説明

水栓装置

【課題】
本発明は、使用者が水栓装置を使用する際に、スパウトが洗浄等の作業に対して邪魔にならず、また洗浄する場所やスパウトの形状を変更させること無く、洗浄作業等を行うことが可能な水栓装置を提供すること。
【解決手段】
本発明の水栓装置は、スパウト10と、吐水口1とを備えた水栓装置であって、前記スパウト10は、機器と接続する接続部と、前記吐水口を有する吐水部と、前記接続部と前記吐水部との間に設けられた連結部とを有し、前記吐水部は、前記スパウト10を側面視したとき、水平面に対し平行な方向の長さが、水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなるように傾斜して前記連結部に連接され、前記スパウト10は分割面を介して複数個に分割可能であり、前記分割面に凹凸形状で構成された勘合部を設けた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水口を備えた吐水部が水平面方向に対して垂直方向に突出するように傾斜したスパウト本体を有する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水口を有する水栓装置において、使用者の使い勝手を向上させるために、スパウトの形状を変更して、使用者の使用感を高める水栓装置があった。
【0003】
また、使用者がいる方向に吐水口からの吐水を向けるために、スパウトを使用者側に突出させ、且つ上下方向に傾ける水栓装置があった(例えば、参考文献1参照)。
【0004】
また、水栓に可動部を複数個設け、可動部の可動範囲内で水栓の高さや水平面に対する突出量を調整可能な水栓装置があった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−266396
【特許文献2】特開2000−144832
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、使用者側に対して水栓装置を突出させた場合には、使用者が水栓装置を使用する際に、吐水口が近傍にはあるが、水栓装置が突出しているため、洗浄する場所がスパウトによって視界を遮られてしまったり、吐水の軌跡上方にスパウトがあるために洗い作業等を行う際に邪魔になることがあった。また、特許文献1のように、スパウトが水平方向の突出量が垂直方向に対しての突出量よりも大きく、吐水口が下方を向いている場合は、水栓装置を分離後に収納する際、吐水口が水平方向を向くことが少ないため、使用者や周囲に吐水を飛散させる可能性が無かった。
【0006】
また、特許文献2のように、可動部を設けて水栓装置の高さや水平方向に対する突出量が変化すると、水栓装置の形状によって吐水の軌跡が変化してしまい、使用者がスパウトの形状毎に洗う場所を変化させたり、また洗う場所を設定するためにスパウトの形状を変更させる必要があり、非常に調整が不便であった。また、特許文献2のように水平方向に対してのベクトルを多く持つ水栓にて、吐水時にシャワーヘッドを収納する場合、シャワーヘッドがうまく勘合しない場合に吐水口が水平方向を向いてしまい、そのため使用者や周囲に吐水が飛散する恐れがあった。
【0007】
そこで、本発明においては、吐水が水平方向に対するベクトルを有する場合において、スパウトの一部が分離する場合に、使用者や周囲に吐水を飛散させることなく使用可能な水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的達成のために、スパウトと、吐水口とを備えた水栓装置であって、前記スパウトは、機器と接続する接続部と、前記吐水口を有する吐水部と、前記接続部と前記吐水部との間に設けられた連結部とを有し、前記吐水部は、前記スパウトを側面視したとき、水平面に対し平行な方向の長さが、水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなるように傾斜して前記連結部に連接され、前記スパウトは分割面を介して複数個に分割可能であり、前記分割面に凹凸形状で構成された勘合部を設けたことを特徴とする水栓装置を提供出来る。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、前記スパウトは、前記吐水部と前記接続部の間で分割され、前記勘合部は、前記スパウトを側面視したときに、水平面と前記吐水部とで形成される角度が鋭角となる主面側、または前記主面と対向する面側に設けられたこと特徴とする水栓装置を提供出来る。