説明

水性組成物

【課題】衣類への残香性に優れる、繊維製品を処理するための水性組成物を提供する。
【解決手段】(a)水・オクタノール分配係数と蒸気圧が異なる2種の香料組成物と、(b)特定のアミノ変性シリコーン化合物及び特定の粘度を有するジメチルポリシロキサン化合物から選ばれるシリコーン化合物とを、特定の質量比で含有する、繊維製品を処理するための水性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品を処理するための水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟剤組成物などのトイレタリー製品に香料を用いることは一般に行われており(例えば特許文献1〜3)、処理後の衣類に香りを残す残香性を付与する技術も知られている(例えば特許文献4〜6)。また、アミノ変性シリコーンなどのシリコーン化合物を含有する柔軟剤組成物も知られている(例えば特許文献7〜14)。
【0003】
特許文献1〜3に記載のとおり、一般にトイレタリー製品は附香されており、さらに近年香りに対する関心が高まり、洗浄や柔軟処理後の衣料に香りを残すいわゆる残香性を付与する技術が開発されている。
【0004】
特許文献4には、シッフベース香料を含み衣料への吸着性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献5、特許文献6には、蒸気圧の低い香料成分を用いる技術が開示されている。これらの技術によれば衣料にシッフベース香料や低蒸気圧香料を残香させることができるが、シッフベース香料以外の香料成分や、中又は高蒸気圧香料を残香させることができないため、香りの設計に大きな制限がある。従って、低蒸気圧香料以外に中又は高蒸気圧香料を残香させる技術が強く求められる。
【0005】
一方、柔軟剤組成物などのトイレタリー製品にはシリコーン化合物を用いることは公知である。特に柔軟剤組成物は特許文献7〜14に記載されているように、繊維製品に好ましい風合いを付与する目的から汎用されている。特に特許文献7、8には本願発明の(b1)成分に相当するアミノ変成シリコーンを含有する柔軟剤組成物が開示されており、また、該公報には香料を含有する記載もある。
【特許文献1】特開2004−211215号公報
【特許文献2】特開2004−211230号公報
【特許文献3】特開平8−13335号公報
【特許文献4】特開2004−131680号公報
【特許文献5】特開2004−143638号公報
【特許文献6】特開2004−210959号公報
【特許文献7】特開2000−64179号公報
【特許文献8】特開2000−64180号公報
【特許文献9】特開2002−327375号公報
【特許文献10】特開2002−339259号公報
【特許文献11】特開2002−371474号公報
【特許文献12】特開2003−96674号公報
【特許文献13】特開2003−155667号公報
【特許文献14】特開2004−263347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、衣類への残香性に優れる繊維製品を処理するための水性組成物、特に液体柔軟剤組成物として好適な水性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)下記(a1)成分及び(a2)成分を含む香料組成物〔以下、(a)成分という〕、ならびに、(b)下記(b1)成分及び(b2)成分から選ばれるシリコーン化合物〔以下、(b)成分という〕を含有し、(a)成分/(b)成分が質量比で1/20〜10/1でありかつ、(a)香料組成物中、(a1)成分を30〜60重量%、(a2)成分を10〜50重量%含有する、繊維製品を処理するための水性組成物に関する。
(a1)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0以上であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHg以下である香料成分
(a2)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0未満であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHgを超える香料成分
(b1)成分:−R−NH2(式中、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であり、RはSiと直接結合している。)で示される基で変性されたアミノ変性シリコーン化合物
(b2)成分:25℃における粘度が10万〜600万mm2/sであるジメチルポリシロキサン化合物
【0008】
また、本発明は、上記本発明の水性組成物を用いて繊維製品を処理し、処理後の繊維製品の残香性を向上させる方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、衣類などの繊維製品を処理したときには残香性を向上させることができるので、処理後の繊維製品には好ましい匂いを長く残すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<水性組成物>
〔(a)成分〕
本発明の(a)成分は、下記(a1)成分と(a2)成分の香料成分を含有する。
(a1)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0以上であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHg以下である香料成分〔以下、(a1)成分という〕
(a2)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0未満であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHgを超える香料成分〔以下、(a2)成分という〕
【0011】
(a2)成分は、比較的蒸散しやすい香料成分であり、通常は洗浄や柔軟処理後の衣料にはこれら香気成分は残らない。一方(a1)成分は、比較的蒸散しにくく、しかも洗浄や柔軟処理後の衣料に残りやすく、残香性を有する香料成分である。しかしながら、(a1)成分は衣料上に残っても香り立ちなどが悪く、また極限られた香調となってしまう。
【0012】
そこで本発明は、(a)成分として(a1)成分と(a2)成分を含有する香料混合物を用い、(a1)成分と(a2)成分の調和により、香り立ちの良い、さまざまな香調が得られることを利用すると共に、さらに(b)成分と組み合わせることにより、従来技術のように(a1)成分を衣類上に残すだけで、香り立ちが悪い点及び香調の種類が限られる点などの課題を解決して、(a1)成分を残香させることができるようになったものである。
【0013】
(a1)成分は、衣類上に香料成分を多量に残すという点から、LogPが3.0以上、好ましくは3.5〜8.5、特に好ましくは4.0〜7.0である。
【0014】
また、(a2)成分は、香り立ちが良く、という点から、LogPが3.0未満、好ましくは0.5〜2.9、特に好ましくは1.0〜2.6である。
【0015】
ここで、LogPとは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。
【0016】
多くの化合物のlogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP"で計算すると最も便利である。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと伴に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)"の値を出力する。
【0017】
(a1)成分は、香料の持続性の点から、20℃における蒸気圧が0.01mmHg以下、好ましくは0.001〜0.01mmHg、特に好ましくは0.001〜0.005mmHgである。
【0018】
また、(a2)成分は、香調の良い香りが残す点から、20℃における蒸気圧が0.01mmHgを超え、好ましくは0.02〜2mmHg、特に好ましくは0.05〜1mmHgである。
【0019】
(a1)成分の具体例を表1a〜表1cに示す。(a1)成分としては、特にペンタライド、セドリルメチルエーテル、パチュリアルコール、酢酸ベチベリル、ヘキシルシンナミックアルデヒド、シトロネロール、酢酸シトネリル、サリチル酸 cis-3-ヘキセニル、エチレンブラシレート、アセチルセドレン、桂皮酸ベンジル、カシュメラン、リリアル、α-ヨノン、β-ヨノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、チモールが好ましい。
【0020】
【表1a】

