水性修正液組成物
【課題】 有機溶剤を含有せず、液吐出性に優れ、かつキャップレス状態における耐乾燥性および塗布性に優れた修正液組成物を提供する。
【解決手段】 二酸化チタン等の隠蔽性白顔料、アクリル系樹脂エマルジョン、合成ゴム系ラテックス等の合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、キサンタンガム等の水溶性樹脂および水を含有することを特徴とするボールペン型修正具用として好適な水性修正液組成物。
【解決手段】 二酸化チタン等の隠蔽性白顔料、アクリル系樹脂エマルジョン、合成ゴム系ラテックス等の合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、キサンタンガム等の水溶性樹脂および水を含有することを特徴とするボールペン型修正具用として好適な水性修正液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は水性修正液組成物に関し、さらに詳しくは、液吐出性に優れ、かつキャップレス状態での耐乾燥性および塗布性に優れた水性修正液組成物に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、ボールペン、万年筆、サインペン等の筆記具による筆記描線やタイプライター、ＰＰＣコピーによるコピー描線等など、消しゴム等では消せないものを消去・修正する際に使用される修正液組成物には、原材料の選択性が幅広いことや塗膜乾燥の効率が良いことから一般に有機溶剤を使用した油性の修正液組成物が用いられている。
【０００３】
しかし、修正液が疎水性であると修正液組成物を被覆したのち再筆記する場合、特に水性染料インキや水性顔料インキを使用した筆記具で再筆記した際に、インキのハジキや吸い込み不良によりなかなか乾かないという問題がある。また、近年では塗料・接着剤・インキなどの分野において、世界的に揮発性有機化合物(ＶＯＣ)による環境への影響が問題とされ、脱溶剤型又は水系等の環境対応型への転換が強く求められるようになってきている。
【０００４】
かかる観点から有機溶剤を使用しない水性の修正液組成物が検討され、一般に、これらの水性修正液組成物は、隠蔽材である酸化チタン、主溶媒である水、塗膜を形成するための樹脂とを主成分としている。この修正液組成物に主溶媒として用いる水は、沸点が１００℃と比較的低いため、ペン先からの水の蒸発が生じ、その結果、修正液組成物の乾燥による筆記不良が生じてしまう。そこでこれを防止するために、ペン先にキャップを被せることが常となっている。しかしながら、使用する度にキャップを取り外して使用することは面倒であり、また使用後にキャップを被せることを怠ると、修正液組成物が乾燥固化し、使用できなくなる問題を有するものである。
【０００５】
この問題を解決するものとして、例えば、特開２００３−２１３１６２号公報（特許文献１）において、ノック式の修正具が提案されている。特許文献１記載の修正具は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の有機溶剤を主溶剤とし、樹脂を含有する油性の修正液を用いたものであるが、溶剤と相溶性のあるパラフィンワックス類およびゲル化剤を添加することによってドライアップを防止している。しかしながら、この修正具においては、溶剤にパラフィンワックス類とゲル化剤を溶解させるために、修正液組成物が著しく増粘し、修正液組成物の液吐出性が低下してしまう。そのため、良好な液吐出性を実現する為には、加圧機構などが必要になってしまう。
【特許文献１】特開２００３−２１３１６２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
そこで、本発明は、環境を配慮した脱溶剤型であって、加圧機構などを使用しなくとも液吐出性に優れ、かつキャップレス状態における耐乾燥性および塗布性に優れた修正液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶剤として水を使用する水性修正液組成物に、合成樹脂エマルジョンとワックスエマルジョンを添加することにより、キャップレス状態における耐乾燥性および塗布性に優れ、しかも液吐出性に優れた水性修正液組成物を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【０００８】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
