説明

水棲汚損生物付着防止剤組成物

【課題】養殖または定置用の漁網およびこれらに使用される浮き子、ロープ等の資材等に対する水棲汚損生物付着防止剤組成物の提供。
【解決手段】一般式(1)で表されるトリフェニルボロン−アミン付加物と一般式(2)で表されるポリオキシアルキレングリコールおよびその(モノ/ジ)脂肪酸エステル化合物類または一般式(3)で表されるポリビニルエーテル化合物を併用することにより、溶出性の改善や特に漁網防汚剤組成物として使用した際の使用感が向上した水棲汚損生物付着防止剤組成物を提供できる。
【化1】


【化2】


【化3】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖または定置用の漁網およびこれらに使用される浮き子、ロープ等の資材等に対する水棲汚損生物付着防止剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖または定置用の漁網類等は、海中に長期間保持されるために海藻類、フジツボ、セルプラ、コケムシ、軟体動物類等の水棲汚損生物の付着が激しく、これらの経済的運用を妨げており、それらの保守に多大の労力と費用をかけているのが現状である。
【0003】
この対策として種々の研究、提案がなされているが、実用的には一連の有機錫化合物や亜酸化銅が有効であることが知られている。しかし、これらの有機錫化合物は概して毒性が強く、これらを含有する商品を不用意に取り扱うと取扱者に皮膚障害を及ぼす恐れがあり、また環境対策上好ましくない等の欠点がある。亜酸化銅は海水中に溶出して、銅イオンまたは銅化合物として残留するため、環境に好ましくない影響を及ぼす恐れがある。
【0004】
このような理由から、重金属を含まない低公害性の水棲汚損生物付着防止剤組成物の出現が望まれている。例えば、ベンゾチアゾール化合物を有効成分とする水中防汚塗料(例えば、特許文献1参照。)が、テトラアルキルチウラムジスルフィッド化合物とその他の水中防汚剤化合物とを組み合わせた種々の漁網用防汚剤、防汚塗料組成物、漁網防汚用溶液(例えば、特許文献2、3、4参照。)が、3−イソチアゾロン化合物を有効成分とする海洋構築物の汚染防止剤(例えば、特許文献5参照。)が、マレイミド化合物を有効成分とする防汚塗料がそれぞれ開示されている(例えば、特許文献6、7、8参照。)。
【0005】
しかし、これらの水棲汚損生物付着防止剤組成物は、いずれも水棲汚損生物の付着を防止する効果が弱いため、さらに多種多用な汚損生物に対して強く、広範な防汚効果を発揮する実用的な水中防汚剤の開発が望まれている。最近では、特に水棲汚損生物に生理活性を有するトリフェニルボロン・アミン付加物を利用することが提案され、例えば、トリフェニルボロン・アミン付加物を有効成分として含有する水中防汚塗料が開示されている(例えば、特許文献9、10、11参照。)。しかしながら、乾燥性や染め網のべたつきを改善するため、ガラス転移点(Tg)の高い樹脂をバインダーとして用いた場合等、使用状況によっては防汚効力の溶出性の低下やバインダー樹脂の糸引き等の問題が発生することもあった。
【0006】
【特許文献1】特公昭51−10849号公報
【特許文献2】特開昭60−38306号公報
【特許文献3】特開昭63−284275号公報
【特許文献4】特公平1−11606号公報
【特許文献5】特公昭61−50984号公報
【特許文献6】特公平1−20665号公報
【特許文献7】特公平2−24242号公報
【特許文献8】特開昭53−9320号公報
【特許文献9】特開平8−295608号公報
【特許文献10】特開平8−295609号公報
【特許文献11】国際公開第97/27254号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、主に定置用、養殖用網に付着する水棲汚損生物に対し、優れた防汚効果を示し、かつ、使用感に優れた実用的な水棲汚損生物付着防止剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した従来の水中防汚剤組成物組成物の諸欠点を克服するために鋭意研究に努力した結果、優れた防汚効果を示し、かつ、使い勝手の良好な水棲汚損生物付着防止剤組成物を発明した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)一般式(1)
【化1】

(式中、Xは直鎖もしくは分枝の炭素数2〜18のアルキルアミン、炭素数2〜18のアルコキシアルキルアミン、ピリジン、H2N−R−O−Rで表されるアルコキシ基を有するアルキレンアミンを示し、Rは直鎖もしくは分枝の炭素数1〜8のアルキレン基、Rは直鎖もしくは分枝の炭素数1〜18のアルキレン基を示す。)により表されるトリフェニルボロン−アミン付加物を有効成分とし、かつ、一般式(2)
【化2】


