説明

水性描画材組成物

【課題】従来のエマルジョン絵具と同様に、乾燥後の塗面に水滴が付いても、滲みや溶け出しが起こらず、下地の塗膜上に重ね塗りしても、その下地が動かない程度に耐水性を有し、それでいて、パレットや絵筆に付着し、乾燥した場合にも、水洗いによって容易に取り除くことができる水性描画材組成物を提供する。
【解決手段】水、着色顔料、水溶性樹脂及び樹脂エマルジョンを含む水性描画材組成物において、上記水溶性樹脂としてヒドロキシアルキルセルロースのみを有し、上記樹脂エマルジョンを固形分にて0.1重量%以上、5重量%未満の範囲にて含むことを特徴とする水性描画材組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来のエマルジョン絵具と同様に、塗膜が乾燥した後は、その塗膜に水滴が付着しても、塗膜に滲みや溶け出しが起こらず、また、下地の塗膜に重ね塗りしても、その下地に滲みや溶け出しが起こらない、即ち、下地が動かない程度に水濡れに対する抵抗性を有し、それでいて、パレットや絵筆に付着し、乾燥した後にも、水洗いによって取り除くことができる水性描画材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エマルジョン絵具として知られている水性描画材組成物は、水を溶媒とし、顔料を着色剤とし、樹脂エマルジョンを定着剤として有する一種の水性描画材組成物であって、描画面上に描画して、塗膜を形成した後、その塗膜から溶媒が蒸発し、塗膜が乾燥すれば、エマルジョン中の樹脂が造膜して、描画面上に水不溶性、従って、水濡れに対して抵抗性を有する塗膜を形成する。
【0003】
このような従来のエマルジョン絵具は、上述したように、塗膜が水濡れに対する抵抗性にすぐれるように、樹脂エマルジョンを多く含むので(特許文献1及び2参照)、パレットや絵筆に付着して、乾燥した後には、水洗いによって取り除くことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−221552号公報
【特許文献2】特開2008−0379172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のエマルジョン絵具における上述した問題を解決するためになされたものであって、従来のエマルジョン絵具と同様に、乾燥後の塗膜に水滴が付着しても、塗膜に滲みや溶け出しが起こらず、また、下地の塗膜上に重ね塗りしても、その下地が動かない程度に水濡れに対する抵抗性を有し、それでいて、パレットや絵筆に付着し、乾燥した後であっても、水洗いによって取り除くことができる水性描画材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、水、着色顔料、水溶性樹脂及び樹脂エマルジョンを含む水性描画材組成物において、上記水溶性樹脂としてヒドロキシアルキルセルロースのみを有し、上記樹脂エマルジョンを固形分にて0.1重量%以上、5重量%未満の範囲にて含むことを特徴とする水性描画材組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明による水性描画材組成物は、水溶性樹脂として、ヒドロキシアルキルセルロースのみを含むと共に、樹脂エマルジョンを固形分にて0.1重量%以上、5重量%未満の範囲にて含むので、従来のエマルジョン絵具と同様に、乾燥後の塗膜に水滴が付着しても、塗膜に滲みや溶け出しが起こらず、また、下地の塗膜の上に重ね塗りしても、その下地が動かない程度に耐水性を有し、それでいて、パレットや絵筆に付着し、乾燥した後にも、
水洗いによって容易に取り除くことができる。
【0008】
以下、本発明において、簡単のために、水性描画材組成物の塗膜が乾燥した後、この塗膜に水滴が付着しても、塗膜の滲みや溶け出しが起こらず、また、下地の塗膜の上に重ね塗りしても、その下地が動かない程度に水濡れに対する抵抗性を有する性質を「耐水性」といい、水性描画材組成物がパレットや絵筆に付着し、乾燥した後にも、その描画組成物を水洗いによって取り除くことができる性質を「水洗い性」という。即ち、本発明による水性描画材組成物が形成した塗膜は、乾燥した後、耐水性と水洗い性を兼ね備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による水性描画材組成物は、水、着色顔料、水溶性樹脂及び樹脂エマルジョンを含む水性描画材組成物において、上記水溶性樹脂としてヒドロキシアルキルセルロースのみを有すると共に、上記樹脂エマルジョンを固形分にて0.1重量%以上、5重量%未満の範囲にて含む。
