説明

水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法

【課題】水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法を提供する。
【解決手段】溶媒を提供するステップと、1つの添加剤、イオン源、および前記部分溶解性コロイドまたは非溶解性コロイドから選択される粒子源を少なくとも前記溶媒に添加し、水性懸濁液を作成するステップとを含む、水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法であって、前記1つの添加剤は、前記粒子源が前記部分溶解性コロイドを含むとき、前記イオン源および前記粒子源に先だって、前記溶媒に添加されることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は概して、水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法に関する。詳細には、本明細書に記載の実施形態は概して、低分子量の有機両性イオン種または少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸群を有する有機種のうち少なくとも1つを有する添加剤を添加することによって、水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイド懸濁液は、セラミック部材の製造や塗装、コーティングをはじめ、幅広い用途に用いられ、水性溶媒中に分散する固体粒子(コロイド)からなる。コロイド懸濁液は、分散コロイドに加え、(陰性、陽性、中性の)有機溶解ポリマ、有機モノマ、無機カチオン、および無機アニオンを含有することができる。有機ポリマおよび有機モノマを、水性懸濁液に意図的に溶解させ、生強度を向上させるバインダ、粒子が分散された消泡剤、乾燥助剤、または粘度調整剤として作用するようにしても良い。無機カチオンおよび無機アニオンは、次の2つの理由のいずれかによって存在しても良い。1つめの理由は、コロイドにおける粒子の分散または懸濁液に添加された不純物種による、懸濁液へのカチオンおよびアニオンの浸出である。2つめの理由は、懸濁液への意図的な無機塩の添加である。例えば、セラミック加工において、無機塩を添加して、焼結助剤または化学修飾としても良い。
【0003】
無機カチオンおよび無機アニオンの懸濁液への分散によって、有機イオンがコロイドの綿状沈殿を促進する副作用が生じる可能性がある。そしてこの現象によって、コロイドまたは添加された塩類から初期に溶解するイオンが局部的に集中し、その結果、懸濁液の粘度上昇やせん断現象、ならびに均質ではない凝固物の生成など、望ましくないレオロジー変化が生じる可能性がある。さらに、かかる問題は、懸濁液のイオン強度[I]によっては、カリウム(K)などの一価塩の大量添加によっても、バリウム(Ba2+)、カルシウム(Ca2+)、アルミニウム(Al3+)、イットリウム(Y3+)、硫酸塩(SO2−)などの二価または三価イオンの少量添加によっても悪化する可能性がある。懸濁液のイオン強度は、懸濁液に溶解しているイオンを「i」とし、iのcを濃度、zを価数とするとき、[I]=1/2×Σ[c]の関係が成り立つ。すなわち、懸濁液のイオン強度は、一価カチオンに比して、同じ濃度で、二価カチオンの場合は4倍、三価カチオンの場合は9倍となる。
【0004】
現在、アニオンおよびカチオンを含有する懸濁液において、コロイド粒子の分散を制御するための方策が2つある。1つめは一般的に、櫛型構造をとり、その「バックボーン」としてポリアクリル酸などの多価電解質、「歯」としてポリエチレンオキシドなどの水溶性ポリマを含有する分散剤を用いる方策である。例えば、特許文献1を参照されたい。この1つめの方策は、溶解しているイオンが、添加された塩類またはコロイド粒子の部分的溶解によるものである場合、有効である。2つめは、溶解しているコロイド粒子の表面に、シュウ酸またはリン酸などを保護剤として用いた化学的に不活性である層を形成する方策である。例えば、特許文献2を参照されたい。この2つめの方策は、浸出の阻止には効果的であるが、懸濁液に塩類を意図的に添加する場合には効果的ではない。
【特許文献1】米国特許第7,053,125号
【特許文献2】米国特許第6,458,414号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、イオンの発現形式にかかわらず、アニオンおよびカチオンを含有する水性懸濁液中における粒子分散を制御する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載の実施形態は概して、溶媒を提供するステップと、添加剤、イオン源、および部分溶解性コロイドまたは非溶解性コロイドからなる群から選択される粒子源を少なくとも前記溶媒に添加し、水性懸濁液を作成するステップとを含み、前記粒子源が前記部分溶解性コロイドを含むとき、前記イオン源および前記粒子源に先だって、前記溶媒に添加される1つの添加剤とを含有する、水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法に関する。