(式中、R、Rは同一または異なって、水素原子、炭素数2〜18の脂肪族カルボキシル基を示し、nは2〜6の整数を示し、mは1〜40の整数を示す。)により表されるポリオキシアルキレングリコールおよびそのモノ/ジ脂肪酸エステル化合物または一般式(3)
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、pは1〜40の整数を示す。)により表されるポリビニルエーテル化合物の少なくとも一つの化合物を含有することを特徴とする水棲汚損生物付着防止剤組成物、
(2)一般式(1)により表されるトリフェニルボロン−アミン付加物がトリフェニルボロン−n−オクタデシルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−ドデシルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−オクチルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−ヘキシルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−ブチルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−プロピルアミン付加物、トリフェニルボロン−2−エチルヘキシルアミン付加物、トリフェニルボロン−3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン付加物またはトリフェニルボロン−ピリジン付加物である(1)記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物、
(3)一般式(2)により表されるポリオキシアルキレングリコールおよびそのモノ/ジ脂肪酸エステル化合物がポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)ステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)オレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)オクチルフェニルエステルである(1)又は(2)のいずれかに記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物、
(4)一般式(3)により表されるポリビニルエーテル化合物がポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルである(1)〜(3)のいずれかに記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物、
(5)一般式(1)により表されるトリフェニルボロン−アミン付加物がトリフェニルボロン−n−オクタデシルアミン付加物であり、かつ、一般式(2)により表されるポリオキシアルキレングリコールがポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールである(1)〜(4)のいずれかに記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物、
(6)一般式(4)
【化4】


