説明

水性ゲル芳香剤の製造方法

【課題】外観が白濁した香りの持続性に優れる水性ゲル状芳香剤が簡便に得られる製造方法を提供する。
【解決手段】(a)ClogPが0.9〜1.8の特定の有機溶剤、(b)特定のアミンオキシド型化合物、(c)香料及び水を混合し、20℃において光学的に異方性を有する香料含有液状混合物(A)を得る工程1と、前記工程1で得られた香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂とを接触させ、香料含有液状混合物(A)を吸水性樹脂に含浸させる工程2とを含む水性ゲル芳香剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ゲル芳香剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、香料成分や消臭成分を含有する球状やブロック状の吸水性樹脂を用いたゲル状芳香消臭剤が、審美的観点あるいは空気との接触面積が大きく、芳香成分の揮散が促進され香り立ちに優れるという利点があることから関心が高まっている。しかしながら、逆にこの揮散促進は芳香持続性という観点からは好ましくなく、香り立ちに優れ、且つ芳香持続性に満足できるゲル状芳香剤及び/又は消臭剤が強く求められている。
【0003】
特許文献1には、吸水性樹脂にアルコール及び水を含む混合溶液を吸収させてなる透明性ゲルの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には香料を含有し、含窒素界面活性剤とHLBが8〜18の非イオン界面活性剤を特定の比率で含有する香料含有溶液を、吸水性樹脂に接触させて、香料含有溶液を吸水性樹脂に含浸させる工程を有する、香料を吸水性樹脂に担持させた芳香剤の製造方法が開示されている。特許文献2には、白濁したゲル芳香剤が、香りの持続性の点で好ましいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−183884号公報
【特許文献2】特開2010−264098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には吸水性樹脂に香料、アルコール及び水を含む混合溶液を吸収させて、美観に優れ、特に室内用芳香剤として好適に用いられる、透明性ゲルを製造する方法が開示されている。また、ノニオン系界面活性剤を適宜使用することで、透明性を向上できることが開示されている。しかしながら、香りの持続性については更なる向上が望まれる。また、特許文献2には、含浸後の樹脂が白濁した状態であるものがより優れた芳香持続性を有することが記載されている。特許文献1において、吸水性樹脂に香料溶液を吸液させるためには、均一な溶液であることが重要であった。また、香料溶液を吸水性樹脂に接触させて、香りの持続性に優れる白濁したゲルの製造を試みた場合に、香料溶液を吸水性樹脂に含浸させた、ゲル芳香剤は必ずしも、香りの持続性に優れる白濁したゲルとはならない場合があった。また、白濁したゲルとなっても香りの持続性に劣る場合があり、製造されたゲル芳香剤の外観と香りの持続性の両立の予測に課題があった。特許文献1は、外観が白濁し、且つ香りの持続性に優れた水性ゲル状芳香剤を確実に製造できる方法ではない。
【0007】
本発明の課題は、外観が白濁した香りの持続性に優れる水性ゲル状芳香剤が簡便且つ確実に得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記工程1及び工程2を含む水性ゲル芳香剤の製造方法に関する。
工程1:下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を混合し、20℃において光学的に異方性を有する香料含有液状混合物(A)を得る工程。
工程2:前記工程1で得られた香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂とを接触させ、香料含有液状混合物(A)を(d)成分に含浸させる工程。
(a)成分:下記一般式(1)で表され、且つClogPが0.9〜1.8の有機溶剤
1−O−(R2−O)n−H (1)
〔式中、R1は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nは0〜5の数を示す。〕
(b)成分:下記一般式(2)で表される化合物
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中、R3は炭素数7〜16の炭化水素基であり、R4、R5はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。nは1〜3の数であり、mは0又は1である。〕
(c)成分:香料
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外観が白濁した香りの持続性に優れる水性ゲル芳香剤が簡便且つ確実に得られる製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔(a)成分〕
(a)成分は、下記一般式(1)で表され、且つClogPが0.9〜1.8の有機溶剤である。
1−O−(R2−O)n−H (1)
〔式中、R1は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nは0〜5の数を示す。〕
【0013】
1基、R2基及びnは、上記一般式のClogPが0.9〜1.8になるように、適宜選択することが出来る。一般的にR1基の炭素数が大きいとClogPは高くなることが知られている。R2基において、エチレン基よりもプロピレン基の方がClogPが高くなることが知られている。nは大きい方がClogPは低下することが知られている。