【0010】
(顔料)
本発明による水性描画材組成物において、着色剤には顔料が用いられる。この顔料は、特に限定されるものではなく、従来、知られている顔料であれば、いずれでも用いられる。具体例として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、アニリンブラック、ハンザイエロー、ベンジンイエロー、タートラジンレーキ、パーマネントイエロートナー、カドミウムイエロー、ベンジンオレンジ、クロムバーミリオン、カドミウムオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ファーストオレンジレーキ、レーキレッドC、弁柄、ワッチングレッド、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッド2B、パーマネントレッドFRLL、カーマインレーキ、キナクリドンレッド、メチルバイオレットレーキ、ファーストバイオレットB、キナクリドンバイオレット、インダスレンバイオレット、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、紺青、群青、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニングリーン、マーカライトグリーンレーキ、ピグメントグリーンB、ビリジアン、シェンナー、アンバー、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末等、有機顔料、無機顔料及び金属粉顔料を挙げることができる。
【0011】
また、上記以外にも、着色顔料として、染料や顔料を樹脂粉体と組み合わせた着色加工粉体、蛍光顔料、天然マイカの表面を金属酸化物で被覆した顔料、合成マイカの表面を金属酸化物で被覆したパール顔料等をも挙げることができる。
【0012】
本発明によれば、水性描画材組成物は、このような顔料を、通常、1〜60重量%の範囲で含み、好ましくは、10〜40重量%の範囲で含む。水性描画材組成物における顔料の量が1重量%よりも少ないときは、水性描画材組成物として、着色力に欠ける不具合がある。しかし、60重量%を越えるときは、得られる水性描画材組成物の粘度が過度に高くなって、描画に際して、描画材組成物の伸びが悪く、描画性に劣る。
【0013】
更に、本発明によれば、水性描画材組成物は、上述したような着色剤としての顔料のほかに、必要に応じて、体質顔料を含んでいてもよい。このような体質顔料として、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、硫酸バリウム等を挙げることができる。このような体質顔料は、必要に応じて、30重量%以下、好ましくは、5〜20重量%の範囲で用いられる。
【0014】
本発明による水性描画材組成物は、好ましくは、増粘剤を含む。増粘剤としては、例えば、ベントナイト、金属石鹸、ウレタンブロックポリマー等が用いられ、また、これら例示に限定されるものではないが、なかでも、適度の増粘効果を有し、しかも、得られる水性描画材組成物の塗膜の耐水性と水洗い性に影響を与えないことから、ベントナイトが特に好ましく用いられる。
【0015】
本発明において、増粘剤は、水性描画材組成物において、通常、10重量%以下の範囲で用いられ、好ましくは、0.1〜10重量%、特に好ましくは、0.5〜5重量%の範囲で用いられる。
【0016】
(水溶性樹脂)
本発明による水性描画材組成物において、水溶性樹脂として、ヒドロキシアルキルセルロースのみが用いられる。このヒドロキシアルキルセルロースは、水性描画材組成物において顔料を分散させるための分散剤として用いられると共に、エマルジョン樹脂と共同して塗膜を描画面に定着させるための定着剤として用いられ、そして、一方において、水性描画材組成物がパレットや絵筆に付着し、乾燥した場合にも、水洗いによって、これを取り除くことを可能とするための水洗い性、即ち、弱い水溶性を水性描画材組成物に与えるために用いられる。
