説明

水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物,水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物水溶液,水性コート剤,水性コート剤の水溶液,完全無機有色塗料,高温耐熱塗料用バインダー,水性完全無機アルカリ金属珪酸塩化合物の使用方法

【課題】アニオン系有機物を使用しなくても溶液保存中のゲル化問題を解決でき且つ用途範囲を飛躍的に拡大でき,さらに,低モル比の最大の問題点である塗布後のエフロレッセンスの解決し,また,焼成を行わずに常温で硬化し且つ長期に使用目的を継続することを可能にした水性完全無機アルカリケイ酸塩組成物を提供すること。
【解決手段】珪酸カリウム,珪酸ナトリウムの単体又は混合物からなるアルカリ珪酸塩と,コロイダルシリカと,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物とを混合してなる水性完全無機アルカリ珪酸塩組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,常温硬化,焼成硬化が可能で防汚性,防傷性,耐候性並びに耐薬品性を有し,透明被膜を形成することができる水性完全無機アルカリ金属珪酸塩化合物,水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物水溶液,水性コート剤,水性コート剤の水溶液,完全無機有色塗料,高温耐熱塗料用バインダー,水性完全無機アルカリ金属珪酸塩化合物の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,無機塗料と称するものの大半は,ゾルゲル方式或いは珪酸ナトリウム,珪酸リチウム,珪酸カリウムなどのアルカリ金属珪酸塩と,コロイダルシリカ或いは粉末シリカを水溶性状にした混合物に,時間的経過中に起こるゲル化を抑えポットライフを安定化させるために,又焼成中に起こる重合収縮に対しクラック,割れなどの防止を目的として,アルカリアルキルシリコネートを配合したものがある。また,アニオン系界面活性剤,或いは有機溶剤を配合したものもある。さらに,フッ素系塗料を混合したものなどもあるが,これらは純粋には無機塗料とは言いがたく,親水性においても有機素材の混入により水との接触角が25℃以下にはならず,防汚性に欠ける。
【0003】
また,従来のアルカリ金属珪酸塩をベースとした有機,無機のハイブリッド塗料或いはコート剤は220℃以上で焼き付けをすることが条件であり,特にゾルゲル方式では,有機分を除去するにあたり400℃以上の加熱焼成が必要であり,さらに焼成により黄変するために,クリアー被膜の形成は不可能である。
さらに改良されて有機含有量を低減した特許文献1の「水性無機質塗料用組成物および塗膜形成方法」も,アルカリアルキルシリコネートを配合することにより親水性能力が低下し,防汚性に欠ける。又有機物の混入によりクリアー被膜形成時に加温により有機物中の炭素が黄変し透明な被膜の形成には不向きである。
【特許文献1】特公平10−330646
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの水性無機塗料/コート剤は,多少に関わらず有機物を配合しなければ商品化した後の保存中において,比較的短時間(3ヶ月以内)で徐々にシリカ分はゲル化し,使用に耐えなくなる。その為にアニオン系有機物の配合は避けては通れない方法であった。又焼成することが必須条件である為,工場内で塗布,焼成し製品化せざるを得ず,既に設置されている構造物,什器等への現地施工ができず,極めて使用範囲が限定されてきた。
そこで常温乾燥の可能な酸化チタンを利用した超親水性の光触媒が開発され,現在脚光を浴びているが,上記常温乾燥型光触媒は,紫外線の影響の受けない場所での光触媒効果は期待できず,また,光触媒である二酸化チタンの基材への密着度も低い。
【0005】
これまで,アルカリ金属珪酸塩化合物は,シリカとアルカリ金属のモル比が低ければエフロレッセンス問題が,又シリカの対アルカリ金属モル比を高めれば溶液の保存中にゲル化するという問題を抱えており,アルカリ金属珪酸塩を使用したこれら水性無機塗料/コート剤は,例外なく,アニオン系有機物を配合されており,ユーザーにとっては使用範囲,施工方法などの面より,使いやすい商品とは言いがたい。
