説明

水底に埋設された鋼管類の撤去方法および切断装置

【課題】水上交通に対する障害を最小限にするとともに、効率的に作業を行なうことができる水底に埋設された鋼管類の撤去方法および切断装置を提供する。
【解決手段】切断モジュール2と移動モジュール11とを連結した切断装置1をコンクリートライニング鋼管20に内挿させ、切断モジュール2の回転刃3によって管内側からコンクリートライニング22を残して鋼管21の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、移動モジュール11によって切断モジュール2を順次、管長手方向に所定長さをあけた位置に移動させて順次行ない、この切断作業により所定長さに分断された鋼管21の部分に相当するコンクリートライニング鋼管20の部分を吊上げることにより、吊り上げる部分の切断作業を行なった位置周辺のコンクリートライニング22を破壊して、そのまま水上に引き揚げて撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底に埋設された鋼管類の撤去方法および切断装置に関し、さらに詳しくは、水上交通に対する障害を最小限にするとともに、効率的に作業を行なうことができる水底に埋設された鋼管類の撤去方法および切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海などの水底には、原油をタンカーから陸上に輸送するための輸送管が埋設されている。この輸送管には、鋼管や鋼管の外周面にコンクリートをライニングしたコンクリートライニング鋼管等の鋼管類が用いられている。
【0003】
従来、このような水底に埋設されているコンクリートライニング鋼管を撤去する場合には、まず、コンクリートライニング鋼管の周囲の土砂を、高圧ジェット水や浚渫グラブバケット等を用いて除去する。次いで、土砂を除去した位置で、潜水士等がコンクリートライニング鋼管を管外側から切断することにより所定長さに分断する。次いで、所定長さに分断したコンクリートライニング鋼管を、作業船に搭載したクレーンによって順次、水上に吊上げて撤去していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記の方法では、高圧ジェット水を発生させる装置または浚渫グラブバケット、コンクリートライニング鋼管を切断するための設備を備えた作業船をコンクリートライニング鋼管が埋設されている水域に長期間(長時間)停泊させる必要がある。そのため、作業水域に留まる作業船が、水上交通に対する障害になるという問題があった。特に、船舶の往来の多い水域や狭い水域では、この問題が顕著になる。また、コンクリートライニング鋼管の周囲の土砂を除去する作業やコンクリートライニング鋼管を切断する作業は、水域での波、風、潮流等の環境条件に影響を受けて作業可能な時間が制約され、また、夜間には基本的に作業を行なうことができない。そのため、従来の方法では作業効率を向上させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−51592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水上交通に対する障害を最小限にするとともに、効率的に作業を行なうことができる水底に埋設された鋼管類の撤去方法および切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の水底に埋設された鋼管類の撤去方法は、鋼管の外周面が保護材で被覆された水底に埋設されている保護材被覆鋼管を、その鋼管に内挿した切断装置によって、管内側から鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、順次、管長手方向に所定長さをあけた位置で行ない、前記切断作業により所定長さで分断されたそれぞれの鋼管の部分に相当する保護材被覆鋼管の部分を吊上げる吊上げ作業を、順次行ない、この吊上げ作業の際に、吊上げる保護材被覆鋼管の部分の前記切断作業を行なった位置周辺の保護材を破壊して、そのまま、この保護材被覆鋼管の部分を水上に引き揚げて撤去することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の別の方法は、水底に埋設されている鋼管を、その鋼管に内挿した切断装置によって、管内側から鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、順次、管長手方向に所定長さをあけた位置で行ない、前記切断作業により所定長さで分断されたそれぞれの鋼管の部分を吊上げる吊上げ作業を、順次行ない、それぞれの鋼管の部分を水上に引き揚げて撤去することを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、前記切断作業が管長手方向のそれぞれの位置ですべて終わった後に、前記切断装置をその鋼管の外に移動させ、次いで、前記吊上げ作業を行なうこともできる。或いは、前記切断作業を、管長手方向一方端側から他方端側に、順次行ないつつ、前記切断作業を既に行なった部分に対して前記吊上げ作業を行なうこともできる。
