説明

水洗便器のエア抜き構造

【課題】コンパクトな構成で且つより確実にエア抜け防止及び水の漏れ防止をさせることが出来る水洗便器のエア抜き構造を提供する。
【解決手段】本発明は、ジェット側給水路(46)に洗浄水を供給する洗浄水供給手段(22)を有し、ジェット側給水路に洗浄水を供給する初期の段階においてジェット側給水路に滞留している空気をジェット側給水路から抜くための水洗便器のエア抜き構造であって、ジェット側給水路に滞留している空気をジェット側給水路から排出するためのエア抜き管(70)と、ジェット側給水路とエア抜き管との間を開放状態にし或いは閉鎖状態にすることが出来るフラッパー弁(72)と、このフラッパー弁に設けられ、空気の圧力を受けても作動せずにフラッパー弁を開放状態にさせ、或いは、ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けると作動してフラッパー弁を閉鎖状態にさせるように、フラッパー弁を付勢する付勢手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器のエア抜き構造に係り、特に、ジェット側給水路に洗浄水を供給する初期の段階においてジェット側給水路に滞留している空気をジェット側給水路から抜くための水洗便器のエア抜き構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジェット吐水用配水管の内部に溜まっていた空気がジェット吐水開始時にジェット吐水口から排出されて「ボコッ」というような騒音が生じることを防止するために、ジェット吐水用配水管内の空気を、ジェット吐水口からではなく、他の部分から排出するようにしたジェット給水装置が知られている。例えば、特許文献1には、ジェット吐水用の配水管に分岐流路を接続し、この分岐流路の先端部に逆流防止弁を設けた大便器のジェット給水装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平04−327618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなジェット給水装置では、分岐管及び逆流防止弁を必要としており、配水管の周辺にスペースがあまり無いときに、分岐管及び逆流防止弁を配置することが困難な場合があった。また、ジェット吐水開始時の吐水量及び吐水圧などの状態によっては、エアーが完全に抜けないことがあり、さらに、配水管内の水が漏れることを完全に防止出来ない場合もあった。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、より確実にエア抜け防止及び水の漏れ防止をさせることが出来る水洗便器のエア抜き構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、ジェット吐水口に連通するジェット側給水路とこのジェット側給水路に洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを有し、ジェット側給水路に洗浄水を供給する初期の段階においてジェット側給水路に滞留している空気をジェット側給水路から抜くための水洗便器のエア抜き構造であって、ジェット側給水路に接続され、このジェット側給水路に滞留している空気をジェット側給水路から排出するための大気に連通しているエア抜き管と、このエア抜き管及びジェット側給水路の間に設けられたフラッパー管と、このフラッパー管に設けられ、ジェット側給水路とエア抜き管との間を開放状態にし或いは閉鎖状態にすることが出来るフラッパー弁と、このフラッパー弁に設けられ、洗浄水により押し出される滞留している空気の圧力を受けても作動せずにフラッパー弁を開放状態にさせ、或いは、ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けると作動してフラッパー弁を閉鎖状態にさせるようにフラッパー弁を付勢する付勢手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ジェット側給水路とエア抜き管との間を開放状態にし或いは閉鎖状態にすることが出来るフラッパー弁が設けられ、さらに、洗浄水により押し出される滞留している空気の圧力を受けても作動せずにフラッパー弁を開放状態にさせ、或いは、ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けると作動してフラッパー弁を閉鎖状態にさせるように、フラッパー弁を付勢する付勢手段がフラッパー弁に設けられているので、より確実にエア抜け防止及び水の漏れ防止をさせることが出来る。
【0007】