【0014】
1は炭素数1〜8の炭化水素基であり、下記の香料含有液状混合物(A)が光学的に異方性を得やすい点で、炭素数は2〜7が好ましい、より具体的には、エチル基、プロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基が好ましい。
【0015】
2は炭素数2〜4のアルキレン基であり、下記の香料含有液状混合物(A)が光学的に異方性を得やすい点で、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる基が好ましい。プロピレン基としては1,2−プロピレン基が好ましい。
【0016】
nは0〜5の数であり、下記の香料含有液状混合物(A)が光学的に異方性を得やすい点で0〜4が好ましい。
【0017】
ここで、logPとは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。
【0018】
しかしながら、本発明においては実測のlogP値の代わりに、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP"で計算した値を用いる。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと伴に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)"の値を出力する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds.,p.295, Pergamon Press, 1990)。本発明では、プログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いる。
【0019】
香料含有液状混合物(A)が光学的に異方性を得やすい点で、(a)成分のClogPは1〜1.6が好ましく、より好ましくは1.1〜1.5である。
【0020】
(a)成分の具体的化合物として好ましくは、ジエチレングリコール−モノn−ブチルエーテル(0.91)、プロピレングリコール−i−ブチルエーテル(1.0)、2−ペンタノール(1.1)、3−ペンタノール(1.1)、n−ヘキシルグリセリルエーテル(1.1)、ベンジルアルコール(1.1)、3−メチルブタノール(1.2)、2−フェノキシエタノール(1.2)、プロピレングリコール−モノn−ブチルエーテル(1.2)、2−ベンジルオキシエタノール(1.2)、2−エチルヘキシルジグリセリルエーテル(1.2)、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル(1.3)、1−ペンタノール(1.4)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(1.5)、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル(1.5)が好ましい。( )内の数字はClogPの値である。
【0021】
〔(b)成分〕
(b)成分は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0022】
【化2】

【0023】
〔式中、R3は炭素数7〜16の炭化水素基であり、R4、R5はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。nは1〜3の数であり、mは0又は1である。〕
【0024】
一般式(2)中、mが1の場合には、R3は、炭素数7〜15の炭化水素基が好ましい。香料含有液状混合物(A)の外観が光学的に異方性を得やすい点、及び香りの持続性の点から、好ましくは炭素数11〜15の炭化水素基、より好ましくは炭素数11〜13の炭化水素基、より具体的にはヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基及びペンタデシル基から選ばれる基であり、好ましくはウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基及びペンタデシル基から選ばれる基である。より好ましくはウンデシル基、ドデシル基及びトリデシル基から選ばれる基である。最も好ましくはウンデシル基及びトリデシル基から選ばれる基である。nは1〜3の数であり、好ましくは3である。mが1の場合、一般式(2)中のR4、R5はメチル基又はエチル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。
【0025】
一般式(2)中、mが0の場合には、R3は、炭素数8〜16の炭化水素基が好ましい。香料含有液状混合物(A)の外観が光学的に異方性を得やすい点、及び香りの持続性の点から、好ましくは炭素数10〜16の炭化水素基、より好ましくは炭素数12〜14のアルキル基が好ましい。より具体的には1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、1−ウンデシル基、1−ドデシル基、1−トリデシル基、1−テトラデシル基、1−ペンタデシル基、1−ヘキサデシル基である。より好ましくは1−デシル基、1−ウンデシル基、1−ドデシル基、1−トリデシル基、1−テトラデシル基、1−ペンタデシル基、1−ヘキサデシル基である。最も好ましくは1−ドデシル基及び1−テトラデシル基から選ばれる基である。mが0の場合、一般式(2)中のR4、R5はメチル基が好ましい。