【0021】
【表1b】

【0022】
【表1c】

【0023】
(a2)成分の具体例を表2a〜表2cに示す。(a2)成分としては、特にローズオキサイド、マンザネート、リナロール、ゲラニオール、ネロール、テルピネオール、サリチル酸メチル、フェニル酢酸エチル、酢酸cis-3-ヘキセニル、酢酸スチラリル、酢酸ベンジル、ベンズアルデヒド、酢酸イソアミル、酢酸フェニルエチル、l-カルボン、マルトールが好ましい。
【0024】
【表2a】

【0025】
【表2b】

【0026】
【表2c】

【0027】
(a)成分中、(a1)成分を30〜60質量%、好ましくは35〜55質量%、より好ましくは40〜50質量%含有し、(a2)成分を10〜50質量%、好ましくは20〜45質量%、より好ましくは30〜40質量%含有する。この範囲は、良好な(a1)成分の残香性(香り立ちが良く、香調の良い香りが残ること)を得る観点で望ましい。
【0028】
〔(b)成分〕
本発明の(b)成分は、下記(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1又は2以上のシリコーン化合物であり、(b1)成分と(b2)成分はそれぞれを単独で使用できるほか、併用することもできる。
(b1)成分:−R−NH2(式中、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であり、RはSiと直接結合している。)で示される基で変性されたアミノ変性シリコーン化合物
(b2)成分:25℃における粘度が10万〜600万mm2/sであるジメチルポリシロキサン化合物
【0029】
(b1)成分としては、下記一般式(1)の化合物が好適である。
【0030】
【化1】