【0007】
また、本明細書に記載の実施形態は概して、溶媒を提供するステップと、部分溶解性コロイドを含むイオン源と、粒子源と、前記イオン源が前記部分溶解性コロイドを含有してから約24時間以内に前記溶媒に添加される1つの添加剤とを少なくとも添加するステップを有する、水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法に関する。
【0008】
以上に記載の、またはその他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明によって、当業者に明示されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書に記載の実施形態は概して、水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法に関する。
【0010】
ここでの「添加剤」とは、低分子量の有機両性イオン種(以下、「両性イオン種」と称する)、または少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸群を含有する有機種(以下、「有機種」と称する)から選択される組成をいう。詳細には、両性イオン種には、同一粒子において、アニオン性の群(例えば、カルボン酸群、スルホン酸群、ホスホン酸群など)、ならびにプロトン性アミン群を有する極性分子が含まれて良い。かかる両性イオン種には、これらに限定されないが、グリシンおよびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのアミノカルボン酸と;2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、およびN−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)などのアミノスルホン酸と;1−アミノアルキルホスホン酸、および2−(ピリジルメチル)ホスホン酸などのアミノホスホン酸とが含まれて良い。また、有機種は、これらに限定されないが、かかる群に含まれる組成において、クエン酸、ポリクエン酸、グルコン酸、ポリグルコンと、酒石酸、リンゴ酸、サリチル酸、ヒドロキシサリチル酸、ならびにブドウ糖、ショ糖、およびマンノースなどの糖類を有して良い。
【0011】
理論上は、これに限定されるべきではないが、上述した複数の添加剤がイオンを含む懸濁液に含まれるとき、この複数の添加剤は懸濁液中の複数のイオンと結合して安定な複合体をなす。このように安定な複合体が生成されると、イオンの相互作用が妨げられる。結果、綿状沈殿が、さらには懸濁液の粘度上昇やせん断現象、均質ではない凝固物の生成が生じる。
【0012】
以下に、上述した複数の添加剤を、望ましい安定化作用を得られるよう水性懸濁液に添加する様々な方法を示す。なお、適用する方法にかかわらず、水性懸濁液は、添加剤の他に、溶媒、イオン源、粒子源、ならびに分散剤、結合剤、可塑剤、および消泡剤などの任意で添加される種を含んで良い。
【0013】
ここでは、「溶媒」として、イオン源および任意で追加される種が添加される水を含む。以下に説明するように、イオン源および任意で添加される種は、水性懸濁液の作成中の異なる時点で溶媒に添加される。
【0014】
上述のように、水性懸濁液は少なくとも1つのイオン源を有して良い。ここでの「イオン源」とは、無機塩、溶解性コロイド、部分溶解性コロイド、不純物、およびそれらの組み合わせをいう。
【0015】
また、「塩類」とは、当業者周知のあらゆる無機塩をいう。かかる塩類は概して、溶媒に導入されると、100%溶解可能である。
【0016】
溶解性コロイドは、完全に溶媒に溶解する。本実施形態において、溶解性コロイドは、上述した塩類と同様に作用するため、塩類と同等とみなされる。適当なコロイド組成を、以下に示す。
【0017】
部分溶解性コロイドがイオン源として含まれる場合、部分溶解性コロイドから溶媒にイオンが放出される一方、溶解プロセスの完了時に約10nm〜約10μmの大きさの粒子が残留する。すなわち、部分溶解性コロイドは、イオン源としての役割も粒子源としての役割も果たす。以下にその詳細を示す。部分溶解性コロイドは、粒子から離れた位置でイオンを選択的に浸出させることによって、界面化学的な変化を伴っても良いし、または代替的に、粒子を一様に溶解させることによって、界面化学的な変化を伴わずとも良い。部分溶解性コロイドの溶解は、以下に示すような様々な事象の1つが発生するまで続く。溶解プロセスは、一実施形態において、部分溶解性コロイドの界面領域がイオンに欠損し、イオン放出が律速段階となることを受け終了する。溶解プロセスは、他の実施形態において、部分溶解性コロイド界面が、pH変化などの界面化学的な変化によって不動態化することを受け終了する。溶解プロセスは、さらに他の実施形態において、イオン放出によって懸濁液が飽和状態となり、熱力学的平衡状態となることを受け終了する。