１）隠蔽性白顔料、合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、水溶性樹脂および水を含有することを特徴とする水性修正液組成物、
２）前記合成樹脂エマルジョンが、最低造膜温度が５℃以下、ガラス転移点が１０℃以下の合成樹脂のエマルジョンである前記１）に記載の水性修正液組成物。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によれば、合成樹脂エマルジョンおよびワックスエマルジョンを含有する水性組成物とすることにより、修正液組成物の脱溶剤化が達成され、キャップレス状態での耐乾燥性および塗布性に優れ、かつエマルジョンを配合するため液吐出性の良好な修正液組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の水性修正液組成物は、隠蔽性白顔料、合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、水溶性樹脂および水を含有することを特徴とする。隠蔽性白顔料としては、隠蔽性を有する白色顔料である二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、アルミナシリケート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられるが、隠蔽力が優れている点から二酸化チタンが好ましい。
【００１１】
二酸化チタンとしては、ルチル型、アナターゼ型などの各種の二酸化チタンが使用でき、その粒子径としては特に規定されるものではないが、通常０．５〜１μm程度のものが、隠蔽性、液吐出性、経時安定性の点から好ましい。商品として市販されている酸化チタンは、ＰＷ−１５５ ｗｈｉｔｅ Ｄ（日本プリントインキ（株）製）、ＭＩＣＲＯＬＩＴＨ Ｗｈｉｔｅ Ｒ−ＷＡ（チバスペシャリティーケミカルズ社製）、Ｅｍａｃｏｌ Ｗｈｉｔｅ ＰＭ−４３(山陽色素（株）製)、Ｄｉｓｐｅｒｓｅ Ｗｈｉｔｅ ＳＤ−７０６５、Ｄｉｓｐｅｒｓｅ Ｗｈｉｔｅ ＨＧ７０１（大日本インキ化学工業（株）製）、タイトーンＳＲ−１、同Ｒ−６５０、同Ｒ−３Ｌ（堺化学工業（株）製）、タイペークＲ−５８０、同Ｒ−５６０、同Ｒ−９３０(石原産業（株）製)、クロノスＫＲ−３１０、同ＫＲ−３８０、同ＫＲ−４８０（チタン工業（株）製）、タイピュアＲ−９００、同Ｒ−９３１（デュポンジャパンリミテッド製）、チタニックスＪＲ−３００、同ＪＲ−６００Ａ、同ＪＲ−８００（テイカ（株）製）、等が例示できる。
【００１２】
これらの隠蔽性白顔料は、１種または２種以上を混合して使用することができ、その配合量は水性修正液組成物全量中に、隠蔽性白顔料（固形分）として２０〜６０質量％含まれることが好ましい。隠蔽性白顔料の含有量が６０質量％を超えると修正液の粘度が上昇し、液の吐出性が低下する。さらに好ましくは３０〜６０質量％である。
【００１３】
合成樹脂エマルジョンは、修正作業において塗膜を形成するとともに、本発明においては、修正液組成物の乾燥時、すなわちキャップレス時にペン先等に被膜を形成することによって、修正液組成物中の水分の蒸発を抑制することができる。エマルジョンであるため液粘度の上昇を抑えることができ、液吐出性のよい組成物を得ることができる。合成樹脂エマルジョンとしては、アクリル樹脂エマルジョン、アクリル−酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、アクリル−スチレン系樹脂エマルジョン等のアクリル系樹脂エマルジョン；スチレン−ブタジエン系ラテックス、ポリブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス等の合成ゴム系ラテックス；酢酸ビニル系樹脂エマルジョン；エチレン−酢酸ビニル系樹脂エマルジョンが挙げられ、これらは単独でも２種以上を組み合わせて配合することもできる。これらの合成樹脂エマルジョンは、低温時においても確実に、かつ均一に被膜を形成させ、修正作業時に確実に塗膜を形成させ、さらには液吐出性または塗布性のよい組成物を得るために、最低造膜温度が５℃以下、ガラス転移点が１０℃以下の合成樹脂を含有するエマルジョンが好ましい。
【００１４】
このような合成樹脂エマルジョンの市販品として、アクリル系樹脂エマルジョンであるＡＥ１２０、ＡＥ２００、ＡＥ３１１、ＡＥ３３７、ＡＥ３６２、ＡＥ５１３Ａ、ＡＥ５１７、ＡＥ６１０Ｃ、ＡＥ９４５、ＡＥ９５０、ＡＥ９８０（ＪＳＲ社製）、合成ゴム系ラッテクスであるスチレン−ブタジエン系ラテックスのＮｉｐｏｌ ＳＸ１１０５、同ＳＸ１５０３、同ＳＸ１７０６(日本ゼオン社製)、などが例示できる。