また、本発明において、好ましくは、フラッパー弁は、その上縁部の軸を中心に回動可能であり、フラッパー管及びフラッパー弁は、このフラッパー弁が垂直方向に向くときジェット側給水路からエア抜き管へと空気が通るような間隙が形成されるように構成され、且つ、フラッパー弁が斜めに傾くときフラッパー弁がフラッパー管を閉じるように構成され、付勢手段は、フラッパー弁が所定の重量を有するようにフラッパー弁に取り付けられた錘であり、フラッパー弁の重量は、洗浄水を供給する初期の段階における空気の圧力を受けるときにはそのフラッパー弁にかかる重力による垂直方向下方への力がその空気圧に勝ってフラッパー弁が垂直方向に向いて空気を逃がし、ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けるときにはそのフラッパー弁にかかる重力による垂直方向下方への力よりその水圧が勝ってフラッパー弁が斜めに傾いて洗浄水を遮蔽するように調整されている。
このように構成された本発明においては、フラッパー弁が所定の重量を有するように錘が取り付けられ、この錘の重さを調整することにより、洗浄水を供給する初期の段階における空気の圧力を受けるときにはそのフラッパー弁にかかる重力による垂直方向下方への力がその空気圧に勝ってフラッパー弁が垂直方向に向いてジェット側給水路からエア抜き管へと空気が通るような間隙が形成され、一方、ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けるときにはそのフラッパー弁にかかる重力による垂直方向下方への力よりその水圧が勝ってフラッパー弁が斜めに傾いてフラッパー弁がフラッパー管を閉じるように構成されているので、簡易且つコンパクトな構成でより効果的にエア抜け防止及び水の漏れ防止をさせることが出来る。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、さらに、洗浄水を貯水する貯水タンクを有し、エア抜き管は、貯水タンクから溢れる洗浄水を逃がすオーバーフロー管を兼ねており、貯水タンクから溢れる洗浄水は、このオーバーフロー管を通り、重力により付勢されて垂直方向に向くフラッパー弁とフラッパー管との間の間隙を通ってジェット側給水路に流れる。
このように構成された本発明においては、エア抜き管とオーバーフロー管とを兼用しているので、より簡易且つコンパクトな構成でエア抜け防止及び水の漏れ防止をさせることが出来る。また、万が一、オーバーフロー管に洗浄水が流れても、その洗浄水は貯水タンク内に流れるので、水漏れを防止することが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、さらに、リム吐水口へ洗浄水を供給するリム給水路を有し、エア抜き管は、ジェット側給水路からリム給水路に接続されている。
このように構成された本発明においては、より簡易且つコンパクトな構成でエア抜け防止及び水の漏れ防止をさせることが出来る。また、万が一、オーバーフロー管に洗浄水が流れても、その洗浄水はリム吐水口に流れるので、水漏れを防止することが出来る。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、付勢手段はばねであり、フラッパー弁は、洗浄水を供給する初期の段階における空気の圧力を受けるときにはばねの付勢力が空気圧より勝ってフラッパー弁が垂直方向に向き、ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けるときにはその水圧がばねの付勢力に勝ってフラッパー弁が斜めに傾くように調整され、フラッパー管及びフラッパー弁は、フラッパー弁が垂直方向に向くときジェット側給水路からエア抜き管へと空気が通るような間隙が形成されるように構成され、且つ、フラッパー弁が洗浄水の水圧を受けて斜めに傾くときフラッパー弁がフラッパー管を閉じるように形成されている。
このように構成された本発明においては、ばねにより、洗浄水を供給する初期の段階における空気の圧力を受けるときにはばねの付勢力が空気圧より勝ってフラッパー弁が垂直方向に向いてジェット側給水路からエア抜き管へと空気が通り、一方、ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けるときにはその水圧がばねの付勢力に勝ってフラッパー弁が斜めに傾いてフラッパー弁がフラッパー管を閉じるように構成されているので、簡易且つコンパクトな構成でより効果的にエア抜け防止及び水の漏れ防止をさせることが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明による水洗便器のエア抜き構造によれば、より確実にエア抜け防止及び水の漏れ防止をさせることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗便器のエア抜き構造を説明する。