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前記勘合部は、前記分割面に対して略直交方向に凹凸形状を構成したことを特徴とする水栓装置を提供することが出来る。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、前記スパウトは、前記分割面においてスパウトの上方が回動可能であることを特徴とする水栓装置を提供することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水平方向に対する突出量が垂直方向に対する突出量よりも小さい水栓装置で、スパウトが分割面に対して分離可能な構成において、分割面に凹凸形状の勘合部を設けることにより、分割後に収納を行う際、吐水口が水平方向を向くことを防止し、使用者や周囲に吐水を飛散させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1に本発明の水栓装置の概略構成図を記載する。本発明の水栓装置は、スパウト10と、吐水口1とを備えた水栓装置であって、前記スパウト10は、機器と接続する接続部2と、前記吐水口1を有する吐水部3と、前記接続部2と前記吐水部3との間に設けられた連結部4とを有し、前記吐水部3は、前記スパウト10を側面視したとき、水平面に対し平行な方向の長さが、水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなるように傾斜して前記連結部4に連接され、前記スパウト10は分割面を介して複数個に分割可能であり、前記分割面に凹凸形状で構成された勘合部を設けた構成となっている。
【0014】
図2に本発明の水栓装置の正面図、図3に本発明の水栓装置の側面図を示す。図2においては、吐水部に設けられた吐水口と対峙する方向からを正面と定め、正面図を記載している。また、図3においては、吐水部に設けられた吐水口と対峙する方向を正面と定めた場合における側面方向からの図面を記載したものである。
ここで、スパウト10を形成する吐水部3、連結部4、接続部2は、スパウト10を接続する機器から上方に向けて接続部2、連結部4、吐水部3の順に接続されており、吐水部3はスパウト10の最上部に設置されるものである。この吐水部3は、前記スパウト10を側面視したとき、水平面に対し平行な方向の長さが、水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなるように傾斜して前記連結部に連接されているため、スパウト10は最上部の吐水部3が上方に立ち上がっているような形状になる。また、前記スパウト10を側面視したとき、水平面に対し平行な方向の長さが、水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなるように傾斜して前記連結部に連接された構成になっているため、図3のように、水平面と水平面側に突出した吐水部3との間に形成される角度αは、45°より大きく90°未満の角度を有することになる。このように、従来の水栓装置のように、前方に突出する量を低減させ、上方に突出するように傾けた構成にすることで、使用者に対する圧迫感や、スパウト10近傍の作業スペースを確保することが可能となるため、水栓装置を使用する際の視界を遮る、洗い作業等を行う作業スペースにスパウト10が存在する等を排除することが可能となるため、水栓装置を使用した作業を円滑に行うことが可能となる。
【0015】
次に吐水部3について詳細に記載する。図1、3に示すように、吐水部3は前記スパウト10を側面視したとき、水平面に対し平行な方向の長さが、水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなるように傾斜して前記連結部に連接された構成されているため、吐水部3のある一面は下方に向かうように構成される。この吐水部3の下方に向かうある一面は、前記吐水部を前記スパウトを側面視したときに、水平面と前記吐水部とで形成される角度が鋭角となる主面であり、、水平面に対する角度が鋭角となる。本実施例においては、主面に吐水口1を設ける構成について記載している。このように、主面に対して吐水口1を設置することにより、主面を使用者と対峙するように設置した場合には、吐水が水平方向に対してのベクトルを持つように吐出されるため、使用者の方向に吐水が向かうような吐水となる。このため、従来のようにスパウト10を使用者側に伸ばすことなく使用者側に吐水を供給することが可能となるため、吐水を用いた作業を行う空間にスパウト10を存在させず、広い作業スペースを確保することが可能となる。