【0018】
ここでの「不純物」とは、あらゆる付随イオンの供給をいう。不純物の由来は、これらに限定されないが、溶媒として用いられる不純水、スラリーを保持する容器、ならびに処理時、付随的な塩類の添加時などに用いられたスラリー供給導管を含め、様々である。
【0019】
塩類、溶解性コロイド、部分溶解性コロイド、不純物、またはそれらの組み合わせがイオン源として含まれているか否かにかかわらず、イオン源は溶媒に添加されると溶解し、イオンが生成される。溶解したイオン源から得られるイオンとして、これらに限定されないが、H、NH、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+、Sc3+、Y3+、La3+、Ce3+、Ce4+、Pr3+、Nd3+、Pm3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+、Lu3+、Al3+、Cr2+、Cr3+、Fe2+、Fe3+、Ti3+、Ti4+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Co2+、Co3+、Ni2+、Ni3+、Cu、Cu2+、Cu3+、Zn2+、Ga3+、Ge2+、Ge4+、Se2+、Se4+、Zr2+、Zr4+、Nb3+、Nb5+、Rh3+、Pd2+、Ag、Cd2+、In、In2+、In3+、Sn2+、Sn4+、Sb3+、Sb5+、Hf2+、Hf4+、Ta3+、Ta5+、Ir3+、Au3+、Hg2+、Hg2+、Tl、Tl3+、Pb2+、Pb4+、Bi3+、Po2+、Ac3+、Th2+、Th4+、U、U2+、U3+、UO2+、V2+、V3+、Np3+、Np4+、NpO、Pu3+、Pu4+;OH、F、Cl、Br、I、At、SO2−、S2−、HSO、SO2−、HSO、PO3−、HPO2−、HPO、PO3−、NO、NO、CO2−、HCO、HCO、MoO2−、WO2−、TcO、RuO、ReO、C、C2−、HC、HS、Te2−、NH、OCN、SCN、CN、P3−、S2−、O2−、As3−、AsO3−、AsO3−、BO3−、BrO、BrO、ClO、ClO、ClO、ClO、CrO2−、Cr2−、IO、MnO;およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0020】
また、本実施形態による水性懸濁液は、粒子源を有して良い。ここでの「粒子源」とは、溶媒中に懸濁しうる固体粒子をいう。粒子源としては、部分溶解性コロイド、非溶解性コロイド、またはそれらの組み合わせが含まれて良い。上述したように、部分溶解性コロイドからは、溶媒にイオンが放出される一方、溶解プロセスの完了時に約10nm〜約10μmの大きさの粒子が残留するので、部分溶解性コロイドは、イオン源としての役割も粒子源としての役割も果たす。また、「非溶解性コロイド」とは、溶解しない、すなわち溶媒中に全くイオンを放出しないコロイドをいう。非溶解性コロイドの大きさは、約10nm〜約10μmである。
【0021】
ここでの「コロイド」とは、溶解性、部分溶解性、または非溶解性を問わず、セラミック粒子、ガラス微粒子、金属微粒子、ポリマ粒子、または半導体微粒子からなる群から選択される。コロイドは概して、懸濁液の総容積(すなわち、懸濁液の容積にコロイド容積を加算した容積)に対して約0.0001vol%〜約60vol%の割合を占める。
【0022】
ここでの「セラミック粒子」として、これらに限定されないが、SiC、Si、AlN、NaO、LiO、KO、AgO、TlO、CuO、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、NiO、CdO、CoO、MnO、CuO、TeO、ZnO、SnO、PbO、FeO、HgO、PdO、AgO、TiO、VO、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cr、Al、Fe、Bi、Co、Sb、Ni、Mn、B、In、Ga、Pb、Tl、As、Rh、Ti、W、V、TiO、ZrO、HfO、ThO、CeO、CrO、UO、TeO、SeO、SiO、MnO、TcO、GeO、SnO、PbO、PuO、RuO、WO、VO、Sb、As、V、Nb、Ta、P、CrO、MoO、ReO、WO、TeO、SeO、UO、Fe、Co、Mn、Re、OsO、RuO、またはそれらの組み合わせが含まれて良い。かかるセラミック粒子の組み合わせとして、これらに限定されないが、RESi、RESiO、REAl、REGa、REFe、AETiO、AEAlO、AEAl、AEAl1219、AEZrO、AEHfO、AECeO、REZr、REHf、REPO、AE(PO、AETa、AENb、RETaO、RENbO、AlPO、ZrSiO、HfSiO、およびインジウムスズ酸化物などの酸素混合物が含まれて良い。ここでREは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびルテチウム(Lu)から選択される希土類元素である。また、AEは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、およびバリウム(Ba)から選択されるアルカリ土類元素である。