先ず、図1乃至図3により、本発明の実施形態による水洗大便器の構造を説明する。図1は、本発明の実施形態による水洗大便器の側面図であり、図2は、図1に示す水洗大便器の平面図であり、図3は本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル11により覆われている。
【0014】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、排水トラップ管路14の下端に接続された配水管15と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐水するようになっている。リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0015】
排水トラップ管路14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。トラップ下降管14cの下端に上述した配水管15が接続されている。
【0016】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を洗浄水供給手段としての加圧ポンプ22によって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるようになっている。
【0017】
次に、図3により、本実施形態による水洗大便器1の機能部10を詳細に説明する。
図3に示すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には、上流側から、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30、定流量弁32、ダイヤフラム式の電磁開閉弁34、給水路切替弁36がそれぞれ設けられている。定流量弁32は、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。
【0018】
これらの定流量弁32、電磁開閉弁34、及び、給水路切替弁36は、図3に示すように、バルブユニット37として、一体的に組み立てられたものとなっている。また、給水路切替弁36の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水路38、及び、貯水タンク20に洗浄水を供給するためのタンク側給水路40が接続されている。
【0019】
ここで、定流量弁32を通過した洗浄水は、電磁開閉弁34に流入し、電磁開閉弁34を通過した洗浄水は、給水路切替弁36により、リム側であるリム給水路38からリム吐水口18へ、又は、タンク側であるタンク側給水路40から貯水タンク20に供給されるようになっている。給水路切替弁36は、リム側給水路38とタンク側給水路40の両方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であって、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更出来る切替弁である。
これらの電磁開閉弁34の開閉操作、及び、給水路切替弁36の切替操作は、機能部10に設けられたコントローラ62により制御される。
【0020】
また、貯水タンク20の下部には、ジェット側給水路46が接続されており、このジェット側給水路46の下流端は、ジェット吐水口16に接続されている。また、ジェット側給水路46の途中に上述した加圧ポンプ22が設けられている。この加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口16から吐出させるためのものである。加圧ポンプ22の回転数や作動時間等は、機能部10に設けられたコントローラ62により制御される。
【0021】
ジェット側給水路46は、加圧ポンプ22より上流側の上流ジェット側給水路46aと下流側の下流ジェット側給水路46bとから構成されている。ここで、下流ジェット側給水路46bは、図3に示すように、先ず、加圧ポンプ22から上方に延び、大便器1のボウル部12の溜水面Aよりも上方に配管が配置され、その後、配管が下方に向けて延びて構成されている。このように上方に向けた凸型に形成されている下流ジェット側給水路46bにおいて、その凸型部分の最も高い部分である頂部46cは、貯水タンク20からジェット吐水口16に至るジェット側給水路46の中で最も高い部分になっている。
【0022】