【００１５】
本発明の修正液組成物において、合成樹脂エマルジョンは修正液組成物の全量中に、固形分として、２〜１５質量％含まれることが望ましい。合成樹脂エマルジョンが１５質量％を超えると修正液中のみかけの固形分量が増加することにより修正液の粘度が上昇し、液吐出性が低下する。さらに好ましくは２〜１０質量％であり、特に好ましくは２〜８質量％である。
【００１６】
ワックスエマルジョンは、合成樹脂エマルジョンと同時に組成物に含有されることにより、合成樹脂エマルジョンがペン先に被膜を形成した際、合成樹脂被膜の表面にブリードアウトして被膜を形成することにより、修正液組成物中の水分の不透過性を向上させるので、キャップレス状態における耐乾燥性を向上させることができる。また同時に合成樹脂被膜に剪断切断性を付与し、例えば、ボールペンに収納した場合、修正作業時にボールの回転による被膜の破壊されやすさを向上させることができるので、液吐出性または修正液組成物の塗布性を向上させることができる。エマルジョンであるため、特に液吐出性、塗布性が良好である。ちなみに、キャップレス状態のときに形成された合成樹脂を主体とする被膜が、修正作業時にはボールの回転により容易に破壊されて修正液組成物が吐出し、必要部分に塗布されて塗膜を形成し、修正部分が隠蔽される。そして修正作業が終了するとキャップレス状態に戻り、再度ペン先に被膜が形成されて、耐乾燥性を奏することとなる。
【００１７】
ワックスエマルジョンとしては、パラフィンワックスエマルジョン、マイクロクリスタリンワックスエマルジョン、ポリエチレンワックスエマルジョン、カルナバワックスエマルジョン、モンタンワックスエマルジョン、ワセリンエマルジョン等が挙げられ、これらは単独でも２種以上を組み合わせて配合することもできる。ぺん先に被膜が形成されることによる、修正液組成物からの水分の蒸発抑制のためには、ワックスエマルジョンのイオン性はノニオン型が好ましい。
【００１８】
前記ワックスエマルジョンの市販品としては、ＥＭＵＳＴＡＲ−１０１５，ＥＭＵＳＴＡＲ−１１１５、ＥＭＵＳＴＡＲ−０１３５、ＥＭＵＳＴＡＲ−０１３６、ＥＭＵＳＴＡＲ−１０５５，ＥＭＵＳＴＡＲ−１１５５，ＥＭＵＳＴＡＲ−１０７０，ＥＭＵＳＴＡＲ−１１７０，ＥＭＵＳＴＡＲ−１０４５、ＥＭＵＳＴＡＲ−１１４５、ＥＭＵＳＴＡＲ−０４４３、ＥＭＵＳＴＡＲ−０４５４、ＥＭＵＳＴＡＲ−０５１６、ＥＭＵＳＴＡＲ−０４８０（日本精鑞社製）、ＷａｘＥｍｕｌｓｉｏｎＥ７０１Ｋ（クラリアント社製）などが例示できる。
【００１９】
前記ワックスエマルジョンは、修正液組成物の全量中に、固形分として、２〜１５質量％含まれることが望ましい。さらに好ましくは２〜１０質量％であり、特に好ましくは２〜５質量％である。ワックスエマルジョンの含有量が２質量％未満では、キャップレス状態における修正液組成物の耐乾燥性が十分でなく、一方、１５質量％を超えると液粘度が上昇し、液吐出性が低下するとともに、形成される塗膜の均一性が失われ再筆記性が低下する。
【００２０】
本発明において、合成樹脂エマルジョンとワックスエマルジョンとの含有比率は、質量比で、合成樹脂エマルジョン１に対し、ワックスエマルジョンを０．５〜１の範囲とすることが、本発明の効果を奏するためには、好ましい。
【００２１】
本発明において、水溶性樹脂は、密度の大きい隠蔽性白色顔料を沈降させず、かつ修正作業時には良好な吐出性を実現するために、チクソトロピー性のある増粘効果を付与するとともに、修正液組成物中の水分子の自由度を失わせ、蒸発しにくくする作用を奏し、キャップレス状態における修正液組成物の耐乾燥性の向上に、合成樹脂エマルジョンおよびワックスエマルジョンと相乗的に作用し、寄与する。
【００２２】
水溶性樹脂としては、水性ボールペンインキに一般的に使用されている水溶性樹脂を使用することができる。例えば、アクリル樹脂、架橋型アクリル酸樹脂、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、グリオキザール付加メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、ポリN−ビニルアセトアミドなどの合成品やトラガントガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルカガム等の天然ガム質等を例示できる。これらの中でも、キサンタンガムが少量添加で高いチクソトロピー性を付与できるので好ましい。これらの水溶性樹脂は１種または２種以上混合して使用することができる。
【００２３】
