水性適合性ナノ粒子の生成方法
【解決手段】本発明は水性適合性ナノ粒子の生成方法に関する。より具体的には、本発明が提供する方法は、予め改質されたリガンドをナノ粒子に結合させることによって、水性適合性半導体ナノ粒子を生成するものであり、ナノ粒子を水性適合性にするために結合後の改質を更に行う必要がない。このようにして改質されたナノ粒子には、結合後の改質プロセスを要する先行技術方法を用いて生成した水性適合性ナノ粒子と較べて、蛍光性及び安定性の向上が見られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性適合性(aqueous compatible)ナノ粒子の合成に関するものであり、特に、限定するものでないが、半導体ナノ粒子(例えば、コア、コア/シェル又はコア/マルチシェル等の半導体ナノ粒子で、水性媒体でぼ分散又は溶解されることができるもの)の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光有機分子が抱える不利な点として、光退色、励起照射周波数の違い、そして広輝線放射が挙げられる。しかし、蛍光有機分子を量子ドットの半導体ナノ粒子に置き換えることで、これらの制約を避けることができる。
【0003】
半導体ナノ粒子の大きさによって材料の電子特性が決定され、バンドギャップのエネルギーは、量子閉込め効果の結果として半導体ナノ粒子の大きさに反比例する。異なる大きさの量子ドットは、単一波長の光での照射によって励起され、バンド幅が狭い不連続蛍光が放射される。更に、ナノ粒子の表面積/体積比が大きいと、量子ドットの物理的及び化学的特性に大きな影響を与える。
【0004】
単一の半導体材料を含むナノ粒子は通常、適度の物理的/化学的安定性と、その結果としての比較的低い蛍光量子効率を有する。これらの低量子効率が生じるのは、欠陥部で生じる非放射性の電子ホール再結合やナノ粒子表面でのダングリングボンドによる。
【0005】
コアシェルナノ粒子はシェル材を有する半導体コアを含み、該シェル材は、典型的には幅広のバンドギャップと、前記コアの表面でエピタキシャルに成長した同様な格子次元とを有する。シェルは、コアの表面から欠陥及びダングリングボンドを除去し、これにより電荷担体は、非放射再結合における中核として機能する表面状態から離れて、コア内部に閉じ込められる。より最近では、半導体ナノ粒子の構造は更に改良されてコア/マルチシェルのナノ粒子を含んでおり、コア半導体材料に2以上のシェル層が設けられることで、ナノ粒子の物理的、化学的及び/又は光学的特性が更に強化される。
【0006】
コア及びコア/(マルチ)シェルの半導体ナノ粒子の表面は、反応性に富むダングリングボンドを有することが多く、これらは、有機リガンド化合物などの適当なリガンドを配位することによって不動態化されることができる。リガンド化合物は通常、不活性溶媒に溶解されるか、量子ドットの合成に用いられるナノ粒子コアの成長及び/又はシェル処理における溶媒として用いられる。いずれの方法でも、リガンド化合物は孤立電子対を表面金属原子に提供することで、量子ドットの表面をキレート化するが、このことが粒子の凝集(aggregation)を抑制し、周囲の化学環境から粒子を保護し、電子的安定化をもたらして、比較的非極性媒体中で溶解性を与えることができる。
【0007】
水性環境(即ち、主として水からなる媒体)において量子ドットナノ粒子を幅広く適用することはこれまで制限されてきたが、それは、量子ドットは水性媒体と不適合性であるため、水性媒体中に分散又は溶解された量子ドットと安定系を生成することができないためである。それゆえ、量子ドットを水性適合性にするため、つまり、水又は主として水からなる媒体の中で均一に分散することができるドットを得るために、一連の表面改質処理が開発されてきた。
【0008】
量子ドットの表面改質において最も広く用いられる処理として知られているのが、“リガンド交換”である。コア合成及び/又はシェル化処理の間、何かの理由により、量子ドットの表面に配位(coordinate)する親油性リガンド分子は、その後、選択された極性/荷電リガンド化合物と交換される。
【0009】
他の表面改質法では、極性/荷電分子又はポリマー分子を、量子ドットの表面に既に配位されているリガンド分子と相互キレート化する(interchelate)。
【0010】
現在のリガンド交換及び相互キレート化処理では、量子ドットナノ粒子を水性媒体に適合させることができるが、通常は、材料の量子収量が低下したり、及び/又は、対応する未改質量子ドットのサイズよりも有意に大きくなる。
【0011】
本発明の目的は、現在の水性適合性ナノ粒子の生成方法に関する上記課題のうち1又は2以上の課題を解消するか又は軽減することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様では、ナノ粒子結合基及び可溶化基前駆体(solubilising group precursor)を含むナノ粒子結合リガンドを用いて、水性適合性ナノ粒子を生成する方法を提供するもので、該方法は、
a.可溶化基前駆体を可溶化基に変換することと、
b.前記可溶化基を含む結合リガンドにナノ粒子を接触させて、該結合リガンドをナノ粒子へ結合すること、を含む方法である。
【0013】
本発明が開示する方法は、ナノ粒子の表面を改質前のリガンドで少なくとも部分的にコーティングし、ナノ粒子を水性適合性にするものである。結合後の改質ステップは有害となり得るので好ましくないが、ナノ粒子の表面に結合する前にリガンドを改質することにより、このステップを回避することができる。それゆえ、本発明が提供する量子ドットの半導体ナノ粒子は、水性媒体に安定した状態で分散又は分解されることができ、物理的/化学的に強固で(robust)、量子の収量が高く、サイズは比較的小さい。以下に示す実施例の結果では、本発明に基づいて生成された水性適合性量子ドットの初期量子収量は、同じ半導体材料であるが従来技術を用いて水性適合性が得られた量子ドットよりも有意に少ないことを示している。更にまた、以下の実施例で生成された量子ドットの最終量子収量は、ドットに適当なアニーリング処理を施すことにより、可溶化基含有リガンドを添加する前又は後のドットの量子収量よりも増大した。
【0014】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様に基づく方法を用いて生成された水性適合性ナノ粒子を提供するもので、該水性適合性ナノ粒子は、ナノ粒子結合リガンドに結合されたナノ粒子を含み、前記リガンドはナノ粒子結合基及び可溶化基を含んでいる。
【0015】
本発明の第3の態様では、水性適合性ナノ粒子は、1又は複数のエチレンオキシド反復単位(repeating units)を含むメルカプトカルボン酸に結合されたナノ粒子を含む。望ましいメルカプトカルボン酸塩ベースのナノ粒子結合リガンドについては、以下でより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づき生成された水性適合性量子ドットは、多くの異なる用途に使用されることができ、その用途として、限定するものでないが、極性溶媒(例えば、水と水ベースの溶媒)、電子機器、インク、ポリマー、ガラスへの添加(incorporation)、又は量子ドットナノ粒子のセル、生体分子、金属、分子等への付着(attachment)を挙げることができる。
【0017】
本発明の更なる態様は水性適合性ナノ粒子、例えば量子ドット半導体ナノ粒子を提供するもので、ナノ粒子表面結合リガンドに結合されたナノ粒子を含み、各リガンドは、ナノ粒子表面結合基と可溶化基とを含んでいる。より具体的には、本発明は、リガンドで少なくとも部分的にコーティングされた量子ドット半導体ナノ粒子に関するものであり、前記リガンドはナノ粒子に水性適合性を付与し、ナノ粒子に対して、化学的官能性、安定性及び/又は蛍光性の向上をもたらすことができる。
【0018】
従来の結合後の表面処理法により、可溶化基前駆体リガンド化合物は、ナノ粒子の表面に結合される際に改質される。このような処理の結果として、リガンド改質剤が過剰に添加されてしまうことが多く、得られるナノ粒子に所望される物理的、化学的及び/又は光学的特性に悪影響を及ぼし得る。他方では、添加されるリガンド改質剤が不十分であると、結合リガンド化合物の改質は適切に行われず、ナノ粒子に水性適合性を付与することができない。
【0019】
本発明では、可溶化基前駆体リガンド化合物を、ナノ粒子に接触させる前に改質するので、リガンドの量に対して適当な化学量論量にて、リガンド改質剤を可溶化基前駆体リガンドに添加できる利点があり、リガンド改質剤の過剰添加又は過少添加を防止することができる。従って、ナノ粒子の材料は、有害となり得るリガンド改質剤への曝露から保護されるだけでなく、得られるナノ粒子についても、従来の溶液相分析技術を用いることによって精製及び分析されることができる。
【0020】
幾つかの実施例において、量子ドットのコアは半導体材料を含む。半導体材料は周期律表の2〜16族のうち何れか1又は複数の族の中のイオンを含んでおり、これには2種の異なるイオンを含む2元材料、3種の異なるイオンを含む3元材料及び4種の異なるイオンを含む4元材料が含まれる。一例として、本発明の第1の態様に基づく方法を用いて水性適合性にできるナノ粒子に含まれるコア半導体材料として、例えば、限定するものでないが、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、InAs、InSb、AIP、AIS、AIAs、AISb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、PbS、PbSe、Si、Ge、及びそれらの組合わせが挙げられる。本発明に係るナノ粒子は、望ましくは、平均直径が約20nm未満のコアを有しており、コアは、より好ましくは約15nm未満であり、最も好ましくは約2〜5nmである。
【0021】
単一の半導体材料(例えば、CdS、CdSe、ZnS、ZnSe、InP、GaN等)を含む量子ドットナノ粒子の量子効率は通常は比較的低いが、これは欠陥及びナノ粒子表面のダングリングボンドに生じる非放射性の電子ホール再結合に起因する。これらの問題に対てし少なくとも部分的に対処するために、ナノ粒子コアには、異なる材料(例えば半導体材料など)からなる1又は複数の層(この明細書では、“シェル”とも称される)で少なくとも部分的にコーティングされる。各々のシェルに含まれる物質は、周期律表の2〜16族のうち何れか1又は複数の族の中のイオンを含むことができる。ナノ粒子が2以上のシェルを含む場合は、各シェルは異なる材料で形成されるのが好ましい。例示的なコア/シェル材料において、コアは上記の特定材料のうち一種で形成され、シェルはコア材料よりも大きなバンドギャップエネルギーと、コア材料と同様な格子次元とを有する半導体材料から構成される。シェル材料の例として、限定するものでないが、ZnS、MgS、MgSe、MgTe及びGaNを挙げることができる。コア内部にて表面状態から離れて電荷担体を閉じ込めることにより、量子ドットの安定性は向上し、量子収量は増大する。
【0022】
本発明の方法を用いて水性適合性にされる量子ドットナノ粒子の平均直径は様々であり、放射波長に変えられる。エネルギーレベル、ひいては量子ドット蛍光放射の周波数は、量子ドットが作られる材料と、量子ドットのサイズとによって制御されることができる。一般的に、同じ材料で作られた量子ドットは、サイズが大きくなるほど赤色発光が強くなる。好ましくは、量子ドットの直径は約1〜15nmであり、より好ましくは約1〜10nmである。量子ドットは、好ましくは、約400〜900nmの波長を有する光を放射し、波長は、より好ましくは約400〜700nmである。
【0023】
典型的には、コア、コア/シェル又はコア/マルチシェルのナノ粒子を生成するのにコア及び/又はシェル処理が用いられ、その結果として、ナノ粒子は、ミリスチン酸、ヘキサデシルアミン及び/又はトリオクチルホスフィンオキシド等の表面結合リガンドで、少なくとも部分的にコーティングされる。このようなリガンドは通常、コア及び/又はシェル処理が行われた溶媒から得られる。この種のリガンドは、上述したように、非極性媒体中のナノ粒子の安定性を向上させ、電子安定性をもたらし、及び/又は望ましくないナノ粒子の凝集をなくすことができるが、これらのリガンドは通常、より極性の媒体(例えば、水性溶媒など)中でナノ粒子の安定な分散又は溶解を妨げる。
【0024】
好ましい実施例において、本発明が提供する量子ドットは、水性適合性であり、安定で、小さく、量子収量が大きい。コア及び/又はシェル処理の結果、親油性表面結合リガンド(例として、ヘキサデシルアミン、トリオクチルホスフィンオキシド、リスチン酸等が挙げられる)が量子ドットの表面に配位されると、これらリガンドは、改質前、又は“活性化された”可溶化基を含むリガンドと、全部又は部分的に交換されるか、或いは、改質前のリガンドが、存在する親油性表面結合リガンドと相互キレート化する。