【0026】
(b)成分は、水性ゲル芳香剤の製造時に(c)成分を香料含有液状混合物中に均一に分散又は可溶化させ、且つ香料含有液状混合物を吸水性樹脂に効率よく含浸させる観点、又は香料含有液状混合物(A)の外観が光学的に異方性を得やすい点、及び香りの持続性を更に高める観点から、好ましい成分である。
【0027】
〔(c)成分〕
本発明の(c)成分は香料である。下記香料含有液状混合物(A)の吸水性樹脂への含浸促進、及び水性ゲル芳香剤の香り立ちの観点から、香料含有液状混合物中に含有する全香料中にClogPが1〜6の香料素材を30〜100質量%含有することが好ましく、より好ましくは40〜100質量%、特に好ましくは50〜100質量%である。
【0028】
下記香料含有液状混合物(A)が光学的に異方性を得やすい点から、香料のClogPは4〜6のような比較的疎水性の高い香料を用いることが好ましい。下記香料含有液状混合物(A)が光学的に異方性を得やすい点、及び香りの持続性の点で、下記香料含有液状混合物(A)中に含まれる全香料中に、ClogPが4〜6の範囲の香料を10〜80質量%含有することが好ましく、より好ましくは14〜70質量%、特に好ましくは20〜60質量%含有することが好ましい。
【0029】
本発明は、ClogPが1〜6の香料素材を30〜100質量%含有し、かつlogPが4〜6の範囲の香料素材を10〜80質量%含有する香料を用いて、香料含有液状混合物の吸水性樹脂への吸収が速やかで、且つ白濁した外観を有し、香りの持続性に優れた水性ゲル芳香剤が簡便、確実に得られるため、技術的意義が大きい。
【0030】
ここで、香料における「logP」とは、化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値であり、1−オクタノールと水の2液相の溶媒系に化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡において、それぞれの溶媒中での溶質の平衡濃度の比を意味し、底10に対する対数「logP」の形で一般的に示される。すなわち、logPは親油性(疎水性)の指標であり、この値が大きいほど疎水的であり、値が小さいほど親水的である。
【0031】
logPについては、例えば、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)等から入手し得るデータベースに掲載されているlogPを実測値として参照することができる。また、実測値がない場合には、プログラム“CLOGP”(Daylight CIS)等で計算することができ、中でもプログラム“CLOGP”により計算することが、信頼性も高く好適である。
【0032】
プログラム“CLOGP”においては、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される「計算logP(ClogP)」の値が、logPの実測値がある場合にはそれと共に出力される。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(A.Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C.Hansch, P.G.Sammens, J.B.Taylor and C.A.Ramsden,Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogPは現在最も一般的で信頼できる推定値であるため、化合物の選択に際してlogPの実測値がない場合に、ClogPを代わりに用いることが好適である。本発明においては、logPの実測値、又はプログラム“CLOGP”により計算したClogPのいずれを用いてもよい。本発明においてはClogPを用いる。
【0033】
特に限定されるものではないが、ClogPが1〜4未満の香料素材の具体例を以下に示す。( )内の数字はClogPの値である。
【0034】
ラズベリーケトン(1.1)、ヘリオトロピン(1.1)、フルクトン(1.1)、2−フェニルエチルアルコール(1.2)、バニリン(1.3)、ヘリオナール(1.4)、シンナミックアルコール(1.4)、クマリン(1.4)、アニスアルデヒド(1.8)、カロン(1.8)、エチルバニリン(1.8)、インドール(2.1)、酢酸フェニルエチル(2.1)、スチラリルアセテート(2.3)、メチルジヒドロジャスモネート(2.4)、オイゲノール(2.4)、イソオイゲノール(2.6)、シス−ジャスモン(2.6)、ゲラニオール(2.6)、リナロール(2.6)、ネロール(2.8)、酢酸ヘキシル(2.8)、ジヒドロミルセノール(3.0)、シトラール(3.1)、シトロネロール(3.3)、リナリルアセテート(3.5)、ネリルアセテート(3.6)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)、アンブリノール(3.8)、アルデヒド C−14ピーチ(3.8)、リリアール(3.9)、テトラヒドロムゴール(3.5)、β−ヨノン(3.8)、酢酸ゲラニル(3.7)、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル(2.7)、δ−ダマスコン(3.6)、ヘプタン酸アリル(3.4)、δ−ウンデカラクトン(3.8)、酢酸フェニルエチルフェニル(3.8)。
【0035】
特に限定されるものではないが、ClogPが4〜6の香料素材の具体例を以下に示す。( )内の数字はClogPの値である。
【0036】