従って,本発明は,上記した事情に鑑み創案されたものであり,その目的とするところは,アニオン系有機物を使用しなくても溶液保存中のゲル化問題を解決でき且つ用途範囲を飛躍的に拡大でき,さらに,低モル比の最大の問題点である塗布後のエフロレッセンスの解決し,また,焼成を行わずに常温で硬化し且つ長期に使用目的を継続することを可能にした水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係る水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物は,珪酸カリウム,珪酸ナトリウムの単体又は混合物からなるアルカリ金属珪酸塩と,コロイダルシリカと,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物とを混合してなる水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物として構成されている。
上記コロイダルシリカ中のシリカ固形分(SiO2)と上記リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物中のアルカリ金属固形分のモル比は3.8〜6.0の範囲であることが望ましい。
上記リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物中のアルカリ金属固形分の溶液性珪酸カリウムに対する重量比としては,0.1〜5%の範囲であることが望ましい。
上記した水性完全無機アルカリ珪酸塩組成物の固形分濃度は,0.5〜35%の範囲が望ましい。
上記水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物を含む水溶液としては,その固形分濃度が0.1〜35%であることが望ましい。
【0007】
上記のいずれかに記載の水性完全無機アルカリ珪酸塩組成物の固形分を0.1〜35%含み,さらにクリアーコート剤,光触媒用バインダー,無機顔料のいずれかあるいは複数が添加されてなる完全無機有色塗料が提供される。
上記構成から創案されるバインダーとしては,上記水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物中のシリカ固形分とアルカリ金属固形分のmol比を2.7〜4.8の範囲とし,重ボーメ16〜35の範囲である高温耐熱塗料用バインダーが考えられる。
また方法の発明としては,珪酸カリウム,珪酸ナトリウムの単体又は混合物からなるアルカリ金属珪酸塩と,コロイダルシリカと,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物とを混合してなる水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物の使用時に,酸化亜鉛,ホウ酸亜鉛,四ホウ酸ナトリウムのいずれかあるいは複数を即効性硬化剤として混合することを特徴とする水性完全無機アルカリ金属珪酸塩化合物の使用方法が提案される。
また,珪酸カリウム,珪酸ナトリウムの単体又は混合物からなるアルカリ金属珪酸塩と,コロイダルシリカと,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物とを混合してなる水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物を主成分とする水性コート剤及びその水溶液が提案される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物においては,アニオン系有機物を使用しなくても溶液保存中のゲル化問題を解決でき且つ用途範囲を飛躍的に拡大でき,さらに,低モル比の最大の問題点である塗布後のエフロレッセンスの解決し,また,焼成を行わずに常温で硬化し且つ長期に使用目的を継続することを可能にした水性完全無機アルカリ珪酸塩組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0010】
本発明は,基本的に,珪酸カリウム,珪酸ナトリウムの単体又は混合物からなるアルカリ金属珪酸塩と,コロイダルシリカと,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物とを混合してなる水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物である。
一般に,アルカリ金属珪酸塩はモル比が高ければ高いほど焼成した後のシロキサン結合の三次元網目構造が強固となり耐水性が増し且つ硬度が得られることは周知の事実であるが,本発明者は,使用目的に十分耐えうる範囲内での低モル比で,アニオン系有機物を使用しない方法を見出した。
【0011】
また,アルカリ金属珪酸塩としては,珪酸ナトリウム,珪酸カリウム,珪酸リチウムが知られているが,本発明者は,珪酸カリウム,珪酸ナトリウムの単体又は混合物からなるアルカリ金属珪酸塩と,コロイダルシリカと,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物とを混合してなる水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物について,非常に高度の透明度が得られることを見いだした。たとえば,珪酸カリウムを主体とし,一部珪酸ナトリウムを配合することでコロイダルシリカを調合した時,非常に透明性の高い溶液が得られ,シリカのアルカリ金属珪酸塩への溶解性が良好な事が判明した。また,リン酸ナトリウム化合物,リン酸カリウム化合物の単体あるいは混合物を適量配合することにより,常温にて塗布した時の速乾性,或いは焼成時における自然乾燥が速いことによる焼成時の膨れ,割れクラック現象の予防に重大な効果を見出した。