【0025】
本発明の第1の態様について上述したように、可溶化リガンドが改質または活性化される前、可溶化基前駆体と共にナノ粒子結合基を含んでいる。好ましくは、可溶化基前駆体はイオン性基、即ち、適当な作用剤(agent)(例えば、イオン化剤)による処理でイオン化されることができる化学基を含む。イオン性前駆体基をイオン化基へ転換することにより、当該基がナノ粒子を少なくとも部分的に溶解させる能力が向上し、該ナノ粒子に対してリガンドが極性媒体(水性溶媒等)中で結合されることは理解されるであろう。
【0026】
可溶化基前駆体は、該前駆体基と較べて溶解力が向上した可溶化基に転換できるのであれば、所望するあらゆる種類の化学基であってよい。このように、可溶化基含有リガンドにナノ粒子を接触させる前に、前駆体基を可溶化基に転換することで、リガンドを処理しなくても、リガンドはナノ粒子の表面に結合されてナノ粒子を水性適合性にすることができる。従来は、結合後に表面処理工程を行なっていたため、粒子を水性適合性にする際に、ナノ粒子の望ましい物理的、化学的及び/又は光学的特性に悪影響を及ぼしていたが、本発明に係るナノ粒子水性適合化方法では、これら悪影響を回避できるか又は低減させることができる。
【0027】
上記の要件を考慮すると、あらゆる適当な可溶化基前駆体が、本発明に係るナノ粒子結合リガンドに含められることができる。望ましい実施例において、前駆体は、例えば有機基であるか、及び/又は、硫黄、窒素、酸素及び/又はリン等の一種又は複数種のヘテロ原子(即ち、非炭素原子)を含むことができる。例示的な前駆体基には、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、ニトロ、ポリエチレングリコール、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸及びリン酸エステルが含まれる。
【0028】
好ましい実施例において、可溶化リガンドは式1により表される。
【化1】
【0029】
式1中、Xは、更なる改質が行われたナノ粒子又は更なる改質が行われていないナノ粒子に結合されることができる官能基(例えば、-SR1 (R1 = H, アルキル,アリール), -OR2 (R2 - H, アルキル,アリール), -NR3R4 (R3及び/又は R4 = H, アルキル,アリール), -CO2R5 (R5 = H, アルキル,アリール), -P(=O)OR6OR7 (R6及び/又は R7 = H, アルキル,アリール)等)である。
【0030】
式1中、Yは、単結合又はアルキル、アリール、複素環、ポリエチレングリコール、又は官能化されたアルキル、アリール、複素環、ポリエチレングリコール(官能基の例として、ハロゲン、エーテル、アミン、アミド、エステル、ニトリル、イソニトリル、アルデヒド、炭酸塩、ケトン、アルコール、カルボン酸、アジド、イミン、エナミン、無水物、酸塩化物、アルキン、チオール、硫化物、スルホン、スルホキシド、ホスフィン、ホスフィン・オキシド等)、又はあらゆるリンカー(例えば、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子;置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環式基;置換又は非置換の芳香族基;1又は複数のエチレンオキシド反復単位等)、又は架橋性/重合性基(例えば、カルボン酸、アミン、ビニル、アルコキシシラン、エポキシド等)である。
【0031】
式1中、Zは、可溶化基前駆体であり、該前駆体は、
-OR8(但し、R8は水素であるか、置換又は非置換アルキル基であるか、飽和又は不飽和アルキル基であるか、置換又は非置換及び飽和又は不飽和のアルキル基である)と、
-C(O)OR9(但し、R9は水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換の芳香族基である)と、
-NR10R11(但し、R10及びR11は、独立して、水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基であるか、-NR10R11が所望サイズ(五員、六員又は七員環等)の窒素含有複素環を形成するようにリンクされている)と、
-N+R12R13R14(但し、R12、R13及びR14は、独立して、水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基である)と、
-NO2と、
-(-OCH2CH2)n-OR15(但し、R15は水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基である)と、
-S(O)2OR16(但し、R16は水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基である)と、
-P(OR17)(OR18)O(但し、R17及びR18は、独立して、水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基である)と、
からなる群から選択されることができる。
【0032】
上述したように、ナノ粒子結合リガンドにおける可溶化基前駆体を可溶化基に転換する目的は、最終的に結合するナノ粒子を可溶性にするリガンドの能力を向上させることである。従って、可溶化基前駆体から生成される可溶化基は、ナノ粒子を溶解する能力が前駆体よりも高い能力を有するべきである。上記要件を考慮してあらゆる適当な可溶化基を用いられることができるが、好ましい実施例における可溶化基は、荷電又は極性群(例えば、水酸化物塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩又はリン酸塩など)である。
【0033】
改質前または活性化されたナノ粒子結合リガンドにナノ粒子を接触させることで水性適合性を向上させることができるが、前記ナノ粒子結合リガンドは、式2に示す構造で表すことができる。
【化2】
【0034】
式2中、XとYは、式1において規定した通りであり、Z’は可溶化基、即ち、リガンドであるX-Y-Z’が結合されるナノ粒子に、水可溶性を付与することができる基である。好ましくは、Z’は荷電又は極性群(例えば、限定するものでないが、水酸化物塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩又はリン酸塩など)である。
【0035】
このように、本発明の第1の態様を構成する方法のステップaは、可溶化基前駆体Zを、以下のような適当な改質剤を用いて可溶化基Z’に転換することを含んでいる。
【化3】
【0036】
可溶化基前駆体から可溶化基への適当な転換が行われるのであれば、あらゆる所望の改質剤を用いられることができる。好ましい実施例において、可溶化基前駆体の転換は、該前駆体をイオン化剤で処理することにより行われるが、これは即ち、改質剤が、可溶化基前駆体をイオン化させる作用剤で、イオン性可溶化基が生成される。
【0037】
改質剤は、例えば、ルイス酸化合物(例えば、電子対受容体)又はルイス塩基化合物(例えば、電子対供与体)である。好ましくは、可溶化基前駆体の転換は、アンモニウム塩やアルコキシド塩などの有機塩基で前駆体を処理することにより行われる。アンモニウム塩は、例えば、アルキルアンモニウム塩(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、又は水酸化テトラブチルアンモニウムなど)である。例示的なアルコキシド塩は、金属アルコキシド塩(例えば、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、又はカリウムtert-ブトキシドなど)である。
【0038】
例示的な実施例において、可溶化基前駆体は、例えばスルホン酸基であり、該スルホン酸基はアルキルアンモニウム塩等の有機塩基で処理されることで、スルホン酸塩可溶化基が生成される。
【0039】
処理対象のナノ粒子にナノ粒子結合リガンドが曝露される前に、可溶化基前駆体から可溶化基への転換が少なくとも部分的に行われることで、ナノ粒子の水性適合性が向上する。可溶化基前駆体の転換及びナノ粒子の処理は、同じ反応媒体又は反応溶媒の中で行なわれるが、好ましくは、可溶化基前駆体の転換は第1反応媒体又は溶媒の中で行われ、前記可溶化基を含むナノ粒子結合リガンドによる前記ナノ粒子の処理は、別個の第2反応媒体又は溶媒の中で行なわれる。
【0040】
本発明の好ましい実施例において、前記の式2(X-Y-Z’)で規定した改質前又は活性化されたナノ粒子結合リガンドは、式3に示される好ましい構造を有することができる。
【化4】
【0041】
式3中、Yは、式1及び式2について規定した通りであり、WとTは、それぞれ、硫黄原子とカルボキシル酸素原子を配位するのに適した化学基又は原子である。
【0042】
元の可溶化基前駆体(Z)を可溶化基(式2中のZ’、式3中の-CO2T)に転換するのに用いられる転換反応の性質に応じて、Wは、例えば前駆体が1当量の塩基で処理された場合は水素原子であり(式3=HS-Y-CO2T)、または、前駆体が2当量以上の塩基で処理された場合は、変換反応に用いられる塩基から得られることもできる。例示として、Wは、例えばアンモニウムカチオン(例えば、+N(R19)4であって、各々のR19は、水素原子、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基;置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂環式基;及び、置換又は非置換芳香族基から成る群より別個に選択される)である。好ましい実施例において、各々のR11は、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、炭素環式基(例えば、アリール基)、又は複素環式基(例えば、ヘテロアリール基)である。更なる好ましい実施例では、Wは例えば、限定するものでないが、ナトリウム、カリウム又はリチウムなどの金属イオンである。
【0043】
式3において、Tは、可溶化基前駆体(Z)を可溶化基(Z’)へ変換するのに用いられる塩基から得られることができる。一例として、Tは、例えば、アンモニウムカチオン(例えば、+N(R20)4であり、各々のR20は、水素原子、置換又は非置換、飽和又は不飽の脂肪族基;置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂環式基;及び、置換又は非置換芳香族基から成る群より別個に選択される。各々のR20は、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、炭素環式基(例えば、アリール基)、又は複素環式基(例えば、ヘテロアリール基)である。更なる好ましい実施例において、Tは例えば、限定するものでないが、ナトリウム、カリウム又はリチウムなどの金属イオンである。
【0044】
上記のことから、ある状況下では、WとTは同種の化学基であってよく、同種の化学基は例えば、可溶化基前駆体(Z)を可溶化基(Z’)へ変換するのに用いられる塩基から得られることは理解されるだろう。水酸化テトラブチルアンモニウムなどの2当量以上の塩基が変換反応(ZからZ’)に用いられる場合、WとTはいずれもテトラブチルアンモニウムカチオンであってよい。
【0045】
硫黄には金属の空軌道に電子を付与する性質があるため、式3の好ましいリガンド化合物(WS-Y-CO2T)は、硫黄原子により、ナノ粒子の表面での金属原子/イオン(例として、Zn、Cd、Zn2+、Cd2+が挙げられる)への配位が促進され、一方、末端のカルボキシレート基は、極性分子(例えば、水分子)を取り囲むことによって溶媒化されて、ナノ粒子は水性適合性になる。
【0046】
以下に例示する特に好ましい実施例において、改質前のリガンドは、メルカプトカルボン酸、システイン(更なる例として、限定するものでないが、メルカプトプロパノン酸、メルカプトヘキサン酸及びメルカプトオクタン酸が含まれる)の塩であり、酸は、2当量以上の塩基、水酸化テトラブチルアンモニウムで処理されて、カルボン酸基とチオール基の両方が脱プロトン化される。1当量の塩基を用いることもできるが、この場合、pKaが最も低い官能基が優先的に脱プロトン化を行うことは理解されるであろう。システインの場合、カルボン酸基のpKaは約2であり、チオール基のpKaは約8であるため、カルボン酸基の方が、チオール基よりも前に脱プロトン化する。
【0047】
メルカプトカルボン酸塩の予め生成されたカルボキシレート基は、水分子によって溶媒化され、コーティングされた量子ドットに水性適合性を付与する。カルボン酸塩を予め生成することにより、リガンド交換後の塩基を付加してカルボン酸の官能性を脱プロトン化する必要性がなくなるが、リガンド交換後の付加は、前述したように、最終の量子ドットの量子収量に悪影響を及ぼすことがある。
【0048】