【0017】
本発明によれば、水溶性樹脂として、特に、ヒドロキシアルキルセルロースのみが用いられ、ヒドロキシアルキルセルロースとしては、好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種が用いられる。本発明による水性描画材組成物は、このようなヒドロキシアルキルセルロースを0.1〜8重量%の範囲、好ましくは、0.3〜7重量%の範囲で含む。
【0018】
水性描画材組成物におけるヒドロキシアルキルセルロースの量が0.1重量%よりも少ないときは、乾燥後の塗膜は水洗い性を有するものの、描画に際して、塗膜の定着性が不十分である。
【0019】
しかし、水性描画材組成物におけるヒドロキシアルキルセルロースの量が8重量%よりも多いときは、乾燥後の塗膜が耐水性をもたず、また、得られる水性描画材組成物が過度に高い粘度を有し、描画に際して、水性描画材組成物の伸びが悪い。
【0020】
水溶性樹脂として、ヒドロキシアルキルセルロース以外の樹脂、例えば、カルボキシメチルセルロースやデキストリンを用いるときは、樹脂エマルジョンの量を5重量%未満としても、得られる水性描画材組成物は、乾燥後の塗膜の耐水性が悪く、乾燥後の塗膜に水滴が付着したとき、滲みや溶け出しが起こり、また、重ね塗りすれば、下地が動く。そして、樹脂エマルジョンを多量に用いても、耐水性は依然として悪い。
【0021】
水性描画材組成物が、水溶性樹脂として、カルボキシメチルセルロースやデキストリンを含むときは、このように、乾燥後の塗膜の耐水性が悪く、また、ヒドロキシアルキルセルロースと併用しても、水性描画材組成物の耐水性に有害な影響をもたらすので、本発明においては、水溶性樹脂としては、ヒドロキシアルキルセルロースのみが用いられる。
【0022】
(樹脂エマルジョン)
本発明による水性描画材組成物は、前述したように、水溶性樹脂としてヒドロキシアルキルセルロースのみを含み、これが水性描画材組成物の乾燥後の塗膜に弱い水溶性を与え、一方、その同じ水性描画材組成物の乾燥後の塗膜に耐水性を与えるために、樹脂エマルジョンが用いられる。
【0023】
本発明において、上記樹脂エマルジョンは、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−バーサティック酸ビニルエステル樹脂、エチレン−塩化ビニル樹脂、アクリル−ベオバ樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン樹脂、スチレン樹脂等の合成樹脂のエマルジョンが好ましく用いられる。
【0024】
特に、本発明によれば、水性描画材組成物における顔料の分散性や水性描画材組成物の製造費用等を考慮すると、アクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン又は酢酸ビニル−アクリル樹脂エマルジョンが最も好ましく用いられる。
【0025】
このような樹脂エマルジョンの具体例として、例えば、アクリル樹脂エマルジョンとして、例えば、モビニールDM772(日本合成化学工業(株)製)、TOCRYL W−168(東洋インキ製造(株))、ニカゾールRX866D(日本カーバイド工業(株))等を挙げることができ、酢酸ビニル−アクリル樹脂エマルジョンとして、例えば、モビニールDM−5(日本合成化学工業(株)製)を挙げることができ、また、アクリル−スチレン樹脂エマルジョンとして、例えば、ポリゾールAP−1900(昭和電工(株))等を挙げることができる。
【0026】
本発明による水性描画材組成物は、このような樹脂エマルジョンを固形分にて0.1重量%以上、5重量%未満の範囲で含み、好ましくは、固形分にて0.5〜4.9重量%の範囲で含み、最も好ましくは、0.5〜4.5重量%の範囲で含む。水性描画材組成物における樹脂エマルジョンの含有量が固形分にて0.1重量%よりも少ないときは、描画面上に形成した塗膜がひび割れることがあるうえに、定着性が十分でなく、更に、乾燥後の塗膜が耐水性に劣る。しかし、反対に、水性描画材組成物における樹脂エマルジョンの含有量が固形分にて5重量%以上であるときは、乾燥後の塗膜を水洗いし難い。
