説明

水性消臭剤組成物

【課題】汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがない水性消臭剤組成物、及びそれを用いる消臭方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有するポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、多価有機酸(b)及び水を含有する水性消臭剤組成物であって、(a)成分の含有量が0.06〜10質量%であり、〔(a)成分/(b)成分〕のモル比が1.1〜6.0であり、pHが6.0〜9.5である水性消臭剤組成物、並びにそれを空間及び対象物に噴霧する消臭方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性消臭剤組成物に関し、詳しくは、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがない水性消臭剤組成物、及びそれを用いる消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭剤は、芳香剤と共に不快な匂いを和らげるものであり、快適な生活を送る上で重要な部分を担っている。消臭に関する近年のニーズは、強い芳香で悪臭をマスキングする芳香剤から、微香性又は無香性で臭い自体を消す消臭剤へと変化している。
また、肌に直接触れない衣類は着てもすぐに洗わないという洗濯習慣が増えているが、その一方で洗わない衣類の匂いを気にしている。生活環境における不快な臭いの殆どは複合臭であり、この複合臭に効果的な消臭剤が求められている。
【0003】
従来、特定の悪臭成分に対する消臭技術は知られているが、複合臭に対して効果的なものは少ない。
例えば、特許文献1には、有機二塩基酸又はその塩により、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸類やアンモニア、トリメチルアミン等のアミン類等を消臭できることが開示されている。しかしながら、有機二塩基酸又はその塩のみでは、アルデヒド類に対する消臭効果が充分ではない。
特許文献2には、中高年以降に認められる加齢臭の原因物質の一つとされるノネナール等の不飽和アルデヒドの消臭について、エタノールアミンを含む消臭剤が有効であることが開示されている。しかしながら、エタノールアミンに関しては脂肪酸臭やアミン臭等に対する効果が不明であり、またエタノールアミンは刺激性があり、人体に触れる可能性のある形態での使用には適さない。
【0004】
特許文献3には、トリエタノールアミンやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等から選ばれる1種以上を塩として含むアニオン界面活性剤により、低級脂肪酸、アミン類が共存する複合臭を抑制できることが開示されている。しかしながら、特許文献3では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンをアニオン性界面活性剤のカウンターカチオンとして用いており、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンは低濃度である。また、アニオン界面活性剤のアミン塩に関してはアルデヒド類に対する効果が不明であり、水に対する溶解性が悪いものもあるため、消臭剤を調製するには適さない。
また、特許文献4には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等のポリヒドロキシアミン化合物を0.005〜30質量%含有し、かつpH緩衝能が0.3〜300mmol/kgである空間及び/又は硬質表面用消臭剤が開示され、酸解離指数(pKa)が5以上の多塩基酸を併用することが開示されている。しかしながら、特許文献4では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの緩衝性能を引き出すために低濃度で使用している。このため、複合臭の低減効果は十分に満足しうるものではなく、更に複合臭の低減効果を高めた水性消臭剤組成物の開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−95907号公報
【特許文献2】特開2001−97838号公報
【特許文献3】特開2004−49889号公報
【特許文献4】特開2006−320711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがない水性消臭剤組成物、及びそれを用いる消臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリヒドロキシアミン類と多価有機酸を特定の比率で組み合わせることにより、汗臭やアルデヒド類等に由来する複合臭の消臭に有効であり、しかも消臭処理後の臭い戻りがないことを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)を提供する。
(1)下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、多価有機酸(b)及び水を含有する水性消臭剤組成物であって、(a)成分の含有量が0.06〜10質量%であり、〔(a)成分/(b)成分〕のモル比が1.1〜6.0であり、pHが6.0〜9.5である水性消臭剤組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。)
(2)前記(1)に記載の水性消臭剤組成物を空間及び対象物に噴霧して、空間及び対象物の臭いを低減させる消臭方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがなく、かつ人体に触れても安全である。
また、本発明の消臭方法によれば、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を簡便かつ経時にわたり効果的に消臭することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の水性消臭剤組成物は、下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、多価有機酸(b)及び水を含有する水性消臭剤組成物であって、(a)成分の含有量が0.06〜10質量%であり、〔(a)成分/(b)成分〕のモル比が1.1〜6.0であり、pHが6.0〜9.5であることを特徴とする。
【0012】
[ポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)]