【0010】
本発明の水底に埋設されている鋼管類の切断装置は、水底に埋設されている鋼管または鋼管の外周面が保護材で被覆された水底に埋設されている保護材被覆鋼管を、所定長さごとに吊上げることにより水上に引き揚げて撤去するに際して、前記鋼管または前記保護材被覆鋼管に内挿される切断装置であって、前記鋼管または前記保護材被覆鋼管の鋼管の周壁を切断する切断手段と、この切断手段を管長手方向に移動させる移動手段とを有し、管内側からその鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断するように前記切断手段を駆動させる駆動部を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水底に埋設されている鋼管類の撤去方法によれば、鋼管または保護材被覆鋼管に内挿した切断装置によって、管内側から鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、順次、管長手方向に所定長さをあけた位置で行なうので、この切断作業の際には、この鋼管類が埋設されている水域に作業船を停泊させる必要がない。そのため、水上交通に対して障害になることがない。また、この切断作業は、この水域の環境条件(波、風、潮流等)に影響を受けることなく行なうことができ、昼夜を問わず行なうことができる。
【0012】
そして、前記切断作業によって所定長さに分断されたそれぞれの鋼管の部分(分断されたそれぞれの鋼管の部分に相当する保護材被覆鋼管の部分)を吊上げる吊上げ作業を、順次行なって水上に引き揚げて撤去する。そのため、この水域の水上交通に対する障害を最小限にすることができる。また、従来に比して、時間的に制約を受ける作業が少なくなるので、効率よく鋼管類の撤去作業を行なうことができる。
【0013】
また、本発明の水底に埋設されている鋼管類の切断装置によれば、水底に埋設されている鋼管または鋼管の外周面が保護材で被覆された水底に埋設されている保護材被覆鋼管を、所定長さごとに吊上げることにより水上に引き揚げて撤去するに際して、前記鋼管類に内挿されて、その鋼管の周壁を切断する切断手段と、この切断手段を管長手方向に移動させる移動手段とを有し、管内側からその鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断するように前記切断手段を駆動させる駆動部を備えているので、管内側から鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、順次、管長手方向に所定長さをあけた位置で行なうことができる。この切断作業の際には、この鋼管類が埋設されている水域に作業船を停泊させる必要がない。そのため、水上交通に対して障害になることがない。また、この切断作業は、この水域の環境条件(波、風、潮流等)に影響を受けることなく行なうことができ、昼夜を問わず行なうことができる。そのため、時間的に制約を受けることなく効率よく作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の鋼管類の切断装置を例示する側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】圧着固定ローラを鋼管の周壁内面に圧着している状態を例示する図1のC−C断面相当図である。
【図6】回転刃により鋼管の周壁を切断している状態を例示する図1のA−A断面相当図である。
【図7】水底に埋設されているコンクリートライニング鋼管を例示する説明図である。
【図8】所定長さに分断された鋼管の部分に相当するコンクリートライニング鋼管の部分を吊上げる状態を例示する説明図である。
【図9】コンクリートライニングを破壊して所定長さのコンクリートライニング鋼管を吊上げている状態を例示する説明図である。