本発明において、水溶性樹脂は、修正液組成物中に、０．０５〜０．４質量％含まれることが好ましい。水溶性樹脂の含有量が０．０５質量％未満では修正液の粘度が低すぎるため、隠蔽性白色顔料の沈降分離を引き起こし、０．４質量％を超えると修正液組成物の粘度が高くなりすぎ液吐出性、塗布性が低下する。さらに好ましい含有量は０．１1〜０．３質量％であり、特に好ましくは０．１５〜０．２５質量％である。
【００２４】
本発明の修正液組成物において、水は２０〜７０質量％含まれることが好ましい。更に好ましくは３０〜６０質量％であり、特に好ましくは３５〜６０質量％である。
【００２５】
本発明の修正液組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分の他、一般的に用いられている界面活性剤、分散剤、防錆剤、防腐剤、潤滑剤、湿潤剤、消泡剤、PH調整剤なども添加することができる。界面活性剤としてはソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン系界面活性剤、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩などのアニオン系界面活性剤等が挙げられる。分散剤としては、アクリル・スチレン共重合体、マレイン酸・スチレン共重合体、及びそれらの中和塩等が例示できる。防錆剤としてはベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトレート等が例示できる。防腐剤としては安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが例示でき、湿潤剤としては尿素、ノニオン系界面活性剤などが使用できる。
【００２６】
上記の他、本発明の水性修正液組成物には、保湿剤をさらに配合することができる。保湿剤も修正液組成物中の水分子の自由度を抑制し、蒸発しにくくするので、耐乾燥性をさらに向上させることができる。保湿剤としてはＤ−ソルビトール、トレハロース、オリゴ糖、異性化糖、ブドウ糖等の糖類を挙げることができる。
【００２７】
本発明の水性修正液組成物は、上記各成分をダイノーミル、ボールミル、アトライター、サンドグラインダー、ホモジナイザーなどの攪拌分散機を使用して分散混合することによって公知の方法によって調製することができる。
【００２８】
本発明の水性修正液組成物は液吐出性に優れ、キャップレス状態での耐乾燥性および塗布性に優れるため、ボールペンタイプの修正具用修正液組成物として好適である。
【実施例】
【００２９】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【００３０】
（実施例１〜４、比較例１〜３）
下記表１に示す各実施例、比較例の組成（量は質量％）に従い、ＤＩＳＰＥＲＭＡＴ ＦＴ(ＶＭＡ−ＧＥＴＺＭＡＮ ＧｍｂＨ社製)中で、隠蔽性白顔料（二酸化チタン）分散液に、あらかじめ調製しておいた水溶性樹脂溶液（２％水溶液）、ＰＨ調整剤、防腐剤および水を加えて攪拌した後、合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、消泡剤を加えて混合攪拌して水性修正液組成物を得た。得られた水性修正液組成物について、乾燥性および塗布性を下記のように試験し、評価した。結果を表２に示す。
【００３１】
（乾燥性）
水性修正液組成物をボールペン構造の塗布具に充填して、温度５０℃、湿度６０％の恒温恒湿槽内に保存し、１ヶ月間経過後の重量変化を測定した。
【００３２】
（液吐出性）
水性修正液組成物をボールペン構造の塗布具に充填して、室内にて黒色紙に手書きし筆記し、そのときの液吐出状態から次の基準に従い評価した。
○：良好に吐出
△：若干吐出
×：吐出しない
【００３３】
（塗布性）
水性修正液組成物をボールペン構造の塗布具に充填して、温度２３℃、湿度６０％の恒温恒湿室内にて一定時間経過ごとに黒色紙に手書き筆記し、そのときの筆記線の状態から次の基準に従い、評価した。
○：連続的な筆記線である。
△：筆記線に若干線割れが見られる。
×：筆記線が不連続で、カスレあり。
【００３４】
【表１】
【００３５】
【表２】
【技術分野】
【０００１】
本発明は水性修正液組成物に関し、さらに詳しくは、液吐出性に優れ、かつキャップレス状態での耐乾燥性および塗布性に優れた水性修正液組成物に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、ボールペン、万年筆、サインペン等の筆記具による筆記描線やタイプライター、ＰＰＣコピーによるコピー描線等など、消しゴム等では消せないものを消去・修正する際に使用される修正液組成物には、原材料の選択性が幅広いことや塗膜乾燥の効率が良いことから一般に有機溶剤を使用した油性の修正液組成物が用いられている。