【0016】
なお、主面に吐水口1を設置した場合に、吐水口1の向きにより吐水の軌跡が変化するので、吐水口1の接続方法について記載する。図4は、主面に整流吐水が可能な整流吐水口5を設置した構成図を記載する。ここで、整流吐水口5の吐水部3への搭載場所であるが、整流吐水を使用する代表的な行為としては、被洗浄体の洗浄、容器への水汲み等がある。洗浄作業においては、後述するシャワー吐水でも達成可能であるが、容器への水汲み、特に容器周囲を濡らさずに水を溜める行為に関しては、広範囲への吐水が可能なシャワー吐水よりも、流線として吐水される整流吐水が好ましい。また、水汲みの際には、吐水方向によっては容器周囲に水が付着する可能性もある。そこで、整流吐水口5の位置を吐水部3の最上位とすることで、様々な方向に吐水を行っても、高い位置からの落下運動となるため、重力による下向きの力が働き、水汲みを行う地点においては略垂直方向の吐水に変化するため、水汲み作業に適した吐水を提供することが可能となる。
【0017】
図4(A)においては、整流吐水口5から吐出される吐水の方向が、主面と略直交となるように吐水する形態について記載している。主面に対して略直交に吐水を行うと、吐水は水平方向と垂直方向のベクトルを持った状態で吐水が可能となるため、斜め下方に略直線方向に吐水することが可能となる。これにより、本発明の水栓装置を使用者に対峙する場所に設置した場合、使用者に向かうように吐水が行われるため、水平方向に対する突出量が小さなスパウト10においても、使用者の方向に対して吐水を供給することが可能となる。よって、スパウト10近傍の作業空間内に、スパウト10を存在させることなく、広い作業空間を確保しながら使用者が使用しやすい場所に吐水を供給することが可能となるため、使用者が手を伸ばす等の身体への負荷無く吐水を使用することが可能となる。なお、主面に対して略直交方向に吐水を行うためには、例えば整流吐水口5を主面に対して略平行に設置する方法がある。この方法であれば、整流吐水口5の開口面も主面と略平行になるため、整流吐水口5から吐出する吐水に対して、整流吐水口5の一部が抵抗となって吐水が減速することなく吐水が可能であるため、吐水が乱れたり、失速することなく使用者側に供給することが可能となる。
【0018】
また、図4(B)においては、整流吐水口5から吐出される吐水の方向が水平面に対して略平行となるように吐水する形態について記載している。水平面に対して略平行に吐水を行うと水平方向のベクトルを持って吐水を行うことが可能となるため、例えばスパウト10を使用者と対峙するように設置した場合、吐水が使用者方向に吐水される。そのためスパウト10の水平面に対し平行な方向の長さは小さいが、使用者が容易に吐水に触れることが可能な程度まで飛距離を持って吐水を行うことが可能となるため、作業スペースを広く確保することが可能となり、吐水を用いた作業を行う際にスパウト10を気にせずに容易に作業を行うことが可能となる。また、水平方向のベクトルのみを持った吐水は、重力による自然落下により垂直方向のベクトルを持つことになるので、使用者に吐水がかかるような吐水形態を避けることが可能となる。但し、水栓装置を設置する場所によっては、水圧が高い場所もあるため、スパウト10までの流路上に定流量弁のような一定流量を供給できる機構を設けることにより、更に使用者に対して吐水がかかる等の不具合を解消することが可能となる。
【0019】
また、図4(C)に、整流吐水口5から吐出される吐水の方向が水平面に対して略直交する方向に吐水する形態について記載している。この方式であれば、スパウト10の水平方向に対する突出量は少なくなるが、吐水がスパウト10近傍に落下するため、例えば使用者と対峙するように設置した場合においては、使用者が手を大きく伸ばす等の使用者への負荷が大きくなることが考えられる。そこで、水平面に対して略直交する方向に吐水を行う形態については、例えば、使用者が立つ立ち位置近傍に水栓装置を設置する場合に、水平面に対しての突出量が低減するため、吐水を用いた作業を行う作業スペースを確保することが可能であり、吐水を使用者近傍に吐出することが可能となる。
【0020】
また、図4(D)に整流吐水口5から吐出される吐水の方向が、斜め上方に対して吐水する形態について記載している。この方式で吐水を吐出する場合には、吐水は放物線を描いて落下するような軌跡で供給されることになる。斜め上方への吐水のため、水平方向に対するベクトルを持っているため、スパウト10の水平面に対する突出量が少なくともスパウト10と対峙する方向への吐水が可能となるため、例えば、スパウト10を使用者と対峙するように設置した場合においても、使用者の近傍に吐水を供給することが可能となるため、使用者が手を伸ばす等の身体への負荷無く吐水を使用することが可能となる。また、放物線上に吐水を供給するため、吐水を演出として使用することが可能であるため、例えば公共施設で、エンターテイメントを必要とする場所においては、演出も可能となるため最適である。