【図10】所定長さに分断された鋼管の部分を吊上げる状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水底に埋設されている鋼管類の撤去方法および切断装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1に例示するように、本発明の水底に埋設されている鋼管類の切断装置1(以下、切断装置1という)は、切断手段となる切断モジュール2と移動手段となる移動モジュール11を備えている。切断モジュール2と移動モジュール11とは、ユニバーサルジョイントを介在させた回転駆動軸5によって着脱可能に連結されている。切断モジュール2は、移動ローラ6が取付けられたベース10を有し、前方および後方には固定機構7が配置されている。切断モジュール2全体は、回転駆動軸5の駆動によって、回転駆動軸5を中心にして回転する構造になっている。
【0017】
図2、図3に例示するように、ベース10に設けられた回転刃切換え機構4は、中心軸4bに固定されて中心軸4bを中心に回転する切換え回転板4aと回転板駆動部4cとを有している。複数の回転刃3は、フリーに回転できるように支軸3aに軸支されて、切換え回転板4aに取り付けられている。
【0018】
図3に例示するように、回転板駆動部4cはラチェット機構になっており、リンク部材4hを介して連結された作動シリンダ4dと回転駆動爪4eとを有している。回転駆動爪4eは中心軸4bに固定された歯車4fを回転させる。歯車4fには逆回転を防止するストッパ4gが設けられていて、切換え回転板4aは、所定の回転位置で固定できる構造になっている。
【0019】
作動シリンダ4dのロッドを伸長移動させることにより、回転駆動爪4eが歯車4fを1歯分回転させ、これに伴い中心軸4bおよび切換え回転板4aが回転する。このような回転板駆動部4cの動作により、切換え回転板4aに取付けられている回転刃3を1枚ずつ順次、使用位置に移動させて配置できるようになっている。
【0020】
図4に例示するように、固定機構7は、ベース10に取付けられた油圧シリンダ9aと一対のアーム8とで構成されている。一対のアーム8は、先端に圧着固定ローラ9bを有し、リンク部材を介してベース10およびシリンダロッドに接続されている。一対のアーム8の数は特に限定されるものではなく、切断モジュール2を鋼管21の管長手方向に固定しつつ管円周方向に回転移動させることができればよい。
【0021】
図4に例示するように油圧シリンダ9aのシリンダロッドが後退した状態では、それぞれのアーム8はベース10に対して格納されるような状態になっている。図5に例示するように油圧シリンダ9aのシリンダロッドが前進すると、それぞれのアーム8はベース10の半径方向外側に向かって移動する。このように固定機構7は、油圧シリンダ9aの作動によってそれぞれのアーム8を、鋼管21の半径方向に縮径および拡径させる構造になっている。
【0022】
移動モジュール11は、水密構造のケーシング17を有し、ケーシング17の内部には、回転駆動軸5を回転させる駆動源(駆動モータ)等が設置されている。ケーシング17の外面には、駆動ローラ13aと従動ローラ13bとの間に架け回された駆動走行ベルト12が設けられている。ケーシング17の外面には、さらに、ケーシング17の半径方向外側に突出移動する圧着移動ローラ14およびアウトリガー15が設けられている。駆動走行ベルト12の駆動によって、移動モジュール11に連結された切断モジュール2は、管長手方向に前進移動および後進移動することができる。
【0023】
ケーシング17には、コンクリートライニング鋼管20(以下、ライニング鋼管20という)の外から延設された電力ケーブル16aや接続ワイヤ16bが接続されている。電力ケーブル16aを通じて切断装置1に必要な電力が供給される。回転駆動軸5および回転駆動軸5を回転させる駆動源が、管内側から鋼管21の周壁を周方向全周にわたって切断するように切断モジュール2を駆動させる駆動部となる。
【0024】
次いで、本発明によって水底に埋設されているライニング鋼管20を撤去する手順を説明する。
【0025】
図7に例示するように、原油等を輸送するライニング鋼管20が海底の土砂Gの中に埋設されている。ライニング鋼管20の内径は、例えば、1m〜2m程度である。
【0026】
まず、図1に例示するようにライニング鋼管20に内挿した切断装置1を、移動モジュール11によって、ライニング鋼管20の管長手方向の設定された所定位置まで移動させる。切断装置1を移動させる際には、移動モジュール11の圧着移動ローラ14を鋼管21の周壁内面に当接させつつ、駆動走行ベルト12を駆動させる。切断モジュール2では、固定機構7のそれぞれのアーム8を格納状態にすることにより、圧着固定ローラ9bを鋼管21の周壁内面に非接触状態にして、移動ローラ6のみを鋼管21の周壁内面に当接させた状態にする。
