6,6A,6B,6Cが開閉する吹出口4は、室内機1,1A,1B,1Cの左側面1bの開口部12b(左側面開口部)と、右側面1c,1cの開口部12c(右側面開口部)と、これら開口部12b,12cの間にある開口部12a(前方開口部)とからなる。上記実施形態では、これら3つの開口部12a,12b,12cが繋がって一体的に開口している場合について説明しているが、こられ開口部12a,12b,12cは、例えば桟などによって分離されていてもよい。その場合には、桟などの開口部12a,12b,12cを分離する部材が、閉じられた水平羽根6,6A,6B,6Cにより開口部12a,12b,12cとともに覆われるように構成することがすっきりした美しい外観を構成するためには好ましい。このような桟などで化粧パネル5を繋ぐ場合には、桟などによって化粧パネル5の強度を向上させることができ、化粧パネル5の振動による騒音の発生などの不具合を防止することができる。また、図25には右側面1cを切り欠くほどに大きな開口部12cが示されているが、左右の開口部12b,12cは、必ずしも室内機の側面を切り欠いて形成する必要はない。上述の第1実施形態および第2実施形態では、底面1e,1eを窪ませることにより形成している。
【0093】
水平羽根6,6A,6B,6Cは、本体部6a,6Aa,6Ba、左側面部6b、6Ab,6Bbおよび右側面部6c,6Ac,6Bc,6Ccを有している。吹出口4の閉止時に、本体部6a,6Aa,6Baが開口部12aを覆い、左側面部6b、6Ab,6Bbが開口部12bを覆い、そして右側面部6c,6Ac,6Bc,6Ccが開口部12cを覆う。上下方向の風向の変更には、専ら本体部6a,6Aa,6Baが用いられる。水平羽根6,6A,6B,6Cの本体部6a,6Aa,6Baに調和空気が当たったときに、本体部6a,6Aa,6Baの左右方向には左側面部6b、6Ab,6Bbおよび右側面部6c,6Ac,6Bc,6Ccがあるため、左右方向の気流の流れが生じ難く、前後方向に誘導し易くなる。垂直羽根9により左右方向への調和空気の気流調節が可能である一方、左側面部6b、6Ab,6Bbおよび右側面部6c,6Ac,6Bc,6Ccにより前方への吹出しが容易で、室内の状況や環境状態に適した気流を生じさせ易くなり、快適な空気調和が実現し易くなる。
【0094】
このような水平羽根6,6A,6B,6Cにおいて、本体部6a,6Aa,6Baの上面6i,6Ai,6Biは、フラット(平坦)であって、これら上面6i,6Ai,6Biが水平になる姿勢を取りうる。そのため、左側面部6b、6Ab,6Bbおよび右側面部6c,6Ac,6Bc,6Ccが左右にある本体部6a,6Aa,6Baに水平な姿勢を取らせることで、冷房運転時などに、吹出口4から斜め下方に吹き出される調和空気の気流を水平な方向に変更して、調和空気を比較的遠くまで届かせことができ、部屋全体の空気調和が容易になる。
【0095】
これら水平羽根6,6A,6B,6Cのうちの水平羽根6,6A,6Cは、左側面部6b、6Ab,6Bbに左側スリット13が形成され、右側面部6c,6Ac,6Bc,6Ccに右側スリット14が形成されている。左側面部6b、6Ab,6Bbおよび右側面部6c,6Ac,6Bc,6Ccがあるため左右方向には調和空気は移動し難いが、垂直羽根9で左右方向の流れを強制的に作り出すことによって、左側スリット13および右側スリット14を通して左右方向に調和空気を誘導できる。このように、左側面部6b、6Ab,6Bbおよび右側面部6c,6Ac,6Bc,6Ccがあるにも拘らず、左側スリット13および右側スリット14があることにより水平羽根6,6A,6Cは左右方向への調和空気の流れをつくり易くなっている。左側スリットおよび右側スリットによって左右方向への調和空気の流れをつくり易くなるので、室内機が取り付けられている壁に沿った領域の空気調和を行い易くなる。
【0096】
上述の水平羽根6,6A,6Cが制御部20,20Aにより制御されており、制御部20,20Aは、水平羽根6,6A,6Cによって吹出口4を塞ぐことができる。そして、水平羽根6,6A,6Cが吹出口4を塞いだ状態で、制御部20,20Aはクロスフローファン用モータ33を駆動させることができる。クロスフローファン用モータ33が駆動したとき、左側スリット13および右側スリット14以外の部分は塞がっているので、左側スリット13および右側スリット14からだけ調和空気を吹き出させることができる。しかも他の部分が塞がっているため吹き出される調和空気が左側スリット13および右側スリット14に集中するので強く吹き出させることも可能である。