【0027】
特に、本発明による水性描画材組成物は、樹脂エマルジョンを上記範囲で含むと共に、前記ヒドロキシアルキルセルロースに対して、重量比で0.9〜15の範囲で含むことが好ましく、重量比で0.95〜10の範囲で含むことが最も好ましく、このような場合に、耐水性と水洗い性にバランスのとれた乾燥塗膜を与える水性描画材組成物を得ることができる。
【0028】
(湿潤剤)
本発明によれば、水性描画材組成物は、その凍結を防止し、また、乾燥を遅延させるために、必要に応じて、湿潤剤を含む。この湿潤剤としては、例えば、多価アルコールのほか、尿素やその誘導体が好ましく用いられる。上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等を挙げることができ、また、尿素誘導体としては、例えば、ジメチル尿素、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、チオ尿素等を挙げることができる。
【0029】
このような湿潤剤は、必要に応じて、水性描画材組成物において、20重量%以下の範囲で用いられ、好ましくは、1〜15重量%の範囲で用いられる。水性描画材組成物における湿潤剤の含有量が1重量%よりも少ないときは、場合によっては、水性描画材組成物が形成した塗膜が乾燥した後、脆いという問題がある。しかし、水性描画材組成物における湿潤剤の含有量が20重量%を越えるときは、水性描画材組成物が形成した塗膜の乾燥性が悪い。
【0030】
(界面活性剤)
本発明による水性描画材組成物は、必要に応じて、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、ノニオン及びアニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種が0.1〜5重量%、好ましくは、0.5〜3重量%の範囲にて用いられる。
【0031】
(その他の添加剤)
本発明によれば、水性描画材組成物は、必要に応じて、従来、水性描画材組成物において用いられている種々の添加剤、例えば、防腐剤、防黴剤、分散剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
【0032】
(製造)
本発明による水性描画材組成物は、その製造方法において特に限定されるものではない。例えば、水溶性樹脂を水に溶解させ、これに着色顔料、体質顔料及び水、必要に応じて、湿潤剤や界面活性剤、防腐剤等を加え、均一になるまで、混合、攪拌した後、ロールミルを用いて、分散処理し、次いで、このようにして得られた混合物に樹脂エマルジョンを加えて、混合、攪拌し、真空脱泡すれば、本発明による水性描画材組成物を得る。
【実施例】
【0033】
実施例1
表1に示す成分を表1に示す量で用いて、上述したようにして、水性描画材組成物を調製した。得られた水性描画材組成物の性能、即ち、パレット洗浄性、絵筆洗浄性、水滴耐水性及び重ね塗り性を下記のようにして評価した。結果を表1に示す。
【0034】
実施例2〜6
表1に示す成分を表1に示す量で用いて、上述したようにして、水性描画材組成物を調製した。得られた水性描画材組成物について、パレット洗浄性、絵筆洗浄性、水滴耐水性及び重ね塗り性を評価した。結果を表1に示す。
【0035】
比較例1〜6
表2に示す成分を表2に示す量で用いて、上述したようにして、水性描画材組成物を調製した。得られた水性描画材組成物について、パレット洗浄性、絵筆洗浄性、水滴耐水性及び重ね塗り性を評価した。結果を表2に示す。
【0036】
表1及び表2において用いた各成分の詳細は以下のとおりである。
【0037】
(成分)
着色顔料:第一化成工業(株)製群青「グンジョウ#3000」
体質顔料
体質顔料1:白石工業(株)製軽微性炭酸カルシウム
体質顔料2:デグサジャパン(株)製ケイ酸アルミニウム「SIPERNAT 820A」
ベントナイト:(株)ホージュン製ベントナイト
【0038】
水溶性樹脂
ヒドロキシエチルセルロース:日本合成化学工業(株)製「チローゼH20P2」(ローター1°C34R、回転数5rpm、測定時間3分、測定温度20℃の条件下にELD型粘度計を用いて、1重量%濃度水溶液について測定した粘度20mPa・s)