カルボキシレート基はまた、適当な化学官能性を提供して、カップリング/架橋結合反応(例えば、カルボン酸とアミンとのカルボジイミド媒介カップリング)に加わることができるし、或いは、他の種(蛋白質、ペプチド、抗体、炭水化物、糖脂質、糖蛋白質及び/又は核酸を含む)に結合されることもできる。
【0049】
更に、メルカプトカルボン酸のあらゆるペンダント官能基(例えば、システインのアミン基)は、カップリング/架橋結合反応(例えば、カルボン酸とアミンとのカルボジイミド媒介カップリングや、アミンのビス[スルホサクシニミジル]スベレートとの架橋結合)に加わることができるし、或いは、カルボキシレート基に関する他の種(例えば、蛋白質、ペプチドなど)に結合することもできる。
【0050】
2当量以上の塩基が用いられた好ましい実施例において、メルカプトカルボン酸塩のチオレート基を予め生成することで、量子ドットの表面に対するリガンド化合物の配位が促進される。チオレート基の硫黄原子は、量子ドットの表面で金属原子/イオン(例えば、Zn、Cd、Zn2+、Cd2+)にキレート化する。一方で、塩基から得られたカチオン(例えば、+NMe4や+NBu4)は最初にチオレート基に結合されており、量子ドットの表面で対原子/イオン(例えば、S、Se、S2-、Se2-)と錯体を作る。このような錯体形成は、量子ドットの表面を不動態化させる利点をもたらす。
【0051】
好ましい実施例において、可溶化基前駆体を含むリガンドは、例えば、メルカプトカルボン酸である。メルカプトカルボン酸は、1又は複数のエチレンオキシド反復単位を含むことができ、及び/又は、所望により、アミン或いはアミド官能基を含むことができる。特に好ましい可溶化基前駆体は、以下の式を有する。
【化5】
【0052】
前記式中、nは約2000以下、より好ましくは約1000以下、さらに好ましくは約100以下の整数である。なお、nは、約1〜約2000、より好ましくは約10〜約500、さらに好ましくは約20〜約100の範囲が特に好ましい。好ましい実施例において、以下で説明する実験2及び3で用いられたnは、約80である。
【0053】
別の実施例において、式1及び2中のナノ粒子結合基Xは、例えば多座配位基(multidentate group)であり、結合相互作用(例えば、ナノ粒子の原子/イオンとの配位結合など)を行なうことができる2以上の原子を含有する化学基である。更にまた、式2中の可溶化基Z’は、例えば、周囲の溶媒と相互作用することができる2以上の原子を含有する多座配位基である。
【0054】
多座配位基は、例えば、1又は複数の原子(例えば、硫黄、酸素、窒素又はリン原子等)、及び/又は、1又は複数の基(例えば、-SR21 (R21 = H、アルキル、アリール)、-OR22 (R22 - H、アルキル、アリール)、-NR23R24 (R23 and/or R24 = H、アルキル、アリール)、-CO2R25 (R25 = H、アルキル、アリール)、-P(=O)OR26OR27 (R26 and/or R27 = H、アルキル、アリール))である。特に好ましい多座配位基として、チオール基(-SH)、ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-CO2H)及びホスホニル基(-P(=O)(OH)2)が挙げられる。
【0055】
例示的な多座配位基には、限定するものでないが、図1に示すものが含まれる。図1中、Aは上述したSR21、-OR22、-NR23R24、-CO2R25、-P(=O)OR26OR27等の官能基、BはNH、O、CH2等の第1の適当な連結基、そしてDはN、CH、C等の第2の適当な連結基である。
【0056】
適当な多座配位基の更なる例において、ナノ粒子に結合できる基/原子として、例えば、エーテル、アミン、アミド、エステル、ニトリル、イソニトリル、アルデヒド、炭酸塩、ケトン、アルコール、カルボン酸、アジド、イミン、エナミン、無水物、酸塩化物、アルキン、チオール、硫化物、エポキシド、スルホン、スルホキシド、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ビニル及び/又はアルコキシシラン等の官能基、1又は複数の非炭素原子を含む複素環式基、及び/又は、ハロゲン原子のうちの任意の1又は複数の基/原子を挙げることができる。
【0057】
本発明の方法は水性適合性のナノ粒子、具体的には、限定するものではないが、半導体量子ドットの生成に用いられることができ、ナノ粒子の表面に結合する前に、あらゆる表面結合親油性リガンド分子を、“活性化”された改質前のリガンド化合物と部分的に又はほぼ全部置換することにより、半導体量子ドットの水性適合性が付与される。更なる例又は他の例として、改質前のリガンドは、ナノ粒子の表面に結合されて存在するリガンドを相互キレート化することができる。本発明に基づくリガンド化合物で処理されたナノ粒子の表面リガンドは、ナノ粒子結合基(例えば、式1及び式2中のX、又は式3中のWS)、存在する場合は連結基(例えば、式1、式及び式3中のY)、及び/又は可溶化基(例えば、式2中のZ’、又は式3中のCO2T)の性質によって異なるだけでなく、ナノ粒子の表面にリガンドの結合がない領域、及び/又は、元のナノ粒子の合成処置でリガンド(例えば、親油性リガンド)が結合されたままの領域があることは理解されるであろう。
【0058】
上記のように、本発明の方法では、可溶化基前駆体をナノ粒子の表面に結合させる前に可溶化基に変換する。結合後の表面処理では、リガンド改質剤の添加量が過剰又は過少になるが、本発明の方法では、結合後の表面処理を行なう必要性をなくすか又は少なくすることができる。このように、本発明では、ガンド改質剤の添加量を正確に制御することができる。その結果、十分な量のリガンド改質剤を添加することにより、所望量の溶解剤を確実に生成することができるので、ナノ粒子の材料はリガンド改質剤に曝露される不都合から保護されることができる。更に、得られたナノ粒子は、予め生成された可溶化基が結合されており、従来の液相分析技術を用いることによって精製及び分析されることができる。
【0059】
本発明のリガンド分子で得られる量子ドットの量子収量は、好ましくは、リガンド交換前の量子ドットサンプルの量子収量と少なくとも同等であるか、より好ましくは、それよりも大きい。また、これらの水性適合性量子ドットは、紫外線(365nm)が好気的に照射されるとき、親量子ドットサンプルと較べて高い安定性を有している。
【0060】
本発明の範囲は、上述した好適な実施例に限定されるものではなく、上記の本発明の各態様の根底にある基本概念から逸脱することなく、変更できることは理解されるであろう。
【0061】
本発明について、以下の図及び実施例を例示してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、例示的な多座配位基の非限定的リストである。
【0063】
【図2】図2は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPO半導体ナノ粒子の吸収スペクトルである(実施例1を参照)。
【0064】
【図3】図3は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPO半導体ナノ粒子の発光スペクトルである(実施例1を参照)。
【0065】
【図4】図4は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4水性適合性半導体ナノ粒子の発光スペクトルである(実施例1を参照)。
【0066】
【図5】図5は、本発明に基づく方法に用いられることができる例示的なリガンドBu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4の1H-NMRスペクトルである(実施例1を参照)。
【0067】
【図6】図6は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPO半導体ナノ粒子の1H-NMRスペクトルである(実施例1を参照)。
【0068】
【図7】図7は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4水性適合性半導体ナノ粒子の1H-NMRスペクトルである(実施例1を参照)。
【0069】
【図8】図8は、本発明の好適な実施例に基づき調製されたHS-C2H4-CONH-(PEG)n-C3H6-CO2-+NBu4表面結合リガンドを含み、水性適合性のInP/ZnS/ZnO半導体ナノ粒子の発光スペクトルである(実施例2を参照)。
【0070】
【図9】図9は、本発明の好適な実施例に基づき調製されたBu4N+-S-C2H4-CONH-(PEG)n-C3H6-CO2-+NBu4表面結合リガンドを含み、水性適合性のInP/ZnS/ZnO半導体ナノ粒子の発光スペクトルである(実施例3を参照)。
【0071】
【図10A】図10Aは、周辺光で照射された水の中でHS-C2H4-CONH-(PEG)n-C3H6-CO2-+NBu4改質量子ドットの写真である。
【図10B】図10Bは、365nmの光で照射された水の中でHS-C2H4-CONH-(PEG)n-C3H6-CO2-+NBu4改質量子ドットの写真である(図10Bを参照)。
【実施例1】
【0072】
{1.1 CdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPOナノ粒子の調製}
<CdSeコアの合成>
【表1】
【0073】
一実施例において、ヘキサデシルアミン(50g、0.21モル)を、コンデンサ及び温度計を備えた250mlの三つ口丸底フラスコに入れて、量子ドットのナノ粒子を合成した。ヘキサデシルアミンは、真空下で脱気した(110℃、1時間)。
【0074】
次に、ヘキサデシルアミンを冷却し(90℃)、CdSeクラスター([Et3NH]4Cd10Se4(SPh)16、0.25g、モル)とトリオクチルホスフィン/Se(0.5M、3ml)を添加した。固体が溶解すると、温度を上げて(160℃)、溶液をN2(g)の下で撹拌した(30分)。PLmax=495nm。
【0075】
温度を上げて(170℃)、Cd前駆体(1ml)とトリオクチルホスフィン/Se(0.2M、1ml)とを混合し、これを反応混合物にゆっくりと滴下して撹拌した(30分)。PLmax=513nm。次に、溶液を冷却して(120℃)、一晩かけてアニーリングした。
【0076】
温度を上げて(180℃)、Cd前駆体溶液(2ml)とトリオクチルホスフィン/Se(0.2M、2ml)の混合物を、反応混合物にゆっくりと滴下して撹拌した(30分)。PLmax=528nm。
【0077】
温度を上げて(190℃)、Cd前駆体(2ml)とトリオクチルホスフィン/Se(0.2M、2ml)を混合し、反応混合物にゆっくりと滴下して撹拌した(30分)。PLmax=540nm。
【0078】
温度を上げて(200℃)、Cd前駆体(2ml)とトリオクチルホスフィン/Se(0.2M、2ml)を混合して、反応混合物にゆっくりと滴下して撹拌した(1時間30分)。PLmax=560nm。
【0079】
反応混合物を冷却して(120℃)、一晩かけてアニーリングした。反応混合物をさらに冷却し(50℃)、無水メタノール(80ml)を添加して、遠心分離で単離され無水クロロホルム(10ml)中に溶解されたナノ粒子を沈殿させた。
【0080】
<CdSeコアのCdZnSによるシェリング>
【表2】
【0081】
20gのHDAと15gのTOPOを、コンデンサ及び温度計を備えた250mlの三つ口丸底フラスコに入れた。HDA/TOPOは、110℃の真空下で1時間脱気した。
【0082】
次に、HDA/TOPOを90℃まで冷却し、CdSeコア(10mlのクロロホルム中)を添加した。クロロホルムは、真空下で除去された。
【0083】
温度を210℃まで上昇させ、2mlのCdZn(0.1M)前駆体溶液とS/ODEをゆっくりと滴下し、溶液を10分間撹拌した。
【0084】
これを2回以上繰り返し(合計で、CdZn前駆体とS/ODEを夫々6ml添加した)、次に、溶液を210℃で30分間アニーリングした。
【0085】
その後、溶液を50℃まで冷却し、無水メタノール(70ml)を添加し、遠心分離を用いて固体を単離した。次に、固体を無水メタノール(40ml)で洗浄した。
【0086】
無水クロロホルム(10ml)の中で、固体を再び溶解した。PLmax=596nm。
【0087】
<CdSe/CdZnSのZnSによるシェリング>
【表3】
【0088】
20gのHDAと40gのTOPOを、コンデンサ及び温度計を備えた250mlの三つ口丸底フラスコに入れた。HDA/TOPOは、110℃の真空下で1時間脱気した。
【0089】
次に、HDA/TOPOを90℃まで冷却し、CdSe/CdZnSコア(10mlのクロロホルム中)を添加した。クロロホルムは、真空下で除去された。
【0090】