本発明で用いられるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)(以下、「ポリヒドロキシアミン化合物類(a)」という)は、下記一般式(1)で表される。
【0013】
【化2】

【0014】
一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基である。
炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
1は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0015】
2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基である。
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、上記のものが挙げられる。
2は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜5のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が好ましく、特にメチレン基が好ましい。
【0016】
ポリヒドロキシアミン化合物類(a)の具体例としては、例えば、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等、及びそれらと無機酸又は有機酸で中和した酸塩が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、炭素数1〜12の脂肪酸、炭素数1〜3のアルキル硫酸から選ばれる1種以上が好ましい。
これらの中では、消臭性能等の観点から、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらと塩酸等の無機酸との塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0017】
一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物を塩酸等の塩として用いる場合は、塩基を添加することによりpHを調整することができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
上記のポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、常法により製造することができる。
【0018】
[多価有機酸(b)]
本発明に用いられる多価有機酸(b)としては、有機二塩基酸、有機三塩基酸、その他の有機多塩基酸が挙げられる。
有機二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、2−メチルマロン酸、2−エチルマロン酸、2−イソプロピルマロン酸、2,2−ジメチルマロン酸、2−エチル−2−メチルマロン酸、2,2−ジエチルマロン酸、2,2−ジイソプロピルマロン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸(トランス体:5.99、シス体:6.57)、1,2−シクロオクタンジカルボン酸、1,2−シクロヘプタンジカルボン酸、コハク酸、フェニルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、2,3−ジエチルコハク酸、2−エチル−3−メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、2,3−ジ−t−ブチルコハク酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、3−イソプロピル−3−メチルグルタル酸、3−t−ブチル−3−メチルグルタル酸、3,3−ジイソプロピルグルタル酸、3−メチル−3−エチルグルタル酸、3,3−ジプロピルグルタル酸、2−エチル−2−(1−エチルプロピル)グルタル酸、シクロヘキシル−1,1−ジ酢酸、2−メチルシクロヘキシル−1,1−ジ酢酸、シクロペンチル−1,1−ジ酢酸、3−メチル−3−フェニルグルタル酸、3−エチル−3−フェニルグルタル酸等が挙げられる。
また、有機三塩基酸としては、クエン酸等が挙げられる。
【0019】
これらの中で臭い戻り抑制能の観点から、有機二塩基酸、有機三塩基酸が好ましく、有機二塩基酸の中では、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、2−メチルマロン酸、コハク酸、テトラメチルコハク酸が好ましく、有機三塩基酸の中では、クエン酸が好ましい。
【0020】
[水性消臭剤組成物の組成]
本発明の水性消臭剤組成物において、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)の含有量は、液安定性の観点から、塩ではない場合はそのまま、塩の場合はポリヒドロキシアミン化合物に換算して、0.06〜10質量%であり、好ましくは0.06〜5質量%、より好ましくは0.06〜3質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.15〜2質量%である。
また、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)の消臭性能を高める観点から、配合する多価有機酸(b)の比率は、〔(a)成分/(b)成分〕のモル比が1.1〜6.0、好ましくは1.6〜5.0、より好ましくは1.8〜5.0、更に好ましくは1.9〜5.0、特に好ましくは1.9〜4.0である。(a)成分と(b)成分の含有量は、上記範囲内で、消臭する悪臭の濃度、使用形態、繊維製品の種類によって適宜調整することができる。
【0021】
本発明の水性消臭剤組成物において、(a)及び(b)成分以外の残部は水である。使用する水は、蒸留水やイオン交換水等からイオン成分を除去したものが好ましい。
本発明の水性消臭剤組成物のpHは6.0〜9.5である。pH6.0以上で汗臭やアルデヒド類に対する効果が優れ、またpH9.5以下でアミン類等に対する効果が優れる。
汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の全てに対する効果、及び皮膚刺激低減の観点から、pHは6.5〜9.5が好ましく、6.8〜9.0が更に好ましい。pHの調整は、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより行うことができる。