【0012】
特に,上記した珪酸カリウムを主体とし,一部珪酸ナトリウムを配合したものにコロイダルシリカを調合した組成物,あるいはこの組成物にリン酸ナトリウム化合物,リン酸カリウム化合物の単体あるいは混合物を適量配合した組成物(以下,実施形態組成物という)を超薄膜で無機基材表面へ塗布することにより,親水性を付与し汚染防止を行い,且つ無機基材の風合いを変えずに十二分に効果を得る事ができた。
【0013】
本発明は上記したように,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の備えている吸水性と極めて水に溶解しやすい点に着目したものである。
上記のような薄膜を形成する方法としては,スプレー塗布,布による塗布,コーター,スピンコート等種々可能であるが,通常アルカリ金属珪酸塩化合物を同様の方法で塗布した場合,先ず大気に接触している被膜表面より乾燥し被膜内部の水分が乾燥しにくくなる。例えばステンレスのような金属系では焼成時において加熱されると熱伝導率の高い基材への熱伝導により被膜自体より早く基材温度が上昇し,被膜内部に保有された水分が被膜内部で沸騰し被膜表面の膜を破って蒸発する現象が生じ,被膜表面にピンホールが発生し被膜が白くなる。また,常温乾燥にあっても,内部の水分が蒸発するには長い時間が必要となり空気中の水分とアルカリ分が反応して白華現象の一因となる。
【0014】
しかしながら,アルカリ金属珪酸塩化合物にリン酸ナトリウム化合物,リン酸カリウム化合物のいずれかの単体又はそれらの混合物を適量添加することで,これらがアルカリ金属珪酸塩化合物の中に分散され,マトリックスを形成する。その結果,被膜内部の水分をより吸収し,吸収能力を超える水分は被膜表面に放出され蒸発するので,被膜内部の水分は簡単に除去され乾燥が著しく促進される。
リン酸ナトリウム化合物,リン酸カリウム化合物のいずれかの単体又はそれらの混合物が保水する水量のコントロールは,リン酸ナトリウム化合物,リン酸カリウム化合物のいずれかの単体又はそれらの混合物の固形分添加量により決定され,上記固形分添加量は総固形分の0.1〜5重量%の範囲内で調整される。添加量が少なすぎると効果が消失し,5重量%以上添加すると,pHバランスが崩れ反応を起こしゲル化現象が発生する。
【0015】
なお,ここで言うmol比とは,水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物の中に含まれるシリカ分SiO2)の総mol値に対するアルカリ金属分(ここではカリウムK2O+ナトリウムNaO2)の総mol値を言い,その比率がシリカ3.8に対しアルカリ金属が1を指している。すなわち,上記コロイダルシリカ中のシリカ固形分(SiO2)と上記リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物中のアルカリ金属固形分のモル比が3.8〜6.0の範囲であることが望ましい。
【0016】
乾燥時間は上記実施形態組成物の固形分濃度により異なり,実施形態組成物の固形分濃度は,0.5〜35%の間で可能であることが実験により判明した。常温で使用する場合は,固形分濃度が0.5〜20%の範囲内がより効果的であり,更には即効性硬化剤である酸化亜鉛,ホウ酸亜鉛或いは四ホウ酸ナトリウムの混合物或いは単体を上記実施形態素生物の総固形分に対して0.2〜5%の重量比で塗布前に上記実施形態組成物と混合攪拌して使用すれば10〜35%の間での固形分であっても最長でも約30分で乾燥する。
【0017】
焼成使用の場合の焼成温度,時間も,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物のいずれかの単体又はそれらの混合物の徐水効果により自然乾燥段階で既に保有水分が微量になり,直接高温加熱を行っても被膜内部の水分の沸騰による膨れ現象,クラック,割れの問題が発生しない。また,アルカリ金属珪酸塩化合物を強固なシロキサン結合を形成する加熱の最低条件の温度である200℃×20分で焼付する際,低温予備乾燥を必要とせず直接高温加熱焼成が可能となり,経済的にも効果が高い。
【0018】
なお,常温乾燥での被膜の鉛筆硬度(JISG3318による)は時間経過と共に6Hまで確保でき,焼成した場合の被膜の鉛筆硬度は9H以上を得ることができる。且つ,被膜厚みが2μ以内であれば焼成した場合でも,90度曲げ加工,レザーカット加工にも被膜の剥離,割れ,クラックが発生しないことが分かった。