次に、溶液を190℃まで加熱し、ZnEt2/TOP(0.25M)と(TMS)2-S/TOP(0.25M)を、ZnEt2から始めて各々0.5mlずつ、8mlになるまで交互に添加した。なお、添加と次の添加の間隔は少なくとも10分とした。
【0091】
次に、溶液を120℃まで冷却し、1時間アニーリングした。次に溶液を50℃まで冷却し、無水メタノール(20ml)と無水イソプロパノール(60ml)を添加して、遠心分離を用いて固体を単離した。次に、固体を無水イソプロパノール(40ml)で洗浄し、無水トルエン(15ml)の中で溶解させた。
【0092】
<コアリング及びシェリング溶液の調製>
<<カドミウム前駆体溶液(0.2M)>>
1.284gのCdO、19.1mlのオレイン酸及び30.9mlのODEを三つ口丸底フラスコに入れ、N2雰囲気下で250℃まで加熱した。溶液が無色になるまで温度を維持し(約20分)、次に冷却して使用可能状態とした(溶液は室温で凝固するため、非常に緩やかな加熱によって保温し撹拌を続けた)。
【0093】
CdZn前駆体溶液“シェル溶液”(0.08M)
0.68gのCd(Ac)2・2H20、0.46gのZn(Ac)2、41mlのODE及び9mlのオレイン酸を丸底フラスコに入れ、真空下で全ての固体が溶解するまで加熱した。
【0094】
溶液は室温で凝固するので、非常に緩やかな加熱によって保温し撹拌を続けた。
【0095】
{1.2 水性適合性のCdSe/CdZnS/ZnS量子ドットの調製}
【化6】
【0096】
QD表面結合リガンド分子は、一定分量の水酸化テトラブチルアンモニウムメタノール溶液(1M、1642.7μl、1.642792mmol)をシステイン(0.1026g、0.821396mmol)に添加することで合成され、均質化されて、対応する塩(Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4、0.0005mmol/μl)が生成された。
【0097】
一定分量のリガンド分子(Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4)(0.001-0.2mmol)を、クロロホルム中のCdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPO量子ドット(125nmol)(前記のとおり調製されたもの。量子収量=49%、λmaxem=620nm、FWHM=31nm)に添加することで、合計量が1000μlの溶液が得られた。反応混合物を均質化した後、培養した(4時間)。量子ドットは反応混合物から析出され、遠心分離にかけた(10,000RPM、5分)。水(400μl)に分散した浮遊物をペレットから分離して、透明な溶液(量子収量=40%)が得られた。次に、試料を紫外線(365nm)で照射(39時間)してアニーリングした(量子収量=55%)。
【0098】
上記結果から、予め改質された可溶化リガンド(Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4)の結合後、量子ドットの量子収量は、49%から40%へ9%だけ低下したことが分かる。これは、リガンド結合後に行なう従来の表面処理方法を用いて量子ドットを改質した後に通常観察される量子収量の減少約50%〜100%と較べると、量子収量の減少は約18%に等しい。
【実施例2】
【0099】
<水性適合性のInP/ZnS/ZnO量子ドットの調製>
<<表面結合リガンドの調製>>
【化7】
【0100】
QD表面結合リガンド分子は、一定分量の水酸化テトラブチルアンモニウムメタノール溶液(1M、14μl、0.014mmol)を、HS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2H(MWt=3711、0.0522g、0.014mmol)のメタノール溶液(986μl)に添加することで合成され、均質化されることで、対応するHS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4の塩(0.000014mmol/μl)を生成した。
【0101】
<<リガンド結合>>
一定分量のリガンド分子HS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4(269.4μl、0.00377mmol)を、クロロホルム中のInP/ZnS/ZnO量子ドット(有機材料中で、4mg、PL=612nm、量子収量=50%、FWHM=95nm、TGA=78%)に添加して、合計量が4000μlの溶液を得た。反応混合物を均質化し、培養した(4時間)。
【0102】
反応混合物を減圧下で濃縮した後、水(1000μl)の中で分解し、PTFEシリンジフィルター(0.2μl)を通して濾過して、均質で赤色の透明溶液(量子収量=21%、発光スペクトルは図8に示すとおり)が得られた。図10A及び図10Bは、周辺光(図10A)及び365nmの光(図10B)で照射された水の中でHS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4改質された量子ドットの写真である。
【実施例3】
【0103】
<水性適合性のInP/ZnS/ZnO量子ドットの調製>
<<表面結合リガンドの調製>>
【化8】
【0104】
QD表面結合リガンド分子は、一定分量の水酸化テトラブチルアンモニウムメタノール溶液(1M、26.8μl、0.0268mmol)を、HS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2H(MWt=3711、0.0499g、0.0134mmol)のメタノール溶液(973.2μl)に添加して合成され、均質化され、対応するBu4N+-S-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4の塩(0.0000134mmol/μl)が生成された。
【0105】
<<リガンド結合>>
一定分量のリガンド分子Bu4N+-S-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4(281.3μl、0.00377mmol)を、クロロホルム中のInP/ZnS/ZnO量子ドット(有機材料中で、4mg、PL=612nm、量子収量=50%、FWHM=95nm、TGA=78%)に添加して、合計量が4000μlの溶液が得られた。反応混合物を均質化し、培養した(4時間)。
【0106】
反応混合物を減圧下で濃縮し、次に、水(1000μl)中で分解させ、均質で赤色の透明溶液(量子収量=19%、発光スペクトルは図9に示すとおり)が得られた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性適合性(aqueous compatible)ナノ粒子の合成に関するものであり、特に、限定するものでないが、半導体ナノ粒子(例えば、コア、コア/シェル又はコア/マルチシェル等の半導体ナノ粒子で、水性媒体でぼ分散又は溶解されることができるもの)の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光有機分子が抱える不利な点として、光退色、励起照射周波数の違い、そして広輝線放射が挙げられる。しかし、蛍光有機分子を量子ドットの半導体ナノ粒子に置き換えることで、これらの制約を避けることができる。
【0003】
半導体ナノ粒子の大きさによって材料の電子特性が決定され、バンドギャップのエネルギーは、量子閉込め効果の結果として半導体ナノ粒子の大きさに反比例する。異なる大きさの量子ドットは、単一波長の光での照射によって励起され、バンド幅が狭い不連続蛍光が放射される。更に、ナノ粒子の表面積/体積比が大きいと、量子ドットの物理的及び化学的特性に大きな影響を与える。
【0004】
単一の半導体材料を含むナノ粒子は通常、適度の物理的/化学的安定性と、その結果としての比較的低い蛍光量子効率を有する。これらの低量子効率が生じるのは、欠陥部で生じる非放射性の電子ホール再結合やナノ粒子表面でのダングリングボンドによる。
【0005】
コアシェルナノ粒子はシェル材を有する半導体コアを含み、該シェル材は、典型的には幅広のバンドギャップと、前記コアの表面でエピタキシャルに成長した同様な格子次元とを有する。シェルは、コアの表面から欠陥及びダングリングボンドを除去し、これにより電荷担体は、非放射再結合における中核として機能する表面状態から離れて、コア内部に閉じ込められる。より最近では、半導体ナノ粒子の構造は更に改良されてコア/マルチシェルのナノ粒子を含んでおり、コア半導体材料に2以上のシェル層が設けられることで、ナノ粒子の物理的、化学的及び/又は光学的特性が更に強化される。
【0006】
コア及びコア/(マルチ)シェルの半導体ナノ粒子の表面は、反応性に富むダングリングボンドを有することが多く、これらは、有機リガンド化合物などの適当なリガンドを配位することによって不動態化されることができる。リガンド化合物は通常、不活性溶媒に溶解されるか、量子ドットの合成に用いられるナノ粒子コアの成長及び/又はシェル処理における溶媒として用いられる。いずれの方法でも、リガンド化合物は孤立電子対を表面金属原子に提供することで、量子ドットの表面をキレート化するが、このことが粒子の凝集(aggregation)を抑制し、周囲の化学環境から粒子を保護し、電子的安定化をもたらして、比較的非極性媒体中で溶解性を与えることができる。
【0007】
水性環境(即ち、主として水からなる媒体)において量子ドットナノ粒子を幅広く適用することはこれまで制限されてきたが、それは、量子ドットは水性媒体と不適合性であるため、水性媒体中に分散又は溶解された量子ドットと安定系を生成することができないためである。それゆえ、量子ドットを水性適合性にするため、つまり、水又は主として水からなる媒体の中で均一に分散することができるドットを得るために、一連の表面改質処理が開発されてきた。
【0008】
量子ドットの表面改質において最も広く用いられる処理として知られているのが、“リガンド交換”である。コア合成及び/又はシェル化処理の間、何かの理由により、量子ドットの表面に配位(coordinate)する親油性リガンド分子は、その後、選択された極性/荷電リガンド化合物と交換される。
【0009】
他の表面改質法では、極性/荷電分子又はポリマー分子を、量子ドットの表面に既に配位されているリガンド分子と相互キレート化する(interchelate)。
【0010】
現在のリガンド交換及び相互キレート化処理では、量子ドットナノ粒子を水性媒体に適合させることができるが、通常は、材料の量子収量が低下したり、及び/又は、対応する未改質量子ドットのサイズよりも有意に大きくなる。
【0011】
本発明の目的は、現在の水性適合性ナノ粒子の生成方法に関する上記課題のうち1又は2以上の課題を解消するか又は軽減することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様では、ナノ粒子結合基及び可溶化基前駆体(solubilising group precursor)を含むナノ粒子結合リガンドを用いて、水性適合性ナノ粒子を生成する方法を提供するもので、該方法は、
a.可溶化基前駆体を可溶化基に変換することと、
b.前記可溶化基を含む結合リガンドにナノ粒子を接触させて、該結合リガンドをナノ粒子へ結合すること、を含む方法である。
【0013】
本発明が開示する方法は、ナノ粒子の表面を改質前のリガンドで少なくとも部分的にコーティングし、ナノ粒子を水性適合性にするものである。結合後の改質ステップは有害となり得るので好ましくないが、ナノ粒子の表面に結合する前にリガンドを改質することにより、このステップを回避することができる。それゆえ、本発明が提供する量子ドットの半導体ナノ粒子は、水性媒体に安定した状態で分散又は分解されることができ、物理的/化学的に強固で(robust)、量子の収量が高く、サイズは比較的小さい。以下に示す実施例の結果では、本発明に基づいて生成された水性適合性量子ドットの初期量子収量は、同じ半導体材料であるが従来技術を用いて水性適合性が得られた量子ドットよりも有意に少ないことを示している。更にまた、以下の実施例で生成された量子ドットの最終量子収量は、ドットに適当なアニーリング処理を施すことにより、可溶化基含有リガンドを添加する前又は後のドットの量子収量よりも増大した。
【0014】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様に基づく方法を用いて生成された水性適合性ナノ粒子を提供するもので、該水性適合性ナノ粒子は、ナノ粒子結合リガンドに結合されたナノ粒子を含み、前記リガンドはナノ粒子結合基及び可溶化基を含んでいる。
【0015】