【0021】
次に、吐水部3の主面に、シャワー吐水が可能な吐水口である散水板6を備えたスパウト10の概略構成図及び散水板6の構成を図5に示す。図5(A)にシャワー吐水を行う散水板6を吐水部3に備えたスパウト10の概略構成図を示す。ここで、散水板6の吐水部3への設置位置であるが、吐水部3と連結部4との境界面近傍に散水板6の下方が位置するように設置する。散水板6は細かい孔(散水孔9)を介して吐水するため、洗浄を行う際の吐水面積を確保するためには散水板6自身の面積を大きくして吐水面積を確保する必要があるため、ある程度の面積を有してしまう。面積を有するものを吐水部3の上部に設置すると、吐水部3の長さが必要になるため、吐水部3の水平面に対し平行な方向の長さが増大してしまうので、使用者が吐水を用いた作業を行う作業スペースが狭くなってしまう。そこで、面積を有する散水板6を斜めに傾斜した吐水部3の下方に設置することで、散水板6上方の吐水部3長さを短くすることが可能となるため、吐水部3の水平面に対し平行な方向の長さを低減し、使用者の作業を行う作業スペースを確保することも可能となる。ここで、図4で説明した整流吐水口5と散水板6を吐水部3に設ける場合には、吐水部3の最上方に整流吐水口5を有し、整流吐水口5の下方で且つ、吐水部3の最下方に散水板6を設けることにより、整流吐水口5からの整流吐水が使用者が使用する範囲近傍で、重力による落下により鉛直方向の軌跡を描くため、水汲み等の作業を容易に行うことが出来ると共に、散水板6を吐水部3の最下方に設置することで、散水板6上方の吐水部3の面積を低減することが出来、その結果、吐水部3の長さを短くすることが可能となるため、水平面に対し平行な方向の長さを大幅に低減しつつ、整流とシャワーの両方の吐水を供給可能となるため、水栓装置使用者に広い作業スペースで作業でき、作業に応じた吐水形態を提供可能となる。
【0022】
ここで、散水板6からの吐水方向について記載する。図5(B)に散水板6から吐出される吐水の方向が、主面に対して略直交方向になる構成について記載する。散水板6からの吐水を主面に対して略垂直方向に吐出させるためには、散水板6に設けた複数の孔である散水孔9を散水板6に対して略直交するように構成することで可能となる。ここで、主面に対して略直交方向に吐水を行うことで、吐水は水平方向と垂直方向のベクトルを有して吐水を行うことが可能となるため、水平方向に対して距離を有するように吐水の軌跡を描く。そのため、スパウト10を使用者と対峙するように設置した場合においても、吐水が使用者の方向に向かって吐水されるため、使用者が大きく手を伸ばして吐水を使用することを抑制することが可能となるため、使用者の身体の負荷を低減して水栓装置を使用することが可能となる。またスパウト10の水平方向の突出量が少ないため、作業スペースを確保した状態で使用することも可能となる。更に、散水板6に設けられた散水孔9は、孔径が小さなものであるため、散水孔9から吐出された水は、速い流速で吐出されるため、重力による自然落下の影響を低減した状態での吐水となる。そのため、吐水を受ける受水部の大きさや水圧によっては、吐水が受水部に入らないように吐水される可能性もある。そこで、スパウト10までの配管経路上に流量を一定にする定流量弁のような流量調整機構を設けることにより、吐水を受水部内に着水させることが可能となる。
【0023】
次に、図5(C)に散水板6から吐出される吐水の方向が、水平面に対して略平行となる構成について記載する。散水板6からの吐水を水平面に対して略平行となるようにするには、散水板6に設けた複数の散水孔9を水平面に対して略平行に構成することで可能となる。ここで、散水板6からの吐水を水平面に対して略平行に吐水することで、散水板6からの吐水は水平方向のベクトルのみを持って吐出される。しかし、上述したように、散水板6から吐出された吐水は流速が速いため、水平方向のみのベクトルを持った吐水は、重力による自由落下を行うことなく吐水軌跡を描くため、スパウト10を使用者と対峙する方向に設置した場合には、使用者に吐水がかかる可能性がある。そこで、散水板6からの吐水が水平面に対して略平行に吐水する場合には、重力による自由落下を行わせるために、流速を低減、すなわち流量を低減させる方法を取ることが必要となる。達成する構成としては、例えば、スパウト10までの配管に散水板6から吐出される吐水の流量を調整する定流量弁のような流量調整機構を設け、散水板6からの流速を低減させる構成とするのが望ましい。また散水板6に設けた散水孔9の孔径を大きくする等の方法もあるが、散水孔9から吐出される吐水の流速を下げる方法であれば、上記課題を達成することが可能となる。