酢酸p−t−ブチルシクロヘキシル(4.0)、アミルシンナミックアルデヒドジメチルアセタール(4.0)、5−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−メチル−3−ブテン−2−オン(4.0)、安息香酸2−フェニルエチル(4.1)、ジフェニルメタン(4.1)、γ−ウンデカラクトン(4.1)、酢酸o−t−ブチルシクロヘキシル(4.1)、p−メチル−イソプロピルベンゼン(4.1)、イソブチルキノリン(4.2)、ゲラニルアントラニレート(4.2)、オーランチオール(4.2)4−(2,2,5,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン(4.2)、ヒドロキシシトロネラールメチルアントラニレート(4.2)、ジフェニルオキシド(4.2)、アセチルセドレン(4.2)、酢酸シトロネリル(4.2)、γ−n−メチルヨノン(4.3)、アミルシンナミックアルデヒド(4.3)、ダマセノン(4.3)、10−オキサデカノリド(4.3)、11−オキサデカノリド(4.3)、γ−ドデカラクトン(4.4)、リモネン(4.4)、サリチル酸ベンジル(4.4)、γ−ターピネン(4.4)、p−メンタ−1,8−ジエン(4.4)、シトロネリルニトリル(4.4)、2,2,5−トリメチル−5−ペンチルシクロペンタノン(4.5)、フロラマット(4.5)、セドロール(4.5)、パチョリアルコール(4.5)、サリチル酸イソアミル(4.6)、エチレンブラシレート(4.6)、ネロリドール(4.6)、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン(4.7)、サリチル酸ヘキセニル(4.7)、ビサボロール(4.7)、1−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン(4.7)、β−ダマスコン(4.7)、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−12−オール(4.8)、メチルジヒドロジャスモン(4.8)、p−シメン(4.9)、ウンデシレン酸エチル(4.9)、酢酸ベチベリル(4.9)、酢酸ミラディル(4.9)、ギ酸セドリル(5.1)、セドリルメチルエーテル(5.1)、安息香酸リナリル(5.2)、ゲラニルフェニルアセテート(5.2)、3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン(5.3)、サリチル酸ヘキシル(5.3)、サリチル酸シクロヘキシル(5.3)、アンブロキサン(5.3)、酢酸セドリル(5.4)、ムスクインダノン(5.5)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(5.5)、桂皮酸シンナミル(5.5)、ガラキソリド(5.5)、6−アセチル−1,1,2,3,3,5−ヘキサメチルインダン(5.7)、1−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−3−ヘキサノール(5.9)、ファントリド(6.0)。
【0037】
また、本発明では(c)成分として、ClogPが1〜6の香料素材以外の香料素材、つまりClogPが1未満の香料素材やClogPが6超の香料素材を使用することができる。例えば、エチルアセテート(0.71)、エチルアセトアセテート(0.33)、エチルマルトール(0.47)、マルトール(−0.062)、ガラクソリド(6.1)、チベトリド(6.2)、イランゲン(6.3)、ペンタリド(6.3)、アンブレットリド(6.3)、β−カリオフィレン(6.3)、ヘキサデカノリド(6.8)、カジネン(7.3)などが挙げられる。( )内の数字はClogPの値である。
【0038】
〔吸水性樹脂〕
吸水性樹脂は、20℃の環境条件下において、該吸水性樹脂1gあたり、20℃のイオン交換水の吸水量が10〜300g、好ましくは10〜250g、より好ましくは20〜200gであるものが好適である。この吸水量が10g以上であれば、製造時、吸水性樹脂が香料含有液状混合物を吸収、膨潤して得られる水性ゲル芳香剤の意匠性がより良好となり、また、300g以下であれば水性ゲル芳香剤の強度がより充分になる。
【0039】
吸水性樹脂としては、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を構成単位として含む重合体を含む吸水性樹脂が好ましく、例えば、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸エステル共重合体の(部分)中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物及び部分ケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、ポリビニルアルコール変性物、部分中和ポリアクリル酸塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体等が挙げられ、使用に際しては、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。なお、アクリル酸(塩)は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を意味する。
【0040】
好ましい吸水性樹脂は、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体であり、特に離水性の点、及び香りの持続性の点からアクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体が好適である。