ヒドロキシエチルセルロース:日本合成化学工業(株)製「チローゼH4000P2」(ローター1°C34R、回転数5rpm、測定時間3分、測定温度20℃の条件下にEHD型粘度計を用いて、1重量%濃度水溶液について測定した粘度4000mPa・s)
ヒドロキシエチルメチルセルロース:日本合成化学工業(株)製「チローゼHM300P2」(ローター1°C34R、回転数50rpm、測定時間3分、測定温度20℃の条件下にEHD型粘度計を用いて、1重量%濃度水溶液について測定した粘度300mPa・s)
ヒドロキシエチルメチルセルロース:日本合成化学工業(株)製「チローゼHM4000KG4」(ローター1°C34R、回転数5rpm、測定時間3分、測定温度20℃の条件下にEHD型粘度計を用いて、1重量%濃度水溶液について測定した粘度4000mPa・s)
【0039】
デキストリン:日澱化学(株)製「赤玉デキストリン102−5」(焙焼デキストリン)
カルボキシメチルセルロース:第一工業製薬(株)製「セロゲン5A」
【0040】
樹脂エマルジョン
酢酸ビニル−アクリル樹脂エマルジョン:日本合成化学工業(株)製「モビニールDM−5」(固形分53重量%)
アクリル樹脂エマルジョン1:日本合成化学工業(株)製「モビニールDM772」(固形分46重量%)
アクリル樹脂エマルジョン2:東洋インキ製造(株)「TOCRYL W−168」(固形分50重量%)
アクリル樹脂エマルジョン3:昭和電工(株)製「ニカゾールRX866D」(固形分55重量%)
スチレン−アクリル樹脂エマルジョン:昭和電工(株)製「ポリゾールAP−1900」(固形分50重量%)
【0041】
界面活性剤
界面活性剤1:第一工業製薬(株)製ノニオン界面活性剤「プライサーフA−212E 」
界面活性剤2:サンノプコ(株)製ノニオン界面活性剤「ノプコ8034−L」
界面活性剤3:第一工業製薬(株)製アニオン界面活性剤「ラベリンFC−P」
防腐剤:三愛石油(株)製「サンアイバックSA」
【0042】
(性能評価)
パレット洗浄性
水性描画材組成物5重量部を水1重量部と混合して、描画材試料を調製した。耐衝撃性ポリスチレン製のペレットに平型デザイン筆を用いて上記描画材試料を塗布した後、室温で1週間放置して乾燥させた。このように描画材試料を付着させ、乾燥させたパレットに水道水をかけながら、付着乾燥した描画材試料を平型デザイン筆で擦ってパレットを洗浄した。このようにして、パレットに付着し、乾燥した描画材試料の80%以上を洗い流すことができたときをA、洗い流すことができた描画材試料の割合が30%以上、80%未満であったときをB、洗い流すことができた描画材試料の割合が30%未満であったときをCとした。
【0043】
絵筆洗浄性
水性描画材組成物5重量部を水1重量部と混合して、描画材試料を調製した。この描画材試料を羊毛平型筆に均一に塗り付けた後、室温で1週間放置して乾燥させた。このように描画材試料を塗り付け、乾燥させた絵筆に水道水をかけながら、手もみにて洗浄した。このようにして、絵筆に塗り付け、乾燥した描画材試料の80%以上を洗い流すことができたときをA、洗い流すことができた描画材試料の割合が30%以上、80%未満であったときをB、洗い流すことができた描画材試料の割合が30%未満であったときをCとした。
【0044】
水滴耐水性
水性描画材組成物5重量部を水1重量部と混合して、描画材試料を調製した。平型デザイン筆を用いて、上記描画材試料を画用紙上に3回重ね塗りした。得られた塗膜を室温で1時間乾燥させた後、1mL容量のスポイトを用いて、上記塗膜上に水道水を一滴落として、室温で6時間放置し、塗膜の状態を観察した。塗膜に変化がみられなかったときをAとし、塗膜にひび割れ、色落ち及び/又は水滴痕の発生がみられたときをCとした。
【0045】
重ね塗り性