【0097】
(b)
室内機1,1A,1B,1Cにおいて、水平羽根6,6A,6B,6Cが吹出口4を覆っているけれども水平羽根6,6A,6B,6Cが吹出口4を塞いでいない状態をつくり出すこともできる。つまり、水平羽根6,6A,6B,6Cの周囲と吹出口4との周囲の間に隙間があるような状態である。このような状態でも、隙間を狭くすれば塞いだときに近い状態をつくり出すことができる。隙間がある場合には、隙間からも調和空気を吹き出させることができ、左右方向だけでなく、例えば前方に向かう調和空気の気流も同時につくり出せる。吹出口4の周囲と水平羽根6,6A,6b,6Cとの距離の調節が多様化するので、風向や風速などの制御のバリエーションを増やす効果がある。このように水平羽根6,6A,6B,6Cの周囲と吹出口4との周囲の間に隙間があるような状態をつくり出すことは、水平羽根6,6A,6B,6Cを迫出させることによって行える。そのためには、上記第1実施形態および第2実施形態で説明した迫出し機構のような機構が必要になる。
【0098】
迫出し機構は、図14および図15を用いて説明したアーム40,41,42や左支持アーム51、右支持アーム52および回動機構によって、前後左右の4方向に調和空気を導くことができる状態に本体部6a,6Aa,6Ba、左側面部6b、6Ab,6Bbおよび右側面部6c,6Ac,6Bc,6Ccを迫出させ得る。前方と後方に同じだけ調和空気を吹き出させることはしないが、前後左右の4方向に調和空気を導くことができる状態に迫出し機構によって調整可能であるから、その状態から少し前方に調和空気が流れ易い状態をつくってやる角度に水平羽根6,6A,6B,6Cを調整するのは簡単である。水平羽根6を例に取ると図14および図15のように先端部6dを少し下に傾けるなど微調整をすることにより、調和空気が周囲に分散する状態に近い状態を作り出すと、調和空気の流れを人が感じ難い静粛性の高い状態で空気調和を行うことができる。リモートコントローラなどによって設定された所望の空気調和状態に近い状態になった状況において、静粛性の高い状態で空気調和を行うことができ、空気調和の快適性を向上させることができる。
【0099】
第2実施形態に係る室内機1Aについて図16乃至図21を用いて説明したように、第2実施形態の迫出し機構は、本体部6Aaを左または右に傾けることができる。垂直羽根9で左または右あるいは左右双方に調和空気を強く吹き出させるのに加え、本体部6Aaの傾きにより調和空気が本体部6Aaから受ける反作用の方向が決まるため、垂直羽根9と同じ方向に本体部6Aaを傾けるときには、吹き出される力が強まる。逆に、垂直羽根9によって決まる吹き出し方向と逆に本体部6Aaを傾けると、調和空気が吹き出される力が弱まる。例えば垂直羽根9により右に向けて調和空気が吹き出されるときに本体部6Aaを左が低くなるように左に傾けると、右に向けて吹き出される調和空気の気流が弱くなる。このように、本体部6Aaを傾けられるように構成することで、左右へ吹き出す調和空気の気流の微調整ができ、気流のバリエーションを増やすことができるから、室内の状況に合わせた空気調和を行い易くなる。
【0100】
(c)
図24に示した右側のガイド60および図示を省略した左側のガイドによって、水平羽根6,6A,6B,6Cの左右方向に調和空気を導くことができる。これら右側のガイド60および左側のガイドは、水平羽根6,6A,6B,6Cが閉じたときに塞がれる吹出通路8内(水平羽根に覆われる空間)にあるため、運転停止時などにおいては外観に表れないことから、洗練された外観を得るための設計をし易くしている。
【0101】
そして、水平羽根6,6A,6Cにあっては、右側のガイド60および左側のガイドとの協働によって、右側のガイド60および左側のガイドが設け入られていない場合とは異なり、調和空気の左右方向への吹き出しを効率よく行わせることができる。水平羽根6,6A,6Cが閉じているときには、右側のガイド60から右側スリット14に案内する調和空気の流路を形成でき、左側のガイドから左側スリット13に案内する調和空気の流路を形成できる。水平羽根6,6A,6B,6Cを開放したときには、水平羽根6,6A,6B,6Cに案内されて左右方向に導かれる調和空気の気流とともに、右側のガイド60および左側のガイドによって形成される気流によって左右に調和空気が吹き出される。それにより、右側のガイド60および左側のガイドが設け入られていない場合に比べ、調和空気の左右方向への吹き出しが行い易くなる。