【0023】
ここでの「ガラス微粒子」には、これらに限定されないが、二酸化ケイ素(SiO2)とともに、NaO、LiO、KO、AgO、TlO、CuO、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、NiO、CdO、CoO、MnO、CuO、TeO、ZnO、SnO、PbO、FeO、HgO、PdO、AgO、TiO、VO、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cr、Al、Fe、Bi、Co、Sb、Ni、Mn、B、In、Ga、Pb、Tl、As、Rh、Ti、W、V、TiO、ZrO、HfO、ThO、CeO、CrO、UO、TeO、SeO、SiO、MnO、TcO、GeO、SnO、PbO、PuO、RuO、WO、VO、Sb、As、V、Nb、Ta、P、CrO、MoO、ReO、WO、TeO、SeO、UO、Fe、Co、Mn、Re、OsO、RuO、およびそれらの混合物のいずれかを含む非晶質粒子(すなわち、パウダーX線回折スキャンにおいて観察される結晶ピークを有さない粒子)が含まれて良い。さらに、ガラス微粒子は、フッ素(F)、塩素(CL)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、およびそれらの混合物のいずれかを有して良い。
【0024】
ここでの「金属微粒子」は、これらに限定されないが、シリコン(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、レニウム(Re)、白金(Pt)、金(Au)、鉄(Fe)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、それらの合金、およびそれらの混合物を含んで良い。例えば、金属微粒子合金は、ニッケル-クロム-アルミニウム−イットリウム(NiCrAlY)、コバルト−クロム−アルミニウム−イットリウム(CoCrAlY)、鋼、アルミナイド、シリサイドなどを含有して良い。
【0025】
ここでの「ポリマ粒子」は、これらに限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、シリコーン、ポリアクリル酸、ポリエチレン、ポリスチレンなどを含有して良い。また、かかるポリマ粒子の乳濁液は、ラテックスとして周知である。
【0026】
ここでの「半導体微粒子」は、これらに限定されないが、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン化インジウム(InSb)、ガリウムリン(GaP)、窒化ガリウム(GaN)、硫化亜鉛(ZnS)、テルル化カドミウム(CdTe)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、およびセレン化亜鉛(ZnSe)を含有して良い。
【0027】
水性懸濁液に添加され含まれうる種について、説明を戻す。分散剤はポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリビニルリン酸、硫化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、ポリビニルスルホン酸、およびそれらの組み合わせを含有して良い。結合剤は、ポリビニルアルコール、酸化ポリエチレン、キサンタンゴム、グァーガム、メチルセルロース、セルロース誘導体、およびそれらの組み合わせを含有して良い。可塑剤は、グリセリン、グリセロール、およびエチレングリコールを含有して良い。消泡剤は、サーフィノール(Surfynol(R))502およびサーフィノール(Surfynol(R))420などの有機界面活性剤を含有して良い。
【0028】
水性懸濁液の作成プロセスは概して実施形態によって異なるが、上述したように、添加剤についてはいずれも、イオン源が添加されてから24時間以内に懸濁液に添加される。
【0029】
一実施形態において、添加剤は溶解性コロイドに先だって導入されて良い。ここでは、溶解性コロイドが塩類として、すなわちイオン源として作用する。他の実施形態において、添加剤は非溶解性コロイドの後、かつ塩類に先だって導入されて良い。さらに他の実施形態において、添加剤は非溶解性コロイドおよび塩類の両方に先だって導入されて良い。またさらに他の実施形態において、上述したように、添加剤は部分溶解性コロイドが添加されてから約24時間以内に導入されて良い。添加剤を導入しない場合、約24時間後、部分溶解性コロイドを含有する懸濁液では概して粘度上昇が生じる。またさらに他の実施形態において、上述した不純物によって生じる綿状沈殿、さらには強粘度のゲル形成を妨げるため、非溶解性コロイド(塩類は添加されない)を含有する懸濁液に、添加剤を導入する。