【0041】
ポリアクリル酸塩架橋体としては、例えば特開平8−337726号公報、特開平8−127725号公報などに記載されているものを用いることができる。また、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体は例えば、特開2000−212354号公報、特開2006−167202号公報に記載されている吸水性樹脂を用いることができる。更に、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体としては特開2007−291145号公報、特開2007−291146号公報、特開2007−270100号公報に記載の吸水性樹脂を用いることができる。
【0042】
吸水性樹脂の形態は球状が好ましい。該吸水性樹脂が容器につめられた場合、球状であれば、樹脂同士で密着する面積が少なく間隙が多くなるため、空気との接触面積が大きくなり匂い立ちの点から良好となる。また、製造時、香料含有液状混合物を接触させる前の乾燥状態での平均粒子径は500〜4,000μmが好適である。平均粒子径は、JIS試験用ふるい規格のふるい〔例えばNo.5〜No.35(公称目開きで4mm〜500μm)〕を用いたふるい分けにより測定することができる。
【0043】
吸水性樹脂の市販品としては、特に制限されるものではないが、例えばアクリル酸(塩)架橋体としては日本触媒製のアクアリックCA、住友精化製のアクアキープ、三洋化成製のサンフレッシュ、アクアパール、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合架橋体としてはAK Chemtech Co., Ltd.製のHISOBEAD、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体としてはクラレケミカル製のアクアビーズ、ポリオキシアルキレンオキシド架橋体としては住友精化製のアクアコークなどが挙げられる。
【0044】
〔香料含有液状混合物(A)〕
香料含有液状混合物(A)は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、20℃において光学的に異方性を有する液状混合物である。
【0045】
また、(a)〜(c)成分を含有する香料含有液状混合物(A)であって、20℃において光学的に異方性を有するものは、吸水性樹脂と混合されて白濁した外観を与える。これは、本発明者らが見いだした新規な知見である。本発明によれば、外観が白濁した香りの持続性に優れるゲル状芳香剤を確実に製造することができる。
【0046】
液体の光学的性質の観察方法は当業者によく知られている。すなわち、2枚の直線偏光する偏光板を、透過軸を垂直に傾けた状態で、偏光板同士を並行に重ねると光は透過しなくなる。この2枚の偏光板の間に、ガラス製スクリュー管に入れたサンプルを置いて、偏光版を通して観察すると、光学的に等方性の場合は、光は透過しない。しかし、光学的に異方性を有するサンプルの場合には、光が透過し、サンプルが光って見える。これにより、サンプルが光学的に異方性を有するかどうかを判断でき、本発明でも、20℃の香料含有液状混合物(A)についてこの方法を適用することで、20℃での光学的に異方性の有無を確認することができる。この光学的性質の観察方法は、界面科学に従事するものであれば容易に行うことができる。
【0047】
香料含有液状混合物(A)中の(a)成分の含有量は、光学的に異方性を示すという点で、0.1〜3.5質量%が好ましく、0.2〜3.5質量%がより好ましく、0.3〜3質量%が更に好ましい。香料含有液状混合物(A)中の(b)成分の含有量は、光学的に異方性を示すという点で、0.1〜5.5質量%が好ましく、0.2〜5.0質量%がより好ましく、1〜4.5質量%が更に好ましい。また、香料含有液状混合物(A)中(a)成分と(b)成分の質量比は、光学的に異方性を示すという点で、(b)成分/(a)成分=1/1〜10/1が好ましく、より好ましくは1.1/1〜9/1であり、より好ましくは1.2/1〜8/1であり、特に好ましくは1.4/1〜6/1である。
【0048】
また、香料含有液状混合物(A)中の(c)成分の含有量は、香料含有液状混合物(A)が光学的に異方性を得やすい点から、1.5〜5質量%が好ましく、1.8〜4.5質量%がより好ましく、2〜4質量%が更に好ましい。
【0049】
水は、水中に存在する金属を除去したイオン交換水を用いることが好ましい。
【0050】
香料含有液状混合物(A)の20℃におけるpHは、好ましくは3〜8、特に好ましくは4〜7であり、このようなpHで高い香りの持続性を得ることができる。
【0051】
香料含有液状混合物(A)の粘度は、吸水性樹脂と接触させた後に、香料含有液状混合物(A)が吸水性樹脂に速やかに含浸し、香りの持続性に優れた水性ゲル芳香剤を得る点で、低い方が好ましく、具体的には、30℃での粘度が350mPa・s以下であることが好ましい。ここで、「350mPa・s以下」という記載は、粘度が「0mPa・s」という、実質存在しえない物性を表すものではない。例えば、粘度計の測定限界以下の粘度であってもよいことを意味する。より、均質に白濁した水性ゲル芳香剤を得る点で、20〜300mPa・sが好ましく、50〜250mPa・sがより好ましい。
【0052】
本発明において、香料含有液状混合物(A)の粘度は、下記の方法で測定した値である。
<粘度の測定方法>
200mLのガラス製トールビーカーに測定サンプル(香料含有液状混合物)を200g入れ、ウォーターバスで、内容物の温度を30℃に調温し、そのまま30分放置する。30分後、粘度(30℃)をB型粘度計でNo.2のローターを用いて、60r/minで測定し、1分後の粘度を読み取り、サンプルの粘度とする。