【0027】
移動モジュール11のケーシング17は、水密構造になっていて内部に気体が充填されているので、ライニング鋼管20の内部に水が浸入した場合には浮力が生じる。この浮力によって、駆動走行ベルト12による駆動力が得られにくくなるが、駆動走行ベルト12と対向する位置に設けた圧着移動ローラ14を鋼管21の周壁内面に圧着させることにより、駆動走行ベルト12を鋼管21の周壁内面に圧着させるので、確実に駆動走行ベルト12による駆動力を得ることが可能になっている。
【0028】
切断モジュール2を管長手方向に移動させる移動手段は、上記のような移動モジュール11に限らず、他の構成を採用することもできる。例えば、切断モジュール2の前後端部にそれぞれワイヤ等の紐状体を接続する。そして、切断モジュール2をコンクリートライニング鋼管20に内挿した際に、一方の紐状体をコンクリートライニング鋼管20の長手方向一方端部の外まで延設し、他方の紐状体をコンクリートライニング鋼管20の長手方向他方端部の外まで延設する。そして、これら紐状体の一方をコンクリートライニング鋼管20の外から引張ることにより、切断モジュール2を任意の位置に移動させることができる。
【0029】
切断装置1を所定位置に移動させた後は、図5に例示するように油圧シリンダ9aのシリンダロッドを前進させることにより、それぞれの固定機構7のそれぞれのアーム8を格納状態からベース10の半径方向外側に拡径移動させて、圧着固定ローラ9bを鋼管21の周壁内面に圧着させる。これにより切断モジュール2を、ライニング鋼管20の管長手方向の所定位置で管長手方向に固定する。また、移動モジュール11のアウトリガー15をケーシング17の半径方向外側に突出移動させて、その先端を鋼管21の周壁内面に圧着する。これにより移動モジュール11をライニング鋼管20の管長手方向の設定された所定位置に固定する。
【0030】
アーム8をベース10の半径方向外側に拡径移動させる油圧シリンダ9aのシリンダロッドの前進移動により、移動モジュール11のベース10は、ライニング鋼管20の周壁内面に近接移動する。このベース10の移動に伴なって、切断モジュール2全体もライニング鋼管20の周壁内面に近接移動する。
【0031】
この切断モジュール2全体の移動によって、図6に例示するように複数の回転刃3のうち、1枚の回転刃3のみが鋼管21の周壁内面に圧着する状態にする。そして、回転駆動軸5の駆動によって、回転駆動軸5を中心にして切断モジュール2全体を回転させる。これにより、1枚の回転刃3が、その刃先をライニング鋼管20の周壁内面に圧着させつつ支軸3aを中心にして回転する。
【0032】
このようにして回転刃3の刃先を、鋼管21の周壁に圧着させつつ、この回転刃3を周方向に移動させることにより、鋼管21の管内側からコンクリートライニング22を残して鋼管21の周壁を周方向全周に渡って切断する。コンクリートライニング22を切断してもよいが、少なくとも、鋼管21の周壁については、周方向全周に渡って切断する。切断モジュール2は、鋼管21の周壁内面に圧着固定ローラ9bを圧着させているので、鋼管21の周壁内面に沿って管周方向に円滑に回転移動する。
【0033】
1つの所定位置で鋼管21の切断作業が終わると、図4に例示するように、それぞれのアーム8を格納状態に戻すとともに、突出移動させたアウトリガー15を元の位置に戻す。そして、移動モジュール11によって切断装置1を管長手方向に所定長さあけた位置に移動させる。新たに移動した位置においても、既述したように鋼管21の切断作業を行なう。切断装置1を移動させる所定長さは、例えば、10m〜30m程度である。
【0034】
このように、順次、管長手方向の所定長さをあけた位置で、切断装置1によって既述した鋼管21の切断作業を行なうことにより、鋼管21を所定長さに分断する。例えば、ライニング鋼管20の管長手方向一方端側(海側)から他方端側(陸側)に順次、既述した鋼管21の切断作業を行なう。そして、管長手方向の予め設定されたそれぞれの所定位置での鋼管21の切断作業を完了させる。その後、移動モジュール11によって切断装置1をライニング鋼管20の他方端側に向かって移動させてライニング鋼管20の外に移動させる。
【0035】