【0030】
他に考慮されるべき処理パラメータとして、攪拌および温度が含まれる。詳細には、懸濁液は、添加剤が溶解するまで攪拌されることが望ましい。なお、添加剤の溶解させ、懸濁液の均質性保持、および/または沈殿抑止あるいは弱いゲルが形成された場合のゲル破壊に必要とされるよりも長く攪拌されても良い。
【0031】
次に温度について、水性懸濁液の温度は約100℃(約212°F)未満に維持され、一実施形態においては、懸濁液の作成中を通して約50℃(約122°F)に維持されるのが望ましい。水性懸濁液の温度が100℃を超える場合、コロイドの溶解性が上昇するので、所望の安定性を得るために必要な添加剤の量が増加してしまう。さらに、水温が100℃を超えると、溶媒である水が気化してしまう。
【0032】
結果、液中の粒子分散を制御する添加剤を含有する水性懸濁液において、添加剤が懸濁液中のイオン複合体の安定化を促進するので、イオン存在下での綿状沈殿の生成が抑制される。このように複合体が安定することによって、粒子の綿状沈殿、さらには懸濁液の粘度上昇やせん断現象、ならびに均質ではない凝固物の生成などの問題の原因となるイオン反応が抑止される。
【0033】
以上、本発明を実施する上で最良の態様を含め、例示を用いながら、当業者が本発明を理解し活用できるよう、本発明を説明した。本発明の精神は、添付の特許請求の範囲において、当業者に考えられうるさらなる実施形態を包含する。かかる実施形態において、特許請求の範囲に記載の表現と同等の構成要素、またはほぼ同等の構成要素もまた、本発明の特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法であって、
溶媒を提供するステップと;
少なくとも、1つの添加剤と、塩類、溶解性コロイド、部分溶解性コロイド、不純物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるイオン源と、前記部分溶解性コロイド、非溶解性コロイドからなる群から選択される粒子源と、を前記溶媒に添加し、水性懸濁液を作成するステップと
を含み、
前記1つの添加剤を、前記粒子源が前記部分溶解性コロイドを含むとき、前記イオン源および前記粒子源に先だって、前記溶媒に添加することを特徴とする、方法。
【請求項2】
水性懸濁液中の粒子分散を制御する方法であって、
溶媒を提供するステップと;
少なくとも、部分溶解性コロイドを含むイオン源と、前記部分溶解性コロイド、または非溶解性コロイドからなる群から選択される粒子源と、1つの添加剤と、を添加するステップと
を含み、
前記1つの添加剤を、前記イオン源が前記部分溶解性コロイドを含有してから24時間以内に前記溶媒に添加することを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記1つの添加剤は、
アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、またはアミノホスホン酸から選択される組成を有する低分子量の有機両性イオン種からなる群;または
クエン酸、ポリクエン酸、グルコン酸、ポリグルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、サリチル酸、ヒドロキシサリチル酸、または糖類を含む、少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸群を含むイオン種からなる群
から選択される少なくとも1つの組成を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン源を溶解し、
、NH、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+、Sc3+、Y3+、La3+、Ce3+、Ce4+、Pr3+、Nd3+、Pm3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+、Lu3+、Al3+、Cr2+、Cr3+、Fe2+、Fe3+、Ti3+、Ti4+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Co2+、Co3+、Ni2+、Ni3+、Cu、Cu2+、Cu3+、Zn2+、Ga3+、Ge2+、Ge4+、Se2+、Se4+、Zr2+、Zr4+、Nb3+、Nb5+、Rh3+、Pd2+、Ag、Cd2+、In、In2+、In3+、Sn2+、Sn4+、Sb3+、Sb5+、Hf2+、Hf4+、Ta3+、Ta5+、Ir3+、Au3+、Hg2+、Hg2+、Tl、Tl3+、Pb2+、Pb4+、Bi3+、Po2+、Ac3+、Th2+、Th4+、U、U2+、U3+、UO2+、V2+、V3+、Np3+、Np4+、NpO、Pu3+、Pu4+と、