水性描画材組成物5重量部を水1重量部と混合して、描画材試料を調製した。平型デザイン筆を用いて、上記描画材試料を画用紙上に3回重ね塗りした後、塗膜を室温で1時間乾燥させた。次いで、アクリル絵具((株)サクラクレパス製「アクリルガッシュ」)5重量部を水1重量部と混合し、これを上記塗膜上に縦、横及び縦方向に3回塗布した。このとき、アクリル絵具を先の塗膜(下地)上に問題なく重ね塗りすることができたときをAとし、先の塗膜(下地)が動いたり、滲んだりしたときをCとした。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表1に示すように、本発明に従って、樹脂エマルジョンを0.1重量%以上、5重量%未満の範囲で含むと共に、水溶性樹脂として、ヒドロキシアルキルセルロースのみを含む水性描画材組成物は、従来のエマルジョン絵具と同様に、その乾燥塗膜は、水滴耐水性にすぐれている。即ち、乾燥後の塗膜に水滴が付いても、滲みや溶け出しが起こらず、重ね塗り性を有している。このように、本発明による水性描画材組成物は、先の乾燥後の塗膜の上に重ね塗りしても、下地が動かない程度に耐水性を有し、それでいて、パレットや絵筆に付着し、乾燥した場合にも、水洗いによって取り除くことができる。
【0049】
これに対して、実施例1及び2に対する比較例1及び2の水性描画材組成物は、表2に示すように、樹脂エマルジョンの含有量が多すぎるために、塗膜は、乾燥後、耐水性にはすぐれるものの、水洗い性に劣っている。
【0050】
比較例3の水性描画材組成物は、樹脂エマルジョンの含有量は、本発明で規定する範囲内にあるものの、水溶性樹脂であるヒドロキシアルキルセルロース量が多すぎるために、塗膜は、乾燥後、水洗い性にはすぐれるものの、耐水性に劣っている。
【0051】
比較例4の水性描画材組成物は、本発明で規定する範囲内の樹脂エマルジョンを含むが、水溶性樹脂としてデキストリンを含み、このデキストリン量を実施例1におけるヒドロキシアルキルセルロースルと同じ量としたものであるが、その乾燥後の塗膜は水洗い性を有するものの、耐水性に劣っている。
【0052】
そこで、比較例5の水性描画材組成物は、比較例4の水性描画材組成物に比べて、樹脂エマルジョンの含有量を大幅に増やして得られたものであるが、比較例4の水性描画材組成物と同様に、その塗膜は、乾燥後、水洗い性は有するものの、耐水性に劣っている。
【0053】
比較例6の水性描画材組成物は、本発明で規定する範囲の樹脂エマルジョンを含有しているが、デキストリンの含有量が多いために、塗膜は、乾燥後、水洗い性は有するものの、耐水性に劣っている。比較例7は、本発明で規定する範囲の樹脂エマルジョンを含有しているが、水溶性樹脂として、カルボキシメチルセルロースを用いて得られたものであって、塗膜は、乾燥後、水洗い性を有するものの、耐水性に劣っている。
【0054】
比較例8及び9は、水溶性樹脂として、デキストリン及びカルボキシメチルセルロースを用いを用いると共に、樹脂エマルジョンを多く用いて得られた水性描画材組成物であるが、依然として、塗膜は耐水性が十分ではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、着色顔料、水溶性樹脂及び樹脂エマルジョンを含む水性描画材組成物において、上記水溶性樹脂としてヒドロキシアルキルセルロースのみを有し、上記樹脂エマルジョンを固形分にて0.1重量%以上、5重量%未満の範囲にて含むことを特徴とする水性描画材組成物。
【請求項2】
ヒドロキシアルキルセルロースがヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性描画材組成物。
【請求項3】
ヒドロキシアルキルセルロースを0.1〜8重量%の範囲で有する請求項1に記載の水性描画材組成物。
【請求項4】
樹脂エマルジョンをヒドロキシアルキルセルロースに対して重量比で0.9〜15の範囲で含む請求項1に記載の水性描画材組成物。
【請求項5】
増粘剤としてベントナイトを含む請求項1に記載の水性描画材組成物。
【請求項6】
体質顔料を含む請求項1に記載の水性描画材組成物。
【請求項7】
湿潤剤、界面活性剤及び防腐剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含む請求項1に記載の水性描画材組成物。



【公開番号】特開2012−57042(P2012−57042A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201222(P2010−201222)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】