【0031】
〔式中、
11は、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルキルオキシ基から選ばれる基であり、好ましくはメチル基であり、
12は、炭素数1〜5のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、特にプロピレン基であり、
a及びbは平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度は、好ましくは100〜20000mm2/s、より好ましくは200〜10000mm2/s、特に好ましくは500〜5000mm2/sであり、
アミノ当量(窒素原子1つ当りの分子量、アミノ当量=分子量/N原子数で求められる。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる)は、400〜8000g/mol、好ましくは600〜5000g/mol、特に好ましくは800〜3000g/molになるように選ばれる。〕
【0032】
一般式(1)の化合物において、aは、10〜10,000、好ましくは50〜5000の数であり、bは、1〜1,000、好ましくは1〜50の数であり、重量平均分子量は、好ましくは2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜100,000、特に好ましくは8,000〜50,000である。
【0033】
一般式(1)の化合物としては、信越化学工業社製のアミノ変成シリコーンKF−864(粘度1700mm2/s、アミノ当量3800g/mol)、東レダウ社製DC2−8630(粘度1500mm2/s、アミノ当量4300g /mol)、信越化学工業社製 KF−8003、(アミノ変性シリコーン、粘度1850cst、アミノ当量 2000 g/mol)などを挙げることができる。
【0034】
(b2)成分は、25℃における動粘度が10万〜600万mm2/sのものであり、動粘度が50〜500万mm2/sのものが好ましく、特に好ましくは50万〜100万mm2/sのものである。動粘度が前記範囲のときに、(a)成分の残香性を高める効果が顕著になる。
【0035】
(b2)成分は、信越化学工業社製 高重合ジメチコンエマルション(25℃、原料シリコーンオイルの動粘度1,000,000mm2/s、平均粒径500nm)、信越化学工業社製 高重合ジメチコンエマルション(25℃、原料シリコーンオイルの動粘度500,000mm2/s、平均粒径500nm)、信越化学工業社製 高重合ジメチコンエマルション(25℃、原料シリコーンオイルの動粘度100,000mm2/s、平均粒径10μm)などを挙げることができる。
【0036】
本発明の(b)成分は、オイル状のものをそのまま配合しても差し支えないが、(b)成分の粒子が水中に分散した水性エマルジョンの形態で配合することが、本発明の組成物を容易に製造できる点から好ましい。
【0037】
(b)成分が水性エマルジョンの形態である場合の乳化粒子の平均粒径は、衣類への(a)成分の残香性の点から、好ましくは0.01〜10μm、更に好ましくは0.01〜5μm、特に好ましくは0.01〜1μmである。
【0038】
(b)成分としては、(a)成分の残香性を持続できる点から、一般式(1)の構造を有する化合物が好ましい。
【0039】
水性組成物中の(a)成分の含有量は、好ましくは0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.2〜4.0質量%、特に好ましくは0.5〜2.0質量%である。
【0040】
水性組成物中の(b)成分の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜8質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%である。
【0041】
水性組成物中の(a)成分及び(b)成分の質量比は、(a)成分/(b)成分で、好ましくは1/20〜10/1、より好ましくは1/10〜8/1、特に好ましくは1/5〜5/1である。水性組成物は水を含有するものであり、通常、組成物の残部が水である。
【0042】
本発明の水性組成物は、上記成分を水に溶解又は分散させた水溶液の形態であり、各成分はそれぞれ所定量を個別に水に溶解あるいは分散させて調製することができるが、(a)成分及び(b)成分をあらかじめ溶融して配合すること、例えば(a)成分と(b)成分を含有する組成物を調製した後に水と混合することが、得られる水性組成物の(a)成分の残香性の観点から、より好ましい。
【0043】
本発明の水性組成物は繊維製品処理用の液体柔軟剤組成物に応用することができ、その場合には(c)成分として、窒素原子に結合する基のうち1〜3個が炭素数12〜24の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である4級アンモニウム塩化合物を含有することが好ましい。
【0044】
また、炭素数12〜24の炭化水素基として不飽和炭化水素基を有する4級アンモニウム塩化合物を(c)成分として用いた場合には、柔軟処理した衣料の匂いが悪くなるという課題があり、この課題に対して本発明の残香性を有する水性組成物を応用することは有益である。
【0045】
(c)成分としては、下記一般式(2)の化合物が好適である。
【0046】
【化2】