OH、F、Cl−、Br、I、At、SO2−、S2−、HSO、SO2−、HSO、PO3−、HPO2−、HPO、PO3−、NO、NO、CO2−、HCO、HCO、MoO2−、WO2−、TcO、RuO、ReO、C、C2−、HC、HS、Te2−、NH、OCN、SCN、CN、P3−、S2−、O2−、As3−、AsO3−、AsO3−、BO3−、BrO、BrO、ClO、ClO、ClO、ClO、CrO2−、Cr2−、IO、MnOと、それらの組み合わせからなる群から選択されるイオンを生成するステップを含むことを特徴とする、請求項1、2、または3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記コロイドは、セラミック粒子、ガラス微粒子、金属微粒子、ポリマ粒子、または半導体微粒子からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1、2、3、または4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記セラミック粒子は、SiC、Si、AlN、NaO、LiO、KO、AgO、TlO、CuO、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、NiO、CdO、CoO、MnO、CuO、TeO、ZnO、SnO、PbO、FeO、HgO、PdO、AgO、TiO、VO、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cr、Al、Fe、Bi、Co、Sb、Ni、Mn、B、In、Ga、Pb、Tl、As、Rh、Ti、W、V、TiO、ZrO、HfO、ThO、CeO、CrO、UO、TeO、SeO、SiO、MnO、TcO、GeO、SnO、PbO、PuO、RuO、WO、VO、Sb、As、V、Nb、Ta、P、CrO、MoO、ReO、WO、TeO、SeO、UO、Fe、Co、Mn、Re、OsO、RuO、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される組成を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ガラス微粒子は、NaO、LiO、KO、AgO、TlO、CuO、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、NiO、CdO、CoO、MnO、CuO、TeO、ZnO、SnO、PbO、FeO、HgO、PdO、AgO、TiO、VO、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cr、Al、Fe、Bi、Co、Sb、Ni、Mn、B、In、Ga、Pb、Tl、As、Rh、Ti、W、V、TiO、ZrO、HfO、ThO、CeO、CrO、UO、TeO、SeO、SiO、MnO、TcO、GeO、SnO、PbO、PuO、RuO、WO、VO、Sb、As、V、Nb、Ta、P、CrO、MoO、ReO、WO、TeO、SeO、UO、Fe、Co、Mn、Re、OsO、RuO、又はそれらの混合物からなる群から選択される組成と併せて、二酸化ケイ素を含有する非晶質粒子であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記金属微粒子は、シリコン、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、白金、金、鉄、イリジウム、コバルト、クロム、タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、それらの合金、およびそれらの混合物からなる群から選択される組成を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマ粒子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、シリコーン、ポリアクリル酸、ポリエチレン、またはポリスチレンからなる群から選択される組成を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記半導体微粒子は、ガリウムヒ素,シリコン,ゲルマニウム,アンチモン化インジウム,ガリウムリン,窒化ガリウム,硫化亜鉛,テルル化カドミウム,セレン化カドミウム,テルル化亜鉛、またはセレン化亜鉛からなる群から選択される組成を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2009−148746(P2009−148746A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266959(P2008−266959)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】