次に、上述したリム側給水路38には、リム吐水用バキュームブレーカ48が設けられており、給水路24に負圧が発生したときに洗浄水のリム吐出口18からの逆流を防止している。また、リム吐出用バキュームブレーカ48は、図3に示すように、ボウル部12の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ48の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク20に流入するようになっている。
タンク側給水路40にも、逆止弁であるバキュームブレーカ42が設けられており、洗浄水の貯水タンクからの逆流を防止している。
【0023】
ここで、貯水タンク20は、密閉タイプの貯水タンクであり、タンク側給水路40と貯水タンク20との接続部には、ボール式逆止弁43が設けられている。このボール式逆止弁43により、貯水タンク20が満水状態になった場合でも、ボール43aが浮上して、タンク側給水路40との接続部を閉鎖するので、洗浄水がタンク側給水路40に逆流することがないようになっている。
同様に、戻り管路50と貯水タンク20の接続部にも、ボール式逆止弁44が設けられており、貯水タンク20が満水状態となった場合でも、洗浄水が戻り管路50に逆流することはないようになっている。
【0024】
さらに、ジェット側給水路46の上流ジェット側給水路46aには、逆止弁であるジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58が設けられている。これらのジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58は、加圧ポンプ22よりも下方の、貯水タンク20の下端部付近の高さに配置されている。このため、水抜栓58を開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク20内及び加圧ポンプ22内の洗浄水を排水することができるようになっている。
【0025】
また、貯水タンク20と加圧ポンプ22の間にジェット吐水用フラッパー弁56を配置することにより、貯水タンク20内の水位が加圧ポンプ22の高さよりも低くなった場合に、洗浄水が加圧ポンプ22から貯水タンク20に逆流し、加圧ポンプ22内の洗浄水が抜け、加圧ポンプ22が空運転してしまうことを防止している。また、加圧ポンプ22の下方には、水受けトレイ60が配置されており、結露した水滴や漏水を受けるようになっている。
【0026】
貯水タンク20の内部には、上端フロートスイッチ64a、及び、下端フロートスイッチ64bが配置されている。上端フロートスイッチ64aは、貯水タンク20内の水位が通常使用時の満水位置(L1)に達するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、電磁開閉弁34を閉鎖させる。下端フロートスイッチ64bは、貯水タンク20内の水位が所定の水位(L3)まで低下するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、加圧ポンプ22を停止させる。
【0027】
さらに、貯水タンク20の上端フロートスイッチ64aよりも上方位置に、その一端70aが開口し、他端70bが下流ジェット側給水路64bに接続されたオーバーフロー流路70が設けられている。このオーバーフロー流路70には、逆止弁であるフラッパー弁72が取り付けられている。
このオーバーフロー流路70は、貯水タンク20において、水が開口70aより高くなるような場合、その貯水タンク20内の水をジェット側給水路46に逃がして、貯水タンク20から水が溢れ出すことがないようにするものである。
【0028】
また、このオーバーフロー流路70及びフラッパー弁72により、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流を防止すると共に、これらの間の縁切りを行うことができるようになっている。即ち、オーバーフロー流路70の他端70bが、ボウル部12内の溜水の水位よりも上方に設けられているため、通常待機時において、オーバーフロー流路70の一端70aから下流ジェット側給水路46bへ向けて空気を吸入して、縁切りをすることができ、しかも、オーバーフロー流路70の一端70aから他端70bに向けて下り勾配となっているため、通常待機状態での水の浸入を防止するようになっている。
【0029】
ここで、上述した電磁開閉弁34、給水路切替弁36、加圧ポンプ22などの動作内容を説明する。コントローラ62は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁開閉弁34、給水路切替弁36を作動させ、先ずリム吐水口18から吐水し、リム吐水を継続させながら、次に加圧ポンプ22を作動してジェット吐水口からの吐水を開始させて、サイホン作用を発生させてボウル部12の溜水を汚物と共に排出洗浄する。さらに、コントローラ62は、加圧ポンプ22の作動停止した後もリム吐水を継続してボウル部12に溜水を貯めて洗浄終了する。その洗浄終了後、給水路切替弁36を貯水タンク20側に切り替えて洗浄水を貯水タンク20に補給する。貯水タンク20内の水位が上昇し、上方フロートスイッチ64aが規定の貯水量を検出すると、コントローラ62は、電磁弁34を閉鎖して給水を停止する。