【0053】
また、本発明の水性ゲル芳香剤は、その他の成分として、据え置き型水性ゲル芳香剤等に一般的に添加される溶剤(但し、(a)成分は除く)を、本願の効果を阻害しない程度に含有することができる。また、油剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤、殺菌剤・抗菌剤、色素、紫外線吸収剤等を含有することができる。
【0054】
〔水性ゲル芳香剤の製造方法〕
本発明は、下記工程1及び工程2を含む水性ゲル芳香剤の製造方法である。
工程1:前記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を混合し、20℃において光学的に異方性を有する香料含有液状混合物(A)を得る工程。
工程2:前記工程1で得られた香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂とを接触させ、香料含有液状混合物(A)を吸水性樹脂に含浸させる工程。
【0055】
〔工程1〕
工程1は、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を混合し、20℃において光学的に異方性を有する香料含有液状混合物(A)を得る工程である。
【0056】
工程1において、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を混合する手順としては、特に制限されるものではない。均一な香料含有液状混合物を速やかに製造する観点から、水に対して(a)成分、(b)成分及び(c)成分を投入する方法が好ましい。また、各(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水は、各成分を予め混合して投入しても良く、各成分の全量を一度に投入しても良く、分割して投入しても良い。とりわけ(b)成分は一部の水と予め混合し投入することが、光学的に異方性を有する香料含有液状混合物を速やかに得る点で好ましい。工程1では、得られる香料含有液状混合物(A)中の(a)成分、(b)成分、(c)成分の含有量及び(b)成分/(a)成分の重量比が前記範囲となるように、香料含有液状混合物(A)の調製に用いる全成分中の(a)〜(c)成分の割合を調整して混合することが好ましい。
【0057】
混合時の温度は、特に制限されるものではないが、均一な香料含有液状混合物を速やかに製造する観点から、5〜40℃が好ましく、より好ましくは10〜35℃である。投入時の各成分の温度は、各成分が液体状態となるような温度であることが、光学的に異方性を有する香料含有液状混合物を速やかに得る点で好ましい。
【0058】
(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を混合する際には、攪拌機を用いることが、製造の容易性の点から好ましい。攪拌機としては、特に制限されるものではないが、例えば、通常のパドル式攪拌機、プロペラ式攪拌機、ホモミキサー、マイルダー、クレアミックス、フィルミックス、ウルトラミキサー、ラインミキサー、べコミックス、レキサミックス、スタティックミキサーを用いることができる。
【0059】
工程1で得られる、香料含有液状混合物(A)は外観が目視で、透明かやや白濁している。工程1の終了点は、混合中の当該液状混合物中に、目視で観察されるような、不均一な粒子や、ゲル状物がなく、且つ光学的に異方性が観察される時点とすることができる。定量的には、香料含有液状混合物を、600メッシュのステンレス金網でろ過し、ろ過前の該金網を25℃、45%RHで24時間放置した後の質量と、ろ過後の該金網を25℃、45%RHの環境下で24時間乾燥させた後の質量が実質的に同一であることを示す。実質的に同一とは、ろ過後の金網の質量から、ろ過前の金網の質量を差し引いた質量が、ろ過に使用した香料含有液状混合物の質量の0.1質量%以下であることが好ましい。
【0060】
なお、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を混合した液状混合物(A)が、20℃において光学的に異方性を示さない場合、当該混合物の外観が透明であれば、(a)成分を増量するか、よりClogPが低い(a)成分を僅かに添加することにより、光学的に異方性を示すように調整することができる。また、当該混合物の外観が濁っていれば、(b)成分を増量することにより、光学的に異方性を示すように調整することができる。
【0061】
〔工程2〕
前記香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂とを接触させ、前記香料含有液状混合物を前記吸水性樹脂に含浸させる工程である。
【0062】
接触時の吸水性樹脂の水分含有率は20質量%以下が好ましく、10質量%以下が香りの持続性が高い水性ゲル芳香剤が得られる点でより好ましい。香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂とを接触させる際、香料含有液状混合物(A)及び吸水性樹脂の温度は、それぞれ0〜40℃の範囲が好適である。白濁した外観を有し、且つ香り持続性に優れる水性ゲル芳香剤を得られる点で、5〜35℃の範囲がより好適である。香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂を接触させる時は、静置してもよく、吸水性樹脂が損傷しないように、弱い攪拌を加えても良い。製造の簡便性の点から静置しておくだけでも通常は十分香料含有液状混合物(A)が該吸水性樹脂の内部に浸透、保持できる点で本発明の製造方法は好適である。この製造方法で、香料含有液状混合物(A)中の(c)成分を吸水性樹脂に担持させた水性ゲル芳香剤が得られる。香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂の混合比率は、吸水性樹脂の吸水能にもよるが、質量比で、香料含有液状混合物(A)/吸水性樹脂=100/1〜5/1、更に50/1〜10/1の条件下で製造できる。