【0024】
次に接続部2について記載する。接続部2は水栓装置を機器とを接続するものであるため、機器の形状に応じて接続部2の形状を変化させる必要がある。図6に機器の形状に伴う接続部2の構成について記載する。図6(A)は、機器と接続部2が接合する接合面11が水平面の場合について記載している。機器との接合面11が水平面の場合には、接続部2の機器と接する側を水平面にして、接続部2の水平面に対し平行な方向の長さを低減、特に主面方向への長さを低減するように接続部2の形状を決定するのが望ましい。特に接続部2を水平面に対して略垂直に構成すると、水平面に対し平行な方向の長さをほとんど無くすことが可能となるため、視界や操作範囲内にスパウト10が存在しないことより、水栓装置を使用する場合の作業スペースを広く確保することが出来る。また、吐水口1へ洗浄水を供給する配管をスパウト10内部に配置する際に、接続部2が水平面に対して略垂直に構成することで、配管を曲げる等の作業が不要になり、水栓装置を設置する際の施工が容易になる。
【0025】
また、図6(B)に、機器と接続部2が接合する接合面11が垂直面の場合について記載している。機器との接合面11が垂直面の場合には、接続部2の機器と接する側を垂直面にして、連結部4と接続するまでの形状を水平面に対し平行な方向の長さが小さいように構成するのが望ましい。本実施例においては、連結部4を垂直方向に延在する構成にしているため、接続部2を屈曲させ連結部4と接続するように構成している。ここで、水平面に対し平行な方向の長さを低減するために、接続部2の水平方向への延在量を無くすことが望ましいが、洗浄水を供給する配管をスパウト10内部に配設する場合に、接続部2から連結部4に向かう経路中で急な配管の曲げを設ける必要があり、急な曲げは配管での圧損が増加したり、施工の際に配設が困難になるため、このような不具合を解消するために、接続部2の水平面に対し平行な方向の長さを最低限有するように構成することで、配管の圧損や施工の際の不具合を解消しつつ、スパウト10の水平面に対し平行な方向の長さを低減することが可能となるため、視界や操作範囲内にスパウト10が存在しないことより、水栓装置を使用する場合の作業スペースを広く確保することが出来る。
【0026】
更に、図6(C)に機器と接続部2が接合する接合面11が傾斜面の場合について記載している。機器との接合面11が傾斜面の場合には、接続部2の機器と接する側を傾斜面にして、連結部4と接続するまでの形状を水平面に対し平行な方向の長さが小さいように構成するのが望ましい。本実施例においては、連結部4を垂直方向に延在する構成にしているため、接続部2を屈曲させ連結部4と接続するように構成している。図6(B)と同様に、接続部2の水平面に対し平行な方向の長さを低減させることが望ましいが、スパウト10内部に配設する配管の圧損や施工の問題点があるため、接続部2の水平面に対し平行な方向の長さを最低限有することにより、上記問題点を解決することが出来、スパウト10の水平面に対し平行な方向の長さを低減することが可能となるため、視界や操作範囲内にスパウト10が存在しないことより、水栓装置を使用する場合の作業スペースを広く確保することが出来る。但し、図6(B)に比べて接合面11が傾斜しているため、スパウト10内部に配管を配設する場合に、水平方向から垂直方向への曲げではなく、上方に傾斜した方向から垂直方向に曲げるため、急な曲げ部を設けずとも接続可能である。そのため、図6(C)は図6(B)の場合よりも接続部2の水平面に対し平行な方向の長さを低減して構成することが可能となる。
【0027】
次に連結部4について説明する。連結部4は、水平面に対する突出量を少なくした吐水部3と、機器との接続を行う接続部2とを結合させる部材であるので、連結部4の水平面に対し平行な方向の長さを低減することで、スパウト10全体の水平面に対し平行な方向の長さも低減するため、構成として重要となる。基本的には、連結部4は図1から図6に記載のように、水平面に対して略直交するような構成が望ましい。これにより、接続部2、及び連結部4の水平面に対し平行な方向の長さのみが、スパウト10の水平面に対し平行な方向の長さとなるので、スパウト10の水平面に対し平行な方向の長さを低減することが可能となる。また、他の構成としては、図7(A)のように、吐水部3の主面と逆方向に水平面に対し平行な方向の長さを有する構成にすることで、吐水部3における水平面に対し平行な方向の長さを打ち消すことが可能となり、更にスパウト10の水平面に対し平行な方向の長さを低減することが可能となる。