【0030】
次に、図4により、本発明の実施形態によるジェット側給水路46に溜まったエアを逃がすためのエア抜き構造の概略構成を説明する。図4は、本発明の実施形態によるフラッパー構造体を示す断面斜視図である。
図4に示すように、エア抜き構造体であるフラッパー構造体74は、上述したオーバーフロー流路(エア抜き流路)70のオーバーフローホースの他端70bに内挿されて接続されるフラッパー接続管80と、上述した下流ジェット側給水路46bに接続される接続管本体82とを備えている。
ここで、接続管本体82は、第1の接続部82a、第2の接続部82b及び第3の接続部82cを有している。フラッパー接続管80は、角パッキン84を介して第2の接続部82bに接続されている。これらのフラッパー接続管80と第2の接続部82bとの境界部には、フラッパー弁72が設けられており、フラッパー弁72の動作に応じて、フラッパー接続管80及び接続管本体82とが、互いに連通し或いは遮蔽するようになっている。
【0031】
一方、接続管本体82は、その第1の接続部82aが下流ジェット側給水路46bのエルボ部材86にOリング88を介して接続され、その第3の接続部82cが下流ジェット側給水路46bの下流側のジェットホースにゼットパッキン90及び固定金具92を介して接続されている。エルボ部材86は、ジェットホース46dに内挿されて接続されている。接続管本体82の第1の接続部82aと第3の接続部82cとは何の弁体も介すことなく連通しており、ジェット吐水の洗浄水をその上流側Uから下流側Dへと流すようになっている。
【0032】
次に、図4乃至図7により、本発明の実施形態によるフラッパー弁72を備えるエア抜き構造をさらに説明する。図5は、接続管本体側のフラッパー弁の構造を示す正面図(a)、フラッパー弁の側面図(b)、及び、フラッパー接続管側のフラッパー弁の構造を示す背面図(c)であり、図6は、フラッパー弁が開放されているときのフラッパー構造体を示す断面斜視図(a)及び断面側面図(b)であり、図7は、フラッパー弁が閉塞されているときのフラッパー構造体を示す断面斜視図(a)及び断面側面図(b)である。
【0033】
図5に示すように、フラッパー弁72は、上半分が長方形に形成されると共に下半分が半円形に形成されたフラッパー板72aと、このフラッパー板72aの上縁部に形成されフラッパー板72aを軸支するフラッパー軸72bと、トラスねじ72cにより表側と裏側とに固定された2つの円形状の錘72dと、緩衝パッキン72eとで構成されている。
【0034】
図6(b)及び図7(b)に示すように、フラッパー軸72bの両端部は、接続管本体82に形成された孔部82dに嵌め込まれ、フラッパー弁72が、フラッパー軸72bを中心に揺動可能になっている。そして、フラッパー弁72は、図6に示すように、主に錘にかかる重力を受けて真っ直ぐ下方に垂れ下がっている第1の位置と、図7に示すように、後述する水圧を受けてフラッパー接続管80に向けて斜め上方に移動した第2の位置との間で揺動する。
【0035】
先ず、第1の位置は、図6で示されている。ここで、図6(a)に示すように、接続管本体82の第2の接続部82b及びこの第2の接続部82bと当接しているオーバーフロー流路70の他端部70bの一部には、断面矩形の空間部Eが形成されている。この矩形断面Eを図5(a)に仮想線で示す。このように第1の位置では、フラッパー板72aの下半分の半円形の部分と空間部Eとの間には空隙E1が存在して、フラッパー接続管80と接続管本体82とが連通状態になるようになっており、後述するようにこの空隙E1からオーバーフロー流路70に空気が抜けるようになっている。
【0036】
次に、第2の位置は、図4及び図7で示されている。ここで、フラッパー接続管80は断面円形に形成されており、その接続管本体82側への開口部80eも円形に形成されている。この円形の開口部80eを図5(c)に仮想線で示す。このように第2の位置では、水圧を受けてフラッパー接続管80に向けて斜め上方に移動したフラッパー弁72の緩衝パッキン72eが、接続管本体82への開口部80eに当接して、フラッパー接続管80と接続管本体82とが遮蔽状態になるようになっており、後述するように、ジェット吐水の洗浄水がオーバーフロー流路70に流れないようになっている。
【0037】