【0063】
上記方法により製造された水性ゲル芳香剤は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、吸水性樹脂、及び水を含有する。また、外観は白濁している。
【0064】
本発明の水性ゲル芳香剤はそのまま芳香剤として使用することもできるが、当該水性ゲル芳香剤を含んで構成される据え置き型芳香剤とすることができる。例えば、自立可能な容器等に収容して据え置き型芳香剤とすることもできる。
【0065】
上記水性ゲル芳香剤が収容される容器は、水性ゲル芳香剤を収容可能であって、開放部を有し、この開放部から水性ゲル芳香剤中の芳香成分〔(c)成分〕を揮散させ得るものであれば、その形状や構造に特に制限はなく、開放部が上部にあるものの他、側部など他部にあるものも使用可能である。
【0066】
上記容器としては、プラスチック、ガラス、金属などを用いることができるが、ゲル状成型物の収縮を目視できる、透明又は半透明な材質や、スリットや開口部から内部を視認できるものが使用できる。更には、従来から芳香・消臭剤に用いられているプラスチック容器、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの容器が使用される。
【0067】
本発明の水性ゲル芳香剤を容器内に収容、設置する際、設置量は特に限定されず、使用する場所や使用期間、容器形状などの特性に応じて適宜選定することができ、また、同一容器に互いに異なる色調及び/又は香調を有する水性ゲル芳香剤を収容、設置してもよい。
【実施例】
【0068】
実施例及び比較例で使用した成分を下記に示す。
・a−1:ベンジルアルコール(ClogP=1.1)
・a−2:フェノキシエタノール(ClogP=1.2)
・a−3:トリエチレングリコール−モノフェニルエーテル(ClogP=1.3)
・a−4:ジプロピレングリコール−モノn−ブチルエーテル(ClogP=1.5)
・a−5:ジエチレングリコール−モノn−ブチルエーテル(ClogP=0.91)
【0069】
・a’−1:プロピレングリコール(ClogP=−1.1)
・a’−2:n−プロパノール(ClogP=0.29)
・a’−3:エチレングリコール−モノn−ヘキシルエーテル(ClogP=1.9)
・a’−4:ジプロピレングリコール(ClogP=−0.69)
・a’−5:エタノール(ClogP=−0.24)
【0070】
・b−1:N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキサイド
・b−2:N−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキサイド
・c−1:表1の香料組成物c−1
・c−2:表1の香料組成物c−2
・d−1:AK Chemtech Co., Ltd.製の「Hisobead」、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体の架橋型吸水性樹脂(含水率5質量%)
・水:イオン交換水
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル:エチレンオキシド平均付加モル数9
【0071】
〔水性ゲル芳香剤の調製〕
<工程1>
(b)成分は、(b)成分を含有する水溶液((b)成分の含有量は29質量%、残部は水)として用いた。(a)成分及び(c)成分は予め水と混合せず、そのまま用いた。300mL容量のガラス製ビーカーに、出来上がり質量に必要な量の90質量%に相当するイオン交換水を投入し、ウォーターバスで30℃に調製した。ガラス製ビーカーに、回転中心から羽根の先端までの長さが2cmの攪拌羽根が3枚、45度の角度で付いた攪拌羽根を、ビーカーの底から1cmに攪拌羽根の底面になるように設置した。200r/minで回転させながら、(a)成分(温度は30℃)、(b)成分を含有する溶液(温度は40℃)及び(c)成分(温度は30℃)を逐次投入した。投入後、20分攪拌した。20分攪拌後、出来上がり質量に必要はイオン交換水を投入し香料含有液状混合物を得た。
【0072】
得られた香料含有液状混合物を目視にて観察し、不均一な粒子が観察されないことを確認した。
【0073】
<香料含有液状混合物(A)の光学的異方性の観察方法>
表2の香料含有液状混合物(A)を各80g調製し、広口規格ビン(PS−No.11)に入れ20℃条件下で6時間静置したものを観察した。ケニス(株)製偏向フィルムを用いて、2枚の偏光フィルムを、偏向軸を垂直に傾けた状態で、フィルム面を並行に向け、2枚の偏光フィルムの間隔を4cmにした状態で固定した。2枚の偏光フィルムの間に、ガラス製スクリュー管に入れた、香料含有液状混合物(A)を設置し、一方の偏向フィルムを通してサンプルを観察した。光が透過しない場合を等方性とし、光が透過し、サンプルが光って観察される状態を異方性とした。
○:偏向フィルムを通して、光の透過があり、光学的に異方性である。
×:偏向フィルムを通して、光の透過がなく、光学的に等方性である。
【0074】
<工程2>