本発明の第3の態様では、水性適合性ナノ粒子は、1又は複数のエチレンオキシド反復単位(repeating units)を含むメルカプトカルボン酸に結合されたナノ粒子を含む。望ましいメルカプトカルボン酸塩ベースのナノ粒子結合リガンドについては、以下でより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づき生成された水性適合性量子ドットは、多くの異なる用途に使用されることができ、その用途として、限定するものでないが、極性溶媒(例えば、水と水ベースの溶媒)、電子機器、インク、ポリマー、ガラスへの添加(incorporation)、又は量子ドットナノ粒子のセル、生体分子、金属、分子等への付着(attachment)を挙げることができる。
【0017】
本発明の更なる態様は水性適合性ナノ粒子、例えば量子ドット半導体ナノ粒子を提供するもので、ナノ粒子表面結合リガンドに結合されたナノ粒子を含み、各リガンドは、ナノ粒子表面結合基と可溶化基とを含んでいる。より具体的には、本発明は、リガンドで少なくとも部分的にコーティングされた量子ドット半導体ナノ粒子に関するものであり、前記リガンドはナノ粒子に水性適合性を付与し、ナノ粒子に対して、化学的官能性、安定性及び/又は蛍光性の向上をもたらすことができる。
【0018】
従来の結合後の表面処理法により、可溶化基前駆体リガンド化合物は、ナノ粒子の表面に結合される際に改質される。このような処理の結果として、リガンド改質剤が過剰に添加されてしまうことが多く、得られるナノ粒子に所望される物理的、化学的及び/又は光学的特性に悪影響を及ぼし得る。他方では、添加されるリガンド改質剤が不十分であると、結合リガンド化合物の改質は適切に行われず、ナノ粒子に水性適合性を付与することができない。
【0019】
本発明では、可溶化基前駆体リガンド化合物を、ナノ粒子に接触させる前に改質するので、リガンドの量に対して適当な化学量論量にて、リガンド改質剤を可溶化基前駆体リガンドに添加できる利点があり、リガンド改質剤の過剰添加又は過少添加を防止することができる。従って、ナノ粒子の材料は、有害となり得るリガンド改質剤への曝露から保護されるだけでなく、得られるナノ粒子についても、従来の溶液相分析技術を用いることによって精製及び分析されることができる。
【0020】
幾つかの実施例において、量子ドットのコアは半導体材料を含む。半導体材料は周期律表の2〜16族のうち何れか1又は複数の族の中のイオンを含んでおり、これには2種の異なるイオンを含む2元材料、3種の異なるイオンを含む3元材料及び4種の異なるイオンを含む4元材料が含まれる。一例として、本発明の第1の態様に基づく方法を用いて水性適合性にできるナノ粒子に含まれるコア半導体材料として、例えば、限定するものでないが、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、InAs、InSb、AIP、AIS、AIAs、AISb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、PbS、PbSe、Si、Ge、及びそれらの組合わせが挙げられる。本発明に係るナノ粒子は、望ましくは、平均直径が約20nm未満のコアを有しており、コアは、より好ましくは約15nm未満であり、最も好ましくは約2〜5nmである。
【0021】
単一の半導体材料(例えば、CdS、CdSe、ZnS、ZnSe、InP、GaN等)を含む量子ドットナノ粒子の量子効率は通常は比較的低いが、これは欠陥及びナノ粒子表面のダングリングボンドに生じる非放射性の電子ホール再結合に起因する。これらの問題に対てし少なくとも部分的に対処するために、ナノ粒子コアには、異なる材料(例えば半導体材料など)からなる1又は複数の層(この明細書では、“シェル”とも称される)で少なくとも部分的にコーティングされる。各々のシェルに含まれる物質は、周期律表の2〜16族のうち何れか1又は複数の族の中のイオンを含むことができる。ナノ粒子が2以上のシェルを含む場合は、各シェルは異なる材料で形成されるのが好ましい。例示的なコア/シェル材料において、コアは上記の特定材料のうち一種で形成され、シェルはコア材料よりも大きなバンドギャップエネルギーと、コア材料と同様な格子次元とを有する半導体材料から構成される。シェル材料の例として、限定するものでないが、ZnS、MgS、MgSe、MgTe及びGaNを挙げることができる。コア内部にて表面状態から離れて電荷担体を閉じ込めることにより、量子ドットの安定性は向上し、量子収量は増大する。
【0022】
本発明の方法を用いて水性適合性にされる量子ドットナノ粒子の平均直径は様々であり、放射波長に変えられる。エネルギーレベル、ひいては量子ドット蛍光放射の周波数は、量子ドットが作られる材料と、量子ドットのサイズとによって制御されることができる。一般的に、同じ材料で作られた量子ドットは、サイズが大きくなるほど赤色発光が強くなる。好ましくは、量子ドットの直径は約1〜15nmであり、より好ましくは約1〜10nmである。量子ドットは、好ましくは、約400〜900nmの波長を有する光を放射し、波長は、より好ましくは約400〜700nmである。
【0023】
典型的には、コア、コア/シェル又はコア/マルチシェルのナノ粒子を生成するのにコア及び/又はシェル処理が用いられ、その結果として、ナノ粒子は、ミリスチン酸、ヘキサデシルアミン及び/又はトリオクチルホスフィンオキシド等の表面結合リガンドで、少なくとも部分的にコーティングされる。このようなリガンドは通常、コア及び/又はシェル処理が行われた溶媒から得られる。この種のリガンドは、上述したように、非極性媒体中のナノ粒子の安定性を向上させ、電子安定性をもたらし、及び/又は望ましくないナノ粒子の凝集をなくすことができるが、これらのリガンドは通常、より極性の媒体(例えば、水性溶媒など)中でナノ粒子の安定な分散又は溶解を妨げる。
【0024】
好ましい実施例において、本発明が提供する量子ドットは、水性適合性であり、安定で、小さく、量子収量が大きい。コア及び/又はシェル処理の結果、親油性表面結合リガンド(例として、ヘキサデシルアミン、トリオクチルホスフィンオキシド、リスチン酸等が挙げられる)が量子ドットの表面に配位されると、これらリガンドは、改質前、又は“活性化された”可溶化基を含むリガンドと、全部又は部分的に交換されるか、或いは、改質前のリガンドが、存在する親油性表面結合リガンドと相互キレート化する。
【0025】
本発明の第1の態様について上述したように、可溶化リガンドが改質または活性化される前、可溶化基前駆体と共にナノ粒子結合基を含んでいる。好ましくは、可溶化基前駆体はイオン性基、即ち、適当な作用剤(agent)(例えば、イオン化剤)による処理でイオン化されることができる化学基を含む。イオン性前駆体基をイオン化基へ転換することにより、当該基がナノ粒子を少なくとも部分的に溶解させる能力が向上し、該ナノ粒子に対してリガンドが極性媒体(水性溶媒等)中で結合されることは理解されるであろう。
【0026】
可溶化基前駆体は、該前駆体基と較べて溶解力が向上した可溶化基に転換できるのであれば、所望するあらゆる種類の化学基であってよい。このように、可溶化基含有リガンドにナノ粒子を接触させる前に、前駆体基を可溶化基に転換することで、リガンドを処理しなくても、リガンドはナノ粒子の表面に結合されてナノ粒子を水性適合性にすることができる。従来は、結合後に表面処理工程を行なっていたため、粒子を水性適合性にする際に、ナノ粒子の望ましい物理的、化学的及び/又は光学的特性に悪影響を及ぼしていたが、本発明に係るナノ粒子水性適合化方法では、これら悪影響を回避できるか又は低減させることができる。
【0027】
上記の要件を考慮すると、あらゆる適当な可溶化基前駆体が、本発明に係るナノ粒子結合リガンドに含められることができる。望ましい実施例において、前駆体は、例えば有機基であるか、及び/又は、硫黄、窒素、酸素及び/又はリン等の一種又は複数種のヘテロ原子(即ち、非炭素原子)を含むことができる。例示的な前駆体基には、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、ニトロ、ポリエチレングリコール、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸及びリン酸エステルが含まれる。
【0028】
好ましい実施例において、可溶化リガンドは式1により表される。
【化1】
【0029】
式1中、Xは、更なる改質が行われたナノ粒子又は更なる改質が行われていないナノ粒子に結合されることができる官能基(例えば、-SR1 (R1 = H, アルキル,アリール), -OR2 (R2 - H, アルキル,アリール), -NR3R4 (R3及び/又は R4 = H, アルキル,アリール), -CO2R5 (R5 = H, アルキル,アリール), -P(=O)OR6OR7 (R6及び/又は R7 = H, アルキル,アリール)等)である。
【0030】
式1中、Yは、単結合又はアルキル、アリール、複素環、ポリエチレングリコール、又は官能化されたアルキル、アリール、複素環、ポリエチレングリコール(官能基の例として、ハロゲン、エーテル、アミン、アミド、エステル、ニトリル、イソニトリル、アルデヒド、炭酸塩、ケトン、アルコール、カルボン酸、アジド、イミン、エナミン、無水物、酸塩化物、アルキン、チオール、硫化物、スルホン、スルホキシド、ホスフィン、ホスフィン・オキシド等)、又はあらゆるリンカー(例えば、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子;置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環式基;置換又は非置換の芳香族基;1又は複数のエチレンオキシド反復単位等)、又は架橋性/重合性基(例えば、カルボン酸、アミン、ビニル、アルコキシシラン、エポキシド等)である。
【0031】
式1中、Zは、可溶化基前駆体であり、該前駆体は、
-OR8(但し、R8は水素であるか、置換又は非置換アルキル基であるか、飽和又は不飽和アルキル基であるか、置換又は非置換及び飽和又は不飽和のアルキル基である)と、
-C(O)OR9(但し、R9は水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換の芳香族基である)と、
-NR10R11(但し、R10及びR11は、独立して、水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基であるか、-NR10R11が所望サイズ(五員、六員又は七員環等)の窒素含有複素環を形成するようにリンクされている)と、
-N+R12R13R14(但し、R12、R13及びR14は、独立して、水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基である)と、
-NO2と、
-(-OCH2CH2)n-OR15(但し、R15は水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基である)と、
-S(O)2OR16(但し、R16は水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基である)と、
-P(OR17)(OR18)O(但し、R17及びR18は、独立して、水素であるか、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基であるか、置換又は非置換芳香族基である)と、
からなる群から選択されることができる。
【0032】
上述したように、ナノ粒子結合リガンドにおける可溶化基前駆体を可溶化基に転換する目的は、最終的に結合するナノ粒子を可溶性にするリガンドの能力を向上させることである。従って、可溶化基前駆体から生成される可溶化基は、ナノ粒子を溶解する能力が前駆体よりも高い能力を有するべきである。上記要件を考慮してあらゆる適当な可溶化基を用いられることができるが、好ましい実施例における可溶化基は、荷電又は極性群(例えば、水酸化物塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩又はリン酸塩など)である。
【0033】
改質前または活性化されたナノ粒子結合リガンドにナノ粒子を接触させることで水性適合性を向上させることができるが、前記ナノ粒子結合リガンドは、式2に示す構造で表すことができる。
【化2】
【0034】
式2中、XとYは、式1において規定した通りであり、Z’は可溶化基、即ち、リガンドであるX-Y-Z’が結合されるナノ粒子に、水可溶性を付与することができる基である。好ましくは、Z’は荷電又は極性群(例えば、限定するものでないが、水酸化物塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩又はリン酸塩など)である。
【0035】
このように、本発明の第1の態様を構成する方法のステップaは、可溶化基前駆体Zを、以下のような適当な改質剤を用いて可溶化基Z’に転換することを含んでいる。
【化3】
【0036】