次に、主に図8により本発明の実施形態の作用効果を説明する。図8は、本発明の実施形態の作用効果を説明するためにフラッパー弁を備えるエア抜き構造を模式的に表した図であり、フラッパー弁の開放状態(a)及び閉鎖状態(b)をそれぞれ示す。
先ず、図3に示すように、洗浄が行われていない場合には、大便器1のボウル部12の溜水面Aよりも上方のジェット側給水路46には、空気が溜まっている。そして、ジェット吐水開始時には、図8(a)に示すように、洗浄水Wrがそのような空気Airを押し出すように流れる。ここで、フラッパー弁72は錘72dによりその重さが調整されており、そのような押し出しによる空気圧では、フラッパー弁72が、上述した第1の位置、即ち、主に錘にかかる重力を受けて真っ直ぐ下方に垂れ下がっている図8(a)のような位置に留まったままである。従って、空気Airは、上述したフラッパー板72aの下半分の半円形の部分と空間部Eとの間の空隙E1を通って、オーバーフロー流路70に抜けるようになっている。
【0038】
次に、そのような空気が空隙E1を通ってほとんど押し出された後には、図8(b)に示すように、接続管本体82には、洗浄水Wrが満たされると共に加圧ポンプ22からの加圧力が加わる。ここで、フラッパー弁72は錘72dによりその重さが調整されており、そのような加圧された洗浄水の圧力を受けると、フラッパー弁72が、上述した第2の位置、即ち、フラッパー接続管80に向けて斜め上方に移動すると共に緩衝パッキン72eがフラッパー接続管80の開口部80eに当接してシールする図8(b)のような位置となる。従って、洗浄水Wrは、オーバーフロー流路70に逆流することなく、ジェット側給水路46を流れる。
このように本発明の実施形態によれば、オーバーフロー流路70を利用して空気を抜くエア抜き構造を備えており、ジェット吐水開始時の「ボコッ」というような騒音を防止することが出来る。
【0039】
なお、変形例として、図9に示すように、オーバーフロー流路70を利用せず、ジェット側給水路46にリム側給水路38への配管170を接続し、フラッパー弁172を介して、同様の作用を得るようにしても良い。この場合は、ジェット側給水路46に溜まっていた空気が、ジェット吐水開始時にリム吐水口から排出される。
【0040】
また、本実施形態では、フラッパー弁72を、空気圧を受けた場合に開放し、水圧を受けた場合に遮蔽するように、錘72dによりフラッパー弁72を付勢しているが、変形例として、図10に示すように、フラッパー弁272にばね273を取り付けて、フラッパー弁272を、空気圧を受けた場合に開放し、水圧を受けた場合に遮蔽するようにしても良い。このような場合、洗浄水を供給する初期の段階における空気の圧力を受けるときには、ばね273による付勢力がその空気圧より勝ってフラッパー弁が垂直方向に向き、ジェット側給水路46に供給される洗浄水の水圧を受けるときにはその水圧がばね273による付勢力に勝ってフラッパー弁272が斜めに傾くように調整されるのが良い。
なお、付勢手段は、フラッパー弁そのものが比重の大きい材質(金属等)で単体形成されることで、同様の付勢効果をもたらす場合も該当する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器の側面図である。
【図2】図1に示す水洗大便器の平面図である。
【図3】本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【図4】本発明の実施形態によるフラッパー構造体を示す断面斜視図である。
【図5】接続管本体側のフラッパー弁の構造を示す正面図(a)、フラッパー弁の側面図(b)、及び、フラッパー接続管側のフラッパー弁の構造を示す背面図(c)である。
【図6】フラッパー弁が開放されているときのフラッパー構造体を示す断面斜視図(a)及び断面側面図(b)である。
【図7】フラッパー弁が閉塞されているときのフラッパー構造体を示す断面斜視図(a)及び断面側面図(b)である。
【図8】本発明の実施形態の作用効果を説明するためにフラッパー弁を備えるエア抜き構造を模式的に表した図であり、フラッパー弁の開放状態(a)及び閉鎖状態(b)をそれぞれ示す図である。
【図9】本発明の実施形態の変形例による水洗大便器を示す全体構造図である。
【図10】本発明の実施形態の変形例によるフラッパー弁の付勢構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 水洗大便器
2 便器本体
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
16 ジェット吐水口
18 リム吐水口
20 貯水タンク
22 加圧ポンプ
24 給水路
38 リム側給水路
40 タンク側給水路
46 ジェット側給水路
46a 上流ジェット側給水路
46b 下流ジェット側給水路
43、44 ボール式逆止弁