【0047】
(式中、
21は、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていてもよい、炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であり、
22は、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていてもよい、炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であるか、あるいは炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
23は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
24は、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
-は陰イオン基である。)
【0048】
一般式(2)の化合物の具体例としては、下記一般式(3)の化合物を挙げることができる。
【0049】
【化3】

【0050】
〔式中、
31は、炭素数14〜24、好ましくは16〜20のアルキル基又は前記炭素数のアルケニル基であり、
32は、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であるか、R36−[B−R37d−で示される基であり(ここで、R36は、炭素数14〜24のアルキル基又はアルケニル基であり、R37は炭素数1〜6のアルキレン基である。)、
33は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
34は、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
35は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、
A、Bは、−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基であり、c及びdは0又は1の数であり、X-は陰イオン基である。〕
【0051】
一般式(3)の化合物において、R31は、好ましくは16〜20のアルキル基又はアルケニル基が好適であり、R32は、R36−[B−R37d−で示される基が好ましい(ここで、R36は、好ましくは16〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、R37は、好ましくはエチレン基又はプロピレン基である)。
【0052】
33、R34は、メチル基又はヒドロキシエチル基が好ましく、R35は、エチレン基又はプロピレン基が好ましい。A、Bは−COO−、−CONH−が好適であり、c、dは少なくとも一方が1の数、好ましくは両方が1の数であることが好ましい。X-はハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜18の脂肪酸イオンが好適である。
【0053】
本発明の水性組成物では、一般式(3)の化合物において、R31がアルケニル基で、R32がR36−[B−R37d−で示される基、R36がアルケニル基を含有するものが特に好ましい。
【0054】
具体的なアルケニル基としては、オレイル基、リノール基、パルミトレイル基から選ばれる基、もしくは牛脂、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、トーモロコシ油、サフラワー油から選ばれる油脂を加水分解して得られる脂肪酸に由来する基を挙げることができる。
【0055】
本発明の水性組成物では、一般式(3)の化合物において、R31、R36の合計モル数に対して、アルキル基が1〜15モル%、好ましくは1〜13モル%、より好ましくは1〜10モル%、特に好ましくは5〜10モル%含有され、アルケニル基が85〜99モル%、好ましくは87〜99モル%、より好ましくは90〜99モル%、特に好ましくは90〜95モル%含有されており、炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有するアルケニル基の割合が10モル%以下、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは0.5〜8モル%、特に好ましくは0.5〜5モル%であるものが、衣料の匂い劣化を抑制し、好ましい残香性を付与する目的から好ましい。
【0056】
<繊維製品の残香性を向上させる方法>
本発明の水性組成物により繊維製品を処理して残香性を向上させる方法は特に制限されるものではないが、洗濯工程においてすすぎ水に添加することが好適である。また、(b)成分を衣料1kgに対して2〜30g、更に5〜15gの比率になるようにすすぎ水に添加することが、残香性を付与する目的から好適である。すすぎ水で処理した後は脱水し、自然乾燥又は加熱回転式乾燥装置により乾燥することができる。また、(c)成分を含有する本発明の水性組成物は、当該水性組成物を用いて繊維製品を処理し、処理後の繊維製品の残香性及び柔軟性を向上させる方法に供することができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例及び比較例で用いた成分を示す。
<(a)成分>
【0058】
【表3a】