【0028】
また、図7(B)のように、連結部4を吐水部3と同じ傾きを持って構成する方法もある。この構成は、例えば水栓装置を接続する機器の接合面11が傾斜面で構成されている場合、その傾斜面に対して垂直方向に直線的にスパウト10を構成するものとする。この場合、連結部4が傾斜を有するように構成されているため、スパウト10の水平面に対し平行な方向の長さが増大するので、この水平面に対し平行な方向の長さを低減するために、連結部4や吐水部3の長さを短くすることや、水平面に対する吐水部3及び連結部4の角度を大きくすることで、水平面に対し平行な方向の長さを低減することが可能となる。但し、スパウト10の高さ方向が低くなることによって、吐水口1の高さも低くなるため、吐水の飛距離が短くなってしまう。そこで、このような構成の場合には、接続する機器の受水部が小さなもの、例えば洗面化粧台や小型のキッチン等が適している。
【0029】
ここで、水栓装置を設置する機器においては、吐水の場所を定めることにより、使用者が洗い動作等を行いやすい機器が多い。例えば、キッチンの水栓装置や、洗面化粧台の水栓装置のように、ある一定の場所で洗わせることが可能であれば使用者は容易に洗浄行為等を行うことが可能であるが、水栓装置からの吐水を受ける受水部(キッチンではシンク、洗面化粧台では洗面器)の形状が異なるため、一定の洗浄場所を確保するためには、その受水部に合致した水栓装置を作成する必要があった。本発明の水栓装置においては、接続部2の形状を変更することによって、上記のような一定の洗浄場所に吐水を供給することが可能であるため、一定の洗浄場所を供給可能とする接続部2の構成について図8に記載する。
【0030】
図8では水栓装置を取り付ける機器の接合面11が、水平面、垂直面、傾斜面となる場合について記載している。どの接合面11に対しても、吐水部3及び連結部4は同様の形状とし、接続部2のみの形状を変化させて、どの接合面11に対しても取付け可能としている。このような構成にすることで、接続部2のみを入れ替えることにより、水栓装置を様々な接合面11を持つ機器に容易に設置可能であるため、水栓装置全体を複数種作成することなく、同一の場所に吐水を供給可能な水栓を提供することが可能となる。
【0031】
図8のように、接続部2を入れ替えて様々な機器に接続可能な構成にした場合には、接続部2と連結部4との間でスパウト10が分離する構成になる。このような場合、例えば接続部2と連結部4と接続面7で連結部4より上方のスパウト10が回動可能な構成にすることにより、接続部2と連結部4との間の接合面11が、設置のための分離と、スパウト10が回動するための2つの機能を有することになる。よって、接合面11を複数有することなく、設置のための接合面11と回動のための接合面11を有することが可能となるため、外観を大きく損なうことなく、水栓装置の施工の容易さ、スパウト10の機能の追加を行うことが可能となる。
【0032】
また、上記のような連結部4と接続部2との間に発生する接続面7を利用した構成としては、配管をホースで構成し、接続部2と連結部4でスパウト10を分離して、連結部4より上方のスパウト10をハンドシャワーとして使用する構成とし、その分離する面を上記連結部4と接続部2との間に発生する接続面7とすることによって、ハンドシャワーの構成を設けた場合においても、複数の接続面7を設けることなく構成可能なため、外観を損なうことなく水栓装置の施工の容易さ、及びスパウト10の機能の追加を行うことも可能となる。
【0033】
上記に示したハンドシャワーの機能を有する場合の、吐水部3と連結部4との関係を示す。スパウト10の上方をハンドシャワーとして使用する構成の場合、上記のように連結部4より上方のスパウト10がハンドシャワーとなるような構成とすると、ハンドシャワーが大きく、且つ重くなるため、使用者が使いづらくなる可能性が高い。そこで、吐水部3と連結部4とで分離し、吐水部3をハンドシャワーとして使用可能な構成について図9に記載する。
【0034】