【符号の説明】
【0102】
1,1A,1B,1C 室内機
4 吹出口
6,6A,6B,6C 水平羽根
6a、6Aa,6Ba 本体部
6b,6Ab,6Bb 左側面部
6c、6Ac,6Bc,6Cc 右側面部
13 右側スリット
14 左側スリット
20,20A 制御部
31,31A 迫出し機構
60 ガイド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2006−2984号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左側面(1b)および右側面(1c)を有し、前記左側面の側に開口された左側面開口部(12b)および前記右側面の側に開口された右側面開口部(12c)並びに前記左側面開口部と前記右側面開口部との間にある前方開口部(12a)を持つ吹出口が形成されている空気調和装置の室内機(1,1A,1B,1C)に設けられ、前記吹出口(4)の開閉を行うとともに前記吹出口から吹き出される調和空気の風向きを上下に変更可能な水平羽根(6,6A,6B,6C)であって、
前記吹出口の閉止時に前記前方開口部を覆うために設けられ、前記吹出口の開放時に調和空気の風向を上下に変更する本体部(6a,6Aa,6Ba)と、
前記吹出口の閉止時に前記左側面開口部を覆うため前記本体部の左端に設けられた左側面部(6b,6Ab,6Bb)と、
前記吹出口の閉止時に前記右側面開口部を覆うため前記本体部の右端に設けられた右側面部(6c,6Ac,6Bc,6Cc)と
を備える、水平羽根。
【請求項2】
前記本体部は、略平坦な上面(6i,6Ai,6Bi)を有し、前記上面が略水平になる姿勢を取りうる、請求項1に記載の水平羽根。
【請求項3】
前記左側面部は、左方向に調和空気を誘導するための左側スリット(13)を持ち、
前記右側面部は、右方向に調和空気を誘導するための右側スリット(14)を持つ、請求項1または請求項2に記載の水平羽根。
【請求項4】
左側面(1b)および右側面(1c)を有し、前記左側面の側に開口された左側面開口部(12b)および前記右側面の側に開口された右側面開口部(12c)並びに前記左側面開口部と前記右側面開口部との間にある前方開口部(12a)を持つ吹出口が形成されているケーシング本体(2)と、
請求項3に記載の水平羽根(6,6A,6B,6C)と、
前記水平羽根が前記吹出口を覆った状態で、前記左側スリットから左方向に調和空気を吹出し、前記右側スリットから右方向に調和空気を吹き出すように制御し得る制御部(20,20A)と
を備える、空気調和装置。
【請求項5】
左側面(1b)および右側面(1c)を有し、前記左側面の側に開口された左側面開口部(12b)および前記右側面の側に開口された右側面開口部(12c)並びに前記左側面開口部と前記右側面開口部との間にある前方開口部(12a)を持つ吹出口が形成されているケーシング本体(2)と、
請求項1から3のいずれかに記載の水平羽根(6,6A,6B,6C)と、
前記本体部、前記左側面部および前記右側面部が前記吹出口の周囲に接しないように迫出させることが可能な迫出し機構(31,31A)と
を備える、空気調和装置。
【請求項6】
前記迫出し機構は、前後左右の4方向に調和空気を導くことができる状態に前記本体部、前記左側面部および前記右側面部を迫出させ得る、請求項5に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記迫出し機構(31A)は、前記本体部を左または右に傾け得る、請求項5または請求項6に記載の空気調和装置。
【請求項8】
左側面(1b)および右側面(1c)を有し、前記左側面の側に開口された左側面開口部(12b)および前記右側面の側に開口された右側面開口部(12c)並びに前記左側面開口部と前記右側面開口部との間にある前方開口部(12a)を持つ吹出口が形成されているケーシング本体(2)と、
請求項1から3のいずれかに記載の水平羽根(6,6A,6B,6C)と、
前記水平羽根が前記吹出口を覆った状態で前記水平羽根に覆われる空間側に設けられ、前記吹出口から吹き出される調和空気を左右方向のうちの少なくとも一方に導くガイド(60)と
を備える、空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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