鋼管21の切断作業によって、回転刃3は消耗するので、切換え回転板4aを回転させて消耗した回転刃3を順次、新たな回転刃3に切り換えて鋼管21の切断作業を行なう。切断モジュール2は、複数の回転刃3を有しているので、回転刃3の交換のために、その都度、切断装置1をライニング鋼管20から外へ移動させる必要がない。
【0036】
回転刃3による鋼管21の切断状態は、回転刃3を回転させる回転駆動軸5の駆動モータの電流値をモニタリングすることによって把握することができる。例えば、モニタリングしている電流値が、鋼管21を切断している際の一定範囲の状態から外れた場合に、回転刃3の刃先が鋼管21の周壁を貫通してコンクリートライニング22を切断していると判断することができる。また、例えば、モニタリングしている電流値が著しく小さくなった時は、回転刃3が破損したと判断することもできる。
【0037】
次いで、図8に例示するように、鋼管21の切断作業を行なった位置に相当する範囲の土砂Gを除去する。ライニング鋼管20が埋設されている水域には、クレーン19を備えた作業船18を移動させる。そして、土砂Gを除去して露出したライニング鋼管20に吊りワイヤ19aを係止する。図8および図9では、鋼管21の切断作業を行なった位置を点線によって示している。したがって、隣り合う点線と点線との間が、所定長さに分断された鋼管の部分21aに相当するライニング鋼管の部分20a(以下、分断相当部分20aという)となる。吊りワイヤ19aを分断相当部分20aに係止する方法は特に限定されないが、実施形態では、ライニング鋼管20の外周面に固定した部材等に吊りワイヤ19aを係止している。
【0038】
次いで、図9に例示するように、分断相当部分20aを吊りワイヤ19aを介してクレーン19によって吊上げる。鋼管21の周壁は、既に周方向全周に渡って切断されているので、吊りワイヤ19aによって吊上げることにより、吊上げる分断相当部分20aの鋼管21の切断作業を行なった位置周辺のコンクリートライニング22は、特別な切断作業を行なうことなく破壊される。
【0039】
このようにして分断相当部分20aを吊りワイヤ19aによってそのまま水上に引き揚げて撤去する。残りの分断相当部分20aについても、この吊上げ作業を順次行なって、対象となるライニング鋼管20を撤去する。
【0040】
このように本発明によれば、鋼管21の切断作業の際には、水上交通の障害となる作業船18が不要になる。そのため、この水域の水上交通に対する障害を最小限にすることができる。
【0041】
また、鋼管21の切断作業は、この水域の環境条件(波、風、潮流等)に影響を受けることなく行なうことができ、昼夜を問わず行なうことができる。これにより、作業が時間的に大きな制約を受けることがなくなり、作業の時間的な自由度が増大して効率よくライニング鋼管20の撤去作業を行なうことができる。
【0042】
上記実施形態では、鋼管21の外周面に保護材を被覆した保護材被覆鋼管としてコンクリートライニング鋼管20を例にしたが、本発明は、その他の保護材被覆鋼管に適用することができる。保護材被覆鋼管としては、保護材をアスファルトにしたアスファルト被覆鋼管、合成樹脂を保護材とした樹脂被覆鋼管等を例示できる。
【0043】
水底に埋設されているライニング鋼管20は、以下の手順によっても撤去することができる。
【0044】
まず、先の実施形態と同様に、切断装置1をライニング鋼管20に内挿して、ライニング鋼管20の管長手方向の設定された所定位置で、管内側からコンクリートライニング22を残して鋼管21の周壁を周方向全周にわたって切断する。ここで、予め設定された管長手方向のすべての所定位置での鋼管21の切断作業がすべて終わる前に、既に切断作業を行なった部分に対して、上記した分断相当部分20aの吊りワイヤ19aによる吊上げ作業を行なう。
【0045】
例えば、ライニング鋼管20の管長手方向一方端側(海側)から他方端側(陸側)に順次、鋼管21の切断作業を行ないつつ、ライニング鋼管20の一方端側から他方端側の順に、既に所定長さに分断された分断相当部分20aの吊上げ作業を行なって水上に引き揚げて撤去する。吊上げる分断相当部分20aは、鋼管21の切断作業に影響が生じないように、切断作業を行なっている位置から2〜3部分以上離れたものにするとよい。
【0046】
この手順によれば、鋼管21の切断作業と、分断相当部分20aの吊上げ作業とを並行して行なうことができるので、先の実施形態に比べて作業に必要な時間を短縮することが可能になる。
【0047】