可溶化基前駆体から可溶化基への適当な転換が行われるのであれば、あらゆる所望の改質剤を用いられることができる。好ましい実施例において、可溶化基前駆体の転換は、該前駆体をイオン化剤で処理することにより行われるが、これは即ち、改質剤が、可溶化基前駆体をイオン化させる作用剤で、イオン性可溶化基が生成される。
【0037】
改質剤は、例えば、ルイス酸化合物(例えば、電子対受容体)又はルイス塩基化合物(例えば、電子対供与体)である。好ましくは、可溶化基前駆体の転換は、アンモニウム塩やアルコキシド塩などの有機塩基で前駆体を処理することにより行われる。アンモニウム塩は、例えば、アルキルアンモニウム塩(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、又は水酸化テトラブチルアンモニウムなど)である。例示的なアルコキシド塩は、金属アルコキシド塩(例えば、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、又はカリウムtert-ブトキシドなど)である。
【0038】
例示的な実施例において、可溶化基前駆体は、例えばスルホン酸基であり、該スルホン酸基はアルキルアンモニウム塩等の有機塩基で処理されることで、スルホン酸塩可溶化基が生成される。
【0039】
処理対象のナノ粒子にナノ粒子結合リガンドが曝露される前に、可溶化基前駆体から可溶化基への転換が少なくとも部分的に行われることで、ナノ粒子の水性適合性が向上する。可溶化基前駆体の転換及びナノ粒子の処理は、同じ反応媒体又は反応溶媒の中で行なわれるが、好ましくは、可溶化基前駆体の転換は第1反応媒体又は溶媒の中で行われ、前記可溶化基を含むナノ粒子結合リガンドによる前記ナノ粒子の処理は、別個の第2反応媒体又は溶媒の中で行なわれる。
【0040】
本発明の好ましい実施例において、前記の式2(X-Y-Z’)で規定した改質前又は活性化されたナノ粒子結合リガンドは、式3に示される好ましい構造を有することができる。
【化4】
【0041】
式3中、Yは、式1及び式2について規定した通りであり、WとTは、それぞれ、硫黄原子とカルボキシル酸素原子を配位するのに適した化学基又は原子である。
【0042】
元の可溶化基前駆体(Z)を可溶化基(式2中のZ’、式3中の-CO2T)に転換するのに用いられる転換反応の性質に応じて、Wは、例えば前駆体が1当量の塩基で処理された場合は水素原子であり(式3=HS-Y-CO2T)、または、前駆体が2当量以上の塩基で処理された場合は、変換反応に用いられる塩基から得られることもできる。例示として、Wは、例えばアンモニウムカチオン(例えば、+N(R19)4であって、各々のR19は、水素原子、置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基;置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂環式基;及び、置換又は非置換芳香族基から成る群より別個に選択される)である。好ましい実施例において、各々のR11は、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、炭素環式基(例えば、アリール基)、又は複素環式基(例えば、ヘテロアリール基)である。更なる好ましい実施例では、Wは例えば、限定するものでないが、ナトリウム、カリウム又はリチウムなどの金属イオンである。
【0043】
式3において、Tは、可溶化基前駆体(Z)を可溶化基(Z’)へ変換するのに用いられる塩基から得られることができる。一例として、Tは、例えば、アンモニウムカチオン(例えば、+N(R20)4であり、各々のR20は、水素原子、置換又は非置換、飽和又は不飽の脂肪族基;置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂環式基;及び、置換又は非置換芳香族基から成る群より別個に選択される。各々のR20は、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、炭素環式基(例えば、アリール基)、又は複素環式基(例えば、ヘテロアリール基)である。更なる好ましい実施例において、Tは例えば、限定するものでないが、ナトリウム、カリウム又はリチウムなどの金属イオンである。
【0044】
上記のことから、ある状況下では、WとTは同種の化学基であってよく、同種の化学基は例えば、可溶化基前駆体(Z)を可溶化基(Z’)へ変換するのに用いられる塩基から得られることは理解されるだろう。水酸化テトラブチルアンモニウムなどの2当量以上の塩基が変換反応(ZからZ’)に用いられる場合、WとTはいずれもテトラブチルアンモニウムカチオンであってよい。
【0045】
硫黄には金属の空軌道に電子を付与する性質があるため、式3の好ましいリガンド化合物(WS-Y-CO2T)は、硫黄原子により、ナノ粒子の表面での金属原子/イオン(例として、Zn、Cd、Zn2+、Cd2+が挙げられる)への配位が促進され、一方、末端のカルボキシレート基は、極性分子(例えば、水分子)を取り囲むことによって溶媒化されて、ナノ粒子は水性適合性になる。
【0046】
以下に例示する特に好ましい実施例において、改質前のリガンドは、メルカプトカルボン酸、システイン(更なる例として、限定するものでないが、メルカプトプロパノン酸、メルカプトヘキサン酸及びメルカプトオクタン酸が含まれる)の塩であり、酸は、2当量以上の塩基、水酸化テトラブチルアンモニウムで処理されて、カルボン酸基とチオール基の両方が脱プロトン化される。1当量の塩基を用いることもできるが、この場合、pKaが最も低い官能基が優先的に脱プロトン化を行うことは理解されるであろう。システインの場合、カルボン酸基のpKaは約2であり、チオール基のpKaは約8であるため、カルボン酸基の方が、チオール基よりも前に脱プロトン化する。
【0047】
メルカプトカルボン酸塩の予め生成されたカルボキシレート基は、水分子によって溶媒化され、コーティングされた量子ドットに水性適合性を付与する。カルボン酸塩を予め生成することにより、リガンド交換後の塩基を付加してカルボン酸の官能性を脱プロトン化する必要性がなくなるが、リガンド交換後の付加は、前述したように、最終の量子ドットの量子収量に悪影響を及ぼすことがある。
【0048】
カルボキシレート基はまた、適当な化学官能性を提供して、カップリング/架橋結合反応(例えば、カルボン酸とアミンとのカルボジイミド媒介カップリング)に加わることができるし、或いは、他の種(蛋白質、ペプチド、抗体、炭水化物、糖脂質、糖蛋白質及び/又は核酸を含む)に結合されることもできる。
【0049】
更に、メルカプトカルボン酸のあらゆるペンダント官能基(例えば、システインのアミン基)は、カップリング/架橋結合反応(例えば、カルボン酸とアミンとのカルボジイミド媒介カップリングや、アミンのビス[スルホサクシニミジル]スベレートとの架橋結合)に加わることができるし、或いは、カルボキシレート基に関する他の種(例えば、蛋白質、ペプチドなど)に結合することもできる。
【0050】
2当量以上の塩基が用いられた好ましい実施例において、メルカプトカルボン酸塩のチオレート基を予め生成することで、量子ドットの表面に対するリガンド化合物の配位が促進される。チオレート基の硫黄原子は、量子ドットの表面で金属原子/イオン(例えば、Zn、Cd、Zn2+、Cd2+)にキレート化する。一方で、塩基から得られたカチオン(例えば、+NMe4や+NBu4)は最初にチオレート基に結合されており、量子ドットの表面で対原子/イオン(例えば、S、Se、S2-、Se2-)と錯体を作る。このような錯体形成は、量子ドットの表面を不動態化させる利点をもたらす。
【0051】
好ましい実施例において、可溶化基前駆体を含むリガンドは、例えば、メルカプトカルボン酸である。メルカプトカルボン酸は、1又は複数のエチレンオキシド反復単位を含むことができ、及び/又は、所望により、アミン或いはアミド官能基を含むことができる。特に好ましい可溶化基前駆体は、以下の式を有する。
【化5】
【0052】
前記式中、nは約2000以下、より好ましくは約1000以下、さらに好ましくは約100以下の整数である。なお、nは、約1〜約2000、より好ましくは約10〜約500、さらに好ましくは約20〜約100の範囲が特に好ましい。好ましい実施例において、以下で説明する実験2及び3で用いられたnは、約80である。
【0053】
別の実施例において、式1及び2中のナノ粒子結合基Xは、例えば多座配位基(multidentate group)であり、結合相互作用(例えば、ナノ粒子の原子/イオンとの配位結合など)を行なうことができる2以上の原子を含有する化学基である。更にまた、式2中の可溶化基Z’は、例えば、周囲の溶媒と相互作用することができる2以上の原子を含有する多座配位基である。
【0054】
多座配位基は、例えば、1又は複数の原子(例えば、硫黄、酸素、窒素又はリン原子等)、及び/又は、1又は複数の基(例えば、-SR21 (R21 = H、アルキル、アリール)、-OR22 (R22 - H、アルキル、アリール)、-NR23R24 (R23 and/or R24 = H、アルキル、アリール)、-CO2R25 (R25 = H、アルキル、アリール)、-P(=O)OR26OR27 (R26 and/or R27 = H、アルキル、アリール))である。特に好ましい多座配位基として、チオール基(-SH)、ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-CO2H)及びホスホニル基(-P(=O)(OH)2)が挙げられる。
【0055】
例示的な多座配位基には、限定するものでないが、図1に示すものが含まれる。図1中、Aは上述したSR21、-OR22、-NR23R24、-CO2R25、-P(=O)OR26OR27等の官能基、BはNH、O、CH2等の第1の適当な連結基、そしてDはN、CH、C等の第2の適当な連結基である。
【0056】
適当な多座配位基の更なる例において、ナノ粒子に結合できる基/原子として、例えば、エーテル、アミン、アミド、エステル、ニトリル、イソニトリル、アルデヒド、炭酸塩、ケトン、アルコール、カルボン酸、アジド、イミン、エナミン、無水物、酸塩化物、アルキン、チオール、硫化物、エポキシド、スルホン、スルホキシド、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ビニル及び/又はアルコキシシラン等の官能基、1又は複数の非炭素原子を含む複素環式基、及び/又は、ハロゲン原子のうちの任意の1又は複数の基/原子を挙げることができる。
【0057】
本発明の方法は水性適合性のナノ粒子、具体的には、限定するものではないが、半導体量子ドットの生成に用いられることができ、ナノ粒子の表面に結合する前に、あらゆる表面結合親油性リガンド分子を、“活性化”された改質前のリガンド化合物と部分的に又はほぼ全部置換することにより、半導体量子ドットの水性適合性が付与される。更なる例又は他の例として、改質前のリガンドは、ナノ粒子の表面に結合されて存在するリガンドを相互キレート化することができる。本発明に基づくリガンド化合物で処理されたナノ粒子の表面リガンドは、ナノ粒子結合基(例えば、式1及び式2中のX、又は式3中のWS)、存在する場合は連結基(例えば、式1、式及び式3中のY)、及び/又は可溶化基(例えば、式2中のZ’、又は式3中のCO2T)の性質によって異なるだけでなく、ナノ粒子の表面にリガンドの結合がない領域、及び/又は、元のナノ粒子の合成処置でリガンド(例えば、親油性リガンド)が結合されたままの領域があることは理解されるであろう。
【0058】
上記のように、本発明の方法では、可溶化基前駆体をナノ粒子の表面に結合させる前に可溶化基に変換する。結合後の表面処理では、リガンド改質剤の添加量が過剰又は過少になるが、本発明の方法では、結合後の表面処理を行なう必要性をなくすか又は少なくすることができる。このように、本発明では、ガンド改質剤の添加量を正確に制御することができる。その結果、十分な量のリガンド改質剤を添加することにより、所望量の溶解剤を確実に生成することができるので、ナノ粒子の材料はリガンド改質剤に曝露される不都合から保護されることができる。更に、得られたナノ粒子は、予め生成された可溶化基が結合されており、従来の液相分析技術を用いることによって精製及び分析されることができる。
【0059】
本発明のリガンド分子で得られる量子ドットの量子収量は、好ましくは、リガンド交換前の量子ドットサンプルの量子収量と少なくとも同等であるか、より好ましくは、それよりも大きい。また、これらの水性適合性量子ドットは、紫外線(365nm)が好気的に照射されるとき、親量子ドットサンプルと較べて高い安定性を有している。
【0060】
本発明の範囲は、上述した好適な実施例に限定されるものではなく、上記の本発明の各態様の根底にある基本概念から逸脱することなく、変更できることは理解されるであろう。
【0061】
本発明について、以下の図及び実施例を例示してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、例示的な多座配位基の非限定的リストである。