【０００３】
しかし、修正液が疎水性であると修正液組成物を被覆したのち再筆記する場合、特に水性染料インキや水性顔料インキを使用した筆記具で再筆記した際に、インキのハジキや吸い込み不良によりなかなか乾かないという問題がある。また、近年では塗料・接着剤・インキなどの分野において、世界的に揮発性有機化合物(ＶＯＣ)による環境への影響が問題とされ、脱溶剤型又は水系等の環境対応型への転換が強く求められるようになってきている。
【０００４】
かかる観点から有機溶剤を使用しない水性の修正液組成物が検討され、一般に、これらの水性修正液組成物は、隠蔽材である酸化チタン、主溶媒である水、塗膜を形成するための樹脂とを主成分としている。この修正液組成物に主溶媒として用いる水は、沸点が１００℃と比較的低いため、ペン先からの水の蒸発が生じ、その結果、修正液組成物の乾燥による筆記不良が生じてしまう。そこでこれを防止するために、ペン先にキャップを被せることが常となっている。しかしながら、使用する度にキャップを取り外して使用することは面倒であり、また使用後にキャップを被せることを怠ると、修正液組成物が乾燥固化し、使用できなくなる問題を有するものである。
【０００５】
この問題を解決するものとして、例えば、特開２００３−２１３１６２号公報（特許文献１）において、ノック式の修正具が提案されている。特許文献１記載の修正具は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の有機溶剤を主溶剤とし、樹脂を含有する油性の修正液を用いたものであるが、溶剤と相溶性のあるパラフィンワックス類およびゲル化剤を添加することによってドライアップを防止している。しかしながら、この修正具においては、溶剤にパラフィンワックス類とゲル化剤を溶解させるために、修正液組成物が著しく増粘し、修正液組成物の液吐出性が低下してしまう。そのため、良好な液吐出性を実現する為には、加圧機構などが必要になってしまう。
【特許文献１】特開２００３−２１３１６２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
そこで、本発明は、環境を配慮した脱溶剤型であって、加圧機構などを使用しなくとも液吐出性に優れ、かつキャップレス状態における耐乾燥性および塗布性に優れた修正液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶剤として水を使用する水性修正液組成物に、合成樹脂エマルジョンとワックスエマルジョンを添加することにより、キャップレス状態における耐乾燥性および塗布性に優れ、しかも液吐出性に優れた水性修正液組成物を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【０００８】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
１）隠蔽性白顔料、合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、水溶性樹脂および水を含有することを特徴とする水性修正液組成物、
２）前記合成樹脂エマルジョンが、最低造膜温度が５℃以下、ガラス転移点が１０℃以下の合成樹脂のエマルジョンである前記１）に記載の水性修正液組成物。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によれば、合成樹脂エマルジョンおよびワックスエマルジョンを含有する水性組成物とすることにより、修正液組成物の脱溶剤化が達成され、キャップレス状態での耐乾燥性および塗布性に優れ、かつエマルジョンを配合するため液吐出性の良好な修正液組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の水性修正液組成物は、隠蔽性白顔料、合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、水溶性樹脂および水を含有することを特徴とする。隠蔽性白顔料としては、隠蔽性を有する白色顔料である二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、アルミナシリケート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられるが、隠蔽力が優れている点から二酸化チタンが好ましい。