【0059】
混合香料(a3)は、下記表3bのものである。
【0060】
【表3b】

【0061】
<(b)成分>
(b)成分は下記のものを乳化物(水性エマルジョン)として用いた。(b)成分の乳化物を調製する際の高せん断力はウルトラターラックスT−20(IKA製、シャフトジェネレーターS25−25F)を用いた。また、粒子径の調節は回転数を変えることで行った。なお、乳化物は、調製後、400メッシュの金網で常圧下で、ろ過して使用した。
【0062】
(b1−1):信越化学工業社製のアミノ変性シリコーンKF−864(粘度1700mm2/s、アミノ当量3800g/mol)、乳化物中の有効分濃度30質量%、乳化粒子の平均粒子径(以下、単に平均粒子径という)500nm
(b1−2):東レダウ社製のアミノ変性シリコーンDC2−8630(粘度1500mm2/s、アミノ当量4300g/mol)、乳化物中の有効分濃度40質量%、乳化粒子の平均粒子径(以下、単に平均粒子径という)600nm
(b2−1):平均付加モル数5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル5gを、ジメチルポリシロキサン化合物(25℃における粘度500,000mm2/s)300gに高せん断力をかけながら添加し、さらに10分間、高せん断力で攪拌し続けた。その後、イオン交換水を30g添加し、次に平均付加モル数2モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム2g、平均付加モル数40モルのポリオキシエチレンミリスチルエーテル15gを加え、さらに高せん断力下、攪拌を30分間続け、その後、水を248g加えて攪拌した。このものの平均粒子径は500nmであった。
(b2−2):(b2−1)において、25℃における粘度60,000mm2/sのジメチルポリシロキサン化合物を用いたシリコーン乳化物。平均粒子径は500nmであった。
【0063】
<(c)成分>
【0064】
【表4】

【0065】
(c−1)〜(c−4)は、以下の方法で製造されたものである。
*(c−1)の製造
N−(3−アミノプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミンと硬化牛脂脂肪酸を1/1.9のモル比で公知の方法に従って脱水縮合させた。反応物中の脂肪酸含量が5%になった時点で反応を終了させた。反応生成物は、(c−1)を95質量%含有しており、これを柔軟剤組成物の調製に用いた。
【0066】
*(c−2)の製造
トリエタノールアミンと硬化牛脂脂肪酸を1/1.8のモル比で公知の方法に従って脱水縮合させた。反応物中の脂肪酸含有量が3%になった時点で反応を終了させた。次に脱水縮合物に対して10%相当量のエタノールを加えた。次にアミンに対して0.98当量のジメチル硫酸を用いて公知の方法に従って4級化させた。その後、固形分含有量が90質量%になるように、エタノールを加えた。反応生成物は、(c−2)を88質量%含有しており、これを柔軟剤組成物の調製に用いた。
【0067】
*(c−3)の製造
(c−1)に対して10質量%のエタノールを加え、アミンに対して0.98当量のメチルクロリドを用いて公知の方法で4級化させた。その後、固形分含有量が90質量%になるように、エタノールを加えた。反応生成物は、(c−3)を84質量%含有しており、これを柔軟剤組成物の調製に用いた。
【0068】
*(c−4)の製造
脂肪酸としてオレイン酸を用いた以外は(b−2)の製造方法に従って製造した。反応生成物は、(c−4)を87質量%含有しており、これを柔軟剤組成物の調製に用いた。
【0069】
<その他の成分>
【0070】
【表5】