特に,焼成使用における固形分濃度は0.5〜35w%の範囲で可能であり,クリアーで薄膜仕上げの場合は0.5〜20%が適当で,更には3〜15w%がより好ましい。無機顔料を配合して無機塗料を製造する場合のバインダーとして使用する場合の固形分濃度は,25〜35w%で使用するのが好ましい。固形分濃度(0.5〜10w%)を低くし,微細に霧化可能なスプレーガンで数回に重ね塗布する方法,作業効率を高める為に固形分(10〜20w%)を高めて塗布回数を減らす方法など任意に選択できる。又,布などに含浸させて簡単に塗布することが可能なことにより,補修,既設建築物,什器等にも常温乾燥で施工できることを特徴としている。
【0019】
また,この実施形態組成物の固形分を0.1〜35%含み,さらにクリアーコート剤,光触媒用バインダー,無機顔料のいずれかあるいは複数を添加することで,よりエフロレッセンスの対策になると共に,超親水性を更に高度なレベルに引き上げると共に,アルカリ金属珪酸塩の特徴である長期間使用に起こるアルカリ析出量を大きく軽減し,更なる効果の持続を行う事が可能となる。
例えば従来使用できなかった加熱硬化の不可能な既に設置済みのタイル,台所用シンク,住宅壁,コンクリート打ちっ放し,大型ステンレスタンク等或いは,保冷車内部に塗布することにより魚類の残留血液の簡単な洗浄による悪臭防止,ステンレス製鉄道車両の外壁,ステンレス,アルミ,チタン等の金属製建築内外装等幅広く使用可能となった。
【実施例】
【0020】
アルカリ金属珪酸塩としては,珪酸ナトリウム,珪酸カリウム,珪酸リチウムが挙げられるが,本発明で,珪酸カリウムをアルカリ金属珪酸塩ベースとして使用した。
これらにはA珪酸カリウム,B珪酸カリウム,C珪酸カリウム,2K珪酸カリウム,1K珪酸カリウムが一般的であるが1K珪酸カリウムのモル比は1.8〜2.2と低くコロイダルシリカ混入量が多くなるため作業しにくい。2K珪酸カリウムはモル比が3.4〜3.7と高いが重ボーメ度(比重)が低いため,高濃度溶液の生産に適さない。従って,A,B,C珪酸カリウムがアルカリ珪酸塩のベースとして適している。特にA,C珪酸カリウムはコロイダルシリカを溶解させる作業性に最も有効である。
【0021】
シロキサン結合被膜形成に於けるシリカ分モル比調整としてのコロイダルシリカは,20%固形分,40%固形分濃度のものが一般的であり,いずれも適用が可能である。メーカーも数社(旭電化,日産化学等)存在するが,特にメーカーは問わない。40%固形分と20%固形分のコロイダルシリカは何れも適用可能であり,その他の固形分濃度であっても特に指定しない。
【0022】
本発明では,シロキサン結合時に於ける重合収縮の際に発生しやすいクラックを防止する為に,リン酸ナトリウム化合物,リン酸カリウム化合物の単体あるいは混合物を使用している。これは特に吸水性が高く水に極めて溶けやすい性質を利用し,被膜内部の水分をリン酸ナトリウム化合物,リン酸カリウム化合物の単体あるいは混合物に吸水させ,大気中に蒸発させることにより速乾性を付与するためである。
【0023】
リン酸ナトリウム化合物とは,リン酸2水素ナトリウム無水(NaH2PO4)を含むリン酸2水素ナトリウム結晶(NaH2PO4・2H2O),リン酸水素2ナトリウム結晶(Na2HPO4・12H2O),リン酸3ナトリウム無水(Na3PO4),リン酸3ナトリウム結晶(Na3PO4・12H2O),ピロリン酸4ナトリウム無水(Na4P2O7),ピロリン酸4ナトリウム結晶(Na4P2O7・10H2O),ピロリン酸2水素ナトリウム(Na2H2P2O7),トリポリリン酸ナトリウム(Na5P3O10),テトラポリリン酸ナトリウム(Na6P4O13),ヘキサメンタリン酸ナトリウム((NaPO3)n),酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム([NaxHy(PO3)x+y]n)の複合物或いは単体で使用できるが,より水に溶解性が高く且つ弱酸性でアルカリ金属珪酸塩に添加するのに,リン酸2水素ナトリウムがより好ましい。又リン酸カリウム化合物も同様に使用可能ある。
【0024】
コンクリート打ちっぱなしなど外部での塗布に関しては,天候,気候の影響を受けやすい,そのためできるだけ早く乾燥し,大気中の水分吸収による白華,粉塵の付着,降雨による被膜への影響を回避する必要があり,より硬化速度を高めるため酸化亜鉛,ホウ酸亜鉛或いは四ホウ酸ナトリウムなどの化合物或いは単体を併用使用すると効果的である。
コロイダルシリカの溶解性をより促進する為に,珪酸カリウムに珪酸ナトリウムを添加する。珪酸ナトリウムは,特に番手は指定しないが,通常高濃度固形分の1号珪酸ナトリウム,特1号珪酸ナトリウムが少量の添加ですむので,生産都合上便利である。
【0025】
(水性完全無機アルカリ珪酸塩組成物水溶液の製法例1)
常温乾燥/熱硬化併用型材料組成として表1が挙げられる。
【表1】