【００１１】
二酸化チタンとしては、ルチル型、アナターゼ型などの各種の二酸化チタンが使用でき、その粒子径としては特に規定されるものではないが、通常０．５〜１μm程度のものが、隠蔽性、液吐出性、経時安定性の点から好ましい。商品として市販されている酸化チタンは、ＰＷ−１５５ ｗｈｉｔｅ Ｄ（日本プリントインキ（株）製）、ＭＩＣＲＯＬＩＴＨ Ｗｈｉｔｅ Ｒ−ＷＡ（チバスペシャリティーケミカルズ社製）、Ｅｍａｃｏｌ Ｗｈｉｔｅ ＰＭ−４３(山陽色素（株）製)、Ｄｉｓｐｅｒｓｅ Ｗｈｉｔｅ ＳＤ−７０６５、Ｄｉｓｐｅｒｓｅ Ｗｈｉｔｅ ＨＧ７０１（大日本インキ化学工業（株）製）、タイトーンＳＲ−１、同Ｒ−６５０、同Ｒ−３Ｌ（堺化学工業（株）製）、タイペークＲ−５８０、同Ｒ−５６０、同Ｒ−９３０(石原産業（株）製)、クロノスＫＲ−３１０、同ＫＲ−３８０、同ＫＲ−４８０（チタン工業（株）製）、タイピュアＲ−９００、同Ｒ−９３１（デュポンジャパンリミテッド製）、チタニックスＪＲ−３００、同ＪＲ−６００Ａ、同ＪＲ−８００（テイカ（株）製）、等が例示できる。
【００１２】
これらの隠蔽性白顔料は、１種または２種以上を混合して使用することができ、その配合量は水性修正液組成物全量中に、隠蔽性白顔料（固形分）として２０〜６０質量％含まれることが好ましい。隠蔽性白顔料の含有量が６０質量％を超えると修正液の粘度が上昇し、液の吐出性が低下する。さらに好ましくは３０〜６０質量％である。
【００１３】
合成樹脂エマルジョンは、修正作業において塗膜を形成するとともに、本発明においては、修正液組成物の乾燥時、すなわちキャップレス時にペン先等に被膜を形成することによって、修正液組成物中の水分の蒸発を抑制することができる。エマルジョンであるため液粘度の上昇を抑えることができ、液吐出性のよい組成物を得ることができる。合成樹脂エマルジョンとしては、アクリル樹脂エマルジョン、アクリル−酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、アクリル−スチレン系樹脂エマルジョン等のアクリル系樹脂エマルジョン；スチレン−ブタジエン系ラテックス、ポリブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス等の合成ゴム系ラテックス；酢酸ビニル系樹脂エマルジョン；エチレン−酢酸ビニル系樹脂エマルジョンが挙げられ、これらは単独でも２種以上を組み合わせて配合することもできる。これらの合成樹脂エマルジョンは、低温時においても確実に、かつ均一に被膜を形成させ、修正作業時に確実に塗膜を形成させ、さらには液吐出性または塗布性のよい組成物を得るために、最低造膜温度が５℃以下、ガラス転移点が１０℃以下の合成樹脂を含有するエマルジョンが好ましい。
【００１４】
このような合成樹脂エマルジョンの市販品として、アクリル系樹脂エマルジョンであるＡＥ１２０、ＡＥ２００、ＡＥ３１１、ＡＥ３３７、ＡＥ３６２、ＡＥ５１３Ａ、ＡＥ５１７、ＡＥ６１０Ｃ、ＡＥ９４５、ＡＥ９５０、ＡＥ９８０（ＪＳＲ社製）、合成ゴム系ラッテクスであるスチレン−ブタジエン系ラテックスのＮｉｐｏｌ ＳＸ１１０５、同ＳＸ１５０３、同ＳＸ１７０６(日本ゼオン社製)、などが例示できる。
【００１５】
本発明の修正液組成物において、合成樹脂エマルジョンは修正液組成物の全量中に、固形分として、２〜１５質量％含まれることが望ましい。合成樹脂エマルジョンが１５質量％を超えると修正液中のみかけの固形分量が増加することにより修正液の粘度が上昇し、液吐出性が低下する。さらに好ましくは２〜１０質量％であり、特に好ましくは２〜８質量％である。
【００１６】
ワックスエマルジョンは、合成樹脂エマルジョンと同時に組成物に含有されることにより、合成樹脂エマルジョンがペン先に被膜を形成した際、合成樹脂被膜の表面にブリードアウトして被膜を形成することにより、修正液組成物中の水分の不透過性を向上させるので、キャップレス状態における耐乾燥性を向上させることができる。また同時に合成樹脂被膜に剪断切断性を付与し、例えば、ボールペンに収納した場合、修正作業時にボールの回転による被膜の破壊されやすさを向上させることができるので、液吐出性または修正液組成物の塗布性を向上させることができる。エマルジョンであるため、特に液吐出性、塗布性が良好である。ちなみに、キャップレス状態のときに形成された合成樹脂を主体とする被膜が、修正作業時にはボールの回転により容易に破壊されて修正液組成物が吐出し、必要部分に塗布されて塗膜を形成し、修正部分が隠蔽される。そして修正作業が終了するとキャップレス状態に戻り、再度ペン先に被膜が形成されて、耐乾燥性を奏することとなる。