(式中、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、qは2〜10の整数を示す。)で表されるジアルキルポリスルフィッド類、平均分子量200〜1,000のポリブテン、パラフィン、ワセリン、グリセリンまたはグリセリドからなる溶出調整剤、シリコーンオイルおよび一般式(1)以外の公知の防汚成分群より選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、例えば、一般式(1)で表されるトリフェニルボロン−アミン付加物を有効成分とする漁網防汚剤組成物の場合、本発明で見出したポリオキシアルキレングリコールおよびその(モノ/ジ)脂肪酸エステル化合物類またはポリビニルエーテル化合物と併用することにより、防汚効力の向上はもとより、染め網の糸引き(網を拡げた時塗膜が糸を引くような状態、塗膜が片方の網地に偏在する状態、または塗膜の付着状態が不均一で、いわゆるダマが存在する状態)を抑制することが可能となった。すなわち、本発明の水中汚損生物付着防止剤組成物は、使用感に優れ、なおかつ、優れた防汚効果を持つことが確認された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の水棲汚損生物付着防止剤組成物の有効成分として用いられる一般式(1)で表されるトリフェニルボロン−アミン付加物は、特開平8−311074号公報の記載の方法により製造することができる。
【0012】
上記トリフェニルボロン−アミン付加物は単独でももちろん防汚効果を発揮するものの、本発明で見出したポリオキシアルキレングリコールおよびその(モノ/ジ)脂肪酸エステル化合物類またはポリビニルエーテル化合物と併用することにより、漁網防汚剤組成物として使用した際の使用感が向上する等の改善が見られる。また、その他一般に用いられる溶出調整剤、シリコーンオイルまたは他の公知の防汚成分からなる少なくとも一種以上とを組み合わせることにより、より防汚効果に優れた効果を発揮する水棲汚損生物付着防止剤組成物とすることができる。
【0013】
一般式(1)で表されるトリフェニルボロン−アミン付加物のうち少なくとも一種以上と一般式(2)で表されるポリオキシアルキレングリコールおよびその(モノ/ジ)脂肪酸エステル化合物類またはポリビニルエーテル化合物類から選ばれる少なくとも一種以上とを併用し、さらに必要に応じてその他の溶出調整剤、シリコーンオイルおよび後述の他の公知防汚成分と樹脂及び溶剤を加えて水棲汚損生物付着防止剤組成物にすればよい。
【0014】
本発明における一般式(1)で表されるトリフェニルボロン−アミン付加物としては、トリフェニルボロン−n−オクタデシルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−ドデシルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−オクチルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−ヘキシルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−ブチルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−プロピルアミン付加物、トリフェニルボロン−2−エチルヘキシルアミン付加物、トリフェニルボロン−3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン付加物、トリフェニルボロン−ピリジン付加物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらのうち、好ましくはトリフェニルボロン−n−オクタデシルアミン付加物、トリフェニルボロン−3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン付加物、より好ましくはトリフェニルボロン−n−オクタデシルアミン付加物である。
【0015】
本発明における一般式(1)で表されるトリフェニルボロン−アミン付加物の配合量は、水棲汚損生物付着防止剤組成物の適用対象物、適用環境によって任意に変更でき、特に限定されるものではないが通常、1〜50重量%、好ましくは3〜20重量%である。
【0016】
本発明における一般式(2)で表させるポリオキシアルキレングリコールおよびその(モノ/ジ)脂肪酸エステル類としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)ステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)オレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)オクチルフェニルエステル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらのうち、より好ましくは、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)ステアリン酸エステルである。また、その平均分子量としては、好ましくは200〜6,000、より好ましくは200〜1,000である。
【0017】
本発明における一般式(3)で表されるポリビニルエーテル化合物類としては、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明における一般式(2)で表されるポリオキシアルキレングリコールおよびその(モノ/ジ)脂肪酸エステル類または一般式(3)で表されるポリビニルエーテル化合物類は、混合して用いることも可能であり、その配合量は、水棲汚損生物付着防止剤組成物の適用対象物、適用環境によって任意に変更でき、特に限定されるものではないが通常、0.5〜30重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0019】
また、併用可能である溶出調整剤として、一般式(4)で示されるジアルキルポリスルフィッド類としては、ジエチルペンタスルフィッド、ジ第3級ブチルジスルフィッド、ジ第3級ブチルテトラスルフィッド、ジ第3級アミルテトラスルフィッド、ジ第3級オクチルペンタスルフィッド、ジ第3級ノニルペンタスルフィッド、ジ第3級ドデシルペンタスルフィッド、ジノナデシルテトラスルフィッド等が挙げられる。また、平均分子量200〜1,000のポリブテンとしては、例えば、日本石油化学(株)製のLV−5、LV−10、LV−25、LV−50、V−100、HV−15、HV−35、HV−50、HV−50、HV−100等が挙げられ、パラフィン類としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、塩素化パラフィン等が挙げられ、ワセリンには、白色ワセリン、黄色ワセリンが挙げられる。さらにはグリセリンや各種グリセリドが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、それらの混合物であってもよい。
【0020】
上記の溶出調整剤の含有量の合計は、その適用環境によって任意に変更できるが、漁網防汚剤組成物中、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。
【0021】
また、本発明で使用されるシリコーンオイルとしては、例えば、メチル水素シリコーンオイル、(高級)脂肪酸変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等が挙げられ、中でも、ポリエーテル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等が好ましい。高級脂肪酸変性シリコーンオイルとしては、例えば、商品名がTSF410、TSF411、ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、例えば、商品名がTSF4445、TSF4452、TSF4453、エポキシ変性シリコーンオイルとしては、例えば、商品名がTSF4730、TSF4751、アミノ変性シリコーンオイルとしては、例えば、商品名がTSF4702、TSF4720等が挙げられ、いずれも東芝シリコーン株式会社の製品であるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で使用してもよく、また二種以上併用してもよい。
【0022】
使用されるシリコーンオイルの配合量の合計は、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。なお、その混合比は、適用対象物、適用環境ならびにその他公知の防汚成分の併用状況により任意に変更できる。
【0023】
公知の防汚成分としては、1、3−ジシアノテトラクロルベンゼン(以下化合物(i)ともいう。)、2−(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール)(以下化合物(ii)ともいう。)や以下に記載する化合物群(iii)〜(viii)の化合物が挙げられこれらを併用して配合することにより、水棲汚損生物に対してより優れた付着防止効果を発揮できる。
【0024】
本発明で使用される化合物群(iii)として、一般式(5)
【化5】

で表されるサリチルアニライド化合物類としては、例えば、5−メチル−4’−ニトロサリチルアニライド、3’5−ジメチル−4’−ニトロサリチルアニライド、5−エチル−2’−メチル−4’−ニトロサリチルアニライド、5−エチル−2’−メチル−5’−ニトロサリチルアニライド、5−イソプロピル−2’−メチル−4’−ニトロサリチルアニライド、5−イソプロピル−2’−メチル−5’−ニトロサリチルアニライド、5−第2級ブチル−2’−メチル−4’−ニトロサリチルアニライド、5−第3級ブチル−2’−メチル−4’−ニトロサリチルアニライド、5−第3級ブチル−4’−ニトロサリチルアニライド、5−第3級ブチル−2’−メチル−5’−ニトロサリチルアニライド、5−第3級アミル−2’−メチル−4’−ニトロサリチルアニライド、5−第3級オクチル−4’−ニトロサリチルアニライド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
また、化合物群(iv)として、一般式(6)
【化6】