本発明は、コンクリートライニング鋼管20のような保護材被覆鋼管に限らず、保護材が被覆されていない単なる鋼管21に適用することもできる。水底に埋設されている鋼管21を撤去する手順は、上記した実施形態と同様であり、コンクリートライニング鋼管20のコンクリートライニング22がないことが異なる点である。
【0048】
したがって、水底に埋設されている鋼管21を、鋼管21に内挿した切断装置1によって、管内側から鋼管21の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、順次、管長手方向に所定長さをあけた位置で行なう。次いで、図10に例示するように、鋼管21の切断作業により所定長さで分断された鋼管の部分21aを吊上げる吊上げ作業を、順次行なうことによって水上に引き揚げて撤去する。
【符号の説明】
【0049】
1 切断装置
2 切断モジュール(切断手段)
3 回転刃
3a 支軸
4 回転刃切換え機構
4a 切換え回転板
4b 中心軸
4c 回転板駆動部
4d 作動シリンダ
4e 回転駆動爪
4f 歯車
4g ストッパ
4h リンク部材
5 回転駆動軸
6 移動ローラ
7 固定機構
8 アーム
9a 油圧シリンダ
9b 圧着固定ローラ
10 ベース
11 移動モジュール(移動手段)
12 駆動走行ベルト
13a 駆動ローラ
13b 従動ローラ
14 圧着移動ローラ
15 アウトリガー
16a 電力ケーブル
16b 接続ワイヤ
17 ケーシング
18 作業船
19 クレーン
19a 吊りワイヤ
20 ライニング鋼管
20a 分断相当部分
21 鋼管
21a 所定長さに分断された鋼管の部分
22 コンクリートライニング
G 土砂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の外周面が保護材で被覆された水底に埋設されている保護材被覆鋼管を、その鋼管に内挿した切断装置によって、管内側から鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、順次、管長手方向に所定長さをあけた位置で行ない、前記切断作業により所定長さで分断されたそれぞれの鋼管の部分に相当する保護材被覆鋼管の部分を吊上げる吊上げ作業を、順次行ない、この吊上げ作業の際に、吊上げる保護材被覆鋼管の部分の前記切断作業を行なった位置周辺の保護材を破壊して、そのまま、この保護材被覆鋼管の部分を水上に引き揚げて撤去する水底に埋設されている鋼管類の撤去方法。
【請求項2】
水底に埋設されている鋼管を、その鋼管に内挿した切断装置によって、管内側から鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、順次、管長手方向に所定長さをあけた位置で行ない、前記切断作業により所定長さで分断されたそれぞれの鋼管の部分を吊上げる吊上げ作業を、順次行ない、それぞれの鋼管の部分を水上に引き揚げて撤去する水底に埋設されている鋼管類の撤去方法。
【請求項3】
前記切断作業が管長手方向のそれぞれの位置ですべて終わった後に、前記切断装置をその鋼管の外に移動させ、次いで、前記吊上げ作業を行なう請求項1または2に記載の水底に埋設されている鋼管類の撤去方法。
【請求項4】
前記切断作業を、管長手方向一方端側から他方端側に、順次行ないつつ、前記切断作業を既に行なった部分に対して前記吊上げ作業を行なう請求項1または2に記載の水底に埋設されている鋼管類の撤去方法。
【請求項5】
水底に埋設されている鋼管または鋼管の外周面が保護材で被覆された水底に埋設されている保護材被覆鋼管を、所定長さごとに吊上げることにより水上に引き揚げて撤去するに際して、前記鋼管または前記保護材被覆鋼管に内挿される切断装置であって、前記鋼管または前記保護材被覆鋼管の鋼管の周壁を切断する切断手段と、この切断手段を管長手方向に移動させる移動手段とを有し、管内側からその鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断するように前記切断手段を駆動させる駆動部を備えた水底に埋設されている鋼管類の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−261493(P2010−261493A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111911(P2009−111911)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(391015236)大裕株式会社 (11)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)