ここにMol比=シリカ固形分;アルカリ金属固形分である
リン酸2水素ナトリウムは粉末試薬100gを水200gに加熱溶解した。
これらの水溶液について,固形分濃度を20%とした原液1を作成したときの溶液透明性およびポットライフは表2のとおりであった。
【0026】
【表2】

さらに,上記原液1に対し水0.5の重量比で希釈して固形分13.33%濃度の溶液を作成し表3の試験を行った。
【表3】

低モル比3.8では,無色透明な溶液が得られ,モル比を上げてゆくとやや乳白色の透明液になっていく。モル比が高ければ乳白色の濃度が上がっていき,最大モル比6以上ではアルカリアルキルシリコネートやアニオン系界面活性剤を添加しないと溶液作成後の保存中にゲル化が起こることが判明した。これは,溶液中のアルカリ金属分と負のイオンに電荷したシリカ分バランスが崩れ,シリカ分が凝集する為である。そこでアルカリ金属珪酸塩特有のエフロレッセンスが発生せず,溶液作成後保存中にゲル化せず安定し,且つ,使用目的に対応可能な最低レベルのモル比が種々の実験により3.8が限度であることが判明した。
又,mol比3.8以下では,塗膜形成後空気中の水分吸湿が高く,アルカリ分の析出が顕著になり,エフロレッセンスの問題,手触時のアルカリ特有のヌメリ感が増加することが判明した。従ってmol比3.8以下での常温乾燥は不向きであり,又mol比6.0溶液で僅かに乳白色を示すが,これ以上のmol比においては1〜10週間の溶液保存期間で,又,mol比が高ければ高いほど短時間にゲル化することが判明した。
Mol比が高いほど乳白色が濃くなり,未溶解のコロイダルシリカが多い事が目視でわかる。尚試験の為に,有機分を含むアルカリアルキルシリコネートを5〜7%添加することにより,ゲル化は防げる事が判明したが,親水性が極度に低下することと,将来的に塗布部材のリサイクル性を勘案すると,全く有機を含まない完全水性の無機塗料が有望であり,且つ未だに開発されていない水性完全無機で,常温乾燥と熱硬化併用型の汎用性の高いmol比3.8〜6.0のアルカリ金属珪酸塩化合物が望ましい。
【0027】
(熱硬化によるモル比別の評価テスト)
次の条件に従った熱硬化によるモル比別の評価テストを行った。結果を表4に示す。
基材;SUS-304 1.2mmヘアーライン仕上げ材
焼成;250℃×30分
固形分濃度;13.3%溶液
塗布方法;布拭取り3回,
塗膜厚;約1〜2ミクロン
【表4】

【0028】
(水性無機化成被膜の製造方法;mol比4.3 固形分20%濃度液の製造方法)
C珪酸カリウム(日本化学工業製)200g,コロイダルシリカ20%固形分(旭電化製)223g,特1号珪酸ナトリウム(大阪硅曹)14g,リン酸2水素ナトリウム(太平化学産業)粉末1;水2w%の割合で加熱溶解したリン酸2水素ナトリウム溶液8g,固形分を20%に調整するための希釈水(水道水)249gを夫々計量し製造の準備を行う。
1)まず,C珪酸カリウム200gをステンレス製加熱攪拌容器に入れ,加熱する。同時にC珪酸カリウム液の透明度を保ちつつコロイダルシリカを徐々に攪拌しながら投入する。
2)次に特1号珪酸ナトリウム14gの容器に希釈水約50g,リン酸2水素ナトリウム8g容器に希釈水を100g程度入れよく攪拌しておく。
3)コロイダルシリカの投入が終われば希釈した特1珪酸ナトリウムを攪拌しながら投入し,更に加熱攪拌する。加熱により溶液粘度が上昇すれば残りの希釈水を入れ溶液粘度を抑える。
4)最後に希釈したリン酸2水素ナトリウムを徐々に投入しよく攪拌し,透明液になれば加熱を止め,残りの希釈水の投入を継続して攪拌し,溶液表面に被膜ができないように攪拌しながら冷却する。
5)最後に規定総重量になるように加熱蒸発した水分を加えて水性無機化成被膜の基準濃度(20%)を製造する。
6)特にリン酸2水素ナトリウムは酸性のため,必ず希釈し加温しながら徐々に投入する。
7)常温乾燥用として塗布/乾燥をより安易にするため,固形分濃度調整のため20%固形分溶液100gに水50gで希釈してmol比4.3固形分13.3%濃度溶液を調整する。(10%〜15%濃度が経験上最も塗布しやすく,乾燥性が高く,且つ焼成時に安定している)
mol比.4.3〜6.0の溶液についても材料処方に基づき同様に製造する。或いは,加熱溶解を行わず,常温下で配合攪拌し製造することも可能であるが,固形分濃度が20%以上の場合は,加熱方式による製造方法が好ましい。又固形分が20%以下の配合で直接目的とする低濃度固形分を製造する場合は,希釈水投入量を目的とする固形分にする事で可能である。
【0029】
(常温乾燥型を応用した塗装方法)
塗装方法は一般的に被塗布物をアルカリ脱脂,或いは被塗布物を完全に脱脂して行える。又は当社が発明した水性無機コート剤を被塗布物の表面に常温にて布で塗布して本発明品に下地剤として使用することもできる。
その方法として,1)スプレーガンによる塗布2)超音波ガンによる塗布,3)浸漬引き上げ塗布,4)スピンコーティング5)ローラーコーティング,6)布,刷毛によるコーティング7)コーターによるコーティング8)フローコーティング等通常の塗布方法があり,被塗布物の形状,表面仕上げ度合い等により最も相応しい塗布方法が選択される。
然しながら,被塗布物の脱脂,乾燥後の被塗布物の表面は完全脱脂後においてもしばしば撥水現象が発現する。このような場合有機塗料の塗布については問題なく塗布可能であるが特に水性無機塗料(コート剤)は塗料(コート剤)の弾き現象が生じ上手く塗布できない。
従って,塗料(コート剤)の塗布量を増やし多めに塗布すると,塗料が垂れ不良の発生を招くことになり水性無機塗料(コート剤)の最も大きな問題点の一つである。
この最大の要因として1)脱脂が完全でない2)脱脂液やその他汚染物質が残留している3) 陶磁器,ホーローなど釉薬を使用して焼きつけたものは水系を弾きやすい性質を有するなどがある。これらは脱脂,洗浄し乾燥させた後は目視で弾き現象が起こるかどうかは判断できず不良発生の大きな要因となっている。
そこで当発明品は簡単に布で塗布し且つ速乾性を持つ特徴を生かし当発明品を水で固形分1〜15%程度に希釈しスポンジ,布,刷毛等で被塗布基材に下地コートを施す。この時,もし一部に弾き現象が見られた部位は当該薬剤で擦ると汚れが除去され被膜が形成されると同時に,被塗布基材に非常に薄い干渉縞のある皮膜が形成される。このように下地処理をした後スプレーガンで固形分3〜15%程度の薬剤を塗布すると干渉縞は消え,ピンホールのない超薄膜が形成される。
これは,常温速乾性であるがために可能な方法であり,水性無機塗料(コート剤)の加工工程での不良率の大幅な改善を事前に解決する最良の方法である。これによりこれまで困難とされてきた水性無機塗料(コート剤)のコスト低減に繋がり用途が拡大されることとなる。
又は,前述の当社開発の水性無機コート剤を下地剤として同様に使用することを可能にし,施工場所,条件などにより使い分けができるオプションを提供している。
【0030】
(実験例1)
塗膜厚の変化によるステンレスの耐汚染性,耐指紋性,耐衝撃性の試験
次の条件で塗膜処理をして,それぞれの耐指紋性,耐汚染性,耐衝撃性を調べた結果を表5に示す。
固形分;5%
塗布方法;エアースプレーガン
硬化方法;200℃×20分
基材;ステンレスSUS-304 1.2mm バイブレーション仕上げ
【表5】