図9(A)では、吐水部3が、吐水部3の途中で水平面に対して略平行に分離する構成について記載している。吐水部3と連結部4とが水平面に対して略平行に分離するように吐水部3と連結部4との間に分離面を設けているため、分離面にて吐水部3が回動可能としても、回動した場所毎の水平面に対する吐水の角度は変化しないため、使用者が予期しない方向への吐水を防止することが可能となる。また、吐水部3のみをハンドシャワーとして使用可能なため、大きさや重さを低減したハンドシャワーを使用者に提供することが可能となる。
【0035】
また、図9(B)では、吐水部3が、吐水部3の途中で、吐水部3の主面と略垂直に分離する構成について記載する。吐水部3の主面と略垂直に分離させることにより、吐水部3を切り離した後、連結部4と結合させる際に、分離面と吐水部3とが略直交するため、吐水部3上方から力を加えることで確実に結合することが可能となる。また、この分離面で結合させた場合に、主面が様々な方向に向くことが可能となるため、主面に設置している吐水口1が様々な方向を向いてしまい、使用者が予期しない方向へ吐水が行われる可能性がある。特に、本発明の水栓装置においては、吐水部の主面が、略鉛直方向を向いていないため、吐水は主面に対峙する方向、すなわち水平方向のベクトルを持って吐水されることが多く、主面が略鉛直方向に対してずれた場合においては、水栓装置を使用する使用者や、その周囲に対して吐水が飛散する恐れがあった。そこで、本実施例においては、分離面に凹凸を設置した勘合部13を設け、その勘合部13によって、ある特定の方向でしか結合出来ないようにすることにより、上記のような吐水口1が様々な方向を向いて、吐水が予期しない方向に吐出するのを防止することが可能となる。勘合部に関しては、凹凸形状をどちらの面に設置しても良いが、主面が略鉛直方向にブレるのを抑制するためには、凸形状の高さを高くすることにより、主面の略鉛直方向に対するブレを抑制することが出来、吐水が予期しない方向に吐出するのを防止することが可能となる。更に、勘合部を主面に対して略平行に設けることにより、主面の略鉛直方向に対するブレを抑制することが出来、吐水が使用者の予期しない方向に吐出するのを防止することが可能となる。また、勘合部を、分離面に対して略直交する方向に設けることにより、分離面を合わせるようにスパウトの上方から働く力に対して抵抗無く勘合が可能となるため、主面の略鉛直方向に対するブレを抑制することが出来、吐水が予期しない方向に吐出するのを防止することが可能となる。
【0036】
また、分離面において吐水部3が回動可能とする場合には、上記勘合部13を図9(C)のように、勘合部の凸形状を勘合部の凹形状よりも小さくすることで、凸形状と凹形状の大きさの違いによって発生した隙間によって、所定の範囲内で吐水部3が回動可能とすることも可能である。このような構成にすることにより、吐水部3が回動可能で、且つ吐水部3と連結部4を結合した場合に、予期しない方向への吐水の飛散を防止することも可能となる。更に、勘合部13を設けることにより、吐水部3と連結部4との結合の際に結合時に発生するぐらつき等を抑制することが可能となるため、吐水中に吐水部3と連結部4とを結合する場合に、結合が失敗して吐水部3が略垂直方向になってしまい、吐水が予期せぬ方向に飛散することも抑制することが可能となる。
【0037】
なお、本実施例においては、吐水部の途中で分割可能なように吐水部に分割面を設け、分割面に対して勘合部を設けた例について記載したが、上述したように連結部と接続部との境界面である接続面を分割面とし、接続面にて分割してハンドシャワーとして使用する例も記載しており、この接続面に勘合部を設けた場合においても、同様の効果を得ることが可能となる。また、連結部の途中に分割面を設け、連結部の途中で分割してハンドシャワーにした場合においても、同様に主面に設置している吐水口1が様々な方向を向いてしまい、使用者が予期しない方向へ吐水飛散することも抑制することが可能となる。
【0038】
次に、本実施例における吐水部3と連結部4との境界について記載する。図10に本発明の水栓装置で吐水部3と連結部4の関係を図示する。吐水部3は上述したように、吐水口1を有し、且つ水平面に対し平行な方向の長さが水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなるように傾きを持って構成されているものであるため、図10の境界面Aの上方が吐水部3に当たる。境界面Aは、吐水部3の傾斜した面と連結部4との面が接合された部分に形成される面であり、吐水部3の形状及び連結部4との形状によって境界面Aの位置、形状は変化するものである。