前記工程1で得られた香料含有液状混合物(A)2.85gと吸水性樹脂0.15gとを、広口規格ビン(PS−No.6)に入れフタを閉め、香料含有液状混合物(A)を吸水性樹脂に含浸し、20℃、45%RHで72時間静置したものを水性ゲル芳香剤とし、外観の観察(白濁性)、吸液性及び香り立ち(初期及び持続性)評価に用いた。
【0075】
<白濁性の評価>
ゲル状芳香剤の白濁性をゲル外観の乳白色度合いを目視で判定し、以下の基準により評価した。評価はトイレタリー商品の開発業務に5年以上従事した判定者5人の結果の平均値で評価した。平均値が3.0以上を合格とした。
*白濁性判定基準
5:濃い乳白色で、ゲルが不透明
4:やや濃い乳白色でゲルが半透明
3:乳白色で、ゲルが半透明
2:薄い乳白色で、ゲルがほぼ透明
1:乳白色が無く、ゲルが完全に透明
【0076】
<吸液性の評価>
香料含有液状混合物(A)の吸水性樹脂への吸液性について、規格ビンの内側とゲルの接触部の外観の離水とビン底部の液ダレから離水を総合的に判断し、以下の基準により評価した。評価はトイレタリー商品の開発業務に5年以上従事した判定者5人の結果の平均値で評価した。平均値が3.0以上を合格とした。
*吸液性の判定基準
5:ビン底の液ダレが見えず、ゲル接触部は全く離水していない
4:ビン底の液ダレが見えず、ゲル接触部はやや離水している
3:ビン底の液ダレが見えず、ゲル接触部は少し離水している
2:ビン底の液ダレが少し見え、ゲル接触部は離水している
1:ビン底の液ダレがハッキリ見え、ゲル接触部は完全に離水している
【0077】
<香り立ち(初期の香り強度)と香り持続性の評価>
調製直後のゲル状芳香剤が入った広口規格ビンのフタを開け、25℃で24時間経過後にビン口の香り立ちを評価し、これを初期の香り立ちとする。次にフタを空けた状態のまま、25℃で静置3日後と16日後にビン口の香り立ちを評価し、香りの持続性を評価した。
【0078】
初期の香り立ちの評価は、ゲル状芳香剤の香り強度を、実施例、比較例、それぞれに対応するゲル状芳香剤に用いた香料含有液状混合物を水で段階的に希釈した水溶液の香り強度と対比し、下記の香り強度の評価基準で香り立ちのレベルを相対比較した。何れも調香の業務に5年以上従事した判定者5人の結果の平均値で評価した。
*香り強度の評価基準
5:50%水溶液と同等以上の強さ
4:25%水溶液と同等の強さ
3:5%水溶液と同等の強さ
2:1%水溶液と同等の強さ
1:0.25%水溶液と同等の強さ
0:0.25%水溶液より弱い
【0079】
また、香りの持続性の評価基準は以下の通りであり、何れも調香の業務に5年以上従事した判定者5人の結果の平均値で評価した。3日後の評価において香りの持続性の評価の平均値が3.0以上が好ましく、16日後の評価においては平均値が2.5以上が好ましい値である。
*香りの持続性の評価基準
5:初期(25℃、24時間経過後)と同等の強さ
4:初期(25℃、24時間経過後)よりやや弱い
3:初期(25℃、24時間経過後)より弱い
2:初期(25℃、24時間経過後)よりかなり弱い
1:ほとんど香りがない
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
表2では、(a’)成分を(a)成分として(b)/(a)を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1及び工程2を含む水性ゲル芳香剤の製造方法。
工程1:下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を混合し、20℃において光学的に異方性を有する香料含有液状混合物(A)を得る工程。
工程2:前記工程1で得られた香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂とを接触させ、香料含有液状混合物(A)を吸水性樹脂に含浸させる工程。
(a)成分:下記一般式(1)で表され、且つClogPが0.9〜1.8の有機溶剤
1−O−(R2−O)n−H (1)
〔式中、R1は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nは0〜5の数を示す。〕
(b)成分:下記一般式(2)で表される化合物
【化1】


〔式中、R3は炭素数7〜16の炭化水素基であり、R4、R5はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。nは1〜3の数であり、mは0又は1である。〕
(c)成分:香料
【請求項2】
前記香料含有液状混合物(A)中の(a)成分の含有量が0.1〜3.5質量%である請求項1記載の水性ゲル芳香剤の製造方法。
【請求項3】
前記香料含有液状混合物(A)中の(b)成分の含有量が0.1〜5.5質量%である請求項1又は2記載の水性ゲル芳香剤の製造方法。
【請求項4】
前記香料含有液状混合物(A)中の(c)成分の含有量が1.5〜5質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の水性ゲル芳香剤の製造方法。
【請求項5】
前記香料含有液状混合物中の(a)成分と(b)成分の質量比が、(b)成分/(a)成分=1/1〜10/1である、請求項1〜4のいずれかに記載の水性ゲル芳香剤の製造方法。

【公開番号】特開2012−170668(P2012−170668A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36599(P2011−36599)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】