【0063】
【図2】図2は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPO半導体ナノ粒子の吸収スペクトルである(実施例1を参照)。
【0064】
【図3】図3は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPO半導体ナノ粒子の発光スペクトルである(実施例1を参照)。
【0065】
【図4】図4は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4水性適合性半導体ナノ粒子の発光スペクトルである(実施例1を参照)。
【0066】
【図5】図5は、本発明に基づく方法に用いられることができる例示的なリガンドBu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4の1H-NMRスペクトルである(実施例1を参照)。
【0067】
【図6】図6は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPO半導体ナノ粒子の1H-NMRスペクトルである(実施例1を参照)。
【0068】
【図7】図7は、本発明に基づく方法を用いて改質されることにより、水性適合性にされたCdSe/CdZnS/ZnS/Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4水性適合性半導体ナノ粒子の1H-NMRスペクトルである(実施例1を参照)。
【0069】
【図8】図8は、本発明の好適な実施例に基づき調製されたHS-C2H4-CONH-(PEG)n-C3H6-CO2-+NBu4表面結合リガンドを含み、水性適合性のInP/ZnS/ZnO半導体ナノ粒子の発光スペクトルである(実施例2を参照)。
【0070】
【図9】図9は、本発明の好適な実施例に基づき調製されたBu4N+-S-C2H4-CONH-(PEG)n-C3H6-CO2-+NBu4表面結合リガンドを含み、水性適合性のInP/ZnS/ZnO半導体ナノ粒子の発光スペクトルである(実施例3を参照)。
【0071】
【図10A】図10Aは、周辺光で照射された水の中でHS-C2H4-CONH-(PEG)n-C3H6-CO2-+NBu4改質量子ドットの写真である。
【図10B】図10Bは、365nmの光で照射された水の中でHS-C2H4-CONH-(PEG)n-C3H6-CO2-+NBu4改質量子ドットの写真である(図10Bを参照)。
【実施例1】
【0072】
{1.1 CdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPOナノ粒子の調製}
<CdSeコアの合成>
【表1】
【0073】
一実施例において、ヘキサデシルアミン(50g、0.21モル)を、コンデンサ及び温度計を備えた250mlの三つ口丸底フラスコに入れて、量子ドットのナノ粒子を合成した。ヘキサデシルアミンは、真空下で脱気した(110℃、1時間)。
【0074】
次に、ヘキサデシルアミンを冷却し(90℃)、CdSeクラスター([Et3NH]4Cd10Se4(SPh)16、0.25g、モル)とトリオクチルホスフィン/Se(0.5M、3ml)を添加した。固体が溶解すると、温度を上げて(160℃)、溶液をN2(g)の下で撹拌した(30分)。PLmax=495nm。
【0075】
温度を上げて(170℃)、Cd前駆体(1ml)とトリオクチルホスフィン/Se(0.2M、1ml)とを混合し、これを反応混合物にゆっくりと滴下して撹拌した(30分)。PLmax=513nm。次に、溶液を冷却して(120℃)、一晩かけてアニーリングした。
【0076】
温度を上げて(180℃)、Cd前駆体溶液(2ml)とトリオクチルホスフィン/Se(0.2M、2ml)の混合物を、反応混合物にゆっくりと滴下して撹拌した(30分)。PLmax=528nm。
【0077】
温度を上げて(190℃)、Cd前駆体(2ml)とトリオクチルホスフィン/Se(0.2M、2ml)を混合し、反応混合物にゆっくりと滴下して撹拌した(30分)。PLmax=540nm。
【0078】
温度を上げて(200℃)、Cd前駆体(2ml)とトリオクチルホスフィン/Se(0.2M、2ml)を混合して、反応混合物にゆっくりと滴下して撹拌した(1時間30分)。PLmax=560nm。
【0079】
反応混合物を冷却して(120℃)、一晩かけてアニーリングした。反応混合物をさらに冷却し(50℃)、無水メタノール(80ml)を添加して、遠心分離で単離され無水クロロホルム(10ml)中に溶解されたナノ粒子を沈殿させた。
【0080】
<CdSeコアのCdZnSによるシェリング>
【表2】
【0081】
20gのHDAと15gのTOPOを、コンデンサ及び温度計を備えた250mlの三つ口丸底フラスコに入れた。HDA/TOPOは、110℃の真空下で1時間脱気した。
【0082】
次に、HDA/TOPOを90℃まで冷却し、CdSeコア(10mlのクロロホルム中)を添加した。クロロホルムは、真空下で除去された。
【0083】
温度を210℃まで上昇させ、2mlのCdZn(0.1M)前駆体溶液とS/ODEをゆっくりと滴下し、溶液を10分間撹拌した。
【0084】
これを2回以上繰り返し(合計で、CdZn前駆体とS/ODEを夫々6ml添加した)、次に、溶液を210℃で30分間アニーリングした。
【0085】
その後、溶液を50℃まで冷却し、無水メタノール(70ml)を添加し、遠心分離を用いて固体を単離した。次に、固体を無水メタノール(40ml)で洗浄した。
【0086】
無水クロロホルム(10ml)の中で、固体を再び溶解した。PLmax=596nm。
【0087】
<CdSe/CdZnSのZnSによるシェリング>
【表3】
【0088】
20gのHDAと40gのTOPOを、コンデンサ及び温度計を備えた250mlの三つ口丸底フラスコに入れた。HDA/TOPOは、110℃の真空下で1時間脱気した。
【0089】
次に、HDA/TOPOを90℃まで冷却し、CdSe/CdZnSコア(10mlのクロロホルム中)を添加した。クロロホルムは、真空下で除去された。
【0090】
次に、溶液を190℃まで加熱し、ZnEt2/TOP(0.25M)と(TMS)2-S/TOP(0.25M)を、ZnEt2から始めて各々0.5mlずつ、8mlになるまで交互に添加した。なお、添加と次の添加の間隔は少なくとも10分とした。
【0091】
次に、溶液を120℃まで冷却し、1時間アニーリングした。次に溶液を50℃まで冷却し、無水メタノール(20ml)と無水イソプロパノール(60ml)を添加して、遠心分離を用いて固体を単離した。次に、固体を無水イソプロパノール(40ml)で洗浄し、無水トルエン(15ml)の中で溶解させた。
【0092】
<コアリング及びシェリング溶液の調製>
<<カドミウム前駆体溶液(0.2M)>>
1.284gのCdO、19.1mlのオレイン酸及び30.9mlのODEを三つ口丸底フラスコに入れ、N2雰囲気下で250℃まで加熱した。溶液が無色になるまで温度を維持し(約20分)、次に冷却して使用可能状態とした(溶液は室温で凝固するため、非常に緩やかな加熱によって保温し撹拌を続けた)。
【0093】
CdZn前駆体溶液“シェル溶液”(0.08M)
0.68gのCd(Ac)2・2H20、0.46gのZn(Ac)2、41mlのODE及び9mlのオレイン酸を丸底フラスコに入れ、真空下で全ての固体が溶解するまで加熱した。
【0094】
溶液は室温で凝固するので、非常に緩やかな加熱によって保温し撹拌を続けた。
【0095】
{1.2 水性適合性のCdSe/CdZnS/ZnS量子ドットの調製}
【化6】
【0096】
QD表面結合リガンド分子は、一定分量の水酸化テトラブチルアンモニウムメタノール溶液(1M、1642.7μl、1.642792mmol)をシステイン(0.1026g、0.821396mmol)に添加することで合成され、均質化されて、対応する塩(Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4、0.0005mmol/μl)が生成された。
【0097】
一定分量のリガンド分子(Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4)(0.001-0.2mmol)を、クロロホルム中のCdSe/CdZnS/ZnS/HDA-TOPO量子ドット(125nmol)(前記のとおり調製されたもの。量子収量=49%、λmaxem=620nm、FWHM=31nm)に添加することで、合計量が1000μlの溶液が得られた。反応混合物を均質化した後、培養した(4時間)。量子ドットは反応混合物から析出され、遠心分離にかけた(10,000RPM、5分)。水(400μl)に分散した浮遊物をペレットから分離して、透明な溶液(量子収量=40%)が得られた。次に、試料を紫外線(365nm)で照射(39時間)してアニーリングした(量子収量=55%)。
【0098】
上記結果から、予め改質された可溶化リガンド(Bu4N+-SCH2CH(NH2)CO2-+NBu4)の結合後、量子ドットの量子収量は、49%から40%へ9%だけ低下したことが分かる。これは、リガンド結合後に行なう従来の表面処理方法を用いて量子ドットを改質した後に通常観察される量子収量の減少約50%〜100%と較べると、量子収量の減少は約18%に等しい。
【実施例2】
【0099】
<水性適合性のInP/ZnS/ZnO量子ドットの調製>
<<表面結合リガンドの調製>>
【化7】
【0100】
QD表面結合リガンド分子は、一定分量の水酸化テトラブチルアンモニウムメタノール溶液(1M、14μl、0.014mmol)を、HS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2H(MWt=3711、0.0522g、0.014mmol)のメタノール溶液(986μl)に添加することで合成され、均質化されることで、対応するHS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4の塩(0.000014mmol/μl)を生成した。
【0101】
<<リガンド結合>>
一定分量のリガンド分子HS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4(269.4μl、0.00377mmol)を、クロロホルム中のInP/ZnS/ZnO量子ドット(有機材料中で、4mg、PL=612nm、量子収量=50%、FWHM=95nm、TGA=78%)に添加して、合計量が4000μlの溶液を得た。反応混合物を均質化し、培養した(4時間)。
【0102】
反応混合物を減圧下で濃縮した後、水(1000μl)の中で分解し、PTFEシリンジフィルター(0.2μl)を通して濾過して、均質で赤色の透明溶液(量子収量=21%、発光スペクトルは図8に示すとおり)が得られた。図10A及び図10Bは、周辺光(図10A)及び365nmの光(図10B)で照射された水の中でHS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4改質された量子ドットの写真である。
【実施例3】
【0103】
<水性適合性のInP/ZnS/ZnO量子ドットの調製>
<<表面結合リガンドの調製>>
【化8】
【0104】
QD表面結合リガンド分子は、一定分量の水酸化テトラブチルアンモニウムメタノール溶液(1M、26.8μl、0.0268mmol)を、HS-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2H(MWt=3711、0.0499g、0.0134mmol)のメタノール溶液(973.2μl)に添加して合成され、均質化され、対応するBu4N+-S-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4の塩(0.0000134mmol/μl)が生成された。
【0105】
<<リガンド結合>>
一定分量のリガンド分子Bu4N+-S-C2H4-CONH-(PEG)~80-C3H6-CO2-+NBu4(281.3μl、0.00377mmol)を、クロロホルム中のInP/ZnS/ZnO量子ドット(有機材料中で、4mg、PL=612nm、量子収量=50%、FWHM=95nm、TGA=78%)に添加して、合計量が4000μlの溶液が得られた。反応混合物を均質化し、培養した(4時間)。
【0106】
反応混合物を減圧下で濃縮し、次に、水(1000μl)中で分解させ、均質で赤色の透明溶液(量子収量=19%、発光スペクトルは図9に示すとおり)が得られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子結合基及び可溶化基前駆体を含むナノ粒子結合リガンドを用いて、水性適合性ナノ粒子を生成する方法であって、
a.可溶化基前駆体を可溶化基に変換することと、