【００１７】
ワックスエマルジョンとしては、パラフィンワックスエマルジョン、マイクロクリスタリンワックスエマルジョン、ポリエチレンワックスエマルジョン、カルナバワックスエマルジョン、モンタンワックスエマルジョン、ワセリンエマルジョン等が挙げられ、これらは単独でも２種以上を組み合わせて配合することもできる。ぺん先に被膜が形成されることによる、修正液組成物からの水分の蒸発抑制のためには、ワックスエマルジョンのイオン性はノニオン型が好ましい。
【００１８】
前記ワックスエマルジョンの市販品としては、ＥＭＵＳＴＡＲ−１０１５，ＥＭＵＳＴＡＲ−１１１５、ＥＭＵＳＴＡＲ−０１３５、ＥＭＵＳＴＡＲ−０１３６、ＥＭＵＳＴＡＲ−１０５５，ＥＭＵＳＴＡＲ−１１５５，ＥＭＵＳＴＡＲ−１０７０，ＥＭＵＳＴＡＲ−１１７０，ＥＭＵＳＴＡＲ−１０４５、ＥＭＵＳＴＡＲ−１１４５、ＥＭＵＳＴＡＲ−０４４３、ＥＭＵＳＴＡＲ−０４５４、ＥＭＵＳＴＡＲ−０５１６、ＥＭＵＳＴＡＲ−０４８０（日本精鑞社製）、ＷａｘＥｍｕｌｓｉｏｎＥ７０１Ｋ（クラリアント社製）などが例示できる。
【００１９】
前記ワックスエマルジョンは、修正液組成物の全量中に、固形分として、２〜１５質量％含まれることが望ましい。さらに好ましくは２〜１０質量％であり、特に好ましくは２〜５質量％である。ワックスエマルジョンの含有量が２質量％未満では、キャップレス状態における修正液組成物の耐乾燥性が十分でなく、一方、１５質量％を超えると液粘度が上昇し、液吐出性が低下するとともに、形成される塗膜の均一性が失われ再筆記性が低下する。
【００２０】
本発明において、合成樹脂エマルジョンとワックスエマルジョンとの含有比率は、質量比で、合成樹脂エマルジョン１に対し、ワックスエマルジョンを０．５〜１の範囲とすることが、本発明の効果を奏するためには、好ましい。
【００２１】
本発明において、水溶性樹脂は、密度の大きい隠蔽性白色顔料を沈降させず、かつ修正作業時には良好な吐出性を実現するために、チクソトロピー性のある増粘効果を付与するとともに、修正液組成物中の水分子の自由度を失わせ、蒸発しにくくする作用を奏し、キャップレス状態における修正液組成物の耐乾燥性の向上に、合成樹脂エマルジョンおよびワックスエマルジョンと相乗的に作用し、寄与する。
【００２２】
水溶性樹脂としては、水性ボールペンインキに一般的に使用されている水溶性樹脂を使用することができる。例えば、アクリル樹脂、架橋型アクリル酸樹脂、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、グリオキザール付加メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、ポリN−ビニルアセトアミドなどの合成品やトラガントガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルカガム等の天然ガム質等を例示できる。これらの中でも、キサンタンガムが少量添加で高いチクソトロピー性を付与できるので好ましい。これらの水溶性樹脂は１種または２種以上混合して使用することができる。
【００２３】
本発明において、水溶性樹脂は、修正液組成物中に、０．０５〜０．４質量％含まれることが好ましい。水溶性樹脂の含有量が０．０５質量％未満では修正液の粘度が低すぎるため、隠蔽性白色顔料の沈降分離を引き起こし、０．４質量％を超えると修正液組成物の粘度が高くなりすぎ液吐出性、塗布性が低下する。さらに好ましい含有量は０．１1〜０．３質量％であり、特に好ましくは０．１５〜０．２５質量％である。
【００２４】
本発明の修正液組成物において、水は２０〜７０質量％含まれることが好ましい。更に好ましくは３０〜６０質量％であり、特に好ましくは３５〜６０質量％である。
【００２５】
本発明の修正液組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分の他、一般的に用いられている界面活性剤、分散剤、防錆剤、防腐剤、潤滑剤、湿潤剤、消泡剤、PH調整剤なども添加することができる。界面活性剤としてはソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン系界面活性剤、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩などのアニオン系界面活性剤等が挙げられる。分散剤としては、アクリル・スチレン共重合体、マレイン酸・スチレン共重合体、及びそれらの中和塩等が例示できる。防錆剤としてはベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトレート等が例示できる。防腐剤としては安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが例示でき、湿潤剤としては尿素、ノニオン系界面活性剤などが使用できる。