で表されるテトラアルキルチウラムジスルフィッド化合物類としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィッド、テトラエチルチウラムジスルフィッド、テトライソプロピルチウラムジスルフィッド、テトラ−n−ブチルチウラムジスルフィッド等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0026】
また、化合物群(v)のジチオカルバミン酸金属塩化合物としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛、ビス(ジメチルジチオカルバモイル)エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛、エチレンビスジチオカルバミン酸マンガン、ジメチルジチオカルバミン酸鉄等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0027】
また、化合物群(vi)のピリチオン金属塩化合物としては、例えば、ピリチオン亜鉛、ピリチオン銅等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0028】
また、化合物群(vii)として、一般式(7)
【化7】


(式中、R11は水素原子、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ハロゲン置換フェニル基、ベンジル基、アルキル置換ベンジル基またはハロゲン置換ベンジル基を示す。)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、N−ベンジルマレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−エチルマレイミド、2,3−ジクロロ−N−ブチルマレイミド、2,3−ジクロロ−N−シクロヘキシルマレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2−エチル−6−メチル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−ベンジルマレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2−クロロベンジル)マレイミド等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0029】
また、化合物群(viii)の3−イソチアゾロン化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン、5−クロロ−2−n−デシル−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−(4−クロロベンジル)−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−(4−クロロフェニル)−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−n−ヘキシル−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−(2−メトキシ−3−クロロフェニル)−3−イソチアゾロン、4,5−ジブロモ−2−(4−クロロベンジル)−3−イソチアゾロン、4−メチル−5−クロロ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソチアゾロン、5−クロロ−2−(3,4−ジクロロフェニル)−3−イソチアゾロン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0030】
さらには、ここに記載した以外の公知の防汚成分を配合してもよく、種々の水棲汚損生物に対して一層バランスのとれた防汚効果を期待できる。
【0031】
その他の公知の防汚成分としては、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、2−チオシアノメチルチオベンツイミダゾ−ル、2−(メトキシカルボニルアミノ)ベンツイミダゾール等のベンツイミダゾール系化合物、5−クロロ−2,4−ジフルオロ−6−メトキシイソフタロニトリル、テトラフルオロイソフタロニトリル等のニトリル系化合物、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,3,6−トリクロロ−4−プロピルスルホニルピリジン、2,6−ジクロロ−3,5−ジシアノ−4−フェニルピリジン等のピリジン系化合物、2,4−ジクロロ−(o−クロロアニリノ)−S−トリアジン、2−クロロ−4−メチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−S−トリアジン、2−クロロ−4,6−ビス(エチルアミノ)−S−トリアジン、2−メチルチオ−4,6−ビス(エチルアミノ)−S−トリアジン、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−S−トリアジン等のトリアジン系化合物、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1−メトキシ−1−メチル尿素、1−(2−メチルシクロフェニル)−3−フェニル尿素等の尿素系化合物、2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジシアノ−1,4−ジチアノアントラキノン等のキノン系化合物、N−トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミド、N−トリクロロメチルチオフタルイミド、N−フルオロジクロロメチルチオフタルイミド、トリクロロメチルチオメタンスルホン−p−クロロアニリド等のN−ハロアルキル系化合物、メチレンビスチオシアネート、エチレンビスチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、アリールイソチオシアネート等のチオシアン系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の有効成分として用いられる一般式(1)で示される化合物と、併用することができる化合物(i)、(ii)、化合物群(iii)〜(viii)との水棲汚損生物付着防止剤組成物における重量配合比は、その適用環境によって任意に変更できるが、好ましくは1:25〜25:1、より好ましくは1:10〜10:1の範囲である。これら化合物(i)、(ii)、化合物群(iii)〜(viii)は単独または二種以上混合して併用してもよい。
【0033】
本発明の水棲汚損生物付着防止剤組成物に使用される溶剤としては、芳香族系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤等が挙げられるが、より具体的には、例えば、キシレン、トルエン、プソイドクメン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、メシチレン、ソルベントナフサ、ブタノール、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。またこれらの溶剤は単独で使用してもよく、また二種以上混合して使用してもよい。
【0034】
また、本発明の水棲汚損生物付着防止剤組成物に使用されるバインダーとしての樹脂は、アクリル樹脂、金属含有アクリル樹脂、合成ゴム、ロジン樹脂、シリコン系樹脂、ポリブテン樹脂、塩化ゴム樹脂、塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、クマロン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は単独で使用してもよく、また二種以上混合して使用してもよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
実施例1〜10および比較例1〜3
本発明の漁網防汚剤組成物を表1に示す配合により調製した。また、実施例1〜10および比較例1〜3の漁網防汚剤組成物をそれぞれテトロン製無結節網(5節)に浸漬塗布して風乾した後の網の状態をべとつき/糸引き/剥離の面で評価、その結果を同じく表2に記した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表2より、本発明における漁網防汚剤組成物は、比較例で示す漁網防汚剤組成物のような糸引き等の問題は発生せず、実用的な製剤であることが判明した。
【0040】
〔漁網防汚剤組成物としての効力確認試験〕
実施例1〜10および比較例1〜3の漁網防汚剤組成物を浸漬塗布して風乾したテトロン網を平成14年7月から5ケ月間、高知県宿毛市宿毛湾内の海面下0.5mに浸海保持し、網に対する汚損状況(防汚効果)を調査した。この汚損状況を以下の基準により評価した。
【0041】
評価 付着状況
− 汚損面積0%。
± 汚損面積10%以下、実用上差し支えない。
+ 汚損面積10〜50%、実用上使用に耐えない。
× 汚損綿製50%以上多量に付着している。
【0042】
網に対する汚損状況(防汚効果)の結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3より、本発明における漁網防汚剤組成物は、比較例で示す漁網防汚剤組成物以上の持続性のある実用的な防汚効果を示すことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明により、溶出性の改善や特に漁網防汚剤組成物として使用した際の使用感が向上した水棲汚損生物付着防止剤組成物を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】