b.前記可溶化基を含む結合リガンドにナノ粒子を接触させて、該結合リガンドをナノ粒子へ結合すること、を含む方法。
【請求項2】
前記可溶化基前駆体の変換は、ナノ粒子結合リガンドを十分な量の前駆体改質剤に接触させて、該結合リガンドに存在するほぼ全ての可溶化基前駆体を可溶化基に変換することによってわれる、請求項1の方法。
【請求項3】
前記可溶化基前駆体の変換は、ナノ粒子結合リガンドを、結合リガンドに存在する可溶化基前駆体の量に基づく略化学量論量の前駆体改質剤に接触させることにより行われる、請求項1の方法。
【請求項4】
前記可溶化基前駆体の変換は、該前駆体をイオン化剤で処理することにより行われる、請求項1、2又は3の方法。
【請求項5】
前記可溶化基前駆体の変換は、該前駆体をルイス酸又はルイス塩基化合物で処理することにより行われる、請求項1、2又は3の方法。
【請求項6】
前記可溶化基前駆体の変換は、該前駆体を有機塩基で処理することにより行われる、請求項1、2又は3の方法。
【請求項7】
前記可溶化基前駆体の変換は、該前駆体をアンモニウム塩又はアルコキシド塩で処理することにより行われる、請求項1、2又は3の方法。
【請求項8】
前記アンモニウム塩は、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群より選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
前記可溶化基前駆体の変換は第1溶媒の中で行われ、ナノ粒子と前記可溶化基を含むナノ粒子結合リガンドとの接触は、別個の第2溶媒の中で行われる、請求項1乃至8の何れかの方法。
【請求項10】
可溶化基前駆体はイオン性基を含む、請求項1乃至9の何れかの方法。
【請求項11】
可溶化基前駆体は、硫黄、窒素、酸素及びリンからなる群より選択される1又は複数の原子を含む、請求項1乃至10の何れかの方法。
【請求項12】
可溶化基前駆体は、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、ニトロ、ポリエチレングリコール、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸及びリン酸エステルからなる群より選択される、請求項1乃至10の何れかの方法。
【請求項13】
可溶化基は荷電又は極性群である、請求項1乃至12の何れかの方法。
【請求項14】
可溶化基前駆体は、水酸化物塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される、請求項1乃至10の何れかの方法。
【請求項15】
ナノ粒子結合リガンドはルイス塩基である、請求項1乃至14の何れかの方法。
【請求項16】
ナノ粒子結合リガンドは、硫黄、窒素、酸素及びリンからなる群より選択される原子を含む、請求項1乃至15の何れかの方法。
【請求項17】
ナノ粒子結合リガンドは、チオ基、アミノ基、オキソ基及びリン基からなる群より選択される種を含む、請求項1乃至15の何れかの方法。
【請求項18】
前記結合基と前記可溶化基はリンカーを通して接続される、請求項1乃至17の何れかの方法。
【請求項19】
前記リンカーは共有結合され、共有結合は、炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子;置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基;及び置換又は非置換の芳香族基からなる群より選択される、請求項18の方法。
【請求項20】
前記リンカーは、1又は複数のエチレンオキシド反復単位を含む、請求項18の方法。
【請求項21】
前記リンカーは、最大約2000のエチレンオキシド反復単位を含む、請求項20の方法。
【請求項22】
前記リンカーは、約20〜約100のエチレンオキシド反復単位を含む、請求20の方法。
【請求項23】
前記の可溶化基前駆体含有リガンドは、メルカプトカルボン酸である、請求項1乃至9の何れかの方法。
【請求項24】
前記メルカプトカルボン酸は、1又は複数のエチレンオキシド反復単位を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
前記メルカプトカルボン酸は、最大約2000のエチレンオキシド反復単位を含む、請求項24の方法。
【請求項26】
前記メルカプトカルボン酸は、約20〜約100のエチレンオキシド反復単位を含む、請求24の方法。
【請求項27】
前記メルカプトカルボン酸は、アミン基及びアミド基からなる群より選択される官能基を含む、請求項23乃至26の何れかの方法。
【請求項28】
前記ナノ粒子は半導体ナノ粒子である、請求項1乃至27の何れかの方法。
【請求項29】
前記ナノ粒子はコア、コア/シェル又はコア/マルチシェルのナノ粒子である、請求項1乃至28の何れかの方法。
【請求項30】
前記ナノ粒子は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、InAs、InSb、AIP、AIS、AIAs、AISb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、PbS、PbSe、Si、Ge、MgS、MgSe、MgTe及びそれらの組合せからなる群より選択される1又は複数の半導体材料を含む、請求項1乃至29の何れかの方法。
【請求項31】
請求項1乃至30の何れかの方法を用いて生成された水性適合性ナノ粒子であって、ナノ粒子結合リガンドに結合されたナノ粒子を含み、前記リガンドはナノ粒子結合基と可溶化基とを含む、水性適合性ナノ粒子。
【請求項32】
1又は複数のエチレンオキシド反復単位を含むメルカプトカルボン酸に結合されたナノ粒子を含む、水性適合性ナノ粒子。
【請求項1】
ナノ粒子結合基及び可溶化基前駆体を含むナノ粒子結合リガンドを用いて、水性適合性ナノ粒子を生成する方法であって、
a.可溶化基前駆体を可溶化基に変換することと、
b.前記可溶化基を含む結合リガンドにナノ粒子を接触させて、該結合リガンドをナノ粒子へ結合すること、を含む方法。
【請求項2】
前記可溶化基前駆体の変換は、ナノ粒子結合リガンドを十分な量の前駆体改質剤に接触させて、該結合リガンドに存在するほぼ全ての可溶化基前駆体を可溶化基に変換することによってわれる、請求項1の方法。
【請求項3】
前記可溶化基前駆体の変換は、ナノ粒子結合リガンドを、結合リガンドに存在する可溶化基前駆体の量に基づく略化学量論量の前駆体改質剤に接触させることにより行われる、請求項1の方法。
【請求項4】
前記可溶化基前駆体の変換は、該前駆体をイオン化剤で処理することにより行われる、請求項1、2又は3の方法。
【請求項5】
前記可溶化基前駆体の変換は、該前駆体をルイス酸又はルイス塩基化合物で処理することにより行われる、請求項1、2又は3の方法。
【請求項6】
前記可溶化基前駆体の変換は、該前駆体を有機塩基で処理することにより行われる、請求項1、2又は3の方法。
【請求項7】
前記可溶化基前駆体の変換は、該前駆体をアンモニウム塩又はアルコキシド塩で処理することにより行われる、請求項1、2又は3の方法。
【請求項8】
前記アンモニウム塩は、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群より選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
前記可溶化基前駆体の変換は第1溶媒の中で行われ、ナノ粒子と前記可溶化基を含むナノ粒子結合リガンドとの接触は、別個の第2溶媒の中で行われる、請求項1乃至8の何れかの方法。
【請求項10】
可溶化基前駆体はイオン性基を含む、請求項1乃至9の何れかの方法。
【請求項11】
可溶化基前駆体は、硫黄、窒素、酸素及びリンからなる群より選択される1又は複数の原子を含む、請求項1乃至10の何れかの方法。
【請求項12】
可溶化基前駆体は、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、ニトロ、ポリエチレングリコール、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸及びリン酸エステルからなる群より選択される、請求項1乃至10の何れかの方法。
【請求項13】
可溶化基は荷電又は極性群である、請求項1乃至12の何れかの方法。
【請求項14】
可溶化基前駆体は、水酸化物塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される、請求項1乃至10の何れかの方法。
【請求項15】
ナノ粒子結合リガンドはルイス塩基である、請求項1乃至14の何れかの方法。
【請求項16】
ナノ粒子結合リガンドは、硫黄、窒素、酸素及びリンからなる群より選択される原子を含む、請求項1乃至15の何れかの方法。
【請求項17】
ナノ粒子結合リガンドは、チオ基、アミノ基、オキソ基及びリン基からなる群より選択される種を含む、請求項1乃至15の何れかの方法。
【請求項18】
前記結合基と前記可溶化基はリンカーを通して接続される、請求項1乃至17の何れかの方法。
【請求項19】
前記リンカーは共有結合され、共有結合は、炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子;置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族基又は脂環式基;及び置換又は非置換の芳香族基からなる群より選択される、請求項18の方法。
【請求項20】
前記リンカーは、1又は複数のエチレンオキシド反復単位を含む、請求項18の方法。
【請求項21】
前記リンカーは、最大約2000のエチレンオキシド反復単位を含む、請求項20の方法。
【請求項22】
前記リンカーは、約20〜約100のエチレンオキシド反復単位を含む、請求20の方法。
【請求項23】
前記の可溶化基前駆体含有リガンドは、メルカプトカルボン酸である、請求項1乃至9の何れかの方法。
【請求項24】
前記メルカプトカルボン酸は、1又は複数のエチレンオキシド反復単位を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
前記メルカプトカルボン酸は、最大約2000のエチレンオキシド反復単位を含む、請求項24の方法。
【請求項26】
前記メルカプトカルボン酸は、約20〜約100のエチレンオキシド反復単位を含む、請求24の方法。
【請求項27】
前記メルカプトカルボン酸は、アミン基及びアミド基からなる群より選択される官能基を含む、請求項23乃至26の何れかの方法。
【請求項28】
前記ナノ粒子は半導体ナノ粒子である、請求項1乃至27の何れかの方法。
【請求項29】
前記ナノ粒子はコア、コア/シェル又はコア/マルチシェルのナノ粒子である、請求項1乃至28の何れかの方法。
【請求項30】
前記ナノ粒子は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、InAs、InSb、AIP、AIS、AIAs、AISb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、PbS、PbSe、Si、Ge、MgS、MgSe、MgTe及びそれらの組合せからなる群より選択される1又は複数の半導体材料を含む、請求項1乃至29の何れかの方法。
【請求項31】
請求項1乃至30の何れかの方法を用いて生成された水性適合性ナノ粒子であって、ナノ粒子結合リガンドに結合されたナノ粒子を含み、前記リガンドはナノ粒子結合基と可溶化基とを含む、水性適合性ナノ粒子。
【請求項32】
1又は複数のエチレンオキシド反復単位を含むメルカプトカルボン酸に結合されたナノ粒子を含む、水性適合性ナノ粒子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【公表番号】特表2011−528624(P2011−528624A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517995(P2011−517995)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001777
【国際公開番号】WO2010/010329
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(509295262)ナノコ テクノロジーズ リミテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001777
【国際公開番号】WO2010/010329
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(509295262)ナノコ テクノロジーズ リミテッド (12)
【Fターム(参考)】
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