また、接続部2は機器との接続を行うものであり、機器毎に接続部2が変更したり、又上述したように接続部2と連結部4との間に発生する境界面において分離可能としたり、回動可能としたりするため、接続部2と連結部4との間には境界面である接続面7が発生する。よってこの接続面7(図10の境界面B)よりも下方が接続部2となる。よって、境界面Aと境界面Bの間に存在するスパウト10の一部が連結部4となる。但し、境界面AやBの部分で外観上の美観を高めるために、図1や図2、図3のように境界面近傍にR形状を設けることがあるが、R形状を設けることによる機能の変化は無く、吐水部3が水平面に対し平行な方向の長さが水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなる構成であり、スパウト10自身の水平面に対し平行な方向の長さを低減し、使用者の視界を遮る、動線上にスパウト10が存在することによる作業の妨げにならず、水栓装置を使用した作業をより円滑に進めることが可能となるものである。また、図7(B)のように、吐水部3と連結部4とを同じ傾きで形成し、一体化する方法もある。この場合は吐水部3と連結部4との境界が不明確になるが、吐水口1が設置されている部分までは吐水部3、それより下方は連結部4と区分けすることが可能となる。
【0039】
以上の構成により、スパウト10の吐水部3を水平面に対し平行な方向の長さが水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなることにより、スパウト10の水平面に対し平行な方向の長さを低減することが可能となるため、視界や操作範囲内にスパウト10が存在しないことより、水栓装置を使用する際に洗い動作等を行う作業スペースを広く確保することが出来る。また、吐水部3から吐出される洗浄水に関しても、設置場所に応じて吐水口1の形態を変化させることにより、使用者が大きく手を伸ばす等の身体の負荷をかけずに、使用者の近傍に吐水を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の水栓装置の概略構成図
【図2】本発明の水栓装置の正面図
【図3】本発明の水栓装置の側面図
【図4】吐水部の主面に整流吐水吐水口を備えた概略構成図
【図5】吐水部の主面に散水板を備えた概略構成図及び散水板の構成図
【図6】機器の形状に伴う接続部の概略構成図
【図7】連結部の構成図
【図8】接合面の形状に対する接続部の形状図
【図9】吐水部をハンドシャワーとして使用する場合の概略構成図
【図10】本発明の水栓装置で吐水部と連結部の関係図
【符号の説明】
【0041】
1…吐水口、2…接続部、3…吐水部、4…連結部、5…整流吐水口、6…散水板、7…接続面、8…吐水口からの吐出方向、9…散水孔、10…スパウト、11…接合面、12…ホース配管、13…勘合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウトと、
吐水口とを備えた水栓装置であって、
前記スパウトは、
機器と接続する接続部と、
前記吐水口を有する吐水部と、
前記接続部と前記吐水部との間に設けられた連結部とを有し、
前記吐水部は、前記スパウトを側面視したとき、
水平面に対し平行な方向の長さが、水平面に対し垂直な方向の長さよりも短くなるように傾斜して前記連結部に連接され、
前記スパウトは分割面を介して複数個に分割可能であり、
前記分割面に凹凸形状で構成された勘合部を設けたことを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記スパウトは、前記吐水部と前記接続部の間で分割され、
前記勘合部は、前記スパウトを側面視したときに、水平面と前記吐水部とで形成される角度が鋭角となる主面側、または前記主面と対向する面側に設けられたこと特徴とする請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
前記勘合部は、前記分割面に対して略直交方向に凹凸形状を構成したことを特徴とする請求項1から2何れか1項記載の水栓装置。
【請求項4】
前記スパウトは、前記分割面においてスパウトの上方が回動可能であることを特徴とする請求項1から3何れか1項記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−235736(P2009−235736A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81946(P2008−81946)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】