【0031】
評価方法は,次の通りである。
硬度;鉛筆硬度(JISG3318による),耐指紋性;指紋を付け,その指紋の跡が目立つか否かを目視判定した(○;殆どわからない,△;かすかに見える,X:明確に確認できる)。
耐汚染性;油性マジックで線を引き,24Hr後,水を浸した布で拭きその跡の状態で評価(○;綺麗に除去,△;一部残る,X;落ちない)。耐衝撃性;デュポン衝撃試験(1/2インチ直径球形のポンチを1kgの荷重を500mm上より落とし,衝撃を与える)により評価(○;剥離せず,X;一部剥離)
これらの実験よりステンレスへの焼付処理には,0.2〜2μ厚の被膜が好ましいことが分かった。但し使用条件により塗布被膜の厚みの用途範囲はこの限りではない。
【0032】
(実験例2)
ステンレスに下記条件に従った前記実施形態組成物と併用し屋外場暴露に於ける汚染物除去性,親水性,塗膜の変色の経時変化を試験した。結果を表6に示す。
固形分;13%
脱脂方法;SUSの保護被膜を取り去り,通常の洗浄脱脂は行わず,前記実施形態組成物の水性無機コート剤マルチタイプを布で塗布し,下地剤として使用した。
塗布方法;布による塗布
オーバーコート;下地剤と同様の水性無機コート剤マルチタイプを布で上から塗布した。
硬化方法;常温
基材;ステンレス SUS-304 1.2mmヘアーライン仕上げ
【表6】