56 ジェット吐水用フラッパー弁
70 オーバーフロー流路
70a オーバーフロー流路の一端(開口)
70b オーバーフロー流路の他端
72 フラッパー弁
72a フラッパー板
72b フラッパー軸
72d 錘
72e 緩衝パッキン
80 フラッパー接続管
80e 開口部
82 接続管本体
82a 第1の接続部
82b 第2の接続部
82c 第3の接続部
E 空間部
E1 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェット吐水口に連通するジェット側給水路とこのジェット側給水路に洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを有し、上記ジェット側給水路に洗浄水を供給する初期の段階において上記ジェット側給水路に滞留している空気を上記ジェット側給水路から抜くための水洗便器のエア抜き構造であって、
上記ジェット側給水路に接続され、このジェット側給水路に滞留している空気を上記ジェット側給水路から排出するための大気に連通しているエア抜き管と、
このエア抜き管及び上記ジェット側給水路の間に設けられたフラッパー管と、
このフラッパー管に設けられ、上記ジェット側給水路と上記エア抜き管との間を開放状態にし或いは閉鎖状態にすることが出来るフラッパー弁と、
このフラッパー弁に設けられ、洗浄水により押し出される上記滞留している空気の圧力を受けても作動せずに上記フラッパー弁を開放状態にさせ、或いは、上記ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けると作動して上記フラッパー弁を閉鎖状態にさせるように、上記フラッパー弁を付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とする水洗便器のエア抜き構造。
【請求項2】
上記フラッパー弁は、その上縁部の軸を中心に回動可能であり、
上記フラッパー管及びフラッパー弁は、このフラッパー弁が垂直方向に向くとき上記ジェット側給水路から上記エア抜き管へと空気が通るような間隙が形成されるように構成され、且つ、上記フラッパー弁が斜めに傾くとき上記フラッパー弁が上記フラッパー管を閉じるように構成され、
上記付勢手段は、上記フラッパー弁が所定の重量を有するように上記フラッパー弁に取り付けられた錘であり、
上記フラッパー弁の重量は、上記洗浄水を供給する初期の段階における空気の圧力を受けるときにはそのフラッパー弁にかかる重力による垂直方向下方への力がその空気圧に勝って上記フラッパー弁が略垂直方向に向いて空気を逃がし、上記ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けるときにはそのフラッパー弁にかかる重力による垂直方向下方への力よりその水圧が勝って上記フラッパー弁が斜めに傾いて洗浄水を遮蔽するように調整されている、請求項1に記載の水洗便器のエア抜き構造。
【請求項3】
さらに、洗浄水を貯水する貯水タンクを有し、
上記エア抜き管は、上記貯水タンクから溢れる洗浄水を逃がすオーバーフロー管を兼ねており、
上記貯水タンクから溢れる洗浄水は、このオーバーフロー管を通り、上記重力により付勢されて垂直方向に向くフラッパー弁と上記フラッパー管との間の間隙を通って上記ジェット側給水路に流れる、請求項2に記載の水洗便器のエア抜き構造。
【請求項4】
さらに、リム吐水口へ洗浄水を供給するリム給水路を有し、
上記エア抜き管は、上記ジェット側給水路から上記リム給水路に接続されている請求項1又は請求項2に記載の水洗便器のエア抜き構造。
【請求項5】
上記付勢手段はばねであり、
上記フラッパー弁は、上記洗浄水を供給する初期の段階における空気の圧力を受けるときにはばねの付勢力が空気圧より勝って上記フラッパー弁が垂直方向に向き、上記ジェット側給水路に供給される洗浄水の水圧を受けるときにはその水圧がばねの付勢力に勝って上記フラッパー弁が斜めに傾くように調整され、
上記フラッパー管及びフラッパー弁は、上記フラッパー弁が垂直方向に向くとき上記ジェット側給水路から上記エア抜き管へと空気が通るような間隙が形成されるように構成され、且つ、上記フラッパー弁が洗浄水の水圧を受けて斜めに傾くとき上記フラッパー弁が上記フラッパー管を閉じるように形成されている、請求項1に記載の水洗便器のエア抜き構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−7847(P2009−7847A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170592(P2007−170592)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】