(式中、Xは直鎖もしくは分枝の炭素数2〜18のアルキルアミン、炭素数2〜18のアルコキシアルキルアミン、ピリジン、H2N−R−O−Rで表されるアルコキシ基を有するアルキレンアミンを示し、Rは直鎖もしくは分枝の炭素数1〜8のアルキレン基、Rは直鎖もしくは分枝の炭素数1〜18のアルキレン基を示す。)により表されるトリフェニルボロン−アミン付加物を有効成分とし、かつ、一般式(2)
【化2】

(式中、R、Rは同一または異なって、水素原子、炭素数2〜18の脂肪族カルボキシル基を示し、nは2〜6の整数を示し、mは1〜40の整数を示す。)により表されるポリオキシアルキレングリコールおよびそのモノ/ジ脂肪酸エステル化合物または一般式(3)
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、pは1〜40の整数を示す。)により表されるポリビニルエーテル化合物の少なくとも一つの化合物を含有することを特徴とする水棲汚損生物付着防止剤組成物。
【請求項2】
一般式(1)により表されるトリフェニルボロン−アミン付加物がトリフェニルボロン−n−オクタデシルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−ドデシルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−オクチルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−ヘキシルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−ブチルアミン付加物、トリフェニルボロン−n−プロピルアミン付加物、トリフェニルボロン−2−エチルヘキシルアミン付加物、トリフェニルボロン−3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン付加物またはトリフェニルボロン−ピリジン付加物である請求項1記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物。
【請求項3】
一般式(2)により表されるポリオキシアルキレングリコールおよびそのモノ/ジ脂肪酸エステル化合物がポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)ステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)オレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ/ジ)オクチルフェニルエステルである請求項1又は2のいずれかに記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物。
【請求項4】
一般式(3)により表されるポリビニルエーテル化合物がポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルである請求項1〜3のいずれかに記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物。
【請求項5】
一般式(1)により表されるトリフェニルボロン−アミン付加物がトリフェニルボロン−n−オクタデシルアミン付加物であり、かつ、一般式(2)により表されるポリオキシアルキレングリコールがポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールである請求項1〜4のいずれかに記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物。
【請求項6】
一般式(4)
【化4】


(式中、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、qは2〜10の整数を示す。)で表されるジアルキルポリスルフィッド類、平均分子量200〜1,000のポリブテン、パラフィン、ワセリン、グリセリンまたはグリセリドからなる溶出調整剤、シリコーンオイルおよび一般式(1)以外の公知の防汚成分群より選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水棲汚損生物付着防止剤組成物。




【公開番号】特開2006−45171(P2006−45171A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232458(P2004−232458)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(396020464)株式会社エーピーアイ コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】