また、本発明の消臭剤組成物の水分量は、好ましくは85〜99.95質量%、より好ましくは85〜99質量%、更に好ましくは85〜95質量%である。臭い戻り抑制の観点から、本発明の消臭剤組成物の水分量の60質量%を蒸発させて濃縮した時、濃縮前と後のpHの変化が0〜1であることが好ましく、0〜0.5であることがより好ましく、0〜0.3であることが特に好ましい。
【0022】
[消臭効果の発現機構]
本発明の水性消臭剤組成物を対象物に噴霧して対象物の臭いを低減させると、経時においても臭い戻りがなく、悪臭レベルは噴霧直後と変わらない。その消臭効果の発現機構が全て解明されているわけではないが、以下のように考えられる。
一般に、水性消臭剤による消臭は、緩衝作用を利用した中和消臭である。悪臭成分は有機脂肪酸等の酸やアミン類等のアルカリに起因しているものが多い(汗臭は脂肪酸系)。これらの悪臭成分に対し、水性消臭剤を作用させると、緩衝作用で悪臭成分が中和されて塩を形成し、悪臭成分の揮発が抑制され、一時的に消臭される。ところが、放置され乾燥していく過程において、水性消臭剤のpHが変化し、形成されていた塩が加水分解されて悪臭成分の揮発が起こり、経時における臭い戻り現象となるものと考えられる。
従来の緩衝系を利用する水性消臭剤は、消臭剤としての緩衝能を向上させるために、一般的な強酸/弱塩基、又は弱酸/強塩基の緩衝系を採用しているが、乾燥過程で起こるような濃度変化に対するpHの安定性に欠ける。すなわち、悪臭成分は、一般的に弱酸、弱塩基であるため、消臭剤噴霧直後に形成される塩が弱酸(悪臭成分)−強塩基の塩、弱塩基(悪臭成分)−強酸の塩の場合、特に緩衝剤濃度が上がり、pHが変動し、中性付近になった時に加水分解が起こり易く、揮発性が高い悪臭成分に戻ると考えられる。
【0023】
本発明の水性消臭剤組成物による消臭も、緩衝作用を利用した中和消臭であるが、(a)成分と(b)成分の緩衝系、すなわち、弱塩基/弱酸の緩衝系を採用した点が特徴の1つである。緩衝能としては、(a)成分のみでpH8付近で強い緩衝能を持つことから、水性消臭剤組成物の噴霧直後の中和消臭作用は充分に発現される。また、乾燥過程における濃度変化に対してもpH変化がほとんどないことから、本発明の水性消臭剤組成物と悪臭成分が形成する弱酸−弱塩基の塩は加水分解が起こりにくい。この結果、本発明の水性消臭剤組成物によれば、悪臭成分の揮発は抑えられたままとなり、臭い戻りがなくなると考えられる。実際に、本発明の水性消臭剤組成物の元の水分量の60質量%を蒸発させて濃縮しても、濃縮前の水性消臭剤組成物に比べて殆どpHの変化はないか、又はpHの変動幅が1以下の範囲に抑えられる。
【0024】
[水性消臭剤組成物の任意成分]
本発明の水性消臭剤組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤、及び一般に添加される各種の他の消臭剤、溶剤、油剤、ゲル化剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、色素、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
界面活性剤としては特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から選ばれる1種以上が挙げられる。
通常、臭気成分は、布地、衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品等の固体表面に付着するが、界面活性剤は、固体表面に付着した臭気成分の揮発を抑制するばかりでなく、消臭成分であるポリヒドロキシアミン化合物類(a)を安定に分散させ、繊維製品等に対する接触性を向上させて、消臭性能を更に高めることができる。
【0025】
非イオン性界面活性剤としては、下記一般式(2)で表される化合物が、特に好ましい。
5−A-(DO)d−R6 (2)
式(2)中、R5は、炭素数10〜22、好ましくは炭素数10〜22、より好ましくは炭素数10〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R6は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。Aは、−O−基又は−COO−基を示し、Dは、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基から選ばれる1種以上の基を示し、dは平均付加モル数であり、5〜15の数である。d個の(DO)は同じでも異なっていてもよい。
消臭性能向上の観点から、一般式(2)のR5は、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数10〜16、更に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、R6は、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。
dは、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜13、更に好ましくは5〜12であり、ポリオキシエチレン(オキシエチレン基の平均付加モル数n=6〜12。以下のかっこ内の数字も同じである。)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテル、ラウリン酸ポリオキシエチレン(n=6〜13)メチルエーテルから選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0026】
陽イオン性界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、第4級アンモニウム塩が好ましい。第4級アンモニウム塩としては、4つの置換基の少なくとも1つが総炭素数8〜28のアルキル又はアルケニル基であり、残余がベンジル基、炭素数1〜5のアルキル基及び炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である化合物が挙げられる。総炭素数8〜28のアルキル又はアルケニル基は、この炭素数の範囲で、アルコキシル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルアミノ基、アルケノイルアミノ基、アルカノイルオキシ基又はアルケノイルオキシ基で置換されていてもよい。
上記の界面活性剤の中では、消臭性能の観点から、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0027】
また、溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノール等の低級(炭素数3〜4)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2〜12)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0028】