【0071】
<液体柔軟剤組成物>
最終の柔軟剤組成物が300gになるように上記の各成分を表6の組み合わせで使用し柔軟剤組成物を製造した。一枚の長さが2.5cmのタービン型羽根が3枚ついた攪拌羽根をビーカー底面より1cm上部に設置した、500mLのガラスビーカーに必要量の95質量%イオン交換水を入れ、ウォーターバスで62℃まで昇温した。500rpmで攪拌しながら、融解した(e)成分を添加した、次に(c)成分と、(g)成分、及び(h)成分を予め予備混合し70℃で溶融させた予備混合物を添加した。次に所定のpHにするのに必要な量の35%塩酸水溶液、及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。その後、あらかじめ共に溶融した(a)成分、(b)成分を添加し、(i)成分、(j)成分を添加し、5分間攪拌した後、5℃のウォーターバスで30℃まで冷却し、(f)成分を添加し更に5分間混合した。最後に再度pHを確認し、必要に応じて35%塩酸水溶液、及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整した。表6の組成においては、(c−1)成分は、ほぼすべて塩酸塩の状態で組成物に存在する。なお、表6中、(c)成分は、(c−1)〜(c−4)そのものの配合量である。
【0072】
<繊維製品処理剤による処理方法>
市販の木綿肌着(ブランド名:グンゼYG、木綿100%、新品)を5枚用意し、全自動洗濯機(ナショナルNA−F60E)を用い、市販の弱アルカリ性洗剤(商品名アタック,花王(株)製)を用いて5回洗濯し、前処理した(標準コース、洗剤濃度0.0667質量%、水道水40L使用、水温20℃)。再び、同洗濯機、標準コースでアタックにて洗浄後、最終濯ぎ水が入る段階で、表6の柔軟剤組成物を10g/衣料1.5kgとなるように溶解させ、5枚の肌着を5分間浸漬し、その後、洗濯機で脱水し、自然乾燥した。
【0073】
<残香性評価>
上記の方法により、処理した衣類上の残香(残香強度、香調バランス)を5名の評価者で以下の基準で評価した。5人の平均値を表6に示した。
(評価基準)
*残香強度
2点:残香性が強く感じられる
1点:残香性が弱く感じられる
0点:残香性が感じられない
*香調バランス
2点:(a1)成分由来の香りと(a2)成分由来の香りがともに感じられ、初期の香調がバランスよく残っている
1点:(a1)成分由来の香りと(a2)成分由来の香りがともに感じられ、初期の香調がややバランスよく残っている
0点:(a1)成分由来の香りと(a2)成分由来の香りが感じられず、初期の香調がバランスよく残っていない
【0074】
【表6】

【0075】
*1:(c)成分の反応生成物由来の分を含む配合量
*2:pHは0.1N塩酸水溶液及び0.1N水酸化ナトリウム水溶液で調整した。
【0076】
なお、実施例1〜8の組成物で処理された衣類は、未処理の衣類と比較して柔軟性が向上していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記(a1)成分及び(a2)成分を含む香料組成物、ならびに、(b)下記(b1)成分及び(b2)成分から選ばれるシリコーン化合物を含有し、(a)成分/(b)成分が質量比で1/20〜10/1でありかつ、(a)香料組成物中、(a1)成分を30〜60重量%、(a2)成分を10〜50重量%含有する、繊維製品を処理するための水性組成物。
(a1)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0以上であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHg以下である香料成分
(a2)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0未満であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHgを超える香料成分
(b1)成分:−R−NH2(式中、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であり、RはSiと直接結合している。)で示される基で変性されたアミノ変性シリコーン化合物
(b2)成分:25℃における粘度が10万〜600万mm2/sであるジメチルポリシロキサン化合物
【請求項2】
更に、(c)窒素原子に結合する基のうち1〜3個が炭素数12〜24の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である4級アンモニウム塩化合物を含有する請求項1記載の水性組成物。
【請求項3】
(a)成分及び(b)成分をあらかじめ溶融して配合してなる請求項1又は2記載の水性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の水性組成物を用いて繊維製品を処理し、処理後の繊維製品の残香性を向上させる方法。
【請求項5】
請求項2又は3記載の水性組成物を用いて繊維製品を処理し、処理後の繊維製品の残香性及び柔軟性を向上させる方法。

【公開番号】特開2007−247101(P2007−247101A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72524(P2006−72524)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】