【００２６】
上記の他、本発明の水性修正液組成物には、保湿剤をさらに配合することができる。保湿剤も修正液組成物中の水分子の自由度を抑制し、蒸発しにくくするので、耐乾燥性をさらに向上させることができる。保湿剤としてはＤ−ソルビトール、トレハロース、オリゴ糖、異性化糖、ブドウ糖等の糖類を挙げることができる。
【００２７】
本発明の水性修正液組成物は、上記各成分をダイノーミル、ボールミル、アトライター、サンドグラインダー、ホモジナイザーなどの攪拌分散機を使用して分散混合することによって公知の方法によって調製することができる。
【００２８】
本発明の水性修正液組成物は液吐出性に優れ、キャップレス状態での耐乾燥性および塗布性に優れるため、ボールペンタイプの修正具用修正液組成物として好適である。
【実施例】
【００２９】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【００３０】
（実施例１〜４、比較例１〜３）
下記表１に示す各実施例、比較例の組成（量は質量％）に従い、ＤＩＳＰＥＲＭＡＴ ＦＴ(ＶＭＡ−ＧＥＴＺＭＡＮ ＧｍｂＨ社製)中で、隠蔽性白顔料（二酸化チタン）分散液に、あらかじめ調製しておいた水溶性樹脂溶液（２％水溶液）、ＰＨ調整剤、防腐剤および水を加えて攪拌した後、合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、消泡剤を加えて混合攪拌して水性修正液組成物を得た。得られた水性修正液組成物について、乾燥性および塗布性を下記のように試験し、評価した。結果を表２に示す。
【００３１】
（乾燥性）
水性修正液組成物をボールペン構造の塗布具に充填して、温度５０℃、湿度６０％の恒温恒湿槽内に保存し、１ヶ月間経過後の重量変化を測定した。
【００３２】
（液吐出性）
水性修正液組成物をボールペン構造の塗布具に充填して、室内にて黒色紙に手書きし筆記し、そのときの液吐出状態から次の基準に従い評価した。
○：良好に吐出
△：若干吐出
×：吐出しない
【００３３】
（塗布性）
水性修正液組成物をボールペン構造の塗布具に充填して、温度２３℃、湿度６０％の恒温恒湿室内にて一定時間経過ごとに黒色紙に手書き筆記し、そのときの筆記線の状態から次の基準に従い、評価した。
○：連続的な筆記線である。
△：筆記線に若干線割れが見られる。
×：筆記線が不連続で、カスレあり。
【００３４】
【表１】
【００３５】
【表２】
【特許請求の範囲】
【請求項１】
隠蔽性白顔料、合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、水溶性樹脂および水を含有することを特徴とする水性修正液組成物。
【請求項２】
前記合成樹脂エマルジョンが、最低造膜温度が５℃以下、ガラス転移点が１０℃以下の合成樹脂のエマルジョンである請求項１に記載の水性修正液組成物。
【請求項１】
隠蔽性白顔料、合成樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、水溶性樹脂および水を含有することを特徴とする水性修正液組成物。
【請求項２】
前記合成樹脂エマルジョンが、最低造膜温度が５℃以下、ガラス転移点が１０℃以下の合成樹脂のエマルジョンである請求項１に記載の水性修正液組成物。
【公開番号】特開２００６−８７２６（Ｐ２００６−８７２６Ａ）
【公開日】平成１８年１月１２日（２００６．１．１２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−１８３４２３（Ｐ２００４−１８３４２３）
【出願日】平成１６年６月２２日（２００４．６．２２）
【出願人】（０００１３４５８９）株式会社トンボ鉛筆 (158)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年１月１２日（２００６．１．１２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年６月２２日（２００４．６．２２）
【出願人】（０００１３４５８９）株式会社トンボ鉛筆 (158)
【Ｆターム（参考）】
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