[水性消臭剤組成物の使用形態]
本発明の水性消臭剤組成物は、特にスプレー、ローション等として用いることが好適である。特にミストタイプのスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。
本発明の水性消臭剤組成物を用いる消臭方法の対象物は、空間又は固体表面を有するものであれば特に制限はない。例えば、リビングや居間等の空間、タンスの中等の空間、カーテン等の布地、スーツ、セーター等の衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品、食器、ゴミ箱、調理台、室内の床、天井、壁等の硬質表面を有する対象物に本発明の水性消臭剤組成物を噴霧して、対象物の臭いを効果的に低減させることができる。特に、繊維製品のような消臭対象の表面積が広い対象物において効果的である。
【実施例】
【0029】
実施例1〜3及び比較例1〜4
<水性消臭剤組成物の調製>
表1に示す配合処方の水性消臭剤組成物を調製した。なお、実施例1〜3においては、(a)成分として、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(分子量121)、(b)成分としてクエン酸(分子量192)を使用し、その他の成分として、プロピレングリコール(多価アルコール)、エタノール、脂肪酸アミドプロピルアミンオキサイド(可溶化剤)、緑茶乾留抽出物(植物抽出物)、ヒドロキシエチルセルロース(増粘剤)、シリコーンコンパウンド(消泡剤)、エチレンジアミン四酢酸・4ナトリウム塩(キレート剤)、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(抗菌剤)を使用し、得られた組成物は、1規定の塩酸又は1/10規定の水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。
なお、比較例3にはポリエーテル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「SH−8400」、25℃における粘度:300mm2/s)が含まれている。
また、香料としては、ケイ皮酸エチル5部、酢酸リナリル10部、リラール部15部、ヘキシルシンナミックアルデヒド10部、パーライド10部、フェニルエチルアルデヒド20部、セダーアルコール10部、及びリモネン20部からなる調合香料を使用した。
【0030】
<消臭効果の評価>
(1)消臭対象物の調製
〔汗臭試験片〕
木綿メリヤス布(6cm×6cm)に、臭気成分として、イソ吉草酸/カプロン酸/酢酸=18ppm/6ppm/6ppm水溶液をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて4回スプレーし(約0.16g)、30分間乾燥させた後、試験片とした。
(2)消臭方法
上記で得られた汗臭試験片に、表1に示す配合処方の消臭剤組成物を、スプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて6回スプレーし(計約0.24g)、所定の時間乾燥させた。
(3)消臭性能評価
30歳代の男性5人及び女性5人の計10人の熟練パネラーに、消臭剤組成物をスプレーした後の試験片の臭いを嗅いでもらい、それぞれ下記の6段階の臭気強度表示法で評価し、その平均値を求めた。表1には消臭剤組成物をスプレーした後、30分後、3時間後の評価結果を示した。
(評価基準)
0:無臭
1:何の臭いか分からないが、ややかすかに何かを感じる強さ(検知閾値のレベル)
2:何の臭いか分かる、容易に感じる弱い臭い(認知閾値のレベル)
3:明らかに感じる臭い
4:強い臭い
5:耐えられないほど強い臭い
上記評価基準に基づいて、平均値0以上1未満を◎、平均値1以上2未満を○、平均値2以上3未満を△、平均値3以上5以下を×として評価した。評価は◎又は○が好ましい。
【0031】
【表1】

【0032】
表1から、比較例1〜4の消臭剤組成物は、布上の汗臭に対しての消臭性能が低く、30分後と3時間後の評価を比べると、消臭性能が低下している。これに対して、実施例1〜3の消臭剤組成物は、汗臭に対する消臭性能が高く、3時間経過後も臭い戻りがないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の水性消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、消臭処理後、経時での臭い戻りがなく、かつ人体に触れても安全である。このため、本発明の水性消臭剤組成物は、リビング、居間、タンス等の空間や、布地、衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品、食器、ゴミ箱、調理台、室内の床、天井、壁等の硬質表面を有する対象物に付着した複合臭の水性消臭剤組成物として、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、多価有機酸(b)及び水を含有する水性消臭剤組成物であって、(a)成分の含有量が0.06〜10質量%であり、〔(a)成分/(b)成分〕のモル比が1.1〜6.0であり、pHが6.0〜9.5である水性消臭剤組成物。
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物が、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、及び2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオールから選ばれる1種以上である請求項1に記載の水性消臭剤組成物。
【請求項3】
多価有機酸(b)が、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、2−メチルマロン酸、コハク酸、テトラメチルコハク酸、及びクエン酸から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の水性消臭剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水性消臭剤組成物を空間及び対象物に噴霧して、空間及び対象物の臭いを低減させる消臭方法。

【公開番号】特開2009−28071(P2009−28071A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192071(P2007−192071)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】