【0033】
評価方法;
上記方法にて作成した試料を南向き位置に35度の傾斜角度に設定し規定の期間,屋外暴露しその結果を観察した。
親水性;被膜上部に堆積した汚れを水で流し,表面を清浄化した後自然乾燥24Hrし,水との接触角を計測した(○;接触角10度以下,△;接触角20度以下,X;接触角20度以上)。
汚染物除去性;被膜上に堆積した汚れを濡れた布で軽く拭取りその除去性を観察した(○;軽く拭き取り2回で除去,△;軽く拭き取り4回で除去,X;軽く拭き取り4回でやや汚れ跡が残る)。塗膜の変質;塗膜表面に白華,エフロレッセンスなどの現象が発現していないか目視で観察した。(○;全く発生していない,△;やや発生が見られるが水洗で落ちる,X;目視で確認でき水洗で除去できない)
【0034】
(実験例3)
醸造工場においてステンレス製貯蔵タンクに実施形態組成物をスプレー塗布して放置。通常は飛散した発酵菌が通常2週間で付着し,黒く黴状に汚染される。これを防ぐ効果を確認した。
対象物;2m直径×3m高さのSUS-304
固形分;10%
脱脂方法;SUS表面に酸性ゲル状の薬剤を塗布し2Hr放置後,水できれいに洗浄した後,本発明品を5%に水で希釈し布で満遍なく塗布し親水性を付与し下地剤として処理した。
塗布方法;スプレーガンにより重ね塗り4回塗布
硬化方法;常温
観察期間;13ヶ月
結果;通常2週間程度,温度の高い夏季は更に早い時期に飛散した発酵に供する菌により真っ黒に付着するが,13ヶ月経過後の観察においてもこれら黴は全く付着していない。又,白華,エフロレッセンスなどの発現は確認できない。
【0035】
(実験例4)
魚介類を運搬する目的に供する保冷車内部では,血液を含む氷が解凍し,保冷車庫内に付着し悪臭を発する。通常の洗浄では細部に残留した血液や悪臭源が取れず大きな問題となっている。この問題を解決すべく,本発明品を塗布するだけで,水圧のみでこれらを簡単に除去することができるかどうかの実験を行った。
新車の4トン車に搭載したステンレス製冷蔵保冷庫内部の前面に前記実施形態組成物の水性無機コート剤を下地剤と上塗り剤に使用し,中間コート剤として前記実施形態組成物を布で2回重ね塗りした。
通常,新車であっても2〜3日で悪臭が発生し,特に夏場では更に早い時期に発生する。又汚れが堆積してなかなか洗浄ができないが,前記実施形態組成物を塗布し通常の業務に使用した結果,既に4ヶ月を経過しても全く悪臭は発生していない。洗浄は通常行われているように,荷物を搬送し帰社後,水道水をホースで保冷車庫内に掛け水圧で洗浄し排水している。血液に含有する油分,蛋白分なども非常に剥離性が良く,悪臭の元となる汚染物の除去に効果のあることが判明した。
【0036】
(実験例5)
某コンビニエンスストアーのトイレ内の悪臭を押さえる目的で衛生陶器内部に塗布し臭気の発生を抑制する実験を行った。当実験は12ヶ所の別店舗で実施した。
先ず,便器内の水を全部除去し,付着している水垢(ミネラル分やそれに堆積した汚れ),黒ずみなどをアルカリ洗浄剤,酸性清浄剤などで除去し乾いた布で水分を除去した。その上に13%固形分の実施形態組成物を布で満遍なく塗布し乾燥後,更に同様に3回塗布した。良く乾燥した後,遠赤外線ヒーターで徐々に加温し約400℃で20〜30分キープし焼成した。
塗布後,便器用の酸性洗浄剤など一切の洗浄剤を使用せず6ヶ月経過後観察したが,臭気はなく,現在8ヶ月に至り尚,効果持続中である。
【0037】
(実験例6)
既設の台所壁などに使用する目的の内装用ブライトタイルに塗布して,油汚れが簡単に落とせるかについて実験した。
既設のタイルの汚れを中性洗剤で洗浄し洗剤を濡れた布で良く拭き取った後,実験例2と同様の方法,即ち実施形態組成物の水性無機コート剤マルチタイプを布で塗布し,下地剤,上塗り剤として使用し中間コート剤として本発明品を布で2回重ね塗りした。
通常の使用下において,8ヶ月経過したが,効果は継続中である。
尚,塗布後,濡れた布を固く絞って1日2回汚れの拭き取り作業を行った。
【0038】
(実験例7)
本発明品と通常使用されているステンレスコート剤の指紋除去に関する比較テストを行った。結果を表7に示す。
目的;SUS製内外装建材,SUS製器材用を主とした各種試験を行った。
基材;SUS-304 1.5mm(厚み)バイブレーション仕上げ材を基材とした。
使用薬剤;mol比 4.3 固形分 6.65%の本発明品を使用した。
塗布方法;高霧化エアースプレーガンによる塗布(2往復塗布)
焼成;200℃×20分焼成
形成膜厚;1〜2μm クリアー仕上げ
*某ステンレス加工メーカーにおいて試験データーの協力を得た。
*実施形態素生物以外の膜厚はその特性に準じて使用される膜厚とした。(その他実験参照)
【表7】

【0039】
(実験例8)
実施形態組成物を塗布したものと従来のコーティング剤を塗布したもので耐マジックインクの除去程度を比較した。
表8に結果を示す。
【表8】

【0040】
その他の性能試験の結果を表9に示す。
【表9】

【0041】
耐洗剤性・耐薬品性に関する結果を表10に示す。
【表10】

【0042】
後加工性についての性能試験の結果を表11に示す。
【表11】

【0043】
ステンレス製タンク3m(H)×2m(dia)の表面に本発明品のコート剤であって固形分を1w%に調整した水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物を,下地剤として布で塗布し,更に13w%固形分に調整した水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物を上からスプレーガンにて数回重ね塗布した。被膜厚みは約2〜3μm程度となった。通常醸造会社では発酵菌が飛散し,2週間程度で周辺黒かびが発生するが,塗布経過4ケ月後に確認した結果全くカビの発生が無く,降雨,降雪等により汚れが除去されており,且つ常温乾燥で白華現象等問題も発生していない。
【0044】
又,固形分を30w%に調整した水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物に,酸化亜鉛,ホウ酸亜鉛,四ホウ酸ナトリウムのいずれかの単体あるいはそれらを複数含む混合物からなる即効性硬化剤を1.5w%混合し,コンクリート打ちっ放し部位にスプレーガンにて吹き付け塗布した。混合物の一例が表12に示されている。4ケ月後に塗布部位と非塗布部位の検証を行った結果,非塗布部位は既に黄色に変色が見えたが,塗布部位は全く変化していない事が確認された。
【表12】

【0045】
なお,実際の実験では,本発明品のコート剤であって固形分を0.1〜35w%の範囲で調整した水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物について,充分な効果が確認されているが,ここではそのうちの1w%の場合を取り上げて記載した。
【0046】
水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物中のシリカ固形分とアルカリ金属固形分のmol比を2.7〜4.8の範囲で重ボーメ16〜35範囲で試験した。その結果,これらの範囲で使用可能と判明したが,一例としてのmol比を4.8に調整し,固形分濃度25w%(重ボーメが24)になるように水で希釈して調整した水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物をバインダーとして71.42w%重量部とし,ピグメントとして28.58w%重量部として超耐熱完全無機有色塗料を,以下の表13のように作成した。
【表13】

上記表13の配合割合で混合し,500mlのポリ容器に入れ,チタニアビーズ(直径2.2mm)を上記配合重量に対し250g入れ,ペイントシェーカー(640r.p.m)にて30〜40分分散した。
これを,ステンレスSUS-304にスプレーガンで約30〜40μm塗布し,120℃より徐々に温度を上昇し230℃にて20分キープし仮焼成した後,600〜700℃に上昇し,30〜1時間キープして焼き付けた。
仮焼成(120〜230℃キープ20分)のものを耐沸騰水性,耐アルカリ性,耐湿度性,耐熱性の試験を行ったが全て結果は良好であった。
又,600℃×30時間の耐熱試験後,耐沸騰水性(10時間),耐塩水性(5%NaCl室温で2週間),耐アルカリ性(5%NaOH 室温1ケ月)の試験に全て変化無しの効果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸カリウム,珪酸ナトリウムの単体又は混合物からなるアルカリ金属珪酸塩と,コロイダルシリカと,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物とを混合してなる水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物。
【請求項2】
上記アルカリ珪酸塩中のシリカ固形分(SiO2)とコロイダルシリカ中のシリカ固形分(SiO2)の合計と上記アルカリ金属珪酸塩中のアルカリ金属固形分とリン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物中のアルカリ金属固形分の合計のモル比が3.8〜6.0の範囲である請求項1記載の水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物。
【請求項3】
上記リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物中の固形分の水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物の総固形分に対する重量比を0.1〜5%の範囲とした請求項1あるいは2のいずれかに記載の水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物の固形分濃度が0.1〜35%であることを特徴とする水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物水溶液。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物の固形分を0.1〜35%含み,さらにクリアーコート剤,光触媒用バインダー,無機顔料のいずれかあるいは複数が添加されてなる完全無機有色塗料。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物のシリカ固形分とアルカリ金属固形分のmol比を2.7〜4.8の範囲とし,重ボーメ16〜35の範囲である高温耐熱塗料用バインダー。
【請求項7】
珪酸カリウム,珪酸ナトリウムの単体又は混合物からなるアルカリ金属珪酸塩と,コロイダルシリカと,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物とを混合してなる水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物の使用時に,酸化亜鉛,ホウ酸亜鉛,四ホウ酸ナトリウムのいずれかあるいは複数を即効性硬化剤として混合することを特徴とする水性完全無機アルカリ金属珪酸塩化合物の使用方法。
【請求項8】
珪酸カリウム,珪酸ナトリウムの単体又は混合物からなるアルカリ金属珪酸塩と,コロイダルシリカと,リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物とを混合してなる水性完全無機アルカリ金属珪酸塩組成物を主成分とする水性コート剤及びその水溶液。

【公開番号】特開2009−1685(P2009−1685A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164287(P2007−164287)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(594136583)株式会社トレードサービス (5)
【Fターム(参考)】